JP2004207543A - 多層配線基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多層配線基板に異種材料層を形成したとき、多層配線基板の変形が発生し、また異種材料層と絶縁層との収縮挙動の差によってクラックが発生することで、導体パターンの断線が生じる。
【解決手段】第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシート2を第1の支持体上1aに形成して所定寸法に切断した後、第1のグリーンシート2を下面にして第2の支持体1bに配置し、この上に、第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシート2を取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシート2と同じになるように塗工して、第2のグリーンシート4の内側に第1のグリーンシート2が一体的に埋設された第3のグリーンシート3を得る。この第3のグリーンシート3を用いて多層配線基板を作製することにより、ペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができ、多層配線基板の変形を防止することが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシート2を第1の支持体上1aに形成して所定寸法に切断した後、第1のグリーンシート2を下面にして第2の支持体1bに配置し、この上に、第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシート2を取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシート2と同じになるように塗工して、第2のグリーンシート4の内側に第1のグリーンシート2が一体的に埋設された第3のグリーンシート3を得る。この第3のグリーンシート3を用いて多層配線基板を作製することにより、ペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができ、多層配線基板の変形を防止することが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミック焼結体から成る絶縁基体の内部に局所的に異種材料から成る層を内蔵した多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯電子機器や携帯用情報端末等の分野では、半導体素子を実装した多層配線基板と共に、受動部品として抵抗体・コンデンサ・インダクタ等をプリント回路基板等の基板上に実装したモジュール基板が用いられてきた。
【0003】
しかし近年、このような携帯電子機器や携帯用情報端末等に用いられる部品の小型化・複合化および高性能化が強く求められており、半導体素子を実装する多層配線基板の内部に受動部品もしくは受動部品に相当する機能を有する電子回路素子を内蔵させて、半導体素子等と受動部品とを高密度で実装した部品の集積化の流れが進んでいる。これらの受動部品を多層配線基板の内部に取り組むことは、基板表面にこれら受動部品の実装スペースを確保する必要をなくし、また設計の自由度も増すため、多層配線基板の小型化に寄与できることとなる。
【0004】
多層配線基板内に受動部品もしくはこれに相当する電子回路素子を形成する場合には、例えばインダクタ素子を形成する場合であれば、低抵抗なAgやCuによる配線をミアンダ状に形成することで高いインダクタンスを有するインダクタ素子を形成している。しかし、この場合は、配線長が長くなるため電気抵抗による損失が発生することと、また長い配線を形成するため多層配線基板に広いスペースを必要とするため、多層配線基板の小スペース化には限界がある。
【0005】
そこで、多層配線基板内にインダクタ素子等の受動部品を形成する場合には、多層配線基板の絶縁層を形成する無機物粉末(通常はセラミックおよびガラス等)と異なるフェライト等の異種の無機物粉末を含有する層を、多層配線基板のインダクタ素子等の近傍または隣接する位置に形成し、この異種の無機物粉末の電気的・磁気的作用により小さいスペースで所望のインダクタンス等の特性を有する受動部品もしくはこれに相当する電子回路素子を多層配線基板に内蔵させるという手法が多用されるようになってきている。
【0006】
このように異種の無機物粉末を含有する層を有する多層配線基板は、例えば、多層配線基板の絶縁層がガラスセラミックスから成り、異種の無機物粉末がフェライトから成る場合であれば、以下のようにして製作されていた。
【0007】
まず、フィラー成分としてセラミック粉末およびガラス粉末を含有するスラリーを成形して複数のグリーンシートを得て、次に、このグリーンシート上に配線導体となる金属ペーストを配線導体のパターンにスクリーン印刷し、次に、この金属ペーストが印刷されたグリーンシートの所望の位置にフェライトペーストをスクリーン印刷にて塗工して配線導体パターンを覆うようにフェライト層を形成し、次に、配線導体パターンおよびフェライト層が印刷されたグリーンシートを積層し、この積層体を焼成することで製作される。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−21264号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のように異種材料層、例えばフェライト層をグリーンシート上にスクリーン印刷して形成する場合には、フェライトペースト中に含まれる溶剤によりグリーンシートが侵されて変形してしまうことがあるという問題点があった。また、フェライト層が部分的に凸部として形成されている場合には、積層工程においてグリーンシート間の積層不良が発生したり、異種材料層の上部に形成された絶縁層の各層が凸状に変形したりするという問題点があった。
【0010】
一般に、多層配線基板中に形成された受動素子の精度は、導体パターンの位置精度や絶縁層の厚み精度に依存する。従って、受動素子の特性の高精度化には、グリーンシートの変形を抑え、各絶縁層やフェライト層等の層間の位置精度を保つことが必要であるが、スクリーン印刷にて異種材料層を形成した場合は、異種材料層形成用ペーストに含まれる溶剤の影響によりグリーンシートの変形が発生するため、十分な精度を確保することが困難であるという問題点があった。
【0011】
また、グリーンシートに凹部を形成し、この凹部にフェライト・グリーンシートを部分的に埋め込んでフェライト層を形成した場合は、グリーンシートの上部と異種材料であるフェライト・グリーンシートの下部との間の密着は積層時にプレス加重が加わることによって確保することができるが、側面にはプレス加重が加わらないため、フェライト・グリーンシートの側面とグリーンシートの凹部の側面との間の密着を確保することができないという問題点がある。そのため、焼成工程において、フェライト・グリーンシートとグリーンシートとの収縮挙動の差によって異種材料層であるフェライト層とセラミック絶縁層との側面間に剥離が発生したり、あるいはフェライト層やセラミック絶縁層にクラックが発生することがあるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みて案出されたもので、その目的は、多層配線基板に異種材料層を形成したときに発生する多層配線基板の変形を抑制し、多層配線基板の各層に形成した導体パターンや異種材料層の位置精度や絶縁層および異種材料層の厚みを所望の厚みに保ち、また異種材料層とセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線が無く、さらに、導体パターンまたはこれと異種材料層とにより絶縁基体中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができる多層配線基板の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板の製造方法は、第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、前記第1のグリーンシートを前記第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、切断された前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体を前記第1のグリーンシートを下側にして第2の支持体上に載置する工程と、前