JP2004204272A - 鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 - Google Patents
鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004204272A JP2004204272A JP2002373420A JP2002373420A JP2004204272A JP 2004204272 A JP2004204272 A JP 2004204272A JP 2002373420 A JP2002373420 A JP 2002373420A JP 2002373420 A JP2002373420 A JP 2002373420A JP 2004204272 A JP2004204272 A JP 2004204272A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- primary rust
- rust prevention
- resin
- polyvinyl butyral
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、環境負荷の小さい鋼材用一次防錆処理剤及びこれを用いた鋼材の一次防錆処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】バナジン酸塩、リン酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、リン酸およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂を含有することを特徴とする鋼材用一次防錆処理剤及びこれを用いた処理方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】バナジン酸塩、リン酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、リン酸およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂を含有することを特徴とする鋼材用一次防錆処理剤及びこれを用いた処理方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆として用いられる鋼材用の一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材を用いて橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆や鋼材に対する塗装系の付着性を増加させる目的として、JIS K 5633(2002)に記述されているように、エッチングプライマーが広く使用されている。一般的なエッチングプライマーは、防食性、各種上塗りとの適合性および溶接溶断性等の性能が求められ、特にポリビニルブチラール樹脂が多く用いられ、素地の鋼材と反応するためのリン酸、又はリン酸とクロム酸塩顔料を含んでいる。
【0003】
一方、近年の環境に対する配慮の高まりから、塗料中の顔料の環境負荷低減化が進められており、多くの使用実績があるエッチングプライマーにおいても、環境負荷低減化が求められている。ポリビニルブチラール樹脂にリン酸およびクロム酸塩系顔料が含まれるエッチングプライマーにおける機能発現は、ポリビニルブチラール樹脂とリン酸およびクロム酸イオンとの錯体形成による密着力作用とクロム酸イオンによる防錆作用によると言われている。そのため、環境負荷の大きなクロム酸塩を取り除くことによって、密着性と防錆性が発揮されず、エッチングプライマーとしての性能を満足できなくなり、クロム酸塩系顔料を含まない一次防錆処理剤は実用化されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、環境負荷の小さい鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的達成に向けて鋭意研究した結果、環境負荷の高いクロム酸塩系顔料を含まず、クロム酸塩に替わる機能を他の成分で置き換えることに成功し、従来と同等以上の作用を示す本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は、
(1)バナジン酸塩、リン酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂を含有することを特徴とする鋼材用一次防錆処理剤、
【0006】
(2)前記バナジン酸塩がアルカリ土類金属であることを特徴とする(1)に記載の鋼材用一次防錆処理剤、
(3)さらに、アルカリ土類金属のメタシリケート、アルカリ土類金属の亜リン酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸のいずれか1種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の鋼材用一次防錆処理剤、
