JP2004223811A - インクジェット用被記録材 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、優れた作画性、寸法安定性及び平滑性が得られるインクジェット用被記録材を提供する。
【解決手段】グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントするインクジェット用被記録材であって、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層しているものであり、前記インク吸収層は、厚みが5〜50μmであることを特徴とするインクジェット用被記録材。
【選択図】 図1
【解決手段】グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントするインクジェット用被記録材であって、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層しているものであり、前記インク吸収層は、厚みが5〜50μmであることを特徴とするインクジェット用被記録材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、優れた作画性、寸法安定性及び平滑性が得られるインクジェット用被記録材に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターによってフルカラープリントしてなるプリント板が屋内用、屋外用の看板として使用されている。このようなインクジェットプリンターにおいて用いられるインクとしては、水性染料インクや水性顔料インクが主流であるが、水性顔料インクは、水性染料インクと比較して耐候性に優れることから、屋外用途に最も適した材料として、屋外看板等に用いられてきた。
【0003】
しかし、水性顔料インクは、顔料を水からなる液媒体に分散させたものであるため、ビヒクル成分としては、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体等のような水に相溶する樹脂等を用いる必要があり、屋外で使用する場合には、耐水性の面で問題があった。従って、プリント板を雨、風、日光等の刺激から保護するために、プリント板の表面に透明な粘着剤付きのフィルムをオーバーラミネート加工する方法が一般的であった。しかしながら、オーバーラミネート加工による方法を用いた場合には、プリント板の製造効率の低下を招くとともに、コスト面においても問題があった。
【0004】
そこで、近年、プリント板の耐水性を改良する方法として、耐水性の高いビヒクル成分を用いることができる、溶媒成分としてグリコールエーテル系等の溶剤を配合した有機溶剤系インクを用いたインクジェットプリンターが開発され、このようなプリンターを用いた場合でも適正にプリントできるインクジェット用被記録材の要求が高くなっている。グリコールエーテル系の溶剤は消防法、労働安全衛生法等の法規制に触れず、使用に際して、排気装置、作業環境の測定、身体の定期健康診断の実施等が義務づけられていないことから、看板等を製造する際に、室内でも使用することができ、環境にも優しいことが特徴である。
【0005】
しかしながら、グリコールエーテル系の溶剤は沸点が200〜280℃と非常に高いので、プリントした後に被記録材のインク吸収層中に残った溶剤が揮発しにくいという問題があった。また、従来のインクジェット用被記録材では、基材フィルムの材質として、ポリ塩化ビニル樹脂が用いられることが多く、このような場合に、インク吸収層中に溶剤が残留すると、より下層のプライマー層や基材フィルムに浸透することにより、プリントした部分が溶剤の吸収によって膨潤するとともに、収縮、波形現象が発生し、寸法安定性や平滑性が悪くなることがあった。特に垂れ幕等を製造する場合には、基材フィルムが平滑でないと、目的の寸法の作画物が得られず、見栄えが悪くなる等の不具合が発生することがあった。更に、基材フィルムがポリ塩化ビニル樹脂からなる場合には、基材フィルムに配合されている可塑剤、安定剤が、浸透した溶剤によって抽出されることにより、インク吸収層のインクが滲んだり、インクの発色性にバラツキが生じるという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントする場合であっても、インクの滲みや発色性のバラツキ等が生じず、作画性、寸法安定性、及び、平滑性に優れたインクジェット用被記録材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントするインクジェット用被記録材であって、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層しているものであり、上記インク吸収層は、厚みが5〜50μmであるインクジェット用被記録材である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明のインクジェット用被記録材は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントする場合に使用されるものである。
上記グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクには、乾燥後に耐水性を有するビヒクル成分を用いることができるので、プリント後に製造された立て看板等は、屋外用として好適に使用することが可能となる。
【0009】
上記グリコールエーテル系溶剤としては、特に限定されず、例えば、ジエチルカルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記グリコールエーテル系溶剤は、更に必要に応じて、酢酸ブチル等を含有していてもよい。
【0010】
本発明のインクジェット用被記録材は、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層したものである。
【0011】
本発明のインクジェット用被記録材の層構成の一例を図1に示す。
図1に示すように、インクジェット用被記録材10では、基材層3の一面に、プライマー層2が積層されており、更に、プライマー層2上には、インク吸収層1が積層されている。従って、インクジェット用被記録材10は、インク吸収層1及び基材層3により、プライマー層2を挟持するような構成となっている。
