JP2004221735A - 伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】誘電体や磁性体の材料とは関係なく、フィルタ特性を調整することができる伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、RuO2などの高抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。一方、伝送線路3の材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これにより、リファレンス用外部電極13,14の抵抗が、伝送線路3の抵抗より大きくなる。
【選択図】 図3
【解決手段】リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、RuO2などの高抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。一方、伝送線路3の材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これにより、リファレンス用外部電極13,14の抵抗が、伝送線路3の抵抗より大きくなる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送線路型ノイズフィルタ、特に電子機器のデジタル信号線を伝わる電磁ノイズを除去する伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、伝送線路型ノイズフィルタとして、誘電体や磁性体からなる絶縁体の内部に伝送線路とグランド電極を配置するとともに、伝送線路とグランド電極が絶縁体を介して対向してストリップライン構造を構成しているものが知られている。
【0003】
なお、本発明とは構造上および回路上全く異なるが、特許文献1に記載のノイズフィルタも知られている。このノイズフィルタは、グランドライン導体コイルパターンを構成する金属材料に抵抗率が比較的大きな材料を用いて、グランドラインコイルの抵抗値を信号ラインコイルの抵抗値よりも大きくしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−136065号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の伝送線路型ノイズフィルタにおいては、カットオフ周波数などのフィルタ特性が誘電体や磁性体の材料によって決定されてしまうことが多かった。例えば、フェライトを用いた伝送線路型フィルタの場合には、フェライトの透磁率によってフィルタのカットオフ特性が決定される。従って、所望のフィルタ特性を得るためには、それに対応した材料を選定しなければならず、設計の自由度が低いという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、誘電体や磁性体の材料とは関係なく、フィルタ特性を調整することができる伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタは、伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、伝送線路とリファレンス電極が絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、積層体の表面に伝送線路に電気的に接続された信号ライン用外部電極とリファレンス電極に電気的に接続されたリファレンス用外部電極とをそれぞれ設け、リファレンス用外部電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタは、伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、伝送線路とリファレンス電極が絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、リファレンス電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする。
【0009】
以上の構成において、伝送線路とリファレンス電極との間に分布定数型のキャパシタンス成分が発生し、そのキャパシタンス成分に直列に、リファレンス用外部電極やリファレンス電極が有する抵抗成分が挿入される。これにより、伝送線路は損失をもつようになり、ノイズフィルタ(ローパスフィルタ)として作用する。
【0010】
また、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの製造方法は、前述の特徴を有する伝送線路型ノイズフィルタのリファレンス用外部電極やリファレンス電極の材料の抵抗率を変えることにより、フィルタ特性が異なる伝送線路型ノイズフィルタを種々製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態、図1〜図7]
図1に示すように、伝送線路型ノイズフィルタ1は、概略、伝送線路導体パターン3a,3b,3cをそれぞれ表面に設けた絶縁性シート2と、広面積のリファレンス電極6a,6b,6c,6dをそれぞれ表面に設けた絶縁性シート2と、予め電極を表面に設けていない保護用絶縁性シート2とで構成されている。
【0013】
伝送線路導体パターン3a〜3cは、絶縁性シート2に設けたビアホール5を介して電気的に直列に接続され、蛇行形状の伝送線路3を形成している。ただし、伝送線路3は直線形状や螺旋形状(渦巻形状)などであってもよい。伝送線路導体パターン3a〜3cを設けた絶縁性シート2とリファレンス電極6a〜6dを設けた絶縁性シート2は交互に積み重ねられ、伝送線路導体パターン3a〜3cとリファレンス電極6a〜6dは絶縁性シート2を介して対向している。
【0014】
絶縁性シート2は、フェライトなどの磁性体材料やセラミックなどの誘電体材料、もしくは、ガラスなどの絶縁材料を、結合剤などと一緒に混練し、シート状に成形したものである。本第1実施形態では、誘電体材料を使用した。
