JP2004214131A - 燃料電池の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料ガスと酸化剤ガスの圧力制御の応答性が変化する場合でも、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を許容値以下に抑制する。
【解決手段】燃料ガス目標圧力算出手段21,酸化剤ガス目標圧力算出手段22は、運転条件に基づいて、それぞれ水素の目標圧力、空気の目標圧力を算出する。圧力差検出手段は23は、水素入口圧力センサ6と空気入口圧力センサ10の検出値に基づいて水素と空気との圧力差を算出する。圧力位相検出手段24は、水素入口圧力センサ6及び空気入口圧力センサ10の検出値がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する。目標圧力変更手段25は、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する。
【選択図】 図2
【解決手段】燃料ガス目標圧力算出手段21,酸化剤ガス目標圧力算出手段22は、運転条件に基づいて、それぞれ水素の目標圧力、空気の目標圧力を算出する。圧力差検出手段は23は、水素入口圧力センサ6と空気入口圧力センサ10の検出値に基づいて水素と空気との圧力差を算出する。圧力位相検出手段24は、水素入口圧力センサ6及び空気入口圧力センサ10の検出値がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する。目標圧力変更手段25は、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の制御装置に係り、特に燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力を制御する燃料電池の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プロトン交換膜形燃料電池(PEM形燃料電池)を電源とした電気自動車の開発が行われている。このPEM形燃料電池は、燃料電池内の燃料ガス(水素)の圧力と酸化剤ガス(空気)の圧力との差が大きくなると効率が悪くなる恐れがあるため、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を許容値内となるように、燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力が制御される。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸化剤ガスの目標圧力に基づいて酸化剤ガスの圧力制御を行う一方、酸化剤ガスの実際の圧力を目標値として燃料ガスの圧力を制御し、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を所定の範囲内に抑えるシステムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−42839号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力制御の応答性は、燃料電池の状態によって変化する可能性がある。例えば、燃料ガス供給システムではエゼクタを使用して燃料電池から排出される燃料ガスを循環し、再利用する構成が考えられるが、燃料電池内部で酸化剤ガス(空気)中の窒素が燃料ガスに混入した場合には、燃料ガスの循環性能が低下し、圧力制御の応答性が低下する可能性がある。
【0006】
また、空気を酸化剤ガスとして利用した場合、大気圧や空気に含まれる水蒸気の蒸気圧の変化によって、酸化剤ガスの圧力制御の応答性が変化する場合がある。
【0007】
このように、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力制御の応答性が変化して、上記従来のシステムにおいて燃料ガスの圧力応答が酸化剤ガスの圧力応答にくらべて遅くなった場合には、燃料ガスの圧力変化が酸化剤ガスの圧力変化に追従することができず、その結果、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差の許容値を越えてしまう可能性があるという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、燃料電池の運転条件に基づいて、燃料極における燃料ガスの目標圧力を算出する燃料ガス目標圧力算出手段と、燃料電池の運転条件に基づいて、酸化剤極における酸化剤ガスの目標圧力を算出する酸化剤ガス目標圧力算出手段と、前記燃料ガスの圧力を検出する燃料ガス圧力検出手段と、前記酸化剤ガスの圧力を検出する酸化剤ガス圧力検出手段と、前記燃料ガスの目標圧力と前記検出した燃料ガスの圧力とに基づいて、前記燃料極における燃料ガスの圧力を制御する燃料ガス圧力制御手段と、前記酸化剤ガスの目標圧力と前記検出した酸化剤ガスの圧力とに基づいて、前記酸化剤極における酸化剤ガスの圧力を制御する酸化剤ガス圧力制御手段と、を備えた燃料電池の制御装置において、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとの圧力差を検出する圧力差検出手段と、前記燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力がそれぞれの目標圧力変化に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する圧力位相検出手段と、前記圧力差検出手段が検出した圧力差と前記圧力位相検出手段が検出した位相とに基づいて、前記燃料ガス目標圧力及び前記酸化剤ガス目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する目標圧力変更手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力応答性が変化した場合においても、燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差と、燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相と、に基づいて、いずれの圧力応答が速いかを判断することができ、圧力応答の速い方の圧力を変化させないように圧力応答の速い方の目標圧力を変更することによって圧力差の絶対値を減少させることができる。
【0010】
したがって、燃料ガスと酸化剤ガスで圧力応答が変化した場合においても、燃料ガスの圧力と酸化剤ガスの圧力の差の絶対値を所定範囲内に抑えることができるという効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料電池の制御装置の一実施形態が適用される燃料電池システムの構成を例示するシステム構成図である。
