JP6830723B2 - フェノール樹脂とリグノフェノールとを含む接着剤およびこれを用いた木製品 - Google Patents

フェノール樹脂とリグノフェノールとを含む接着剤およびこれを用いた木製品 Download PDF

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Description

本発明は、フェノール樹脂とリグノフェノールとを含む接着剤およびこれを用いた木製品に関する。
現在、市場に出荷されている接着剤は、用途別にみると、合板分野用の接着剤が最も大きな割合を占めている。そして、合板分野に用いられる接着剤は、95%以上が石油由来の合成樹脂接着剤である。近い将来における石油資源の枯渇が確実視されている昨今、上記石油由来の接着剤を、その一部でも、再生可能な植物資源に由来する接着剤に転換することは、社会的に大きな意義を有するものである。
植物資源に由来する接着剤としては、例えば、木材や樹皮中の成分であるリグニンやタンニンなどのフェノール類を分離し、ホルムアルデヒドと反応させた接着剤に関する研究などが古くから行われている。このような中、特許文献1には、リグノフェノール誘導体やリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体と、合成樹脂系接着剤とを混合した接着剤が、乾燥状態において、従来の合成樹脂接着剤と同程度の接着力を有することが開示されている。
ところで、合板には様々な使用用途があり、中には、常時または断続的に湿潤状態となるような環境において使用されるものもある。このような合板に用いられる接着剤は、乾燥状態において接着力を有するだけでは不十分で、湿潤環境に置かれた場合においても、十分な接着力を維持できるものであることが要求される。
しかし、現在までのところ、接着剤成分の一部を、従来の石油由来の成分から再生可能な植物資源に由来する成分に転換し、かつ、常時または断続的に湿潤状態となるような環境においても十分な接着力を維持できる接着剤は存在していない。従って、そのような接着剤の登場が強く望まれている。
特開2008−7622号公報
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、接着剤成分の一部を、従来の石油由来の成分から再生可能な植物資源に由来する成分に転換し、かつ、常時または断続的に湿潤状態となるような環境においても、優れた接着性能を有する接着剤を提供することを目的とする。
本発明は、フェノール樹脂と、リグノフェノールとを含む接着剤であって、フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0〜2.7/7.3である、接着剤に関する。
本発明は、さらに、リグノフェノールの重量平均分子量が、300〜8000であることが好ましい。
本発明は、さらに、フェノール樹脂またはリグノフェノール中のフェノール構造と反応することで、フェノール樹脂またはリグノフェノールを硬化させる硬化剤を含有することが好ましい。
本発明は、さらに、硬化剤の含有量が、リグノフェノール100質量部に対し、17〜84質量部であることが好ましい。
本発明は、さらに、硬化剤がアルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物であることが好ましい。
本発明は、さらに、フェノール樹脂がメチロール基を有するものであって、該メチロール基が反応することによって起こる縮合反応を促進する硬化促進剤を含有することが好ましい。
本発明は、上記の接着剤を用いて木材と被着体を接着させて得られる木製品に関する。
本発明は、上記の接着剤を用いて木材と被着体を接着させる木製品の製造方法であって、木材と被着体を接着させる前に、接着剤に加熱処理が行われていないことを特徴とする、木製品の製造方法に関する。
本発明によれば、接着剤成分の一部を、従来の石油由来の成分から再生可能な植物資源に由来する成分に転換し、かつ、常時または断続的に湿潤状態となるような環境においても、優れた接着性能を有する接着剤を提供することが可能である。
表3に示す実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いたクロマツ板試験片のせん断強さをグラフにしたものである。 表3に示す実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いたクロマツ板試験片の木破率をグラフにしたものである。 表5〜8に示す実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いたアカマツ合板のせん断強さをグラフにしたものである。 表5〜8に示す実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いたアカマツ合板の木破率をグラフにしたものである。 表10〜13に示す実施例4、並びに比較例1及び3の接着剤を用いたスギ合板のせん断強さをグラフにしたものである。 表10〜13に示す実施例4、並びに比較例1及び3の接着剤を用いたスギ合板の木破率をグラフにしたものである。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<接着剤>
本発明の接着剤に用いるフェノール樹脂は、特に限定されないが、レゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。レゾール型フェノール樹脂は自己反応性の官能基を有するため、硬化剤を用いずとも、加熱することにより硬化させることができる。フェノール樹脂は、従来公知の方法で製造することができ、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性触媒の存在下で反応させることで得られる。
