JP2004215078A - D級電力増幅装置 - Google Patents

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JP2004215078A JP2003001246A JP2003001246A JP2004215078A JP 2004215078 A JP2004215078 A JP 2004215078A JP 2003001246 A JP2003001246 A JP 2003001246A JP 2003001246 A JP2003001246 A JP 2003001246A JP 2004215078 A JP2004215078 A JP 2004215078A
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Keiichi Shirakawa
惠一 白川
Hiroyuki Akimoto
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Abstract

【課題】低コストで、出力素子を有効に保護し、且つアンプの性能を充分に発揮できるD級電力増幅装置を提供すること。
【解決手段】出力端子の短絡等の異常時には、D級アンプ部1への入力信号を断して、D級アンプ部1内の出力素子を保護することができる。ここで、D級アンプ部1の入力側の電圧(又は電流)は、出力側に比べて小さいので、かかる入力信号の制御であれば、トランジスタQ1等の安価で高速に反応する半導体素子を使用できる。また、これらの素子Q1を動作させる保護回路4は、抵抗、ダイオード、トランジスタといった簡易な素子で構成できる。よって、出力素子を有効に保護できるD級電力増幅装置10を、簡易に且つ安価に構成できる。しかも、D級アンプ部1の出力電流及び出力電圧が共に大である場合には、トランジスタQ1はオフを維持し、D級アンプ部1への信号入力は正常に行われるので、その性能を充分に発揮できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はD級電力増幅装置に関し、特に、低コストで、出力素子を有効に保護し、且つアンプの性能を充分に発揮できるD級電力増幅装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アンプの小型化並びに高効率化の要求に伴い、D級増幅方式を用いたアンプが普及してきている。D級増幅方式とは、増幅回路に入力したアナログ信号についてパルス幅変調(PWM(Pulse Width Modulation))やパルス密度変調(PDM(Pulse−Duration Modulation))などの変調処理を施し、ディジタル信号に変換した後、信号の増幅を行い、増幅回路の出力を低域通過型フィルタ(ローパスフィルタ)に通すことによってアナログ信号に戻す増幅方式である。このD級増幅方式を用いたアンプ(以下「D級アンプ」と称す)では、ディジタル信号の増幅、即ち信号のON/OFF処理のみによつてアナログ信号の増幅を行うことができるので、理論的には100%の電力効率が得られる。この高効率さ故に、アンプの小型化も可能となるので、D級アンプは家庭用および業務用ともに普及してきている。このD級アンプには、通常、出力端子の短絡などによる過電流に対して、アンプ内部の出力素子を保護するための保護回路が接続されて、D級電力増幅装置として構成されている(特許文献1及び2)。
【0003】
例えば、図4に示す従来のD級電力増幅装置100では、スピーカ3等の負荷に異常状態が生じて過電流が流れた場合には、出力電流を断して、D級アンプで構成されるD級アンプ部1内の出力素子を保護する構成にされている。具体的に図4のD級電力増幅装置100は、入力端子IPに接続された抵抗R1の他端に、一端が接地された抵抗R2の他端とパルス幅変調(PWM)方式のD級アンプ部1の入力端とが接続されており、このD級アンプ部1と抵抗R1,R2とによりD級アンプ回路2が構成される。入力端子IPに入力されたオーディオ信号は、両抵抗R1,R2により分圧されてD級アンプ部1に入力され、D級アンプ部1内にて増幅され、ローパスフィルタ(図示せず)を経由して、D級アンプ部1から出力される。
【0004】
このD級アンプ部1の出力端にはリレーRLの一端が接続されており、このリレーRLの他端はD級電力増幅装置100の一方の出力端子OP1とされている。一方の出力端子OP1と他方の出力端子OP2との間には、例えばスピーカ3等の負荷が接続されると共に、他方の出力端子OP2には一端が接地された電流検出用抵抗R3と保護回路104とが接続され、保護回路104は、電流検出用抵抗R3の端子電圧に基づいてスピーカ3等の負荷に流れる電流を検出し、その電流が所定値を超えた場合に、異常状態であると判断して、制御信号を出力し、リレーRLを開放させるものである。リレーRLの開放により、D級電力増幅装置100の出力電流は0となるので、過電流からD級アンプ部1内の出力素子を保護することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−280843号公報