【0015】
伝送線路導体パターン3a〜3cやリファレンス電極6a〜6dは、スクリーン印刷、スパッタリング、蒸着、フォトリソグラフィなどの方法により形成される。材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの導電材料は、抵抗率が約0.02〜0.04μΩmである。ビアホール5は、絶縁性シート2にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成し、そのビアホール用孔に導電材料を充填したり、ビアホール用孔にめっきを施したりすることによって形成される。
【0016】
以上の絶縁性シート2は積み重ねられた後、一体的に焼成され、図2に示す積層体10とされる。積層体10の手前側の側面および奥側の側面にはそれぞれ信号ライン用外部電極11,12が形成されている。積層体10の左右の側面には、それぞれリファレンス用外部電極13,14が形成されている。これらの外部電極11〜14は、図3に示すように、外部電極用ペースト膜13a,14aを塗布、焼付けた後、Niやはんだのめっき膜13b,14bで被覆することにより形成される。
【0017】
ここで、本第1実施形態では、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、RuO2などの高抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの材料は、抵抗率が約0.4〜0.6μΩmである。これにより、リファレンス用外部電極13,14の抵抗は伝送線路3の抵抗より大きくなる。一方、信号ライン用外部電極11,12の外部電極用ペースト膜の材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの材料は、抵抗率が約0.02〜0.04μΩmである。
【0018】
信号ライン用外部電極11には、伝送線路3の一端(すなわち、伝送線路導体パターン3aの端部)が電気的に接続されている。信号ライン用外部電極12には、伝送線路3の他端(すなわち、伝送線路導体パターン3cの端部)が電気的に接続されている。リファレンス用外部電極13,14には、リファレンス電極6a〜6dの端部が外部電極用ペースト膜13a,14aに直接に接触して電気的に接続されている。本第1実施形態の場合、リファレンス用外部電極13,14は接地される。
【0019】
図4は伝送線路型ノイズフィルタ1の等価回路図である。図4において、L1,L2,L3,…は伝送線路3のインダクタンス成分、R1,R2,R3,…はリファレンス用外部電極13,14の抵抗成分である。また、C1,C2,C3,…は伝送線路3とリファレンス電極6(6a〜6d)との間に発生するキャパシタンス成分である。このように、リファレンス用外部電極13,14に高抵抗金属材料を使用することにより、キャパシタンス成分C1,C2,C3,…にそれぞれ抵抗成分R1,R2,R3,…が直列に挿入される。
【0020】
図4に示された等価回路を有する伝送線路型ノイズフィルタ1の特性インピーダンスZ0は、伝送線路単位長さあたりのインダクタンスをL、キャパシタンスをC、キャパシタンスに直列に入る抵抗をRとすると、以下の式で表示され、損失をもつ(ノイズ除去効果をもつ)ことがわかる。
Z(0)={(L/C)+jωLR}1/2
ω:角周波数
【0021】
図5は、図4に示された等価回路を有する伝送線路型ノイズフィルタ1の反射損失(S11)特性および挿入損失(S21)特性を計算した結果をグラフで示したものである。このとき、伝送線路単位長さあたりのインダクタンスL=0.5μH/m、キャパシタンスC=200pF/m、抵抗R=1Ω/mとし、伝送線路3の長さを10cmとした。図5より、この伝送線路型ノイズフィルタ1が反射の少ないノイズフィルタ(ローパスフィルタ)として機能することがわかる。
【0022】
さらに、伝送線路単位長さあたりの抵抗R=0.1Ω/mとした場合の計算結果を図6に示し、R=10Ω/mとした場合の計算結果を図7に示す。このように、抵抗Rの値を変化させることにより、フィルタ特性の異なる伝送線路型ノイズフィルタ1を種々製造することができる。具体的には、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料や厚みなどを変更することで抵抗Rの値を変化させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは、前記第1実施形態の伝送線路型ノイズフィルタ1において、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、高抵抗金属材料の代わりに低抵抗金属材料を使用し、さらに、リファレンス電極6a〜6dの材料として、低抵抗金属材料の代わりに高抵抗金属材料を使用したものである。従って、第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは図1〜図3に示されている構成と同様のものであり、その詳細な説明は省略する。
【0024】
この第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは、リファレンス電極6a〜6dの抵抗が伝送線路3の抵抗より大きく設定されており、前記第1実施形態の伝送線路型ノイズフィルタ1と同様の作用効果を奏する。
