JP2004207105A - 加熱調理器 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の熱源部の各々に載せた鍋のいずれが沸騰した場合でも、振動センサには同じように振動が伝わるため、沸騰した鍋を特定することができなかった。
【解決手段】調理物を入れた容器8を複数載置可能なトッププレート2と、容器8内の調理物を加熱する複数の加熱手段3,4,5と、トッププレート2上に載置した容器8内で発生する気泡による振動或いは圧力を検出する検出手段6,7と、検出手段6,7で振動或いは圧力を検出した場合に、各加熱手段3,4,5の出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させる振動発生源検知手段9とを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IH(Induction Heating)方式の誘導加熱コイルやラジエントヒータなどを熱源に有する加熱調理器に関し、特に、複数の熱源を同時に使用した場合でも、各熱源に基づく鍋の沸騰状況を正確に検出することができる加熱調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の加熱調理器においては、鍋を載置するための天板或いは筐体に振動センサが取り付けられ、鍋内の水が沸騰する際の振動をこの振動センサで検出することによって、加熱調理の沸騰状態を正確に検知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−233988号公報(第3頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の加熱調理器では、複数の熱源部の各々に載せた鍋のいずれが沸騰した場合でも、振動センサには同じように振動が伝わるため、沸騰した鍋を特定することができなかった。
【0005】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、複数の熱源部の各々に載せた鍋のいずれかが沸騰した場合に、どの鍋が沸騰したかを容易に特定できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の加熱調理器は、調理物を入れた容器を複数載置可能なトッププレートと、該トッププレートを介して各容器に各々対向して設けられ、容器内の調理物を加熱する複数の加熱手段とを備える加熱調理器において、トッププレート上に載置した容器内で発生する気泡による振動或いは圧力を検出する検出手段と、検出手段で振動或いは圧力を検出した場合に、各加熱手段の出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させる振動発生源検知手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る加熱調理器の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線における縦断面図である。図1,2に示すように、実施の形態1に係る加熱調理器は、略直方体の筐体1と、筐体1の上面に設けられ、結晶化ガラス等の耐熱絶縁材料で構成された平面状のトッププレート2とを備えている。
トッププレート2の下方には、渦巻き状に巻回された3個の加熱コイル(加熱手段)3,4,5がトッププレート2の裏面に近接して配置されている。加熱コイル3と加熱コイル4とはトッププレート2の前方に左右方向に並べて配置され、加熱コイル5は加熱コイル3の斜め後方に配置されている。各加熱コイルの火力の大きさは、加熱コイル3≧加熱コイル4≧加熱コイル5の順である。
【0008】
トッププレート2の後方裏面および筐体1の後側面には、トッププレート2上に載置した鍋8内で発生する気泡による振動を検知する振動センサ(検出手段)6,7がそれぞれ取り付けられている。また、各加熱コイル3,4,5の下方には、鍋8内で発生する気泡による振動を振動センサ6,7で検出した場合に、各加熱コイル3,4,5に供給する高周波交番電流の電流量を順次低下させて、振動発生源の鍋(容器)8を特定させる制御回路(振動発生源検知手段)9が配置されている。
【0009】
加熱コイル3,4,5とトッププレート2との間には、鍋8の底面温度を測定する温度センサ10が設けられている。また、筐体1の前面には、操作パネル11が設けられている。図3に示すように、操作パネル11には、各鍋8毎に設けられ、加熱開始/加熱停止を制御する加熱スイッチ11aと、各鍋8毎に設けられ、調理物の温度設定を行う温度設定スイッチ11bと、各鍋8毎に設けられ、沸騰検知モード(沸騰検知の対象とするモード)を設定する沸騰検知スイッチ11cと、鍋8が沸騰状態のときに点滅するLED(警告報知手段)11dと、鍋8が沸騰状態であることを警報音で警告するスピーカ(警告報知手段)11eとを備えている。
【0010】
なお、鍋8は、一般には鉄等の金属材料で構成され、加熱コイル3,4,5への通電に伴ってコイル周辺に形成される交番磁界中に鍋8が配置された状態となり、内部を流れる渦電流の作用により鍋8全体が熱源部となり加熱される。ここで、図1の鍋8は、底面全体がフラットであるが、図4に示す鍋12は、底面が凹状の反り鍋である。本実施の形態の加熱調理器は、一対の振動センサ6,7を用いることにより、底面全体がフラットな鍋と同様に、反り鍋に対しても、鍋内の調理物の沸騰検知を正確に行うことができる。
【0011】
次に、図5のフローチャートを用いて、制御回路9で実行される沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細について説明する。まず、調理物の入った複数の鍋8がトッププレート2の各加熱位置(加熱コイル3,4,5の上部)に載置された状態で、操作パネル11に配置された所望の沸騰検知スイッチを利用者が投入すると、沸騰検知スイッチに対応した鍋8に対して沸騰検知モードが設定される(ステップ100)。次に、操作パネル11に配置された加熱スイッチのいずれかを利用者が投入すると、この加熱スイッチに対応する鍋8の調理がスタートする(ステップ101)。加熱スイッチの投入によって制御回路9が動作を開始し、設定火力に合わせた電流量の高周波交番電流が、投入状態の加熱スイッチに対応する加熱コイル3,4,5に流れる(ステップ102)。加熱コイル3,4,5は内部を流れる渦電流の作用により、鍋8全体が熱源部となり、鍋8内の調理物が加熱される。
【0012】
制御回路9は、全ての加熱コイル3,4,5に対して通電状態か否かを検出すると共に(ステップ103)、全ての加熱コイル3,4,5に対して沸騰検知モードか否かを検出する(ステップ104)。この沸騰検知モードの検出処理を、図6,7のフローチャートに示す。まず、制御回路9は、加熱コイル3の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104A)。ステップ104Aで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル4の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104B)。ステップ104Bで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル5の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104C)。ステップ104Cで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル3,4,5が共に沸騰検知モードであると判定する(ステップ104D)。また、ステップ104Cで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル3,4のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104E)。
【0013】
一方、ステップ104Bで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル5の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104F)。ステップ104Fで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル3,5のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104G)。また、ステップ104Fで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル3のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104H)。
【0014】
ステップ104Aで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル4の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104I)。ステップ104Iで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル5の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104J)。ステップ104Jで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル4,5のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104K)。また、ステップ104Jで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル4のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104L)。
【0015】
ステップ104Iで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル5の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ104M)。ステップ104Mで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル5のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ104N)。また、ステップ104Mで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル3,4,5のいずれも沸騰検知モードでないと判定する(ステップ104O)。以上のステップ104の処理によって、沸騰検知モードの加熱コイル3,4,5を検出することができる。
