JP2004210221A - 作業車の走行伝動構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】作業車の走行伝動構造において、咬合式の右及び左のサイドクラッチを備え、右(左)の走行装置の動力を左(右)の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチを備えた場合、右又は左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に適切に復帰することができるように構成する。
【解決手段】ステアリング操作具が直進位置に操作されると、右及び左のサイドクラッチ26が伝動状態に操作されて、伝動クラッチ42が遮断状態に操作される。ステアリング操作具が右旋回位置(左旋回位置)に操作されると、左(右)のサイドクラッチ26が伝動状態に操作され、右(左)のサイドクラッチ26が遮断状態に操作されて、伝動クラッチ42が半伝動状態に操作される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、右及び左の走行装置を備えた作業車の走行伝動構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
右及び左の走行装置を備えた作業車としては、例えば特許文献1に開示されているように、右及び左の走行装置への動力を伝動及び遮断自在な右及び左のサイドクラッチ(特許文献1の図2及び図3中の12,12C,29)を備えたものがあり、右及び左のサイドクラッチは、シフト部材(特許文献1の図2及び図3中の29)を被咬合部(特許文献1の図2及び図3中の12C)に咬合させることにより伝動状態となり、シフト部材を被咬合部から離すことにより遮断状態となる咬合式に構成されている。
【0003】
これにより、特許文献1の構造によると、人為的に操作されるステアリング操作具(特許文献1の図5中の39)が直進位置に操作されると、右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作されて機体は直進(前進又は後進)する。ステアリング操作具が右旋回位置に操作されると、左のサイドクラッチが伝動状態に操作され右のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、機体は緩やかに右に向きを変えるのであり、ステアリング操作具が左旋回位置に操作されると、右のサイドクラッチが伝動状態に操作され左のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、機体は緩やかに左に向きを変える。
【0004】
前述のように右又は左のサイドクラッチを遮断状態に操作して、機体の向きを右又は左に変える場合、地面の状態によっては(例えば泥濘地等のように地面からの抵抗が大きい状態)、右又は左のサイドクラッチが遮断状態に操作された際に、サイドクラッチが遮断状態に操作された右又は左の走行装置が地面からの抵抗により停止し、右又は左の走行装置に制動が掛かったような状態となって、機体が大きく右又は左に向きを変えてしまうことがある。
特許文献1の構造によると、右の走行装置の動力を左の走行装置に伝達可能且つ左の走行装置の動力を右の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチ(特許文献1の図2及び図3中のCC)を、右及び左のサイドクラッチの下手側に備えており、右及び左のサイドクラッチを操作するステアリング操作具(特許文献1の図5中の39)と伝動クラッチとを、特許文献1の図5に示すように連係している。
【0005】
従って、特許文献1の構造によると、ステアリング操作具と伝動クラッチとの特性は、例えば図6に示すようなものとなる。図6に示すように、ステアリング操作具を直進位置Nに操作すると、右及び左のサイドクラッチが伝動状態となって機体は直進(前進又は後進)するのであり、伝動クラッチの作動圧が上昇しており、伝動クラッチが半伝動状態に操作されている。この場合、右及び左の走行装置が同方向に同速度で駆動されているので、伝動クラッチが半伝動状態に操作されていても、特に問題はない。
【0006】