【0006】
【特許文献2】特開2002−171140号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した特許文献1のD級電力増幅装置ではCPUを使って、また、特許文献2のD級電力増幅装置ではラッチ回路やフリップフロップ回路、コンパレータを使って、それぞれ保護回路を構成しているので、保護回路が高価になるという問題点がある。また、図4のD級電力増幅装置100のように、リレーRLによるものでは、リレーRLの切り替わり応答速度が遅いので、場合によっては切り替えが間に合わず、D級アンプ部1内の出力素子が破壊されてしまうという問題点がある。
【0008】
更に、出力電流にのみ基づいて保護回路を動作させると、アンプが正常に動作している場合にも保護回路が動作することがあり、その場合にはアンプの性能を充分に発揮できないという問題点がある。即ち、出力電流が多くても出力電圧が高ければ、アンプの正常な動作の範疇であり、アンプ内部の出力素子が壊れやすい状態ではない。出力端子が短絡していたり、定格外の低インピーダンスの負荷が接続されている場合に、出力電圧が低く出力電流が多い状態、即ちアンプ内部の出力素子が壊れやすい状態となるのであり、かかる場合に限って保護回路を動作させることが好ましい。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、低コストで、出力素子を有効に保護し、且つアンプの性能を充分に発揮できるD級電力増幅装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために請求項1記載のD級電力増幅装置は、D級増幅方式により入力信号を増幅するD級電力増幅器と、そのD級電力増幅器の出力電圧を検出する電圧検出手段と、前記D級電力増幅器の出力電流を検出する電流検出手段と、前記電圧検出手段により検出された出力電圧および前記電流検出手段により検出された出力電流に基づいて前記D級電力増幅器へ入力される入力信号を制御する制御手段とを備えている。
【0011】
この請求項1記載のD級電力増幅装置によれば、入力信号はD級電力増幅器へ入力されて増幅され、D級電力増幅器から出力される。D級電力増幅器の出力電圧は電圧検出手段によって、出力電流は電流検出手段によって、それぞれ検出され、その検出された出力電圧および出力電流に基づいて、制御手段によりD級電力増幅器へ入力される入力信号が制御される。
【0012】
請求項2記載のD級電力増幅装置は、D級増幅方式により入力信号を増幅するD級電力増幅器と、そのD級電力増幅器の出力電流を電圧に変換する変換手段と、その変換手段により変換された電圧に基づいて電位差を生成する生成手段と、その生成手段により生成された電位差を、前記D級電力増幅器の出力電圧の絶対値が大きいほど小さくなるように補正する補正手段と、その補正手段により補正された電圧が所定値以上である場合に、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号を制御する制御手段とを備えている。
【0013】
この請求項2記載のD級電力増幅装置によれば、入力信号はD級電力増幅器へ入力されて増幅され、D級電力増幅器から出力される。このうちの出力電流は、変換手段によって電圧に変換され、その変換された電圧に基づいて生成手段により電位差が生成される。この電位差は、補正手段により、D級電力増幅器の出力電圧の絶対値が大きいほど小さくなるように補正され、その補正された電圧が所定値以上である場合に、制御手段によってD級電力増幅器へ入力される入力信号が制御される。
【0014】
請求項3記載のD級電力増幅装置は、請求項1又は2に記載のD級電力増幅装置において、前記制御手段は、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号の入力経路を制御する経路制御手段を備えている。なお、入力信号の入力経路の制御としては、例えば、入力信号の入力経路を別経路に切り替えるものや、入力信号の入力経路を断するものを例示することができる。
【0015】
請求項4記載のD級電力増幅装置は、請求項1又は2に記載のD級電力増幅装置において、前記制御手段は、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号のレベルを制御するレベル制御手段を備えている。
【0016】
