JP2004224622A - 注入用耐火被覆セメントモルタル組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】トンネル内壁1の覆工面2の如き施工対象面と、該施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された内装板等の板状体10の間の施工対象空間内に、ポンプで圧送して注入施工しても、圧送時にポンプ等が閉塞を起こしたり、圧送量が減少したり、材料分離等が生じることのない、発泡骨材を含む注入用耐火被覆セメントモルタル12を提供する。
【解決手段】注入用耐火被覆セメントモルタル12は、セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜30質量%とからなる固体分(合計100質量%)を含み、かつ、水/固体分の質量比が0.5〜1.2であり、空気の体積割合が30〜60%であるように構成される。
【選択図】 図1
【解決手段】注入用耐火被覆セメントモルタル12は、セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜30質量%とからなる固体分(合計100質量%)を含み、かつ、水/固体分の質量比が0.5〜1.2であり、空気の体積割合が30〜60%であるように構成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、施工対象部に耐火性を有する被覆層を形成させるための耐火被覆セメントモルタルに関し、特に、トンネル内壁の覆工面と、該覆工面から適宜の距離を隔てて配設された内装板との間の施工対象空間内に、ポンプで圧送して注入施工するのに好適な注入用耐火被覆セメントモルタルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、トンネル内壁面に対して、適宜の距離を隔てて耐火板や内装板等の板状体を配設したうえで、当該トンネル内壁面と板状体との間に裏込め材を注入して、補強等を目的とした構造体を構築することが行なわれている。
例えば、導水トンネル等のトンネル壁体の内周面に沿って、ステンレス板等からなる補強板を設置し、該補強板と該トンネル壁体の内周面との隙間に、モルタル等の裏込め材を注入して、トンネルの補強構造を構築することが知られている(特許文献1参照)。
また、水路トンネル内壁の補修部材として、FRP板を使用し、当該FRP板を、水密性を有する接合部材を介してトンネル内面の周方向に複数配置するとともに、FRP板および接合部材と、トンネル内面との間に、エアモルタルなどのグラウトを充填することも知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−173087号公報(第1頁の要約、第2頁の請求項1、第2頁の段落番号0001、第6頁の段落番号0048)
【特許文献2】
特開平6−33436号公報(第1頁の要約、第2頁の段落番号0009)
【0004】
一方、トンネル内で火災が発生した際の耐火性能を向上させるために、トンネル内壁の覆工面に、発泡骨材を含むモルタルを吹き付け施工することが、行なわれている。ここで、発泡骨材は、断熱性の向上のために配合される材料である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、施工対象部において、施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された内装板等の板状体と施工対象面の間の施工対象空間内に、ポンプで圧送したセメントモルタルを注入施工する方法は、吹き付け施工等と比べて、不陸調整をしなくてもセメントモルタルと板状体の間に大きな隙間が生じ難いので、一体的な積層構造を効率良く形成させることができる点で優れている。
しかし、このポンプ圧送による注入施工方法は、発泡骨材を含む耐火被覆用セメントモルタルに対しては適用されていない。その理由は、次のとおりである。
発泡骨材を含むセメントモルタルを、ポンプで圧送して注入施工すると、場合によっては、圧送の途中でセメントモルタル中の水分が発泡骨材に吸収され、その結果、セメントモルタルの流動性が急速に失われ、ポンプや注入箇所(ホースの排出口付近)において閉塞を起こすことがある。また、このことを考慮して水分を多めにすると、材料分離が生じたりする。このように、水分調整や材料の配合が難しいため、発泡骨材を含む耐火被覆用セメントモルタルは、ポンプ圧送によって注入施工されないのである。
そこで、本発明は、トンネル内壁の覆工面の如き施工対象面と、該施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された板状体(例えば、内装板)との間の施工対象空間内に、ポンプで圧送して注入施工しても、注入時にポンプ等が閉塞を起こしたり、圧送量(単位時間当たりの供給量)が減少したりすることがなく、かつ、材料分離を生じることのない、発泡骨材を含む注入用耐火被覆セメントモルタルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントモルタルの固体分を構成するセメントや発泡骨材等の粒径および配合割合を特定の数値範囲内に限定し、かつ、セメントモルタル中の水量および空気量を特定の数値範囲内に限定することによって、圧送し注入する際にポンプ等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることなく、上記施工対象面と上記板状体との間の施工対象空間内に、円滑かつ迅速に注入施工することができ、かつ、注入後まで材料分離を生じない注入用耐火被覆セメントモルタルを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明(請求項1)の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、水を添加することによってセメントモルタルを調製することのできる組成物であって、(A)セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、(B)粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、(C)必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜30質量%とを含むことを特徴とする。
このように構成したセメントモルタル組成物は、所定量の水を添加し、かつ水の添加後の混練物(セメントモルタル)中の空気の体積割合を所定の数値範囲内に調整することによって、上記目的を満たすセメントモルタルとなる。
【0008】
前記注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、前記(C)他の無機質固体分として、マイカ、タルク等の薄片状粒子を含むことができる(請求項2)。
薄片状粒子を配合することによって、水を添加してセメントモルタルを調製した際のセメントモルタルの流動性および耐火性能を高めることができる。
本発明(請求項3)の注入用耐火被覆セメントモルタルは、上述の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物に、水/固体分の質量比が0.5〜1.2となるように水を添加してなる注入用耐火被覆セメントモルタルであって、該セメントモルタル中の空気の体積割合が30〜60%であることを特徴とする。
上記数値範囲内に水量および空気量を調整したセメントモルタルは、圧送する際にポンプや注入箇所等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることがなく、トンネル内壁の覆工面の如き施工対象面と、該施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された内装板等の板状体との間の施工対象空間内に、円滑かつ迅速に注入施工することができる。また、施工時に材料分離が生じることもない。そして、注入施工後は、施工対象面上にセメントモルタルと板状体とが一体的に積層されてなる良好な耐火構造を得ることができる。特に、施工対象面が凹凸を有するなど複雑な形状である場合においても、容易にかつ効率的に施工することができる。