(4)鋼材の表面に、前記(1)〜(3)に記載の鋼材用一次防錆処理剤を塗布し、乾燥することを特徴とする鋼材の一次防錆処理方法、である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の鋼材用一次防錆処理剤は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂に、バナジン酸塩が含まれる。ポリビニルブチラール樹脂は、有機溶剤に溶けやすく、物理的強度が大きく、耐候性に優れるなど塗料材料として優れているが、吸水率が比較的高いために、そのまま鋼材の一次防錆処理剤として用いるには耐水密着性の改善が必要である。
【0008】
バナジン酸塩は、ポリビニルブチラール樹脂の耐水密着性を改善するために添加される。その作用の一つは、バナジン酸塩がポリビニルブチラール樹脂中の親水基を酸化し、親水性を低下させることによって、耐水密着性が改善されるものと考えられる。バナジン酸塩としては、特に、アルカリ土類金属を対イオンとするバナジン酸塩が好ましく、アルカリ土類金属以外のバナジン酸塩は水への溶解性が高いので、耐水密着性を損なわないように添加量を低くする必要がある。また、アルカリ土類金属のバナジン酸塩は、樹脂皮膜中にとどまり、ゆっくりと溶解して防錆にも作用する点で好ましい。
【0009】
バナジン酸塩としては、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸ストロンチウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸アンモニウム等が挙げられる。バナジン酸塩の添加量としては、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して1〜200質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合には、バナジン酸塩の効果が小さく、耐水性の改善が見られない。一方、200質量%を超える場合には、実用性がある均一で安定な樹脂皮膜とならない。
【0010】
さらに、耐水密着性を向上させるために、リン酸エステルを添加するのが有効である。リン酸エステルは、ポリビニルブチラール樹脂と相溶する種類のものであればよく、ヘキシルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシルホスフェート)、イソデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルホスフェート、リン酸変性エポキシ樹脂樹脂、等が挙げられる。
【0011】
リン酸エステルの添加量は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して2〜50質量%の範囲が好ましい。2質量%未満の場合には効果が得られず、50質量%を超える場合にはむしろ耐水密着性が低下するためである。その機構は、推定ではあるがリン酸エステル中のリン酸基が鋼材表面の鉄原子と錯体形成し、しかも有機あるいは高分子に結合したリン酸基であるが故に、密着性と耐水性が向上すると考えられる。
【0012】
ポリビニルブチラール樹脂と相溶するする樹脂としては、メラミン、フェノール等の樹脂が用いられ、添加量をコントロールすることで水分の透過のコントロールが可能である。添加される量は、おおよそポリビニルブチラール樹脂の質量%に対して1〜10質量%が好ましい。1質量%未満では改質の効果がないし、逆に10質量%を超えると、多価陰イオンを吸着して、Fe2+等の多価陽イオンを透過し難くなるイオン透過性処理膜となりにくくなることと、バナジン酸あるいはリン酸等との錯体形成効果が損なわれる。
【0013】
さらに、アルカリ土類金属のメタシリケート、アルカリ土類金属の亜リン酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸のいずれかを1種以上添加すると、耐水密着性および防食性を向上させるために好ましい。アルカリ土類金属のメタシリケートは、ビニルシラン等で処理されていることが好ましく、樹脂および処理される鋼材との密着性が良好となる。ワラストナイト(珪灰石)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。また、亜リン酸塩は、還元剤として防錆に作用し、その溶解性の観点からアルカリ土類金属の亜リン酸塩が好ましく、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0014】
リン酸またはリンモリブデン酸アルミは、縮合リン酸イオン、オルトリン酸イオン、モリブデン酸イオンを生成し、鋼材表面で鉄イオンと錯体形成して防錆に作用するとともに、ポリビニルブチラール樹脂皮膜に吸着して多価イオンの透過を抑制する。これらが添加される添加量の合計は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して1〜50質量%の範囲が好ましい。1質量%未満では耐水密着性および防食性の効果は見られず、50質量%を超える場合には樹脂皮膜の形成が困難となるか、樹脂皮膜の物理的強度が実用性がないほどに低下する恐れがある。
本発明の鋼材用一次防錆処理剤には、体質顔料として、タルク、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムが添加できる。また、着色顔料を添加してもかまわない。さらに、必要に応じて、レベリング剤、酸化防止剤、分散剤を添加することにより、処理剤の貯蔵安定性や作業性を向上させ得る。
【0015】
