JP3611466B2 - コンバインの伝動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行装置への伝動系に、第1変速装置と第2変速装置とを第1変速装置が伝動上手側に位置する状態に介装してあるコンバインの伝動装置に関し、詳しくは、刈取部の駆動技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
刈取部を駆動するに、従来では、特開平10‐30720号公報において見られるように、走行装置への伝動系に介装した走行変速装置の入力軸から刈取変速装置を介して刈取部に動力を取り出すようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術によるときは、走行変速に合わせて刈取変速を行うことにより、走行速度に刈取駆動速度をおおよそ同期させて良好な刈り取りを行うことができるものの、次のような欠点があった。
【0004】
すなわち、刈取変速装置が必要であることにより、伝動系の構造の複雑化及びコストアップを招来するのみならず、走行変速操作に伴い刈取変速操作が必要であることにより、操作性を悪化させていた。
【0005】
本発明の目的は、伝動系の構造の簡素化及びコストダウンを図り、しかも、操作性を向上する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本第1発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0007】
〔特徴〕
走行装置への伝動系に、副変速装置並びにこの副変速装置の伝動下手側に第1変速装置と第2変速装置とを第1変速装置が伝動上手側に位置する状態に介装してあるコンバインの伝動装置であって、前記副変速装置がギヤをシフトすることによりギヤの噛み合いを変更するように構成され、前記第1変速装置が、伝動比が互いに異なる複数の第1伝動径路 のそれぞれに介装した油圧クラッチを択一的に入り作動させることにより第1伝動径路の一つを伝動状態にして複数段の変速を行うように構成され、前記第1変速装置の出力を刈取部に伝達するように構成してある点にある。
【0008】
〔作用〕
本第1発明によるときは、副変速装置の伝動下手側に直列接続する第1変速装置と第2変速装置とを第1変速装置が伝動上手側に位置する状態で介装し、前記副変速装置がギヤギヤの噛み合いを変更するように構成し、前記第1変速装置が油圧クラッチを択一的に入り作動させることにより変速を行うように構成して、この油圧式の第1変速装置の出力を刈取部に伝達して刈取部を駆動するようにしてあるから、第1変速装置による走行変速に伴い刈取部の駆動変速も同時に行え、その結果、特別な刈取変速装置を設けることなく、かつ、特別な刈取変速操作を要することなく、走行速度に対して刈取部の駆動速度をおおよそ同期させることができる。
【0009】
しかも、伝動下手側に位置する第2変速装置の出力で刈取部を駆動するのではなく、伝動上手側に位置する第1変速装置の出力で刈取部を駆動するから、第2変速装置から刈取部に出力を取り出す場合に比較して、刈取部への出力の取り出しを構造簡単、容易に行うことができる。
【0010】
〔効果〕
従って、本第1発明によれば、走行速度に刈取部の駆動速度をおおよそ同期させての良好な刈り取りを行いながらも、刈取変速装置が不要なことと刈取部への出力の取り出しを構造簡単、容易に行えることとの相乗により、構造簡単、安価に実施でき、しかも、特別な刈取変速操作が不要なことで操作性良く実施できるようになった。
【0011】
請求項2に係る本第2発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0012】
〔特徴〕
上記本第1発明の特徴において、第2変速装置が、伝動比が互いに異なる複数の第2伝動径路のそれぞれに介装した油圧クラッチを択一的に入り作動させることにより第2伝動径路の一つを伝動状態にして複数段の変速を行うように構成されている点にある。