【0009】
本発明(請求項4)のトンネル耐火構造は、トンネル内壁の覆工面に対して所定の空間を介在させて配設された板状体(例えば、内装板)と、前記空間内に注入された上述の注入用耐火被覆セメントモルタルとが積層されてなる構造を含むことを特徴とする。
このように構成されたトンネル耐火構造は、覆工面上に、発泡骨材を含む耐火被覆セメントモルタルと、内装板とが、隙間を生じさせることなく一体的に積層して形成されているため、高い耐火性能を有することに加えて、強度、耐久性および構造上の安定性にも優れている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、水を添加することによって注入用耐火被覆セメントモルタル(以下、単に、「耐火被覆セメントモルタル」、「セメントモルタル」等ともいう。)を調製することのできる組成物であって、(A)セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、(B)粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、(C)必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜20質量%とを含むものである。
なお、本明細書中において、「セメントモルタル組成物」とは、セメント、発泡骨材等の固体材料のみからなる組成物をいう。また、「セメントモルタル」とは、セメントモルタル組成物に対して、さらに水等を添加してなる組成物(ただし、硬化前の状態と硬化後の状態を含む。)をいう。
【0011】
本発明においては、セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子(A成分)が用いられる。
セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子は、セメント、および必要に応じて配合されるセメント以外の粒子を含むものである。
ここで、セメントの種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。
また、必要に応じて配合されるセメント以外の粒子としては、例えば、石灰石粉末、高炉スラグ粉末、石英粉末、フライアッシュ、シリカフューム、細砂、ガラス微粒等が挙げられる。
【0012】
セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子は、水を加えてセメントモルタルを調製した際に、当該粒子の表面に水が吸着して保持されるため、ポンプによる圧送及び注入時に圧力が加わっても、材料の分離を抑制する作用を発揮することができ、ポンプ注入性を向上させることができる。当該粒子の粒径が0.15mmを超えると、良好なポンプ注入性を得ることが困難になる。
なお、本明細書中において、「ポンプ注入性」とは、ポンプ(より具体的には、モルタルポンプ)を用いてセメントモルタルを施工対象空間内に注入施工する際に、ポンプ等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることがなく、円滑かつ迅速に注入施工することのできる性質をいう。
つまり、注入用のホースの筒先を、施工対象空間に通じる注入孔に取り付けた後、ポンプを用いてセメントモルタルを圧送し注入した場合において、セメントモルタルに生じる圧力は、ポンプによる圧送によって生じる圧力に加えて、施工対象空間内に注入されたセメントモルタルの自重や、注入されたセメントモルタルと覆工面あるいは板状体(内装板)との間に生じる摩擦抵抗や、注入されたセメントモルタルの流動抵抗等が組み合わさったものである。このような複数の要因による圧力下に置かれたセメントモルタルが、円滑かつ迅速に圧送され注入される性質を、本明細書中において、「ポンプ注入性」と称している。
【0013】
粒径0.15mm以下の粒子の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中における質量割合で、50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%である。該配合割合が50質量%未満では、セメントモルタルを圧送する際に、粒径0.15mm以下の粒子が、水を十分に保持することができず、材料分離が大きくなる傾向がある。また、セメントの配合割合が少ない場合には、強度不足となる。該配合割合が80質量%を超えると、固体分中の微粒分の割合が多くなり過ぎて、セメントモルタルの流動性が低下し、良好なポンプ注入性を得ることができなくなる。
【0014】
粒径0.6〜5mmの発泡骨材(B成分)としては、例えば、バーミキュライト、硬質パーライト等が挙げられる。
粒径0.6〜5mmの発泡骨材は、主として断熱性を付与し、耐火性能を高めるために配合される。
本発明のセメントモルタル中に配合される発泡骨材は、粒径0.6〜5mmの範囲外のものを多少含んでいてもよい。ただし、この場合、発泡骨材の全量中、粒径0.6〜5mmの粒度を有する発泡骨材の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
なお、発泡骨材の粒径が5mmを超えると、圧送時の高い圧力によって、発泡骨材自体が圧壊されるおそれがあるとともに、吸水し易くなるので、発泡骨材の最大粒径は、5mm以下とすることが好ましい。また、発泡骨材の最小粒径は、断熱性の得られ易さの観点から、好ましくは0.6mm以上である。
【0015】
粒径0.6〜5mmの発泡骨材は、例えば、所定の鉱物を適当な粒度に粉砕し分級した後、加熱炉内で急速に加熱して膨張させ、この膨張した多孔質の軽量粒体を分級することによって得ることができる。
粒径0.6〜5mmの発泡骨材の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中における質量割合で、10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%である。該配合割合が10質量%未満では、十分な断熱性(耐火性)を得ることができず、該配合割合が40質量%を超えると、良好なポンプ注入性および十分な機械的強度が得られ難くなる。
【0016】
必要に応じて配合される他の無機質固体分(C成分)としては、例えば、マイカ、タルク等の薄片状粒子や、ウォラストナイト、ムライト等の針状粒子等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク等の薄片状粒子は、流動性および耐火性の観点から好ましく用いられる。
他の無機質固体(C成分)の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中の質量割合で、0〜30質量%である。該配合割合が30質量%を超えると、良好なポンプ注入性等が得られ難くなる。
本発明の耐火被覆セメントモルタル組成物を構成する材料の最大粒径(最長寸法)は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。該最大粒径が10mmを超えると、ポンプ注入性が低下したり、注入し難くなったりすることがある。
【0017】
本発明のセメントモルタル組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。
工場内で製造する方法の一例として、レーディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、リボンミキサ等の粉体混合用のバッチ式ミキサ内に、所定量の各固形原料を投入した後、5分間、撹拌混合して、セメントモルタル組成物を得る方法が挙げられる。
現場で製造する方法の一例として、傾胴式ミキサ、パン型ミキサ等のモルタル練り混ぜ用のミキサ内に、所定量の各固形原料を投入した後、2分間、撹拌混合して、セメントモルタル組成物を得る方法が挙げられる。なお、この場合、セメントモルタルを得るには、セメントモルタル組成物を調製した後のミキサ内に、所定量の水、及び必要に応じて液体状の化学混和剤を添加し、3分間、練り混ぜればよい。