【0016】
その後、調理が進行して、いずれかの鍋8の調理物が沸騰した場合、鍋8の内部で発生した気泡が鍋8の底面から剥離および破裂し、これによる振動を振動センサ6,7で検出する(ステップ105)。振動センサ6,7からの沸騰信号は制御回路9に入力される。制御回路9では沸騰信号がΔt時間(所定時間)続いた場合(ステップ106)、ステップ103,104の検出結果に基づいて沸騰箇所検出処理を実行し、沸騰した鍋8がいずれの加熱コイル3,4,5上に載置された鍋8かを検出する(ステップ107)。
【0017】
次に、ステップ107で行う沸騰箇所検出処理について詳細に説明する。
【0018】
(沸騰検知モードが3ヶ所の場合)
ステップ103,104の検出結果より3ヶ所全ての加熱コイル3,4,5が通電状態で且つ沸騰検知モードの場合、図8のフローチャートに示す処理を実行する。この処理は、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を1/2以下とし、Δt時間後に沸騰信号のレベルが小さくなれば、その箇所が沸騰状態であると検知する。また、沸騰信号のレベルが小さくならなければ、その加熱コイルの出力を元に戻し、別の加熱コイルの出力を1/2以下とし、同様に検知する。このように加熱コイルの出力を順番に調整することにより、沸騰箇所を確実に検知することができる。
【0019】
具体的には、加熱コイル3,4,5の中で、最も火力が大きいのは加熱コイル3なので、まず、制御回路9は加熱コイル3の出力を1/2以下に低下させる(ステップ110)。加熱コイル3の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ111)、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ112)。
【0020】
ステップ111で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル3の出力を元に戻し、加熱コイル3の次に火力の大きい加熱コイル4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ113)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ114)、制御回路9は加熱コイル4で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル4の出力を1/2以下に保持する(ステップ115)。
【0021】
ステップ114で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力を元に戻し、最も火力の小さい加熱コイル5の出力を1/2以下に低下させる(ステップ116)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ117)、制御回路9は加熱コイル5で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル5の出力を1/2以下に保持する(ステップ118)。
【0022】
ステップ117で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル5の出力を元に戻し(ステップ119)、ステップ110〜ステップ119の処理を3回まで繰り返す(ステップ120)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル3,4,5の出力を切断する(ステップ121)。
なお、ステップ110,113,116では、加熱コイル3,4,5の出力を1/2以下にしているが、加熱コイル3,4,5の出力を切断してもよい。
【0023】
(沸騰検知モードが2ヶ所の場合)
次に、ステップ104の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが2ヶ所の場合、図9,10のフローチャートに示す処理を実行する。なお、以下の説明では、沸騰検知モードの加熱コイルを仮に加熱コイル3,4とするが、これらの加熱コイルに限定されることはなく、加熱コイル3,5又は加熱コイル4,5であってもよい。
【0024】
図9,10のフローチャートによれば、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル5が通電状態か否かを調べて(ステップ130)、加熱コイル5が通電状態の場合には、沸騰検知モードの加熱コイル3,4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ131)。この状態でΔt時間経過しても、沸騰信号のレベルが小さくならない場合には(ステップ132)、沸騰検知モード以外の加熱コイル5によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は沸騰検知モードの加熱コイル3,4の出力を元に戻す(ステップ133)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ131に処理を戻し(ステップ134)、ステップ131〜134の処理を繰り返す。
【0025】
ステップ130で加熱コイル5が通電状態でない場合およびステップ132で沸騰信号のレベルが小さくなった場合には、制御回路9は、火力の大きい順番に加熱コイル3,4の出力を1/2以下とする。即ち、加熱コイル4よりも加熱コイル3の方が火力が大きいので、制御回路9は加熱コイル3の出力を1/2以下に低下させて(ステップ135)する。加熱コイル3の出力低下によって振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ136)、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ137)。
【0026】
ステップ136で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル3の出力を元に戻し、加熱コイル4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ138)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ139)、制御回路9は加熱コイル4で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル4の出力を1/2以下に保持する(ステップ140)。
【0027】
ステップ139で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力を元に戻し(ステップ141)、ステップ135〜ステップ141の処理を3回まで繰り返す(ステップ142)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル3,4,5の出力を切断する(ステップ143)。
なお、ステップ131,135,138では、加熱コイル3,4の出力を1/2以下にしているが、加熱コイル3,4の出力を切断してもよい。
【0028】
(沸騰検知モードが1ヶ所の場合)
次に、ステップ104の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが1ヶ所の場合、図11のフローチャートに示す処理を実行する。なお、以下の説明では、沸騰検知モードの加熱コイルを仮に加熱コイル3とするが、この加熱コイルに限定されることはなく、加熱コイル4又は加熱コイル5であってもよい。
【0029】
図11のフローチャートによれば、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル4,5が通電状態か否かを調べて(ステップ150)、加熱コイル4,5の少なくとも一方が通電状態の場合には、沸騰検知モードの加熱コイル3の出力を1/2以下に低下させる(ステップ151)。この状態でΔt時間経過しても、沸騰信号のレベルが小さくならない場合には(ステップ152)、沸騰検知モード以外の加熱コイル4,5によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は沸騰検知モードの加熱コイル3の出力を元に戻す(ステップ153)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ151に処理を戻し(ステップ154)、ステップ151〜154の処理を繰り返す。
【0030】
ステップ150で加熱コイル4,5がいずれも通電状態でない場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ155)。同様に、ステップ152で沸騰信号のレベルが小さくなった場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ156)。
なお、ステップ104の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが0ヶ所の場合、沸騰箇所検知アルゴリズムは動作しない。
【0031】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル3,4,5によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0032】
また、ステップ107の沸騰箇所検出処理では、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を低下させて沸騰箇所の特定を行っている。火力の異なる複数の加熱コイルで鍋8内の調理物を沸騰させた場合、加熱コイルの火力が大きいほど、沸騰してから短時間で吹きこぼれが発生する。従って、吹きこぼれが発生し易い順番である火力の大きい順番に沸騰箇所の判定を行い、沸騰箇所の加熱コイルの出力を低下させることにより、判定の順番待ちの間に吹きこぼれが発生するといった事態を未然に防止することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態では、沸騰検知スイッチを投入・切断することによって、沸騰後に出力を低下させる加熱コイルと、沸騰後も同一出力を維持する加熱コイルとを設定することが可能となる。このため、湯沸しには沸騰検知スイッチを投入し、煮込み調理には沸騰検知スイッチを切断するといった調理毎の切り替えが行え、幅広い調理に対応することができる。