本発明の鋼材の一次防錆処理方法においては、鋼材表面のスケール等を電動工具やサンドブラスト、ショットブラスト等で除去して、表面を調整した後に、塗布し、乾燥して皮膜を形成する。表面調整のレベルは、動力工具でSt2以上、ブラスト処理ではSIS Sa2以上が好ましい。処理剤の塗布方法は、通常塗料と同様に、刷け塗り、エアスプレー、エアレススプレー等が可能であり、成膜時の厚みが5〜100μmとなるように、常温もしくは200℃までの加熱によって乾燥し、成膜される。成膜時の厚みが5μm未満では、均一に鋼材表面を覆うことが困難であり、100μmを超える場合には、防錆の観点で飽和となり経済的でない。
【0016】
本発明の鋼材用一次防錆処理剤を塗布し乾燥して成膜した後は、上塗り塗料として、油性系塗料、フタル酸樹脂塗料、塩化ゴム系塗料、エポキシ系塗料、タールエポキシ樹脂、シリコンアルキド系塗料、アクリル系塗料、ポリウレタン系塗料等を塗布することができる。
本発明の鋼材の一次防錆処理方法は、鋼板段階で処理してもよく、鋼板を製品形状・寸法に切断・加工・組立した段階で処理してもよく、或は、製品を最終設置場所に設置した後に処理してもよく、施工段階はコスト、施工性等を考慮して選択できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
鋼材(JIS SM490)試験片(150mm×75mm×5mm)をブラスト処理し、表1に示す処理剤を、乾燥膜厚で15μmに塗布した。リン酸変性エポキシ樹脂樹脂としては、ハーフエステルで酸価が62、OH価が130のものを用いた。顔料として、酸化鉄系顔料を樹脂固形分質量に対しての50質量%を添加した。樹脂としては、ポリビニルブチラールにフェノール樹脂を質量比10:1で添加したものを用いた。
【0018】
評価方法は、複合サイクル試験200サイクル(試験条件(1サイクル):30℃、5%NaCl水溶液噴霧0.5時間 → 30℃、95%RH、1.5時間 → 50℃、20%RH、2時間 → 30℃、20%RH、2時間)、塩水浸漬試験(3%NaCl水、240時間)、君津市の田園地帯における暴露試験12ヶ月後の錆発生状況を評価した。
評価基準は、複合サイクル試験および浸漬試験に対しては、◎:膨れなし、○:ごく一部の膨れ、△:小さな膨れ有り、×:膨れ有り、の順番で評価した。暴露試験後の外観評価については、○:錆発生無し、△:錆面積10%未満、×:錆面積10%以上とした。
【0019】
結果を表1に示すように、本発明に関わる一次防錆処理剤は、従来技術(比較例)と同等以上であるのがわかる。すなわち、ポリビニルブチラール樹脂にバナジン酸塩、リン酸エステルの組み合わせが好適であり、アルカリ土類金属ケイ酸塩、亜リン酸塩、リン酸、リンモリブデン酸亜鉛の添加により、防錆性にも優れるのがわかる。特に、リン酸エステルとしてはリン酸変性エポキシ樹脂樹脂を用いた場合が最も良好である。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
以上のべたように、本発明は、橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆において、環境負荷の小さい一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法を提供でき、きわめて工業価値の高い効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆として用いられる鋼材用の一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材を用いて橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆や鋼材に対する塗装系の付着性を増加させる目的として、JIS K 5633(2002)に記述されているように、エッチングプライマーが広く使用されている。一般的なエッチングプライマーは、防食性、各種上塗りとの適合性および溶接溶断性等の性能が求められ、特にポリビニルブチラール樹脂が多く用いられ、素地の鋼材と反応するためのリン酸、又はリン酸とクロム酸塩顔料を含んでいる。
【0003】
一方、近年の環境に対する配慮の高まりから、塗料中の顔料の環境負荷低減化が進められており、多くの使用実績があるエッチングプライマーにおいても、環境負荷低減化が求められている。ポリビニルブチラール樹脂にリン酸およびクロム酸塩系顔料が含まれるエッチングプライマーにおける機能発現は、ポリビニルブチラール樹脂とリン酸およびクロム酸イオンとの錯体形成による密着力作用とクロム酸イオンによる防錆作用によると言われている。そのため、環境負荷の大きなクロム酸塩を取り除くことによって、密着性と防錆性が発揮されず、エッチングプライマーとしての性能を満足できなくなり、クロム酸塩系顔料を含まない一次防錆処理剤は実用化されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、環境負荷の小さい鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的達成に向けて鋭意研究した結果、環境負荷の高いクロム酸塩系顔料を含まず、クロム酸塩に替わる機能を他の成分で置き換えることに成功し、従来と同等以上の作用を示す本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は、