【0012】
図1において、燃料電池システムは、燃料極3a及び酸化剤極3bを備える燃料電池スタック3と、燃料極3aから排出される排水素ガスを燃料極3aの入口側へ還流させる水素循環流路2と、図外の水素供給源から供給される水素の圧力を調整する水素圧力制御弁9と、水素圧力調整弁9から供給される水素と水素循環流路2から還流する水素とを混合して燃料極3aに供給するエゼクタ1と、排水素ガスを系外へ放出する水素パージ弁4と、図外の空気供給源から酸化剤極3bへ空気を供給する空気供給流路5と、燃料極入口の水素圧力を検出する水素入口圧力センサ6と、酸化剤極出口から系外へ排出する空気量を絞る空気圧力制御弁7と、酸化剤極入口の空気圧力を検出する空気入口圧力センサ10と、燃料電池の出力電流を検出する電流センサ11と、燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサ12と、各センサの検出信号を入力して、各弁4,7,9を制御するコントローラ8と、を備えている。
【0013】
尚、燃料電池スタック3の温度を適温に制御する冷却系や水素ガス及び又は空気を加湿する加湿系等は、図1には図示を省略している。
【0014】
燃料となる水素は、図外の水素供給源から供給され、水素圧力制御弁9を経由して、エゼクタ1に供給される。エゼクタ1で水素循環流路2を通過してきた水素と混合され、燃料電池スタック3に供給される。燃料電池スタック3の入口での圧力は水素入口圧力センサ6で測定される。水素圧力制御弁9の制御は、水素入口圧力センサ6で測定される圧力と運転条件に従ってコントローラ8により行われる。
【0015】
通常運転時には水素パージ弁4は閉じており、燃料電池スタック3の燃料極3aから排出される水素は、水素循環流路2を介してエゼクタ1へ戻される。
【0016】
酸化剤となる空気は、図外の空気供給源から燃料電池スタック3の酸化剤極3bへ供給される。燃料電池スタック3の酸化剤極3b入口での空気の圧力は、空気入口圧力センサ10で測定され、空気圧力制御弁7で制御される。燃料電池スタック3の出力電流は電流センサ11で、出力電圧は電圧センサ12で測定される。
【0017】
本実施形態では、燃料電池スタック3の運転圧力は可変圧である。即ち、燃料電池スタック3から取り出す出力が高いときには、水素圧力及び空気圧力を高め、出力が低いときはこれらのガス圧力を低める。
【0018】
燃料電池スタック3内に水溢れ(以下フラッディング)等が発生した場合や、燃料電池スタック3の運転圧を低下させるときに水素パージ弁4を動作させて水素循環流路2および燃料極3aに存在する水素を排出する。
【0019】
これら圧力センサ6,10,電流センサ11,電圧センサ12の出力及び水素パージ弁4、空気圧力制御弁7,水素圧力制御弁10等のアクチュエータ駆動信号はコントローラ8に接続されている。コントローラ8は、特に限定されないが本実施形態では、I/Oインタフェース、プログラムROM、ワークRAM、及びCPUを備えたマイクロプロセッサで構成されている。
【0020】
図2は、本発明の実施形態におけるコントローラ8の機能構成を説明する制御ブロック図である。
【0021】
図2において、燃料電池の制御装置であるコントローラ8は、燃料電池の運転条件に基づいて、燃料極3aにおける水素の目標圧力を算出する燃料ガス目標圧力算出手段21と、燃料電池の運転条件に基づいて、酸化剤極3bにおける空気の目標圧力を算出する酸化剤ガス目標圧力算出手段22と、水素の目標圧力と水素入口圧力センサ6が検出した水素ガスの圧力とに基づいて燃料極3aにおける水素ガスの圧力を制御する燃料ガス圧力制御手段26と、空気の目標圧力と空気入口圧力センサ10が検出した空気の圧力とに基づいて、酸化剤極3bにおける空気の圧力を制御する酸化剤ガス圧力制御手段27と、水素と空気との圧力差を検出する圧力差検出手段23と、水素圧力及び空気圧力がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する圧力位相検出手段24と、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する目標圧力変更手段25と、を備えている。
【0022】
コントローラ8の概略動作は、以下の通りである。図外の入力装置等から与えられる運転条件に基づいて、燃料ガス目標圧力算出手段21,酸化剤ガス目標圧力算出手段22が、それぞれ水素の目標圧力、空気の目標圧力を算出する。圧力差検出手段は23は、水素入口圧力センサ6と空気入口圧力センサ10の検出値に基づいて、燃料極3a入口の水素と酸化剤極3bの入口の空気との圧力差を算出する。圧力位相検出手段24は、水素入口圧力センサ6及び空気入口圧力センサ10の検出値がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する。目標圧力変更手段25は、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更することができる。
【0023】
燃料ガス圧力制御手段26は、水素の目標圧力に基づいて水素圧力制御弁9の駆動信号を出力し、酸化剤ガス圧力制御手段27は、空気の目標圧力に基づいて空気圧力制御弁7の駆動信号を出力する。
【0024】
図3は、本実施形態における水素と空気の圧力制御方法を示した概略フローチャートであり、マイクロプロセッサ等を利用したコントローラの制御周期(例えば、10〔mS〕)毎に実行するものとする。
【0025】
尚、本実施形態は、水素と空気の圧力の変化がそれぞれの目標圧力の変化に対してともに先行していない場合の制御方法を説明する。水素あるいは空気の圧力の変化がそれぞれの目標圧力の変化に対して先行している場合には、圧力の変化が目標圧力の変化に対して先行しているガスの目標圧力を、本実施形態と同様に変更すればよい。
【0026】
まず、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、運転条件の読み込みを行う。ここでは、スタックの運転制御ロジックで定める目標グロス出力を読み込む。この目標グロス出力とは、空気を供給するコンプレッサや冷却水を循環させる冷却水ポンプ、ラジエータファン等の燃料電池補機の消費電力を差し引かない燃料電池スタックの発電出力である。
【0027】
次いで、S12において、目標グロス出力に基づいて水素(燃料ガス)の目標圧力tPh20 を算出する。これは図5に示したような、予め定義したグロス出力に対する目標水素ガス圧力のテーブルデータを用いて算出する。次いでS14において、目標グロス出力に基づいて空気の目標圧力tPair0を算出する。これも図5に示したような予め定義したグロス出力に対する目標空気圧力のテーブルデータを用いて算出する。