【0034】
また、沸騰状態を検知した場合に、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者は鍋8が沸騰したことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の調理を遅滞なく実施することができる。同様に、処理異常を検知した場合にも、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者8は沸騰検知が正常に行えていないことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の対応を的確に行うことができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る加熱調理器を説明する。実施の形態2の加熱調理器は、実施の形態1の加熱調理器と比べて沸騰箇所検知アルゴリズムの一部が相違する。即ち、実施の形態2の加熱調理器は、図8の処理の代わりに、図12,13のフローチャートに示す処理を行っている。この処理以外の構成については、実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
図12,13のフローチャートに示す処理は、火力の小さい2ヶ所の加熱コイルの出力を1/2以下とし、Δt時間後に沸騰信号のレベルが小さくなれば、その2ヶ所のうちどちらか一方の加熱コイルの出力を元に戻す。そして。沸騰信号のレベルが変わらなければ、出力を戻した加熱コイルによる調理物が沸騰状態であると検知する。2ヶ所の加熱コイルの出力を下げた状態でも、沸騰信号のレベルが変化しなければ、それらの加熱コイルの出力を元に戻し、別の加熱コイルの出力を1/2以下とし、同様に検知する。このように加熱コイルの出力を順番に調整することにより、沸騰箇所を確実に検知することができる。
【0037】
具体的には、加熱コイル3,4,5の中で、火力が小さいのは加熱コイル4,5であるので、まず、制御回路9は加熱コイル4,5の出力を1/2以下に低下させる(ステップ160)。加熱コイル4,5の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ161)、制御回路9は加熱コイル5の出力を復帰させる(ステップ162)。加熱コイル5の出力復帰(加熱コイル4のみが出力低下)によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ163)、制御回路9は加熱コイル4で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。
そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル4の出力を1/2以下に保持する(ステップ164)。
【0038】
ステップ163で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力を元に戻し、加熱コイル5の出力を1/2以下に低下させる(ステップ165)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ166)、制御回路9は加熱コイル5で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル5の出力を1/2以下に保持する(ステップ167)。
【0039】
ステップ166で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル5の出力を元に戻し(ステップ168)、ステップ160〜ステップ168の処理を3回まで繰り返す(ステップ169)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル3,4,5の出力を切断する(ステップ170)。
【0040】
また、ステップ161で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4,5の出力を元に戻し、加熱コイル3の出力を1/2以下に低下させる(ステップ171)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ172)、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ173)。
【0041】
ステップ172で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル3の出力を元に戻し(ステップ174)、ステップ160〜ステップ174の処理を3回まで繰り返す(ステップ175)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル3,4,5の出力を切断する(ステップ170)。
【0042】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル3,4,5によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0043】
また、本実施の形態では、複数の加熱コイルの火力を同時に低下させて沸騰箇所の検出を行っているので、加熱コイルの個数が多い場合での沸騰箇所検出処理において処理時間短縮が実現される。即ち、たとえば加熱コイルが8ヶ所ある場合には、加熱コイルを4個ずつ2グループに分けて、一方のグループの加熱コイルを同時に低下させることにより、沸騰箇所の加熱コイルが含まれたグループを特定できる。次にこのグループを更に2グループに分けて、一方のグループの加熱コイルを同時に低下させることにより、沸騰箇所の加熱コイルが含まれたグループを特定できる。特定したグループ内には2つの加熱コイルがあるので、このうち一方の加熱コイルを低下させることにより、沸騰箇所の加熱コイルを検出することができる。
以上のように、僅か3回の検出処理によって、8個の加熱コイルの中から沸騰箇所の加熱コイルの検出を行うことができ、一箇所ずつ加熱コイルの火力を低下させる場合に比べて処理時間の短縮が実現される。
【0044】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る加熱調理器を説明する。実施の形態3の加熱調理器は、実施の形態1の加熱調理器に比べて沸騰箇所検知アルゴリズムの一部が相違する。即ち、実施の形態3の加熱調理器は、図9の処理の代わりに、図14のフローチャートに示す処理を行っている。この処理以外の構成については、実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
図9の処理では沸騰検知モードの加熱コイル3,4の出力を低下させていたが、実施の形態3における図14の処理は、沸騰検知モード以外の加熱コイル5の出力を低下させている。具体的には、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル5が通電状態か否かを調べて(ステップ180)、加熱コイル5が通電状態の場合には、加熱コイル5の出力を1/2以下に低下させる(ステップ181)。
【0046】
この状態でΔt時間経過して後、沸騰信号のレベルが小さくなった場合には(ステップ182)、加熱コイル5によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は加熱コイル5の出力を元に戻す(ステップ183)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ181に処理を戻し(ステップ184)、ステップ181〜184の処理を繰り返す。そして、ステップ180で加熱コイル5が通電状態でない場合およびステップ182で沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、前述した図10の処理を実行する。
【0047】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル3,4,5によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0048】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る加熱調理器を説明する。実施の形態4の加熱調理器は、実施の形態1の加熱調理器に比べて沸騰箇所検知アルゴリズムの一部が相違する。即ち、実施の形態4の加熱調理器は、図11の処理の代わりに、図15のフローチャートに示す処理を行っている。この処理以外の構成については、実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
図11の処理では沸騰検知モードの加熱コイル3の出力を低下させていたが、実施の形態4における図15の処理は、沸騰検知モード以外の加熱コイル4,5の出力を低下させている。具体的には、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル4,5が通電状態か否かを調べて(ステップ190)、加熱コイル4,5の少なくとも一方が通電状態の場合には、加熱コイル4,5の出力を1/2以下に低下させる(ステップ191)。この状態でΔt時間経過した後に、沸騰信号のレベルが小さくなった場合には(ステップ192)、加熱コイル4,5によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は加熱コイル4,5の出力を元に戻す(ステップ193)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ191に処理を戻し(ステップ194)、ステップ191〜194の処理を繰り返す。
【0050】
ステップ190で加熱コイル4,5がいずれも通電状態でない場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ195)。同様に、ステップ192で沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ196)。
【0051】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル3,4,5によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0052】
実施の形態5.