(1)バナジン酸塩、リン酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂を含有することを特徴とする鋼材用一次防錆処理剤、
【0006】
(2)前記バナジン酸塩がアルカリ土類金属であることを特徴とする(1)に記載の鋼材用一次防錆処理剤、
(3)さらに、アルカリ土類金属のメタシリケート、アルカリ土類金属の亜リン酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸のいずれか1種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の鋼材用一次防錆処理剤、
(4)鋼材の表面に、前記(1)〜(3)に記載の鋼材用一次防錆処理剤を塗布し、乾燥することを特徴とする鋼材の一次防錆処理方法、である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の鋼材用一次防錆処理剤は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂に、バナジン酸塩が含まれる。ポリビニルブチラール樹脂は、有機溶剤に溶けやすく、物理的強度が大きく、耐候性に優れるなど塗料材料として優れているが、吸水率が比較的高いために、そのまま鋼材の一次防錆処理剤として用いるには耐水密着性の改善が必要である。
【0008】
バナジン酸塩は、ポリビニルブチラール樹脂の耐水密着性を改善するために添加される。その作用の一つは、バナジン酸塩がポリビニルブチラール樹脂中の親水基を酸化し、親水性を低下させることによって、耐水密着性が改善されるものと考えられる。バナジン酸塩としては、特に、アルカリ土類金属を対イオンとするバナジン酸塩が好ましく、アルカリ土類金属以外のバナジン酸塩は水への溶解性が高いので、耐水密着性を損なわないように添加量を低くする必要がある。また、アルカリ土類金属のバナジン酸塩は、樹脂皮膜中にとどまり、ゆっくりと溶解して防錆にも作用する点で好ましい。
【0009】
バナジン酸塩としては、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸ストロンチウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸アンモニウム等が挙げられる。バナジン酸塩の添加量としては、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して1〜200質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合には、バナジン酸塩の効果が小さく、耐水性の改善が見られない。一方、200質量%を超える場合には、実用性がある均一で安定な樹脂皮膜とならない。
【0010】
さらに、耐水密着性を向上させるために、リン酸エステルを添加するのが有効である。リン酸エステルは、ポリビニルブチラール樹脂と相溶する種類のものであればよく、ヘキシルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシルホスフェート)、イソデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルホスフェート、リン酸変性エポキシ樹脂樹脂、等が挙げられる。
【0011】
リン酸エステルの添加量は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して2〜50質量%の範囲が好ましい。2質量%未満の場合には効果が得られず、50質量%を超える場合にはむしろ耐水密着性が低下するためである。その機構は、推定ではあるがリン酸エステル中のリン酸基が鋼材表面の鉄原子と錯体形成し、しかも有機あるいは高分子に結合したリン酸基であるが故に、密着性と耐水性が向上すると考えられる。
【0012】
ポリビニルブチラール樹脂と相溶するする樹脂としては、メラミン、フェノール等の樹脂が用いられ、添加量をコントロールすることで水分の透過のコントロールが可能である。添加される量は、おおよそポリビニルブチラール樹脂の質量%に対して1〜10質量%が好ましい。1質量%未満では改質の効果がないし、逆に10質量%を超えると、多価陰イオンを吸着して、Fe2+等の多価陽イオンを透過し難くなるイオン透過性処理膜となりにくくなることと、バナジン酸あるいはリン酸等との錯体形成効果が損なわれる。
【0013】
さらに、アルカリ土類金属のメタシリケート、アルカリ土類金属の亜リン酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸のいずれかを1種以上添加すると、耐水密着性および防食性を向上させるために好ましい。アルカリ土類金属のメタシリケートは、ビニルシラン等で処理されていることが好ましく、樹脂および処理される鋼材との密着性が良好となる。ワラストナイト(珪灰石)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。また、亜リン酸塩は、還元剤として防錆に作用し、その溶解性の観点からアルカリ土類金属の亜リン酸塩が好ましく、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0014】
