JP2004220929A - ガス放電パネルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガス放電パネルの構造として、紫外線により励起して発光する蛍光体層14R、14G、14Bの表層を覆う保護層15を有し、且つ蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料は、200℃以上に加熱した状態で、酸素原子あるいはラジカルに晒したものとする。
これにより、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料は、初期段階として酸素欠損が少ない状態となり、さらに表層の保護層15により、その状態が維持されるので、発光特性に優れ、且つ輝度劣化を抑制することが可能なPDP、およびその製造方法を実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビなどの画像表示に用いられ、且つ真空紫外線で励起され発光する蛍光体層を有するガス放電パネルの、特にプラズマディスプレイパネル、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられているカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を用いたプラズマディスプレイ装置は、大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
【0003】
プラズマディスプレイ装置は、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体材料は、PDPの放電セル内で発生する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、非特許文献1が知られている。
【0005】
【非特許文献1】
内池平樹、御子柴茂生共著、「プラズマディスプレイのすべて」 (株)工業調査会、1997年5月1日、p79−p80
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなPDPにおいては、経時的な輝度劣化が発生するという課題があった。これは、PDP内部での放電により発生する真空紫外線により蛍光体材料が損傷し、劣化することで、紫外線を可視光に変換する変換効率が低下するためと考えられる。このような輝度劣化が発生すると、PDP全体の輝度が低下するという問題や、静止画のように一定のパターンを表示しつづけた際、点灯した部分とそうでない部分とで蛍光体材料の劣化の度合いが異なるようになり、違うパターンを表示しても前のパターンが残存して見えてしまう、焼き付きと呼ばれる問題などが生じる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、発光特性に優れ、かつPDP内部での放電により発生する真空紫外線により蛍光体層を構成する蛍光体材料が損傷し、劣化することが原因と考えられる輝度劣化を抑制することが可能なPDP、およびその製造方法を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するための本発明のガス放電パネルは、紫外線により励起して発光する蛍光体層を有するガス放電パネルにおいて、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により構成し、且つ蛍光体層の表層を覆う保護層を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を実現するための本発明のガス放電パネルの製造方法は、紫外線により励起して発光する蛍光体層を形成する工程を有するガス放電パネルの製造方法において、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により形成し、且つ蛍光体層を形成した後、その表層を覆う保護層を形成することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、紫外線により励起して発光する蛍光体層を有するガス放電パネルにおいて、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により構成し、且つ蛍光体層の表層を覆う保護層を備えることを特徴とするガス放電パネルである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、保護層を、珪素を主たる構成原子とする材料、または有機ポリマーにより構成したものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、紫外線により励起して発光する蛍光体層を形成する工程を有するガス放電パネルの製造方法において、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により形成し、且つ蛍光体層を形成した後、その表層を覆う保護層を形成することを特徴とするガス放電パネルの製造方法である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、保護層を、珪素を主たる構成原子とする材料、または有機ポリマーにより形成したものである。