次に、実施の形態5に係る加熱調理器を説明する。図16は、実施の形態5に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。図17は、図16のIII−III線における縦断面図である。この実施の形態5が図1に示す実施の形態1と異なるのは、加熱コイルの個数が少ない点である。その他の構成については実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0053】
図16,17に示すように、実施の形態5に係る加熱調理器は、略直方体の筐体1と、筐体1の上面に設けられ、結晶化ガラス等の耐熱絶縁材料で構成された平面状のトッププレート2とを備えている。トッププレート2の下方には、渦巻き状に巻回された一対の加熱コイル20,21がトッププレート2の裏面に近接して配置されている。加熱コイル20と加熱コイル21とはトッププレート2の前方に左右方向に並べて配置されている。各加熱コイルの火力の大きさは、加熱コイル20≧加熱コイル21の順である。
【0054】
トッププレート2の後方裏面および筐体1の後側面には、トッププレート2上に載置した鍋8内で発生する気泡による振動を検知する振動センサ6,7がそれぞれ取り付けられている。また、各加熱コイル20,21の下方には、鍋8内で発生する気泡による振動を振動センサ6,7で検出した場合に、各加熱コイル20,21に供給する高周波交番電流の電流量を順次低下させて、振動発生源の鍋8を特定させる制御回路9が配置されている。
【0055】
加熱コイル20,21とトッププレート2との間には、鍋8の底面温度を測定する温度センサ10が設けられている。また、筐体1の前面には、各鍋8毎に設けられ、加熱開始/加熱停止を制御する加熱スイッチと、各鍋8毎に設けられ、調理物の温度設定を行う温度設定スイッチと、各鍋8毎に設けられ、沸騰検知モード(沸騰検知の対象とするモード)を設定する沸騰検知スイッチとを配置した操作パネル11が設けられている。
【0056】
なお、鍋8は、一般には鉄等の金属材料で構成され、加熱コイル20,21への通電に伴ってコイル周辺に形成される交番磁界中に鍋8が配置された状態となり、内部を流れる渦電流の作用により鍋8全体が熱源部となり加熱される。
【0057】
次に、図18のフローチャートを用いて、制御回路9で実行される沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細について説明する。まず、調理物の入った複数の鍋8がトッププレート2の各加熱位置(加熱コイル20,21の上部)に載置された状態で、操作パネル11に配置された所望の沸騰検知スイッチを利用者が投入すると、沸騰検知スイッチに対応した鍋8に対して沸騰検知モードが設定される(ステップ200)。次に、操作パネル11に配置された加熱スイッチのいずれかを利用者が投入すると、この加熱スイッチに対応する鍋8の調理がスタートする(ステップ201)。加熱スイッチの投入によって制御回路9が動作を開始し、設定火力に合わせた電流量の高周波交番電流が、投入状態の加熱スイッチに対応する加熱コイル20,21に流れる(ステップ202)。加熱コイル20,21は内部を流れる渦電流の作用により、鍋8全体が熱源部となり、鍋8内の調理物が加熱される。
【0058】
制御回路9は、全ての加熱コイル20,21に対して通電状態か否かを検出すると共に(ステップ203)、全ての加熱コイル20,21に対して沸騰検知モードか否かを検出する(ステップ204)。この沸騰検知モードの検出処理を、図19のフローチャートに示す。まず、制御回路9は、加熱コイル20の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ204A)。ステップ204Aで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル21の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ204B)。ステップ204Bで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル20,21が共に沸騰検知モードであると判定する(ステップ204C)。また、ステップ204Bで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル21のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ204D)。
【0059】
一方、ステップ204Aで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル21の沸騰検知スイッチが投入状態か否かを検出する(ステップ204E)。ステップ204Eで沸騰検知スイッチが投入状態の場合には、加熱コイル20,21共に沸騰検知モードであると判定する(ステップ204F)。また、ステップ204Eで沸騰検知スイッチが投入状態でない場合には、加熱コイル20のみが沸騰検知モードであると判定する(ステップ204G)。以上のステップ204の処理によって、沸騰検知モードの加熱コイル20,21を検出することができる。
【0060】
その後、調理が進行して、いずれかの鍋8の調理物が沸騰した場合、鍋8の内部で発生した気泡が鍋8の底面から剥離および破裂し、これによる振動を振動センサ6,7で検出する(ステップ205)。振動センサ6,7からの沸騰信号は制御回路9に入力される。制御回路9では沸騰信号がΔt時間(所定時間)続いた場合(ステップ206)、ステップ203,204の検出結果に基づいて沸騰箇所検出処理を実行し、沸騰した鍋8がいずれの加熱コイル20,21上に載置された鍋8かを検出する(ステップ207)。
【0061】
次に、ステップ207で行う沸騰箇所検出処理について詳細に説明する。
【0062】
(沸騰検知モードが2ヶ所の場合)
ステップ203,204の検出結果より2ヶ所全ての加熱コイル20,21が通電状態で且つ沸騰検知モードの場合、図20のフローチャートに示す処理を実行する。この処理は、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を1/2以下とし、Δt時間後に沸騰信号のレベルが小さくなれば、その箇所が沸騰状態であると検知し、そうでなければ、その加熱コイルの出力を元に戻し、別の加熱コイルの出力を1/2以下とし、同様に検知する。このように順に加熱コイルの出力を調整することを繰り返すことで、沸騰箇所を検知することが可能となる。
【0063】
具体的には、制御回路9は、加熱コイル20,21のうち、火力の大きい加熱コイル20の出力を1/2以下に低下させる(ステップ210)。加熱コイル20の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ211)、制御回路9は加熱コイル20で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル20の出力を1/2以下に保持する(ステップ212)。
【0064】
ステップ211で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル20の出力を元に戻し、火力の小さい加熱コイル21の出力を1/2以下に低下させる(ステップ213)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ214)、制御回路9は加熱コイル21で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル21の出力を1/2以下に保持する(ステップ215)。
【0065】
ステップ215で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル21の出力を元に戻し(ステップ216)、ステップ210〜ステップ216の処理を3回まで繰り返す(ステップ217)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル20,21の出力を切断する(ステップ218)。
なお、ステップ210,213では、加熱コイル20,21の出力を1/2以下にしているが、加熱コイル20,21の出力を切断してもよい。
【0066】
(沸騰検知モードが1ヶ所の場合)
次に、ステップ204の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが1ヶ所の場合、図21のフローチャートに示す処理を実行する。なお、以下の説明では、沸騰検知モードの加熱コイルを仮に加熱コイル20とするが、この加熱コイルに限定されることはなく、加熱コイル21であってもよい。
【0067】
図21のフローチャートによれば、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル21が通電状態か否かを調べて(ステップ220)、加熱コイル21が通電状態の場合には、沸騰検知モードの加熱コイル20の出力を1/2以下に低下させる(ステップ221)。この状態でΔt時間経過しても、沸騰信号のレベルが小さくならない場合には(ステップ222)、沸騰検知モード以外の加熱コイル21によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は沸騰検知モードの加熱コイル20の出力を元に戻す(ステップ223)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ221に処理を戻し(ステップ224)、ステップ221〜224の処理を繰り返す。
【0068】
ステップ220で加熱コイル21が通電状態でない場合には、制御回路9は加熱コイル20で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル20の出力を1/2以下に保持する(ステップ225)。同様に、ステップ222で沸騰信号のレベルが小さくなった場合には、制御回路9は加熱コイル20で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル20の出力を1/2以下に保持する(ステップ226)。
なお、ステップ204の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが0ヶ所の場合、沸騰箇所検知アルゴリズムは動作しない。
【0069】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル20,21によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル20,21の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0070】
また、ステップ207の沸騰箇所検出処理では、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を低下させて沸騰箇所の特定を行っている。火力の異なる複数の加熱コイルで鍋8内の調理物を沸騰させた場合、加熱コイルの火力が大きいほど、沸騰してから短時間で吹きこぼれが発生する。従って、吹きこぼれが発生し易い順番である火力の大きい順番に沸騰箇所の判定を行い、沸騰箇所の加熱コイルの出力を低下させることにより、判定の順番待ちの間に吹きこぼれが発生するといった事態を未然に防止することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、沸騰検知スイッチを投入・切断することによって、沸騰後に出力を低下させる加熱コイルと、沸騰後も同一出力を維持する加熱コイルとを設定することが可能となる。このため、湯沸しには沸騰検知スイッチを投入し、煮込み調理には沸騰検知スイッチを切断するといった調理毎の切り替えが行え、幅広い調理に対応することができる。
【0072】
また、沸騰状態を検知した場合に、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者は鍋8が沸騰したことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の調理を遅滞なく実施することができる。同様に、処理異常を検知した場合にも、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者8は沸騰検知が正常に行えていないことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の対応を的確に行うことができる。
【0073】
実施の形態6.