次に図6に示すように、例えばステアリング操作具を直進位置Nから例えば左旋回位置L1,L2に操作すると、左のシフト部材(特許文献1の図2及び図3中の29)がスライド操作されて左の被咬合部(特許文献1の図2及び図3中の12C)から離れて、左のサイドクラッチが遮断状態に操作される。この場合、前述のように、伝動クラッチが半伝動状態となっているので、右の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチを介して左の走行装置に少し伝達され、右の走行装置に対して左の走行装置が低速で駆動されることになり、右及び左の走行装置の速度差により機体は前進(後進)しながら緩やかに左に向きを変える。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−106689号公報(図2,3,5)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来の技術に記載の状態は、ステアリング操作具を直進位置から右又は左旋回位置に操作した際の状態であるが、ステアリング操作具を右又は左旋回位置から直進位置に操作した際に、以下のような不具合が生じる。
【0009】
例えばステアリング操作具を左旋回位置に操作していると、例えば図3に示すように、右のシフト部材31が右の被咬合部29に咬合し(右のサイドクラッチ26の伝動状態)、左のシフト部材31が左の被咬合部29から離れている(左のサイドクラッチ26の遮断状態)。
この場合、伝動クラッチ42が半伝動状態となっており、右の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチ42を介して左の走行装置に少し伝達されているので、右の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチ42を介して左のサイドクラッチ26にも少し伝達されている(例えば図3に示す構造によると、右の走行装置の動力が左のシフト部材31にも少し伝達されており、左の被咬合部29には上手側から動力が伝達されている)。これにより、左のサイドクラッチ26において、左のシフト部材31及び左の被咬合部29の両方が回転する状態となっている。
【0010】
前述のように、例えばステアリング操作具を左旋回位置に操作している状態において、ステアリング操作具を左旋回位置から直進位置に操作し、左のシフト部材をスライド操作して左の被咬合部に構造させようとした場合、左のサイドクラッチ26において左のシフト部材31及び左の被咬合部29の両方が回転しているので、左のサイドギヤ31及び左の被咬合部29の位相がうまく合致せず、左のサイドギヤ31が左の被咬合部29にうまく咬合できないような状態(左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に適切に復帰できないような状態)の生じることがある。
【0011】
本発明は作業車の走行伝動構造において、咬合式の右及び左のサイドクラッチを備え、右の走行装置の動力を左の走行装置に伝達可能且つ左の走行装置の動力を右の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチを、右及び左のサイドクラッチの下手側に備えた場合、ステアリング操作具を右又は左旋回位置から直進位置に操作した際に、右又は左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に適切に復帰することができるように構成することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
右及び左の走行装置、右及び左の走行装置への動力を伝動及び遮断自在な右及び左のサイドクラッチを備えて、シフト部材を被咬合部に咬合させることにより伝動状態となりシフト部材を被咬合部から離すことにより遮断状態となる咬合式に、右及び左のサイドクラッチを構成し、右の走行装置の動力を左の走行装置に伝達可能且つ左の走行装置の動力を右の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチを、右及び左のサイドクラッチの下手側に備えた場合、
請求項1の特徴によると、人為的に操作されるステアリング操作具を備えて、ステアリング操作具が直進位置に操作されると、右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作されて、伝動クラッチが遮断状態に操作される。ステアリング操作具が右旋回位置に操作されると、左のサイドクラッチが伝動状態に操作され右のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、伝動クラッチが半伝動状態に操作される。ステアリング操作具が左旋回位置に操作されると、右のサイドクラッチが伝動状態に操作され左のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、伝動クラッチが半伝動状態に操作される。