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体が載置された前記第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、前記第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが前記第1のグリーンシートと同じになるように塗工する工程と、前記第1および第2の支持体を除去し、前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートの内側に前記第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程と、前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートを準備するとともにこの第2のグリーンシートおよび前記第3のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、前記導体ペーストが塗布された前記第2および第3のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、このグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記第1の無機物粉末がフェライトを含み、このフェライトがZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るとともに、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記第1の無機物粉末がチタン酸バリウムおよびガラス粉末の混合粉末から成り、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末(第2の無機物粉末に対して異種材料となる)から成る第1のグリーンシート(以下、異種材料グリーンシートということがある)および第1の支持体が載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工し、さらに、第1および第2の支持体を除去し、第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシート(以下、単にグリーンシートということがある)の内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程を具備することから、従来のように、グリーンシート上に異種材料のペーストをスクリーン印刷等で塗布して局所的に異種材料グリーンシートを形成する必要がない。従って、異種材料のペーストのスクリーン印刷工程等で発生したペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができる。また、異種材料グリーンシートはグリーンシート内に埋設されているため、グリーンシート上に凸部が生じることがなく、積層不良の発生や異種材料層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0017】
また、第1の支持体上に形成された状態で異種材料グリーンシートが載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを塗工することから、このスラリー中の溶剤が異種材料グリーンシートの側面を部分的に溶解させることとなるため、両者の界面に異種材料である第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が形成されることとなる。その結果、異種材料グリーンシートとグリーンシート間の接着強度が十分に確保されて、かつ第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が両グリーンシートが一体的に焼結して形成される絶縁基体の収縮挙動の緩和層として働くものとなることから、異種材料層と第2の無機物粉末を含む、例えばセラミックスやガラスセラミックスから成る絶縁層との剥離やそれらの層におけるクラックの発生を抑制することができ、多層配線基板の各層間の位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した受動素子の機能の高精度化が可能となる。また、異種材料層および絶縁層を貫く配線導体等を形成した場合にも、その配線導体等に断線等の不具合が発生しない信頼性の高い多層配線基板を形成することができる。
【0018】
また、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうち少なくとも1種類から成るものとした場合には、内部に高い透磁率をもつフェライト層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。さらに、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るものとした場合には、内部に高い誘電率をもつ誘電体層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。また、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の多層配線基板の製造方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1(a)〜(i)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための断面図である。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、第1の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第1の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第1の支持体1a上に膜状に塗工して第1のグリーンシート2を形成する。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、第1のグリーンシート2を第1の支持体1aとともにプレス打ち抜きや押し切り等により所定の寸法に切断し、図1(c)に示すように、これを第1のグリーンシート2を下側にして第2の支持体1b上に載置する。ここで、第2の支持体1b上には微粘着性の粘着剤を塗布しておくことがよく、また第1のグリーンシート2を載置する際には、第1のグリーンシート2と第2の支持体1bとの界面にエアーの残留が無いように、真空プレス等の手法を用いるのがよい。
【0024】
次に、図1(d)に示すように、第2の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第2の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えてスラリーを得る。そして、ドクターブレード法やスロットコータ法等の手法により、第1のグリーンシート2および第1の支持体1aが載置された第2の支持体1b上にこのスラリーを乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシート2の厚みと同じになるように塗工し、第2のグリーンシートの内側に第1のグリーンシート2が一体的に埋設された第3のグリーンシート3を得る。
【0025】
次に、図1(e)に示すように、第2の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第2の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第3の支持体1c上に膜状に塗工して第2のグリーンシート4を準備する。
【0026】
ここで、第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤は、第1のグリーンシート2を適度に溶解させるべく、第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤の溶解度パラメータ(SP値)が第1のグリーンシート2の有機バインダのSP値に近い方(2程度までの差)がよい。例えば、第1のグリーンシート2の有機バインダにアクリル系バインダまたはブチラールバインダを用いたときは、第2のグリーンシート4の溶剤はαテルピネオールまたはトルエン等の溶剤を用いるとよい。第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤と第1のグリーンシート2のバインダのSP値が離れている場合は、第1のグリーンシート2と第2のグリーンシート4のスラリーとの濡れ性が悪くなり、両者の界面での剥離が発生しやすくなる。