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を添付の図面を参照して説明する。なお、説明では、ガス放電パネルの代表例であるPDPを用いた。
【0015】
図1は、本発明の実施形態1によるPDPの概略構成を示す断面斜視図である。PDP1の前面板2は、表示面側ガラス基板3上に走査電極4と維持電極5とからなる表示電極6と、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み40μm)からなる誘電体層7と、プラズマによる損傷から誘電体層7を保護するMgOからなる保護層8(厚み:500nm)とを備える。ここで、走査電極4および維持電極5は、電気抵抗の低減と透光性確保のために、ITOまたは酸化スズ(SnO2)などの透明導電性材料からなる透明電極4a、5aに、バス電極4b、5bとして、銀(Ag)厚膜(厚み:2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)、またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)を順次積層した構成となっている。また、誘電体層7は、スクリーン印刷、またはダイコート印刷、またはフィルムラミネート法により形成される。また、保護層8は、電子ビーム蒸着法、またはイオンプレーティング法、またはスパッタ法により形成される。
【0016】
一方、背面板9は、背面側ガラス基板10上に、銀(Ag)厚膜(厚み:2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み:0.1μm〜1μm)からなるアドレス電極11と、酸化鉛(PbO)、または酸化ビスマス(Bi2O3)、または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み:5μm〜20μm)からなる誘電体層12と、誘電体層12上のアドレス電極11の間の位置に、ガラスを主成分とする隔壁13と、隔壁13間に、カラー表示のための3色(赤:R、緑:G、青:B)の蛍光体層14R、14G、14Bと、そして蛍光体層14R、14G、14Bを覆う保護層15とを備えている。ここで、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料は、例えば、赤色蛍光体材料として、(YxGd1−x)BO3:Eu3+、また、緑色蛍光体材料として、Zn2SiO4:Mn、そして青色蛍光体材料として、BaMgAl10O17:Eu2+である。これらの蛍光体材料は、5%〜10%のエチルセルロースあるいはニトロセルロースを含んだα−ターピネオールなどの有機溶媒中に混合分散して得られたペーストをスクリーン印刷またはラインジェットによって隔壁13間に塗布し、500℃〜550℃で焼成することで形成する。なお、誘電体層12は、蛍光体層14R、14G、14Bの背面板9での密着性を向上させるためのものであり、PDP1の動作に不可欠というものではない。
【0017】
そして、前面板2と背面板9とは、表示電極6およびアドレス電極11とが直交するように放電空間16を挟んで対向配置して貼り合わされている。すなわち、前面板2と背面板9とは、画像表示領域の外側に低融点ガラス材料からなるシール材を形成し、450℃〜500℃に加熱してシール材としての低融点ガラス材料を溶かすことで接着し気密封止している。
【0018】
その後、PDP1内部を300℃〜400℃に加熱しながら真空排気する、いわゆる排気ベーキングを行い、その後、放電空間16に、放電ガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンのうち、少なくとも1種類の希ガスを所定の圧力で封入する。
【0019】
以上により、隔壁13によって仕切られ、表示電極6とアドレス電極11との交差部の放電空間16が放電セル17として動作する。
【0020】
ここで、上述した本実施の形態によるPDP1での特徴的な点は、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する酸化物の蛍光体材料が、200℃以上に加熱した状態で、酸素原子あるいはラジカルに晒したものであり、且つ蛍光体層14R、14G、14Bの表層を覆うように、保護層15を有することである。
【0021】
図2は、放電セル17の概略構成を示す、表示電極6と平行な面での断面図、また、図3は、蛍光体層14R、14G、14Bの表層に形成された保護層15の状態の概略を示す断面図である。蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料14Ra、14Ga、14Baを簡易的に球状としている。
【0022】