【0013】
〔作用〕
本第2発明によるときは、第1変速装置が、択一的に入り作動させる油圧クラッチを変更することにより、伝動状態にさせる第1伝動径路を変更して伝動比、つまり、変速比を変えることで変速するものであり、第2変速装置も同様に、択一的に入り作動させる油圧クラッチを変更することにより、伝動状態にさせる第2伝動径路を変更して伝動比、つまり、変速比を変えることで変速するものであるから、第1変速装置及び第2変速装置を操作して変速する際、第1変速装置及び第2変速装置への伝動を断つクラッチ操作が不要である。
【0014】
〔効果〕
従って、本第2発明によれば、油圧クラッチを操作するといった変速操作のみで変速を行えて、変速操作性を優れたものにできるようになった。
【0015】
請求項3に係る本第3発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0016】
〔特徴〕
上記本第2発明の特徴において、第1変速装置の油圧クラッチと第2変速装置の油圧クラッチとを一つの変速操作具の操作に基づいて関連制御する制御弁を設けてある点にある。
【0017】
〔作用〕
第1変速装置の変速状態と第2変速装置の変速状態との組み合わせで変速する点に着目して、本第3発明によるときは、一つの変速操作具の操作に基づいて第1変速装置の油圧クラッチと第2変速装置の油圧クラッチとを関連制御するようにしてあるから、第1変速装置と第2変速装置との二つを設けながらも、一つの変速操作で済む。
【0018】
〔効果〕
従って、本第3発明によれば、変速を操作性良く行えるようになった。
【0019】
【発明の実施の形態】
作業機の一例であるコンバインは、図1に示すように、走行装置1を備えた走行機体の前部に、植立穀稈を刈り取って後方に搬送する刈取部2を昇降自在に連結し、走行機体に、刈取部2からの搬送穀稈を脱穀処理する脱穀装置3と搭乗運転部4とを搭載して構成されている。
【0020】
前記走行装置1は、図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1L,1Rから構成されている。
【0021】
前記刈取部2は、油圧シリンダ利用の昇降シリンダ2Aにより昇降操作されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、前記走行機体に搭載したエンジン5からクローラ走行装置1L,1Rへの伝動系のうち、エンジン5と前記クローラ走行装置1L,1Rの車軸6L,6Rを支持するミッションケース7との間に位置する部分には、伝動を断続する主クラッチ8が介装されており、ミッションケース7内に位置する部分には、副変速装置9と主変速装置10とが副変速装置9を伝動上手側に位置させる直列接続状態で介装されているとともに、前記主変速装置10の出力の左右の車軸6L,6Rへの伝達を入り切りする操向クラッチブレーキ装置11が介装されている。
【0023】
前記副変速装置9は、図3にも示すように、入力プーリ12を備えた副変速入力軸13と、この副変速入力軸13にギヤ14a,14b対を介して連動する副変速中間伝動軸15とを設け、この副変速中間伝動軸15に、低速伝動ギヤ16Lと高速伝動ギヤ16Hとを備えた伝動体16を軸芯方向に沿ってシフト自在でかつ一体回転状態に装着し、この伝動体16が低速位置にシフト位置するとき低速伝動ギヤ16Lに噛み合い連動する高速出力兼用低速従動ギヤ17Lと伝動体16が高速位置にシフト位置するとき高速伝動ギヤ16Hに噛み合い連動する高速従動ギヤ17Hと低速出力ギヤ17aとを備えた筒状の副変速出力軸17を前記副変速入力軸13に回転のみ自在に装着して構成されている。つまり、副変速操作具の一例である副変速レバー9Aを介して伝動体16を低速位置にシフトすることにより、副変速中間伝動軸15に伝達された動力で低速伝動ギヤ16と高速出力兼用低速従動ギヤ17Lとを介して副変速出力軸17を低速駆動する低速伝動状態を現出し、伝動体16を高速位置にシフトすることにより、副変速中間伝動軸15に伝達された動力で高速伝動ギヤ16Hと高速従動ギヤ17Hとを介して副変速出力軸17を高速駆動する高速伝動状態を現出し、伝動体16を中立位置にシフトすることにより、副変速中間伝動軸15に伝達された動力を副変速出力軸17に伝達しない中立状態を現出するようになっている。