アルカリ性触媒の存在下でフェノールとホルムアルデヒドとを反応させると、フェノールにメチロール基が付加される。その後、該メチロール基とフェノール核のフリーのオルト位またはパラ位の間でメチレン結合が生成され、または、メチロール基同士の間でジメチレンエーテル結合が生成されるなどして、縮合反応が進行する。
本発明の接着剤は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤を含有させることによって、フェノール樹脂の縮合反応を促進させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、炭酸ナトリウム、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。中でも、安価かつ少量で硬化反応速度を増大させ、安全性が高く、取り扱いが容易であるという観点から、炭酸ナトリウムが好ましい。これらの硬化促進剤は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化促進剤は、フェノール樹脂100質量部に対して4.4〜8.8質量部添加することが好ましく、4.8〜7.0質量部添加することがより好ましい。硬化促進剤の添加量がフェノール樹脂100質量部に対して4.4質量部未満では、硬化反応速度の増大が十分期待できなくなる傾向にあり、8.8質量部を超えても、硬化反応速度のさらなる増大は期待できなくなる傾向にある。なお、本明細書において、フェノール樹脂の質量とは、固形分の質量をいう。
本発明の接着剤に用いるリグノフェノールは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、植物資源である木材資源に酸とフェノール誘導体を添加し、木材資源中のセルロース、ヘミセルロースを加水分解させ、また、木材資源中のリグニンをフェノール誘導体により安定化してリグノフェノールを製造する。木材資源に酸とフェノール誘導体を添加する方法としては、木材資源にフェノール誘導体を添加して含浸させた後、酸を添加し、系の粘度が低下したら、後述する疎水性の溶剤を添加し、さらに撹拌を行う方法が挙げられる。このようにすることで、セルロース及びヘミセルロース由来の糖成分と硫酸からなる層と、リグノフェノール、フェノール誘導体及び疎水性の溶剤からなる層に分離することが可能となる。
上記リグノフェノールの製造方法において使用する木材資源は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンなどから構成されるものであり、例えば、木粉、木質チップなどを挙げることができる。また、使用する木材としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用することができる。
木材資源に添加する酸としては、無機酸、有機酸のいずれも用いることが可能である。酸は、セルロース及びヘミセルロースを加水分解するための触媒としてだけでなく、木材資源を構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの結合を解く役割も果たす。無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸などのいずれかを使用することができる。酸の濃度は、60〜90%が望ましい。酸の濃度が60%より低いと、セルロースとリグニンの解緩反応が進行せず、酸の濃度が90%より高いとリグニン及び添加剤であるp−クレゾールのベンゼン骨格がスルフォン化されやすくなり、不具合が生じる傾向にある。酸の中では、60%以上の硫酸が好ましい。有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。
木材資源に添加する酸の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは1000〜2000質量部である。酸の添加量が少ないと、木材原料は膨潤するだけで液状にならず、撹拌が困難になり、新しいタイプの押出混練機が必要となる。また、酸の添加量が多すぎると、酸の回収系への負担が増え、経済性が損なわれる。
リグニンを構成するp−クマリルアルコール、シナピルアルコール、コニフェリルアルコール中のフェニルプロパン単位のα炭素は化学的に不安定であるが、フェノール誘導体を添加することで、成形体などの種々の用途に活用できるリグノフェノールを得ることができる。ここで、リグノフェノールとは、リグニン中のフェニルプロパン単位のα炭素にフェノール誘導体が結合したジフェニルプロパン単位を含む重合体をいう。例えば、リグニンを構成するp−クマリルアルコール、シナピルアルコール、コニフェリルアルコールのうち、式(1):
Figure 0006830723
で表されるコニフェリルアルコールに、フェノール誘導体であるp−クレゾールでマスキングをした場合、式(2):
Figure 0006830723
で表される化合物が形成される。p−クマリルアルコール、シナピルアルコールについても、同様にフェノール誘導体が結合して、α炭素を安定化させる。
フェノール誘導体としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体または3価のフェノール誘導体などが挙げられる。1価のフェノール誘導体としては、フェノール、ナフトール、アントロール、アントロキオールなどが挙げられる。これらの1価のフェノール誘導体はさらに1以上の置換基を有していてもよい。2価のフェノール誘導体としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどが挙げられる。これらの2価のフェノール誘導体はさらに1以上の置換基を有していてもよい。3価のフェノール誘導体としては、ピロガロールなどが挙げられる。ピロガロールはさらに1以上の置換基を有していてもよい。これらの1価から3価のフェノール誘導体が有する置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよい。電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリール基(フェニル基など)、水酸基などが挙げられる。また、リグニンを構成するフェニルプロパン単位のα炭素との反応性の点から、フェノール誘導体上のフェノール性水酸基の2つあるオルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。
