JP6186226B2 - 加飾フィルム、加飾成形品及び加飾成形品の製造方法 - Google Patents
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例えば、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する芯材の表面に、真空成形法等を用いて加飾フィルムを積層することにより加飾成形品を製造することが行われている。ここで、加飾フィルムとしては、基材フィルムの一方の面に印刷層が形成され、他方の面に接着剤層が形成された加飾フィルムが使用されている。
一方、このような加飾成形品においては、その加飾面に関し、外部からの衝撃等により加飾面に傷などが付きにくいよう、耐スクラッチ性に優れることが要求されており、単に、基材フィルムに印刷により印刷層を形成した場合には、印刷層の堅牢性が不充分で、加飾面の耐スクラッチ性に劣るとの課題があった。
しかしながら、このような加飾フィルムの場合、加飾面は保護することができるものの、加飾フィルムとしての成形性に劣り、真空成形法等で加飾成形品を作製する場合には、芯材の形状が著しく制限されることとなった。
この被覆成形用シートを用いた場合、クリアー層を硬化させることにより、別途ハードコート層を形成する場合に比べて容易に印刷層を保護する為のハードコート層を形成することができる。
しかしながら、クリアー層を硬化させた後、クリアー層とクリアー層以外の層との強度が大きく異なり、例えば、耐熱評価(80℃の温度下で7日間放置)を行った場合、寸法変化が生じ、芯材と被覆成形用シートとの間でズレが生じるため、寸法精度に劣るとの問題があった。
また、特許文献1の被覆成形用シートは、被覆される面(被加飾面)が曲面形状の芯材を加飾する場合、各層は芯材の表面形状に追従すべく伸長されており、常に元の状態に戻ろうとする力(収縮力)が働いている状態である。このような状態のもとクリアー層を硬化させると硬化収縮の力と相まって、クリアー層が大きく収縮し、クリアー層と着色層又は基材層との間でズレが生じることがあった。
更に、この被覆成形用シートを用いて作製された加飾成形品では、印刷層がクリアー層を介して視認されるためその鮮明性に劣ることがあった。
上記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、並びに、少なくとも紫外線架橋性化合物及び重合開始剤を含有する紫外線硬化改質剤を含有し、
上記印刷層は、溶剤系インクを用いて形成されていることを特徴とする。
上記可塑剤の配合量は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して15〜30重量部であることが好ましい。
ここで、上記加飾成形品の加飾面の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。
ここで、紫外線の照射量は、500〜2000mJ/cm2が好ましい。
また、本発明の加飾成形品の製造方法によれば、上記加飾成形品を好適に製造することができる。
本発明の加飾フィルムは、塩化ビニル樹脂組成物からなる基材フィルムの一方の面に印刷層が積層され、他方の面にホットメルト接着剤層が積層された加飾フィルムであって、
上記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、並びに、少なくとも紫外線架橋性化合物及び重合開始剤を含有する紫外線硬化改質剤を含有し、上記印刷層は、溶剤系インクを用いて形成されていることを特徴とする。
そして、このような印刷層を備えた加飾フィルムでは、芯材に加飾フィルムを張り付けた後、紫外線が照射されることにより、基材フィルムに含まれる紫外線硬化改質剤が架橋による3次元構造を形成し、その結果、基材フィルムは硬く、堅牢なフィルムとなる。このとき、溶剤系インクを用いて形成された印刷層は、上述した通り基材フィルムに染み込んで定着しているため、堅牢性に優れた印刷層となる。
本発明の加飾フィルムは、例えば、図1に示す加飾フィルム10ように、塩化ビニル樹脂組成物からなる基材フィルム11の一方の面に印刷層12が積層され、他方の面にホットメルト接着剤層13が積層されている。また、ホットメルト接着剤層13の基材フィルム11側と反対側にはセパレータ層14が積層されている。
上記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、並びに、少なくとも紫外線架橋性化合物及び重合開始剤を含有する紫外線硬化改質剤を含有する。
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体を挙げることができる。
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフイン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