【0024】
前記主変速装置10は、図3,図4にも示すように、伝動系に、第1変速装置18と第2変速装置19とを第1変速装置18が伝動上手側に位置する直列接続状態に介装して構成されている。
【0025】
前記第1変速装置18は、伝動比が互いに異なるとともに並列接続する二つの第1伝動径路のそれぞれに介装した油圧クラッチc1,c2を圧油供給に伴い択一的に入り作動させることにより第1伝動径路の一つを伝動状態にして高低2段の変速を行うように構成されている。具体的には、第1変速伝動軸20を設け、この第1変速伝動軸20に、副変速装置9の低速出力ギヤ17aに噛み合い連動する第1変速低速入力ギヤ21aと高速出力兼用低速従動ギヤ17Lに噛み合い連動する第1変速高速入力ギヤ21bとを回転のみ自在に装着するとともに、第1変速低速出力ギヤ22aと第1変速高速出力ギヤ22bとを一体回転状態に装着し、第1変速低速入力ギヤ21aから第1変速伝動軸20への低速伝動を入り切りする低速クラッチとして一方の油圧クラッチc1を設け、第1変速高速入力ギヤ21bから第1変速伝動軸20への高速伝動を入り切りする高速クラッチとして他方の油圧クラッチc2を設けて構成されている。
すなわち、低速クラッチc1を入り作動させることにより、副変速出力軸17から低速出力ギヤ17a及び第1変速低速入力ギヤ21aを介して第1変速伝動軸20に低速伝動する低速伝動状態を現出し、高速クラッチc2を入り作動させることにより、副変速出力軸17から高速出力兼用低速従動ギヤ17L及び第1変速高速入力ギヤ21bを介して第1変速伝動軸20に前記低速クラッチc1を入り作動させた場合よりも高速伝動する高速伝動状態を現出し、両油圧クラッチc1,c2をともに切り作動させることにより、副変速出力軸17から第1変速伝動軸20への伝動を断つ中立状態を現出するようになっており、第1変速低速入力ギヤ21aと第1変速伝動軸20と第1変速低速出力ギヤ22aとから一方の第1伝動径路が形成され、第1変速高速入力ギヤ21bと第1変速伝動軸20と第1変速高速出力ギヤ22bとから他方の第1伝動径路が形成されている。
【0026】
前記第2変速装置19は、伝動比が互いに異なるとともに並列接続する四つの第2伝動径路のそれぞれに介装した油圧クラッチC1,C2,C3,C4を圧油供給に伴い択一的に入り作動させることにより第2伝動径路の一つを伝動状態にして前進3段・後進1段の変速を行うように構成されている。具体的には、前進第1段・第3段用の第2変速第1伝動軸23と前進第2段・後進用の第2変速第2伝動軸24とを設け、前記第2変速第1伝動軸23に、第1変速低速出力ギヤ22aに噛み合い連動する前進第1入力ギヤ25aと第1変速高速出力ギヤ22bに噛み合い連動する前進第3入力ギヤ25cとを回転のみ自在に装着するとともに、第1出力ギヤ26aを一体回転状態に装着し、前記第2変速第2伝動軸24に、第1変速高速出力ギヤ22bに噛み合い連動する前進第2入力ギヤ25bと前記前進第1入力ギヤ25aに噛み合い連動する後進入力ギヤ25d(これは、前進第1入力ギヤ25aがアイドラーとして作用することで前進第1入力ギヤ25a・前進第2入力ギヤ25b・前進第3入力ギヤ25cとは反対方向に回転する。)とを回転のみ自在に装着するとともに、第2出力ギヤ26bを一体回転状態に装着し、前進第1入力ギヤ25aから第2変速第1伝動軸23への前進1速伝動を入り切りする前進第1クラッチとして一つの油圧クラッチC1を設け、前進第2入力ギヤ25bから第2変速第2伝動軸24への前進2速伝動を入り切りする前進第2クラッチとして他の一つの油圧クラッチC2を設け、前進第3入力ギヤ25cから第2変速第1伝動軸23への前進3速伝動を入り切りする前進第3クラッチとしてもう一つの油圧クラッチC3を設け、後進入力ギヤ25dから第2変速第2伝動軸24への後進伝動を入り切りする後進クラッチとして残る一つの油圧クラッチC4を設けて構成されている。
