JP2004224422A - 紙製シームレスカップ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐液体浸透性に優れ、容易かつ安価に製造することができる紙製容器を提供する。
【解決手段】容器胴部材と容器底板部材とを接合させて組み立てられた紙製外側カップの内側にライニングフィルムを真空吸引することにより密着された内側カップがライニングされていることを特徴とする紙製シームレスカップ。
【選択図】 図1
【解決手段】容器胴部材と容器底板部材とを接合させて組み立てられた紙製外側カップの内側にライニングフィルムを真空吸引することにより密着された内側カップがライニングされていることを特徴とする紙製シームレスカップ。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は紙製容器に関する。更に詳細には、本発明はジャム、ヨーグルト、ピーナツクリーム、チョコレートクリーム、酒、ミルク、ジュースなどの半流動性から液体までの高含水率食品を充填し、密封包装することができる耐湿性及び耐油性紙製容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジャム、ヨーグルト、ピーナツクリーム、チョコレートクリーム、酒、ミルク、ジュースなどの半流動性から液体までの高含水率食品を充填し、密封包装するために従来から使用されてきた耐湿性及び耐油性容器としては例えば、プラスチック製容器、金属製(例えば、アルミニウム製又はスチール製)容器又はガラス製容器などの他に、紙製容器などが挙げられる。特に、紙製容器は製造が容易であるばかりか、軽量かつ安価なため一般的に、広く使用されている。
【0003】
図5に示されるように、従来の紙製容器の場合、そのままでは充填される食品などに対して耐液体浸透性及び耐油性が無いので、バリアフィルム54とプラスチックフィルム56がライニングされた原紙13から容器胴部材用ブランク58を打ち抜き、このブランク58を丸めてバリアフィルム54とプラスチックフィルム56のライニング面が内側になるように組み立てることにより容器に耐液体浸透性及び耐油性を付与してきた。しかし、図5に示されるように、バリアフィルム54とプラスチックフィルム56がライニングされた原紙13から打ち抜かれたブランク58の両側縁を重ね合わせてサイドシーム部分60を形成すると、原紙13のカットエッジ62が露出するため、長期間経過すると、このカットエッジ62部分から液体が浸透して容器外へ漏洩してくることがあった。
【0004】
このため、図6(A)に示されるように、ブランク58の一方の側縁部の原紙13の部分をスカイビング加工により段差部分64が形成されるように削り取り、次いで、図6(B)に示されるように、この削り取られた段差部分64の紙面に、削り残したバリアフィルム54/ラミネートフィルム56のライニングを折り返して重ね合わせることにより容器内側に存在するカットエッジをライニングフィルムで被覆していた。このような加工方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
しかし、このスカイビング加工法では、容器胴部材ブランクの一方の側縁部を研削加工したり、研削された紙面上に、削り残されたフィルムを被覆させたりすることが必要となるため、作業性が低下するばかりか、製造コスト高の原因にもなっていた。更に、プラスチックフィルムがラミネートされた原紙から容器胴部材及び底板部材のブランクを打ち抜くため、原紙のカットロス部分が大量に発生し、これらロス部分は再利用する方法がないのでそのまま廃棄物(いわゆるゴミ)として焼却処分せざるを得なかった。
【0006】
また、底板部材と容器胴部材との接合部分に僅かな隙間でも存在すると、この隙間から内容物が漏洩したり、あるいは大気中の雑菌が容器内に侵入し、内容物を汚染又は腐敗させることがあった。
【0007】
別法として、予め製造された非ライニング紙製容器の内側に薄肉のプラスチック容器をブロー成形して二重化するなどの処理が施されてきた。この加工法で製造された紙製容器の場合、耐液体浸透性及び耐油性の点では申し分無いが、成型工程数が多いために、結果的にコスト高になり易いばかりでなく、異物の混入機会が増加する。また、内容物に対して過剰な包装である印象を持ち易く、ゴミの処理問題からの分別にも手間取るなどの欠点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭56−106856号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐液体浸透性に優れ、容易かつ安価に製造することができる紙製容器を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、予め製造された紙製容器の内側に、ライニングフィルムを真空吸引して、容器内壁面全体をライニングフィルムでシームレスライニングすることにより解決される。
【0011】
本発明の或る実施態様では、予め製造された紙製容器の底板部材は容器胴部材の下部に間欠的に接合され、底板部材と容器胴部材との非接合部分を介して真空吸引を行うことによりライニングフィルムを迅速に容器内壁面全体に密着させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の紙製シームレスカップ及びその製造方法について具体的に説明する。
【0013】
図1(A)は本発明による紙製シームレスカップ1の一例の断面図である。容器胴部材3と底板部材5とから構成される紙製外側カップ7の内面にライニングフィルム9からなる内側カップ11が密着され、紙製シームレスカップ1が形成されている。紙製外側カップ7において、容器胴部材3と底板部材5とは、部分的に接合されている。すなわち、容器胴部材3と底板部材5との接合面には非接合部分6が複数個設けられている。この非接合部分6を設ける理由は下記で詳細に説明する。
【0014】