【発明の効果】本発明のD級電力増幅装置によれば、D級電力増幅器の出力電圧および出力電流に応じて、そのD級電力増幅器へ入力される入力信号が制御手段により制御される。このように、D級電力増幅器の出力を適正に保つために、その出力電流に比べて小電流の入力信号を制御するので、かかる制御に安価な素子を使用することができる。よって、出力電流自体を制御する場合に比べて、装置コストを低減できるという効果がある。また、小電流の制御なので、応答速度の遅いリレーに代えて、例えば応答速度の速い半導体素子を使用することができるので、切り替えの遅れによる出力素子の破壊を抑制できるという効果がある。更に、制御手段は、出力電流のみならず、出力電圧をも考慮して入力信号を制御するので、たとえ出力電流が多くても出力電圧が高い正常動作時には、入力信号を制御することがなく、D級電力増幅器の性能を充分に発揮できるという効果がある。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施例であるD級電力増幅装置10の電気的構成を示したブロック図である。なお、図4を参照して説明した従来のD級電力増幅装置100と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0018】
第1実施例のD級電力増幅装置10は、D級アンプ部1と2つの抵抗R1,R2とにより構成されるD級アンプ回路2と、D級アンプ部1内の出力素子の保護回路4とから構成されている。D級アンプ部1の出力端は、D級電力増幅装置10の一方の出力端子OP1と接続されており、その一方の出力端子OP1と他方の出力端子OP2との間には、例えばスピーカ3等の負荷が接続される。
【0019】
保護回路4は、+側出力電流検出部5と、+側出力電圧検出部6と、−側出力電流及び出力電圧検出部7と、制御部8と、その制御部8からの出力信号に応じて動作しD級アンプ部1へのオーディオ信号の入力を制限(断)する入力制限トランジスタQ1とを備えて構成される。なお、−側出力電流及び出力電圧検出部7は、電流検出用抵抗R3を含んで構成される。
【0020】
+側出力電流検出部5は、3つの抵抗R3,R11,R12によって構成される。抵抗R3は、D級アンプ部1の出力電流を検出するための電流検出用抵抗であり、その一端はD級電力増幅装置10の他方の出力端子OP2に接続され、他端は接地されている。この抵抗R3の一端には抵抗R12の一端が接続され、抵抗R12の他端は、もう1つの抵抗R11の一端に接続されている。抵抗R11の他端は、抵抗R3の他端と共に接地されている。
【0021】
+側出力電圧検出部6は、+側出力電流検出部5に用いられる2つの抵抗R11,R12の他に、抵抗R13とダイオードD11とによって構成される。ダイオードD11は、D級アンプ部1の出力電圧の正の半波を取り出すためのもの、即ちD級アンプ部1の出力電圧が負である場合に後述するトランジスタQ11の誤動作を防止するためのものであり、そのアノードは、+側出力電圧検出部6の入力端として、D級アンプ部1の出力端及びD級電力増幅装置10の一方の出力端子OP1に接続されている。ダイオードD11のカソードは抵抗R13の一端に接続され、抵抗R13の他端は前述した抵抗R11の一端に接続されている。
【0022】
−側出力電流及び出力電圧検出部7は、電流検出用抵抗R3の他に、3つの抵抗R21〜R23と、ダイオードD21とによって構成される。ダイオードD21は、D級アンプ部1の出力電圧の負の半波を取り出すためのもの、即ちD級アンプ部1の出力電圧が正である場合に後述するトランジスタQ21の誤動作を防止するためのものであり、そのカソードは、−側出力電流及び出力電圧検出部7の入力端として、D級アンプ部1の出力端及びD級電力増幅装置10の一方の出力端子OP1に接続されている。ダイオードD21のアノードは抵抗R23の一端に接続され、抵抗R23の他端は2つの抵抗R21,R22の一端にそれぞれ接続されている。抵抗R21の他端は接地され、また、抵抗R22の他端は電流検出用抵抗R3の一端に接続されている。
【0023】
制御部8は、出力電流検出部及び出力電圧検出部5〜7の検出結果に基づいて入力制限トランジスタQ1をオン又はオフさせるものであり、4つのトランジスタQ2,Q11,Q21,Q22と、6つの抵抗R4〜R7,R24,R25とダイオードD12とから構成されている。
【0024】
トランジスタQ11は、D級アンプ部1から正の電圧が出力されている場合に入力制限トランジスタQ1のオン又はオフを制御するためのものであり、PNP型のトランジスタで構成されている。ベース端子には+側出力電圧検出部6の出力端が接続され、エミッタ端子には電流検出用抵抗R3のOP2端が接続されている。また、コレクタ端子には、ダイオードD12のアノードが接続され、そのカソードは、抵抗R6の一端と、他端が−VBに接続された抵抗R7の一端とにそれぞれ接続されている。抵抗R6の他端は、NPN型トランジスタQ2のベース端子に接続され、そのエミッタ端子は−VBに、またコレクタ端子は抵抗R4,R5の一端にそれぞれ接続されている。更に、抵抗R4の他端は入力制限トランジスタQ1のベース端子に接続され、抵抗R5の他端は+VBに接続されている。よって、トランジスタQ11がオンすると、トランジスタQ2がオンされて、入力制限トランジスタQ1がオンされる。