【0028】
S16では、水素入口圧力センサ6の信号に基づいて水素の圧力Ph2 を検出し、S18では空気入口圧力センサ10の信号に基づいて空気の圧力Pairを検出する。
【0029】
S20では、水素の圧力と空気の圧力との圧力差を求め(圧力差検出手段)、この圧力差の絶対値が、燃料電池の効率が悪くならないように設定した第1の所定値以上となった場合に、水素の圧力と空気の圧力とがそれぞれの目標圧力の変化に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出し(圧力位相検出手段)、この位相検出に基づいて、水素と空気のうち、目標圧力と実圧力の差である制御偏差の絶対値が小さい方のガスの圧力を変化させないように、該ガスの目標圧力を変更する(目標圧力変更手段)。詳細は後述のサブルーチンの説明で行う。
【0030】
S22では、S16で検出した水素の圧力Ph2 とS20で算出した水素の目標圧力tPh2に基づいて、水素圧力制御弁9の駆動信号を出力する。ここで、水素圧力制御弁9はPWM 制御で駆動するものとし、PID 制御などを用いて水素圧力制御弁9の駆動信号のデューティー比を算出する。尚、PID 制御は一般的なフィードバック制御であるのでその実現方法の説明は割愛する。次に、算出したデューティー比のPWM 駆動信号を出力する。
【0031】
S24では、S14で検出した空気の圧力PairとS20で算出した空気の目標圧力tPair に基づいて、空気圧力制御弁7を水素圧力制御弁9と同様に制御し、空気圧力制御弁7の駆動信号を出力する。
【0032】
図4は、図3のS20における目標圧力変更処理を行うサブルーチンを説明する詳細フローチャートである。
【0033】
まずS30では、式(1)に示した、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差を求め、圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 を超えているか判断している。
【0034】
【数1】
ΔP =|Ph2−Pair| …(1)
ここで第1の所定値SL1 は、燃料電池の効率が悪くならないように、水素と空気の圧力差の許容値をあらかじめ設定する。
【0035】
S30において、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 を超えている場合は、S32に進み、また、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 以下である場合は、S52に進む。
【0036】
S32では、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中であるか否かを、フラグflagの値に基づいて判断する。ガス目標圧力を変更している場合はフラグflagに1〜4の値がセットされている。尚、フラグflagのセット、クリアについての詳細は後述する。
【0037】
S32において、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれも変更していない場合(フラグflag=0)は、S34に進み、また、水素の目標圧力tPh2あるいは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中である場合は、処理を終了する。
【0038】
S34では、式(2)で表される水素の目標圧力tPh20 と水素の圧力Ph2 の差である制御偏差の絶対値εh2と、式(3)で表される空気の目標圧力tPair0と空気の圧力Pairの差である制御偏差の絶対値εair との大きさを比較する。
【数2】
εh2 =|tPh20 −Ph2 | …(2)
εair =|tPair0−Pair| …(3)
S34において、εair の値がεh2以上である場合、すなわち目標圧力に対する制御偏差が、水素に比べて空気の方が大きくなった場合には、S36に進み、逆の場合はS44に進む。
【0039】
S36では、水素目標圧力tPh20 と水素の圧力Ph2 を比較し、水素目標圧力の方が大きければS38でflagに1を代入してからS42へ進み、水素の圧力の方が大きければS40でflagに2を代入してS42へ進む。S42では、水素の目標圧力tPh2をその時点の水素の圧力Ph2 へ変更して処理を終える。
【0040】
S44では、空気目標圧力tPair0と空気の圧力Pairを比較し、空気目標圧力の方が大きければS46でflagに3を代入してからS50へ進み、空気の圧力の方が大きければS48でflagに4を代入してS50へ進む。S50では、空気の目標圧力tPair をその時点の空気の圧力Pairへ変更して処理を終える。
【0041】
S52では、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中であるか否かを、フラグflagの値に基づいて判断する。S52において水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中である場合(flag≠0)はS54に進み、また、水素の目標圧力tPh2と空気の目標圧力tPair の両方が変更中でない場合(flag=0)は処理を終了する。
【0042】
S54では、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 を下回っているか判断している。ここで、例えば水素の圧力と空気の圧力が等しくなったか判断するために第2の所定値SL2 には0を設定する。
【0043】
S54において水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 未満の場合は、S56に進み、また、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 以上の場合はS60へ進む。
【0044】
S60ではflagが1であるか判断し、flagが1である場合にはS62へ進み、flagが1でない場合はS64へ進む。
【0045】
S62ではflagを1にセットしたときの水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係と、現在の水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS64へ進む。
【0046】
S64ではflagが2であるか判断し、flagが2である場合にはS66へ進み、flagが2でない場合はS68へ進む。
【0047】
S66ではflagを2にセットしたときの水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係と、現在の水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS68へ進む。