【0027】
さらに、図1(f)に示すように、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4にレーザ加工またはマイクロドリルやパンチング等の機械的加工により貫通孔5を形成し、図1(g)に示すように、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体となるビアホール導体パターン6を形成する。
【0028】
この導体ペーストは、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤,バインダとともに混練することにより形成され、例えば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス粉末等の無機成分を添加して混合して調製される。
【0029】
導体ペーストの貫通孔5内への充填は、貫通孔5の配置に合わせて開口を形成したスクリーン製版を用いるスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0030】
次に、図1(h)に示すように、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4の表面に導体ペーストとして金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線回路パターン7を形成する。
【0031】
この配線回路パターン7を形成するメタライズペーストは、通常、上述のビアホール導体パターン6を形成するための導体ペーストと同様の金属材料(つまり、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末)および同様の調製方法を用いて得られる導体ペーストが使用される。
【0032】
メタライズペーストの印刷は、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を採用することができ、例えば、配線回路パターン7の製版を用いるスクリーン印刷によって、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4の表面に所望の形状の所定パターンに形成することができる。
【0033】
次に、図1(i)に示すように、貫通孔5の形成や導体ペーストの印刷等の所定の加工を施した複数枚の第2のグリーンシート3および第2のグリーンシート4を積層し、積層体8を作製する
次に、この積層体8を例えば400℃〜850℃の温度で加熱処理して、第3のグリーンシート3,第2のグリーンシート4,ビアホール導体パターン6,および配線回路パターン7中の有機成分を分解除去した後、同時焼成することにより、第1の無機物粉末による異種材料層を内蔵した第2の無機物粉末による絶縁層を多層に積層して成る多層配線基板を作製することができる。
【0034】
このとき、第1の無機物粉末がフェライト粉末から成り、第2の無機物粉末がガラス粉末およびフィラー粉末から成る場合には、インダクタ素子を内蔵したガラスセラミック多層配線基板を作製することができる。特に、フェライト粉末がZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るものの場合は、多層配線基板内に形成されたフェライト層におけるフェライト結晶相は高い透磁率をもつため、多層配線基板の内部に形成されたインダクタ素子の小型化に寄与できるものとなる。
【0035】
また、第2の無機物粉末のガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
【0036】
また、第2の無機物粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物や、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等を用いることができる。
【0037】
第2の無機物粉末が上記のガラス粉末およびフィラー粉末であるときには、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができる。その結果、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0038】
また、第1の無機物粉末がチタン酸バリウム粉末とガラス粉末の混合粉末から成り、第2の無機物粉末がガラス粉末およびフィラー粉末から成る場合には、第1の無機物粉末から成るコンデンサ素子を内蔵したガラスセラミック多層配線基板を作製することができる。そして、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るため、内部に高い比誘電率をもつ誘電体層を持つ多層配線基板を作製することができ、かつガラス粉末が混合されている結果、第2の無機物粉末によるガラスセラミックスとの低温での同時焼成が可能となる。また、第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーであることから、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の多層配線基板の製造方法を具体例によって詳細に説明する。
【0040】
本実施例では、図2に断面図で示すような、内部に5mm角のフェライト層10を有する評価基板を作製し、このフェライト層10に挟まれた配線導体11における配線回路のオープンの有無とその寸法精度の検証を断面観察にて行なった。なお、図2において、9はガラスセラミックス等から成る絶縁層、10はフェライト層、11は配線導体、12はビア導体である。
【0041】
まず、ガラスとしてSiO2−Al2O3−MgO−B2O3−ZnO系ガラス粉末を75質量%と、セラミックスのフィラー成分としてAl2O3粉末を25質量%とを調合し、これに溶剤,有機バインダを加え十分混練してガラスセラミック・スラリーを作製し、これをドクターブレード法にてPETフィルムから成る第3の支持体上に塗工し、ガラスセラミック・グリーンシートを作製した。
【0042】
次に、フェライト・グリーンシートとして平均粒径0.5〜1μmのZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,NiFe2O4の結晶相から構成される透磁率が22で熱膨張係数が12×10-6/℃の仮焼済みのフェライト粉末に、ブチラール樹脂を10質量%と、高分子量のアルコールとを希釈剤として添加し、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ50μmのフェライト・グリーンシートをPETフィルムから成る第1の支持体上に成型した。
【0043】
次に、第1の支持体とともにこれを5mm各にカットし、微粘着性の粘着剤が塗布されたPETフィルムから成る第2の支持体の所定の位置に配置した後、スロットコータにて乾燥後の厚みが50μmとなるよう上記のガラスセラミック・スラリーを塗工した。このガラスセラミック・スラリーの乾燥後、フェライト・グリーンシートの上下面にある第1の支持体および第2の支持体を除去して、フェライト・グリーンシートを内蔵したガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料1)。
【0044】
また、比較例として、ガラスセラミック・グリーンシート上にフェライト層をスクリーン印刷にて形成したもの(試料2)、ガラスセラミック・グリーンシートにフェライト・グリーンシートを埋め込み形成したもの(試料3)を以下のようにして作製した。
【0045】
平均粒径0.5〜1μmのZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,NiFe2O4の結晶相から構成される透磁率が22で熱膨張係数が12×10-6/℃の仮焼済みのフェライト粉末に、エチルセルロース系樹脂とテルピネオールとを加えて適度な粘度となるように調整したフェライトペーストを、ガラスセラミック・グリーンシート上にスクリーン印刷にて乾燥後の厚みが50μmとなるよう3回に分けて印刷し、フェライト層を形成した。
【0046】
また、ガラスセラミック・グリーンシートにパンチングマシンにて5mm角の穴を打ち抜き、これを穴加工がなされていないガラスセラミック・グリーンシートに積層して、凹状の穴加工が施されたガラスセラミック積層体を得た。