図1(B)は図1(A)において点線で囲まれた(B)部分の容器胴部3の部分拡大断面図である。図示されているように、容器胴部3は原紙13の外面側に所要の印刷がなされることにより形成された印刷層15が存在し、この印刷層上に、該印刷層を保護すると共に、容器の外側における耐湿性を高めるための熱可塑性合成樹脂フィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートなど)層17がラミネートされている。熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さは一般的に、10μm〜70μmの範囲内である。熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さが10μm未満ではフィルムにピンホールなどが発生し、耐湿性向上効果が期待できない。一方、熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さが70μm超の場合、耐湿性向上効果が飽和し、不経済となるだけである。
【0015】
容器胴部3の内側(すなわち、紙製外側カップ7の内面全体)に密着されるライニングフィルム9は例えば、3層構造のフィルムであり、原紙13側がEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)の内側層19、中間がEVOH(エチレン・ビニルアルコール)層21、外側がPE(ポリエチレン)層23である。原紙13側の内側層19は、ライニングフィルム9を紙製外側カップ7の内面全体に均一に密着させることを助けるための接着剤層として機能する。このような目的に好適な接着剤層は例えば、前記EVAの他に、EMA(アクリル酸メチル)、EMAA(ケタクリル酸)及びEMMA(メタクリル酸メチル)などが挙げられる。この接着剤層は80℃程度の比較的低い温度で軟化するものであることが好ましいが、あまり低すぎるとタックしてしまうので好ましくない。中間層21は、酸素や細菌などを不透過性にする目的で使用される。このような目的に好適な中間層21は前記のEVOHの他に、PET(A−PET)などが挙げられる。外側層23は容器内容物と直接接触する層であり、耐湿性、耐水性、耐油性、耐液体浸透性等の他に、充填される食品類などに対して安全性であることが求められる。このような目的に好適な外側層23は前記のPEの他に、PP等が挙げられる。
【0016】
ライニングフィルム9の厚さは、このフィルムがライニングされる紙製外側カップ7の大きさに応じて適宜選択される。一般的に、ライニングフィルム9の厚さは50μm〜200μmの範囲内であることができる。ライニングフィルム9の厚さが50μm未満の場合、ピンホールなどが発生する危険がある。一方、ライニングフィルム9の厚さが200μm超の場合、フィルムを外側カップ7の内面に真空吸引することが困難になる。一般的に、150μm〜200μmの範囲内の厚さであることが好ましい。前記3層構造のフィルムの場合、内側層19,中間層21及び外側層23の各層の厚さは例えば、4:2:4の比率であることができる。これ以外の比率であることもできる。また、言うまでもなく、単層構造、2層構造又は4層構造などのライニングフィルムなども使用できる。
【0017】
本発明の紙製シームレスカップにおいて使用するライニングフィルム9は、60℃〜80℃程度の軟化点を有し、30%〜50%程度の伸び率を有することが好ましい。軟化温度が高すぎたり、及び/又は、伸び率が低いライニングフィルムは紙製外側カップ7の内面全体に均一に密着させることが困難となる。ライニングフィルム9は、前記の軟化点及び伸び率などの特性の他に、例えば、ドローダウン適性に優れていること(例えば、成型幅及びピッチなどの点で)及び真空成型した際にカップ内面に接着し得るものであることなどを考慮して適宜選択することができる。
【0018】
本発明の紙製シームレスカップ1では、容器内に液状又は半液状食品などが充填された後、容器口縁部25の上面に蓋(図示されていない)をヒートシールなどの公知慣用の手段で接着して密封するので、図1(A)に示されるように、容器口縁部25は上面が平坦状であることが好ましい。しかし、口縁部の形状は図示された形状だけに限定されることはなく、 図1(C)及び図1(D)に示されるような形状に成形することもできる。言うまでもなく、その他の任意の形状をとることもできる。紙製外側カップ7のサイズも限定されない。しかし、あまり深すぎる紙製外側カップ7では、カップ内側にライニングフィルムを真空吸引で密着させることが困難になるので好ましくない。本発明で使用するのに好適な紙製外側カップ7は開口部直径が一般的に、30mm〜300mmの範囲内であり、深さが30mm〜300mmの範囲内であることが好ましい。但し、展開倍率として、開口部面積:(胴部+底部)の比が1:4以内であることが好ましい。
【0019】
図2は本発明の紙製シームレスカップの製造工程の一例を説明する概念図である。先ず、第1工程(1)で原紙13を供給し、第2工程(2)で、容器外面側となるべき面に、必要に応じて印刷層15を設け、その後、該印刷層面上に耐水性の熱可塑性合成樹脂フィルム(例えばポリエチレンフィルムなど)17をラミネートする。その後、第3工程(3)で、この原紙をスリット加工して容器胴部材及び底板部材となるべきパーツを切り出し、第4工程(4)で、両部材を結合させて外カップとなるべき紙製容器7を予め製造し、製造された外側カップ7を真空成型装置に適宜供給する。次いで、第5工程(5)で、内側カップとなるべきライニングフィルム9を繰り出し、真空成型装置27に送る。真空成型装置27内には外側カップとなるべき紙製容器7が既に搬入されているので、第6工程(6)において、この紙製容器7の開口部上にライニングフィルム9を被せ、真空吸引して、紙製容器7の内側にライニングフィルム9を密着させ内側カップ11を形成する。その後、第7工程(7)で、このライニングフィルム9と一体化された紙製容器7を真空成型装置27から外に搬出し、第8工程(8)において、カッター29でライニングフィルム9から紙製容器7を切り離し、口縁部25の周囲のライニングフィルムカット残片を整形仕上げし、紙製シームレスカップ1を完成する。その後、第9工程(9)で、ライニングフィルムのカットウエスを巻き取り、一連の作業を完了する。
【0020】