【0048】
S68ではflagが3であるか判断し、flagが3である場合にはS70へ進み、flagが3でない場合はS72へ進む。
【0049】
S70ではflagを3にセットしたときの空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係と、現在の空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS72へ進む。
【0050】
S72ではflagが4であるか判断し、flagが4である場合にはS74へ進み、flagが4でない場合は処理を終了する。
【0051】
S74ではflagを4にセットしたときの空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係と、現在の空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合は処理を終了する。
【0052】
S56では、水素の目標圧力tPh2に図3のS12で算出した水素の目標圧力tPh20 を代入し、空気の目標圧力tPair に図3のS14で算出した空気の目標圧力tPair0を代入する。すなわち目標圧力の値を運転条件に基づいて算出した値に戻して、目標圧力を変更した運転状態を終了する。
【0053】
S58では、水素の目標圧力あるいは空気の目標圧力の変更を開始したことを示すフラグflagをクリアして処理を終了する。
【0054】
尚、本実施形態では燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気)との圧力差の絶対値を判断する第2の所定値SL2 を0としたが、燃料電池の発電効率が正常になる差圧であればSL2 を0以外の値としても良い。
【0055】
本発明によれば、水素の圧力応答の方が速い場合には、目標圧力を変化させた時の水素の圧力変化(水素流路内の圧力変化)と空気の圧力変化は図6のようになる。この場合は水素の圧力応答の方が速く、水素と空気の圧力差が許容値を超える可能性がある場合に、その時点の水素の圧力を保持するように水素の目標圧力を変更するので、水素と空気の圧力差が許容値(第1の所定値)を上回ることはない。したがって、水素と空気との圧力差が大きくなって燃料電池スタックの発電効率が低下することはない。
【0056】
また、本発明によれば、空気の圧力応答の方が速い場合には、水素の圧力変化(水素流路内の圧力変化)と空気の圧力変化は図7のようになる。水素と空気の圧力差が許容値を超える可能性がある場合に、その時点の空気の圧力を保持するように空気の目標圧力を変更するので、水素と空気の圧力差が許容値(第1の所定値)を上回ることはない。したがって、水素と空気の圧力差で燃料電池スタックの発電効率が低下することはない。
【0057】
このように、本発明によれば、水素と空気の圧力応答性が未知である場合においても、水素と空気の圧力差を許容値以内に抑えることができるので水素と空気の圧力差で燃料電池スタックの発電効率が低下することを防止できるという効果がある。
【0058】
また本発明によれば、目標圧力変更を開始する燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差である第1の所定値を燃料電池の効率が低下する燃料ガスの圧力と酸化剤ガスの圧力の差の絶対値に基づいて定めたので、燃料電池スタックの発電効率が低下することを防止できる。
【0059】
また本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差の絶対値が第2の所定値未満となった場合に、燃料ガス目標圧力あるいは酸化剤ガス目標圧力の変更を終了することとしたので燃料と酸化剤の圧力応答を可能な範囲で速くすることができる。
【0060】
さらに本発明によれば、第2の所定値を燃料電池の効率が正常となる燃料の圧力と酸化剤の圧力の差に基づいて定めるようにすれば、燃料電池の効率が低下しない範囲でかつ燃料と酸化剤の圧力応答を可能な範囲で速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の制御装置の一実施形態が適用される燃料電池システムの構成例を示すシステム構成図である。
【図2】実施形態におけるコントローラの構成を示す制御ブロック図である。
【図3】実施形態における水素ガス及び空気の圧力制御方法を説明するフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートの目標圧力変更のサブルーチンの内容を説明する詳細フローチャートである。
【図5】燃料電池スタックの運転条件(グロス発電量)からガス目標圧力を算出するためのテーブルデータである。
【図6】本実施形態における水素の圧力応答の方が空気と比較して速い場合の目標圧力変化時の水素と空気の圧力変化を説明する図である。
【図7】本実施形態における空気の圧力応答の方が水素と比較して速い場合の目標圧力変化時の水素と空気の圧力変化を説明する図である。
【符号の説明】
1…エゼクタ
2…水素循環流路
3…燃料電池スタック
3a…燃料極
3b…酸化剤極
4…水素パージ弁
5…空気供給通路
6…水素入口圧力センサ
7…空気圧力調整弁
8…コントローラ
9…水素圧力制御弁
10…空気入口圧力センサ
11…電圧センサ
12…電流センサ
21…燃料ガス目標圧力算出手段
22…酸化剤ガス目標圧力算出手段
23…圧力差検出手段
24…圧力位相検出手段
25…目標圧力変更手段
26…燃料ガス圧力制御手段
27…酸化剤ガス圧力制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の制御装置に係り、特に燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力を制御する燃料電池の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プロトン交換膜形燃料電池(PEM形燃料電池)を電源とした電気自動車の開発が行われている。このPEM形燃料電池は、燃料電池内の燃料ガス(水素)の圧力と酸化剤ガス(空気)の圧力との差が大きくなると効率が悪くなる恐れがあるため、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を許容値内となるように、燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力が制御される。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸化剤ガスの目標圧力に基づいて酸化剤ガスの圧力制御を行う一方、酸化剤ガスの実際の圧力を目標値として燃料ガスの圧力を制御し、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を所定の範囲内に抑えるシステムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−42839号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力制御の応答性は、燃料電池の状態によって変化する可能性がある。例えば、燃料ガス供給システムではエゼクタを使用して燃料電池から排出される燃料ガスを循環し、再利用する構成が考えられるが、燃料電池内部で酸化剤ガス(空気)中の窒素が燃料ガスに混入した場合には、燃料ガスの循環性能が低下し、圧力制御の応答性が低下する可能性がある。