【0047】
次に、5mm角に打ち抜いたフェライト・グリーンシートをこのガラスセラミック積層体の凹部に埋め込むことにより、凹部内にフェライト層を形成した。
【0048】
上記のようにして形成したフェライト層を内蔵したガラスセラミック積層体上に、Ag−Pd合金粉末(平均粒径1μm)にエチルセルロース系樹脂とテルピネオールとを加えて適度な粘度となるように調整した導体層用メタライズペーストをスクリーン印刷にて厚み10μmとなるように塗布して、配線導体11を形成した。
【0049】
また、ガラスセラミック・グリーンシートに所定の位置にパンチングマシンにて100μmの穴加工を行ない、上記の導体用メタライズペーストを充填して、ビア導体12を形成した。
【0050】
これを所定の順序で所定枚数(この例では4枚)重ね合わせ、真空プレスにて積層して、フェライト層を内蔵したガラスセラミック積層体を得た。
【0051】
そして、以上の試料を900℃,1時間で焼成することによって、フェライト層を内蔵した評価基板である試料1,試料2,試料3を作製した。
【0052】
このようにして作製した各評価基板の試料1,試料2,試料3について導通チェックを行なった。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果より分かるように、試料3においては、オープンが5/5(5個中で5個)発生していることが確認できた。そこで、これらの断面観察を実施した結果、フェライト層10と絶縁層9との界面でセパレーションが発生し、それにより配線導体11の断線が発生していることが確認された。
【0055】
また、試料2においては、断面観察の結果、絶縁基体のフェライト層10の上部で50μm以上の高さの凸部が発生しており、また絶縁層9とフェライト層10とに沿って配線導体11のうねりが生じているのが確認できた。また、オープンも2/5(5個中で2個)発生しているのが確認できた。
【0056】
これに対して、本発明の多層配線基板の製造方法の実施例である試料1では、オープンの発生や配線導体11のうねりもなく、寸法精度に優れた多層配線基板を得られることが確認できた。
【0057】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施の形態の例では配線導体にAg−Pd合金を用いたが、配線導体にはCu,Ag,Au等を用いてもよい。また、第1〜第3の支持体にはPETフィルムを用いたが、成型紙等のグリーンシート成形時に使用できる各種の支持体を用いてもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、第1のグリーンシートを第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、切断された第1のグリーンシートおよび第1の支持体を第1のグリーンシートを下側にして第2の支持体上に載置する工程と、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工する工程と、第1および第2の支持体を除去し、第2のグリーンシートの内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程と、第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートを準備するとともにこの第2のグリーンシートおよび第3のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、導体ペーストが塗布された第2および第3のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、このグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備することから、従来のように第1の無機物粉末(第2の無機物粉末に対して異種材料となる)を第2の無機物粉末から成るグリーンシート上にペーストによるスクリーン印刷等で局所的に異種材料グリーンシートを形成する必要がない。従って、異種材料のペーストのスクリーン印刷工程等で発生したペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができる。また、異種材料グリーンシートはグリーンシート内に埋設されているため、グリーンシート上に凸部が生じることがなく、積層不良の発生や異種材料層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0059】
また、第1の支持体上に形成された状態で異種材料グリーンシートが載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを塗工することから、このスラリー中の溶剤が異種材料グリーンシートの側面を部分的に溶解させることとなるため、両者の界面に異種材料である第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が形成されることとなる。その結果、異種材料グリーンシートとグリーンシート間の接着強度が十分に確保されて、かつ第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が両グリーンシートが一体的に焼結して形成される絶縁基体の収縮挙動の緩和層として働くものとなることから、異種材料層と第2の無機粉末を含む、例えばセラミックスやガラスセラミックスから成る絶縁層との剥離やそれらの層におけるクラックの発生を抑制することができる。その結果、多層配線基板の各層間の位置精度を高精度に保つことができるため、多層配線基板の内部に形成した受動素子の機能の高精度化が可能となり、さらに異種材料層および絶縁層を貫く配線導体等を形成した場合にも、その配線導体等に断線等の不具合が発生しない信頼性の高い多層配線基板を形成することができる。
【0060】
また、本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末がフェライトを含み、そのフェライトがZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るとともに、第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、内部に高い透磁率をもつフェライト層を持ち、かつ高精度に形成された配線導体をもつ多層配線基板を得ることができる。さらに、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0061】
さらに、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るものとした場合には、内部に高い誘電率をもつ誘電体層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。また、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0062】
以上により、本発明によれば、多層配線基板に異種材料層を形成したときに発生する多層配線基板の変形を抑制し、多層配線基板の各層に形成した導体パターンや異種材料層の位置精度や絶縁層および異種材料層の厚みを所望の厚みに保ち、また異種材料層とセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線が無く、さらに、導体パターンまたはこれと異種材料層とにより絶縁基体中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができる多層配線基板の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(i)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための断面図である。
【図2】実施例で作製した試料である評価基板の断面図である。
【符号の説明】
1a・・・第1の支持体
1b・・・第2の支持体
1c・・・第3の支持体
2・・・・第1のグリーンシート
3・・・・第3のグリーンシート
4・・・・第2のグリーンシート
5・・・・貫通孔
6・・・・ビアホール導体パターン
7・・・・配線回路パターン
8・・・・積層体
9・・・・絶縁層
10・・・フェライト層
11・・・配線導体
12・・・ビア導体