本発明者らが蛍光体材料の輝度劣化について行った検討の結果、以下のメカニズムで輝度劣化が発生すると考えられることが判った。すなわち、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料には酸素欠損が存在する場合がある。この理由としては、例えば、青色蛍光体材料である、BaMgAl10O17:Euであれば、発光中心がユーロピウム(Eu)であり、このEuの酸化を防ぐために還元雰囲気中で合成されるため、BaMgAl10O17:Euには初期の段階で酸素欠損を有する状態となるということや、PDP内に不純物ガスとして持ち込まれたH2Oが、徐々に放電空間16内に放出され、このH2Oが駆動動作時の放電によって解離することにより発生したHラジカルが、このHラジカルは還元反応性に富むことから、蛍光体材料(青色蛍光体材料:BaMgAl10O17:Eu、緑色蛍光体材料:Zn2SiO6:Mn、赤色蛍光体材料:Y2O3:Eu)の酸素原子を引き抜くように作用すること(この引き抜きは、アルミン酸蛍光体である青色蛍光体や、ジンクシリケートの緑色蛍光体において、特に顕著であると考えられる)により、蛍光体材料が酸素欠損を有する状態となるということが挙げられる。以上のような理由により、蛍光体材料が、酸素欠損を有する状態であると、真空紫外線が照射された場合、真空紫外線は高エネルギーであり、また酸素欠損が生じた箇所においては結晶構造が脆くなっていることから、酸素欠損の箇所が、結晶質から非晶質に変質してしまう場合がある。そして、非晶質では、真空紫外線によって励起された電子が発光中心へ移動することが妨げられるので、発光効率が極端に低くなってしまい、殆ど蛍光体材料としての機能を持たなくなってしまう。ここで、真空紫外線は極端に波長が短いため、蛍光体材料に対して、ごく表面(数百nm以下)にのみしか進入できない、すなわち、蛍光体材料の表面に形成された発光効率の低い非晶質層にのみしか進入できないこととなる。その結果、発光効率が著しく低下し、輝度が低下してしまうと考えられる。
【0023】
さらに、蛍光体材料に初期段階から酸素欠損が存在している状態では、初期段階から存在する酸素欠損が起点となることで、Hラジカルによる酸素の引き抜きが行われやすくなり、その結果、酸素欠損の量が多くなり、PDPの輝度低下の度合いが更に増すという問題を有することとなる。同時に、蛍光体材料に初期段階から酸素欠損が存在している状態では、初期の段階から輝度が低下してしまい発光特性が低下した状態となっているため、そのような状態の蛍光体材料に対して、真空紫外線から保護して輝度劣化を抑制するための保護膜を形成したとしても、PDPとしての絶対輝度を確保するという面からは小さな効果しか得ることができない。
【0024】
以上のことから、発光特性に優れ、且つ輝度劣化を抑制することが可能なPDPを実現するためには、蛍光体層14R、14G、14Bとしては、まず、それを構成する蛍光体材料の酸素欠損が初期の段階から少ないこと、そして、酸素欠損箇所を非晶質化させる要因である真空紫外線を、例えば保護層で覆うことにより遮断することが有効となる。
【0025】
ここで、前にも述べたように、真空紫外線は極端に波長が短いため、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する最表層の蛍光体材料14Ra、14Ga、14Baの表面にしか進入できない。そこで、蛍光体層14R、14G、14Bを真空紫外線から保護するための保護層としては、蛍光体層14R、14G、14Bの、放電空間16に露出している表層の部分の蛍光体材料14Ra、14Ga、14Baを覆うように形成することで十分である。
【0026】
したがって、本実施の形態に示すような、蛍光体層14R、14G、14Bの表層を覆うように形成した保護層15により、蛍光体層14R、14G、14Bを、放電空間16での放電により発生する真空紫外線による損傷から保護することができる。
【0027】
なお、蛍光体材料個々を保護膜で覆うようにすると、その保護膜の影響から、蛍光体材料が凝集しやすくなるという場合があり、そのような場合には蛍光体材料を塗布するための、蛍光体材料のペーストにおいて、蛍光体材料が凝集してできる固まり(「ダマ」と呼ばれる)が発生し、このために、スクリーン印刷で塗布する際には、メッシュを目詰まりさせたり、ラインジェット法あるいはインクジェット法で塗布する際には、ノズルを目詰まりさせたりという、生産性および歩留まりの低下という問題が発生する場合がある。しかしながら、本実施の形態によれば、保護層は蛍光体材料個々に形成するものではなく、蛍光体層14R、14G、14Bを形成した後、その表層を覆うように形成するものであり、したがって、生産性および歩留まりを低下させることなく蛍光体層を真空紫外線から保護することができることとなる。
【0028】
また、本実施の形態における蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料は、200℃以上に加熱した状態で、酸素原子あるいはラジカルに晒したものであり、この状態での酸素原子あるいはラジカルは、反応状態(活性状態)であることから、酸素欠損を補償するように作用するため、初期段階として酸素欠損の少ない状態となっており、発光特性としては良好な状態となっている。
【0029】