次に、実施の形態6に係る加熱調理器を説明する。実施の形態6の加熱調理器は、実施の形態5の加熱調理器に比べて沸騰箇所検知アルゴリズムの一部が相違する。即ち、実施の形態6の加熱調理器は、図21の処理の代わりに、図22のフローチャートに示す処理を行っている。この処理以外の構成については、実施の形態5と同一又は同等である。なお、実施の形態5と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0074】
図21の処理では沸騰検知モードの加熱コイル20の出力を低下させていたが、実施の形態6における図22の処理は、沸騰検知モード以外の加熱コイル21の出力を低下させている。具体的には、まず、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル21が通電状態か否かを調べて(ステップ230)、加熱コイル21が通電状態の場合には、加熱コイル21の出力を1/2以下に低下させる(ステップ231)。この状態でΔt時間経過した後に、沸騰信号のレベルが小さくなった場合には(ステップ232)、加熱コイル21によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は加熱コイル21の出力を元に戻す(ステップ233)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ231に処理を戻し(ステップ234)、ステップ231〜234の処理を繰り返す。
【0075】
ステップ230で加熱コイル21が通電状態でない場合には、制御回路9は加熱コイル20で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル20の出力を1/2以下に保持する(ステップ235)。同様に、ステップ232で沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、制御回路9は加熱コイル20で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。
そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル20の出力を1/2以下に保持する(ステップ236)。
【0076】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル20,21によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル20,21の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0077】
実施の形態7.
次に、実施の形態7に係る加熱調理器を説明する。実施の形態7の加熱調理器が実施の形態1の加熱調理器と異なるのは、操作パネル11に沸騰検知スイッチが1つしか設けられていない点である。その他の構成については、実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0078】
実施の形態7に係る加熱調理器は、単一の沸騰検知スイッチで3ヶ所全ての加熱コイル3,4,5に対し一括して沸騰検知モードの設定を行うことができる。
以下、実施の形態7に係る加熱調理器の沸騰箇所検知アルゴリズムを図23のフローチャートに基づいて説明する。まず、調理物の入った複数の鍋8がトッププレート2の各加熱位置(加熱コイル3,4,5の上部)に載置された状態で、操作パネル11に配置された沸騰検知スイッチを利用者が操作することにより、全ての鍋8に対し一括して沸騰検知モードの設定または設定解除が行われる(ステップ240)。即ち、沸騰検知スイッチを利用者が投入にすれば全ての鍋8に対し一括して沸騰検知モードが設定され、沸騰検知スイッチを利用者が切断にすれば全ての鍋8に対し一括して沸騰検知モードの設定が解除される。
【0079】
次に、操作パネル11に配置された加熱スイッチのいずれかを利用者が投入すると、この加熱スイッチに対応する鍋8の調理がスタートする(ステップ241)。加熱スイッチの投入によって制御回路9が動作を開始し、設定火力に合わせた電流量の高周波交番電流が、投入状態の加熱スイッチに対応する加熱コイル3,4,5に流れる(ステップ242)。加熱コイル3,4,5は内部を流れる渦電流の作用により、鍋8全体が熱源部となり、鍋8内の調理物が加熱される。
【0080】
制御回路9は、全ての加熱コイル3,4,5に対して通電状態か否かを検出すると共に(ステップ243)、沸騰検知スイッチが投入されているか否かを検出する(ステップ244)。その後、調理が進行して、いずれかの鍋8の調理物が沸騰した場合、鍋8の内部で発生した気泡が鍋8の底面から剥離および破裂し、これによる振動を振動センサ6,7で検出する(ステップ245)。振動センサ6,7からの沸騰信号は制御回路9に入力される。制御回路9では沸騰信号がΔt時間(所定時間)続いた場合(ステップ246)、ステップ243,244の検出結果に基づいて沸騰箇所検出処理を実行し、沸騰した鍋8がいずれの加熱コイル3,4,5上に載置された鍋8かを検出する(ステップ247)。
【0081】
次に、ステップ247で行う沸騰箇所検出処理について詳細に説明する。
【0082】
ステップ243,244の検出結果より、沸騰検知モードが設定され、且つ3ヶ所全ての加熱コイル3,4,5が通電状態の場合、図8に示したステップ110〜121の処理を実行する。また、ステップ243,244の検出結果より、沸騰検知モードが設定され、且つ加熱コイル3,4,5のいずれか2ヶ所が通電状態の場合、図24のフローチャートに示す処理を実行する。さらに、ステップ243,244の検出結果より、沸騰検知モードが設定され、且つ加熱コイル3,4,5のいずれか1ヶ所が通電状態の場合、通電状態の加熱コイルが沸騰箇所であると検知し、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、この加熱コイルの出力を1/2以下に保持する。
なお、沸騰検知モードの設定が解除されている場合は、ステップ247の沸騰箇所検出処理は行わない。
【0083】
次に、図24のフローチャートの処理を説明する。この処理は、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を1/2以下とし、Δt時間後に沸騰信号のレベルが小さくなれば、その箇所が沸騰状態であると検知し、そうでなければ、その加熱コイルの出力を元に戻し、別の加熱コイルの出力を1/2以下とし、同様に検知する。このように加熱コイルの出力を順番に調整することにより、沸騰箇所を確実に検知することができる。
【0084】
具体的には、制御回路9は、加熱コイル3,4のうち、火力の大きい加熱コイル3の出力を1/2以下に低下させる(ステップ250)。加熱コイル3の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ251)、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ252)。
【0085】
ステップ251で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル3の出力を元に戻し、火力の小さい加熱コイル4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ253)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ254)、制御回路9は加熱コイル4で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル4の出力を1/2以下に保持する(ステップ255)。
【0086】
ステップ255で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力を元に戻し(ステップ256)、ステップ250〜ステップ256の処理を3回まで繰り返す(ステップ257)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3,4の出力を切断する(ステップ258)。
【0087】
なお、ステップ250,253では、加熱コイル3,4の出力を1/2以下にしているが、加熱コイル3,4の出力を切断してもよい。また、通電状態の加熱コイルを仮に加熱コイル3,4としたが、これらの加熱コイルに限定されることはなく、加熱コイル3,5或いは加熱コイル 4,5であってもよい。