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミック焼結体から成る絶縁基体の内部に局所的に異種材料から成る層を内蔵した多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯電子機器や携帯用情報端末等の分野では、半導体素子を実装した多層配線基板と共に、受動部品として抵抗体・コンデンサ・インダクタ等をプリント回路基板等の基板上に実装したモジュール基板が用いられてきた。
【0003】
しかし近年、このような携帯電子機器や携帯用情報端末等に用いられる部品の小型化・複合化および高性能化が強く求められており、半導体素子を実装する多層配線基板の内部に受動部品もしくは受動部品に相当する機能を有する電子回路素子を内蔵させて、半導体素子等と受動部品とを高密度で実装した部品の集積化の流れが進んでいる。これらの受動部品を多層配線基板の内部に取り組むことは、基板表面にこれら受動部品の実装スペースを確保する必要をなくし、また設計の自由度も増すため、多層配線基板の小型化に寄与できることとなる。
【0004】
多層配線基板内に受動部品もしくはこれに相当する電子回路素子を形成する場合には、例えばインダクタ素子を形成する場合であれば、低抵抗なAgやCuによる配線をミアンダ状に形成することで高いインダクタンスを有するインダクタ素子を形成している。しかし、この場合は、配線長が長くなるため電気抵抗による損失が発生することと、また長い配線を形成するため多層配線基板に広いスペースを必要とするため、多層配線基板の小スペース化には限界がある。
【0005】
そこで、多層配線基板内にインダクタ素子等の受動部品を形成する場合には、多層配線基板の絶縁層を形成する無機物粉末(通常はセラミックおよびガラス等)と異なるフェライト等の異種の無機物粉末を含有する層を、多層配線基板のインダクタ素子等の近傍または隣接する位置に形成し、この異種の無機物粉末の電気的・磁気的作用により小さいスペースで所望のインダクタンス等の特性を有する受動部品もしくはこれに相当する電子回路素子を多層配線基板に内蔵させるという手法が多用されるようになってきている。
【0006】
このように異種の無機物粉末を含有する層を有する多層配線基板は、例えば、多層配線基板の絶縁層がガラスセラミックスから成り、異種の無機物粉末がフェライトから成る場合であれば、以下のようにして製作されていた。
【0007】
まず、フィラー成分としてセラミック粉末およびガラス粉末を含有するスラリーを成形して複数のグリーンシートを得て、次に、このグリーンシート上に配線導体となる金属ペーストを配線導体のパターンにスクリーン印刷し、次に、この金属ペーストが印刷されたグリーンシートの所望の位置にフェライトペーストをスクリーン印刷にて塗工して配線導体パターンを覆うようにフェライト層を形成し、次に、配線導体パターンおよびフェライト層が印刷されたグリーンシートを積層し、この積層体を焼成することで製作される。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−21264号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のように異種材料層、例えばフェライト層をグリーンシート上にスクリーン印刷して形成する場合には、フェライトペースト中に含まれる溶剤によりグリーンシートが侵されて変形してしまうことがあるという問題点があった。また、フェライト層が部分的に凸部として形成されている場合には、積層工程においてグリーンシート間の積層不良が発生したり、異種材料層の上部に形成された絶縁層の各層が凸状に変形したりするという問題点があった。
【0010】
一般に、多層配線基板中に形成された受動素子の精度は、導体パターンの位置精度や絶縁層の厚み精度に依存する。従って、受動素子の特性の高精度化には、グリーンシートの変形を抑え、各絶縁層やフェライト層等の層間の位置精度を保つことが必要であるが、スクリーン印刷にて異種材料層を形成した場合は、異種材料層形成用ペーストに含まれる溶剤の影響によりグリーンシートの変形が発生するため、十分な精度を確保することが困難であるという問題点があった。
【0011】
また、グリーンシートに凹部を形成し、この凹部にフェライト・グリーンシートを部分的に埋め込んでフェライト層を形成した場合は、グリーンシートの上部と異種材料であるフェライト・グリーンシートの下部との間の密着は積層時にプレス加重が加わることによって確保することができるが、側面にはプレス加重が加わらないため、フェライト・グリーンシートの側面とグリーンシートの凹部の側面との間の密着を確保することができないという問題点がある。そのため、焼成工程において、フェライト・グリーンシートとグリーンシートとの収縮挙動の差によって異種材料層であるフェライト層とセラミック絶縁層との側面間に剥離が発生したり、あるいはフェライト層やセラミック絶縁層にクラックが発生することがあるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みて案出されたもので、その目的は、多層配線基板に異種材料層を形成したときに発生する多層配線基板の変形を抑制し、多層配線基板の各層に形成した導体パターンや異種材料層の位置精度や絶縁層および異種材料層の厚みを所望の厚みに保ち、また異種材料層とセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線が無く、さらに、導体パターンまたはこれと異種材料層とにより絶縁基体中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができる多層配線基板の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板の製造方法は、第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、前記第1のグリーンシートを前記第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、切断された前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体を前記第1のグリーンシートを下側にして第2の支持体上に載置する工程と、前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体が載置された前記第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、前記第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが前記第1のグリーンシートと同じになるように塗工する工程と、前記第1および第2の支持体を除去し、前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートの内側に前記第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程と、前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートを準備するとともにこの第2のグリーンシートおよび前記第3のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、前記導体ペーストが塗布された前記第2および第3のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、このグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記第1の無機物粉末がフェライトを含み、このフェライトがZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るとともに、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記第1の無機物粉末がチタン酸バリウムおよびガラス粉末の混合粉末から成り、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末(第2の無機物粉末に対して異種材料となる)から成る第1のグリーンシート(以下、異種材料グリーンシートということがある)および第1の支持体が載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工し、さらに、第1および第2の支持体を除去し、第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシート(以下、単にグリーンシートということがある)の内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程を具備することから、従来のように、グリーンシート上に異種材料のペーストをスクリーン印刷等で塗布して局所的に異種材料グリーンシートを形成する必要がない。従って、異種材料のペーストのスクリーン印刷工程等で発生したペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができる。また、異種材料グリーンシートはグリーンシート内に埋設されているため、グリーンシート上に凸部が生じることがなく、積層不良の発生や異種材料層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0017】