【0025】
トランジスタQ21は、D級アンプ部1から負の電圧が出力されている場合に入力制限トランジスタQ1のオン又はオフを制御するためのものであり、NPN型のトランジスタで構成されている。ベース端子には−側出力電流及び出力電圧検出部7の出力端が接続され、エミッタ端子には電流検出用抵抗R3のOP2端が接続されている。(このためトランジスタQ21のエミッタ端子と前述したトランジスタQ11のエミッタ端子とは互いに接続される。)また、トランジスタQ21のコレクタ端子には、抵抗R24,R25の一端がそれぞれ接続され、抵抗R25の他端はトランジスタQ22のベース端子に接続されている。トランジスタQ22は、トランジスタQ21がオンしたときにトランジスタQ2を駆動できるように極性を反転するためのものであり、PNP型のトランジスタで構成されている。そのエミッタ端子は、抵抗R24の他端と共に+VBに接続され、また、コレクタ端子は、前述したダイオードD12のカソードと抵抗R6,R7の一端とにそれぞれ接続されている。よって、トランジスタQ21がオンすると、トランジスタQ22、トランジスタQ2の順にオンされて、入力制限トランジスタQ1がオンされる。なお、ダイオードD12は、トランジスタQ22がオンしたときに、トランジスタQ11の誤動作を防止するためのものである。
【0026】
入力制限トランジスタQ1は、PNP型のトランジスタで構成され、そのベース端子は抵抗R4の他端に、エミッタ端子はグランドに、コレクタ端子はD級アンプ部1の入力端に、それぞれ接続されている。この入力制限トランジスタQ1がオンすると、コレクタ端子が接地され、D級アンプ部1への入力が略0ボルトとなって、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力が制限(断)される。
【0027】
次に、この第1実施例のD級電力増幅装置10の動作を説明する。まず、D級アンプ部1から正の電圧が出力されている場合について説明する。D級アンプ部1の出力電流は、負荷であるスピーカ3を介して、+側出力電流検出部5の電流検出用抵抗R3に流れ、そこで電圧に変換される。この変換された電圧によって、抵抗R12,R11に電流が流れ、その結果、抵抗R12の両端に電圧が生じる。この抵抗R12の端子間電圧がトランジスタQ11のベース・エミッタ間電圧(通常0.6ボルト)より大きくなると、トランジスタQ11がオンし、それがトランジスタQ2をオンさせ、更に入力制限トランジスタQ1をオンさせて、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力を制限(断)することとなる。
【0028】
しかし、一方で、D級アンプ部1の出力電圧は、+側出力電圧検出部6へ入力されるので、その電圧に基づいて、ダイオードD11、抵抗R13、R11の経路で電流が流れる。この電流により、抵抗R11の端子間電圧が大きくなり、その結果、抵抗R12の端子間電圧が小さくなるので、その分、トランジスタQ11のベース・エミッタ間に印加される電圧は、出力電流のみによる場合に比べて小さくなる。
【0029】
このように、D級アンプ部1の出力電流及び出力電圧が共に大の場合には、正常な動作の範疇であり、出力素子が壊れやすい状態ではない。かかる場合には、出力電流により得られた抵抗R12の端子間電圧は出力電圧により打ち消されるように作用するので、抵抗R12の端子間電圧は、トランジスタQ11のベース・エミッタ間電圧に満たず、トランジスタQ11はオンしない(オフとなる)。よって、入力制限トランジスタQ1はオンされず、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力は正常に行われる。従って、出力電流が大であっても出力電圧が大である場合には、保護回路4は動作しないので、D級アンプ部1の性能を充分に発揮することができる。
【0030】
一方、D級アンプ部1の出力電圧が小さいにも拘わらず出力電流が大きい場合には、両出力端子OP1,OP2が短絡していたり、定格外の低インピーダンスのスピーカ3等が接続されている状態であり、出力素子が壊れやすい状態である。かかる場合には、出力電流により得られた抵抗R12の端子間電圧は、出力電圧が小さいので打ち消されることはない。故に、抵抗R12の端子間電圧は、トランジスタQ11のベース・エミッタ間電圧より大となり、トランジスタQ11がオンされる。よって、トランジスタQ2、入力制限トランジスタQ1の順にオンされて、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力が制限(断)される。従って、出力電圧が小さく出力電流が大きい異常状態には、保護回路4が動作して入力信号を制限し、出力素子を保護することができる。
【0031】
次に、D級アンプ部1から負の電圧が出力されている場合について説明する。D級アンプ部1の出力電流は、グランドから電流検出用抵抗R3(この場合の抵抗R3は−側出力電流及び出力電圧検出部7の一部)及びスピーカ3を介して、D級アンプ部1へ流れ、その際に、抵抗R3で電圧に変換される。この変換された電圧によって、抵抗R21,R22に電流が流れ、その結果、抵抗R22の両端に電圧が生じる。この抵抗R22の端子間電圧がトランジスタQ21のベース・エミッタ間電圧(通常0.6ボルト)より大きくなると、トランジスタQ21がオンし、それがトランジスタQ22及びQ2をオンさせ、更に入力制限トランジスタQ1をオンさせて、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力を制限(断)することとなる。
【0032】
しかし、一方で、D級アンプ部1の出力電圧は、−側出力電流及び出力電圧検出部7へ入力されるので、その電圧に基づいて、グランド、抵抗R21、R23、ダイオードD21、D級アンプ部1の経路で電流が流れる。この電流により、抵抗R21の端子間電圧が大きくなり、その結果、抵抗R22の端子間電圧が小さくなるので、その分、トランジスタQ21のベース・エミッタ間に印加される電圧は、出力電流のみによる場合に比べて小さくなる。
【0033】
従って、D級アンプ部1から負の電圧が出力されている場合にも、正の電圧が出力されている場合と同様に、保護回路4は動作する。即ち、出力電流が大であっても出力電圧が大である場合には、保護回路4は動作せず、D級アンプ部1の性能を充分に発揮することができる。また、出力電圧が小さく出力電流が大きい異常状態には、保護回路4が動作して入力信号を制限し、出力素子を保護することができる。
【0034】
次に、図2を参照して、第2実施例のD級電力増幅装置20を説明する。図2は、第2実施例のD級電力増幅装置20の電気的構成を示したブロック図である。なお、前記した第1実施例のD級電力増幅装置10と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
第2実施例のD級電力増幅装置20は、第1実施例のD級電力増幅装置10の入力制限トランジスタQ1のコレクタ端子とD級アンプ部1の入力端との間に抵抗R20を挿入して構成される。このD級電力増幅装置20によれば、入力制限トランジスタQ1は、第1実施例のD級電力増幅装置10の場合と同様に動作するが、入力制限トランジスタQ1がオンされた場合には、D級アンプ部1へ入力されるオーディオ信号は、断されるのではなく、抵抗R20によって分圧されて減衰されるのである。即ち、入力制限トランジスタQ1のオンにより、D級アンプ部1への入力信号の入力レベルを小さく変更し、これにより出力電流を減少させ、D級アンプ部1内の出力素子を保護するのである。
【0036】
次に、図3を参照して、第3実施例のD級電力増幅装置30を説明する。図3は、第3実施例のD級電力増幅装置30の電気的構成を示したブロック図である。なお、前記した第1実施例のD級電力増幅装置10と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
第3実施例のD級電力増幅装置30は、第1実施例のD級電力増幅装置10の入力制限トランジスタQ1に代替して、N−MOS型の電界効果トランジスタQ30を使用し、これを抵抗R1とD級アンプ部1との間に接続して構成される。このトランジスタQ30のドレイン端子Dは抵抗R1及び抵抗R2と接続され、ソース端子SはD級アンプ部1の入力端と接続されている。また、ゲート端子Gは、制御部8の出力端である抵抗R4の一端と接続されている。
【0038】
このD級電力増幅装置30によれば、トランジスタQ30は、第1実施例の入力制限トランジスタQ1とは逆のオンオフ動作をする。即ち、D級アンプ部1の出力電流が大であっても出力電圧が大である場合には、トランジスタQ30はオンを維持し、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力は正常に行われる。よって、D級アンプ部1の性能を充分に発揮することができる。一方、D級アンプ部1の出力電圧が小さく出力電流が大きい異常状態には、トランジスタQ30がオフされて、D級アンプ部1へのオーディオ信号の入力が制限(断)される。よって、かかる異常状態には、D級アンプ部1内の出力素子を保護することができるのである。
【0039】