【0012】
上記基材層は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する。上記ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂は、上記グリコールエーテル系溶剤に対する耐溶剤性に優れるため、溶剤の吸収、膨潤によって寸法安定性や平滑性が悪化することがない。
【0013】
上記ポリエチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0014】
上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、ランダムポリプロピレン等を挙げることができる。
また、上記基材層が上記ポリプロピレン系樹脂を含有する場合には、熱可塑性オレフィンエラストマー(TPO)を含有させることが好ましい。これにより、インクジェット用被記録材が柔軟性に優れるものとなるため、垂れ幕、懸垂幕等として好適に使用することができる。
【0015】
上記基材層は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層、シート状繊維からなる層、及び、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層がこの順に積層している3層構造からなることとしてもよい。
上記基材層をこのような3層構造とすることにより、柔軟性に優れたインクジェット用被記録材とすることができるとともに、インクジェット用被記録材の引張強度及び引裂強度を向上させることが可能となり、屋外用として好適に使用することができる。このように3層構造を有する基材層を用いる場合には、本発明のインクジェット用被記録材は、例えば、ターポリンシート等として用いることができる。
【0016】
上記シート状繊維としては、特に限定されず、例えば、500×500デニールで糸の打ち込み本数が20本/m、糸の素材がポリエステルである繊維等を挙げることができる。
【0017】
なお、基材層が3層構造であるインクジェット用被記録材の層構成の一例を図2に示す。
図2に示すように、インクジェット用被記録材11では、基材層4の一面にプライマー層2及びインク吸収層1が順に積層されている。また、基材層4は、シート状繊維からなる層7の両面に、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層6が積層された3層構造となっている。
【0018】
上記プライマー層は、ポリウレタン系樹脂を含有する。
上記ポリウレタン系樹脂は、接着性に優れるため、基材層とインク吸収層とを確実に接着することができる。
上記ポリウレタン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含有するもの等を挙げることができる。
【0019】
上記プライマー層の厚みは、0.5〜20μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、基材層とインク吸収層とを確実に接着することができず、20μmを超えると、コスト高となるため実用的ではない。
【0020】
上記インク吸収層は、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
上記ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂は、インク中の有機溶剤成分であるグリコールエーテル系溶剤を吸収、膨潤するため、インク吸収層のインク吸収性と乾燥性を高めることができる。
よって、インクジェットプリンターによりプリントする際に、インク噴射量が多い場合、例えば、インク噴射量400%の場合であっても、上記インク吸収層がインク中の溶媒成分を吸収することにより、インクの横方向への滲みを防止するとともに、インクの乾燥時間を短縮することができる。
また、インク中の着色成分である顔料や、樹脂成分をインク吸収層に定着させる機能を有するため、プリント後の作画性を向上させることができる。
【0021】
上記ポリエステル系ウレタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、高分子量ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート等と、短鎖ジオール、トリオール等の多価アルコール等とを反応硬化させた後、所定サイズに裁断したもの等を挙げることができる。
【0022】
上記アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系樹脂等が好適に用いられる。
【0023】
上記インク吸収層の厚みは、5〜50μmである。5μm未満であると、インクがインク吸収層中に均一に分散しても、インク吸収層に確実に吸収させることが困難となり、手で触ったりするとインクが手についてしまう等の不具合が発生する。50μmを超えると、インク吸収性及び乾燥性に関しては良好なものとなるが、厚すぎるためにインク吸収層内に入り込む顔料成分の量が多くなり、表面から見た発色性が悪くなる。また、コスト高のため実用的ではない。
【0024】
本発明のインクジェット用被記録材は、上記基材層のプライマー層が積層されている面と反対側面に、更に、硬質ポリエチレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有していてもよい。
上記基材層の厚みが、例えば、100μm未満と薄い場合には、上記基材層自身の腰が弱いために、シワや浮きが発生しやすい状態となるが、上記支持層を有することにより、上記基材層の腰が強くなるため、このようなシワや浮きの発生を防止することができる。
【0025】
上記硬質ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記基材層に用いられるポリエチレン系樹脂よりも更に密度の高い高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0026】