また、第1の支持体上に形成された状態で異種材料グリーンシートが載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを塗工することから、このスラリー中の溶剤が異種材料グリーンシートの側面を部分的に溶解させることとなるため、両者の界面に異種材料である第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が形成されることとなる。その結果、異種材料グリーンシートとグリーンシート間の接着強度が十分に確保されて、かつ第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が両グリーンシートが一体的に焼結して形成される絶縁基体の収縮挙動の緩和層として働くものとなることから、異種材料層と第2の無機物粉末を含む、例えばセラミックスやガラスセラミックスから成る絶縁層との剥離やそれらの層におけるクラックの発生を抑制することができ、多層配線基板の各層間の位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した受動素子の機能の高精度化が可能となる。また、異種材料層および絶縁層を貫く配線導体等を形成した場合にも、その配線導体等に断線等の不具合が発生しない信頼性の高い多層配線基板を形成することができる。
【0018】
また、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうち少なくとも1種類から成るものとした場合には、内部に高い透磁率をもつフェライト層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。さらに、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るものとした場合には、内部に高い誘電率をもつ誘電体層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。また、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の多層配線基板の製造方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1(a)〜(i)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための断面図である。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、第1の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第1の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第1の支持体1a上に膜状に塗工して第1のグリーンシート2を形成する。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、第1のグリーンシート2を第1の支持体1aとともにプレス打ち抜きや押し切り等により所定の寸法に切断し、図1(c)に示すように、これを第1のグリーンシート2を下側にして第2の支持体1b上に載置する。ここで、第2の支持体1b上には微粘着性の粘着剤を塗布しておくことがよく、また第1のグリーンシート2を載置する際には、第1のグリーンシート2と第2の支持体1bとの界面にエアーの残留が無いように、真空プレス等の手法を用いるのがよい。
【0024】
次に、図1(d)に示すように、第2の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第2の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えてスラリーを得る。そして、ドクターブレード法やスロットコータ法等の手法により、第1のグリーンシート2および第1の支持体1aが載置された第2の支持体1b上にこのスラリーを乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシート2の厚みと同じになるように塗工し、第2のグリーンシートの内側に第1のグリーンシート2が一体的に埋設された第3のグリーンシート3を得る。
【0025】
次に、図1(e)に示すように、第2の無機物粉末およびその焼結助剤を所定量秤量して第2の無機物粉末の組成物を調製し、その組成物に有機バインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第3の支持体1c上に膜状に塗工して第2のグリーンシート4を準備する。
【0026】
ここで、第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤は、第1のグリーンシート2を適度に溶解させるべく、第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤の溶解度パラメータ(SP値)が第1のグリーンシート2の有機バインダのSP値に近い方(2程度までの差)がよい。例えば、第1のグリーンシート2の有機バインダにアクリル系バインダまたはブチラールバインダを用いたときは、第2のグリーンシート4の溶剤はαテルピネオールまたはトルエン等の溶剤を用いるとよい。第2のグリーンシート4のスラリーに用いる溶剤と第1のグリーンシート2のバインダのSP値が離れている場合は、第1のグリーンシート2と第2のグリーンシート4のスラリーとの濡れ性が悪くなり、両者の界面での剥離が発生しやすくなる。
【0027】
さらに、図1(f)に示すように、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4にレーザ加工またはマイクロドリルやパンチング等の機械的加工により貫通孔5を形成し、図1(g)に示すように、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体となるビアホール導体パターン6を形成する。
【0028】
この導体ペーストは、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤,バインダとともに混練することにより形成され、例えば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス粉末等の無機成分を添加して混合して調製される。
【0029】
導体ペーストの貫通孔5内への充填は、貫通孔5の配置に合わせて開口を形成したスクリーン製版を用いるスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0030】
次に、図1(h)に示すように、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4の表面に導体ペーストとして金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線回路パターン7を形成する。
【0031】
この配線回路パターン7を形成するメタライズペーストは、通常、上述のビアホール導体パターン6を形成するための導体ペーストと同様の金属材料(つまり、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末)および同様の調製方法を用いて得られる導体ペーストが使用される。
【0032】
メタライズペーストの印刷は、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を採用することができ、例えば、配線回路パターン7の製版を用いるスクリーン印刷によって、第3のグリーンシート3および第2のグリーンシート4の表面に所望の形状の所定パターンに形成することができる。