以上説明した通り、上記各実施例のD級電力増幅装置10〜30によれば、出力端子の短絡や定格外の低インピーダンスの負荷が接続される異常時には、D級アンプ部1への入力信号を断又は減衰して、過電流の出力を抑制し、D級アンプ部1内の出力素子を保護することができる。ここで、D級アンプ部1の入力側の電圧(又は電流)は、出力側に比べて小さいので、かかる入力信号の制御であれば、トランジスタQ1,Q30などの安価で高速に反応する半導体素子を使用することができる。また、これらの半導体素子Q1,Q30を動作させる保護回路4は、抵抗R3〜R7,R11〜R13,R20〜R25、ダイオードD11,D12,D21、トランジスタQ1,Q2,Q11,Q21,Q22,Q30といった簡易な素子で構成することができる。よって、D級アンプ部1内の出力素子を有効に保護できるD級電力増幅装置10〜30を、簡易に且つ安価に構成することができる。
【0040】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0041】
例えば、出力論理を反転することにより、上記各実施例で使用されるPNP型トランジスタ(或いはNPN型トランジスタ)を、NPN型トランジスタ(或いはPNP型トランジスタ)で構成したり、N−NOS型の電界効果トランジスタ(FET)を、P−MOS型の電界効果トランジスタで構成するようにしても良い。また、入力制限トランジスタQ1,Q30に代えて、フォトカプラを使用しても良い。更に、本実施例では、入力信号の一例として、オーディオ信号を例示したが、他の信号を入力信号として用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のD級電力増幅装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図2】第2実施例のD級電力増幅装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】第3実施例のD級電力増幅装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】従来技術におけるD級電力増幅装置の電気的構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 D級アンプ部(D級電力増幅器)
2 D級アンプ回路
3 スピーカ(負荷)
4 保護回路
5 +側出力電流検出部(電流検出手段)
6 +側出力電圧検出部(電圧検出手段、補正手段)
7 −側出力電流及び出力電圧検出部(電圧検出手段
、電流検出手段、補正手段)
8 制御部(制御手段)
10,20,30 D級電力増幅装置
IP 入力端子
OP1,OP2 出力端子
Q1(図1、第1実施例) トランジスタ(経路制御手段)
Q1(図2、第2実施例) トランジスタ(レベル制御手段の一部)
Q30(図3、第3実施例) 電界効果トランジスタ(経路制御手段)
R3 電流検出用抵抗(変換手段)
R12,R22 抵抗(生成手段)
R20(図2、第2実施例) 抵抗(レベル制御手段の一部)

Claims (4)

  1. D級増幅方式により入力信号を増幅するD級電力増幅器と、
    そのD級電力増幅器の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記D級電力増幅器の出力電流を検出する電流検出手段と、
    前記電圧検出手段により検出された出力電圧および前記電流検出手段により検出された出力電流に基づいて前記D級電力増幅器へ入力される入力信号を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするD級電力増幅装置。
  2. D級増幅方式により入力信号を増幅するD級電力増幅器と、
    そのD級電力増幅器の出力電流を電圧に変換する変換手段と、
    その変換手段により変換された電圧に基づいて電位差を生成する生成手段と、その生成手段により生成された電位差を、前記D級電力増幅器の出力電圧の絶対値が大きいほど小さくなるように補正する補正手段と、
    その補正手段により補正された電圧が所定値以上である場合に、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするD級電力増幅装置。
  3. 前記制御手段は、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号の入力経路を制御する経路制御手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のD級電力増幅装置。
  4. 前記制御手段は、前記D級電力増幅器へ入力される入力信号のレベルを制御するレベル制御手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のD級電力増幅装置。
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