図3は図2に示された第6工程における真空成型装置27の内部で行われる処理を示す概要図である。図2の第5工程(5)で、繰り出されたライニングフィルム9が真空成型装置27に入ると、図3(A)に示されるように、フィルム9を所定の長さに維持するために、両端をフィルムクランプフレーム31で把持し、その把持状態のまま、加熱ゾーン33内でフィルム9を加熱軟化させる。加熱ゾーン33における加熱温度は使用されるライニングフィルムの軟化点や伸び率などの特性に応じて適宜選択することができる。一例として、ライニングフィルムを150℃〜200℃、好ましくは165℃〜170℃に加熱する。加熱ゾーン33における加熱手段としては、温風、電熱線、電熱ランプ、マイクロ波など公知慣用の加熱手段ならば全て使用できる。加熱ゾーン33における加熱時間は、加熱温度を考慮して適宜決定することができる。一例として、5秒間〜1分間の範囲内であることができる。
【0021】
図3(B)に示されるように、ライニングフィルム9が加熱軟化されたら、フィルムクランプフレーム31で把持したまま、真空チャンバ35内に移動させる。真空チャンバ35は、昇降可能に構成されたプラグ37が配設された上部部材39と、外側カップ7が収納される金型41が配設された下部部材43とからなる。金型41の下部は真空排気手段45に接続されている。
【0022】
次いで、図3(C)に示されるように、金型41内の外側カップ7の開口部上にライニングフィルム9が被せられたら、上部部材39を下降させ、下部部材43に当接させ、真空チャンバ35を密閉する。その後、真空排気手段45を駆動させ、外側カップ7とライニングフィルム9との間の空気を、容器胴部材と底板部材との非接合部分(図1の符号6参照)の隙間を介して徐々に排気し、負圧状態を形成することによりライニングフィルム9を外側カップ7の内側に真空吸引する。また、このライニングフィルム9の真空吸引を助けるために、上部部材39のプラグ37をライニングフィルム9に接触させながらカップ内に徐々に下降させる。吸引速度、吸引時間及びプラグ37の下降速度は、ライニングされるライニングフィルム9の厚さの均一性が保たれるように適宜調整することができる。
【0023】
真空チャンバ35内の金型41は少なくとも1個あればよい。しかし、真空チャンバ35内に10個〜1000個の金型41を配設して大量生産を実現することもできる。また、ライニングフィルム9の加熱手段を真空チャンバ35内に設け、加熱ゾーン33を兼ねることもできる。
【0024】
図4は、外側カップ7とライニングフィルム9との間の閉塞空間47内の空気を、容器胴部材3と底板部材5との非接合部分6の隙間49を介して排気する状態を説明する部分拡大断面図である。外側カップ7を金型41内に収納し、外側カップ7の開口部上にライニングフイルム9を被せると、外側カップ7の内側はライニングフィルム9により閉塞される。この閉塞空間47内の空気は、点線で示されるように、胴部材3と底板部材5との間の非接合部分6の隙間49を介して真空排気手段45により外部に排出させることができる。その結果、閉塞空間47内の圧力が負圧となり、加熱軟化ライニングフィルムは真空吸引され、外側カップ7の内壁面に密着され、図1に示されるような紙製シームレスカップ1が完成される。胴部材3と底板部材5との間の非接合部分6は、例えば、胴部材3の下端折曲部分を型押しして隆起させ、容器内部と連通する孔を設けるか、又は容器胴部材と底板部材とを接着させる際、例えば、底板部材を容器胴部材に部分的に接着させることにより両部材間に非接着部分を設けることによっても前記非接合部分6を形成することができる。
【0025】
ライニングフィルム9の真空吸引と外側カップ7の内壁面への密着を助けるために使用されるプラグ37は、図4に示されるように、周縁部50が隆起し、中央部52が凹陥する、いわゆる“カルデラ”形であることが好ましい。これはプラグ37とライニングフィルム9との接触面積を出来るだけ少なくするためである。特に、プラグ37の中央部が凹陥しているため、加熱軟化されたライニングフィルム9がプラグ37により冷やされることが効果的に防止され、加熱軟化ライニングフィルム9を伸びたままの状態に維持することができる。また、隆起周縁部50も半球状に形成されているため、ライニングフィルム9との接触面積は最小に保たれる。そのため、プラグ37の隆起周縁部50がライニングフィルム9に接触しながら下降する際、外側カップ7の容器底部内周縁寄りのライニングフィルム9を十分に延伸させることができる。プラグ37の素材は特に限定されないが、ライニングフィルム9と接触しても、その熱を出来るだけ奪わないような低伝熱性の素材であることが好ましい。例えば、プラグ37は耐熱性プラスチックなどから構成することができる。別法として、プラグ37を例えば、アルミニウムなどの軽合金から構成し、その外面に布(例えば、木綿、絹、羊毛又はネル)などの被覆を施して使用することもできる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明の紙製シームレスカップの製造例を具体的に説明する。
【0027】
実施例1
新富士製紙から市販されている坪量270g/m2のコート紙に予め印刷を施し、印刷面に対して低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを押し出しラミネート加工した原反を使用し、一般的な紙カップ成型機で成型を行った。
この時使用したボトム(底板部材)原紙は、大昭和製紙から市販されている坪量180g/m2の一般紙に低密度ポリエチレン(LDPE)を20μm片面(カップ成型後に外面側となる面)に対して押し出しラミネート加工を施した原紙を使用した。
この時、成型機のヒーター温度は、通常カップ成型を行う条件とほぼ同様の、およそ300℃〜400℃に設定して成型を行った。
トップカール加工について、通常は同一成型機中で一連の流れで行うが、本発明のシームレスカップでは、トップカール前にカップ成型機よりエアー搬送で取り出した。
上記工程で成型された紙カップを真空成型機テスト金型に整然と配列し、LDPE:EVOH:EMAAが4:2:4の厚さ比率で構成される200μmの厚さを有するラミネートフィルムを170℃に加熱し、真空成型を行った。
この時、真空成型が終了したカップと成型に使用されなかったスクラップフィルムを切り離す目的で、カップフランジ外周部より1mm外周部をトムソン刃で切断した。