この場合、溶剤系インクを用いて印刷層を形成した際の印刷適性(例えば、印刷時の発色性やインクの定着性等)に優れる。これに対して、上記平均重合度が700未満では、溶剤系インクを吸収し過ぎてしまい、フィルム中で膨潤した状態でインクが滲んでしまうため、印刷時の発色性や鮮明性が不充分となることがある。一方、上記平均重合度が1500を超えると、溶剤系インクの吸収力が低く、フィルムへの染み込みが悪く、インクがフィルムの表面に付着するため、芯材に加飾フィルムを張り付けた後、紫外線を照射した際に、印刷層に充分な硬度(堅牢性)を付与することができないおそれがある。
なお、本発明において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
上記高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルや、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤としては、フタル酸オクチル(ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP))が好ましい。
上記平均分子量が350未満では、可塑剤がホットメルト接着剤層に移行しやすく、可塑剤が移行するとホットメルト接着剤層における接着力の低下を引き起こすことがある。また、可塑剤が基材フィルムの表面に移行し、印刷層を形成した際に、印刷ムラを引き起こす可能性がある。一方、3000を超えると、可塑剤がインクを吸収しすぎてしまい、印刷像が滲み、印刷層が鮮明性に劣る可能性がある。
上記可塑剤の含有量が15重量部未満では、基材フィルムの溶剤系インクの吸収性が不充分となるため、溶剤系インクの印刷適正に劣る場合がある。一方、30重量部を超えると、溶剤インクの吸収性が上がりすぎ、滲みが発生する場合がある。また基材フィルムが軟らかくなりすぎ、加飾成形に適さない場合がある。
上記可塑剤の含有量は、20〜25重量部がより好ましい。
上記紫外線架橋性化合物は、紫外線の照射を受けて架橋する性質を有する化合物であり、例えば、分子内に紫外線重合性の炭素−炭素2重結合を少なくとも2個以上有し、3次元網状化しうる化合物を用いることができる。
これらの紫外線架橋性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記紫外線架橋性化合物の配合量が5重量部未満では、紫外線照射による基材フィルムの硬度の上昇が乏しく、紫外線照射後に印刷層に充分な堅牢性を付与することができない場合があり、一方、40重量部を超えると、基材フィルムが柔らかくなり過ぎるため、印刷適性及び成形性に劣る場合がある。なお、基材フィルムが柔らかくなり過ぎる理由は、上記紫外線架橋性化合物が可塑剤に近い働きをするためと考えられる。
より好ましくは、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。
上記重合開始剤としては特に限定されず、従来公知の重合開始剤を用いることができ、その具体例としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類; ベンゾイン、ベンジル、ベンゾフェノン等の芳香族オキシケトン類や芳香族ケトン類; ベンジルジメチルケタール、ポリビニルベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記光重合開始剤の配合量が0.1重量部未満では、硬化反応が充分に進行しないことがあり、一方、5重量部を超えると、基材フィルムの表面の硬化反応は速やかに進行するものの、表面での硬化が促進されすぎるために、逆に内部での硬化反応が進行しにくくなり、結果的にフィルム全体としての硬化が阻害される場合がある。
より好ましくは、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1〜3重量部である。
重合禁止剤を配合することにより、加飾フィルムの作製時や、作製後使用するまでの保管時に、可視光や熱による紫外線架橋性化合物の重合(硬化)防止することができるからである。
上記重合禁止剤としては特に限定されず、従来公知の重合禁止剤を用いることができ、その具体例としては、例えば、ピクリン酸、フェノール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
基材フィルムの厚さが40μm未満では、フィルムの強度が不充分で、加飾成形性に劣ることがある。
一方、上記基材フィルムの厚さは特に限定されないが、300μm以下であることが好ましい。上記厚さが300μmを超えると、芯材の表面において加飾された部分と加飾されていない部分との境面において大きな段差が生じることとなり、その結果、加飾フィルムが剥がれるおそれがある。
より好ましくは、80〜150μmである。
上記印刷層は溶剤系インクを用いて形成されている。溶剤系インクを用いて形成した印刷層は上記基材フィルムに染み込んだ状態で基材フィルムの表面に定着するため、上記基材フィルムに含まれる紫外線硬化改質剤を硬化させることにより、印刷層の強度も増すこととなる。