上記硬質ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、結晶化度が高く、分子量の大きいホモポリプロピレン等を挙げることができる。
【0027】
上記支持層の厚みは、50〜100μmであることが好ましい。50μm未満であると、プリント時のシート搬送性が低下することや、しわやカールの発生により、作業時の取扱い性が低下することがあり、100μmを超えると、コスト高となるため実用的ではない。
【0028】
なお、硬質ポリプロピレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有するインクジェット用被記録材の層構成の一例を図3に示す。
図3に示すように、インクジェット用被記録材12では、基材層5の一面にプライマー層2及びインク吸収層1が順に積層されている。また、基材層5の他面には、支持層8が積層されている。
【0029】
本発明のインクジェット用被記録材によれば、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、インクジェット用被記録材にシワや浮き等が発生することなく、寸法安定性や平滑性に優れる。また、インクの滲みや、インクの発色性にバラツキが生じることがなく、作画性に優れたインクジェット用被記録材とすることができる。
【0030】
本発明のインクジェット用被記録材に、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントすることにより、垂れ幕、懸垂幕及び立て看板を製造することができる。
また、インクジェット用被記録材の基材層が硬質ポリプロピレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有する場合には、プリント後に、上記支持層を剥離することによっても、垂れ幕、懸垂幕及び立て看板を製造することができる。
このように本発明のインクジェット用被記録材を用いてなる垂れ幕、懸垂幕及び立て看板もまた本発明の1つである。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対して、TPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部及び添加剤を適量配合した後、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、グラビアコーターにてプライマー層用溶液を塗工し、乾燥炉で溶剤を乾燥させて、基材層に厚みが1μmのプライマー層を積層した。なお、プライマー層用溶液としては、ポリエーテル系ウレタン樹脂をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、固形分10%としたものを使用した。
更に、ポリエーテル系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(ラックスキンU2599−2、樹脂固形分30%、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉にて溶剤成分を揮発させて、厚みが20μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
【0033】
このインクジェット用被記録材に、表1に示す組成の有機溶剤系顔料インクをインクジェットプリンター(SOLJET SJ500、ローランドディージー社製)を用いて、インク噴射量C、M、Y、K各100%、CM、CY、MY各200%、CMY300%、CMYK400%で、それぞれ200mm×200mmの四角形をベタプリントした後、プリントした作画物の上下に直径10mmの棒を幅方向全面に取り付けて懸垂幕を作製した。
なお、インク噴射量C100%とは、青色(シアン、C)インク用のインクヘッドから噴射することができる最大のインク量を噴射して印刷したことを意味する。また、インク噴射量CMYK400%とは、青色(シアン、C)、赤色(マゼンタ、M)、黄色(イエロー、Y)、黒色(ブラック、K)をそれぞれ最大に噴射した場合の100%×4色=400%で印刷したことを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例2)
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、T−4005、京葉ポリエチレン社製)100重量部に対して添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、基材層にプライマー層を積層した。
更に、ポリエステル系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(U2216、樹脂固形分30%、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉にて溶剤成分を揮発させて厚みが50μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0036】
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが90μmの基材層を作製した。
次に、基材層にポリプロピレン系樹脂フィルム(RS02、厚み60μm、サントックス社製)を熱ラミネーターでラミネートした。なお、貼りあわせ時のドラム温度は、120℃とした。
更に、上記ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した面と反対側の面に、実施例1と同様にして、プライマー層及びインク吸収層を順に積層して、インクジェット用被記録材を得た。なお、上記インク吸収層の厚みは5μmとした。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0037】
(実施例4)
アクリル樹脂(HT−03Y、住友化学社製)をトルエンで溶解させて固形分20%のインク吸収層用溶液を調製した後、コンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉で溶剤成分を揮発させて厚みが30μmのインク吸収層を積層した以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0038】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、基材層にプライマー層を積層した。