真空成型が終了したカップは、手動成型機を用いてトップカール加工を施した。
【0028】
比較例1
新富士製紙から市販されている坪量270g/m2のコート紙に予め印刷を施し、この原紙をスリットし、スリット原紙の一方の面にバリアフィルムを積層し、このバリアフィルム上にLDPE:EVOH:EMAAが4:2:4の厚さ比率で構成される200μmの厚さを有するラミネートフィルムを積層し、更に、他方の面(印刷面)に対して低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを押し出しラミネート加工した。この原紙から容器胴部材を切り出し、切り出した容器胴部材の一方の直線状周縁部を、低密度ポリエチレン(LDPE)積層面側からスカイビング加工し、このスカイビング加工部を折り曲げてカットエッジを遮蔽し、一般的な紙カップ成型機で容器胴部材と底板部材とを一体化させて紙カップを成型した。
この時使用したボトム(底板部材)原紙は、大昭和製紙から市販されている坪量180g/m2の一般紙に低密度ポリエチレン(LDPE)を20μm片面(カップ成型後に外面側となる面)に対して押し出しラミネート加工を施した原紙を使用した。
この時、成型機のヒーター温度は、通常カップ成型を行う条件とほぼ同様の、およそ300℃〜400℃に設定して成型を行った。また、トップカール加工は、同一成型機中で一連の流れで行った。
【0029】
前記実施例1における本発明のシームレスカップと比較例1におけるスカイビングカップとは同じ内容量であった。この場合、本発明の実施例の容器胴部材用ブランクの面積は167.6cm2であるのに対して、比較例の容器胴部材用ブランクの面積は170.2cm2である。従って、比較例の容器胴部材用ブランクの面積の方が2.6cm2大きい。このため、1000個当たりでは面積差は2600cm2に増大し、比較例のスカイビングカップの方が原紙コストが圧倒的に高くなる。
【0030】
前記実施例1及び比較例1でそれぞれ製造された各カップについて、カップ重量、カップ剛度、封緘強度、ピール強度、酸素透過度を測定した。なお、カップ重量、カップ剛度、封緘強度、ピール強度、酸素透過度は紙カップについて一般的に使用されている公知慣用の方法に従って測定した。このような測定方法は当業者に周知である。測定結果を下記の表1に要約して示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示された結果から明らかなように、本発明のシームレスカップは従来のスカイビングカップに比べて、カップ重量、剛度及び酸素透過度の点で優れており、ピール強度及び封緘強度の点ではほぼ同等の性能を有する。
【0033】
本発明の紙製シームレスカップ1は液状又は半液状食品の密封充填包装用容器として使用することもできるし、また、そのまま電子レンジにかけて、容器内容物をそのままマイクロ波加熱することもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、予め製造された紙製容器の内側に、ライニングフィルムを真空吸引して、容器内壁面全体をライニングフィルムでシームレスライニングすることにより、耐液体浸透性に優れた紙製シームレスカップを容易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の紙製シームレスカップの一例の概要断面図であり、(B)は(A)に示されたカップの(B)部分の部分拡大断面図である。
【図2】本発明の紙製シームレスカップの製造工程の一例を説明する概念図である。
【図3】図2に示された第6工程における真空成型装置27の内部で行われる処理を示す概要図である。
【図4】外側カップ7とライニングフィルム9との間の閉塞空間47内の空気を、容器胴部材3と底板部材5との非接合部分6の隙間49を介して排気する状態を説明する部分拡大断面図である。
【図5】従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の部分拡大断面図である。
【図6】(A)は図5に示された従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の露出カットエッジを被覆するために容器胴部材ブランクの一方の側縁部をスカイビング加工した状態を示す部分拡大断面図であり、(B)はカットエッジを被覆して形成された従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 本発明の紙製シームレスカップ
3 容器胴部材
5 容器底板部材
6 非接合部
7 外側カップ
9 ライニングフィルム
11 内側カップ
13 原紙
15 印刷層
17 熱可塑性合成樹脂フィルム
19 内側層
21 中間層
23 外側層
25 口縁部
27 真空成型装置
29 カッター
31 フィルムクランプフレーム
33 加熱ゾーン
35 真空チャンバ
37 プラグ
39 上部部材
41 金型
43 下部部材
45 排気手段
47 閉塞空間
49 容器胴部材と底板部材との非接合部分の隙間
50 プラグの半球状隆起部分
52 プラグの凹陥部分
54 バリアフィルム
56 防水フィルム
58 容器胴部材用ブランク
60 サイドシーム
62 カットエッジ
64 段差部
【発明の属する技術分野】
本発明は紙製容器に関する。更に詳細には、本発明はジャム、ヨーグルト、ピーナツクリーム、チョコレートクリーム、酒、ミルク、ジュースなどの半流動性から液体までの高含水率食品を充填し、密封包装することができる耐湿性及び耐油性紙製容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジャム、ヨーグルト、ピーナツクリーム、チョコレートクリーム、酒、ミルク、ジュースなどの半流動性から液体までの高含水率食品を充填し、密封包装するために従来から使用されてきた耐湿性及び耐油性容器としては例えば、プラスチック製容器、金属製(例えば、アルミニウム製又はスチール製)容器又はガラス製容器などの他に、紙製容器などが挙げられる。特に、紙製容器は製造が容易であるばかりか、軽量かつ安価なため一般的に、広く使用されている。
【0003】