【0033】
次に、図1(i)に示すように、貫通孔5の形成や導体ペーストの印刷等の所定の加工を施した複数枚の第2のグリーンシート3および第2のグリーンシート4を積層し、積層体8を作製する
次に、この積層体8を例えば400℃〜850℃の温度で加熱処理して、第3のグリーンシート3,第2のグリーンシート4,ビアホール導体パターン6,および配線回路パターン7中の有機成分を分解除去した後、同時焼成することにより、第1の無機物粉末による異種材料層を内蔵した第2の無機物粉末による絶縁層を多層に積層して成る多層配線基板を作製することができる。
【0034】
このとき、第1の無機物粉末がフェライト粉末から成り、第2の無機物粉末がガラス粉末およびフィラー粉末から成る場合には、インダクタ素子を内蔵したガラスセラミック多層配線基板を作製することができる。特に、フェライト粉末がZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るものの場合は、多層配線基板内に形成されたフェライト層におけるフェライト結晶相は高い透磁率をもつため、多層配線基板の内部に形成されたインダクタ素子の小型化に寄与できるものとなる。
【0035】
また、第2の無機物粉末のガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
【0036】
また、第2の無機物粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物や、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等を用いることができる。
【0037】
第2の無機物粉末が上記のガラス粉末およびフィラー粉末であるときには、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができる。その結果、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0038】
また、第1の無機物粉末がチタン酸バリウム粉末とガラス粉末の混合粉末から成り、第2の無機物粉末がガラス粉末およびフィラー粉末から成る場合には、第1の無機物粉末から成るコンデンサ素子を内蔵したガラスセラミック多層配線基板を作製することができる。そして、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るため、内部に高い比誘電率をもつ誘電体層を持つ多層配線基板を作製することができ、かつガラス粉末が混合されている結果、第2の無機物粉末によるガラスセラミックスとの低温での同時焼成が可能となる。また、第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーであることから、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の多層配線基板の製造方法を具体例によって詳細に説明する。
【0040】
本実施例では、図2に断面図で示すような、内部に5mm角のフェライト層10を有する評価基板を作製し、このフェライト層10に挟まれた配線導体11における配線回路のオープンの有無とその寸法精度の検証を断面観察にて行なった。なお、図2において、9はガラスセラミックス等から成る絶縁層、10はフェライト層、11は配線導体、12はビア導体である。
【0041】
まず、ガラスとしてSiO2−Al2O3−MgO−B2O3−ZnO系ガラス粉末を75質量%と、セラミックスのフィラー成分としてAl2O3粉末を25質量%とを調合し、これに溶剤,有機バインダを加え十分混練してガラスセラミック・スラリーを作製し、これをドクターブレード法にてPETフィルムから成る第3の支持体上に塗工し、ガラスセラミック・グリーンシートを作製した。
【0042】
次に、フェライト・グリーンシートとして平均粒径0.5〜1μmのZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,NiFe2O4の結晶相から構成される透磁率が22で熱膨張係数が12×10-6/℃の仮焼済みのフェライト粉末に、ブチラール樹脂を10質量%と、高分子量のアルコールとを希釈剤として添加し、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ50μmのフェライト・グリーンシートをPETフィルムから成る第1の支持体上に成型した。
【0043】
次に、第1の支持体とともにこれを5mm各にカットし、微粘着性の粘着剤が塗布されたPETフィルムから成る第2の支持体の所定の位置に配置した後、スロットコータにて乾燥後の厚みが50μmとなるよう上記のガラスセラミック・スラリーを塗工した。このガラスセラミック・スラリーの乾燥後、フェライト・グリーンシートの上下面にある第1の支持体および第2の支持体を除去して、フェライト・グリーンシートを内蔵したガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料1)。
【0044】
また、比較例として、ガラスセラミック・グリーンシート上にフェライト層をスクリーン印刷にて形成したもの(試料2)、ガラスセラミック・グリーンシートにフェライト・グリーンシートを埋め込み形成したもの(試料3)を以下のようにして作製した。
【0045】
平均粒径0.5〜1μmのZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,NiFe2O4の結晶相から構成される透磁率が22で熱膨張係数が12×10-6/℃の仮焼済みのフェライト粉末に、エチルセルロース系樹脂とテルピネオールとを加えて適度な粘度となるように調整したフェライトペーストを、ガラスセラミック・グリーンシート上にスクリーン印刷にて乾燥後の厚みが50μmとなるよう3回に分けて印刷し、フェライト層を形成した。
【0046】
また、ガラスセラミック・グリーンシートにパンチングマシンにて5mm角の穴を打ち抜き、これを穴加工がなされていないガラスセラミック・グリーンシートに積層して、凹状の穴加工が施されたガラスセラミック積層体を得た。
【0047】
次に、5mm角に打ち抜いたフェライト・グリーンシートをこのガラスセラミック積層体の凹部に埋め込むことにより、凹部内にフェライト層を形成した。
【0048】
上記のようにして形成したフェライト層を内蔵したガラスセラミック積層体上に、Ag−Pd合金粉末(平均粒径1μm)にエチルセルロース系樹脂とテルピネオールとを加えて適度な粘度となるように調整した導体層用メタライズペーストをスクリーン印刷にて厚み10μmとなるように塗布して、配線導体11を形成した。
【0049】
また、ガラスセラミック・グリーンシートに所定の位置にパンチングマシンにて100μmの穴加工を行ない、上記の導体用メタライズペーストを充填して、ビア導体12を形成した。
【0050】
これを所定の順序で所定枚数(この例では4枚)重ね合わせ、真空プレスにて積層して、フェライト層を内蔵したガラスセラミック積層体を得た。
【0051】
そして、以上の試料を900℃,1時間で焼成することによって、フェライト層を内蔵した評価基板である試料1,試料2,試料3を作製した。
【0052】
このようにして作製した各評価基板の試料1,試料2,試料3について導通チェックを行なった。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果より分かるように、試料3においては、オープンが5/5(5個中で5個)発生していることが確認できた。そこで、これらの断面観察を実施した結果、フェライト層10と絶縁層9との界面でセパレーションが発生し、それにより配線導体11の断線が発生していることが確認された。
【0055】
また、試料2においては、断面観察の結果、絶縁基体のフェライト層10の上部で50μm以上の高さの凸部が発生しており、また絶縁層9とフェライト層10とに沿って配線導体11のうねりが生じているのが確認できた。また、オープンも2/5(5個中で2個)発生しているのが確認できた。
【0056】
これに対して、本発明の多層配線基板の製造方法の実施例である試料1では、オープンの発生や配線導体11のうねりもなく、寸法精度に優れた多層配線基板を得られることが確認できた。