以上より、本実施の形態によれば、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料は、初期段階として酸素欠損が少ない状態となり、さらに蛍光体層14R、14G、14Bの表層の保護層15により、その状態が維持されるので、発光特性に優れ、且つ輝度劣化を抑制することが可能なPDP、およびその製造方法を実現することができる。
【0030】
なお、図1、図2においては、保護層15は、放電セル17において、蛍光体層14R、14G、14Bとともに、隔壁13の表面も同時に覆った状態を示したが、保護層15は、少なくとも蛍光体層14R、14G、14Bの表層に形成されておれば本発明の効果は十分に得ることができる。このような保護層15の被覆状態は、保護層15の形成方法に依存するものであるが、少なくとも蛍光体層14R、14G、14Bの表層に形成することができるものであればどのような形成方法であっても構わない。また、図3では、保護層15は、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料14Ra、14Ga、14Baの最表面の蛍光体材料上を切れ目なく覆った状態を示したが、蛍光体材料14Ra、14Ga、14Baの重なり状態や、保護層15の形成方法によっては、一部に「不連続部」を有する状態となる場合がある。この不連続部は、蛍光体材料が覆われない部分であり、したがってその部分では従来のような蛍光体材料の劣化が発生してしまうことになるが、全く覆われない従来の構成に比べれば、格段に、劣化抑制の効果を得ることができる。
【0031】
ここで、保護層15は、例えばLSI(Large Scale Integration)の層間絶縁膜材料として使用される有機ポリマー(例えば、日立化成製 品番HSG−6210X、HSG−RZ25、HSG−R7、SiLK)を、蛍光体層14R、14G、14B上からスプレーまたはスピンコーターを使って塗布、乾燥、加熱処理することで得ることができる。ここで厚みは、5nm〜200nm、好ましくは5nm〜50nmである(図1〜図3では厚みを誇張して示している)。これは、保護層15の厚みを概ね5nmより薄くすると、膜が島状になり均一に形成できなくなり、また、200nmより厚くすると真空紫外線が蛍光体層14R、14G、14B表面に十分届かず、低輝度のPDPになってしまうためである。
【0032】
以下、本発明のPDPの性能を評価するために、上述の実施の形態に基づくPDP(パネルA)と、従来の構造のPDP(パネルB)とを作製し、通常の使用で2万時間に相当する加速寿命試験を行った結果について説明する。
【0033】
パネルAにおける、蛍光体層14R、14G、14Bの、青色蛍光体層14Bを構成する蛍光体材料である、BaMgAl10O17:Euとしては、200℃〜1000℃に加熱した状態で、酸素原子を含むガス、例えば、オゾン、酸素、NO、NO2、CO、CO2、N2O、N2O3、N2O4、N2O5、NO3などに蛍光体材料表面を接触させた、あるいはこれらのガスを放電によりプラズマ化させたものに接触させたものを用いた。また、保護層15として、キシレンまたはジブチルエーテルで希釈したベルヒドロポリシラザン(例えば(SiH2NH)n)をスプレーまたはスピンコーターを使って塗布、乾燥、加熱処理することで5nm〜200nm、好ましくは5nm〜50nmの厚みにSiO2膜を形成した。
【0034】
そして、加速寿命試験を行った結果、パネルAにおいては、初期からの輝度劣化は2%〜5%であり、また焼き付きも見られなかったが、パネルBでは、初期からの輝度劣化は、赤色で10%〜15%、緑色で40%〜50%、青色で60%以上であり、焼き付きも顕著であることを確認した。また初期の輝度レベルも、パネルAがパネルBに比べ高いことを確認した。
【0035】
ここで、パネルAおよびパネルBからR、G、Bそれぞれの蛍光体材料を取り出し、昇温脱離質量分析(TDS)を実施したところ、主としてH2O、CO2を検出した。そこで、パネルBの構成に対して、H2O、CO2を1種類ずつ故意に混入した比較用パネルを作製し評価を行ったところ、H2Oを混入した場合にのみ、輝度劣化、焼き付き現象が顕著になることを確認した。このことから、PDP内に存在するH2Oが蛍光体層14R、14G、14Bの輝度劣化の要因であると考えられる。また、パネルBの蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料の表面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、BおよびGの蛍光体材料の表面には、厚みが50nm程度の非晶質層が形成されているのが確認できた。一方、パネルAでは、蛍光体層14R、14G、14Bを構成する蛍光体材料の表面には非晶質層は確認できなかった。
【0036】
以上で述べたような効果をパネルAが有することについては、以下のように考えられる。すなわち、蛍光体層の表層を覆うように保護層が存在することにより、真空紫外線の蛍光体層への進入は抑制されるため、先に述べたような、蛍光体材料の変質に伴う輝度劣化が抑制される。同時に、蛍光体材料も初期の段階から酸素欠損の少ない高品質な結晶状態であることから、初期の輝度レベルを高くすることができ、且つその状態を保護層により保つことができ、さらに酸素欠損が初期から少ないことから、たとえ真空紫外線の進入があったとしても、酸素欠損の箇所を起点とした非晶質層の形成進行も小さくなる、というものである。