【0018】
本発明において、水/固体分の質量比は、減水剤等の化学混和剤の使用の有無及び使用量によっても異なるが、好ましくは0.5〜1.2、より好ましくは0.6〜1.1である。該質量比が0.5未満では、セメントモルタルの流動性が低下して、良好なポンプ注入性が得られないことがあるため、好ましくない。該質量比が1.2を超えると、水量が多いために材料分離の傾向が大きくなるばかりか、セメントモルタルの硬化後の機械的強度や耐久性が低下するので、好ましくない。
一般に、ポンプでセメントモルタルを圧送すると、セメントモルタルが水分と固形分とに分離し易い傾向があるので、ホース内におけるセメントモルタルの円滑な移動に必要な流動性が確保される限りにおいて、水/固体分の質量比をなるべく小さくすることが好ましい。
なお、本明細書中において、「固体分」とは、水との混練前において固体の形態を有する材料(ただし、粉末状の化学混和剤を除く。)をいう。
【0019】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルに減水剤を配合することは、水/固体分の質量比を小さくすることができるので、好ましい。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤等を使用することができる。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で2質量部以下、好ましくは0.1〜1質量部である。該配合量が2質量部を超えると、セメントモルタルの硬化後の機械的強度が低下するので、好ましくない。
減水剤は、液状と粉末状のいずれの形態であっても使用することができる。
【0020】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルに空気連行剤を配合することは、当該セメントモルタル中に所定量の空気を含ませる際に、空気の連行性を良好にすることができるので、好ましい。
空気連行剤としては、例えば、高性能AE減水剤、AE減水剤、AE剤等を使用することができる。中でも、高性能AE減水剤とAE減水剤は、空気を連行する効果と、減水効果(上述の減水剤としての効果)の両方を兼ね備えているので、好ましく用いられる。
空気連行剤の配合量は、セメント100質量部に対して、有効成分換算で1質量部以下、好ましくは0.01〜0.1質量部である。該配合量が1質量部を超えると、セメントモルタルの硬化後の機械的強度が低下するので、好ましくない。
本発明においては、上述の減水剤や空気連行剤以外に、分散剤、流動化剤等の他の化学混和剤を配合してもよい。
【0021】
本発明において、耐火被覆セメントモルタル中の空気の体積割合は、30〜60%、好ましくは35〜55%、より好ましくは40〜50%の範囲内に調整される。該体積割合が30%未満では、セメントモルタルのポンプ注入性が劣り、該体積割合が60%を超えると、ポンプの押し出し圧が減損され、セメントモルタルの圧送量が減少するとともに、セメントモルタルの硬化後に十分な機械的強度が得られ難くなる。
空気の混入方法は、特に限定されないが、上述のような空気連行剤を用いると、良好な空気の泡が得られるので、好ましい。ここで、良好な空気の泡とは、微細で消泡し難く、ベアリング効果を発揮するような泡をいう。
【0022】
耐火被覆セメントモルタル中の良好な空気の泡は、▲1▼セメントモルタル中でベアリング効果を発揮し、材料分離を抑制する、▲2▼セメントモルタルの流動性を高めて、ホース及び施工対象空間内においてセメントモルタルを円滑かつ迅速に移動させる、▲3▼圧送及び注入時の圧力を吸収することによって、ポンプ等における閉塞を防止する、等の作用を有する。
なお、耐火被覆セメントモルタル中の空気の体積割合は、例えば、空気圧入式のエアメーターを用いて、簡単に測定することができる。空気圧入式のエアメーターとしては、例えば、丸東社製の「C13−S10」(商品)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルを得る方法は、特に限定されるものではなく、従来のエアーモルタルの製造方法に準じた方法を採用すればよい。
ただし、発泡骨材による吸水を避けるためには、発泡骨材を後添加することが好ましい。
本発明において混練に用いるミキサとしては、例えば、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ、揺動型ミキサ等を用いることができる。
【0024】
次に、図面に基づいて、本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルを用いたトンネル耐火構造の構築方法を説明する。図1は、トンネル内壁の覆工面上にトンネル耐火構造を構築するために、覆工面と内装板の間の施工対象空間内に、本発明の耐火被覆セメントモルタルを注入している状態を模式的に示す断面図、図2は、トンネル内壁の覆工面上に構築されたトンネル耐火構造を模式的に示す断面図、図3は、トンネル耐火構造を有するトンネル全体を模式的に示す断面図である。
トンネル耐火構造を構築するには、まず、トンネル内壁1の覆工面2の所定の位置に複数の孔を穿設した後、これらの孔の中にアンカー3およびボルト4を埋設する。次いで、ボルト4に下端用内装板支持具6を挿通し、ナット5を用いて、覆工面2上に下端用内装板支持具6を固定する。なお、下端用内装板支持具6の下方には、シール部14を形成させておき、後で注入される耐火被覆セメントモルタル12が漏出しないようにしておく。
【0025】
次に、円形状のモルタル注入用孔9を有する矩形の内装板10を用意し、この内装板10の下側の縁部を、下端用内装板支持具6の支持部に嵌合させて支持するとともに、この内装板10の上側の縁部を、中間用内装板支持具7、ボルト4およびナット5を用いて支持し固定する。そして、中間用内装板支持具7の支持部の上側に、新たな内装板10(モルタル注入用孔9を有しないもの)の下側の縁部を嵌合させて支持するとともに、この内装板10の上側の縁部を、中間用内装板支持具7、ボルト3およびナット4を用いて支持し固定する。以後、同様にして、内装板10(モルタル注入用孔9を有しないもの)を順次、上方に連結していく。最後に、上端用内装板支持具8を用いて、最も上方に配置させるべき内装板10を支持し固定すれば、上下方向における全ての内装板10の設置作業が完了する。この時点において、内装板10は、トンネル内壁1の覆工面2に対して、耐火被覆セメントモルタル12を充填するための施工対象空間11を介在させた状態で配設されている。
【0026】
なお、内装板10の下側の縁部または上側の縁部を支持するには、内装板10の安定性を確保するために、少なくとも2つ以上の内装板支持具7(または6,8)が、図1の紙面に垂直な方向に並設される。
また、図1中の各内装板支持具7(または6,8)は、図1の紙面に垂直な方向に所定の幅を有する金属等の材質からなる部材であって、ボルト4を挿通するための挿通孔を有する覆工面当接部と、内装板10を嵌合させるための断面H字状(または断面コの字状)の支持部とを備えている。
【0027】
内装板10は、例えば、基材部10aと表層材部10bとを一体に積層し固着させてなるものとして構成される。
ここで、基材部10aは、例えば、モルタル板、硬質珪酸カルシウム板、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等からなるものである。また、表層材部10bは、自動車の排気ガスや湿気等によって基材部が腐食したり劣化するのを防ぐためのものであり、例えば、セラミック製のタイル等からなるものである。なお、表層材部10bは、トンネル内の照明効率の向上や、車両の安全な通行のための視線誘導等の目的を併せ持つことがある。
【0028】
基材部10aと表層材部10bは、接着剤で接着するか、あるいはビス等の固着具を用いて固着されている。内装板10の寸法は、特に限定されず、例えば、トンネル内壁に施工される従来の内装板と同程度に定められる。
内装板10の上端面および下端面には、内装板支持具7(または6,8)の断面H字状(または断面コの字状)の部分を構成する外側の壁部を嵌合させるための溝部10cが形成されている。溝部10cは、内装板支持具7(または6,8)の最も外側の壁部の形状に合致するように形成されている。