図5に示されるように、従来の紙製容器の場合、そのままでは充填される食品などに対して耐液体浸透性及び耐油性が無いので、バリアフィルム54とプラスチックフィルム56がライニングされた原紙13から容器胴部材用ブランク58を打ち抜き、このブランク58を丸めてバリアフィルム54とプラスチックフィルム56のライニング面が内側になるように組み立てることにより容器に耐液体浸透性及び耐油性を付与してきた。しかし、図5に示されるように、バリアフィルム54とプラスチックフィルム56がライニングされた原紙13から打ち抜かれたブランク58の両側縁を重ね合わせてサイドシーム部分60を形成すると、原紙13のカットエッジ62が露出するため、長期間経過すると、このカットエッジ62部分から液体が浸透して容器外へ漏洩してくることがあった。
【0004】
このため、図6(A)に示されるように、ブランク58の一方の側縁部の原紙13の部分をスカイビング加工により段差部分64が形成されるように削り取り、次いで、図6(B)に示されるように、この削り取られた段差部分64の紙面に、削り残したバリアフィルム54/ラミネートフィルム56のライニングを折り返して重ね合わせることにより容器内側に存在するカットエッジをライニングフィルムで被覆していた。このような加工方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
しかし、このスカイビング加工法では、容器胴部材ブランクの一方の側縁部を研削加工したり、研削された紙面上に、削り残されたフィルムを被覆させたりすることが必要となるため、作業性が低下するばかりか、製造コスト高の原因にもなっていた。更に、プラスチックフィルムがラミネートされた原紙から容器胴部材及び底板部材のブランクを打ち抜くため、原紙のカットロス部分が大量に発生し、これらロス部分は再利用する方法がないのでそのまま廃棄物(いわゆるゴミ)として焼却処分せざるを得なかった。
【0006】
また、底板部材と容器胴部材との接合部分に僅かな隙間でも存在すると、この隙間から内容物が漏洩したり、あるいは大気中の雑菌が容器内に侵入し、内容物を汚染又は腐敗させることがあった。
【0007】
別法として、予め製造された非ライニング紙製容器の内側に薄肉のプラスチック容器をブロー成形して二重化するなどの処理が施されてきた。この加工法で製造された紙製容器の場合、耐液体浸透性及び耐油性の点では申し分無いが、成型工程数が多いために、結果的にコスト高になり易いばかりでなく、異物の混入機会が増加する。また、内容物に対して過剰な包装である印象を持ち易く、ゴミの処理問題からの分別にも手間取るなどの欠点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭56−106856号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐液体浸透性に優れ、容易かつ安価に製造することができる紙製容器を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、予め製造された紙製容器の内側に、ライニングフィルムを真空吸引して、容器内壁面全体をライニングフィルムでシームレスライニングすることにより解決される。
【0011】
本発明の或る実施態様では、予め製造された紙製容器の底板部材は容器胴部材の下部に間欠的に接合され、底板部材と容器胴部材との非接合部分を介して真空吸引を行うことによりライニングフィルムを迅速に容器内壁面全体に密着させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の紙製シームレスカップ及びその製造方法について具体的に説明する。
【0013】
図1(A)は本発明による紙製シームレスカップ1の一例の断面図である。容器胴部材3と底板部材5とから構成される紙製外側カップ7の内面にライニングフィルム9からなる内側カップ11が密着され、紙製シームレスカップ1が形成されている。紙製外側カップ7において、容器胴部材3と底板部材5とは、部分的に接合されている。すなわち、容器胴部材3と底板部材5との接合面には非接合部分6が複数個設けられている。この非接合部分6を設ける理由は下記で詳細に説明する。
【0014】
図1(B)は図1(A)において点線で囲まれた(B)部分の容器胴部3の部分拡大断面図である。図示されているように、容器胴部3は原紙13の外面側に所要の印刷がなされることにより形成された印刷層15が存在し、この印刷層上に、該印刷層を保護すると共に、容器の外側における耐湿性を高めるための熱可塑性合成樹脂フィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートなど)層17がラミネートされている。熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さは一般的に、10μm〜70μmの範囲内である。熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さが10μm未満ではフィルムにピンホールなどが発生し、耐湿性向上効果が期待できない。一方、熱可塑性合成樹脂フィルム層17の厚さが70μm超の場合、耐湿性向上効果が飽和し、不経済となるだけである。
【0015】
容器胴部3の内側(すなわち、紙製外側カップ7の内面全体)に密着されるライニングフィルム9は例えば、3層構造のフィルムであり、原紙13側がEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)の内側層19、中間がEVOH(エチレン・ビニルアルコール)層21、外側がPE(ポリエチレン)層23である。原紙13側の内側層19は、ライニングフィルム9を紙製外側カップ7の内面全体に均一に密着させることを助けるための接着剤層として機能する。このような目的に好適な接着剤層は例えば、前記EVAの他に、EMA(アクリル酸メチル)、EMAA(ケタクリル酸)及びEMMA(メタクリル酸メチル)などが挙げられる。この接着剤層は80℃程度の比較的低い温度で軟化するものであることが好ましいが、あまり低すぎるとタックしてしまうので好ましくない。中間層21は、酸素や細菌などを不透過性にする目的で使用される。このような目的に好適な中間層21は前記のEVOHの他に、PET(A−PET)などが挙げられる。外側層23は容器内容物と直接接触する層であり、耐湿性、耐水性、耐油性、耐液体浸透性等の他に、充填される食品類などに対して安全性であることが求められる。このような目的に好適な外側層23は前記のPEの他に、PP等が挙げられる。
【0016】
ライニングフィルム9の厚さは、このフィルムがライニングされる紙製外側カップ7の大きさに応じて適宜選択される。一般的に、ライニングフィルム9の厚さは50μm〜200μmの範囲内であることができる。ライニングフィルム9の厚さが50μm未満の場合、ピンホールなどが発生する危険がある。一方、ライニングフィルム9の厚さが200μm超の場合、フィルムを外側カップ7の内面に真空吸引することが困難になる。一般的に、150μm〜200μmの範囲内の厚さであることが好ましい。前記3層構造のフィルムの場合、内側層19,中間層21及び外側層23の各層の厚さは例えば、4:2:4の比率であることができる。これ以外の比率であることもできる。また、言うまでもなく、単層構造、2層構造又は4層構造などのライニングフィルムなども使用できる。
【0017】
本発明の紙製シームレスカップにおいて使用するライニングフィルム9は、60℃〜80℃程度の軟化点を有し、30%〜50%程度の伸び率を有することが好ましい。軟化温度が高すぎたり、及び/又は、伸び率が低いライニングフィルムは紙製外側カップ7の内面全体に均一に密着させることが困難となる。ライニングフィルム9は、前記の軟化点及び伸び率などの特性の他に、例えば、ドローダウン適性に優れていること(例えば、成型幅及びピッチなどの点で)及び真空成型した際にカップ内面に接着し得るものであることなどを考慮して適宜選択することができる。
【0018】
本発明の紙製シームレスカップ1では、容器内に液状又は半液状食品などが充填された後、容器口縁部25の上面に蓋(図示されていない)をヒートシールなどの公知慣用の手段で接着して密封するので、図1(A)に示されるように、容器口縁部25は上面が平坦状であることが好ましい。しかし、口縁部の形状は図示された形状だけに限定されることはなく、 図1(C)及び図1(D)に示されるような形状に成形することもできる。言うまでもなく、その他の任意の形状をとることもできる。紙製外側カップ7のサイズも限定されない。しかし、あまり深すぎる紙製外側カップ7では、カップ内側にライニングフィルムを真空吸引で密着させることが困難になるので好ましくない。本発明で使用するのに好適な紙製外側カップ7は開口部直径が一般的に、30mm〜300mmの範囲内であり、深さが30mm〜300mmの範囲内であることが好ましい。但し、展開倍率として、開口部面積:(胴部+底部)の比が1:4以内であることが好ましい。
【0019】
図2は本発明の紙製シームレスカップの製造工程の一例を説明する概念図である。先ず、第1工程(1)で原紙13を供給し、第2工程(2)で、容器外面側となるべき面に、必要に応じて印刷層15を設け、その後、該印刷層面上に耐水性の熱可塑性合成樹脂フィルム(例えばポリエチレンフィルムなど)17をラミネートする。その後、第3工程(3)で、この原紙をスリット加工して容器胴部材及び底板部材となるべきパーツを切り出し、第4工程(4)で、両部材を結合させて外カップとなるべき紙製容器7を予め製造し、製造された外側カップ7を真空成型装置に適宜供給する。次いで、第5工程(5)で、内側カップとなるべきライニングフィルム9を繰り出し、真空成型装置27に送る。真空成型装置27内には外側カップとなるべき紙製容器7が既に搬入されているので、第6工程(6)において、この紙製容器7の開口部上にライニングフィルム9を被せ、真空吸引して、紙製容器7の内側にライニングフィルム9を密着させ内側カップ11を形成する。その後、第7工程(7)で、このライニングフィルム9と一体化された紙製容器7を真空成型装置27から外に搬出し、第8工程(8)において、カッター29でライニングフィルム9から紙製容器7を切り離し、口縁部25の周囲のライニングフィルムカット残片を整形仕上げし、紙製シームレスカップ1を完成する。その後、第9工程(9)で、ライニングフィルムのカットウエスを巻き取り、一連の作業を完了する。
【0020】
図3は図2に示された第6工程における真空成型装置27の内部で行われる処理を示す概要図である。図2の第5工程(5)で、繰り出されたライニングフィルム9が真空成型装置27に入ると、図3(A)に示されるように、フィルム9を所定の長さに維持するために、両端をフィルムクランプフレーム31で把持し、その把持状態のまま、加熱ゾーン33内でフィルム9を加熱軟化させる。加熱ゾーン33における加熱温度は使用されるライニングフィルムの軟化点や伸び率などの特性に応じて適宜選択することができる。一例として、ライニングフィルムを150℃〜200℃、好ましくは165℃〜170℃に加熱する。加熱ゾーン33における加熱手段としては、温風、電熱線、電熱ランプ、マイクロ波など公知慣用の加熱手段ならば全て使用できる。加熱ゾーン33における加熱時間は、加熱温度を考慮して適宜決定することができる。一例として、5秒間〜1分間の範囲内であることができる。
【0021】
図3(B)に示されるように、ライニングフィルム9が加熱軟化されたら、フィルムクランプフレーム31で把持したまま、真空チャンバ35内に移動させる。真空チャンバ35は、昇降可能に構成されたプラグ37が配設された上部部材39と、外側カップ7が収納される金型41が配設された下部部材43とからなる。金型41の下部は真空排気手段45に接続されている。
【0022】
次いで、図3(C)に示されるように、金型41内の外側カップ7の開口部上にライニングフィルム9が被せられたら、上部部材39を下降させ、下部部材43に当接させ、真空チャンバ35を密閉する。その後、真空排気手段45を駆動させ、外側カップ7とライニングフィルム9との間の空気を、容器胴部材と底板部材との非接合部分(図1の符号6参照)の隙間を介して徐々に排気し、負圧状態を形成することによりライニングフィルム9を外側カップ7の内側に真空吸引する。また、このライニングフィルム9の真空吸引を助けるために、上部部材39のプラグ37をライニングフィルム9に接触させながらカップ内に徐々に下降させる。吸引速度、吸引時間及びプラグ37の下降速度は、ライニングされるライニングフィルム9の厚さの均一性が保たれるように適宜調整することができる。