【0037】
なお、パネルBの蛍光体材料の分析の結果、非晶質層が蛍光体材料の表面から50nmと比較的内部まで形成されているのが確認できたのは、一旦、表面に非晶質層が形成されると、非晶質層/結晶層界面で結晶格子が歪み、そこに真空紫外線が作用することで非晶質層が蛍光体材料の内部にまで進行するためであると考えられる。
【0038】
なお、保護層15としては、ポリシラザンの他に、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどシランカップリング剤、およびメチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘプタデカフロロデシルトリクロロシランなどのトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザンのような有機珪素化合物を使用しても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、以上述べた実施の形態において、上述のような輝度劣化を改善する効果のある保護層15としては、LSIの層間絶縁膜の材料として用いられるものが挙げられ、特にlow−k(低比誘電率)材料として使用されるものが好ましい。これらの材料は、耐プラズマ性に優れ、高温でも安定で、ガス放出も少なく、しかも低屈折率のため真空紫外線の反射が少なく、蛍光体材料に入射する真空紫外線量を増加させ、より高輝度にもできる。上記に挙げた材料以外では、東京応化製SiO2系皮膜形成用塗布液(品名:OCD)、ボラジン−ケイ素ポリマー、第三化成製 商品名diX Fなどが挙げられる。diX Fは、下記の化学式で表される有機ポリマーで、化学気相成長(CVD)法で形成する。
【0040】
【化1】
【0041】
保護層15を構成する材料として、上記以外の、低屈折率で耐プラズマ性に優れ、高温でも安定で、ガス放出も少ない材料としては、MgF、MgO、Si3N4、Al2O3、AlN、B2O3、GeO2、Ge3N4などの無機材料があり、これらの成膜には一般的な薄膜形成プロセス、例えば蒸着法、CVD法、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、スパッタ法が使用できる。
【0042】
また、前面板2が備える保護層8を構成する材料としては、MgOの他にCaO、BaO、Y2O3、La2O3、CeO2、HfO2などの金属酸化物や混合酸化物、AlN、GaN、BN等のようなIII−V族化合物、MgS、ZnS、BeSe、MgSe、MgTe等のII−VI族化合物、MgF、LaF3、CeF4、HfF4のような金属ハロゲン化物等、プラズマダメージを受けにくく、2次電子放出係数の大きい材料の使用が好ましい。
【0043】
放電ガスとしては、Ne−Xeの混合ガスの他にHe−Xeの混合ガスを使用しても良く、さらにこれらのガスにArを加えてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、発光特性に優れ、かつPDP内部での放電により発生する真空紫外線により蛍光体層を構成する蛍光体材料が損傷し、劣化することが原因と考えられる輝度劣化を抑制することが可能なPDP、およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視断面図
【図2】放電セルの概略構成を示す、表示電極と平行な面での断面図
【図3】蛍光体層の表層に形成された保護層の状態の概略を示す断面図
【符号の説明】
1 プラズマディスプレイパネル
2 前面板
3 表示面側ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
7 誘電体層
8 保護層
9 背面板
10 背面側ガラス基板
11 アドレス電極
12 誘電体層
13 隔壁
14R 蛍光体層(赤)
14G 蛍光体層(緑)
14B 蛍光体層(青)
15 保護層
16 放電空間
17 放電セル
Claims (4)
- 紫外線により励起して発光する蛍光体層を有するガス放電パネルにおいて、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により構成し、且つ蛍光体層の表層を覆う保護層を備えることを特徴とするガス放電パネル。
- 保護層を、珪素を主たる構成原子とする材料、または有機ポリマーにより構成した請求項1に記載のガス放電パネル。
- 紫外線により励起して発光する蛍光体層を形成する工程を有するガス放電パネルの製造方法において、蛍光体層は、200℃以上に加熱した状態で酸素原子あるいは酸素ラジカルに晒した蛍光体材料により形成し、その後、蛍光体層の表層を覆う保護層を形成することを特徴とするガス放電パネルの製造方法。
- 保護層を、珪素を主たる構成原子とする材料、または有機ポリマーにより形成した請求項3に記載のガス放電パネルの製造方法。
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