【0057】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施の形態の例では配線導体にAg−Pd合金を用いたが、配線導体にはCu,Ag,Au等を用いてもよい。また、第1〜第3の支持体にはPETフィルムを用いたが、成型紙等のグリーンシート成形時に使用できる各種の支持体を用いてもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、第1のグリーンシートを第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、切断された第1のグリーンシートおよび第1の支持体を第1のグリーンシートを下側にして第2の支持体上に載置する工程と、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工する工程と、第1および第2の支持体を除去し、第2のグリーンシートの内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程と、第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートを準備するとともにこの第2のグリーンシートおよび第3のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、導体ペーストが塗布された第2および第3のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、このグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備することから、従来のように第1の無機物粉末(第2の無機物粉末に対して異種材料となる)を第2の無機物粉末から成るグリーンシート上にペーストによるスクリーン印刷等で局所的に異種材料グリーンシートを形成する必要がない。従って、異種材料のペーストのスクリーン印刷工程等で発生したペースト中の溶剤によるグリーンシートの変形を防止することができる。また、異種材料グリーンシートはグリーンシート内に埋設されているため、グリーンシート上に凸部が生じることがなく、積層不良の発生や異種材料層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0059】
また、第1の支持体上に形成された状態で異種材料グリーンシートが載置された第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを塗工することから、このスラリー中の溶剤が異種材料グリーンシートの側面を部分的に溶解させることとなるため、両者の界面に異種材料である第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が形成されることとなる。その結果、異種材料グリーンシートとグリーンシート間の接着強度が十分に確保されて、かつ第1の無機物粉末と第2の無機物粉末との混合領域が両グリーンシートが一体的に焼結して形成される絶縁基体の収縮挙動の緩和層として働くものとなることから、異種材料層と第2の無機粉末を含む、例えばセラミックスやガラスセラミックスから成る絶縁層との剥離やそれらの層におけるクラックの発生を抑制することができる。その結果、多層配線基板の各層間の位置精度を高精度に保つことができるため、多層配線基板の内部に形成した受動素子の機能の高精度化が可能となり、さらに異種材料層および絶縁層を貫く配線導体等を形成した場合にも、その配線導体等に断線等の不具合が発生しない信頼性の高い多層配線基板を形成することができる。
【0060】
また、本発明の多層配線基板の製造方法によれば、第1の無機物粉末がフェライトを含み、そのフェライトがZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るとともに、第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、内部に高い透磁率をもつフェライト層を持ち、かつ高精度に形成された配線導体をもつ多層配線基板を得ることができる。さらに、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0061】
さらに、本発明の多層配線基板の製造方法において、第1の無機物粉末がチタン酸バリウムとガラス粉末の混合体から成るものとした場合には、内部に高い誘電率をもつ誘電体層を持ち、かつ高精度に形成された配線パターンをもつ多層配線基板を得ることができる。また、これとともに第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成るものとした場合には、配線導体としてAg,Cu,Ag−Pd合金等の低抵抗の金属材料を用いることができるため、高周波領域においても電気信号に対する導体損失の少ない多層配線基板を形成することが可能となる。
【0062】
以上により、本発明によれば、多層配線基板に異種材料層を形成したときに発生する多層配線基板の変形を抑制し、多層配線基板の各層に形成した導体パターンや異種材料層の位置精度や絶縁層および異種材料層の厚みを所望の厚みに保ち、また異種材料層とセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線が無く、さらに、導体パターンまたはこれと異種材料層とにより絶縁基体中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができる多層配線基板の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(i)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための断面図である。
【図2】実施例で作製した試料である評価基板の断面図である。
【符号の説明】
1a・・・第1の支持体
1b・・・第2の支持体
1c・・・第3の支持体
2・・・・第1のグリーンシート
3・・・・第3のグリーンシート
4・・・・第2のグリーンシート
5・・・・貫通孔
6・・・・ビアホール導体パターン
7・・・・配線回路パターン
8・・・・積層体
9・・・・絶縁層
10・・・フェライト層
11・・・配線導体
12・・・ビア導体
Claims (3)
- 第1の無機物粉末を含む第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、
前記第1のグリーンシートを前記第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、
切断された前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体を前記第1のグリーンシートを下側にして第2の支持体上に載置する工程と、
前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体が載置された前記第2の支持体上に第2の無機物粉末を含有するスラリーを、前記第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工する工程と、
前記第1および第2の支持体を除去し、前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートの内側に前記第1のグリーンシートが一体的に埋設された第3のグリーンシートを得る工程と、
前記第2の無機物粉末を含む第2のグリーンシートを準備するとともに該第2のグリーンシートおよび前記第3のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、
前記導体ペーストが塗布された前記第2および第3のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、
該グリーンシート積層体を焼成する工程と
を具備することを特徴とする多層配線基板の製造方法。 - 前記第1の無機物粉末がフェライトを含み、該フェライトがZnFe2O4,MnFe2O4,FeFe2O4,CoFe2O4,NiFe2O4,BaFe12O4,SrFe12O4およびCuFe2O4のうちの少なくとも1種から成るとともに、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板の製造方法。
- 前記第1の無機物粉末がチタン酸バリウムおよびガラス粉末の混合粉末から成り、前記第2の無機物粉末がガラス粉末およびセラミックフィラーから成ることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板の製造方法。
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