【0023】
真空チャンバ35内の金型41は少なくとも1個あればよい。しかし、真空チャンバ35内に10個〜1000個の金型41を配設して大量生産を実現することもできる。また、ライニングフィルム9の加熱手段を真空チャンバ35内に設け、加熱ゾーン33を兼ねることもできる。
【0024】
図4は、外側カップ7とライニングフィルム9との間の閉塞空間47内の空気を、容器胴部材3と底板部材5との非接合部分6の隙間49を介して排気する状態を説明する部分拡大断面図である。外側カップ7を金型41内に収納し、外側カップ7の開口部上にライニングフイルム9を被せると、外側カップ7の内側はライニングフィルム9により閉塞される。この閉塞空間47内の空気は、点線で示されるように、胴部材3と底板部材5との間の非接合部分6の隙間49を介して真空排気手段45により外部に排出させることができる。その結果、閉塞空間47内の圧力が負圧となり、加熱軟化ライニングフィルムは真空吸引され、外側カップ7の内壁面に密着され、図1に示されるような紙製シームレスカップ1が完成される。胴部材3と底板部材5との間の非接合部分6は、例えば、胴部材3の下端折曲部分を型押しして隆起させ、容器内部と連通する孔を設けるか、又は容器胴部材と底板部材とを接着させる際、例えば、底板部材を容器胴部材に部分的に接着させることにより両部材間に非接着部分を設けることによっても前記非接合部分6を形成することができる。
【0025】
ライニングフィルム9の真空吸引と外側カップ7の内壁面への密着を助けるために使用されるプラグ37は、図4に示されるように、周縁部50が隆起し、中央部52が凹陥する、いわゆる“カルデラ”形であることが好ましい。これはプラグ37とライニングフィルム9との接触面積を出来るだけ少なくするためである。特に、プラグ37の中央部が凹陥しているため、加熱軟化されたライニングフィルム9がプラグ37により冷やされることが効果的に防止され、加熱軟化ライニングフィルム9を伸びたままの状態に維持することができる。また、隆起周縁部50も半球状に形成されているため、ライニングフィルム9との接触面積は最小に保たれる。そのため、プラグ37の隆起周縁部50がライニングフィルム9に接触しながら下降する際、外側カップ7の容器底部内周縁寄りのライニングフィルム9を十分に延伸させることができる。プラグ37の素材は特に限定されないが、ライニングフィルム9と接触しても、その熱を出来るだけ奪わないような低伝熱性の素材であることが好ましい。例えば、プラグ37は耐熱性プラスチックなどから構成することができる。別法として、プラグ37を例えば、アルミニウムなどの軽合金から構成し、その外面に布(例えば、木綿、絹、羊毛又はネル)などの被覆を施して使用することもできる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明の紙製シームレスカップの製造例を具体的に説明する。
【0027】
実施例1
新富士製紙から市販されている坪量270g/m2のコート紙に予め印刷を施し、印刷面に対して低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを押し出しラミネート加工した原反を使用し、一般的な紙カップ成型機で成型を行った。
この時使用したボトム(底板部材)原紙は、大昭和製紙から市販されている坪量180g/m2の一般紙に低密度ポリエチレン(LDPE)を20μm片面(カップ成型後に外面側となる面)に対して押し出しラミネート加工を施した原紙を使用した。
この時、成型機のヒーター温度は、通常カップ成型を行う条件とほぼ同様の、およそ300℃〜400℃に設定して成型を行った。
トップカール加工について、通常は同一成型機中で一連の流れで行うが、本発明のシームレスカップでは、トップカール前にカップ成型機よりエアー搬送で取り出した。
上記工程で成型された紙カップを真空成型機テスト金型に整然と配列し、LDPE:EVOH:EMAAが4:2:4の厚さ比率で構成される200μmの厚さを有するラミネートフィルムを170℃に加熱し、真空成型を行った。
この時、真空成型が終了したカップと成型に使用されなかったスクラップフィルムを切り離す目的で、カップフランジ外周部より1mm外周部をトムソン刃で切断した。
真空成型が終了したカップは、手動成型機を用いてトップカール加工を施した。
【0028】
比較例1
新富士製紙から市販されている坪量270g/m2のコート紙に予め印刷を施し、この原紙をスリットし、スリット原紙の一方の面にバリアフィルムを積層し、このバリアフィルム上にLDPE:EVOH:EMAAが4:2:4の厚さ比率で構成される200μmの厚さを有するラミネートフィルムを積層し、更に、他方の面(印刷面)に対して低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを押し出しラミネート加工した。この原紙から容器胴部材を切り出し、切り出した容器胴部材の一方の直線状周縁部を、低密度ポリエチレン(LDPE)積層面側からスカイビング加工し、このスカイビング加工部を折り曲げてカットエッジを遮蔽し、一般的な紙カップ成型機で容器胴部材と底板部材とを一体化させて紙カップを成型した。
この時使用したボトム(底板部材)原紙は、大昭和製紙から市販されている坪量180g/m2の一般紙に低密度ポリエチレン(LDPE)を20μm片面(カップ成型後に外面側となる面)に対して押し出しラミネート加工を施した原紙を使用した。
この時、成型機のヒーター温度は、通常カップ成型を行う条件とほぼ同様の、およそ300℃〜400℃に設定して成型を行った。また、トップカール加工は、同一成型機中で一連の流れで行った。
【0029】
前記実施例1における本発明のシームレスカップと比較例1におけるスカイビングカップとは同じ内容量であった。この場合、本発明の実施例の容器胴部材用ブランクの面積は167.6cm2であるのに対して、比較例の容器胴部材用ブランクの面積は170.2cm2である。従って、比較例の容器胴部材用ブランクの面積の方が2.6cm2大きい。このため、1000個当たりでは面積差は2600cm2に増大し、比較例のスカイビングカップの方が原紙コストが圧倒的に高くなる。
【0030】