更に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(ラックスキンU−2625−1、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉で溶剤成分を揮発させて厚みが30μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0039】
(比較例2)
平均重合度800のポリ塩化ビニル樹脂100重量部、可塑剤DUP(ジウンデシルフタレート)20重量部、酸化チタン顔料(白色顔料)3.0重量部及び安定剤を配合し、カレンダー加工法によって厚みが150μmの基材層を作製した以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0040】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法によって厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0041】
(比較例4)
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、T−4005、京葉ポリエチレン社製)100重量部に対して添加剤を適量配合し、カレンダー加工法によって、厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0042】
(比較例5)
平均重合度800のポリ塩化ビニル樹脂100重量部、可塑剤DUP(ジウンデシルフタレート)20重量部、酸化チタン顔料(白色顔料)3.0重量部及び安定剤を配合してなる材料を用いてカレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0043】
(比較例6)
インク吸収層の厚みを3μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0044】
(比較例7)
インク吸収層の厚みを60μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜7におけるインクジェット用被記録材及び懸垂幕について、下記の方法により、作画性、寸法安定性及び平滑性の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0046】
(評価)
(1)作画性
1.インク吸収力
インク噴射量400%でプリントした場合におけるインクの滲み具合を目視にて判定し、滲みがない場合を○、滲みがある場合を×とした。
【0047】
2.乾燥性
プリントを行った20分後にプリント面を手で触わり、手にインクが付かない場合を○、手にインクが付く場合を×とした。
【0048】
3.発色性
得られた懸垂幕と、パソコンで作成した画像(色)とを目視にて比較し、大差がない場合を○、大差がある場合を×とした。
【0049】
4.プリント時のシート搬送性
プリント時にシワ入り、浮き、及び、ヘッドへの引っかかりの有無を目視にて評価した。シワ入り、浮き、又は、ヘッドへの引っかかりのいずれも発生しない場合を○、シワ入り、浮き、又は、ヘッドへの引っかかりのうちいずれかが発生する場合を×とした。
【0050】
(2)寸法安定性
インク噴射量400%でプリントした部分の寸法変化量をノギスで測定した後、寸法変化率を算出し、寸法変化率が±1%以下である場合を○、寸法変化率が±1%を超える場合を×とした。
【0051】
(3)平滑性
1.プリント後の平滑性
インク噴射量0、100、200、300、400%でプリントしたインクジェット用被記録材をカットして平滑なテーブルの上に24時間置いた後の状態で、プリント部分とプリントしてない部分の凹凸差があるかどうかを目視にて判定した。テーブルとフィルムの間に浮きがない場合を○、フィルムが変形して浮きが発生する場合を×とした。
【0052】
2.懸垂幕とした場合の平滑性
得られた懸垂幕が、平滑である場合を○、変形(波形などが発生)している場合を×とした。
【0053】
(4)総合評価
(1)〜(3)の各評価のうちで最も悪い評価結果を総合評価とした。具体的には、例えば、インク吸収力の評価:×、寸法安定性の評価:○、懸垂幕とした場合の平滑性の評価:○であった場合には、総合評価は×となる。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、インクジェット用被記録材にシワや浮き等が発生することなく、寸法安定性や平滑性に優れる。また、インクの滲みや、インクの発色性にバラツキが生じることがなく、作画性に優れたインクジェット用被記録材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 インク吸収層
2 プライマー層
3、4、5 基材層
6 ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層
7 シート状繊維からなる層
8 支持層
10、11、12 インクジェット用被記録材
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、優れた作画性、寸法安定性及び平滑性が得られるインクジェット用被記録材に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターによってフルカラープリントしてなるプリント板が屋内用、屋外用の看板として使用されている。このようなインクジェットプリンターにおいて用いられるインクとしては、水性染料インクや水性顔料インクが主流であるが、水性顔料インクは、水性染料インクと比較して耐候性に優れることから、屋外用途に最も適した材料として、屋外看板等に用いられてきた。
【0003】