リン酸またはリンモリブデン酸アルミは、縮合リン酸イオン、オルトリン酸イオン、モリブデン酸イオンを生成し、鋼材表面で鉄イオンと錯体形成して防錆に作用するとともに、ポリビニルブチラール樹脂皮膜に吸着して多価イオンの透過を抑制する。これらが添加される添加量の合計は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂固形分質量に対して1〜50質量%の範囲が好ましい。1質量%未満では耐水密着性および防食性の効果は見られず、50質量%を超える場合には樹脂皮膜の形成が困難となるか、樹脂皮膜の物理的強度が実用性がないほどに低下する恐れがある。
本発明の鋼材用一次防錆処理剤には、体質顔料として、タルク、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムが添加できる。また、着色顔料を添加してもかまわない。さらに、必要に応じて、レベリング剤、酸化防止剤、分散剤を添加することにより、処理剤の貯蔵安定性や作業性を向上させ得る。
【0015】
本発明の鋼材の一次防錆処理方法においては、鋼材表面のスケール等を電動工具やサンドブラスト、ショットブラスト等で除去して、表面を調整した後に、塗布し、乾燥して皮膜を形成する。表面調整のレベルは、動力工具でSt2以上、ブラスト処理ではSIS Sa2以上が好ましい。処理剤の塗布方法は、通常塗料と同様に、刷け塗り、エアスプレー、エアレススプレー等が可能であり、成膜時の厚みが5〜100μmとなるように、常温もしくは200℃までの加熱によって乾燥し、成膜される。成膜時の厚みが5μm未満では、均一に鋼材表面を覆うことが困難であり、100μmを超える場合には、防錆の観点で飽和となり経済的でない。
【0016】
本発明の鋼材用一次防錆処理剤を塗布し乾燥して成膜した後は、上塗り塗料として、油性系塗料、フタル酸樹脂塗料、塩化ゴム系塗料、エポキシ系塗料、タールエポキシ樹脂、シリコンアルキド系塗料、アクリル系塗料、ポリウレタン系塗料等を塗布することができる。
本発明の鋼材の一次防錆処理方法は、鋼板段階で処理してもよく、鋼板を製品形状・寸法に切断・加工・組立した段階で処理してもよく、或は、製品を最終設置場所に設置した後に処理してもよく、施工段階はコスト、施工性等を考慮して選択できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
鋼材(JIS SM490)試験片(150mm×75mm×5mm)をブラスト処理し、表1に示す処理剤を、乾燥膜厚で15μmに塗布した。リン酸変性エポキシ樹脂樹脂としては、ハーフエステルで酸価が62、OH価が130のものを用いた。顔料として、酸化鉄系顔料を樹脂固形分質量に対しての50質量%を添加した。樹脂としては、ポリビニルブチラールにフェノール樹脂を質量比10:1で添加したものを用いた。
【0018】
評価方法は、複合サイクル試験200サイクル(試験条件(1サイクル):30℃、5%NaCl水溶液噴霧0.5時間 → 30℃、95%RH、1.5時間 → 50℃、20%RH、2時間 → 30℃、20%RH、2時間)、塩水浸漬試験(3%NaCl水、240時間)、君津市の田園地帯における暴露試験12ヶ月後の錆発生状況を評価した。
評価基準は、複合サイクル試験および浸漬試験に対しては、◎:膨れなし、○:ごく一部の膨れ、△:小さな膨れ有り、×:膨れ有り、の順番で評価した。暴露試験後の外観評価については、○:錆発生無し、△:錆面積10%未満、×:錆面積10%以上とした。
【0019】
結果を表1に示すように、本発明に関わる一次防錆処理剤は、従来技術(比較例)と同等以上であるのがわかる。すなわち、ポリビニルブチラール樹脂にバナジン酸塩、リン酸エステルの組み合わせが好適であり、アルカリ土類金属ケイ酸塩、亜リン酸塩、リン酸、リンモリブデン酸亜鉛の添加により、防錆性にも優れるのがわかる。特に、リン酸エステルとしてはリン酸変性エポキシ樹脂樹脂を用いた場合が最も良好である。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
以上のべたように、本発明は、橋梁、船舶、タンク・プラントの鋼構造物の加工・組み立て期間中の一次防錆において、環境負荷の小さい一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法を提供でき、きわめて工業価値の高い効果を有する。
Claims (4)
- バナジン酸塩、リン酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂を含有することを特徴とする鋼材用一次防錆処理剤。
- 前記バナジン酸塩がアルカリ土類金属であることを特徴とする請求項1に記載の鋼材用一次防錆処理剤。
- さらに、アルカリ土類金属のメタシリケート、アルカリ土類金属の亜リン酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼材用一次防錆処理剤。