【0025】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、前記実施形態では、絶縁性シート2の材料として、無損失材料である誘電体材料を使用しているが、絶縁性シート2の材料として損失材料である磁性体材料を使用してもよい。この場合には、リファレンス用外部電極14やリファレンス電極6(6a〜6d)の抵抗成分R1,R2,R3,…による損失に、磁性体材料による損失が加算されるので、より一層ノイズ除去効果の高いフィルタが得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、伝送線路とリファレンス電極との間に分布定数型のキャパシタンス成分が発生し、そのキャパシタンス成分に直列に、リファレンス用外部電極やリファレンス電極が有する抵抗成分が挿入されるので、優れたノイズ抑制効果を有する伝送線路型ノイズフィルタが得られる。また、リファレンス用外部電極やリファレンス電極の材料の抵抗率を変えることにより、フィルタ特性の異なる伝送線路型ノイズフィルタを種々製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した伝送線路型ノイズフィルタの外観斜視図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図2に示した伝送線路型ノイズフィルタの電気等価回路図。
【図5】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり1Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【図6】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり0.1Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【図7】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり10Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1…伝送線路型ノイズフィルタ
2…絶縁性シート
3…伝送線路
3a,3b,3c…伝送線路導体パターン
6a,6b,6c,6d…リファレンス電極
10…積層体
11,12…信号ライン用外部電極
13,14…リファレンス用外部電極
13a,14a…外部電極用ペースト膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送線路型ノイズフィルタ、特に電子機器のデジタル信号線を伝わる電磁ノイズを除去する伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、伝送線路型ノイズフィルタとして、誘電体や磁性体からなる絶縁体の内部に伝送線路とグランド電極を配置するとともに、伝送線路とグランド電極が絶縁体を介して対向してストリップライン構造を構成しているものが知られている。
【0003】
なお、本発明とは構造上および回路上全く異なるが、特許文献1に記載のノイズフィルタも知られている。このノイズフィルタは、グランドライン導体コイルパターンを構成する金属材料に抵抗率が比較的大きな材料を用いて、グランドラインコイルの抵抗値を信号ラインコイルの抵抗値よりも大きくしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−136065号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の伝送線路型ノイズフィルタにおいては、カットオフ周波数などのフィルタ特性が誘電体や磁性体の材料によって決定されてしまうことが多かった。例えば、フェライトを用いた伝送線路型フィルタの場合には、フェライトの透磁率によってフィルタのカットオフ特性が決定される。従って、所望のフィルタ特性を得るためには、それに対応した材料を選定しなければならず、設計の自由度が低いという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、誘電体や磁性体の材料とは関係なく、フィルタ特性を調整することができる伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタは、伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、伝送線路とリファレンス電極が絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、積層体の表面に伝送線路に電気的に接続された信号ライン用外部電極とリファレンス電極に電気的に接続されたリファレンス用外部電極とをそれぞれ設け、リファレンス用外部電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタは、伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、伝送線路とリファレンス電極が絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、リファレンス電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする。
【0009】
以上の構成において、伝送線路とリファレンス電極との間に分布定数型のキャパシタンス成分が発生し、そのキャパシタンス成分に直列に、リファレンス用外部電極やリファレンス電極が有する抵抗成分が挿入される。これにより、伝送線路は損失をもつようになり、ノイズフィルタ(ローパスフィルタ)として作用する。
【0010】
また、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの製造方法は、前述の特徴を有する伝送線路型ノイズフィルタのリファレンス用外部電極やリファレンス電極の材料の抵抗率を変えることにより、フィルタ特性が異なる伝送線路型ノイズフィルタを種々製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態、図1〜図7]
図1に示すように、伝送線路型ノイズフィルタ1は、概略、伝送線路導体パターン3a,3b,3cをそれぞれ表面に設けた絶縁性シート2と、広面積のリファレンス電極6a,6b,6c,6dをそれぞれ表面に設けた絶縁性シート2と、予め電極を表面に設けていない保護用絶縁性シート2とで構成されている。
【0013】
伝送線路導体パターン3a〜3cは、絶縁性シート2に設けたビアホール5を介して電気的に直列に接続され、蛇行形状の伝送線路3を形成している。ただし、伝送線路3は直線形状や螺旋形状(渦巻形状)などであってもよい。伝送線路導体パターン3a〜3cを設けた絶縁性シート2とリファレンス電極6a〜6dを設けた絶縁性シート2は交互に積み重ねられ、伝送線路導体パターン3a〜3cとリファレンス電極6a〜6dは絶縁性シート2を介して対向している。
【0014】
絶縁性シート2は、フェライトなどの磁性体材料やセラミックなどの誘電体材料、もしくは、ガラスなどの絶縁材料を、結合剤などと一緒に混練し、シート状に成形したものである。本第1実施形態では、誘電体材料を使用した。
【0015】
伝送線路導体パターン3a〜3cやリファレンス電極6a〜6dは、スクリーン印刷、スパッタリング、蒸着、フォトリソグラフィなどの方法により形成される。材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの導電材料は、抵抗率が約0.02〜0.04μΩmである。ビアホール5は、絶縁性シート2にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成し、そのビアホール用孔に導電材料を充填したり、ビアホール用孔にめっきを施したりすることによって形成される。
【0016】
以上の絶縁性シート2は積み重ねられた後、一体的に焼成され、図2に示す積層体10とされる。積層体10の手前側の側面および奥側の側面にはそれぞれ信号ライン用外部電極11,12が形成されている。積層体10の左右の側面には、それぞれリファレンス用外部電極13,14が形成されている。これらの外部電極11〜14は、図3に示すように、外部電極用ペースト膜13a,14aを塗布、焼付けた後、Niやはんだのめっき膜13b,14bで被覆することにより形成される。
【0017】
ここで、本第1実施形態では、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、RuO2などの高抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの材料は、抵抗率が約0.4〜0.6μΩmである。これにより、リファレンス用外部電極13,14の抵抗は伝送線路3の抵抗より大きくなる。一方、信号ライン用外部電極11,12の外部電極用ペースト膜の材料としては、Ag,Pd,Ag−Pd,Cu,Alなどの低抵抗金属材料を主成分とするものが使用される。これらの材料は、抵抗率が約0.02〜0.04μΩmである。
【0018】
信号ライン用外部電極11には、伝送線路3の一端(すなわち、伝送線路導体パターン3aの端部)が電気的に接続されている。信号ライン用外部電極12には、伝送線路3の他端(すなわち、伝送線路導体パターン3cの端部)が電気的に接続されている。リファレンス用外部電極13,14には、リファレンス電極6a〜6dの端部が外部電極用ペースト膜13a,14aに直接に接触して電気的に接続されている。本第1実施形態の場合、リファレンス用外部電極13,14は接地される。
【0019】
図4は伝送線路型ノイズフィルタ1の等価回路図である。図4において、L1,L2,L3,…は伝送線路3のインダクタンス成分、R1,R2,R3,…はリファレンス用外部電極13,14の抵抗成分である。また、C1,C2,C3,…は伝送線路3とリファレンス電極6(6a〜6d)との間に発生するキャパシタンス成分である。このように、リファレンス用外部電極13,14に高抵抗金属材料を使用することにより、キャパシタンス成分C1,C2,C3,…にそれぞれ抵抗成分R1,R2,R3,…が直列に挿入される。
【0020】
図4に示された等価回路を有する伝送線路型ノイズフィルタ1の特性インピーダンスZ0は、伝送線路単位長さあたりのインダクタンスをL、キャパシタンスをC、キャパシタンスに直列に入る抵抗をRとすると、以下の式で表示され、損失をもつ(ノイズ除去効果をもつ)ことがわかる。
Z(0)={(L/C)+jωLR}1/2
ω:角周波数
【0021】
図5は、図4に示された等価回路を有する伝送線路型ノイズフィルタ1の反射損失(S11)特性および挿入損失(S21)特性を計算した結果をグラフで示したものである。このとき、伝送線路単位長さあたりのインダクタンスL=0.5μH/m、キャパシタンスC=200pF/m、抵抗R=1Ω/mとし、伝送線路3の長さを10cmとした。図5より、この伝送線路型ノイズフィルタ1が反射の少ないノイズフィルタ(ローパスフィルタ)として機能することがわかる。
【0022】
さらに、伝送線路単位長さあたりの抵抗R=0.1Ω/mとした場合の計算結果を図6に示し、R=10Ω/mとした場合の計算結果を図7に示す。このように、抵抗Rの値を変化させることにより、フィルタ特性の異なる伝送線路型ノイズフィルタ1を種々製造することができる。具体的には、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料や厚みなどを変更することで抵抗Rの値を変化させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは、前記第1実施形態の伝送線路型ノイズフィルタ1において、リファレンス用外部電極13,14の外部電極用ペースト膜13a,14aの材料として、高抵抗金属材料の代わりに低抵抗金属材料を使用し、さらに、リファレンス電極6a〜6dの材料として、低抵抗金属材料の代わりに高抵抗金属材料を使用したものである。従って、第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは図1〜図3に示されている構成と同様のものであり、その詳細な説明は省略する。
【0024】
この第2実施形態の伝送線路型ノイズフィルタは、リファレンス電極6a〜6dの抵抗が伝送線路3の抵抗より大きく設定されており、前記第1実施形態の伝送線路型ノイズフィルタ1と同様の作用効果を奏する。
【0025】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、前記実施形態では、絶縁性シート2の材料として、無損失材料である誘電体材料を使用しているが、絶縁性シート2の材料として損失材料である磁性体材料を使用してもよい。この場合には、リファレンス用外部電極14やリファレンス電極6(6a〜6d)の抵抗成分R1,R2,R3,…による損失に、磁性体材料による損失が加算されるので、より一層ノイズ除去効果の高いフィルタが得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、伝送線路とリファレンス電極との間に分布定数型のキャパシタンス成分が発生し、そのキャパシタンス成分に直列に、リファレンス用外部電極やリファレンス電極が有する抵抗成分が挿入されるので、優れたノイズ抑制効果を有する伝送線路型ノイズフィルタが得られる。また、リファレンス用外部電極やリファレンス電極の材料の抵抗率を変えることにより、フィルタ特性の異なる伝送線路型ノイズフィルタを種々製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る伝送線路型ノイズフィルタの一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した伝送線路型ノイズフィルタの外観斜視図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図2に示した伝送線路型ノイズフィルタの電気等価回路図。
【図5】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり1Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【図6】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり0.1Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【図7】伝送線路のキャパシタンス成分に直列に入る抵抗が伝送線路単位長さあたり10Ω/mの場合(ただし、伝送線路長さは10cmとする)の、伝送線路型ノイズフィルタの反射損失(S11)および挿入損失(S21)特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1…伝送線路型ノイズフィルタ
2…絶縁性シート
3…伝送線路
3a,3b,3c…伝送線路導体パターン
6a,6b,6c,6d…リファレンス電極
10…積層体
11,12…信号ライン用外部電極
13,14…リファレンス用外部電極
13a,14a…外部電極用ペースト膜
Claims (3)
- 伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、前記伝送線路と前記リファレンス電極が前記絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、前記積層体の表面に前記伝送線路に電気的に接続された信号ライン用外部電極と前記リファレンス電極に電気的に接続されたリファレンス用外部電極とをそれぞれ設け、前記リファレンス用外部電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする伝送線路型ノイズフィルタ。
- 伝送線路と絶縁体層と広面積のリファレンス電極を積み重ねて、前記伝送線路と前記リファレンス電極が前記絶縁体層を介して対向している積層体を構成し、前記リファレンス電極の材料の抵抗率を他の電極材料の抵抗率より高くしたことを特徴とする伝送線路型ノイズフィルタ。
- 請求項1または請求項2のいずれかに記載の伝送線路型ノイズフィルタにおいて、前記リファレンス用外部電極材料の抵抗率もしくは前記リファレンス電極材料の抵抗率を変えることにより、伝送線路型ノイズフィルタの特性を変えることを特徴とする伝送線路型ノイズフィルタの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003004426A JP2004221735A (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003004426A JP2004221735A (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004221735A true JP2004221735A (ja) | 2004-08-05 |
Family
ID=32895407
Family Applications (1)
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JP2003004426A Pending JP2004221735A (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 伝送線路型ノイズフィルタおよびその製造方法 |
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JP (1) | JP2004221735A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017086283A1 (ja) * | 2015-11-19 | 2017-05-26 | 株式会社村田製作所 | Lc複合デバイス |
-
2003
- 2003-01-10 JP JP2003004426A patent/JP2004221735A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2017086283A1 (ja) * | 2015-11-19 | 2017-05-26 | 株式会社村田製作所 | Lc複合デバイス |
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