JP2004211315A - 枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強構造及び補強工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】並立する既存コンクリート柱と上下のコンクリート梁とで形成される空間に枠付き鉄骨ブレースを配設すると共に、該枠付き鉄骨ブレースの枠体の外周面と既存コンクリート柱及び上下のコンクリート梁との間に形成される空隙に、接合部押圧用チューブに充填する方法でモルタルを配設し、硬化したモルタルにより前記枠付き鉄骨ブレースの支持固定並びに既存コンクリート躯体からの応力伝達を行う構成であることを特徴とする枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強構造である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート造或いは鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物などの耐震補強として枠付き鉄骨ブレースを増設する、耐震補強構造及び補強工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存のコンクリート造建物の耐震強度を高める技術として、既存建物の柱及び梁に対して枠付き鉄骨ブレースを増設する工法が知られている(特許文献1、2及び非特許文献1参照)。
【0003】
既存の工法は、一般的に、既存建物の柱及び梁へのアンカーボルトの打設、スパイラル筋の敷設、型枠設置、モルタルの注入、モルタルの養生をまっての脱型枠などの工程により行われるが、枠付き鉄骨ブレースの具体的構成や、枠付き鉄骨ブレースを既存建物の柱及び梁に対してどのように取り付けるかの構成の点に違いがある。
【0004】
非特許文献1に示す従来工法では、図14に示すように、枠付き鉄骨ブレースを既存建物の柱及び梁に固定するのに、アンカーを利用している。
【0005】
特許文献3に記載の枠付き鉄骨ブレース増設工法では、既存の柱梁フレームとその面内へ組み入れた枠付き鉄骨ブレースとの各接触面の間を接着材で接着する工法が行われる。この工法は、上記特許文献1及び2、非特許文献1に記載の従来工法を施工する上で指摘されていた騒音や振動の発生を避けて「建物を利用しながらの補強工事」を可能にすると共に、工期の短縮を図り、コストの低減を可能ならしめることを課題としている。
【0006】
また、特許文献4に記載の工法では、図15に示すように、建物架構と鉄骨ブレースとの間に、グラウト材(モルタル)を充填して、このグラウト材によって両者間の応力の伝達が行われる技術も知られている。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−31143号公報
【特許文献2】特公平7−51803号公報
【特許文献3】特開平11−71906号公報
【特許文献4】特開2000−303701
【0008】
【非特許文献1】「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説」第179〜211頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の枠付き鉄骨ブレース増設による耐震補強工法では、既存建物の柱及び梁へのアンカーボルトの打設、スパイラル筋の敷設、型枠設置、モルタルの注入、モルタルの養生をまっての脱型枠などの工程を必要としているため、騒音や振動が伴い、また、粉塵の発生もあるので、建物を利用しながら施工する補強工事には不向きであったし、工期やコストの面にも改善すべき点があった。特許文献3に記載の工法は、コストが高く、また、専門職による施工が必要である、という難点があり、また、特許文献4に記載の工法は、型枠設置、モルタル養生、脱型などといった工程があり、工期が長くなるという問題を残している。
【0010】
アンカーにより枠付き鉄骨ブレースの枠体を固定する従来工法では、既存の柱梁のコンクリート強度が小さい場合、打設されたアンカーが所定の強度を発揮できなくなり、充分な耐震補強を行うことができない。更に、従来の工法では、アンカーを打設するためのスペースを確保するために、枠付き鉄骨ブレースの枠体のウエブ面を柱の内側面や梁の上下面に並行に配置する必要があるが、充填するモルタルの量が多くなると共に、H形鋼の強軸を柱梁フレームの構面と並行に配置することになるので、構面内耐力の小さい耐震壁として力学的にも不利なものとなってしまう、難点がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑み、騒音や振動が発生せず、建物を利用しながら施工する補強工事が可能であり、短期間に低コストで施工できる枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強構造及び補強工法を明らかにすることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
(1)並立する既存コンクリート柱と上下のコンクリート梁とで形成される空間に枠付き鉄骨ブレースを配設すると共に、該枠付き鉄骨ブレースの枠体の外周面と既存コンクリート柱及び上下のコンクリート梁との間に形成される空隙に、接合部押圧用チューブに充填する方法でモルタルを配設し、硬化したモルタルにより前記枠付き鉄骨ブレースの支持固定並びに既存コンクリート躯体からの応力伝達を行う構成であることを特徴とする枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強構造。
【0013】
(2)接合部押圧用チューブが、分割された複数の部材であることを特徴とする上記(1)に記載の耐震補強構造。
【0014】
(3)接合部押圧用チューブが、連続した単一の部材であることを特徴とする上記(1)に記載の耐震補強構造。
【0015】
(4)既存コンクリート躯体と枠付き鉄骨ブレースの枠体との間に、連結補助機構が配置されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の耐震補強構造。
【0016】
(5)並立する既存コンクリート柱と上下の梁とで形成される空間に枠付き鉄骨ブレースを配設し、次いで、この枠付き鉄骨ブレースの枠体の外周面と既存コンクリート柱及び上下のコンクリート梁との間に形成される空隙に接合部押圧用チューブを配設し、該接合部押圧用チューブ内にモルタルを圧力充填し、該モルタルの硬化をまって前記枠付き鉄骨ブレースの支持固定並びに既存コンクリート躯体からの応力伝達を行うことを特徴とする枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強工法。
【0017】
(6)モルタルの充填が、分割された複数の接合部押圧用チューブに対して行われることを特徴とする上記(5)に記載の耐震補強工法。
【0018】
(7)モルタルの充填が、連続した単一の部材である接合部押圧用チューブに対して行われることを特徴とする上記(5)に記載の耐震補強工法。
【0019】
(8)既存コンクリート躯体と枠付き鉄骨ブレースの枠体との間に、連結補助機構が配置されていることを特徴とする上記(5)〜(7)の何れかに記載の耐震補強工法。
【0020】
尚、本明細書において、モルタルとは狭義のモルタルに限らず、流動性があり乍ら硬化固形化する硬化性流動体又はその硬化固形体を意味する。
【0021】
【発明の実施の形態】
図面に従って、本発明に係る枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強工法を詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、既存コンクリート建造物の柱10と梁11・12とで囲まれた壁面空間の1コマに、枠付き鉄骨ブレース20を配設する。枠付き鉄骨ブレース20それ自体の構成は、従来工法(前記非特許文献1第195頁「解図3、4、4−1ブレース架構の形状」参照)と基本的に異なることがなく、例えばH型鋼により形成される。この枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外形寸法は、柱10と梁11・12とで囲まれた壁面空間の内径より小となるように設定されており、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周面と柱10及び梁11・12との間の空隙に、接合部押圧用チューブ30が配設される。従って、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外形寸法は、この接合部押圧用チューブ30の配設を考慮して規定されるということもできる。
【0023】
接合部押圧用チューブ30は、可撓性を有し、充填したモルタルの圧力に対して十分な強度を有する材料であることが好ましい。この接合部押圧用チューブ30は、充填されたモルタルの圧力で膨出し、柱10乃至梁11・12の内周面と枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周面との間の間隙(本明細書において、接合部という。)を埋めながら、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aを支持するよう機能するので、所定の強度が必要である。
【0024】
従って、特に壁の面内方向(図2の矢符A方向)にチューブが変形して加圧することが有効であり、壁の面外方向(図2の矢符B方向)への変形は、基本的には不必要である。むしろ、壁の面外方向への変形によって、壁の面内方向に変形して働く力が弱まる(逃げる)場合には、好ましくない変形である。
【0025】
このため、接合部押圧用チューブ30としては、主として矢符A方向に変形するよう、例えば肉厚を調整する、変形方向を規制する被覆材で被覆する、一部又は全部に繊維補強合成樹脂材を利用するなどして変形方向を規制する、などの対応を行うことができる。
【0026】
図4に示すように、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周面にコッター22を配設する構成により、耐震補強の強度を高めることができる。
【0027】
尚、柱10と梁11乃至12の内周面側にもコッター22を配設する構成も採用できるが、この場合、騒音や振動が発生する工法でのコッター22の配設工法は避ける必要がある。このため、例えば接着剤による接着によってもよい。
【0028】
上記したコッター22を配設する態様に代えて、或いはこれと併用して、少なくとも枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周面、並びに柱10と梁11・12の内周面に接触する部位の接合部押圧用チューブ30の表面を摩擦係数の高い粗面に構成するか、或いは摩擦係数の高い素材又は表面形状のもので形成した板状或いは薄葉状の部材を貼付するなどの態様を行うことができる。
【0029】
接合部押圧用チューブ30の配設は、枠付き鉄骨ブレース20の配設に連携して行うが、その際、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周面か、或いは柱10、梁11・12の内周面のどちらか一方の側に接着剤を利用して張り付ける工程が行われることが好ましい。
【0030】
図5に示すように、接合部押圧用チューブ30が、壁の面外方向(図2の矢符B方向)に変形するのを規制するために、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周に、例えば溝形鋼などで形成したチューブ変形規制部材21を配設する構成も好ましい。このような構成によれば、接合部押圧用チューブ30が予め枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの外周に配設された状態で施工することができ、使い勝手がよいだけでなく、工期の短縮にも有効である。
【0031】
接合部押圧用チューブ30は、空隙の全周にわたって連続した1本構成とすることもできるし、空隙の方向に対応させて縦用と横用とに分割された複数の構成とする等、任意の構成とすることができる。複数の構成では、モルタルの充填が1回で行われるように、分割されたチューブ相互間を、コーナー部分で連続させるモルタル案内管を配設する構成としてもよい。
【0032】
図6〜図8に従って、上記した連結補助機構の具体例を示す。
【0033】
図6に示す連結補助機構の態様は、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aを構成するH形鋼の端部に挟み込む形で取り付ける連結補助部材23と、梁12の側に配設する連結補助部材24とから成り、両者の間をボルト25とナット26とで連結する。ボルトナットは、矢符方向に力が加わるように取り付ける。図示の如き連結補助部材を枠付き鉄骨ブレース20の四周に配設することにより、1種のスぺーサーとしても機能し、施工工程の途中では、枠付き鉄骨ブレース20は取り付け空間に宙吊りの形で保持させることができ、接合部押圧用チューブ30の配設及びモルタルの充填工程を確実且つ迅速に行うことができる。
【0034】
また、上記したように、図示の連結補助部材23・24を、モルタルの充填・硬化の後も残置させておく態様とすることにより、モルタルのみによる枠付き鉄骨ブレース20の固定と比較して強い機械的強度が得られる。
【0035】
尚、連結補助部材23は、図示の如く、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aに対して着脱自在に構成する外、ボルト25のための孔を有する板材を枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aの端部に溶接しておく構成とすることもできる。
【0036】
図7に示す連結補助機構の態様は、枠付き鉄骨ブレース20の枠体20Aを構成するH型鋼に穿ったボルト孔27にナット26を溶接により固着して、ボルト25を配した構成である。
【0037】
図8に示す連結補助機構の態様は、帯状金属材などで形成した連結補助機構のフレーム28を、所定の間隔で、互いに反対方向に配設して、枠付き鉄骨ブレース20の位置ぎめ・支持を行う構成である。
【0038】
上記態様の連結補助機構のフレーム28は、配設する接合部押圧用チューブ30の壁の面外方向移動規制部材としても機能する。
【0039】
本発明に係る工法を実施するに当たって用いられる接合部押圧用チューブ30は、可撓性(易変形性)を有し、内部へのモルタルの注入に伴って膨出するチューブ(袋体)が使用されるが、素材としてはゴムのように高い弾性伸びを示す場合には、内部にモルタルを注入しても非拘束側、この場合は左右面側を膨らましながら圧力が逃げてしまい加圧効率が悪いため、例えば合成繊維織物またはガラス繊維織物などの弾性伸びの小さくかつ所定の引張強度を有する素材に遮水機能を持たせるためのコーティングを施したものが好適に使用される。また断面形状は、円断面の他、縦長の方形断面等、膨出状態で接合部を効率よく加圧できれば任意の断面形状とすることができる。
【0040】
接合部押圧用チューブ30の構造は、図9及び図10に示されるように、両端部にそれぞれ開閉バルブ31、32を備えるようにし、これらの開閉バルブ31、32の一方側をモルタルの注入口として使用し、他方側をエア抜き孔として使用するようにする。具体的には、開閉バルブ31の側にモルタルの供給ホースを接続し、他方の開閉バルブ32は空気の排出路とするためコック32aを開としておき、前記モルタル注入側開閉バルブ31のコック31aを開いて圧送ポンプによって送られたモルタルを接合部押圧用チューブ30内に注入し、その後開閉バルブ32側からモルタルが吐出したことを確認したならばコック32aを閉じるようにする。続けて、接合部に対する加圧を行うには、所定の加圧力になるまでモルタルの注入を継続して行った後、コック31aを閉じる。所定の加圧力になったかどうかは、例えば、接合部の中間に軸力計を挿入しこれを計測することにより確認することができる。
【0041】
ところで、比較的粘性のあるモルタルやコンクリート等を使用した場合、本発明者等による実験によれば、条件によっては相対的に注入側の加圧力が高く、距離が離れるに従って徐々に加圧力が減少していることが知見された。その結果、遠方側で所定の加圧力を確保するためには、注入側近傍の圧力が高くなりすぎ無駄があることが判明した。本発明では、このような加圧力の偏りを無くすためには、例えば、図11に示されるように内部に内部加圧用チューブ34を備えた二重チューブ33が提案される。
【0042】
図11に示される二重チューブ33の第1例は、可撓性を有する接合部押圧用チューブ30と、この接合部押圧用チューブ30内部に内設されるとともに、一方端から所定長さを有し他方端開口34aを接合部押圧用チューブ30内部に臨ませた内部加圧用チューブ34とからなり、一方端側に前記内部加圧用チューブ34内への連通路を開閉するバルブ35を備え、かつ他方端側に前記接合部押圧用チューブ30内への連通路を開閉するバルブ36を備えた構造となっている。
【0043】
先ず、他方側開閉バルブ36を開いてエア抜き孔とした状態で、内部加圧用チューブ34を通して接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ34との空間部分に相対的に高い粘性を有するモルタルまたはコンクリート等の硬化性材料を充填(一次注入)し、接合部の間詰めを行う。開閉バルブ36側から前記モルタルが吐出したことを確認したならばコック36aを閉じるようにする。次いで前記間詰め工程に連続して、前記内部加圧用チューブ34を通して相対的に粘性の低い流動性材料、例えば水、水セメント比の大きいモルタル、セメントミルク等を加圧注入(二次注入)し、加圧力の均等化を図りながら接合部への加圧を行うようにする。前記二次注入によって内部加圧用チューブ34が径を拡大するように膨出することで接合部押圧用チューブ30が膨出し長手方向に均等に加圧力を発生させるようになる。なお、前記モルタルの一次注入は反対側の開閉バルブ36側から行うようにしてもよい。また、前記内部加圧用チューブ34は、ある程度以上の圧力になると、チューブ壁面から二次注入が滲出するようにし全体を均一に加圧することもできる。
【0044】
次いで、第2の態様としては、図12に示される二重チューブ33´はチューブ(袋体)構造を略同一として、一方端側に前記接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ34との空間への連通路を開閉すると共に、前記内部加圧用チューブ34内への連通路を開閉する二重構造バルブ37を備え、他方端側に前記接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ34との間の空間への連通路を開閉するバルブ36を備えた構造となっている。尚、36a、37aは、バルブ36、37を開閉するコックを示す。
【0045】
先ず、コック36aによって他方側開閉バルブ36を開としてエア抜き孔とした状態で、接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ34との間の空間部分に例えばモルタルまたはコンクリート等の硬化性流動体を充填(一次注入)し、接合部の間詰めを行った後、次いで前記間詰め工程に連続して、前記内部加圧用チューブ34を通して、例えば水、水セメント比の大きいモルタル等を加圧注入(二次注入)し加圧力の均等化を図りながら接合部への加圧を行うようにする。前記二次注入によって内部加圧用チューブ34が径を拡大するように膨出することで接合部押圧用チューブ30が膨出し長手方向に均等に加圧力を発生させるようになるとともに、粘性の低い二次注入材料が内部加圧用チューブ34の他方端開口34aを中心として注入され、内部加圧用チューブ34の他方端開口34a側の加圧力が増大されることにより加圧力の偏りが補正され、より一層加圧力の均等化が図れるようになる。
【0046】
更に、第3の態様に係る二重チューブ(袋体)38は、図13に示されるように、可撓性を有する接合部押圧用チューブ30と、この接合部押圧用チューブ30内部に端部間に亘って内設され開放部を有しない内部加圧用チューブ39とからなり、一方端側に前記接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ39との空間への連通路を開閉するとともに、前記内部加圧用チューブ39内への連通路を開閉する二重構造バルブ37を備え、他方端側に前記接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ39との間の空間への連通路を開閉するバルブ40を備えた構造となっている。なお、前記他方側の開閉バルブも二重構造バルブ37としてもよい。。尚また、37a、37b、40aはコックを示す。
【0047】
かかる二重チューブ(袋体)38の場合は、コック40aによって他方側開閉バルブ40を開としてエア抜き孔とした状態で、先ず前記二重構造バルブ37のコック37aを開操作し、前記接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ39との空間への連通路を開けるとともに、接合部押圧用チューブ30と内部加圧用チューブ39との間の空間部に例えばモルタルまたはコンクリート等の硬化性流動体を充填(一次注入)する。その後、開閉バルブ40から一次注入流動体が吐出したことを確認したならば開閉バルブ40を締め、接合部押圧用チューブ30内に一次注入流動体が充満したならば二重構造バルブ37のコック37aを閉め、接合部の間詰めを完了する。次いで前記二重構造バルブ37のコック37bを開操作し、内部加圧用チューブ39への連通路を開け、前記内部加圧用チューブ39内に例えば水、水セメント比の大きいモルタル等を加圧注入(二次注入)し加圧力の均等化を図りながら接合部への加圧を行うようにする。
【0048】
以上の要領により、接合部の間詰めと、接合部の加圧とを完了したならば、数分間そのまま放置し加圧力が低下していないかを確認し、必要に応じて再注入を行う。この再注入はその後においても、接合部の加圧力が低下した任意の時に行うことができる。
【0049】
尚、本発明に係る枠付き鉄骨ブレースによる補強工法を行うに際し、既存コンクリート躯体と枠付き鉄骨ブレース20とを連結する連結補助機構として、既存コンクリート躯体に対して何らの加工工程を必要としない部材を介在させることができる。また、この補助部材は、モルタルの硬化をまって取り外してしまう態様と、そのまま残置させておく態様とがある。
【0050】
本発明に係る工法では、枠付き鉄骨ブレース20の支持固定及び躯体からの応力伝達が、接合部押圧用チューブ30内に充填したモルタルにより行われるので、接合部押圧用チューブ30を配設する部位における既存柱梁の仕上げモルタル強度に耐震上問題がある場合には、この仕上げモルタルを剥離除去してから本発明の工法を施工する必要がある。逆に、既存仕上げモルタル強度が十分であれば、仕上げモルタルを除去することなくそのまま本発明に係る工法を施工することが可能である。
【0051】
本発明は、既存建物架構がRC造である態様に限定されるものではなく、例えば、既存建物架構がSRC造やS造、木造等であっても適用することができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明に係る工法によれば、既存のコンクリート造建築物の壁空間(並立する柱と上下の梁とで形成される空間)に配置する枠付き鉄骨ブレースを、チューブ内に充填したモルタルによって保持させ、躯体からの応力の伝達が行われるので、既存躯体の耐震力の補強が可能であり、しかも、騒音や振動の発生を極力抑えて施工することができるので所謂「利用しながらの補強工事の施工」が可能であり、更に、既存柱梁の仕上げモルタル強度が十分であることが確認できれば、この仕上げモルタルを除去する必要がないので、「利用しながらの補強工事の施工」はより確実なものとなり、また工期短縮・コスト低減にも効果があるから、頭記した課題が解決される。
【0053】
特に本発明によれば、工程日数の点において大巾な改善が見られる。即ち、特許文献1及び2、非特許文献1に記載の従来工法が14日、特許文献3に記載の工法が10日、そして特許文献4に記載の工法が13日であるのに対し、本発明工法によれば8日で済むという顕著な効果がある。
【0054】
更に、従来のように建物架構に多数のアンカー鉄筋を打設する必要がない。したがって、補強骨組を建物架構に装着する際に騒音、振動、粉塵が発生することがなく、特に建物を使用しながら行う耐震改修に有利である。また、建物架構のコンクリート強度が小さい場合にも適用可能であり、建物架構を傷めることもないため、耐震補強を行う対象建物の拡大を図ることができる。
【0055】
また、建物に水平外力が作用し、建物架構が変形した場合であっても、補強骨組と建物架構との一体性が確保され、応力伝達が確実になされる、という顕著な効果も発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る工法を施工した壁空間の正面図
【図2】図1に示す2−2線断面図
【図3】要部拡大図
【図4】要部拡大断面図
【図5】他の実施例を示す要部拡大図
【図6】連結補助機構を示す概略図
【図7】連結補助機構の他の実施態様を示す概略図
【図8】連結補助機構の他の実施態様を示す概略図
【図9】接合部押圧用チューブの斜視図
【図10】同上図の縦断面図
【図11】第1態様に係る二重チューブの縦断面図
【図12】第2態様に係る二重チューブの縦断面図
【図13】第3態様に係る二重チューブの縦断面図
【図14】従来工法を示す要部概略図
【図15】別の従来工法を示す要部概略図
【符号の説明】
10−柱
11−梁
12−スラブ
20−枠付き鉄骨ブレース
20A−(鉄骨ブレース)の枠体
21−チューブ変形規制部材
22−コッター
23−連結補助部材
24−連結補助部材
25−ボルト
26−ナット
27−ボルト孔
28−連結補助部材
30−接合部押圧用チューブ
31−開閉バルブ
32−開閉バルブ
33−二重チューブ
34−内部加圧用チューブ
35−バルブ
36−バルブ
37−バルブ
38−二重チューブ
39−内部加圧用チューブ
40−バルブ
Claims (8)
- 並立する既存コンクリート柱と上下のコンクリート梁とで形成される空間に枠付き鉄骨ブレースを配設すると共に、該枠付き鉄骨ブレースの枠体の外周面と既存コンクリート柱及び上下のコンクリート梁との間に形成される空隙に、接合部押圧用チューブに充填する方法でモルタルを配設し、硬化したモルタルにより前記枠付き鉄骨ブレースの支持固定並びに既存コンクリート躯体からの応力伝達を行う構成であることを特徴とする枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強構造。
- 接合部押圧用チューブが、分割された複数の部材であることを特徴とする請求項1に記載の耐震補強構造。
- 接合部押圧用チューブが、連続した単一の部材であることを特徴とする請求項1に記載の耐震補強構造。
- 既存コンクリート躯体と枠付き鉄骨ブレースの枠体との間に、連結補助機構が配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の耐震補強構造。
- 並立する既存コンクリート柱と上下の梁とで形成される空間に枠付き鉄骨ブレースを配設し、次いで、この枠付き鉄骨ブレースの枠体の外周面と既存コンクリート柱及び上下のコンクリート梁との間に形成される空隙に接合部押圧用チューブを配設し、該接合部押圧用チューブ内にモルタルを圧力充填し、該モルタルの硬化をまって前記枠付き鉄骨ブレースの支持固定並びに既存コンクリート躯体からの応力伝達を行うことを特徴とする枠付き鉄骨ブレースによる耐震補強工法。
- モルタルの充填が、分割された複数の接合部押圧用チューブに対して行われることを特徴とする請求項5に記載の耐震補強工法。
- モルタルの充填が、連続した単一の部材である接合部押圧用チューブに対して行われることを特徴とする請求項5に記載の耐震補強工法。
- 既存コンクリート躯体と枠付き鉄骨ブレースの枠体との間に、連結補助機構が配置されていることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の耐震補強工法。
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