フェノール誘導体の好ましい例としては、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられ、中でもp−クレゾールが好ましい。フェノール誘導体の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは500〜2000質量部である。フェノール誘導体は、リグニンのα−炭素をマスキングするのに必要な化学量論的な量以上を添加しなければならず、また相分離に必要な抽出剤としての量も加味して添加しなければならない。
木材資源に酸とフェノール誘導体を添加することで、主に酸とセルロース及びヘミセルロース由来の糖液とから構成される水層と、リグノフェノールとフェノール誘導体とから構成される油層に分離させるが、より短時間で二層に分離させるために疎水性の溶剤をさらに添加することが好ましい。分離された油層は、濾過機にて固液分離され、固体のリグノフェノールと、液体のp−クレゾールと疎水性溶剤に分離される。固液分離はフィルタープレス等を用いて行うことができ、リグノフェノールはケーク状で得られる。得られたリグノフェノールは、乾燥機にて乾燥される。
本発明で使用するリグノフェノールの重量平均分子量は、特に限定されないが、300〜8000であることが好ましく、500〜6000であることがより好ましく、1800〜4000であることがさらに好ましい。リグノフェノールの重量平均分子量が8000を超えると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する傾向にある。また、リグノフェノールの重量平均分子量が300未満であると、得られる接着剤の接着性能が低下する傾向にある。リグノフェノールの分子量がこの範囲であることで、木材と被着体を接着させる前に接着剤を樹脂化するための加熱処理を行わなくても、接着時に加熱をするだけで、優れた接着性を発現しやすくなる。なお、本発明における重量平均分子量は、測定装置(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を使用し、リグノフェノールをテトラヒドロフランに溶解させ、濾過し、その濾液をGPCで測定した。
本発明の接着剤は、硬化剤を含有することが好ましい。本発明の接着剤に使用される硬化剤としては、アルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物が挙げられる。アルデヒドとしては、特に限定されず、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。硬化剤として、アルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物を用いることにより、フェノール樹脂またはリグノフェノールにおけるフェノール構造と、アルデヒドが硬化反応を行い、接着性能が向上する。接着剤を使用する際の作業者の環境、安全の点で、硬化剤として、アルデヒドを生成する化合物を用いることが好ましい。
本発明で使用される、硬化剤としては、例えば、レゾルシノール系接着剤用硬化剤として用いられるホルムアルデヒドの二量体又は三量体が含まれる硬化剤、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。中でも、レゾルシノール系接着剤用硬化剤が、常温接着が可能であり、さらに、接着耐久性に優れている点で好ましい。これらの硬化剤は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化剤の添加量は、リグノフェノール100質量部に対し、17〜84質量部であることが好ましく、34〜67質量部であることがより好ましく、45〜55質量部であることがさらに好ましい。硬化剤の添加量がリグノフェノール100質量部に対し、84質量部を超えると、硬化剤を添加することによる接着性の向上効果は得られなくなる傾向にある。また、硬化剤の添加量が17質量部未満であると、十分な接着耐久性を有する接着剤が得られず、乾燥と湿潤が繰り返される条件下では、接着層のはく離が生じる可能性がある。なお、本明細書において、リグノフェノールの質量とは、固形分の質量をいう。
また、硬化剤には、樹脂の性質を改善するため、或いは、粘度調整をするために充填剤を添加してもよい。充填剤は、不活性な有機物系と無機鉱物質系に分類され、通常、樹脂に対して5〜20%添加されている。有機物系としては、ヤシ殻粉、クルミ粉または木粉などが挙げられ、無機鉱物質系としては、トノコ、タルク、胡粉、軽石粉、硅砂、チタン白、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明の接着剤は、必要に応じて、粘度調整剤、酸化防止剤、顔料、染料などの添加剤を含有してもよい。本発明で使用する粘度調整剤としては、小麦粉、大麦粉、大豆粉、でんぷん粉などが挙げられる。中でも、小麦粉が糊液粘度の調整が容易で、微粉化がしやすく、安価かつ大量供給が可能の点で好ましい。これらの粘度調整剤は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘度調整剤の添加量は、フェノール樹脂とリグノフェノールの合計100質量部に対し、9〜34質量部であることが好ましく、16〜31質量部であることがより好ましく、19〜27質量部であることがさらに好ましい。粘度調整剤の添加量が、フェノール樹脂とリグノフェノールの合計100質量部に対し34質量部を超えると、接着剤の粘度が高くなりすぎて、接着剤を塗布する際の作業性に支障がでたり、接着性が低下したり、耐水性が低下する傾向にある。また、粘度調整剤の添加量が9質量部未満であると、圧締の際、接着層から滲みだしたり、木材中への浸透が過度になり、接着不良となる傾向にある。