【0029】
所定の施工対象範囲内において、内装板10の設置作業を完了した後、最も下方に位置する内装板10のモルタル注入用孔9に、モルタル供給管13の端部を当接させ、このモルタル注入用孔9を通して、ポンプ(図示せず)によってホース内を圧送されてきた耐火被覆セメントモルタル12を、トンネル内壁1の覆工面2と内装板10との間の施工対象空間11内に注入する。
注入圧(注入孔における最大注入圧)は、好ましくは1.5MPa以下である。
注入開始後、施工対象空間11内に注入された耐火被覆セメントモルタル12の上面は、図1に示すように徐々に上昇していく。この際、内装板10の上下方向の連結箇所の隙間から少量のセメントモルタル12を漏出させることによって、施工対象空間11内の耐火被覆セメントモルタル12の上昇状況を確認することができる。また、注入し易くするための空気口を別途設けてもよい。
注入時の側圧による内装板のたわみを防止するため、必要に応じて、内装板を固定するためのアンカー3の本数を増やしたり、あるいは、トンネルの内部空間の側から、たわみ防止用の仮設枠を組むなどの方策を採ることができる。
【0030】
耐火被覆セメントモルタル12の上面が、最も上方に位置する内装板10の上側の縁部の高さに達した時点で、モルタル注入用孔9からの耐火被覆セメントモルタル12の注入を停止する。そして、耐火被覆セメントモルタル12の上面を覆う形で、シリコーン系材料等からなるシール部15を形成させ、かつ、モルタル供給管13を引き抜いた後の空洞部分にシール部16を形成させれば、図2に示すようなトンネル耐火構造17が完成する。
トンネル耐火構造17は、トンネル内壁1の覆工面2の上に、発泡骨材を含む耐火被覆セメントモルタル12と、内装板10とが、隙間を生じさせることなく、一体的に緻密に積層した形態で形成されているので、強度、耐久性および構造上の安定性に優れ、しかも、高い耐火性能を発揮することができる。
本発明の耐火被覆セメントモルタル12と内装板10とを積層してなるトンネル耐火構造17は、例えば、図3に示すように、トンネル内壁の覆工面2の下端付近から所定の高さまでに亘って部分的に形成される。トンネル耐火構造17の上方の部分(図3中、トンネル内壁の覆工面2と、点線とで囲まれた部分)には、本発明とは異なる他のトンネル耐火構造18(例えば、吹付け施工による耐火被覆層や、乾式の耐火ボード)を形成させることができる。
耐火被覆セメントモルタル層の厚みは、10〜50mmであることが好ましい。また、必要に応じて、この層にメッシュ補強筋を設けてもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
[1.使用材料]
▲1▼普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度:3.2g/cm3)
▲2▼石灰石粉末(有恒興業社製、ブレーン比表面積:4,000cm2/g、密度:2.7g/cm3)
▲3▼高炉スラグ(商品名:エスメント、新日鉄高炉セメント社製、ブレーン比表面積:4,000cm2/g、密度:2.9g/cm3)
▲4▼バーミキュライト(商品名:バーミキュライトファイン、三方商工社製、嵩密度:0.075〜0.11g/cm3、粒径:0.15〜5mm)
▲5▼パーライト(商品名:硬質パーライト3号、太平洋パーライト社製、絶乾密度:1.2g/cm3、粒径:2.5mm以下、FM3.48)
▲6▼マイカ(商品名:マスコバイトマイカC−20、カナダマイカ社製、嵩密度:0.20〜0.30g/cm3、粒径:0.15〜5mm)
▲7▼AE減水剤(エヌエムビー社製、商品名:ポゾリスNo.70)
【0032】
[2.注入用耐火被覆セメントモルタルの調製]
上記の材料を用いて、表1に示すような注入用耐火被覆セメントモルタル組成物(配合No.1〜10)を調製した。
調製した注入用耐火被覆セメントモルタル組成物(配合No.1〜10)に対して、表2に示す水/固体分の質量比となるように所定量の水を添加し、モルタルミキサを用いて3分間混練し、混練物を得た。また、得られた混練物中にAE剤(エヌエムビー社製、商品名:マイクロエア303A)を添加して、混練物中の空気量を、表2に示す量(混練物中の体積割合)に調整し、注入用耐火被覆セメントモルタル;実施例1〜6、比較例1〜9)を得た。
【0033】
[3.注入試験および評価]
▲1▼ 試験方法
注入用耐火被覆セメントモルタル(実施例1〜6、比較例1〜9)の注入試験および評価を、次のようにして行なった。
コンクリート製の模擬覆工体に対し、20mmの施工対象空間(隙間)を隔てて模擬内装板(透明アクリル製、厚さ:20mm)を配置し、アンカーで固定した後、最下部に設けた注入孔(直径:50mm)から施工対象空間内に、モルタルポンプを用いて注入用耐火被覆セメントモルタル(実施例1〜6、比較例1〜9)を注入した。注入は、10リットル/分の吐出速度で高さ2mに達するまで行なった。なお、施工対象空間は、図1に示すように下端をシール部で覆い、上端を開放させた状態とした。
▲2▼ 評価方法
注入用耐火被覆セメントモルタルの材料分離性は、目視で評価した。
注入用耐火被覆セメントモルタルの注入性は、注入孔に設置した隔膜式圧力計による最大注入圧の測定と、透明の模擬内装板越しの目視評価によって行なった。
結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、本発明で規定する粒径、配合割合等の条件を満たす実施例1〜6では、いずれも、注入圧が1.5MPa以下であり、ポンプ等の閉塞や、圧送量の低下がなく、また、セメントモルタルの材料分離等も見られなかった。
これに対し、比較例1、2では、粒径0.15mm以下の粒子の配合割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例3、4では、粒径0.6〜5mmの発泡骨材の配合割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例5では、必要に応じて配合される他の無機質固体分の配合割合が、本発明で規定する範囲よりも大きいため、閉塞が生じるなど、評価結果が劣る。比較例6、7では、空気の体積割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例8、9では、水/固体分の質量比が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。
【0037】
【発明の効果】
本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルは、吸水し易い発泡骨材を含むものの、各固体材料の粒径および配合割合を特定の数値範囲内に限定し、さらに、水量および空気量を特定の数値範囲内に限定しているため、ポンプで圧送しても、ポンプやモルタル注入用孔付近で閉塞を起こしたり、圧送量が減少したり、あるいは材料分離等を生じることがなく、高い流動性および良好な性状を保持したまま、ホース等を介して施工場所に供給し、所定の施工対象空間内に注入することができる。
したがって、本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルは、例えば、トンネルの内壁の覆工面と内装板等の板状体の間の施工対象空間内に、円滑かつ効率的に注入して、優れた耐火性能を有する耐火被覆構造を形成させるための材料として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トンネル内壁の覆工面上にトンネル耐火構造を構築するために、覆工面と内装板の間の施工対象空間内に、本発明の耐火被覆セメントモルタルを注入している状態を模式的に示す断面図である。
【図2】トンネル内壁の覆工面上に構築されたトンネル耐火構造を模式的に示す断面図である。
【図3】トンネル耐火構造を有するトンネル全体を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 トンネル内壁
2 覆工面
3 アンカー
4 ボルト
5 ナット
6 下端用内装板支持具
7 中間用内装板支持具
8 上端用内装板支持具