なかでもビヒクルとして、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合系樹脂等のビニル系樹脂、又は、アクリル系樹脂を含有する溶剤系インクが、上記基材フィルムとの密着性に優れる点で好ましい。上記ビヒクルは2種以上を併用しても良い。
上記顔料としては、カーボンブラック(ブラック)、銅フタロシアニン(シアン)、ジメチルキナクリドン(マゼンタ)、ピグメント・イエロー(イエロー)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ニッケル化合物等が挙げられるが、既に、種々の顔料が知られており、上記に限定されるものではない。
上記ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリエステル系ホットメルト接着剤、アクリル系ホットメルト接着剤、ゴム系ホットメルト接着剤、シリコーン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。
ホットメルト接着剤は、常温時に固体で粘着性を有し、加熱して樹脂を溶融させる事で被着体に塗工出来る材料であり、無溶剤型であるため、本発明の加飾フィルムによる加飾を真空成型等の成型方法で行うのに好適である。
ホットメルト接着剤層の厚さが10μm未満では、芯材との間で充分な接着力を確保することができない場合があり、一方、60μmを超えると、接着剤層間での凝集破壊の発生しやすくなったり、接着剤層をその表面が平滑になるように塗工する事が困難になったり(厚さ厚くなるに伴い、溶剤含有量が増加し、発泡孔が発生しやすくなるため)することがある。
より好ましくは、20〜40μmである。
上記セパレータ層は必要に応じて設ける任意の層である。
上記セパレータ層としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、シリコーン樹脂で表面処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムを好適に用いることができる。
(1)まず、基材フィルムを作製する。
具体的には、塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び紫外線硬化改質剤を含む基材フィルムの構成成分を各所定量、連続混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて溶融混練して塩化ビニル樹脂組成物とした後、この塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形、押出成形、射出成形等によって製膜し、基材フィルムを作製する。
ここでは、カレンダー成形によって製膜することが好ましい。基材の厚さを均一にし易く、塩化ビニル樹脂組成物の組成を問わず製膜することができ、更に大きいサイズ等種々のサイズの基材を製膜するのにも適しており、加えて小ロットへの対応も容易だからである。
上記カレンダー成形に用いられるカレンダー形式としては、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等が挙げられる。
また、カレンダー成形時のロール温度は、塩化ビニル樹脂組成物の組成に応じて適宜選択すれば良いが、通常、140〜190℃であり、好ましくは160〜180℃である。
上記ホットメルト接着剤層の形成は、従来公知の方法により形成すれば良く、基材に直接ホットメルトアプリケータ等を用いて塗布して形成しても良いし、別途用意した支持体に一旦塗布した後、転写して形成して良い。また、上記支持体としてセパレータ層を用いれば、ホットメルト接着剤層を形成すると同時にセパレータ層も形成することができる。
上記印刷層を形成する方法としては特に限定されず、直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の従来公知の印刷方法を用いることができる。
これらのなかでは、インクジェット印刷が好ましい。この理由は、多品種、小ロット生産への対応が容易だからである。
上記インクジェット印刷で使用するインクジェット装置は特に限定されないが、例えば、CJV−30、TPC−1000(共にMimaki社製)、XC−540、SP−300(共にRoland社製)等が挙げられる。
このような工程を経ることにより、本発明の加飾フィルムを製造することができる。
本発明の加飾成形品は、芯材と、本発明の加飾フィルムとを備え、上記芯材の表面が上記加飾フィルムで加飾されたことを特徴とする。
また、本発明の加飾成形品の製造方法は、芯材の表面に本発明の加飾フィルムを張り付けた後、加飾フィルムに紫外線を照射することを特徴とする。
上記芯材としては、一般に加飾成形品に使用されるものであれば、特に制限されずに使用することができ、例えば、樹脂、金属、セラミックからなる芯材を使用することができる。
また、上記芯材は、その形状も特に限定されない。