さらに、沸騰検知スイッチを用いずに、全ての加熱コイル3,4,5に対して沸騰箇所検知を行ってもよい。この場合には、本実施の形態で説明した沸騰検知スイッチの投入状態における各処理が実施される。
【0088】
以上のように、本実施の形態であれば、複数の加熱コイル3,4,5によって複数の鍋8が加熱されている場合であっても、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0089】
また、ステップ247の沸騰箇所検出処理では、火力の大きい順番に各加熱コイルの出力を低下させて沸騰箇所の特定を行っている。火力の異なる複数の加熱コイルで鍋8内の調理物を沸騰させた場合、加熱コイルの火力が大きいほど、沸騰してから短時間で吹きこぼれが発生する。従って、吹きこぼれが発生し易い順番である火力の大きい順番に沸騰箇所の判定を行い、沸騰箇所の加熱コイルの出力を低下させることにより、判定の順番待ちの間に吹きこぼれが発生するといった事態を未然に防止することができる。
【0090】
さらに、本実施の形態では、沸騰検知スイッチを投入・切断することによって、沸騰後に出力を低下させるか、沸騰後も同一出力を維持するかを選択することが可能となる。このため、湯沸しには沸騰検知スイッチを投入し、煮込み調理には沸騰検知スイッチを切断するといった調理毎の切り替えが行え、幅広い調理に対応することができる。
【0091】
また、沸騰状態を検知した場合に、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者は鍋8が沸騰したことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の調理を遅滞なく実施することができる。同様に、処理異常を検知した場合にも、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告しているので、利用者8は沸騰検知が正常に行えていないことを視覚或いは聴覚で確実に把握することができ、その後の対応を的確に行うことができる。
【0092】
実施の形態8.
次に、実施の形態8に係る加熱調理器を説明する。図25は、実施の形態8に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。この実施の形態8が図1に示す実施の形態1と異なるのは、加熱コイル5の代わりにラジエントヒータ22を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一又は同等である。なお、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
IH方式の加熱コイル(誘導加熱ヒータ)3,4の上に載せた鍋8の調理物が沸騰して振動センサ6,7から沸騰信号が出力された場合、加熱コイル3,4への出力を切断すれば、瞬時に沸騰信号の出力が停止する。これに対して、ラジエントヒータ22の上に載せた鍋8の調理物が沸騰して振動センサ6,7から沸騰信号を出力した場合、ラジエントヒータ22の出力を停止しても、暫くの間、鍋8の調理物は沸騰を続け、振動センサ6,7からの沸騰信号も出力され続ける。
【0094】
従って、IH方式の加熱コイル3,4とラジエントヒータ22とが混在した加熱調理器では、実施の形態1の沸騰箇所検知アルゴリズムとは異なるアルゴリズムが必要になる。以下、本実施の形態における沸騰箇所検知アルゴリズムを、図26に基づいて詳細に説明する。
【0095】
まず、調理物の入った複数の鍋8がトッププレート2の各加熱位置(加熱コイル3,4、ラジエントヒータ22の上部)に載置された状態で、操作パネル11に配置された所望の沸騰検知スイッチを利用者が投入すると、沸騰検知スイッチに対応した鍋8に対して沸騰検知モードが設定される(ステップ260)。次に、操作パネル11に配置された加熱スイッチのいずれかを利用者が投入すると、この加熱スイッチに対応する鍋8の調理がスタートする(ステップ261)。加熱スイッチの投入によって制御回路9が動作を開始し、加熱コイル3,4或いはラジエントヒータ22に流れる(ステップ262)。
【0096】
制御回路9は、全ての加熱コイル3,4に対して通電状態か否かを検出すると共に(ステップ263)、全ての加熱コイル3,4に対して沸騰検知モードか否かを検出する(ステップ264)。その後、調理が進行して、いずれかの鍋8の調理物が沸騰した場合、鍋8の内部で発生した気泡が鍋8の底面から剥離および破裂し、これによる振動を振動センサ6,7で検出する(ステップ265)。振動センサ6,7からの沸騰信号は制御回路9に入力される。制御回路9では沸騰信号がΔt時間(所定時間)続いた場合(ステップ266)、ステップ263,264の検出結果に基づいて沸騰箇所検出処理を実行し、沸騰した鍋8が加熱コイル3,4、ラジエントヒータ22のいずれの上に載置された鍋8かを検出する(ステップ267)。
【0097】
次に、ステップ267で行う沸騰箇所検出処理について詳細に説明する。
【0098】
(沸騰検知モードが2ヶ所の場合)
ステップ263,264の検出結果より2ヶ所全ての加熱コイル3,4が通電状態で且つ沸騰検知モードの場合、図27のフローチャートに示す処理を実行する。まず、制御回路9は、加熱コイル3,4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ270)。加熱コイル3の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくならなければ(ステップ271)、制御回路9はラジエントヒータ22で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3,4の出力を元に戻し、且つラジエントヒータ22の出力を1/2以下に低下させる(ステップ272)。
【0099】
ステップ271で、沸騰信号のレベルが小さくなった場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力のみを元に戻し、火力の大きい加熱コイル3の出力を1/2以下の状態で維持させる(ステップ273)。加熱コイル3の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ274)、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ275)。
【0100】
ステップ274で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル3の出力を元に戻し、火力の小さい加熱コイル4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ276)。そして、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくなれば(ステップ277)、制御回路9は加熱コイル4で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル4の出力を1/2以下に保持する(ステップ278)。
【0101】
ステップ277で、沸騰信号のレベルが小さくならない場合は、制御回路9は、加熱コイル4の出力を元に戻し(ステップ279)、ステップ270〜ステップ279の処理を3回まで繰り返す(ステップ280)。そして、3回繰り返しても沸騰信号のレベルが小さくならない場合には、異常検知の旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、全加熱コイル3,4およびラジエントヒータ22の出力を切断する(ステップ281)。
なお、ステップ270,273,276では、加熱コイル3,4の出力を1/2以下にしているが、加熱コイル3,4の出力を切断してもよい。
【0102】
(沸騰検知モードが1ヶ所の場合)
次に、ステップ264の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが1ヶ所の場合、図28のフローチャートに示す処理を実行する。なお、以下の説明では、沸騰検知モードの加熱コイルを仮に加熱コイル3とするが、この加熱コイルに限定されることはなく、加熱コイル4であってもよい。
【0103】