前記実施例1及び比較例1でそれぞれ製造された各カップについて、カップ重量、カップ剛度、封緘強度、ピール強度、酸素透過度を測定した。なお、カップ重量、カップ剛度、封緘強度、ピール強度、酸素透過度は紙カップについて一般的に使用されている公知慣用の方法に従って測定した。このような測定方法は当業者に周知である。測定結果を下記の表1に要約して示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示された結果から明らかなように、本発明のシームレスカップは従来のスカイビングカップに比べて、カップ重量、剛度及び酸素透過度の点で優れており、ピール強度及び封緘強度の点ではほぼ同等の性能を有する。
【0033】
本発明の紙製シームレスカップ1は液状又は半液状食品の密封充填包装用容器として使用することもできるし、また、そのまま電子レンジにかけて、容器内容物をそのままマイクロ波加熱することもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、予め製造された紙製容器の内側に、ライニングフィルムを真空吸引して、容器内壁面全体をライニングフィルムでシームレスライニングすることにより、耐液体浸透性に優れた紙製シームレスカップを容易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の紙製シームレスカップの一例の概要断面図であり、(B)は(A)に示されたカップの(B)部分の部分拡大断面図である。
【図2】本発明の紙製シームレスカップの製造工程の一例を説明する概念図である。
【図3】図2に示された第6工程における真空成型装置27の内部で行われる処理を示す概要図である。
【図4】外側カップ7とライニングフィルム9との間の閉塞空間47内の空気を、容器胴部材3と底板部材5との非接合部分6の隙間49を介して排気する状態を説明する部分拡大断面図である。
【図5】従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の部分拡大断面図である。
【図6】(A)は図5に示された従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の露出カットエッジを被覆するために容器胴部材ブランクの一方の側縁部をスカイビング加工した状態を示す部分拡大断面図であり、(B)はカットエッジを被覆して形成された従来の紙製容器の容器胴部材のサイドシーム部分の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 本発明の紙製シームレスカップ
3 容器胴部材
5 容器底板部材
6 非接合部
7 外側カップ
9 ライニングフィルム
11 内側カップ
13 原紙
15 印刷層
17 熱可塑性合成樹脂フィルム
19 内側層
21 中間層
23 外側層
25 口縁部
27 真空成型装置
29 カッター
31 フィルムクランプフレーム
33 加熱ゾーン
35 真空チャンバ
37 プラグ
39 上部部材
41 金型
43 下部部材
45 排気手段
47 閉塞空間
49 容器胴部材と底板部材との非接合部分の隙間
50 プラグの半球状隆起部分
52 プラグの凹陥部分
54 バリアフィルム
56 防水フィルム
58 容器胴部材用ブランク
60 サイドシーム
62 カットエッジ
64 段差部
Claims (7)
- 容器胴部材と容器底板部材とを接合させて組み立てられた紙製外側カップの内側にライニングフィルムを真空吸引することにより密着された内側カップがライニングされている、
ことを特徴とする紙製シームレスカップ。 - 前記紙製外側カップにおいて、容器胴部材と容器底板部材とが非接合部分を有するように組み立てられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙製シームレスカップ。 - (a)容器胴部材と容器底板部材とが非接合部分を有するように、容器胴部材と容器底板部材とから紙製外側カップを組み立てるステップと、
(b)前記紙製外側カップを真空成型装置内の真空チャンバの金型内に収納するステップと、
(c)前記真空成型装置内にライニングフィルムを供給し、該真空成型装置内の加熱ゾーンで該ライニングフィルムを加熱軟化させるステップと、
(d)前記金型内に収納された前記紙製カップの開口部に前記加熱軟化ライニングフィルムを被せるステップと、
(e)前記容器胴部材と底板部材との非接合部分に存在する隙間を介して、前記外側カップと前記加熱軟化ライニングフィルムとにより形成される閉塞空間内の空気を前記金型下部から真空排気し、前記外側カップの内側に前記加熱軟化ライニングフィルムを真空吸引することにより密着させて内側カップを形成するステップとからなる、
ことを特徴とする紙製シームレスカップの製造方法。 - 前記外側カップの内側に前記加熱軟化ライニングフィルムを真空吸引することにより密着させる際、前記加熱軟化ライニングフィルムをプラグで押し下げるステップを更に有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の紙製シームレスカップの製造方法。 - 前記プラグは周縁部が半球形状に隆起しており、中央部が凹陥しており、前記半球形状隆起部分が前記加熱軟化ライニングフィルムに接触することにより該フィルムを押し下げる、
ことを特徴とする請求項4に記載の紙製シームレスカップの製造方法。 - 前記プラグは布で覆われている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の紙製シームレスカップの製造方法。 - 前記プラグは前記加熱軟化ライニングフィルムとの接触部の熱を可及的に奪わない素材で形成されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の紙製シームレスカップの製造方法。
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- 2003-01-27 JP JP2003017184A patent/JP2004224422A/ja active Pending
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