【0006】
また、空気を酸化剤ガスとして利用した場合、大気圧や空気に含まれる水蒸気の蒸気圧の変化によって、酸化剤ガスの圧力制御の応答性が変化する場合がある。
【0007】
このように、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力制御の応答性が変化して、上記従来のシステムにおいて燃料ガスの圧力応答が酸化剤ガスの圧力応答にくらべて遅くなった場合には、燃料ガスの圧力変化が酸化剤ガスの圧力変化に追従することができず、その結果、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差の許容値を越えてしまう可能性があるという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、燃料電池の運転条件に基づいて、燃料極における燃料ガスの目標圧力を算出する燃料ガス目標圧力算出手段と、燃料電池の運転条件に基づいて、酸化剤極における酸化剤ガスの目標圧力を算出する酸化剤ガス目標圧力算出手段と、前記燃料ガスの圧力を検出する燃料ガス圧力検出手段と、前記酸化剤ガスの圧力を検出する酸化剤ガス圧力検出手段と、前記燃料ガスの目標圧力と前記検出した燃料ガスの圧力とに基づいて、前記燃料極における燃料ガスの圧力を制御する燃料ガス圧力制御手段と、前記酸化剤ガスの目標圧力と前記検出した酸化剤ガスの圧力とに基づいて、前記酸化剤極における酸化剤ガスの圧力を制御する酸化剤ガス圧力制御手段と、を備えた燃料電池の制御装置において、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとの圧力差を検出する圧力差検出手段と、前記燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力がそれぞれの目標圧力変化に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する圧力位相検出手段と、前記圧力差検出手段が検出した圧力差と前記圧力位相検出手段が検出した位相とに基づいて、前記燃料ガス目標圧力及び前記酸化剤ガス目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する目標圧力変更手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力応答性が変化した場合においても、燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差と、燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相と、に基づいて、いずれの圧力応答が速いかを判断することができ、圧力応答の速い方の圧力を変化させないように圧力応答の速い方の目標圧力を変更することによって圧力差の絶対値を減少させることができる。
【0010】
したがって、燃料ガスと酸化剤ガスで圧力応答が変化した場合においても、燃料ガスの圧力と酸化剤ガスの圧力の差の絶対値を所定範囲内に抑えることができるという効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料電池の制御装置の一実施形態が適用される燃料電池システムの構成を例示するシステム構成図である。
【0012】
図1において、燃料電池システムは、燃料極3a及び酸化剤極3bを備える燃料電池スタック3と、燃料極3aから排出される排水素ガスを燃料極3aの入口側へ還流させる水素循環流路2と、図外の水素供給源から供給される水素の圧力を調整する水素圧力制御弁9と、水素圧力調整弁9から供給される水素と水素循環流路2から還流する水素とを混合して燃料極3aに供給するエゼクタ1と、排水素ガスを系外へ放出する水素パージ弁4と、図外の空気供給源から酸化剤極3bへ空気を供給する空気供給流路5と、燃料極入口の水素圧力を検出する水素入口圧力センサ6と、酸化剤極出口から系外へ排出する空気量を絞る空気圧力制御弁7と、酸化剤極入口の空気圧力を検出する空気入口圧力センサ10と、燃料電池の出力電流を検出する電流センサ11と、燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサ12と、各センサの検出信号を入力して、各弁4,7,9を制御するコントローラ8と、を備えている。
【0013】
尚、燃料電池スタック3の温度を適温に制御する冷却系や水素ガス及び又は空気を加湿する加湿系等は、図1には図示を省略している。
【0014】
燃料となる水素は、図外の水素供給源から供給され、水素圧力制御弁9を経由して、エゼクタ1に供給される。エゼクタ1で水素循環流路2を通過してきた水素と混合され、燃料電池スタック3に供給される。燃料電池スタック3の入口での圧力は水素入口圧力センサ6で測定される。水素圧力制御弁9の制御は、水素入口圧力センサ6で測定される圧力と運転条件に従ってコントローラ8により行われる。
【0015】
通常運転時には水素パージ弁4は閉じており、燃料電池スタック3の燃料極3aから排出される水素は、水素循環流路2を介してエゼクタ1へ戻される。
【0016】
酸化剤となる空気は、図外の空気供給源から燃料電池スタック3の酸化剤極3bへ供給される。燃料電池スタック3の酸化剤極3b入口での空気の圧力は、空気入口圧力センサ10で測定され、空気圧力制御弁7で制御される。燃料電池スタック3の出力電流は電流センサ11で、出力電圧は電圧センサ12で測定される。
【0017】
本実施形態では、燃料電池スタック3の運転圧力は可変圧である。即ち、燃料電池スタック3から取り出す出力が高いときには、水素圧力及び空気圧力を高め、出力が低いときはこれらのガス圧力を低める。
【0018】
燃料電池スタック3内に水溢れ(以下フラッディング)等が発生した場合や、燃料電池スタック3の運転圧を低下させるときに水素パージ弁4を動作させて水素循環流路2および燃料極3aに存在する水素を排出する。
【0019】