図28のフローチャートによれば、まず、制御回路9は、加熱コイル3,4の出力を1/2以下に低下させる(ステップ290)。加熱コイル3の出力低下によって、振動センサ6,7からの沸騰信号のレベルがΔt時間後に小さくならなければ(ステップ291)、制御回路9はラジエントヒータ22で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、制御回路9はその旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3,4の出力を元に戻し、且つラジエントヒータ22の出力を1/2以下に低下させる(ステップ292)。
【0104】
ステップ291で、沸騰信号のレベルが小さくなった場合は、制御回路9は沸騰検知モード以外の加熱コイル4が通電状態か否かを調べて(ステップ293)、加熱コイル4が通電状態の場合には、加熱コイル4の出力を元に戻すと共に、沸騰検知モードの加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ294)。この状態でΔt時間経過しても、沸騰信号のレベルが小さくならない場合には(ステップ295)、沸騰検知モード以外の加熱コイル4によって調理物が沸騰しているものと判断し、制御回路9は沸騰検知モードの加熱コイル3の出力を元に戻す(ステップ296)。そして、Δt1時間(第2の所定時間)経過後にステップ294に処理を戻し(ステップ297)、ステップ294〜297の処理を繰り返す。
【0105】
ステップ293で加熱コイル4が通電状態でない場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ298)。同様に、ステップ295で沸騰信号のレベルが小さくなった場合には、制御回路9は加熱コイル3で加熱している鍋8の調理物が沸騰状態であると検知する。そして、その旨をLED11dに点滅表示或いはスピーカ11eから警報音で警告すると共に、加熱コイル3の出力を1/2以下に保持する(ステップ299)。
なお、ステップ264の検出結果より沸騰検知モードの加熱コイルが0ヶ所の場合、沸騰箇所検知アルゴリズムは動作しない。
【0106】
以上のように、本実施の形態であれば、IH方式の加熱コイル3,4とラジエントヒータ22とが混在している場合でも、加熱コイル3,4の出力を低下させて、ラジエントヒータ22のみを駆動させた状態で、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、ラジエントヒータ22上の鍋8が現在沸騰しているかを確実に検知することができる。
【0107】
そして、ラジエントヒータ22上の鍋8が沸騰してない場合には、各加熱コイル3,4の出力を順次低下させながら、振動センサ6,7から出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋8がいずれの各加熱コイル3,4上のものか正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋8への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋8の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【0108】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)各実施の形態では、振動センサ6,7を用いて、振動レベルで沸騰を検出する構成を説明したが、振動センサ6,7の代わりに、圧力センサや音センサ(マイクロフォン)、歪センサを用いてもよく、これらのセンサの組合せでもよい。圧力センサはトッププレート2の裏面又は筐体1に配設され、鍋8内で発生する気泡による圧力を、トッププレート2を介して検出することができる。また、音センサはトッププレート2の上面又は筐体1内に配設され、鍋8内で発生する気泡による振動を、音波として検出することができる。さらに、歪センサはトッププレート2の裏面又は筐体1に配設され、鍋8内で発生する気泡による圧力を、トッププレート2の歪として検出することができる。
【0109】
これらのセンサを用いることにより、調理物の沸騰状態を検知できるもののいずれの鍋8の調理物かは判断できない。従って、上述した沸騰箇所検知アルゴリズムによる検出処理を行うことにより、沸騰箇所を確実に特定することができる。また、これらのセンサを組み合わせて使用することにより、沸騰箇所の検出精度が向上する。
【0110】
(2)各実施の形態において、各加熱コイル3,4,5毎に設けられた温度センサ10を補助的に用いて、振動センサ6,7と温度センサ10とで各鍋8の沸騰状態を検知してもよい。具体的には、振動センサ6,7で振動或いは圧力を検出した場合に、各温度センサ10の温度上昇変化率に基づいて、振動発生源の候補となる鍋8を制御回路9が抽出し、抽出した鍋8に対応した各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させて、振動発生源の鍋8を特定させる。このような構成とすることにより、温度センサ10で選択された振動発生源の候補だけに対して、各加熱コイル3,4,5の出力を順次低下させる処理を行うこととなり、振動発生源の検知をより短時間で完了させることができる。また、複数種類のセンサを用いることにより、検出精度が向上する。
【0111】
(3)各実施の形態では、加熱コイルの出力調整を火力の大きい熱源部から検知しているが、火力の小さい熱源部から検知しても良い。また、電源を入れた順に検知しても良く、起動毎にランダムに行ってもよい。
【0112】
(4)各実施の形態において、加熱調理器本体やその一部もしくは振動センサの形状を、沸騰振動が励起し易い構成としてもよい。
【0113】
(5)各実施の形態において、沸騰検知モードでない加熱コイルに対しても、沸騰検知モードの加熱コイルと同様な沸騰箇所検知を行い、沸騰状態を視覚表示したり、報知音で知らせる手段を取ってもよい。
【0114】
(6)各実施の形態において、沸騰検知後に出力を一定状態に保ったり、切断したり、沸騰状態を視覚表示したり、報知音で知らせる手段をとってもよい。
【0115】
(7)実施の形態1における図9のステップ134の処理、図11のステップ154の処理、実施の形態3における図14のステップ184の処理、実施の形態4における図15のステップ194の処理、実施の形態5における図21のステップ224の処理、実施の形態6における図22のステップ234の処理、実施の形態8における図28のステップ297の処理は、いずれもΔt時間経過後に処理を戻しているが、振動センサ6,7から得られる沸騰信号のレベル変化をモニタして、沸騰信号が大きくなった時点で、沸騰検知モードの加熱コイル3,4と沸騰検知モード以外の加熱コイル5とが同時に調理物を沸騰させていると判断してもよい。
【0116】
(8)実施の形態1〜7では、IH調理器を例として説明したが、ラジエントヒータ或いはハロゲンヒータを熱源部とした加熱調理器、ガスコンロ等にも適用できることは言うまでもない。
【0117】
(9)実施の形態8において、ラジエントヒータ22の代わりに、ハロゲンヒータを用いてもよい。
【0118】
(10)各実施の形態では、一対の振動センサ6,7を用いて鍋内の調理物の沸騰検知を行っているが、振動センサ6と振動センサ7のいずれか一方のみを用いてもよく、3個以上の振動センサを用いてもよい。
【0119】
(11)実施の形態1における図8のステップ120、図10のステップ142、実施の形態2における図12のステップ169、図13のステップ175、実施の形態5における図20のステップ217、実施の形態7における図24のステップ257、実施の形態8における図27のステップ280では、いずれも処理を3回繰り返しているが、繰り返し回数は3回に限定されることなく、1回或いは3回以外の複数回であってもよい。
【0120】
【発明の効果】
本発明に係る加熱調理器は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
即ち、複数の加熱コイルによって複数の鍋が加熱されている場合であっても、各加熱コイルの出力を順次低下させながら、振動センサから出力される沸騰信号を検出することにより、現在沸騰している鍋を正確に特定することができる。そして、沸騰している鍋への火力を低下させたり、沸騰している旨を表示或いは報知音で警告することによって、沸騰状態の持続を抑制することができ、消費電力の節約や、鍋の吹きこぼれ・空焚き状態防止が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線における縦断面図であり、加熱コイル上にフラット鍋を載置した状態を示す図である。