本発明の接着剤は、フェノール樹脂とリグノフェノールとを、質量比で7.0/3.0〜2.7/7.3の割合で混合することによって得られる。フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が7.0/3.0より大きい、すなわちフェノール樹脂成分が多いと、常時湿潤状態となるような環境に置かれた場合だけではなく、断続的に湿潤状態となるような環境に置かれた場合においても、接着性能が低下する傾向にある。また、フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が2.7/7.3より小さい、すなわちリグノフェノール成分が多いと、常時または断続的に湿潤状態となるような環境に置かれた場合、接着性能の低下というような問題が生じる。また、常時または断続的に湿潤状態となるような環境に置かれた場合でも接着性能が安定しているといった観点から、フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比は、7.0/3.0〜5.0/5.0であることが好ましく、6.9/3.1〜6.0/4.0であることがより好ましい。なお、本明細書において、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比とは、それぞれの樹脂の固形分の質量比をいう。
フェノール樹脂とリグノフェノールとを混合する方法としては、特に限定されないが、接着剤の化学反応によるゲル化を遅くして十分に均一な撹拌を行うという観点から、例えば、フェノール樹脂に粘度調整剤と硬化促進剤を添加してよく撹拌しておき、リグノフェノールはアルカリ性水溶液に溶解させた後に硬化剤や粘度調整剤を添加してよく撹拌し、それぞれ調製を適宜行った後に両者を混合・撹拌することが好ましい。
本発明の接着剤のpHは、10.3〜13に調整することが好ましく、10.4〜12.5に調整することがより好ましく、11.6〜11.9に調整することがさらに好ましい。接着剤のpHが13を超えると、接着剤の取り扱いが困難となったり、木材自体の脆弱化、あるいは変色を招き、接着性の低下、汚染の原因となる傾向にある。また、pHが10.3未満であると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下し、接着剤として利用することが困難となる傾向にある。
本発明で使用するアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム水溶液が、リグノフェノールの溶解性に優れており、好ましい。これらのアルカリ性水溶液は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用するアルカリ性水溶液の濃度は、0.5〜4mol/Lに調整することが好ましく、1〜3mol/Lに調整することがより好ましく、1〜2mol/Lに調整することがさらに好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が4mol/Lを超えると、ゲル化により、塗布が困難となる傾向にある。また、アルカリ性水溶液の濃度が0.5mol/L未満であると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する傾向にある。なお、ここで、アルカリ性水溶液の濃度とは、接着剤中の水1Lに対する、塩基性の塩のモル濃度をいう。
<木製品、木製品の製造方法>
本発明の木製品は、前記接着剤を介して木材と被着体を重ね合わせて得られる。ここで、本発明の木製品の作製に用いられる木材は、クロマツ、アカマツ、スギ、ヒノキ、カラマツ、ケヤキ、ミズナラなどの樹木を切り出して得られる材木だけでなく、集成材、合板、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなどの木質材料なども含まれる。
また、本発明の接着剤は、合板、集成材、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなどを作製する際の接着剤として用いることができる。よって、本発明の木製品としては、前記接着剤を用いた、合板、集成材、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなども含まれる。
本発明の木製品は、得られた接着剤を木材に塗布し、被着体と重ね合わせることで得られる。接着剤を木材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗布、スプレー塗布などが挙げられる。接着剤の塗布量は特に限定されないが、通常、集成材の製造に際して木材の片面に塗布する場合は、150〜250g/mであることが好ましく、また、木材の両面に塗布する場合は、200〜350g/mであることが好ましい。合板の製造に際して厚さ3mm前後の単板に片面塗布する場合は、330〜350g/mであることが好ましく、塗布から圧締までの時間が長い時、あるいは多孔質の樹種を接着する時は塗布量を多くし、反対の条件の時は少なくするなどの多少の調整は可能である。塗布量が多いと、圧締時にはみ出してしまう結果となり、不経済であるばかりでなく、接着層が厚くなり凝集力の低下をきたす傾向にあり、塗布量が少ないと、連続的で一様な膜を形成できなくなり、接着が不十分で製品不良の原因となる傾向にある。