これら圧力センサ6,10,電流センサ11,電圧センサ12の出力及び水素パージ弁4、空気圧力制御弁7,水素圧力制御弁10等のアクチュエータ駆動信号はコントローラ8に接続されている。コントローラ8は、特に限定されないが本実施形態では、I/Oインタフェース、プログラムROM、ワークRAM、及びCPUを備えたマイクロプロセッサで構成されている。
【0020】
図2は、本発明の実施形態におけるコントローラ8の機能構成を説明する制御ブロック図である。
【0021】
図2において、燃料電池の制御装置であるコントローラ8は、燃料電池の運転条件に基づいて、燃料極3aにおける水素の目標圧力を算出する燃料ガス目標圧力算出手段21と、燃料電池の運転条件に基づいて、酸化剤極3bにおける空気の目標圧力を算出する酸化剤ガス目標圧力算出手段22と、水素の目標圧力と水素入口圧力センサ6が検出した水素ガスの圧力とに基づいて燃料極3aにおける水素ガスの圧力を制御する燃料ガス圧力制御手段26と、空気の目標圧力と空気入口圧力センサ10が検出した空気の圧力とに基づいて、酸化剤極3bにおける空気の圧力を制御する酸化剤ガス圧力制御手段27と、水素と空気との圧力差を検出する圧力差検出手段23と、水素圧力及び空気圧力がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する圧力位相検出手段24と、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する目標圧力変更手段25と、を備えている。
【0022】
コントローラ8の概略動作は、以下の通りである。図外の入力装置等から与えられる運転条件に基づいて、燃料ガス目標圧力算出手段21,酸化剤ガス目標圧力算出手段22が、それぞれ水素の目標圧力、空気の目標圧力を算出する。圧力差検出手段は23は、水素入口圧力センサ6と空気入口圧力センサ10の検出値に基づいて、燃料極3a入口の水素と酸化剤極3bの入口の空気との圧力差を算出する。圧力位相検出手段24は、水素入口圧力センサ6及び空気入口圧力センサ10の検出値がそれぞれの目標圧力に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する。目標圧力変更手段25は、圧力差検出手段23が検出した圧力差と圧力位相検出手段24が検出した位相とに基づいて、水素目標圧力及び空気目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更することができる。
【0023】
燃料ガス圧力制御手段26は、水素の目標圧力に基づいて水素圧力制御弁9の駆動信号を出力し、酸化剤ガス圧力制御手段27は、空気の目標圧力に基づいて空気圧力制御弁7の駆動信号を出力する。
【0024】
図3は、本実施形態における水素と空気の圧力制御方法を示した概略フローチャートであり、マイクロプロセッサ等を利用したコントローラの制御周期(例えば、10〔mS〕)毎に実行するものとする。
【0025】
尚、本実施形態は、水素と空気の圧力の変化がそれぞれの目標圧力の変化に対してともに先行していない場合の制御方法を説明する。水素あるいは空気の圧力の変化がそれぞれの目標圧力の変化に対して先行している場合には、圧力の変化が目標圧力の変化に対して先行しているガスの目標圧力を、本実施形態と同様に変更すればよい。
【0026】
まず、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、運転条件の読み込みを行う。ここでは、スタックの運転制御ロジックで定める目標グロス出力を読み込む。この目標グロス出力とは、空気を供給するコンプレッサや冷却水を循環させる冷却水ポンプ、ラジエータファン等の燃料電池補機の消費電力を差し引かない燃料電池スタックの発電出力である。
【0027】
次いで、S12において、目標グロス出力に基づいて水素(燃料ガス)の目標圧力tPh20 を算出する。これは図5に示したような、予め定義したグロス出力に対する目標水素ガス圧力のテーブルデータを用いて算出する。次いでS14において、目標グロス出力に基づいて空気の目標圧力tPair0を算出する。これも図5に示したような予め定義したグロス出力に対する目標空気圧力のテーブルデータを用いて算出する。
【0028】
S16では、水素入口圧力センサ6の信号に基づいて水素の圧力Ph2 を検出し、S18では空気入口圧力センサ10の信号に基づいて空気の圧力Pairを検出する。
【0029】
S20では、水素の圧力と空気の圧力との圧力差を求め(圧力差検出手段)、この圧力差の絶対値が、燃料電池の効率が悪くならないように設定した第1の所定値以上となった場合に、水素の圧力と空気の圧力とがそれぞれの目標圧力の変化に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出し(圧力位相検出手段)、この位相検出に基づいて、水素と空気のうち、目標圧力と実圧力の差である制御偏差の絶対値が小さい方のガスの圧力を変化させないように、該ガスの目標圧力を変更する(目標圧力変更手段)。詳細は後述のサブルーチンの説明で行う。
【0030】
S22では、S16で検出した水素の圧力Ph2 とS20で算出した水素の目標圧力tPh2に基づいて、水素圧力制御弁9の駆動信号を出力する。ここで、水素圧力制御弁9はPWM 制御で駆動するものとし、PID 制御などを用いて水素圧力制御弁9の駆動信号のデューティー比を算出する。尚、PID 制御は一般的なフィードバック制御であるのでその実現方法の説明は割愛する。次に、算出したデューティー比のPWM 駆動信号を出力する。
【0031】
S24では、S14で検出した空気の圧力PairとS20で算出した空気の目標圧力tPair に基づいて、空気圧力制御弁7を水素圧力制御弁9と同様に制御し、空気圧力制御弁7の駆動信号を出力する。
【0032】
図4は、図3のS20における目標圧力変更処理を行うサブルーチンを説明する詳細フローチャートである。
【0033】
まずS30では、式(1)に示した、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差を求め、圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 を超えているか判断している。
【0034】
【数1】
ΔP =|Ph2−Pair| …(1)
ここで第1の所定値SL1 は、燃料電池の効率が悪くならないように、水素と空気の圧力差の許容値をあらかじめ設定する。
【0035】
S30において、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 を超えている場合は、S32に進み、また、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第1の所定値SL1 以下である場合は、S52に進む。