【0013】
これにより請求項1の特徴によると、ステアリング操作具が右旋回位置に操作されると、左のサイドクラッチが伝動状態に操作され右のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、伝動クラッチが半伝動状態に操作されるので、左の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチを介して右の走行装置に少し伝達され、左の走行装置に対して右の走行装置が低速で駆動されることになり、右及び左の走行装置の速度差により機体は前進(後進)しながら緩やかに右に向きを変える。
ステアリング操作具が左旋回位置に操作されると、右のサイドクラッチが伝動状態に操作され左のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、伝動クラッチが半伝動状態に操作されるので、右の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチを介して左の走行装置に少し伝達され、右の走行装置に対して左の走行装置が低速で駆動されることになり、右及び左の走行装置の速度差により機体は前進(後進)しながら緩やかに左に向きを変える。
【0014】
次に例えばステアリング操作具が左旋回位置に操作されている状態(右のサイドクラッチが伝動状態に操作され左のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、伝動クラッチが半伝動状態に操作されている状態)において、ステアリング操作具が左旋回位置から直進位置に操作されると、伝動クラッチが半伝動状態から遮断状態に操作されるので、右の走行装置の動力が半伝動状態の伝動クラッチを介して左の走行装置に少し伝達される状態が無くなる。
【0015】
前述のように、右の走行装置の動力が左の走行装置に伝達されなくなれば、右の走行装置の動力が左のサイドクラッチに伝達されなくなるので(右の走行装置の動力が左のサイドクラッチの左のシフト部材(又は左の被咬合部)に伝達されなくなるので)、左のサイドクラッチにおいて左のシフト部材(又は左の被咬合部)の回転が低下(又は停止)する。
これにより、左のサイドギヤが左の被咬合部に向けてスライド操作された場合に、左のサイドギヤ及び左の被咬合部の位相が合致し易くなり、左のサイドギヤが左の被咬合部にうまく咬合し易くなる(左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に復帰し易くなる)。
【0016】
【発明の実施の形態】
[1]
図1に示すように、クローラ式の右及び左の走行装置1によって支持された機体の前部の左部に刈取部2、機体の前部の右部に運転部3が備えられ、機体の後部の左部に脱穀装置4、機体の後部の右部にグレンタンク5が備えられて、作業車の一例である稲用のコンバインが構成されている。これにより、圃場の穀稈が刈取部2によって刈り取られ、脱穀装置4により脱穀処理されて、脱穀装置4で回収された穀粒がグレンタンク5に供給される。
【0017】
図2に示すように、走行用のミッションケース6が備えられ、静油圧式無段変速装置9がミッションケース6に備えられており、エンジン7の動力がベルト式のテンションクラッチ8を介して、静油圧式無段変速装置9の入力軸10に伝達されている。静油圧式無段変速装置9は中立位置、前進の高速側及び後進の高速側に無段階に変速自在に構成されている。
【0018】
図2に示すように、ミッションケース6に伝動軸12,13が備えられ、伝動軸12に伝動ギヤ14,15が固定されて、静油圧式無段変速装置9の入力軸10の伝動ギヤ10aに伝動ギヤ14が咬合している。伝動軸13にシフトギヤ16がスプライン構造により一体回転及びスライド自在に外嵌されており、シフトギヤ16をスライド操作して伝動ギヤ14,15に咬合させることにより、伝動軸12の動力が高低2段に変速されて伝動軸13に伝達される。伝動軸13の動力が、ベルト式のテンションクラッチ17を介して刈取部2に伝達される。この場合、静油圧式無段変速装置9の入力軸10の動力が高低2段に変速されて刈取部2に伝達されるので、刈取部2に伝達される動力は静油圧式無段変速装置9の変速の影響を受けない。
【0019】