すなわち、前進第1クラッチC1を入り作動させることにより、第1変速伝動軸20から第1変速低速出力ギヤ22a及び前進第1入力ギヤ25aを介して第2変速第1伝動軸23に低速(前進1速)伝動して、第1出力ギヤ26aから出力する前進第1伝動状態を現出し、前進第2クラッチC2を入り作動させることにより、第1変速伝動軸20から第1変速高速出力ギヤ22b及び前進第2入力ギヤ25bを介して第2変速第2伝動軸24に前記前進第1クラッチC1を入り作動させた場合よりも高速で前進2速伝動して、第2出力ギヤ26bから出力する前進第2伝動状態を現出し、前進第3クラッチC3を入り作動させることにより、第1変速伝動軸20から第1変速高速出力ギヤ22b及び前進第3入力ギヤ25cを介して第2変速第1伝動軸23に前記前進第2クラッチC2を入り作動させた場合よりも高速で前進3速伝動して、第1出力ギヤ26aから出力する前進第3伝動状態を現出し、後進クラッチC4を入り作動させることにより、第1変速伝動軸20から第1変速低速出力ギヤ22a及び前進第1入力ギヤ25a並びに後進入力ギヤ25dを介して第2変速第2伝動軸24に後進伝動して、第2出力ギヤ26bから出力する後進伝動状態を現出するようになっており、前進第1入力ギヤ25aと第2変速第1伝動軸23と第1出力ギヤ26aとから一つの第2伝動径路が形成され、前進第2入力ギヤ25bと第2変速第2伝動軸24と第2出力ギヤ26bとから他の一つの第2伝動径路が形成され、前進第3入力ギヤ25cと第2変速第1伝動軸23と第1出力ギヤ26aとからもう一つの第2伝動径路が形成され、前進第1入力ギヤ25aと後進入力ギヤ25dと第2変速第2伝動軸24と第2出力ギヤ26bとから残る一つの第2伝動径路が形成されている。
【0027】
従って、主変速装置10では、第1変速装置18による高低2段の変速と、第2変速装置19による前進3段・後進1段の変速との組み合わせにより、前進6段・後進2段の変速を行えるのである。
【0028】
そして、最高速の前進6速でも減速伝動するように設定されており、図7に示すように、第1変速装置18を低速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第3伝動状態にしたときの第2変速装置19の出力回転数よりも、第1変速装置18を高速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第1伝動状態にしたときの第2変速装置19の出力回転数を大きくするように、第1伝動径路及び第2伝動径路の伝動比が設定されている。
すなわち、第1変速装置18を低速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第1伝動状態にすることにより、出力回転を最も低速とする前進1速状態F1を現出し、第1変速装置18を低速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第2伝動状態にすることにより、前進1速状態F1よりも出力回転を高速とする前進2速状態F2を現出し、第1変速装置18を低速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第3伝動状態にすることにより、前進2速状態F2よりも出力回転を高速とする前進3速状態F3を現出し、第1変速装置18を高速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第1伝動状態にすることにより、前進3速状態F3よりも出力回転を高速とする前進4速状態F4を現出し、第1変速