【0036】
S32では、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中であるか否かを、フラグflagの値に基づいて判断する。ガス目標圧力を変更している場合はフラグflagに1〜4の値がセットされている。尚、フラグflagのセット、クリアについての詳細は後述する。
【0037】
S32において、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれも変更していない場合(フラグflag=0)は、S34に進み、また、水素の目標圧力tPh2あるいは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中である場合は、処理を終了する。
【0038】
S34では、式(2)で表される水素の目標圧力tPh20 と水素の圧力Ph2 の差である制御偏差の絶対値εh2と、式(3)で表される空気の目標圧力tPair0と空気の圧力Pairの差である制御偏差の絶対値εair との大きさを比較する。
【数2】
εh2 =|tPh20 −Ph2 | …(2)
εair =|tPair0−Pair| …(3)
S34において、εair の値がεh2以上である場合、すなわち目標圧力に対する制御偏差が、水素に比べて空気の方が大きくなった場合には、S36に進み、逆の場合はS44に進む。
【0039】
S36では、水素目標圧力tPh20 と水素の圧力Ph2 を比較し、水素目標圧力の方が大きければS38でflagに1を代入してからS42へ進み、水素の圧力の方が大きければS40でflagに2を代入してS42へ進む。S42では、水素の目標圧力tPh2をその時点の水素の圧力Ph2 へ変更して処理を終える。
【0040】
S44では、空気目標圧力tPair0と空気の圧力Pairを比較し、空気目標圧力の方が大きければS46でflagに3を代入してからS50へ進み、空気の圧力の方が大きければS48でflagに4を代入してS50へ進む。S50では、空気の目標圧力tPair をその時点の空気の圧力Pairへ変更して処理を終える。
【0041】
S52では、水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中であるか否かを、フラグflagの値に基づいて判断する。S52において水素の目標圧力tPh2もしくは空気の目標圧力tPair のいずれかが変更中である場合(flag≠0)はS54に進み、また、水素の目標圧力tPh2と空気の目標圧力tPair の両方が変更中でない場合(flag=0)は処理を終了する。
【0042】
S54では、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 を下回っているか判断している。ここで、例えば水素の圧力と空気の圧力が等しくなったか判断するために第2の所定値SL2 には0を設定する。
【0043】
S54において水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 未満の場合は、S56に進み、また、水素の圧力Ph2 と空気の圧力Pairの圧力差の絶対値ΔP が第2の所定値SL2 以上の場合はS60へ進む。
【0044】
S60ではflagが1であるか判断し、flagが1である場合にはS62へ進み、flagが1でない場合はS64へ進む。
【0045】
S62ではflagを1にセットしたときの水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係と、現在の水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS64へ進む。
【0046】
S64ではflagが2であるか判断し、flagが2である場合にはS66へ進み、flagが2でない場合はS68へ進む。
【0047】
S66ではflagを2にセットしたときの水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係と、現在の水素目標圧力tPh2と水素の圧力Ph2 の大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS68へ進む。
【0048】
S68ではflagが3であるか判断し、flagが3である場合にはS70へ進み、flagが3でない場合はS72へ進む。
【0049】
S70ではflagを3にセットしたときの空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係と、現在の空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合はS72へ進む。
【0050】
S72ではflagが4であるか判断し、flagが4である場合にはS74へ進み、flagが4でない場合は処理を終了する。
【0051】
S74ではflagを4にセットしたときの空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係と、現在の空気目標圧力tPair と空気の圧力Pairの大小関係が異なる場合はS56へ進み、大小関係が同じ場合は処理を終了する。
【0052】
S56では、水素の目標圧力tPh2に図3のS12で算出した水素の目標圧力tPh20 を代入し、空気の目標圧力tPair に図3のS14で算出した空気の目標圧力tPair0を代入する。すなわち目標圧力の値を運転条件に基づいて算出した値に戻して、目標圧力を変更した運転状態を終了する。
【0053】
S58では、水素の目標圧力あるいは空気の目標圧力の変更を開始したことを示すフラグflagをクリアして処理を終了する。
【0054】
尚、本実施形態では燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気)との圧力差の絶対値を判断する第2の所定値SL2 を0としたが、燃料電池の発電効率が正常になる差圧であればSL2 を0以外の値としても良い。
【0055】
本発明によれば、水素の圧力応答の方が速い場合には、目標圧力を変化させた時の水素の圧力変化(水素流路内の圧力変化)と空気の圧力変化は図6のようになる。この場合は水素の圧力応答の方が速く、水素と空気の圧力差が許容値を超える可能性がある場合に、その時点の水素の圧力を保持するように水素の目標圧力を変更するので、水素と空気の圧力差が許容値(第1の所定値)を上回ることはない。したがって、水素と空気との圧力差が大きくなって燃料電池スタックの発電効率が低下することはない。
【0056】