しかし、水性顔料インクは、顔料を水からなる液媒体に分散させたものであるため、ビヒクル成分としては、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体等のような水に相溶する樹脂等を用いる必要があり、屋外で使用する場合には、耐水性の面で問題があった。従って、プリント板を雨、風、日光等の刺激から保護するために、プリント板の表面に透明な粘着剤付きのフィルムをオーバーラミネート加工する方法が一般的であった。しかしながら、オーバーラミネート加工による方法を用いた場合には、プリント板の製造効率の低下を招くとともに、コスト面においても問題があった。
【0004】
そこで、近年、プリント板の耐水性を改良する方法として、耐水性の高いビヒクル成分を用いることができる、溶媒成分としてグリコールエーテル系等の溶剤を配合した有機溶剤系インクを用いたインクジェットプリンターが開発され、このようなプリンターを用いた場合でも適正にプリントできるインクジェット用被記録材の要求が高くなっている。グリコールエーテル系の溶剤は消防法、労働安全衛生法等の法規制に触れず、使用に際して、排気装置、作業環境の測定、身体の定期健康診断の実施等が義務づけられていないことから、看板等を製造する際に、室内でも使用することができ、環境にも優しいことが特徴である。
【0005】
しかしながら、グリコールエーテル系の溶剤は沸点が200〜280℃と非常に高いので、プリントした後に被記録材のインク吸収層中に残った溶剤が揮発しにくいという問題があった。また、従来のインクジェット用被記録材では、基材フィルムの材質として、ポリ塩化ビニル樹脂が用いられることが多く、このような場合に、インク吸収層中に溶剤が残留すると、より下層のプライマー層や基材フィルムに浸透することにより、プリントした部分が溶剤の吸収によって膨潤するとともに、収縮、波形現象が発生し、寸法安定性や平滑性が悪くなることがあった。特に垂れ幕等を製造する場合には、基材フィルムが平滑でないと、目的の寸法の作画物が得られず、見栄えが悪くなる等の不具合が発生することがあった。更に、基材フィルムがポリ塩化ビニル樹脂からなる場合には、基材フィルムに配合されている可塑剤、安定剤が、浸透した溶剤によって抽出されることにより、インク吸収層のインクが滲んだり、インクの発色性にバラツキが生じるという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントする場合であっても、インクの滲みや発色性のバラツキ等が生じず、作画性、寸法安定性、及び、平滑性に優れたインクジェット用被記録材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントするインクジェット用被記録材であって、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層しているものであり、上記インク吸収層は、厚みが5〜50μmであるインクジェット用被記録材である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明のインクジェット用被記録材は、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントする場合に使用されるものである。
上記グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクには、乾燥後に耐水性を有するビヒクル成分を用いることができるので、プリント後に製造された立て看板等は、屋外用として好適に使用することが可能となる。
【0009】
上記グリコールエーテル系溶剤としては、特に限定されず、例えば、ジエチルカルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記グリコールエーテル系溶剤は、更に必要に応じて、酢酸ブチル等を含有していてもよい。
【0010】
本発明のインクジェット用被記録材は、少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層したものである。
【0011】
本発明のインクジェット用被記録材の層構成の一例を図1に示す。
図1に示すように、インクジェット用被記録材10では、基材層3の一面に、プライマー層2が積層されており、更に、プライマー層2上には、インク吸収層1が積層されている。従って、インクジェット用被記録材10は、インク吸収層1及び基材層3により、プライマー層2を挟持するような構成となっている。
【0012】
上記基材層は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する。上記ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂は、上記グリコールエーテル系溶剤に対する耐溶剤性に優れるため、溶剤の吸収、膨潤によって寸法安定性や平滑性が悪化することがない。
【0013】
上記ポリエチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0014】
上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、ランダムポリプロピレン等を挙げることができる。
また、上記基材層が上記ポリプロピレン系樹脂を含有する場合には、熱可塑性オレフィンエラストマー(TPO)を含有させることが好ましい。これにより、インクジェット用被記録材が柔軟性に優れるものとなるため、垂れ幕、懸垂幕等として好適に使用することができる。
【0015】
上記基材層は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層、シート状繊維からなる層、及び、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層がこの順に積層している3層構造からなることとしてもよい。
上記基材層をこのような3層構造とすることにより、柔軟性に優れたインクジェット用被記録材とすることができるとともに、インクジェット用被記録材の引張強度及び引裂強度を向上させることが可能となり、屋外用として好適に使用することができる。このように3層構造を有する基材層を用いる場合には、本発明のインクジェット用被記録材は、例えば、ターポリンシート等として用いることができる。
【0016】
上記シート状繊維としては、特に限定されず、例えば、500×500デニールで糸の打ち込み本数が20本/m、糸の素材がポリエステルである繊維等を挙げることができる。