上記加飾フィルムの張り付けは、例えば、真空・圧空成形等の成形方法により行うことができる。
これにより、加飾フィルムを構成する基材フィルム及び印刷層の硬度が高くなり、印刷層が堅牢性に優れた加飾成形品を製造することができる。
また、上記加飾成形品の製造方法によれば、印刷層の堅牢性に優れ、加飾面の耐スクラッチ性に優れた加飾成形品を寸法精度良く製造することができる。
上記紫外線の照射量が500mJ/cm2未満では、加飾フィルムの基材フィルムが充分に硬化せず、印刷層の堅牢性が不充分となることがあり、一方、2000mJ/cm2を超えると、加飾フィルムが劣化し、変色することがある。
加飾面の鉛筆硬度がH以上であると、印刷層が堅牢性に優れ、加飾面の耐スクラッチ性に優れた加飾成形品となるからである。
上記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定した。
(1)ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008:平均重合度800)100重量部に対し、可塑剤(ジェイ・プラス社製、DOP)20重量部、紫外線硬化改質剤(DIC社製、AS−1500S)10重量部配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬後、逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、160〜180℃)を通して厚さ80μmの基材フィルムを作製した。
なお、紫外線硬化改質剤AS−1500Sは、紫外線架橋性化合物として、トリメチロールプロパントリメタクリレートを含有し、重合禁止剤としてヒドロキノンを含有する組成物である。
即ち、印刷装置としてミマキエンジニアリング社製インクジェットプリンターCJV―30を使用し、溶剤系インクとしてミマキエンジニアリング社製ES3インクを用いて、基材フィルムの表面の全面にベタ印刷を行い、23±2℃、24時間の条件で乾燥させ、印刷層を形成した。
紫外線硬化改質剤の配合量を20重量部に変更した以外は実施例1と同様にして加飾フィルムを作製した。
可塑剤の配合量を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして加飾フィルムを作製した。
紫外線硬化改質剤として、DIC社製、AS−1500を使用した以外は実施例1と同様にして加飾フィルムを作製した。
なお、紫外線硬化改質剤AS−1500は、紫外線架橋性化合物として、トリメチロールプロパントリメタクリレートを含有し、重合禁止剤を含有しない組成物である。
紫外線硬化改質剤の配合量を20重量部に変更した以外は実施例4と同様にして加飾フィルムを作製した。
可塑剤の配合量を10重量部に変更した以外は実施例2と同様にして加飾フィルムを作製した。
可塑剤の配合量を35重量部に変更した以外は実施例2と同様にして加飾フィルムを作製した。
なお、後述する(2)印刷層の定着性の評価ではインクの滲みが観察された。
印刷層の形成方法を下記の方法に変更した以外は実施例2と同様にして加飾フィルムを作製した。
即ち、印刷装置としてミマキエンジニアリング社製、インクジェットプリンターJV33を使用し、水系インクとしてミマキエンジニアリング社製、SPC−0180を用いて、基材フィルムの表面の全面にベタ印刷を行い、印刷層を形成した。
印刷層の形成方法を下記の方法に変更した以外は実施例1と同様にして加飾フィルムを作製した。
即ち、印刷装置としてhp(ヒューレット・パッカード)社製インクジェットプリンターL26500を使用し、ラテックスインクとしてhp社製、HP792インクを用いて、基材フィルムの表面の全面にベタ印刷を行い、印刷層を形成した。
(1)ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008:平均重合度800)100重量部に対し、可塑剤(ジェイ・プラス社製、DOP)20重量部配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬後、逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、160〜180℃)を通して厚さ80μmの基材フィルムを作製した。
即ち、印刷装置としてミマキエンジニアリング社製インクジェットプリンターCJV―30を使用し、溶剤系インクとしてミマキエンジニアリング社製ES3インクを用いて、基材フィルムの表面の全面にベタ印刷を行い印刷層を形成した。
具体的には、紫外線硬化性組成物として、メタクリル酸エステル共重合体を含有する組成物であるバナレジンGH−9903(新中村工業株式会社製)を使用し、コンマコーターにより塗布し、厚さ30μmで未硬化のクリアー層を形成した。
実施例及び比較例で製造した加飾フィルムについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
基材フィルムをカレンダー成形で作製する際の製膜性を下記の評価基準で評価した。