9 モルタル注入用孔
10 内装板
11 施工対象空間
12 注入用耐火被覆セメントモルタル
13 モルタル供給管
14,15,16 シール部
17 トンネル耐火構造
18 他のトンネル耐火構造
【発明の属する技術分野】
本発明は、施工対象部に耐火性を有する被覆層を形成させるための耐火被覆セメントモルタルに関し、特に、トンネル内壁の覆工面と、該覆工面から適宜の距離を隔てて配設された内装板との間の施工対象空間内に、ポンプで圧送して注入施工するのに好適な注入用耐火被覆セメントモルタルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、トンネル内壁面に対して、適宜の距離を隔てて耐火板や内装板等の板状体を配設したうえで、当該トンネル内壁面と板状体との間に裏込め材を注入して、補強等を目的とした構造体を構築することが行なわれている。
例えば、導水トンネル等のトンネル壁体の内周面に沿って、ステンレス板等からなる補強板を設置し、該補強板と該トンネル壁体の内周面との隙間に、モルタル等の裏込め材を注入して、トンネルの補強構造を構築することが知られている(特許文献1参照)。
また、水路トンネル内壁の補修部材として、FRP板を使用し、当該FRP板を、水密性を有する接合部材を介してトンネル内面の周方向に複数配置するとともに、FRP板および接合部材と、トンネル内面との間に、エアモルタルなどのグラウトを充填することも知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−173087号公報(第1頁の要約、第2頁の請求項1、第2頁の段落番号0001、第6頁の段落番号0048)
【特許文献2】
特開平6−33436号公報(第1頁の要約、第2頁の段落番号0009)
【0004】
一方、トンネル内で火災が発生した際の耐火性能を向上させるために、トンネル内壁の覆工面に、発泡骨材を含むモルタルを吹き付け施工することが、行なわれている。ここで、発泡骨材は、断熱性の向上のために配合される材料である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、施工対象部において、施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された内装板等の板状体と施工対象面の間の施工対象空間内に、ポンプで圧送したセメントモルタルを注入施工する方法は、吹き付け施工等と比べて、不陸調整をしなくてもセメントモルタルと板状体の間に大きな隙間が生じ難いので、一体的な積層構造を効率良く形成させることができる点で優れている。
しかし、このポンプ圧送による注入施工方法は、発泡骨材を含む耐火被覆用セメントモルタルに対しては適用されていない。その理由は、次のとおりである。
発泡骨材を含むセメントモルタルを、ポンプで圧送して注入施工すると、場合によっては、圧送の途中でセメントモルタル中の水分が発泡骨材に吸収され、その結果、セメントモルタルの流動性が急速に失われ、ポンプや注入箇所(ホースの排出口付近)において閉塞を起こすことがある。また、このことを考慮して水分を多めにすると、材料分離が生じたりする。このように、水分調整や材料の配合が難しいため、発泡骨材を含む耐火被覆用セメントモルタルは、ポンプ圧送によって注入施工されないのである。
そこで、本発明は、トンネル内壁の覆工面の如き施工対象面と、該施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された板状体(例えば、内装板)との間の施工対象空間内に、ポンプで圧送して注入施工しても、注入時にポンプ等が閉塞を起こしたり、圧送量(単位時間当たりの供給量)が減少したりすることがなく、かつ、材料分離を生じることのない、発泡骨材を含む注入用耐火被覆セメントモルタルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントモルタルの固体分を構成するセメントや発泡骨材等の粒径および配合割合を特定の数値範囲内に限定し、かつ、セメントモルタル中の水量および空気量を特定の数値範囲内に限定することによって、圧送し注入する際にポンプ等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることなく、上記施工対象面と上記板状体との間の施工対象空間内に、円滑かつ迅速に注入施工することができ、かつ、注入後まで材料分離を生じない注入用耐火被覆セメントモルタルを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明(請求項1)の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、水を添加することによってセメントモルタルを調製することのできる組成物であって、(A)セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、(B)粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、(C)必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜30質量%とを含むことを特徴とする。
このように構成したセメントモルタル組成物は、所定量の水を添加し、かつ水の添加後の混練物(セメントモルタル)中の空気の体積割合を所定の数値範囲内に調整することによって、上記目的を満たすセメントモルタルとなる。
【0008】
前記注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、前記(C)他の無機質固体分として、マイカ、タルク等の薄片状粒子を含むことができる(請求項2)。
薄片状粒子を配合することによって、水を添加してセメントモルタルを調製した際のセメントモルタルの流動性および耐火性能を高めることができる。
本発明(請求項3)の注入用耐火被覆セメントモルタルは、上述の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物に、水/固体分の質量比が0.5〜1.2となるように水を添加してなる注入用耐火被覆セメントモルタルであって、該セメントモルタル中の空気の体積割合が30〜60%であることを特徴とする。
上記数値範囲内に水量および空気量を調整したセメントモルタルは、圧送する際にポンプや注入箇所等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることがなく、トンネル内壁の覆工面の如き施工対象面と、該施工対象面から適宜の距離を隔てて配設された内装板等の板状体との間の施工対象空間内に、円滑かつ迅速に注入施工することができる。また、施工時に材料分離が生じることもない。そして、注入施工後は、施工対象面上にセメントモルタルと板状体とが一体的に積層されてなる良好な耐火構造を得ることができる。特に、施工対象面が凹凸を有するなど複雑な形状である場合においても、容易にかつ効率的に施工することができる。
【0009】
本発明(請求項4)のトンネル耐火構造は、トンネル内壁の覆工面に対して所定の空間を介在させて配設された板状体(例えば、内装板)と、前記空間内に注入された上述の注入用耐火被覆セメントモルタルとが積層されてなる構造を含むことを特徴とする。
このように構成されたトンネル耐火構造は、覆工面上に、発泡骨材を含む耐火被覆セメントモルタルと、内装板とが、隙間を生じさせることなく一体的に積層して形成されているため、高い耐火性能を有することに加えて、強度、耐久性および構造上の安定性にも優れている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物は、水を添加することによって注入用耐火被覆セメントモルタル(以下、単に、「耐火被覆セメントモルタル」、「セメントモルタル」等ともいう。)を調製することのできる組成物であって、(A)セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、(B)粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、(C)必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜20質量%とを含むものである。