また、本発明によれば、空気の圧力応答の方が速い場合には、水素の圧力変化(水素流路内の圧力変化)と空気の圧力変化は図7のようになる。水素と空気の圧力差が許容値を超える可能性がある場合に、その時点の空気の圧力を保持するように空気の目標圧力を変更するので、水素と空気の圧力差が許容値(第1の所定値)を上回ることはない。したがって、水素と空気の圧力差で燃料電池スタックの発電効率が低下することはない。
【0057】
このように、本発明によれば、水素と空気の圧力応答性が未知である場合においても、水素と空気の圧力差を許容値以内に抑えることができるので水素と空気の圧力差で燃料電池スタックの発電効率が低下することを防止できるという効果がある。
【0058】
また本発明によれば、目標圧力変更を開始する燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差である第1の所定値を燃料電池の効率が低下する燃料ガスの圧力と酸化剤ガスの圧力の差の絶対値に基づいて定めたので、燃料電池スタックの発電効率が低下することを防止できる。
【0059】
また本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差の絶対値が第2の所定値未満となった場合に、燃料ガス目標圧力あるいは酸化剤ガス目標圧力の変更を終了することとしたので燃料と酸化剤の圧力応答を可能な範囲で速くすることができる。
【0060】
さらに本発明によれば、第2の所定値を燃料電池の効率が正常となる燃料の圧力と酸化剤の圧力の差に基づいて定めるようにすれば、燃料電池の効率が低下しない範囲でかつ燃料と酸化剤の圧力応答を可能な範囲で速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の制御装置の一実施形態が適用される燃料電池システムの構成例を示すシステム構成図である。
【図2】実施形態におけるコントローラの構成を示す制御ブロック図である。
【図3】実施形態における水素ガス及び空気の圧力制御方法を説明するフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートの目標圧力変更のサブルーチンの内容を説明する詳細フローチャートである。
【図5】燃料電池スタックの運転条件(グロス発電量)からガス目標圧力を算出するためのテーブルデータである。
【図6】本実施形態における水素の圧力応答の方が空気と比較して速い場合の目標圧力変化時の水素と空気の圧力変化を説明する図である。
【図7】本実施形態における空気の圧力応答の方が水素と比較して速い場合の目標圧力変化時の水素と空気の圧力変化を説明する図である。
【符号の説明】
1…エゼクタ
2…水素循環流路
3…燃料電池スタック
3a…燃料極
3b…酸化剤極
4…水素パージ弁
5…空気供給通路
6…水素入口圧力センサ
7…空気圧力調整弁
8…コントローラ
9…水素圧力制御弁
10…空気入口圧力センサ
11…電圧センサ
12…電流センサ
21…燃料ガス目標圧力算出手段
22…酸化剤ガス目標圧力算出手段
23…圧力差検出手段
24…圧力位相検出手段
25…目標圧力変更手段
26…燃料ガス圧力制御手段
27…酸化剤ガス圧力制御手段
Claims (5)
- 燃料電池の運転条件に基づいて、燃料極における燃料ガスの目標圧力を算出する燃料ガス目標圧力算出手段と、
燃料電池の運転条件に基づいて、酸化剤極における酸化剤ガスの目標圧力を算出する酸化剤ガス目標圧力算出手段と、
前記燃料ガスの圧力を検出する燃料ガス圧力検出手段と、
前記酸化剤ガスの圧力を検出する酸化剤ガス圧力検出手段と、
前記燃料ガスの目標圧力と前記検出した燃料ガスの圧力とに基づいて、前記燃料極における燃料ガスの圧力を制御する燃料ガス圧力制御手段と、
前記酸化剤ガスの目標圧力と前記検出した酸化剤ガスの圧力とに基づいて、前記酸化剤極における酸化剤ガスの圧力を制御する酸化剤ガス圧力制御手段と、
を備えた燃料電池の制御装置において、
前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとの圧力差を検出する圧力差検出手段と、
前記燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力がそれぞれの目標圧力変化に対して先行しているか遅行しているかを示す位相を検出する圧力位相検出手段と、
前記圧力差検出手段が検出した圧力差と前記圧力位相検出手段が検出した位相とに基づいて、前記燃料ガス目標圧力及び前記酸化剤ガス目標圧力の、少なくともいずれか一方を変更する目標圧力変更手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池の制御装置。 - 前記目標圧力変更手段は、
前記圧力差検出手段が検出した圧力差の絶対値が第1の所定値以上となり、かつ前記圧力位相検出手段が検出した燃料ガスまたは酸化剤ガスの圧力の位相がそれぞれの目標圧力変化に対して先行している場合は、前記燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差の絶対値が小さくなるように、その先行している燃料ガスあるいは酸化剤ガスの目標圧力を変更する一方、
前記圧力差検出手段が検出した圧力差の絶対値が第1の所定値以上となり、かつ前記圧力位相検出手段が検出した燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力の位相がそれぞれの目標圧力変化に対してともに先行していない場合は、前記燃料ガス目標圧力と前記燃料ガス圧力との差である燃料ガス圧力の制御偏差の絶対値と、前記酸化剤ガス目標圧力と酸化剤ガス圧力との差である酸化剤ガス圧力の制御偏差の絶対値とを比較し、制御偏差の絶対値が小さい方のガスの目標圧力を前記燃料ガスと酸化剤ガスとの圧力差の絶対値が小さくなるように変更することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の制御装置。 - 前記第1の所定値は、燃料電池の効率が低下する前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとの圧力差の絶対値に基づいて定めたことを特徴とする請求項2記載の燃料電池の制御装置。
- 前記目標圧力変更手段は、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとの圧力差の絶対値が第1の所定値より小さい第2の所定値未満となった場合に、前記燃料ガス目標圧力あるいは前記酸化剤ガス目標圧力の変更を終了することを特徴とする請求項2または請求項3記載の燃料電池の制御装置。
- 前記第2の所定値は、前記燃料電池の効率が正常となる前記燃料ガスの圧力と前記酸化剤ガスの圧力との圧力差に基づいて定めたことを特徴とする請求項4記載の燃料電池の制御装置。
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