○:ロングラン加工において、ロール加工性(滑性、引き剥がし性)及びフィルムの風合いが安定している。
△:ロングラン加工において、ロール加工性は問題無いが、フィルムの風合いが安定しない。
×:ロングラン加工において、ロール加工性が悪く、かつ、フィルムの風合いが安定していない。
ここで、「ロールの加工性が悪い」とは、フィルムの滑性が安定せず、フィルムの引取位置がバラツクことをいう。
基材フィルム上に印刷層を形成した後、印刷層の定着性を下記の評価基準で評価した。
○:インクの発色性が良好で、かつ、インクの滲みがなく、更に印刷乾燥直後に印刷層にベタツキがない。
△:インクの発色性が良好で、かつ、インクの滲みが無いものの、印刷乾燥直後に印刷層にベタツキがある。
×:インクの発色性が悪い、インク滲みある、及び、印刷乾燥直後に印刷層にベタツキがある、のうちの少なくともいずれか1つが観察される(但し、上記△に該当するものを除く)。
加飾成形品の加飾面の鉛筆硬度をJIS K 5600−5−4の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定した。
ポリカーボネート樹脂製で、直方体(100mm×100mm×10mm)の樹脂製芯材の表面に、TOM成形機(布施真空社製、型番:NGF−0406)を用いて成形温度100±20℃で、実施例及び比較例で作製した加飾フィルムを張り付け、その後、加飾フィルムの表面に下記表1に示した照射量の紫外線を照射し、加飾成形品を作製した。
その後、作製した加飾成形品を80℃の温度下で7日間放置し、放置前後において加飾フィルムの位置精度、加飾フィルムの剥がれを観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:放置前後で加飾フィルムの剥がれが無く、また、位置のズレが無いこと。
△:放置前後で加飾フィルムの剥がれが無く、位置のズレが0.5mm未満であること。
×:放置後に加飾フィルムの剥がれが有る、及び/又は、位置のズレが0.5mm以上であること。
11 基材フィルム
12 印刷層
13 ホットメルト接着剤層
14 セパレータ層
Claims (12)
- 塩化ビニル樹脂組成物からなる基材フィルムの一方の面に印刷層が積層され、他方の面にホットメルト接着剤層が積層された加飾フィルムであって、
前記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、並びに、少なくとも紫外線架橋性化合物及び重合開始剤を含有する紫外線硬化改質剤を含有し、
前記印刷層は、溶剤系インクを用いて形成されている
ことを特徴とする加飾フィルム。 - 前記塩化ビニル樹脂組成物において、
前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は700〜1500であり、前記可塑剤の平均分子量は350〜3000であり、
前記可塑剤の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して15〜30重量部である請求項1に記載の加飾フィルム。 - 前記紫外線硬化改質剤は、更に重合禁止剤を含有する請求項1又は2に記載の加飾フィルム。
- 前記溶剤系インクは、溶剤、顔料及びビヒクルを含有し、
前記ビヒクルは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合系樹脂、及び、アクリル系樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の加飾フィルム。 - 前記紫外線架橋性化合物は、多官能(メタ)アクリル酸エステルである請求項1〜4のいずれかに記載の加飾フィルム。
- 前記塩化ビニル樹脂組成物において、
前記紫外線架橋性化合物の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜40重量部であり、
前記光重合開始剤の配合量は、前記紫外線架橋性化合物100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の加飾フィルム。 - 前記基材フィルムの厚さは、40〜300μmである請求項1〜6のいずれかに記載の加飾フィルム。
- 前記ホットメルト接着剤層の基材フィルム側と反対側に積層されたセパレータ層を備える請求項1〜7のいずれかに記載の加飾フィルム。
- 芯材と、請求項1〜8のいずれかに記載の加飾フィルムとを備え、
前記芯材の表面が前記加飾フィルムで加飾されたことを特徴とする加飾成形品。 - 加飾面の鉛筆硬度がH以上である請求項9に記載の加飾成形品。
- 芯材の表面に請求項1〜8のいずれかに記載の加飾フィルムを張り付けた後、加飾フィルムに、紫外線を照射することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
- 前記紫外線の照射量は、500〜2000mJ/cm2である請求項11に記載の加飾成形品の製造方法。
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