図2に示すように、ミッションケース6に伝動軸18が備えられ、伝動軸18に固定された伝動ギヤ19が、静油圧式無段変速装置9の出力軸11の伝動ギヤ11aに咬合している。ミッションケース6に伝動軸20が備えられ、伝動軸20に低速ギヤ21、中速ギヤ22及び高速ギヤ23が固定されている。伝動軸18にシフトギヤ24がスプライン構造により一体回転及びスライド自在に外嵌されており、シフトギヤ24をスライド操作して低速ギヤ21、中速ギヤ22及び高速ギヤ23に咬合させることにより、伝動軸18の動力が高中低3段に変速されて伝動軸20に伝達される。
【0020】
図2に示すように、伝動軸18に伝動ギヤ25が固定されており、シフト部材16をスライド操作して伝動ギヤ25に咬合させると、伝動軸18の動力がシフト部材16及び伝動軸13を介して刈取部2に伝達される。これにより、静油圧式無段変速装置9によって変速された動力が刈取部2に伝達されることになり、機体の走行速度に同調した動力が刈取部2に伝達される。
【0021】
[2]
次に、右及び左のサイドクラッチ26、右及び左のサイドブレーキ35、伝動クラッチ42について説明する。
図2及び図3に示すように、ミッションケース6に伝動軸27が備えられ、伝動軸27の中央に伝動ギヤ28が固定されて、伝動軸27の右及び左の端部に爪状の右及び左の被咬合部29が固定されており、伝動軸20に固定された伝動ギヤ30に伝動ギヤ28が咬合している。
【0022】
図2及び図3に示すように、右及び左のサイドギヤ31が伝動軸27に相対回転及びスライド自在に外嵌されて、右及び左のサイドギヤ31の横端部に咬合部が備えられており、右及び左のサイドギヤ31が右及び左の被咬合部29に咬合可能に構成されている。右及び左のサイドギヤ31を右及び左の被咬合部29から離れる方向にスライド操作する右及び左の操作ピストン32、右及び左のサイドギヤ31を右及び左の被咬合部29に咬合する方向にスライド操作するバネ33が備えられている。このようにして、右及び左のサイドギヤ31と右及び左の被咬合部29との間で、咬合式の右及び左のサイドクラッチ26が構成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、右及び左のサイドギヤ31とミッションケース6との間に摩擦板34が備えられて、右及び左のサイドギヤ31と右及び左の摩擦板34とにより、摩擦式の右及び左のサイドブレーキ35が構成されている。これにより、バネ33により右及び左のサイドギヤ31が右及び左の被咬合部29に咬合していると、右及び左のサイドクラッチ26が伝動状態となり、右及び左のサイドブレーキ35が解除状態となって、伝動軸27の動力が右及び左のサイドギヤ31に伝達される。
【0024】
図2及び図3に示すように、右及び左の操作ピストン32により右及び左のサイドギヤ31をスライド操作して右及び左の被咬合部29から離すと、右及び左のサイドクラッチ26が遮断状態となって、伝動軸27の動力が右及び左のサイドギヤ31に伝達されなくなる。右及び左の操作ピストン32により右及び左のサイドギヤ31をさらにスライド操作すると、右及び左のサイドギヤ31により摩擦板34が押圧されて、右及び左のサイドブレーキ35が制動状態となって、右及び左のサイドギヤ31に制動が掛かる。
【0025】
図2及び図3に示すように、右及び左の走行装置1を駆動する右及び左の車軸36が、同芯状で突き合わせられるようにミッションケース6に備えられて、右及び左の車軸36に固定された右及び左の伝動ギヤ37が、右及び左のサイドギヤ31に常時咬合している。左の車軸36に円筒部材38が固定されて、右の伝動ギヤ37のボス部と円筒部材38との間に摩擦板39が備えられ、摩擦板39を押圧するピストン40、ピストン40を摩擦板39から離れる方向に付勢するバネ41が備えられている。このようにして、右及び左の車軸36の間に、摩擦式の伝動クラッチ42が構成されている。
【0026】
これにより、図2及び図3に示すように、伝動クラッチ42(ピストン40)に作動油を供給すると、ピストン40により摩擦板39が押圧されて、伝動クラッチ42が伝動状態となる(右の走行装置1の動力が左の走行装置1に伝達される状態、又は左の走行装置1の動力が右の走行装置1に伝達される状態)。伝動クラッチ42(ピストン40)から作動油を排出すると、バネ41によりピストン40が摩擦板39から離れて、伝動クラッチ42が遮断状態となる。
【0027】
[3]
次に、右及び左の操作ピストン32、伝動クラッチ42に対する油圧回路構造について説明する。
図4に示すように、エンジン7により駆動される油圧ポンプ43からの油路44が方向切換弁45に接続されており、油路44にシーケンス弁46が備えられている。方向切換弁45からの右及び左の油路47が右及び左の操作ピストン32の底部に対応する部分に接続されており、右及び左の操作ピストン32の横側部に対応する部分から油路48が延出され、油路48に可変リリーフ弁49が接続されている。方向切換弁45は直進位置45N、右中間位置45RN、左中間位置45LN、右旋回位置45R及び左旋回位置45Lを備えている。
【0028】
図4に示すように、油路44における油圧ポンプ43とシーケンス弁46との間から油路50が分岐して、油路50が伝動クラッチ42に接続されており、油路50にパイロット操作式の減圧弁51が備えられている。油路44におけるシーケンス弁46と方向切換弁45との間からパイロット油路52が分岐して、パイロット油路52が減圧弁51のパイロット操作部51aに接続されている。
【0029】
[4]
次に、右及び左の操作ピストン32、伝動クラッチ42の操作について説明する。
図1及び図4に示すように、前後左右に操作自在な操作レバー53が運転部3に備えられており、操作レバー53と方向切換弁45及び可変リリーフ弁49とが連係されている。操作レバー53は中立位置N、機体の後方の上昇位置U、機体の前方の下降位置D、機体の右方の右旋回域R、機体の左方の左旋回域Lに操作自在である。
【0030】
図4に示すように、操作レバー53を上昇位置Uに操作すると、刈取部2が上昇駆動されて、操作レバー53を中立位置Nに操作すると、刈取部2の上昇駆動が停止する。操作レバー53を下降位置Dに操作すると、刈取部2が下降駆動されて、操作レバー53を中立位置Nに操作すると、刈取部2の下降駆動が停止する。
【0031】
図2,4,5に示すように、操作レバー53を中立位置Nに操作すると、方向切換弁45が直進位置45Nに操作され、可変リリーフ弁49が開側に操作されており、右及び左の操作ピストン32の作動油がドレン油路54を介して排出されて、バネ33により右及び左のサイドギヤ31が右及び左の被咬合部29に咬合し、右及び左のサイドクラッチ26が伝動状態となり、右及び左のサイドブレーキ35が解除状態となっている(図5の実線参照)。これにより、伝動軸27の動力が右及び左のサイドギヤ31から右及び左の車軸36に伝達されて、機体は直進(前進又は後進)する。
【0032】
この場合、図4及び図5に示すように、操作レバー53を中立位置Nに操作していると(方向切換弁45が直進位置45Nに操作されていると)、パイロット油路52の圧力が設定圧に上昇し、減圧弁51が閉側に操作されて、伝動クラッチ42の作動油がドレン油路55を介して排出され、伝動クラッチ42が遮断状態となっている(図5の点線参照)。
【0033】
次に図4及び図5に示すように、例えば操作レバー53を中立位置Nから左旋回域Lに少しでも操作すると、方向切換弁45が直進位置45Nから左中間位置45LNに操作される。これにより、右及び左の操作ピストン32の作動油がドレン油路54を介して排出されるのに加えて、パイロット油路52のパイロット作動油がドレン油路54を介して排出されるので、パイロット油路52の圧力が急速に下降し、減圧弁51が開側に操作されて、油圧ポンプ43の作動油が油路50及び減圧弁51を介して伝動クラッチ42に急速に供給され、伝動クラッチ42が遮断状態から急速に半伝動状態に操作される(図5の点線参照)。
【0034】
次に図4及び図5に示すように、操作レバー53を左旋回域Lに操作していくと、方向切換弁45が左中間位置45LNから直ちに左旋回位置45Lに操作される。これにより図3に示すように、方向切換弁45から左の操作ピストン32に作動油が供給されて、左の操作ピストン32により左のサイドギヤ31がスライド操作されて左の被咬合部29から離れるのであり、左の操作ピストン32において油路48が開き、左の操作ピストン32の作動油が油路48及び可変リリーフ弁49を介して排出される。
【0035】
従って、図3,4,5に示すように、左のサイドギヤ31が左の被咬合部29から離れるが、左の摩擦板34を押圧しない位置で停止するので、右及び左のサイドブレーキ35が解除状態に操作され、右のサイドクラッチ26が伝動状態に操作された状態で、左のサイドクラッチ26が遮断状態に操作される。この場合に、左の操作ピストン32の作動油が油路48及び可変リリーフ弁49を介して排出されることにより、前述のようにパイロット油路52のパイロット作動油がドレン油路54を介して排出されて、伝動クラッチ42が半伝動状態に維持されている(図5の点線参照)。
【0036】
これにより、図3に示すように、右の走行装置1(右の車軸36)の動力が、半伝動状態の伝動クラッチ42を介して左の走行装置1(左の車軸36)に少し伝達され、右の走行装置1に対して左の走行装置1が低速で駆動されることになり、右及び左の走行装置1の速度差により機体は前進(後進)しながら緩やかに左に向きを変える。