【0017】
なお、基材層が3層構造であるインクジェット用被記録材の層構成の一例を図2に示す。
図2に示すように、インクジェット用被記録材11では、基材層4の一面にプライマー層2及びインク吸収層1が順に積層されている。また、基材層4は、シート状繊維からなる層7の両面に、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層6が積層された3層構造となっている。
【0018】
上記プライマー層は、ポリウレタン系樹脂を含有する。
上記ポリウレタン系樹脂は、接着性に優れるため、基材層とインク吸収層とを確実に接着することができる。
上記ポリウレタン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含有するもの等を挙げることができる。
【0019】
上記プライマー層の厚みは、0.5〜20μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、基材層とインク吸収層とを確実に接着することができず、20μmを超えると、コスト高となるため実用的ではない。
【0020】
上記インク吸収層は、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
上記ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂は、インク中の有機溶剤成分であるグリコールエーテル系溶剤を吸収、膨潤するため、インク吸収層のインク吸収性と乾燥性を高めることができる。
よって、インクジェットプリンターによりプリントする際に、インク噴射量が多い場合、例えば、インク噴射量400%の場合であっても、上記インク吸収層がインク中の溶媒成分を吸収することにより、インクの横方向への滲みを防止するとともに、インクの乾燥時間を短縮することができる。
また、インク中の着色成分である顔料や、樹脂成分をインク吸収層に定着させる機能を有するため、プリント後の作画性を向上させることができる。
【0021】
上記ポリエステル系ウレタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、高分子量ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート等と、短鎖ジオール、トリオール等の多価アルコール等とを反応硬化させた後、所定サイズに裁断したもの等を挙げることができる。
【0022】
上記アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系樹脂等が好適に用いられる。
【0023】
上記インク吸収層の厚みは、5〜50μmである。5μm未満であると、インクがインク吸収層中に均一に分散しても、インク吸収層に確実に吸収させることが困難となり、手で触ったりするとインクが手についてしまう等の不具合が発生する。50μmを超えると、インク吸収性及び乾燥性に関しては良好なものとなるが、厚すぎるためにインク吸収層内に入り込む顔料成分の量が多くなり、表面から見た発色性が悪くなる。また、コスト高のため実用的ではない。
【0024】
本発明のインクジェット用被記録材は、上記基材層のプライマー層が積層されている面と反対側面に、更に、硬質ポリエチレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有していてもよい。
上記基材層の厚みが、例えば、100μm未満と薄い場合には、上記基材層自身の腰が弱いために、シワや浮きが発生しやすい状態となるが、上記支持層を有することにより、上記基材層の腰が強くなるため、このようなシワや浮きの発生を防止することができる。
【0025】
上記硬質ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記基材層に用いられるポリエチレン系樹脂よりも更に密度の高い高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0026】
上記硬質ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、結晶化度が高く、分子量の大きいホモポリプロピレン等を挙げることができる。
【0027】
上記支持層の厚みは、50〜100μmであることが好ましい。50μm未満であると、プリント時のシート搬送性が低下することや、しわやカールの発生により、作業時の取扱い性が低下することがあり、100μmを超えると、コスト高となるため実用的ではない。
【0028】
なお、硬質ポリプロピレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有するインクジェット用被記録材の層構成の一例を図3に示す。
図3に示すように、インクジェット用被記録材12では、基材層5の一面にプライマー層2及びインク吸収層1が順に積層されている。また、基材層5の他面には、支持層8が積層されている。
【0029】
本発明のインクジェット用被記録材によれば、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、インクジェット用被記録材にシワや浮き等が発生することなく、寸法安定性や平滑性に優れる。また、インクの滲みや、インクの発色性にバラツキが生じることがなく、作画性に優れたインクジェット用被記録材とすることができる。
【0030】
本発明のインクジェット用被記録材に、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントすることにより、垂れ幕、懸垂幕及び立て看板を製造することができる。
また、インクジェット用被記録材の基材層が硬質ポリプロピレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有する場合には、プリント後に、上記支持層を剥離することによっても、垂れ幕、懸垂幕及び立て看板を製造することができる。