- 鋼材の表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材用一次防錆処理剤を塗布し、乾燥することを特徴とする鋼材の一次防錆処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373420A JP2004204272A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373420A JP2004204272A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004204272A true JP2004204272A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32811701
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002373420A Pending JP2004204272A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004204272A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008261019A (ja) * | 2007-04-12 | 2008-10-30 | Nippon Steel Corp | 表面処理耐候性鋼材 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002373420A patent/JP2004204272A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008261019A (ja) * | 2007-04-12 | 2008-10-30 | Nippon Steel Corp | 表面処理耐候性鋼材 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI555881B (zh) | A water-based metal surface treatment agent and a metal surface treatment method using the same | |
KR101350720B1 (ko) | 페인트 내 부식 방지 첨가제 또는 컨버젼 코팅물로서의 4차 암모늄 염 | |
CA2312807A1 (en) | Chromium-free corrosion protection agent and method for providing corrosion protection | |
WO2014175194A1 (ja) | 塗装鋼板用下地処理組成物、並びに下地処理されためっき鋼板およびその製造方法、塗装めっき鋼板およびその製造方法 | |
WO2014020665A1 (ja) | 塗料及び被覆鋼材 | |
JP2004263252A (ja) | 耐白錆性に優れたクロムフリー化成処理鋼板 | |
JP2006249459A (ja) | 鋼材用化成下地処理剤、化成下地処理方法及び防食被覆鋼材 | |
JP5952877B2 (ja) | 亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板の表面処理方法 | |
KR101865092B1 (ko) | 방청용 도료 조성물 | |
WO2015080268A1 (ja) | 亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板の表面処理方法 | |
WO2012082353A2 (en) | Process and seal coat for improving paint adhesion | |
AU1475802A (en) | Anti-rust coating | |
JP2016121221A (ja) | 水性防錆塗料組成物 | |
JP4478057B2 (ja) | 表面処理金属板 | |
JP2015105404A (ja) | 亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板の表面処理方法 | |
JP2004204272A (ja) | 鋼材用一次防錆処理剤および鋼材の一次防錆処理方法 | |
JP3842333B2 (ja) | 耐候性鋼材の表面処理方法 | |
JP2009262477A (ja) | 耐候性鋼材 | |
JP6623543B2 (ja) | 有機樹脂被覆鋼材 | |
JP5396693B2 (ja) | 表面処理耐候性鋼材 | |
JP2004204273A (ja) | 耐候性鋼用表面処理剤、耐候性鋼の表面処理方法および耐候性に優れた表面処理耐候性鋼材 | |
JP5549871B2 (ja) | 皮膜形成用水溶液 | |
JP2006082366A (ja) | 高耐食性表面処理鋼板及びその製造方法 | |
JP2000256870A (ja) | 耐食性の優れた非クロム型表面処理鋼板 | |
JP2006176845A (ja) | 表面処理鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041228 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050310 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20050517 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |