JP2004204081A - フェノール樹脂系接着剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】pHが13.9の高アルカリ溶液に不溶なほど高縮合度の水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子を含有するフェノール系接着剤組成物である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた速硬化性、接着性、低ホルムアルデヒド放散性、耐染み込み性を有し、例えば、木材、紙、プラスチック、金属等の接着剤として有用なフェノール系接着剤組成物に関するものであり、特に木材接着に有用なフェノール系接着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂である、フェノールとホルムアルデヒドとを縮合したフェノール樹脂や、尿素とホルムアルデヒドとを縮合した尿素樹脂は、接着剤として広く用いられている。
【0003】
一般に優れた耐水性、低ホルムアルデヒド放散性が要求される分野にはフェノール樹脂が使用されてきたが、フェノール樹脂は硬化速度が遅いという欠点を有する。硬化速度は生産性に著しく大きな影響を及ぼすので、フェノール樹脂系接着剤の硬化速度を速めるために種々の試みが行われてきた。
【0004】
高縮合度つまり高分子量のフェノール樹脂接着剤は速硬化性であるが、これをそのまま溶剤に溶解して用いたのでは、接着剤樹脂液の粘度が異常に高くなり使用に際しての作業性が極度に低下すると共に保存安定性も劣悪なものだった。その上、水に対する溶解性が低下するため希釈や洗浄に際して有害な有機溶剤を使用せねばならず火災の危険があり、作業環境、地球環境に悪影響を及ぼす欠点があり工業的に実用化は困難であった。
【0005】
そこで、高縮合度樹脂を水分散させることにより低粘度化させて接着剤に使用する研究がなされている。例えば、特許文献1には、高分子量(好ましくは分子量3000以上)のフェノール樹脂の水分散液に、低分子量(好ましくは分子量1000以下)のフェノール樹脂を混合してなるフェノール系接着剤組成物が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたフェノール系接着剤組成物は、比較的高分子量のフェノール樹脂を用いているとはいえ、需要者を満足させるだけの硬化速度を有しているとは言えず、速硬化性が充分ではない。特許文献1の実施例では、フェノール樹脂のアルカリ性水溶液のpHを酸性にして分散粒子を形成することにより、フェノール樹脂の水系分散体からなるフェノール系接着剤組成物を作製するが、この方法により得られるフェノール系接着剤組成物は、アルカリ性水溶液に溶解する程度の分子量のフェノール樹脂が用いられ、最も高分子量のものでも平均分子量が3500のフェノール樹脂が示されているに過ぎない。
【0007】
特許文献1には、フェノール樹脂を分散後に縮合を行なうことにより分子量を調整するという考え方も示されているが、高分子量のフェノール樹脂は分子量が10000以下であることが望ましく、10000以上の場合は接着力がやや低下すると記載されており、フェノール樹脂の分子量の上限は接着性の観点から制約されている。
【0008】
フェノール樹脂を水分散させたフェノール系接着剤組成物を作製する別の方法としては、特許文献2に、フェノール樹脂をジメチルホルムアミド、ブタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解し、界面活性剤の水溶液を添加して分散粒子を形成し、有機溶剤を除去する方法が記載されているが、この方法では、有機溶剤によって溶解する程度の分子量のフェノール樹脂しか用いることができないため、やはり、速硬化性の向上を充分に見込めるほど高分子量とすることができない。
【0009】
また、フェノール系樹脂は他の樹脂と比べてホルムアルデヒド放散量が少ないが、近年ではホルムアルデヒドによる室内汚染“シックハウス症候群”への対応が求められており、ホルムアルデヒド放散量が従来にも増して厳しく制限されるようになってきた。
【0010】
ホルムアルデヒド放散量は、フェノール樹脂の分子量や合成プロセスに大きく影響されるが、上記したようなフェノール樹脂の分散化プロセスではホルムアルデヒド放散量を充分に低減するほどには分子量を高めることができない。また、特殊なプロセスによりホルムアルデヒド放散量の少ないフェノール樹脂を合成することは可能であるが、コスト高を招いてしまう。
【特許文献1】
特開平6−73356号公報
【特許文献2】
特公昭49−4061号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、優れた速硬化性、接着性、低ホルムアルデヒド放散性、耐染み込み性を有するフェノール系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、分子量の測定が不可能なほど分子量が高いため高アルカリ液に不溶なフェノール樹脂を接着性成分として用い、水系溶剤に分散させた場合には充分な接着性を保持したまま、非常に優れた速硬化性が得られるという予想外の効果を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、水分散性フェノール樹脂の分散粒子を含有する水系分散体を含み、前記水分散性フェノール樹脂が系のpHを13.9とした場合でも、分散粒子として存在することを特徴とする、フェノール系接着剤組成物を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明により提供されるフェノール系接着剤組成物は、水分散性フェノール樹脂の分散粒子を含有する水系分散体を含み、系のpHを13.9とした場合でも分散粒子の状態で存在する水分散性フェノール樹脂(a)を主要な接着性成分として含有し、必要に応じて、水溶性フェノール樹脂(b)等の他の接着性成分や、それ以外の成分が配合される。
【0015】
水分散性フェノール樹脂(a)は、接着剤組成物のpHをアルカリ性物質でpH13.9としても、その分散粒子が存在する水分散性フェノール樹脂であれば特に限定されるものではない。ここで、「系のpHを13.9としても分散粒子が存在する」とは、常温(通常25℃程度)において樹脂の水系分散体のpHを13.9という高アルカリ性にした時に、樹脂の分散粒子の少なくとも一部、理想的には全部が溶解せずに分散粒子の状態で残ることを意味する。なお、常温においてpHを13.9としたときに溶解しない水分散性フェノール樹脂の分散粒子は、加熱しても基本的には溶解しない。
【0016】
pH13.9において分散粒子の状態で存在し得る水分散性フェノール樹脂(a)は、非常に縮合度すなわち分子量が高いことから、速硬化性に優れている。pHを13.9とした時に、溶解してしまう程度の縮合度では、短い熱圧時間で速硬化性や十分な接着性は得られない。また、縮合度が高い水分散性フェノール樹脂を用いることで、ホルムアルデヒド放散量を低減する効果も得られる。従来においては、縮合度が高すぎる水分散性フェノール樹脂は接着性に劣るという理由により、フェノール樹脂系接着剤組成物の主成分としては用いられていなかったが、本発明においては、pHが13.9の高アルカリ水溶液中でも溶解しないほどに縮合度が高いフェノール樹脂であっても充分な接着性能を発揮し、しかも速硬化性及び低ホルムアルデヒド放散性の点で非常に優れた効果が得られるという意外な事実を見出したことに基づき、これをフェノール樹脂系接着剤組成物の主成分として用いる。
【0017】
水分散性フェノール樹脂(a)が、pH13.9の高アルカリ水溶液中で溶解しないだけでなく、有機溶剤中でも分散粒子の状態で存在し得る場合には特に縮合度が高いことから、速硬化性の点で好ましい。有機溶剤に対する水分散性フェノール樹脂の溶解性は、フェノール樹脂に対する溶解性が高いN,N−ジメチルホルムアミドを用いて適切に評価することができ、常温の100%N,N−ジメチルホルムアミド中において、フェノール樹脂の分散粒子の少なくとも一部、理想的には全部が溶解せずに分散粒子の状態で残ることが好ましい。なお、常温の100%N,N−ジメチルホルムアミド中において溶解しないものは、加熱しても基本的には溶解しない。
【0018】
本発明で用いる水分散性フェノール樹脂(a)は縮合度が高いので分子量が非常に高いが、高アルカリ液や有機溶剤等の溶剤に溶解させることができない等の理由により、GPCによる分子量の測定は事実上不可能である。
【0019】
水分散性フェノール樹脂(a)の製造方法は特に制限されないが、例えば、水溶性フェノール樹脂を分散させた後、重合又は縮合等の反応を進行させて縮合度を上げることにより得られる。水溶性フェノール樹脂は、ホルムアルデヒドとフェノール類をアルカリ性で反応させることにより得られる。ホルムアルデヒドとフェノール類の反応モル比(ホルムアルデヒド/フェノール類)は、十分な接着強度を得るために1.0以上とすることが好ましく、残存ホルムアルデヒド量を少なくすると同時に水分散化を容易にするために、3.0以下とすることが好ましい。
【0020】
フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等が例示できる。反応系をアルカリ性にするアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、各種アミン類等が例示できる。
【0021】
水溶性フェノール樹脂は、市販品として入手することも可能であり、例えば、ユーロイドPL−251、ユーロイドPL−281((株)サンベーク製)等を挙げることができる。
【0022】
水溶性フェノール樹脂を分散させる方法としては、例えば、水溶性フェノール樹脂水溶液に、撹拌下酸性物質を滴下する方法が挙げられる。酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、蟻酸、乳酸、マレイン酸、フタル酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の無機及び有機酸が例示できる。この酸性物質の添加に先立って、ポリビニルアルコール(PVA)等の分散安定剤を添加すれば極めて容易に小粒径の分散液が得られ、また分散液の保存安定性も向上する。
【0023】
水溶性フェノール樹脂を分散粒子化した後で、さらに縮合度を高める反応としては、例えば、水溶性フェノール樹脂の合成反応を再び進行させればよい。得られた水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子は、遠心分離法等により反応液から分別、精製してから、或いは、反応液のままで接着剤組成物の調製に用いられる。
【0024】
得られた水分散性フェノール樹脂が高縮合度の水分散性フェノール樹脂(a)として使用可能かどうかは、得られた分散粒子を遠心分離により反応液から分離し、接着剤組成物の調製に用いる水系分散媒をpH13.9に調整したもの又は100%N,N−ジメチルホルムアミドに添加した時の溶解性により評価することができる。この溶解性試験において、分散粒子の少なくとも一部、理想的には全部がpH13.9の水系分散媒中に溶解せずに存在することを確認できる場合には、水分散性フェノール樹脂(a)として使用可能である。当該分散粒子が100%N,N−ジメチルホルムアミド中でも分散粒子のまま存在できる場合には、水分散性フェノール樹脂(a)のなかで更に好ましいものと評価される。
【0025】
水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.1〜3μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径を0.01μm以上とすることによって、木材等の被接着材料への過剰染み込みによる接着性の低下を防止する効果が高い。被接着体への過剰染み込みを防止することは、接着剤使用量の減少につながるので、ホルムアルデヒド放散量を低減させる効果も得られる。更に、平均粒子径を10μm以下とすることによって、粒子の沈降による貯蔵安定性が劣ることを防止する。本発明において、平均粒子径は、LASOR SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZER LA920(HORIBA製)により測定することができる。
【0026】
本発明の接着剤組成物は、上記水分散性フェノール樹脂(a)と共に、水溶性フェノール樹脂(b)を配合することにより、更なる接着性の向上が期待できる場合がある。水溶性フェノール樹脂(b)としては、上記水分散性フェノール樹脂(a)の原料として用いられる水溶性フェノール樹脂を、そのまま用いることが可能である。
【0027】
水溶性フェノール樹脂(b)の重量平均分子量は、2000〜7000の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明の接着剤組成物における、水溶性フェノール樹脂(b)の配合量は、十分な接着性を得るために、水分散性フェノール系樹脂(a)と水溶性フェノール樹脂(b)の合計重量100重量部に対して、水溶性フェノール樹脂(b)が1〜99重量部であることが好ましく、10〜90重量部であることが更に好ましい。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、pHを8.0〜13.8とすることが好ましく、10.1〜13.0とすることが更に好ましい。優れた速硬化性及び接着性を得るためにpH8.0以上とし、また、速硬化性及び接着性の低下を防ぐと同時に、アルカリ汚染(着色)等の問題が生じるのを防止するためにpH13.8以下とする。
【0030】
水分散性フェノール樹脂系接着剤をアルカリ性に調整することにより、従来の酸性の水分散性フェノール樹脂系接着剤よりもホルムアルデヒド放散量が少なくなるという利点もある。
【0031】
接着剤組成物のpHを8.0〜13.8に調整するため、或いは、pHを13.9に調整して水分散性フェノール系樹脂(a)の溶解性を確認するために用いるアルカリ性物質(c)は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、各種アミン類等を挙げることができ、そのなかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0032】
本発明のフェノール樹脂系接着剤組成物には、通常、接着剤に使用される種々の添加剤、例えば、水溶性溶剤、油溶性溶剤、充填剤、増量剤、増粘剤、分散剤、ぬれ剤、防腐剤、着色剤、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤等を加えることができる。また、目的に応じ、適宜、アミノ樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などを包含する合成樹脂、繊維素又は繊維素誘導体などを包含する天然樹脂又は半合成樹脂を配合することにより接着性を向上させることもできる。
【0033】
本発明に用いる水系分散媒としては、主に水を用いるが、必要に応じて適量の有機溶剤を水に混合しても良い。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、水を主体とする水系分散媒に、分散性フェノール樹脂(a)を分散させ、必要に応じて水溶性フェノール樹脂(b)或いはその他の成分を溶解又は分散させ、アルカリ性物質(c)等を添加してpHを調整することにより得られる。配合成分の混合順序や分散又は溶解方法としては公知の方法を適宜用いればよい。
【0035】
本発明に係るフェノール樹脂系接着剤組成物は、高アルカリ溶液に不溶なほどに高縮合度のフェノール樹脂を接着性成分として用いることにより、充分な接着性を保持したまま、非常に優れた速硬化性、低ホルムアルデヒド放散性、耐染み込み性を発現する。本発明に係るフェノール樹脂系接着剤組成物は、例えば、木材、紙、プラスチック、金属等の接着剤として有用であり、特に木材接着に有用である。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、これらの記載によって、本発明はなんら限定されるものではない。
【0037】
(水分散性フェノール樹脂(a)製造例1)
還流冷却器、温度計、撹拌器、滴下ロートを備えた反応フラスコにフェノール941g、37%ホルマリン1623g、25%NaOH水溶液100gを仕込み(モル比(ホルムアルデヒド/フェノール)=2.0)、冷却しながら溶解させた後、撹拌下加熱し、85℃で300分反応させた。そして、20%ポリビニルアルコール(以下PVAと標記する)水溶液500gを添加し、3N塩酸を徐々に滴下してフェノール樹脂を析出させ、さらに、反応を85℃で180分間行った。その後、25%NaOHにてpH12に調整し、分散液(乳白色)を得た。分散粒子の平均粒子径は1.6μmであった。この分散液は室温(25℃)で2ヶ月間安定であり、沈澱等を生じなかった。この分散液に25%NaOHを添加してpH13.9に調整しても分散粒子が存在していた。また、得られた分散液を遠心分離して得た粒子分は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びキシレンを用いて溶解を試みたが溶解せず、分子量の測定は不可能だった。
【0038】
(水分散性フェノール樹脂(a)製造例2)
還流冷却器、温度計、撹拌器、滴下ロートを備えた反応フラスコにフェノール941g、37%ホルマリン1623g、25%NaOH水溶液100gを仕込み、冷却しながら溶解させた後、撹拌下加熱し、85℃で300分反応させた。そして、20%PVA水溶液500gを添加し、3N塩酸を徐々に滴下してフェノール樹脂を析出させ、さらに、反応を85℃で180分間行った。その後、25%NaOH水溶液にてpHを10.5として、分散液(乳白色)を得た。平均粒子径は1.6μmであった。この分散液は室温(25℃)で2ヶ月間安定であり、沈澱等を生じなかった。この分散液に25%NaOHを添加してpH13.9に調整しても分散粒子が存在していた。また、得られた分散液を遠心分離して得た粒子分を、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びキシレンを用いて溶解を試みたが溶解せず、分子量の測定は不可能だった。
【0039】
(水分散性フェノール樹脂(a)製造例3)
還流冷却器、温度計、撹拌器、滴下ロートを備えた反応フラスコにフェノール941g、37%ホルマリン1623g、25%NaOH水溶液100gを仕込み、冷却しながら溶解させた後、撹拌下加熱し、85℃で300分反応させた。そして、20%PVA水溶液500gを添加し、20%ドデシルベンゼンスルホン酸を徐々に滴下してフェノール樹脂を析出させ、さらに、反応を85℃で180分間行った。その後、25%NaOH水溶液にてpHを9.0として、分散液(乳白色)を得た。平均粒子径は1.6μmであった。この分散液は室温(25℃)で2ヶ月間安定であり、沈澱等を生じなかった。この分散液に25%NaOH水溶液を添加してpH13.9に調整しても分散粒子が存在していた。また、得られた分散液を遠心分離して得た粒子分を、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びキシレンを用いて溶解を試みたが溶解せず、分子量の測定は不可能だった。
【0040】
(水分散性フェノール樹脂比較製造例)
還流冷却器、温度計、撹拌器、滴下ロートを備えた反応フラスコにフェノール941g、37%ホルマリン1623g、25%NaOH水溶液100gを仕込み、冷却しながら溶解させた後、撹拌下加熱し、85℃で300分反応させた。そして、20%PVA水溶液500gを添加し、3N塩酸を徐々に滴下してフェノール樹脂を析出させ、さらに、反応を30分間行った。その後、25%NaOH水溶液にてpHを10.5として、分散液を得た。平均粒子径は1.6μmであった。この分散液は室温(25℃)で2ヶ月間安定であり、沈澱等を生じなかった。この分散液に25%NaOH水溶液を添加してpH13.9に調整した時、分散粒子が溶解して透明赤褐色となった。また、得られた分散液を遠心分離して得た粒子分を、N,N−ジメチルホルムアミドを用いて溶解を試みたところ溶解した。この比較製造例で合成された水分散性フェノール樹脂の重量平均分子量は5000だった。
(実施例1〜8、比較例1、2)
上記各製造例で得たフェノール樹脂を用いて、表1、2に示す組成で実施例1〜8及び比較例1、2の接着剤組成物を製造した。表1、表2における接着剤組成物の配合量は重量部を表す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1〜8及び比較例1、2で得た接着剤組成物を用いて、下記の方法により合板を作製し、構造用合板の日本農林規格(木材編「構造用合板」)に記載された試験方法により接着力を測定した。結果を表3に示す。
【0044】
<合板の製造条件>
a 配合条件:フェノール樹脂系接着剤組成物100重量部+小麦粉10重量部
b 単 板:含水率9〜12%、2.5mm厚のカラマツ単板
c 構 成:5プライ合板
d 冷 圧:30分、10kg/cm2
e 熱 圧:120℃、4分
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示す結果より、本発明のフェノール系接着剤組成物は、十分な接着性を保持しつつ、優れた速硬化性を有することが明らかである。
【0047】
【発明の効果】
本発明のフェノール樹脂系接着剤組成物は、系のpHを13.9としても、分散粒子が存在する水分散性フェノール樹脂の分散粒子を含有することにより、優れた速硬化性、接着性、低ホルムアルデヒド放散性、耐染み込み性を有し、例えば、紙、プラスチック、金属等の接着剤、特に木材用接着剤として有用である。
Claims (10)
- 水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子を含有する水系分散体を含み、系のpHを13.9としても前記水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子が存在することを特徴とするフェノール樹脂系接着剤組成物。
- さらに、水溶性フェノール樹脂(b)を含有する請求項1に記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 前記水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子は、N,N−ジメチルホルムアミド中においても分散粒子の状態で存在することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 前記水分散性フェノール樹脂(a)と前記水溶性フェノール樹脂(b)の合計重量100重量部に対して、前記水溶性フェノール系樹脂(b)が1〜99重量部である請求項2又は3に記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 前記水分散性フェノール樹脂(a)と前記水溶性フェノール樹脂(b)の合計重量100重量部に対して、前記水溶性フェノール系樹脂(b)が10〜90重量部である請求項2乃至4のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 前記水分散性フェノール樹脂(a)の分散粒子の平均粒子径が0.01〜10μmである請求項1乃至5のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- pHが8.0〜13.8である請求項1乃至6のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- pHが10.1〜13.0である請求項1乃至7のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 系のpHを13.9に調節するアルカリ性物質(c)として水酸化ナトリウムを用いる請求項1乃至8のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載のフェノール樹脂系接着剤組成物を含有してなる木材用接着剤組成物。
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