装置18を高速伝動状態としかつ第2変速装置19を前進第2伝動状態にすることにより、前進4速状態F4よりも出力回転を高速とする前進5速状態F5を現出し、第1変速装置18を高速伝動状態にしかつ第2変速装置19を前進第3伝動状態にすることにより、前進5速状態F5よりも出力回転を高速とする前進6速状態F6を現出し、第1変速装置18を低速伝動状態にしかつ第2変速装置19を後進伝動状態にすることにより後進低速状態RLを現出し、第1変速装置18を高速伝動状態としかつ第2変速装置19を後進伝動状態にすることにより後進低速状態RLよりも出力回転を高速とする後進高速状態RHを現出し、第1変速装置18を両油圧クラッチc1,c2が切り作動させられた中立状態にしかつ第2変速装置19を全油圧クラッチC1,C2,C3,C4が切り作動させられた中立状態にすることにより、伝動を行わない中立状態Nを現出するようになっている。
【0029】
また、図7に示すように、前記副変速装置9が低速伝動状態にありかつ主変速装置10が最高速側の伝動状態にあるときの主変速装置10の最大出力回転数よりも、副変速装置9が高速伝動状態にありかつ主変速装置10の最低速側の伝動状態にあるときの主変速装置10の最低出力回転数を小さくするように副変速装置9の伝動比を設定してある。具体的には、副変速装置9が低速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進4速状態にあるときの車速と副変速装置9が高速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進1速状態にあるときの車速とをほぼ等しくさせ、副変速装置9が低速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進5速状態にあるときの車速と副変速装置9が高速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進2速状態にあるときの車速とをほぼ等しくさせ、副変速装置9が低速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進6速状態にあるときの車速と副変速装置9が高速伝動状態にありかつ主変速装置10が前進3速状態にあるときの車速とをほぼ等しくさせるように設定してある。
【0030】
かつ、図4に示すように、前記第1変速装置18の高速クラッチc2及び第2変速装置19の前進第1クラッチC1とのピストンPとディスクDとの隙間であるディスククリアランスδ1を他の油圧クラッチc1,C2,C3,C4のピストンPとディスクDとの隙間であるディスククリアランスδ2よりも小さく設定してある。
【0031】
前記操向クラッチブレーキ装置11は、図3にも示すように、第2変速装置19の第1出力ギヤ26a及び第2出力ギヤ26bにギヤ27を介して連動する伝動軸28を設け、この伝動軸28に、左右の車軸6L,6Rに一体回転状態に装着した入力ギヤ29L,29Rのそれぞれに噛み合い連動する伝動ギヤ30L,30Rを独立して回転並びにシフト自在に装着し、これら伝動ギヤ30L,30Rが第1位置にシフト位置するとき伝動ギヤ30L,30Rそれぞれを伝動軸28に連動させるとともに伝動ギヤ30L,30Rが第2位置にシフト位置するとき伝動ギヤ30L,30Rの伝動軸28への伝動をそれぞれ断つ爪クラッチ利用の左右の操向クラッチ31L,31Rを設け、操向クラッチ31L,31Rが切り作動した状態で伝動ギヤ30L,30Rが第2位置よりも第1位置とは反対側にシフト移動することにより徐々に制動力を大きくする状態で伝動ギヤ30L,30Rのそれぞれを制動する多板式の操向ブレーキ32L,32Rを設け、前記伝動ギヤ30L,30Rのそれぞれを第1位置にシフト付勢する左右のバネ33L,33Rを設け、圧油供給に伴い伝動ギヤ30L,30Rのそれぞれを第1位置から制動位置にまで付勢力に抗して押圧することでシフト移動させる内装式の油圧シリンダ34L,34Rを設けて構成されている。
すなわち、油圧シリンダ34L,34Rからの排油で伝動ギヤ30L,30Rを第1位置にバネ33L,33Rによる付勢力でシフトさせて操向クラッチ31L,31Rを入り作動させることにより、ギヤ27・伝動軸28・操向クラッチ31L,31Rを介して主変速装置10の出力を車軸6L,6Rに伝達し、油圧シリンダ34L,34Rへの供給圧を第1設定圧にさせる圧油供給で伝動ギヤ30L,30Rを第2位置に付勢力に抗してシフトさせて操向クラッチ31L,31Rを切り作動させることにより、主変速装置10の出力の車軸6L,6Rへの伝達を断ち、更に、油圧シリンダ34L,34Rへの供給圧を第1設定圧よりも大きい第2設定圧にさせる圧油供給で伝動ギヤ30L,30Rを制動位置に付勢力に抗してシフトさせて操向クラッチ31L,31R切り状態で操向ブレーキ32L,32Rを制動作動させることにより、車軸6L,6Rを制動するようになっている。
従って、左右の操向クラッチ31L,31Rをともに入り作動させることにより、主変速装置10の出力を左右のクローラ走行装置1L,1Rに等速伝動して、左右のクローラ走行装置1L,1Rを駆動しての直進走行を行え、旋回内側の操向クラッチ31L又は31Rを切り作動させることにより、旋回内側のクローラ走行装置1L又は1Rへの伝動を断って、旋回内側のクローラ走行装置1L又は1Rの駆動を断つとともに旋回外側のクローラ走行装置1R又は1Lのみを駆動しての緩旋回を行え、旋回内側の操向ブレーキ32L又は32Rを制動作動させることにより、旋回内側のクローラ走行装置1L又は1Rへの伝動を断って、旋回内側のクローラ走行装置1L又は1Rを制動するとともに旋回外側のクローラ走行装置1R又は1Lのみを駆動しての急旋回を行えるのである。
【0032】
かつ、前記操向クラッチブレーキ装置11は、一方の操向ブレーキ32L又は32R(図では右の操向ブレーキ32Rで示してある。)をカム機構35aを介して制動作動させるブレーキレバー35を備えている。
すなわち、走行停止の駐車状態において、操向クラッチ30L,30Rを入り作動させた状態でブレーキレバー35を操作して一方の操向ブレーキ32L又は32Rを制動作動することにより、制動力を伝動軸28を介して他方のクローラ走行装置1R又は1Lにも作用させることができ、この一方の操向ブレーキ32L又は32Rが駐車ブレーキとして機能するようになっている。
【0033】
前記主変速装置10の操作装置は、図5に示すように、一つの変速操作具である変速レバー36を設け、エンジン5に連動する油圧ポンプ37から油圧クラッチc1,c2,C1,C2,C3,C4への油圧供給路38に、前記変速レバー36の操作に基づいて油圧クラッチc1,c2,C1,C2,C3,C4を関連制御するロータリーバルブ利用の制御弁39を設けて構成されている。
すなわち、制御弁39は、図6に示すように、操作レバー36にギヤ40,41を介して連動していて、変速レバー36が前進1速位置f1に操作されたとき、低速クラッチc1及び前進第1クラッチC1に圧油を供給する前進1速状態F1に切り換わり、変速レバー36が前進2速位置f2に操作されたとき、低速クラッチc1及び前進第2クラッチC2に圧油を供給する前進2速状態F2に切り換わり、変速レバー36が前進3速位置f3に操作されたとき、低速クラッチc1及び前進第3クラッチC3に圧油を供給する前進3速状態F3に切り換わり、変速レバー36が前進4速位置f4に操作されたとき、高速クラッチc2及び前進第1クラッチC1に圧油を供給する前進4速状態F4に切り換わり、変速レバー36が前進5速位置f5に操作されたとき、高速クラッチc2及び前進第2クラッチC2に圧油を供給する前進5速状態F5に切り換わり、変速レバー36が前進6速位置f6に操作されたとき、高速クラッチc2及び前進第3クラッチC3に圧油を供給する前進6速状態F6に切り換わり、変速レバー36が後進低速位置rLに操作されたとき、低速クラッチc1及び後進クラッチC4に圧油を供給する後進低速状態RLに切り換わり、変速レバー36が後進高速位置rHに操作されたとき、高速クラッチc2及び後進クラッチC4に圧油を供給する後進高速状態RHに切り換わるものである。
【0034】
そして、操作装置では、制御弁39の作動に基づく圧油供給に伴い第1変速装置18の油圧クラッチc1,c2が入り作動するに要する第二の時間を、制御弁39の作動に基づく圧油供給に伴い第2変速装置19の油圧クラッチC1,C2,C3,C4が入り作動するに要する第一の時間よりも短く設定してある。その設定手段は、第1変速装置18の油圧クラッチc1,c2への圧油供給に対して第2変速装置19の油圧クラッチC1,C2,C3,C4への圧油供給を遅らせるアキュムレータ42を設けて、第二の時間を第一の時間よりも短くする手段である。
【0035】
前記油圧供給路38には、クラッチ圧設定用の減圧弁43が介装されており、油圧ポンプ37の作動に伴う圧油供給によりブレーキバネ44による付勢に抗して前記ブレーキレバー35をブレーキ解除作動させるブレーキ解除用油圧シリンダ45が接続されている。つまり、駐車ブレーキとなる操向ブレーキ32L又は32Rは、エンジン停止に伴い自動的に制動作動するネガテブブレーキに構成されている。加えて、油圧供給路38のうち、低速クラッチc1に対する供給路部分には、低速クラッチc1の圧油供給に伴う作動速度を設定値に維持しながら排油に伴う作動速度を遅くするためのチェック弁38aと絞り38bとが並列接続する状態で介装されている。つまり、前進3速状態F3からそれよりも高速の状態(前進4速状態F4、前進5速状態F5、前進6速状態)への変速時及び、後進低速状態RLから後進高速状態RHへの変速時に、低速クラッチc1の入り作動している時間を可及的に長くして、走行抵抗で車速が極度に低下することを抑制することにより、車速の差を小さくして、ショック少なく高速の状態及び後進高速状態RHに移行できるようにしてある。
また、油圧供給路38には、操向クラッチブレーキ装置11の油圧シリンダ34L,34Rへの操向用圧油供給路46が分岐接続されており、この操向用圧油供給46には、操向操作具である操向レバー47の操作に基づいて油圧シリンダ34L,34Rを制御する操向弁48aと供給圧調整弁48bとが介装されている。つまり、操向レバー47が直進の中立位置Nに位置するとき、操向弁48aを油圧シリンダ34L,34Rに圧油供給しない直進状態Sに切り換えることにより、左右の操向クラッチ31L,31Rを入り作動させての直進走行状態を現出し、操向レバー47が左緩旋回位置L1に位置するとき、操向弁48aを左の油圧シリンダ34Lに圧油供給する左旋回状態TLに切り換えるとともに供給圧調整弁48bを第1設定圧状態に切り換えることにより、左の操向クラッチ31Lを切り作動させての左緩旋回状態を現出し、操向レバー47が右緩旋回位置R1に位置するとき、操向弁48aを右の油圧シリンダ34Rに圧油供給する右旋回状態TRに切り換えるとともに供給圧調整弁48bを第1設定圧状態に切り換えることにより、右の操向クラッチ31Rを切り作動させての右緩旋回状態を現出し、操向レバー47が左急旋回位置L2に位置するとき、操向弁48aを左の油圧シリンダ34Lに圧油供給する左旋回状態に切り換えるとともに供給圧調整弁48bを第2設定圧状態に切り換えることにより、左の操向クラッチ31Lを切り作動させるとともに左の操向ブレーキ32Lを制動作動させての左急旋回状態を現出し、操向レバー47が右急旋回位置R2に位置するとき、操向弁48aを右の油圧シリンダ34Rに圧油供給する右旋回状態に切り換えるとともに供給圧調整弁48bを第2設定圧状態に切り換えることにより、右の操向クラッチ31Rを切り作動させるとともに右の操向ブレーキ32Rを制動作動させての右急旋回状態を現出するようになっている。
更に、エンジン5で駆動される第2油圧ポンプ49から昇降シリンダ2Aへの昇降用圧油供給路50には、昇降操作具51の操作に基づいて昇降シリンダ2Aを制御する昇降弁52が介装されており、また、第1変速装置18の油圧クラッチc1,c2及び第2変速装置19の油圧クラッチC1,C2,C3,C4に作動油を潤滑油として供給する潤滑油供給路53が接続されている。なお、昇降操作具51と前記操向レバー47とは、1本の操作レバーから兼用構成されている。
【0036】
そして、前記刈取部2を駆動する手段は、第1変速装置18の出力を刈取部2に伝達する手段であって、具体的には、刈取部2への出力プーリ54を備えた刈取出力軸55を第1変速低速出力ギヤ22aに従動ギヤ56を介して連動させてある。
【0037】
〔別実施形態〕
上記実施の形態では、第1変速装置18として、高低二段の変速を行うものを示したが、第1変速装置18としては、3段以上の変速を行うものであっても良い。
【0038】
上記実施の形態では、第2変速装置19として、前進3段・後進1段の変速を行うものを示したが、第2変速装置19としては、前進4段以上の変速を行うものや、後進2段以上の変速を行うものであっても良い。
【0039】
上記実施の形態では、第2変速装置19として、複数の油圧クラッチC1,C2を択一的に入り作動させることにより、複数段の変速を行うものを示したが、第2変速装置19としては、ギヤをシフトすることにより、ギヤの噛み合いを変更することで変速するものや、変速伝動軸に回転自在に装着させた複数の入力ギヤを機械式のクラッチを介して択一的に変速伝動軸20に連動させることで変速するものであっても良い。
【0040】
上記実施の形態では、第1変速装置18の油圧クラッチc1,c2として、圧油供給により入り作動するものを示したが、油圧クラッチc1,c2としては、排油に伴いバネの力で入り作動するものであっても良い。
【0041】
上記実施の形態では、第2変速装置19の油圧クラッチC1,C2,C3,C4として、圧油供給により入り作動するものを示したが、油圧クラッチC1,C2,C3,C4としては、排油に伴いバネの力で入り作動するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの側面図
【図2】エンジンから走行装置への伝動系統図
【図3】変速装置の概略縦断側面図
【図4】変速装置の縦断面図
【図5】油圧回路図
【図6】変速レバーの側面図
【図7】変速状態と車速との関係をグラフ化した図
【符号の説明】
1 走行装置
2 刈取部
18 第1変速装置
19 第2変速装置
36 変速操作具
39 制御弁
c1 油圧クラッチ
c2 油圧クラッチ
C1 油圧クラッチ
C2 油圧クラッチ
Claims (3)
- 走行装置(1)への伝動系に、副変速装置(9)並びにこの副変速装置の伝動下手側に第1変速装置(18)と第2変速装置(19)とを第1変速装置(18)が伝動上手側に位置する状態に介装してあるコンバインの伝動装置であって、前記副変速装置(9)がギヤをシフトすることによりギヤの噛み合いを変更するように構成され、前記第1変速装置(18)が、伝動比が互いに異なる複数の第1伝動径路のそれぞれに介装した油圧クラッチ(c1)(c2)を択一的に入り作動させることにより第1伝動径路の一つを伝動状態にして複数段の変速を行うように構成され、第1変速装置(18)の出力を刈取部(2)に伝達するように構成してあるコンバインの伝動装置。
- 前記第2変速装置(19)が、伝動比が互いに異なる複数の第2伝動径路のそれぞれに介装した油圧クラッチ(C1〜C4)を択一的に入り作動させることにより第2伝動径路の一つを伝動状態にして複数段の変速を行うように構成されている請求項1記載のコンバインの伝動装置。
- 第1変速装置(18)の油圧クラッチ(c1)(c2)と第2変速装置の油圧クラッチ(C1〜C4)とを一つの変速操作具(36)の操作に基づいて関連制御する制御弁(39)を設けてある請求項2記載のコンバインの伝動装置。
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