接着剤を塗布した木材を接着する方法としては、例えば、ホットプレスによる熱圧接着法、高周波による高周波加熱接着法、コールドプレスによる常温接着法などが挙げられる。例えば、合板を製造する場合においては、冷圧後熱圧法が用いられており、通常、2種類の圧締装置が必要である。冷圧はコールドプレスにより仮接着状態を得ることが目的であり、その後、ホットプレスにより温度ムラなく合板全面にわたって安定した硬化を得るという観点から、熱圧接着法が用いられる。
接着剤を塗布した木材を被着体と重ね合わせ、ホットプレスなどにより熱圧接着させるための加熱温度は、100〜200℃であることが好ましく、140℃〜160℃であることがより好ましい。加熱温度が200℃より高いと、接着剤が分解し、接着性能が低下したり、製品に狂いやそり、割れ、変色を生じる傾向にある。また、加熱温度が100℃未満であると、十分な接着力を得ることができず、接着層にはく離が生じる傾向にある。また、ホットプレスなどにより熱圧接着させるための圧締圧力は、0.29〜9.81MPaであることが好ましく、例えば、集成材を製造する場合においては、0.78〜1.47MPaであることがより好ましく、合板を製造する場合においては、0.69〜0.98MPaであることがより好ましい。例えば、集成材を製造する場合において、圧締圧力が1.47MPaを超えると、接着剤が連続した膜とならず、接着不良となる傾向にある。また、圧締圧力が0.78MPa未満であると、接着層が厚くなり、十分な接着力を得ることができなくなる傾向にある。ホットプレスなどにより熱圧接着させるための加熱温度及び圧締圧力は、被着体の密度により調整することが望ましい。
本発明の木製品の製造方法は、上記の接着剤を用いて木材と被着体とを接着させる方法である。上記の接着剤に含まれるリグノフェノールは比較的分子量が大きく、また、リグノフェノールと硬化剤(特にアルデヒド類)との反応性も高いため、木材と被着体を接着させる前に加熱処理を行い、接着剤を樹脂化する工程を経なくても、接着時に加熱をすることで優れた接着強度を有する木製品を得ることができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(比較例1)
用いたフェノール樹脂は株式会社オーシカ製、ディアノールD−117(不揮発分45.5%、pH11.3)である。比較例1として、フェノール樹脂のみで接着剤を製造する場合は、D−117:小麦粉(赤花):ソーダ灰:水を、質量比10:1.5:0.3:1の割合で混合・撹拌して、フェノール樹脂調製物1を得て、これを比較例1の接着剤とした。
(実施例1〜3、比較例2〜3)
実施例1〜3、及び比較例2として、フェノール樹脂とリグノフェノールとを混合する場合は、D−117:小麦粉(赤花):ソーダ灰を、質量比10:1.5:0.3の割合で混合・撹拌したフェノール樹脂調製物2を用いた。この場合は、フェノール樹脂に水を添加しなかった。
リグノフェノールは、島根県隠岐の島町布施地区にあるリグノフェノール製造実証プラントにおいて、スギ木粉試料から相分離系変換システムにより得られたものを用いた。得られたリグノフェノールを1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)に溶解させ、さらに、レゾルシノール系接着剤用硬化剤(株式会社オーシカ製、D用硬化剤、ホルムアルデヒドの三量体とヤシ殻を含む)、小麦粉(日清製粉株式会社神戸工場製、日清フラワー薄力小麦粉)を添加し、撹拌することによりリグノフェノール調製物1を得た。水酸化ナトリウム水溶液、リグノフェノール、レゾルシノール系接着剤用硬化剤及び小麦粉の混合割合は、質量比7:3:1.5:0.3である。
フェノール樹脂調製物2とリグノフェノール調製物1とを混合し、実施例1〜3及び比較例2の接着剤を得た。また、リグノフェノール調製物1のみを用いて製造した接着剤を、比較例3とした。
実施例1〜3、及び比較例1〜3におけるフェノール樹脂調製物とリグノフェノール調製物との混合割合、及びフェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比は、表1、表2のとおりである。
Figure 0006830723
Figure 0006830723
(構造用集成材のJASに基づくブロックせん断試験)
実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いて、混合割合による接着性能を確認するため、クロマツ板を接着後、試験片を採取し、構造用集成材のJASに基づくブロックせん断試験を行った。
被着材として、含水率15%以下のクロマツ板を幅75mm×厚さ12mm×材長900mmに裁断し、4枚作製した。このうち1枚のクロマツ板の裏側に、比較例1で得られた接着剤を刷毛塗布方法により250g/mで塗布した。この際、比較例1の接着剤のpHは10.3であった。接着剤を塗布した面と、2枚目のクロマツ板の裏側を向かい合わせたものを試験体とし、熱圧接着試験装置(高松横井工業株式会社製、FHP−H300型)を使用し、ホットプレス温度160℃、圧締圧力0.98Mpa、圧締時間35分により試験体を作製した。次に3枚目のクロマツ板の裏側にも、比較例1で得られた接着剤を同様に塗布し、4枚目のクロマツ板の裏側を向かい合わせたものを試験体とし、熱圧接着試験装置を用いて同様に試験体を作製した。作製した2組の試験体それぞれから構造用集成材のJASに定められたブロックせん断試験片を26個ずつ採取した。このとき、試験片の接着面積は750mmとした。同様に実施例1〜3、及び比較例2〜3で得られた接着剤についても、クロマツ板により試験体を作製し、ブロックせん断試験片を採取した。この際、接着剤のpHは、実施例1〜3についてそれぞれ、10.7、10.9、10.8、比較例2〜3についてそれぞれ、10.8、11.2であった。
ブロックせん断試験は、試験片がせん断したときの荷重が、試験機の容量の15〜85%に該当する試験機(ミネベア株式会社製、AL−100kNB型)及び試験片のせん断面と荷重軸が平行であって、試験片に回転モーメントなどが生じないように設計されたブロックせん断試験装置(ミネベア株式会社製、JASせん断試験治具)を使用した。試験片を構成する一方のクロマツ板の端部、及び試験片を構成するもう一方のクロマツ板の逆側端部を、ブロックせん断試験装置で固定し、荷重速度1mm/分の条件で、各固定部から試験片の中央方向へ試験片のせん断面と荷重軸が平行となり、かつ、試験片に回転モーメントなどが生じないように荷重をかけ、試験片をせん断させた。
(せん断強さの算出)
せん断強さは、下記式(3)により算出した。

Figure 0006830723
(木破率の算出)
木破率は、点格子板を使用し、以下のようにして算出した。ブロックせん断試験にて、せん断させた試験片のせん断面の上に、180個の点を有する点格子板を重ね、試験片が木破している部分と重なり合っている点の数を数え、下記式(4)により、木破率を算出した。

Figure 0006830723
比較例1については51個の試験片を用い、実施例1〜3および比較例2〜3については52個の試験片を用いて、ブロックせん断試験を実施し、最大荷重及び木破率を測定した。試験結果から算出したせん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表3に示す。
また、表3に示すせん断強さの平均値をグラフにしたものを図1とし、表3に示す木破率の平均値をグラフにしたものを図2とする。図1及び図2において、エラーバーは標準偏差を表す。図1のJAS基準値は7.2N/mmであり、図2のJAS基準値は65%である。
Figure 0006830723
表3からわかるように、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比が7.0/3.0〜2.7/7.3の範囲にある接着剤を用いた実施例1〜3については、せん断強さ及び木破率ともJAS基準値を満たし、比較例1の接着剤と同程度の接着性能が確認できた。特に、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比が、約6.9/3.1である実施例1が、最も優れたせん断強さを示した。
(合板のJASに基づく接着力試験)
実施例1〜3、及び比較例1〜3の接着剤を用いて、混合割合による接着性能を確認するため、アカマツ単板を接着後、試験片を採取し、合板のJASに基づく接着力試験を行った。
被着材として、含水率1%(標準偏差0.2%)、厚さ3.3mmのアカマツ単板を幅35cm×長さ35cmに裁断し、3枚作製した。このうち1枚のアカマツ単板の裏側に、比較例1で得られた接着剤を刷毛塗布方法により350g/mで塗布した。この際、比較例1の接着剤のpHは11.5であった。接着剤を塗布した面と、2枚目のアカマツ単板の表側を繊維方向が直交するように向かい合わせて重ね、さらに、3枚目のアカマツ単板の裏側に、比較例1で得られた接着剤を同様に塗布し、2枚目の単板の裏側と繊維方向が直交するように向かい合わせたものを試験体とし、熱圧接着試験装置(高松横井工業株式会社製、FHP−H300型)を使用し、ホットプレス温度160℃、圧締圧力0.98Mpa、圧締時間は圧締時の単板厚さ1mmにつき90秒と換算し、9mm×90秒で13分30秒の圧締により試験体を作製した。作製した試験体から合板のJASに定められた引張せん断試験片を採取した。このとき、試験片の幅は25mmとし、試験片の切り込みと切り込みとの間隔は25mmとした。同様に実施例1〜3及び比較例2〜3で得られた接着剤についても、アカマツ単板により試験体を作製し、引張せん断試験片を採取した。この際、接着剤のpHは、実施例1〜3についてそれぞれ、11.9、11.9、12.0、比較例2〜3についてそれぞれ、11.7、12.1であった。
引張せん断試験片は、比較例1で得られた接着剤により作製した試験体から48個採取し、これを12個ずつ4つの組にグループ分けした。同様に、引張せん断試験片は、実施例1〜3及び比較例2〜3で得られた接着剤により作製した各試験体からも48個ずつ採取し、これを12個ずつ4つの組にグループ分けした。
1つめのグループについては常態接着力試験用、2つめのグループについては合板のJASに規定されている接着の程度を表す1類に該当するスチーミング処理試験用、3つめのグループについては同様に1類に該当する煮沸繰返し試験用、4つめのグループについては、合板のJASに規定されている接着の程度を表す特類に該当するスチーミング繰返し試験用とした。
ここで、合板のJASに規定されている接着の程度を表す1類とは、コンクリート型枠用合板及び断続的に湿潤状態となる場所(環境)において使用することを主な目的とした合板のJAS第3条第2項の接着の程度の要件を満たす合板の類別をいう。また、特類とは、屋外又は常時湿潤状態となる場所(環境)において使用することを主な目的とした合板のJAS第3条第1項の接着の程度の要件を満たす合板の類別をいう。
常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、及びスチーミング繰返し試験は、合板のJASに記載されている試験方法に準拠して実施した。各試験における引張せん断試験は、試験機(ミネベア株式会社製、AL−100kNB型)及び合板引張試験治具(ミネベア株式会社製)を使用した。合板引張試験治具を用いて、試験片の両端を各固定位置が対称的になるように固定し、荷重速度3mm/分の条件で、試験片を試験片の両端の方向に引張り、せん断させた。
(せん断強さの算出)
常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、及びスチーミング繰返し試験において、せん断強さは、下記式(5)により算出した。

Figure 0006830723
(木破率の算出)
常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、スチーミング繰返し試験において、木破率は、点格子板を使用し、以下のようにして算出した。引張せん断試験にて、せん断させた試験片のせん断面の上に、169個の点を有する点格子板を重ね、試験片が木破している部分と重なり合っている点の数を数え、下記式(6)により、木破率を算出した。

Figure 0006830723
合板のJASに規定されているせん断強さと木破率の基準を表4に示す。以下、常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、及びスチーミング繰返し試験において、表4に示す合板のJAS基準値を満たす場合は「○」と評価し、合板のJAS基準値を満たさない場合は「×」と評価する。
Figure 0006830723
常態接着力試験では、採取した試験片について、作製したそのままの常態で引張せん断試験を実施し、最大荷重及び木破率を測定し、せん断強さ及び平均木破率を算出した。常態接着力試験の結果を表5に示す。
Figure 0006830723
スチーミング処理試験については、採取した試験片を室温の水中に2時間以上浸せきした後、120±3℃で3時間スチーミングを行い、これを室温の水中に冷めるまで浸せきし、濡れたままの状態で引張せん断試験を実施し、最大荷重及び木破率を測定し、せん断強さ及び平均木破率を算出した。スチーミング処理試験の結果を表6に示す。
Figure 0006830723
煮沸繰返し試験については、採取した試験片を沸騰水中に4時間浸せきした後、60±3℃で20時間乾燥(恒温乾燥器に入れ、器中に湿気がこもらないように乾燥する。)し、更に沸騰水中に4時間浸せきし、これを室温の水中に冷めるまで浸せきし、濡れたままの状態で引張せん断試験を実施し、最大荷重及び木破率を測定し、せん断強さ及び平均木破率を算出した。煮沸繰返し試験の結果を表7に示す。
Figure 0006830723
スチーミング繰返し試験では、採取した試験片を室温の水中に2時間浸せきした後、130±3℃で2時間スチーミングを行い、室温の流水中に1時間浸せきし、更に130±3℃で2時間スチーミングを行い、室温の水中に冷めるまで浸せきし、濡れたままの状態で引張せん断試験を行い、同様にせん断強さ及び平均木破率を算出した。スチーミング繰返し試験の結果を表8に示す。
Figure 0006830723
表5〜8に示すせん断強さの平均値をグラフにしたものを図3とし、表5〜8に示す木破率の平均値をグラフにしたものを図4とする。図3及び図4において、エラーバーは標準偏差を表す。図3中の☆マークは、合板のJASに規定されている接着程度の基準を満たしていることを示す。
表5〜8からわかるように、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比が7.0/3.0〜2.7/7.3の範囲にある接着剤を用いた実施例1〜3は、常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験において、比較例1と同様に、JAS基準値を満たしており、さらに、実施例1及び3は、スチーミング繰返し試験においても、比較例1と同様に、JAS基準値を満たす結果となった。特に、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比が、約6.9/3.1である実施例1は、全ての試験において、最も優れた木破率を示した。
(実施例4)
フェノール樹脂調製物2とリグノフェノール調製物1とを、表9に示すとおりに混合し、実施例4の接着剤を得た。
Figure 0006830723
実施例4、並びに比較例1及び3の接着剤を用いて、混合割合による接着性能を確認するため、スギ単板を接着後、試験片を採取し、合板のJASに基づく接着力試験を行った。
被着材として、含水率1%(標準偏差0.3%)、厚さ3.5mmのスギ単板を幅36cm×長さ36cmに裁断し、3枚作製した。このうち1枚のスギ単板の裏側に、比較例5で得られた接着剤を刷毛塗布方法により350g/m2で塗布した。この際、比較例1の接着剤のpHは11.4であった。接着剤を塗布した面と、2枚目のスギ単板の表側を繊維方向が直交するように向かい合わせて重ね、さらに、3枚目のスギ単板の裏側に、比較例5で得られた接着剤を同様に塗布し、2枚目の単板の裏側と繊維方向が直交するように向かい合わせたものを試験体とし、熱圧接着試験装置(高松横井工業株式会社製、FHP−H300型)を使用し、ホットプレス温度160℃、圧締圧力0.98Mpa、圧締時間は圧締時の単板厚さ1mmにつき90秒と換算し、9mm×90秒で13分30秒の圧締により試験体を作製した。作製した試験体から合板のJASに定められた引張せん断試験片を採取した。このとき、試験片の幅は25mmとし、試験片の切り込みと切り込みとの間隔は25mmとした。同様に、実施例4及び比較例3で得られた接着剤についても、スギ単板により試験体を作製し、引張せん断試験片を採取した。この際、接着剤のpHは、実施例4の接着剤が11.8、比較例3の接着剤が、12.2であった。
引張せん断試験片は、比較例1で得られた接着剤により作製した試験体から48個採取し、これを12個ずつ4つの組にグループ分けした。同様に、引張せん断試験片は、実施例4及び比較例3で得られた接着剤により作製した各試験体からも48個ずつ採取し、これを12個ずつ4つの組にグループ分けした。
1つめのグループについては常態接着力試験用、2つめのグループについては合板のJASに規定されている接着の程度を表す1類に該当するスチーミング処理試験用、3つめのグループについては同様に1類に該当する煮沸繰返し試験用、4つめのグループについては、特類に該当するスチーミング繰返し試験用とした。
上述した方法と同様に、各グループについて、常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、及びスチーミング繰返し試験を実施し、最大荷重及び木破率を測定し、せん断強さ及び平均木破率を算出した。
常態接着力試験の結果を表10に示す。
Figure 0006830723
スチーミング処理試験の結果を表11に示す。
Figure 0006830723
煮沸繰返し試験の結果を表12に示す。
Figure 0006830723
スチーミング繰返し試験の結果を表13に示す。
Figure 0006830723
表10〜13に示すせん断強さの平均値をグラフにしたものを図5とし、表10〜13に示す木破率の平均値をグラフにしたものを図6とする。図5及び図6において、エラーバーは標準偏差を表す。図5中の☆マークは、合板のJASに規定されている接着程度の基準を満たしていることを示す。
表10〜13からわかるように、フェノール樹脂とリグノフェノールとの質量比が7.0/3.0〜2.7/7.3の範囲にある接着剤を用いた実施例4においてのみ、常態接着力試験、スチーミング処理試験、煮沸繰返し試験、スチーミング繰返し試験のすべての試験でJAS基準値を満たした。また、実施例4は、すべての試験において、最も優れたせん断強さを示す結果となった。

Claims (10)

  1. フェノール樹脂と炭酸ナトリウムとを混合するフェノール樹脂混合工程と、
    リグノフェノールと硬化剤とを混合するリグノフェノール混合工程と、
    フェノール樹脂混合工程で得られた混合物とリグノフェノール混合工程で得られた混合物とを混合する混合工程
    を有し、
    フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0〜2.7/7.3であり、
    フェノール樹脂が、メチロール基を有するものであり、
    炭酸ナトリウムが、該メチロール基が反応することによって起こる縮合反応を促進するものであり、
    硬化剤が、フェノール樹脂またはリグノフェノール中のフェノール構造と反応することで、フェノール樹脂またはリグノフェノールを硬化させるものである
    接着剤の製造方法
  2. リグノフェノールの重量平均分子量が、300〜8000である
    請求項1に記載の接着剤の製造方法
  3. 硬化剤の含有量が、リグノフェノール100質量部に対し、17〜84質量部である
    請求項1又は2に記載の接着剤の製造方法
  4. 硬化剤がアルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤の製造方法
  5. 加熱工程を含む製造方法を除く、
    請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤の製造方法で製造された接着剤を用いて木材と被着体を接着させる木製品の製造方法であって、木材と被着体を接着させる前に、接着剤に加熱処理が行われていないことを特徴とする、木製品の製造方法。
  7. フェノール樹脂と炭酸ナトリウムとを含むフェノール樹脂混合物と、
    リグノフェノールと硬化剤とを含むリグノフェノール混合物と
    を混合した接着剤であって、
    フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0〜2.7/7.3であり、
    フェノール樹脂が、メチロール基を有するものであり、
    炭酸ナトリウムが、該メチロール基が反応することによって起こる縮合反応を促進するものであり、
    硬化剤が、フェノール樹脂またはリグノフェノール中のフェノール構造と反応することで、フェノール樹脂またはリグノフェノールを硬化させるものである、
    接着剤。
  8. 請求項に記載の接着剤を用いて木材と被着体を接着させて得られる木製品。
  9. フェノール樹脂と硬化促進剤とを混合するフェノール樹脂混合工程と、
    リグノフェノールと硬化剤とを混合するリグノフェノール混合工程と、
    フェノール樹脂混合工程で得られた混合物とリグノフェノール混合工程で得られた混合物とを混合する混合工程
    を有し、
    フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0〜2.7/7.3であり、
    フェノール樹脂が、メチロール基を有するものであり、
    硬化促進剤が、該メチロール基が反応することによって起こる縮合反応を促進するものであり、
    硬化剤が、フェノール樹脂またはリグノフェノール中のフェノール構造と反応することで、フェノール樹脂またはリグノフェノールを硬化させるものである、
    接着剤の製造方法
  10. フェノール樹脂と硬化促進剤とを含むフェノール樹脂混合物と、
    リグノフェノールと硬化剤とを含むリグノフェノール混合物と
    を混合した接着剤であって、
    フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0〜2.7/7.3であり、
    フェノール樹脂が、メチロール基を有するものであり、
    硬化促進剤が、該メチロール基が反応することによって起こる縮合反応を促進するものであり、
    硬化剤が、フェノール樹脂またはリグノフェノール中のフェノール構造と反応することで、フェノール樹脂またはリグノフェノールを硬化させるものである、
    接着剤。
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