【0037】
次に図3,4,5に示すように、操作レバー53を左旋回域Lに操作していくと、方向切換弁45が左旋回位置45Lに操作された状態で、可変リリーフ弁49が次第に開側から閉側に操作されていく。これにより、左の操作ピストン32の作動油の圧力が上昇していき、左の操作ピストン32が左のサイドギヤ31をスライド操作して、左のサイドギヤ31が左の摩擦板34を押圧していく。これにより、左のサイドブレーキ35の作動圧が上昇していき(図5の実線参照)、左のサイドブレーキ35が解除状態から制動状態に操作されていく。左の操作ピストン32の作動油の圧力が上昇するのに伴って、パイロット油路52の圧力が次第に上昇し、減圧弁51が開側から閉側に操作されていき、伝動クラッチ42が半伝動状態から遮断状態に操作されていく(図5の点線参照)。
【0038】
以上のように、操作レバー53を左旋回域Lに操作していくと、図3,4,5に示すように、右及び左のサイドブレーキ35が解除状態、右のサイドクラッチ26が伝動状態、左のサイドクラッチ26が遮断状態、伝動クラッチ42が半伝動状態に操作された状態から、伝動クラッチ42が半伝動状態から遮断状態に操作されていき、左のサイドブレーキ35が解除状態から制動状態に操作されて、機体の左への旋回半径が次第に小さくなっていく。
【0039】
図4及び図5に示すように、操作レバー53を左最大旋回位置LMの少し手前の位置に操作すると、伝動クラッチ42が遮断状態となり(図5の点線参照)、操作レバー53を左最大旋回位置LMに操作すると、左のサイドブレーキ35が完全な制動状態となって左の走行装置1が停止し、右の走行装置1により機体は左に信地旋回する。
以上のような操作は、操作レバー53を中立位置Nから右旋回域R及び右最大旋回位置RMに操作した場合にも同様に行われる。
【0040】
[5]
次に、操作レバー53を右及び左旋回域R,Lから中立位置Nに操作した場合について説明する。
図3,4,5に示すように、例えば操作レバー53を左旋回域Rに操作していると、前項[4]に記載のように、右のサイドギヤ31が右の被咬合部29に咬合し(右のサイドクラッチ26の伝動状態)、左のサイドギヤ31が左の被咬合部29から離れている(左のサイドクラッチ26の遮断状態)。
【0041】
この場合、図3及び図5に示すように、伝動クラッチ42が半伝動状態となっており(図5の点線参照)、右の走行装置1(右の車軸36)の動力が、半伝動状態の伝動クラッチ42を介して左の走行装置1(右の車軸36)に少し伝達されているので、左のサイドギヤ31は左の被咬合部29から離れているが、動力が左の伝動ギヤ37を介して左のサイドギヤ31に伝達されて、左のサイドギヤ31は回転している。伝動軸27に伝動ギヤ30から動力が常時伝達されているので(右の走行装置1に動力が伝達されているので)、左の被咬合部29も回転している。
【0042】
前述の状態において、バネ33により左のサイドギヤ31が左の被咬合部29に向けてスライド操作された場合、左のサイドギヤ31及び左の被咬合部29の両方が回転していることにより、左のサイドギヤ31及び左の被咬合部29の位相がうまく合致せず、左のサイドギヤ31が左の被咬合部29にうまく咬合できないような状態の生じることがある。
【0043】
この場合、図3,4,5に示すように、操作レバー53を左旋回域Lから中立位置Nに操作して、方向切換弁45が直進位置45Nに操作されると、左の操作ピストン32の作動油がドレン油路54を介して排出されて、バネ33により左のサイドギヤ31が左の被咬合部29に向けてスライド操作されるのに伴って、パイロット油路52の圧力が設定圧に上昇し、減圧弁51が閉側に操作されて、伝動クラッチ42の作動油がドレン油路55を介して排出され、伝動クラッチ42が半伝動状態から急速に遮断状態に操作される(図5の点線参照)。
【0044】
前述のように伝動クラッチ42が遮断状態に操作されると、図3に示すように動力が左のサイドギヤ31に伝達されなくなり、左のサイドギヤ31の回転が低下(又は停止)するので(左の被咬合部29は回転している)、バネ33により左のサイドギヤ31が左の被咬合部29に向けてスライド操作された場合、左のサイドギヤ31及び左の被咬合部29の位相が合致し易くなり、左のサイドギヤ31が左の被咬合部29にうまく咬合し易くなる(左のサイドクラッチ26が遮断状態から伝動状態に復帰し易くなる)。
以上のような状態は、操作レバー53を右旋回域Rから中立位置Nに操作した場合にも同様に生じる。