【図3】操作パネルの構成を示す正面図である。
【図4】図1のII−II線における縦断面図であり、加熱コイル上に反り鍋を載置した状態を示す図である。
【図5】実施の形態1における沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1における沸騰検知モードの検出処理を示すフローチャート(前半)である。
【図7】実施の形態1における沸騰検知モードの検出処理を示すフローチャート(後半)である。
【図8】沸騰検知モードが3ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図9】沸騰検知モードが2ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャート(前半)である。
【図10】沸騰検知モードが2ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャート(後半)である。
【図11】沸騰検知モードが1ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2の加熱調理器における沸騰箇所検出処理を示すフローチャート(前半)である。
【図13】実施の形態2の加熱調理器における沸騰箇所検出処理を示すフローチャート(後半)である。
【図14】実施の形態3の加熱調理器における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態4の加熱調理器における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態5に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。
【図17】図16のIII−III線における縦断面図である。
【図18】実施の形態5における沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態5における沸騰検知モードの検出処理を示すフローチャートである。
【図20】沸騰検知モードが2ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図21】沸騰検知モードが1ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図22】実施の形態6における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図23】実施の形態7における沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細を示すフローチャートである。
【図24】実施の形態7における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図25】実施の形態8に係る加熱調理器の構成を示す平面図である。
【図26】実施の形態8における沸騰箇所検知アルゴリズムの詳細を示すフローチャートである。
【図27】沸騰検知モードが2ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【図28】沸騰検知モードが1ヶ所の場合における沸騰箇所検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…筐体、2…トッププレート、3,4,5,20,21…加熱コイル(加熱手段)、6,7…振動センサ(検出手段)、8,12…鍋(容器)、9…制御回路(振動発生源検知手段)、10…温度センサ、11…操作パネル、11a…加熱スイッチ、11b…温度設定スイッチ、11c…沸騰検知スイッチ、11d…LED(警告報知手段)、11e…スピーカ(警告報知手段)、22…ラジエントヒータ(加熱手段)。

Claims (13)

  1. 調理物を入れた容器を複数載置可能なトッププレートと、該トッププレートを介して前記各容器に各々対向して設けられ、前記容器内の調理物を加熱する複数の加熱手段とを備える加熱調理器において、
    前記トッププレート上に載置した容器内で発生する気泡による振動或いは圧力を検出する検出手段と、
    前記検出手段で振動或いは圧力を検出した場合に、前記各加熱手段の出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させる振動発生源検知手段とを備えることを特徴とする加熱調理器。
  2. 前記振動発生源検知手段は、前記各加熱手段の出力を順次1/2以下に低下させることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
  3. 前記振動発生源検知手段は、前記各加熱手段の出力を順次切断させることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
  4. 前記検出手段は、振動センサ、圧力センサ、音センサ、歪センサのいずれか一つのセンサ、或いは複数のセンサの組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
  5. 各容器の温度を各々測定する複数の温度センサを更に備え、前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動或いは圧力を検出した場合に、各温度センサの温度上昇変化率に基づいて、振動発生源の候補となる容器を抽出し、抽出した容器に対応した前記各加熱手段の出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
  6. 前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動を検出した場合に、前記各加熱手段を火力が大きい順に選択し、選択した前記加熱手段の出力を低下させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の加熱調理器。
  7. 前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動を検出した場合に、前記各加熱手段を複数選択し、選択した前記加熱手段の出力を同時に低下させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の加熱調理器。
  8. 前記各加熱手段ごとに設けられ、沸騰検知対象の容器を指定する沸騰検知スイッチを更に備え、
    前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動を検出した場合に、前記沸騰検知スイッチが押下された前記加熱手段の出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載の加熱調理器。
  9. 前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動を検出した場合に、前記沸騰検知スイッチが押下されていない前記加熱手段の出力を一旦低下させることを特徴とする請求項8記載の加熱調理器。
  10. 前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動を検出した場合に、前記沸騰検知スイッチが押下されていない前記加熱手段の出力を定期的に低下させることを特徴とする請求項8記載の加熱調理器。
  11. 前記検出手段で振動発生源の容器を特定した場合に、沸騰状態である旨を報知する警告報知手段を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項記載の加熱調理器。
  12. 前記警告報知手段は、前記検出手段で振動発生源の容器を特定できなかった場合に、処理異常である旨を報知することを特徴とする請求項11記載の加熱調理器。
  13. 複数の加熱手段は、誘導加熱ヒータと、ラジエントヒータとの組合せであり、
    前記振動発生源検知手段は、前記検出手段で振動或いは圧力を検出した場合に、前記ラジエントヒータ、前記誘導加熱ヒータの順番で出力を順次低下させて、振動発生源の容器を特定させることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項記載の加熱調理器。
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