なお、本明細書中において、「セメントモルタル組成物」とは、セメント、発泡骨材等の固体材料のみからなる組成物をいう。また、「セメントモルタル」とは、セメントモルタル組成物に対して、さらに水等を添加してなる組成物(ただし、硬化前の状態と硬化後の状態を含む。)をいう。
【0011】
本発明においては、セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子(A成分)が用いられる。
セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子は、セメント、および必要に応じて配合されるセメント以外の粒子を含むものである。
ここで、セメントの種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。
また、必要に応じて配合されるセメント以外の粒子としては、例えば、石灰石粉末、高炉スラグ粉末、石英粉末、フライアッシュ、シリカフューム、細砂、ガラス微粒等が挙げられる。
【0012】
セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子は、水を加えてセメントモルタルを調製した際に、当該粒子の表面に水が吸着して保持されるため、ポンプによる圧送及び注入時に圧力が加わっても、材料の分離を抑制する作用を発揮することができ、ポンプ注入性を向上させることができる。当該粒子の粒径が0.15mmを超えると、良好なポンプ注入性を得ることが困難になる。
なお、本明細書中において、「ポンプ注入性」とは、ポンプ(より具体的には、モルタルポンプ)を用いてセメントモルタルを施工対象空間内に注入施工する際に、ポンプ等で閉塞を起こしたり、圧送量(供給速度)を減少させることがなく、円滑かつ迅速に注入施工することのできる性質をいう。
つまり、注入用のホースの筒先を、施工対象空間に通じる注入孔に取り付けた後、ポンプを用いてセメントモルタルを圧送し注入した場合において、セメントモルタルに生じる圧力は、ポンプによる圧送によって生じる圧力に加えて、施工対象空間内に注入されたセメントモルタルの自重や、注入されたセメントモルタルと覆工面あるいは板状体(内装板)との間に生じる摩擦抵抗や、注入されたセメントモルタルの流動抵抗等が組み合わさったものである。このような複数の要因による圧力下に置かれたセメントモルタルが、円滑かつ迅速に圧送され注入される性質を、本明細書中において、「ポンプ注入性」と称している。
【0013】
粒径0.15mm以下の粒子の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中における質量割合で、50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%である。該配合割合が50質量%未満では、セメントモルタルを圧送する際に、粒径0.15mm以下の粒子が、水を十分に保持することができず、材料分離が大きくなる傾向がある。また、セメントの配合割合が少ない場合には、強度不足となる。該配合割合が80質量%を超えると、固体分中の微粒分の割合が多くなり過ぎて、セメントモルタルの流動性が低下し、良好なポンプ注入性を得ることができなくなる。
【0014】
粒径0.6〜5mmの発泡骨材(B成分)としては、例えば、バーミキュライト、硬質パーライト等が挙げられる。
粒径0.6〜5mmの発泡骨材は、主として断熱性を付与し、耐火性能を高めるために配合される。
本発明のセメントモルタル中に配合される発泡骨材は、粒径0.6〜5mmの範囲外のものを多少含んでいてもよい。ただし、この場合、発泡骨材の全量中、粒径0.6〜5mmの粒度を有する発泡骨材の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
なお、発泡骨材の粒径が5mmを超えると、圧送時の高い圧力によって、発泡骨材自体が圧壊されるおそれがあるとともに、吸水し易くなるので、発泡骨材の最大粒径は、5mm以下とすることが好ましい。また、発泡骨材の最小粒径は、断熱性の得られ易さの観点から、好ましくは0.6mm以上である。
【0015】
粒径0.6〜5mmの発泡骨材は、例えば、所定の鉱物を適当な粒度に粉砕し分級した後、加熱炉内で急速に加熱して膨張させ、この膨張した多孔質の軽量粒体を分級することによって得ることができる。
粒径0.6〜5mmの発泡骨材の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中における質量割合で、10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%である。該配合割合が10質量%未満では、十分な断熱性(耐火性)を得ることができず、該配合割合が40質量%を超えると、良好なポンプ注入性および十分な機械的強度が得られ難くなる。
【0016】
必要に応じて配合される他の無機質固体分(C成分)としては、例えば、マイカ、タルク等の薄片状粒子や、ウォラストナイト、ムライト等の針状粒子等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク等の薄片状粒子は、流動性および耐火性の観点から好ましく用いられる。
他の無機質固体(C成分)の配合割合は、耐火被覆セメントモルタル組成物中の質量割合で、0〜30質量%である。該配合割合が30質量%を超えると、良好なポンプ注入性等が得られ難くなる。
本発明の耐火被覆セメントモルタル組成物を構成する材料の最大粒径(最長寸法)は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。該最大粒径が10mmを超えると、ポンプ注入性が低下したり、注入し難くなったりすることがある。
【0017】
本発明のセメントモルタル組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。
工場内で製造する方法の一例として、レーディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、リボンミキサ等の粉体混合用のバッチ式ミキサ内に、所定量の各固形原料を投入した後、5分間、撹拌混合して、セメントモルタル組成物を得る方法が挙げられる。
現場で製造する方法の一例として、傾胴式ミキサ、パン型ミキサ等のモルタル練り混ぜ用のミキサ内に、所定量の各固形原料を投入した後、2分間、撹拌混合して、セメントモルタル組成物を得る方法が挙げられる。なお、この場合、セメントモルタルを得るには、セメントモルタル組成物を調製した後のミキサ内に、所定量の水、及び必要に応じて液体状の化学混和剤を添加し、3分間、練り混ぜればよい。
【0018】
本発明において、水/固体分の質量比は、減水剤等の化学混和剤の使用の有無及び使用量によっても異なるが、好ましくは0.5〜1.2、より好ましくは0.6〜1.1である。該質量比が0.5未満では、セメントモルタルの流動性が低下して、良好なポンプ注入性が得られないことがあるため、好ましくない。該質量比が1.2を超えると、水量が多いために材料分離の傾向が大きくなるばかりか、セメントモルタルの硬化後の機械的強度や耐久性が低下するので、好ましくない。
一般に、ポンプでセメントモルタルを圧送すると、セメントモルタルが水分と固形分とに分離し易い傾向があるので、ホース内におけるセメントモルタルの円滑な移動に必要な流動性が確保される限りにおいて、水/固体分の質量比をなるべく小さくすることが好ましい。
なお、本明細書中において、「固体分」とは、水との混練前において固体の形態を有する材料(ただし、粉末状の化学混和剤を除く。)をいう。
【0019】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルに減水剤を配合することは、水/固体分の質量比を小さくすることができるので、好ましい。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤等を使用することができる。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で2質量部以下、好ましくは0.1〜1質量部である。該配合量が2質量部を超えると、セメントモルタルの硬化後の機械的強度が低下するので、好ましくない。
減水剤は、液状と粉末状のいずれの形態であっても使用することができる。
【0020】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルに空気連行剤を配合することは、当該セメントモルタル中に所定量の空気を含ませる際に、空気の連行性を良好にすることができるので、好ましい。
空気連行剤としては、例えば、高性能AE減水剤、AE減水剤、AE剤等を使用することができる。中でも、高性能AE減水剤とAE減水剤は、空気を連行する効果と、減水効果(上述の減水剤としての効果)の両方を兼ね備えているので、好ましく用いられる。
空気連行剤の配合量は、セメント100質量部に対して、有効成分換算で1質量部以下、好ましくは0.01〜0.1質量部である。該配合量が1質量部を超えると、セメントモルタルの硬化後の機械的強度が低下するので、好ましくない。
本発明においては、上述の減水剤や空気連行剤以外に、分散剤、流動化剤等の他の化学混和剤を配合してもよい。
【0021】
本発明において、耐火被覆セメントモルタル中の空気の体積割合は、30〜60%、好ましくは35〜55%、より好ましくは40〜50%の範囲内に調整される。該体積割合が30%未満では、セメントモルタルのポンプ注入性が劣り、該体積割合が60%を超えると、ポンプの押し出し圧が減損され、セメントモルタルの圧送量が減少するとともに、セメントモルタルの硬化後に十分な機械的強度が得られ難くなる。
空気の混入方法は、特に限定されないが、上述のような空気連行剤を用いると、良好な空気の泡が得られるので、好ましい。ここで、良好な空気の泡とは、微細で消泡し難く、ベアリング効果を発揮するような泡をいう。
【0022】
耐火被覆セメントモルタル中の良好な空気の泡は、▲1▼セメントモルタル中でベアリング効果を発揮し、材料分離を抑制する、▲2▼セメントモルタルの流動性を高めて、ホース及び施工対象空間内においてセメントモルタルを円滑かつ迅速に移動させる、▲3▼圧送及び注入時の圧力を吸収することによって、ポンプ等における閉塞を防止する、等の作用を有する。
なお、耐火被覆セメントモルタル中の空気の体積割合は、例えば、空気圧入式のエアメーターを用いて、簡単に測定することができる。空気圧入式のエアメーターとしては、例えば、丸東社製の「C13−S10」(商品)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、耐火被覆セメントモルタルを得る方法は、特に限定されるものではなく、従来のエアーモルタルの製造方法に準じた方法を採用すればよい。
ただし、発泡骨材による吸水を避けるためには、発泡骨材を後添加することが好ましい。
本発明において混練に用いるミキサとしては、例えば、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ、揺動型ミキサ等を用いることができる。
【0024】
次に、図面に基づいて、本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルを用いたトンネル耐火構造の構築方法を説明する。図1は、トンネル内壁の覆工面上にトンネル耐火構造を構築するために、覆工面と内装板の間の施工対象空間内に、本発明の耐火被覆セメントモルタルを注入している状態を模式的に示す断面図、図2は、トンネル内壁の覆工面上に構築されたトンネル耐火構造を模式的に示す断面図、図3は、トンネル耐火構造を有するトンネル全体を模式的に示す断面図である。
トンネル耐火構造を構築するには、まず、トンネル内壁1の覆工面2の所定の位置に複数の孔を穿設した後、これらの孔の中にアンカー3およびボルト4を埋設する。次いで、ボルト4に下端用内装板支持具6を挿通し、ナット5を用いて、覆工面2上に下端用内装板支持具6を固定する。なお、下端用内装板支持具6の下方には、シール部14を形成させておき、後で注入される耐火被覆セメントモルタル12が漏出しないようにしておく。
【0025】
次に、円形状のモルタル注入用孔9を有する矩形の内装板10を用意し、この内装板10の下側の縁部を、下端用内装板支持具6の支持部に嵌合させて支持するとともに、この内装板10の上側の縁部を、中間用内装板支持具7、ボルト4およびナット5を用いて支持し固定する。そして、中間用内装板支持具7の支持部の上側に、新たな内装板10(モルタル注入用孔9を有しないもの)の下側の縁部を嵌合させて支持するとともに、この内装板10の上側の縁部を、中間用内装板支持具7、ボルト3およびナット4を用いて支持し固定する。以後、同様にして、内装板10(モルタル注入用孔9を有しないもの)を順次、上方に連結していく。最後に、上端用内装板支持具8を用いて、最も上方に配置させるべき内装板10を支持し固定すれば、上下方向における全ての内装板10の設置作業が完了する。この時点において、内装板10は、トンネル内壁1の覆工面2に対して、耐火被覆セメントモルタル12を充填するための施工対象空間11を介在させた状態で配設されている。
【0026】
なお、内装板10の下側の縁部または上側の縁部を支持するには、内装板10の安定性を確保するために、少なくとも2つ以上の内装板支持具7(または6,8)が、図1の紙面に垂直な方向に並設される。
また、図1中の各内装板支持具7(または6,8)は、図1の紙面に垂直な方向に所定の幅を有する金属等の材質からなる部材であって、ボルト4を挿通するための挿通孔を有する覆工面当接部と、内装板10を嵌合させるための断面H字状(または断面コの字状)の支持部とを備えている。
【0027】
内装板10は、例えば、基材部10aと表層材部10bとを一体に積層し固着させてなるものとして構成される。
ここで、基材部10aは、例えば、モルタル板、硬質珪酸カルシウム板、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等からなるものである。また、表層材部10bは、自動車の排気ガスや湿気等によって基材部が腐食したり劣化するのを防ぐためのものであり、例えば、セラミック製のタイル等からなるものである。なお、表層材部10bは、トンネル内の照明効率の向上や、車両の安全な通行のための視線誘導等の目的を併せ持つことがある。
【0028】
基材部10aと表層材部10bは、接着剤で接着するか、あるいはビス等の固着具を用いて固着されている。内装板10の寸法は、特に限定されず、例えば、トンネル内壁に施工される従来の内装板と同程度に定められる。
内装板10の上端面および下端面には、内装板支持具7(または6,8)の断面H字状(または断面コの字状)の部分を構成する外側の壁部を嵌合させるための溝部10cが形成されている。溝部10cは、内装板支持具7(または6,8)の最も外側の壁部の形状に合致するように形成されている。
【0029】
所定の施工対象範囲内において、内装板10の設置作業を完了した後、最も下方に位置する内装板10のモルタル注入用孔9に、モルタル供給管13の端部を当接させ、このモルタル注入用孔9を通して、ポンプ(図示せず)によってホース内を圧送されてきた耐火被覆セメントモルタル12を、トンネル内壁1の覆工面2と内装板10との間の施工対象空間11内に注入する。
注入圧(注入孔における最大注入圧)は、好ましくは1.5MPa以下である。
注入開始後、施工対象空間11内に注入された耐火被覆セメントモルタル12の上面は、図1に示すように徐々に上昇していく。この際、内装板10の上下方向の連結箇所の隙間から少量のセメントモルタル12を漏出させることによって、施工対象空間11内の耐火被覆セメントモルタル12の上昇状況を確認することができる。また、注入し易くするための空気口を別途設けてもよい。
注入時の側圧による内装板のたわみを防止するため、必要に応じて、内装板を固定するためのアンカー3の本数を増やしたり、あるいは、トンネルの内部空間の側から、たわみ防止用の仮設枠を組むなどの方策を採ることができる。
【0030】
耐火被覆セメントモルタル12の上面が、最も上方に位置する内装板10の上側の縁部の高さに達した時点で、モルタル注入用孔9からの耐火被覆セメントモルタル12の注入を停止する。そして、耐火被覆セメントモルタル12の上面を覆う形で、シリコーン系材料等からなるシール部15を形成させ、かつ、モルタル供給管13を引き抜いた後の空洞部分にシール部16を形成させれば、図2に示すようなトンネル耐火構造17が完成する。
トンネル耐火構造17は、トンネル内壁1の覆工面2の上に、発泡骨材を含む耐火被覆セメントモルタル12と、内装板10とが、隙間を生じさせることなく、一体的に緻密に積層した形態で形成されているので、強度、耐久性および構造上の安定性に優れ、しかも、高い耐火性能を発揮することができる。
本発明の耐火被覆セメントモルタル12と内装板10とを積層してなるトンネル耐火構造17は、例えば、図3に示すように、トンネル内壁の覆工面2の下端付近から所定の高さまでに亘って部分的に形成される。トンネル耐火構造17の上方の部分(図3中、トンネル内壁の覆工面2と、点線とで囲まれた部分)には、本発明とは異なる他のトンネル耐火構造18(例えば、吹付け施工による耐火被覆層や、乾式の耐火ボード)を形成させることができる。
耐火被覆セメントモルタル層の厚みは、10〜50mmであることが好ましい。また、必要に応じて、この層にメッシュ補強筋を設けてもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
[1.使用材料]
▲1▼普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度:3.2g/cm3)
▲2▼石灰石粉末(有恒興業社製、ブレーン比表面積:4,000cm2/g、密度:2.7g/cm3)
▲3▼高炉スラグ(商品名:エスメント、新日鉄高炉セメント社製、ブレーン比表面積:4,000cm2/g、密度:2.9g/cm3)
▲4▼バーミキュライト(商品名:バーミキュライトファイン、三方商工社製、嵩密度:0.075〜0.11g/cm3、粒径:0.15〜5mm)
▲5▼パーライト(商品名:硬質パーライト3号、太平洋パーライト社製、絶乾密度:1.2g/cm3、粒径:2.5mm以下、FM3.48)
▲6▼マイカ(商品名:マスコバイトマイカC−20、カナダマイカ社製、嵩密度:0.20〜0.30g/cm3、粒径:0.15〜5mm)
▲7▼AE減水剤(エヌエムビー社製、商品名:ポゾリスNo.70)
【0032】
[2.注入用耐火被覆セメントモルタルの調製]
上記の材料を用いて、表1に示すような注入用耐火被覆セメントモルタル組成物(配合No.1〜10)を調製した。
調製した注入用耐火被覆セメントモルタル組成物(配合No.1〜10)に対して、表2に示す水/固体分の質量比となるように所定量の水を添加し、モルタルミキサを用いて3分間混練し、混練物を得た。また、得られた混練物中にAE剤(エヌエムビー社製、商品名:マイクロエア303A)を添加して、混練物中の空気量を、表2に示す量(混練物中の体積割合)に調整し、注入用耐火被覆セメントモルタル;実施例1〜6、比較例1〜9)を得た。
【0033】
[3.注入試験および評価]
▲1▼ 試験方法
注入用耐火被覆セメントモルタル(実施例1〜6、比較例1〜9)の注入試験および評価を、次のようにして行なった。
コンクリート製の模擬覆工体に対し、20mmの施工対象空間(隙間)を隔てて模擬内装板(透明アクリル製、厚さ:20mm)を配置し、アンカーで固定した後、最下部に設けた注入孔(直径:50mm)から施工対象空間内に、モルタルポンプを用いて注入用耐火被覆セメントモルタル(実施例1〜6、比較例1〜9)を注入した。注入は、10リットル/分の吐出速度で高さ2mに達するまで行なった。なお、施工対象空間は、図1に示すように下端をシール部で覆い、上端を開放させた状態とした。
▲2▼ 評価方法
注入用耐火被覆セメントモルタルの材料分離性は、目視で評価した。
注入用耐火被覆セメントモルタルの注入性は、注入孔に設置した隔膜式圧力計による最大注入圧の測定と、透明の模擬内装板越しの目視評価によって行なった。
結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、本発明で規定する粒径、配合割合等の条件を満たす実施例1〜6では、いずれも、注入圧が1.5MPa以下であり、ポンプ等の閉塞や、圧送量の低下がなく、また、セメントモルタルの材料分離等も見られなかった。
これに対し、比較例1、2では、粒径0.15mm以下の粒子の配合割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例3、4では、粒径0.6〜5mmの発泡骨材の配合割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例5では、必要に応じて配合される他の無機質固体分の配合割合が、本発明で規定する範囲よりも大きいため、閉塞が生じるなど、評価結果が劣る。比較例6、7では、空気の体積割合が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。比較例8、9では、水/固体分の質量比が本発明の範囲外であるため、評価結果が劣る。
【0037】
【発明の効果】
本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルは、吸水し易い発泡骨材を含むものの、各固体材料の粒径および配合割合を特定の数値範囲内に限定し、さらに、水量および空気量を特定の数値範囲内に限定しているため、ポンプで圧送しても、ポンプやモルタル注入用孔付近で閉塞を起こしたり、圧送量が減少したり、あるいは材料分離等を生じることがなく、高い流動性および良好な性状を保持したまま、ホース等を介して施工場所に供給し、所定の施工対象空間内に注入することができる。
したがって、本発明の注入用耐火被覆セメントモルタルは、例えば、トンネルの内壁の覆工面と内装板等の板状体の間の施工対象空間内に、円滑かつ効率的に注入して、優れた耐火性能を有する耐火被覆構造を形成させるための材料として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トンネル内壁の覆工面上にトンネル耐火構造を構築するために、覆工面と内装板の間の施工対象空間内に、本発明の耐火被覆セメントモルタルを注入している状態を模式的に示す断面図である。
【図2】トンネル内壁の覆工面上に構築されたトンネル耐火構造を模式的に示す断面図である。
【図3】トンネル耐火構造を有するトンネル全体を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 トンネル内壁
2 覆工面
3 アンカー
4 ボルト
5 ナット
6 下端用内装板支持具
7 中間用内装板支持具
8 上端用内装板支持具
9 モルタル注入用孔
10 内装板
11 施工対象空間
12 注入用耐火被覆セメントモルタル
13 モルタル供給管
14,15,16 シール部
17 トンネル耐火構造
18 他のトンネル耐火構造
Claims (4)
- 水を添加することによってセメントモルタルを調製することのできる注入用耐火被覆セメントモルタル組成物であって、
(A)セメントを含む粒径0.15mm以下の粒子50〜80質量%と、
(B)粒径0.6〜5mmの発泡骨材10〜40質量%と、
(C)必要に応じて配合される他の無機質固体分0〜30質量%と
を含むことを特徴とする注入用耐火被覆セメントモルタル組成物。 - 前記(C)他の無機質固体分として、薄片状粒子を含む請求項1に記載の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物。
- 請求項1又は2に記載の注入用耐火被覆セメントモルタル組成物に、水/固体分の質量比が0.5〜1.2となるように水を添加してなる注入用耐火被覆セメントモルタルであって、該セメントモルタル中の空気の体積割合が30〜60%であることを特徴とする注入用耐火被覆セメントモルタル。
- トンネル内壁の覆工面に対して所定の空間を介在させて配設された板状体と、前記空間内に注入された請求項3に記載の注入用耐火被覆セメントモルタルとが積層されてなる構造を含むことを特徴とするトンネル耐火構造。
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