【0045】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明の実施の形態]において、図2及び図3に示す右及び左の被咬合部29を伝動軸27に相対回転自在に外嵌して、右及び左の被咬合部29から右及び左の走行装置1(右及び左の車軸36)に動力が伝達されるように構成し、右及び左のサイドギヤ31(シフト部材)を、スプライン構造により一体回転及びスライド自在に伝動軸27に外嵌するように構成してもよい。
このように構成すると、前述の[発明の実施の形態]の[5]に記載のように操作レバー53を右及び左旋回域R,Lから中立位置Nに操作した場合、伝動クラッチ42が半伝動状態から遮断状態に操作されると、右又は左の被咬合部29の回転が低下(又は停止)する(右又は左のサイドギヤ31(シフト部材)は回転している)。
【0046】
前述の[発明の実施の形態]において、操作レバー53に代えて、一般の乗用車のような丸型の操縦ハンドル(図示せず)を使用してもよい。
本発明はクローラ式の右及び左の走行装置1ばかりではなく、操向操作されない走行車輪を右及び左に複数個備えて、右及び左の走行装置1を構成した作業車にも適用できる。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の特徴によると、作業車の走行伝動構造において、咬合式の右及び左のサイドクラッチを備え、右の走行装置の動力を左の走行装置に伝達可能且つ左の走行装置の動力を右の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチを、右及び左のサイドクラッチの下手側に備えた場合、ステアリング操作具を右又は左旋回位置から直進位置に操作した際に、伝動クラッチが遮断状態に操作されるように構成することにより、右又は左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に復帰し易くなるようにすることができて、直進状態に適切に復帰することができるようになった。
【0048】
これにより、請求項1の特徴によると、ステアリング操作具による旋回操作性を向上させることができるのであり、右又は左のサイドクラッチが遮断状態から伝動状態に適切に復帰できないことによる、右又は左のシフト部材や右又は左の被咬合部の破損等を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】ミッションケースの概略図
【図3】ミッションケースにおける右及び左のサイドクラッチ、右及び左のサイドブレーキ、伝動クラッチの付近の断面図
【図4】右及び左の操作ピストン、伝動クラッチ等に対する油圧回路を示す図
【図5】操作レバーの操作位置と伝動クラッチの作動圧、右及び左のサイドブレーキの作動圧との関係を示す図
【図6】従来の技術において、操作レバーの操作位置と伝動クラッチの作動圧との関係を示す図
【符号の説明】
1 走行装置
26 サイドクラッチ
29 被咬合部
31 シフト部材
42 伝動クラッチ
53 ステアリング操作具

Claims (1)

  1. 右及び左の走行装置と、前記右及び左の走行装置への動力を伝動及び遮断自在な右及び左のサイドクラッチとを備えて、
    シフト部材を被咬合部に咬合させることにより伝動状態となり、前記シフト部材を前記被咬合部から離すことにより遮断状態となる咬合式に、前記右及び左のサイドクラッチを構成し、
    前記右の走行装置の動力を左の走行装置に伝達可能且つ前記左の走行装置の動力を右の走行装置に伝達可能な摩擦式の伝動クラッチを、前記右及び左のサイドクラッチの下手側に備えると共に、
    人為的に操作されるステアリング操作具を備えて、
    前記ステアリング操作具が直進位置に操作されると、前記右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作されて、前記伝動クラッチが遮断状態に操作され、
    前記ステアリング操作具が右旋回位置に操作されると、前記左のサイドクラッチが伝動状態に操作され前記右のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、前記伝動クラッチが半伝動状態に操作され、
    前記ステアリング操作具が左旋回位置に操作されると、前記右のサイドクラッチが伝動状態に操作され前記左のサイドクラッチが遮断状態に操作されて、前記伝動クラッチが半伝動状態に操作されるように、
    前記ステアリング操作具と右及び左のサイドクラッチ、伝動クラッチとを連係してある作業車の走行伝動構造。
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