このように本発明のインクジェット用被記録材を用いてなる垂れ幕、懸垂幕及び立て看板もまた本発明の1つである。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対して、TPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部及び添加剤を適量配合した後、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、グラビアコーターにてプライマー層用溶液を塗工し、乾燥炉で溶剤を乾燥させて、基材層に厚みが1μmのプライマー層を積層した。なお、プライマー層用溶液としては、ポリエーテル系ウレタン樹脂をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、固形分10%としたものを使用した。
更に、ポリエーテル系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(ラックスキンU2599−2、樹脂固形分30%、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉にて溶剤成分を揮発させて、厚みが20μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
【0033】
このインクジェット用被記録材に、表1に示す組成の有機溶剤系顔料インクをインクジェットプリンター(SOLJET SJ500、ローランドディージー社製)を用いて、インク噴射量C、M、Y、K各100%、CM、CY、MY各200%、CMY300%、CMYK400%で、それぞれ200mm×200mmの四角形をベタプリントした後、プリントした作画物の上下に直径10mmの棒を幅方向全面に取り付けて懸垂幕を作製した。
なお、インク噴射量C100%とは、青色(シアン、C)インク用のインクヘッドから噴射することができる最大のインク量を噴射して印刷したことを意味する。また、インク噴射量CMYK400%とは、青色(シアン、C)、赤色(マゼンタ、M)、黄色(イエロー、Y)、黒色(ブラック、K)をそれぞれ最大に噴射した場合の100%×4色=400%で印刷したことを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例2)
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、T−4005、京葉ポリエチレン社製)100重量部に対して添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、基材層にプライマー層を積層した。
更に、ポリエステル系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(U2216、樹脂固形分30%、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉にて溶剤成分を揮発させて厚みが50μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0036】
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが90μmの基材層を作製した。
次に、基材層にポリプロピレン系樹脂フィルム(RS02、厚み60μm、サントックス社製)を熱ラミネーターでラミネートした。なお、貼りあわせ時のドラム温度は、120℃とした。
更に、上記ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した面と反対側の面に、実施例1と同様にして、プライマー層及びインク吸収層を順に積層して、インクジェット用被記録材を得た。なお、上記インク吸収層の厚みは5μmとした。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0037】
(実施例4)
アクリル樹脂(HT−03Y、住友化学社製)をトルエンで溶解させて固形分20%のインク吸収層用溶液を調製した後、コンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉で溶剤成分を揮発させて厚みが30μmのインク吸収層を積層した以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0038】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、基材層にプライマー層を積層した。
更に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含有するインク吸収層用溶液(ラックスキンU−2625−1、セイコー化成社製)をコンマバーコーターでプライマー層上に塗工し、乾燥炉で溶剤成分を揮発させて厚みが30μmのインク吸収層を積層し、インクジェット用被記録材を得た。
その後、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0039】
(比較例2)
平均重合度800のポリ塩化ビニル樹脂100重量部、可塑剤DUP(ジウンデシルフタレート)20重量部、酸化チタン顔料(白色顔料)3.0重量部及び安定剤を配合し、カレンダー加工法によって厚みが150μmの基材層を作製した以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0040】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂(WT2002、チッソ社製)80重量部に対してTPO樹脂(T−310E、出光石油化学社製)20重量部、添加剤を適量配合し、カレンダー加工法によって厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0041】
(比較例4)
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、T−4005、京葉ポリエチレン社製)100重量部に対して添加剤を適量配合し、カレンダー加工法によって、厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0042】
(比較例5)
平均重合度800のポリ塩化ビニル樹脂100重量部、可塑剤DUP(ジウンデシルフタレート)20重量部、酸化チタン顔料(白色顔料)3.0重量部及び安定剤を配合してなる材料を用いてカレンダー加工法により、厚みが150μmの基材層を作製した。
更に、基材層上にプライマー層及びインク吸収層を積層しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0043】
(比較例6)
インク吸収層の厚みを3μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0044】
(比較例7)
インク吸収層の厚みを60μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、懸垂幕を作製した。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜7におけるインクジェット用被記録材及び懸垂幕について、下記の方法により、作画性、寸法安定性及び平滑性の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0046】
(評価)
(1)作画性
1.インク吸収力
インク噴射量400%でプリントした場合におけるインクの滲み具合を目視にて判定し、滲みがない場合を○、滲みがある場合を×とした。
【0047】
2.乾燥性
プリントを行った20分後にプリント面を手で触わり、手にインクが付かない場合を○、手にインクが付く場合を×とした。
【0048】
3.発色性
得られた懸垂幕と、パソコンで作成した画像(色)とを目視にて比較し、大差がない場合を○、大差がある場合を×とした。
【0049】
4.プリント時のシート搬送性
プリント時にシワ入り、浮き、及び、ヘッドへの引っかかりの有無を目視にて評価した。シワ入り、浮き、又は、ヘッドへの引っかかりのいずれも発生しない場合を○、シワ入り、浮き、又は、ヘッドへの引っかかりのうちいずれかが発生する場合を×とした。
【0050】
(2)寸法安定性
インク噴射量400%でプリントした部分の寸法変化量をノギスで測定した後、寸法変化率を算出し、寸法変化率が±1%以下である場合を○、寸法変化率が±1%を超える場合を×とした。
【0051】
(3)平滑性
1.プリント後の平滑性
インク噴射量0、100、200、300、400%でプリントしたインクジェット用被記録材をカットして平滑なテーブルの上に24時間置いた後の状態で、プリント部分とプリントしてない部分の凹凸差があるかどうかを目視にて判定した。テーブルとフィルムの間に浮きがない場合を○、フィルムが変形して浮きが発生する場合を×とした。
【0052】
2.懸垂幕とした場合の平滑性
得られた懸垂幕が、平滑である場合を○、変形(波形などが発生)している場合を×とした。
【0053】
(4)総合評価
(1)〜(3)の各評価のうちで最も悪い評価結果を総合評価とした。具体的には、例えば、インク吸収力の評価:×、寸法安定性の評価:○、懸垂幕とした場合の平滑性の評価:○であった場合には、総合評価は×となる。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクを用いたインクジェットプリンターで印刷を行った場合であっても、インクジェット用被記録材にシワや浮き等が発生することなく、寸法安定性や平滑性に優れる。また、インクの滲みや、インクの発色性にバラツキが生じることがなく、作画性に優れたインクジェット用被記録材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明のインクジェット用被記録材の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 インク吸収層
2 プライマー層
3、4、5 基材層
6 ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層
7 シート状繊維からなる層
8 支持層
10、11、12 インクジェット用被記録材
Claims (7)
- グリコールエーテル系溶剤を主溶剤とする顔料インクをインクジェットプリンターを用いてプリントするインクジェット用被記録材であって、
少なくとも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する基材層、ポリウレタン系樹脂を含有するプライマー層、並びに、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、及び、アクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するインク吸収層がこの順に積層しているものであり、
前記インク吸収層は、厚みが5〜50μmである
ことを特徴とするインクジェット用被記録材。 - プライマー層の厚みが0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用被記録材。
- 基材層は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層、シート状繊維からなる層、及び、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含有する層がこの順に積層している3層構造からなることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット用被記録材。
- 基材層のプライマー層が積層されている面と反対側面に、更に、硬質ポリエチレン系樹脂及び/又は硬質ポリプロピレン系樹脂を含有する支持層を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット用被記録材。
- 請求項1、2、3又は4記載のインクジェット用被記録材を用いてなることを特徴とする垂れ幕。
- 請求項1、2、3又は4記載のインクジェット用被記録材を用いてなることを特徴とする懸垂幕。
- 請求項1、2、3又は4記載のインクジェット用被記録材を用いてなることを特徴とする立て看板。
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- 2003-01-21 JP JP2003012640A patent/JP2004223811A/ja active Pending
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