JP2016030824A - リグノフェノール由来の接着剤及びこれを用いた木製品 - Google Patents

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茂生 中山
Shigeo Nakayama
茂生 中山
崇志 後藤
Takashi Goto
崇志 後藤
栄之助 藤本
Einosuke Fujimoto
栄之助 藤本
清明 岡田
Kiyoaki Okada
清明 岡田
裕彦 安井
Hirohiko Yasui
裕彦 安井
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Abstract

【課題】
脱化石資源化を目指して、再生可能な植物資源に由来の接着剤を提供することを目的とする。特に、植物資源に由来するリグノフェノールを用い、事前の樹脂化の工程を省くことで、製造工程の簡略化とコストダウンを図りながら、優れた接着性能を有する接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
リグノフェノールがアルカリ性水溶液に溶解し、リグノフェノール及びアルカリ性水溶液の合計100質量部に対してリグノフェノール25質量部以上を含み、pHが10.3以上である、接着剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リグノフェノール由来の接着剤、及び、これを用いて得られる木製品に関する。
現在、合板、パーティクルボードまたは構造用集成材などの製造で使用されている接着剤は、石油由来の合成樹脂接着剤である。しかし、原料となる石油の可採年数は42年と言われており、近い将来、枯渇してしまうと考えられている有限な資源である。このような背景から、持続可能な社会システムの構築を目指した脱化石資源化が様々な分野で検討されており、木材などの接着においても脱化石資源化を目指して、石油を原料とする接着剤から再生可能な植物資源に由来する接着剤への転換が望まれている。
木材や樹皮中の成分であるリグニンやタンニンなどのポリフェノールを分離し、ホルムアルデヒドと反応させ接着剤を製造する研究が古くから行われているが、これらの単独系では実用的な接着剤を製造することは我が国では成功していない。また、デンプン、デキストリン、小麦粉または米糊などのデンプン系接着剤は、天然系接着剤であり、段ボール製造用などとして利用されているが、耐水性に劣ることが知られている(非特許文献1参照)。
さらに、合板やパーティクルボードの製造に用いられるフェノール樹脂は、アルカリ性レゾール樹脂であり、または構造用集成材の製造に用いられるレゾルシノール樹脂接着剤は、主剤と硬化剤からなり、使用にあたって混合するが、主剤はノボラックタイプの樹脂であり、ともに事前の樹脂化の工程が必要となる(例えば、非特許文献1参照)。
このような中、リグノフェノール誘導体若しくは変性リグノフェノール誘導体、アルカリ性水溶液に溶解する合成樹脂系接着剤およびアルカリ性水溶液からなる樹脂組成物が、接着剤として有用であることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−7622号公報
公益社団法人日本木材加工技術協会、「木材の接着・接着剤」、第1刷、産調出版株式会社、1996年2月23日、p.114−249
本発明においては、上記のような課題を解決するためになされたものであり、脱化石資源化を目指して、再生可能な植物資源に由来する接着剤を提供することを目的とする。特に植物資源に由来するリグノフェノールを用い、事前の樹脂化の工程を省くことで、製造工程の簡略化とコストダウンを図りながら、優れた接着性能を有する接着剤を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
(1)リグノフェノールがアルカリ性水溶液に溶解し、リグノフェノール及びアルカリ性水溶液の合計100質量部に対してリグノフェノール25質量部以上を含み、pHが10.3以上である、接着剤。
(2)さらに硬化剤を含有する、前記(1)に記載の接着剤。
(3)硬化剤がアルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物である、前記(2)に記載の接着剤。
(4)リグノフェノールの重量平均分子量が、300〜8000である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の接着剤。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の接着剤を用いて木材と被着体を接着させて得られる木製品。
(6)前記(2)〜(4)のいずれかに記載の接着剤を用いて木材と被着体を接着させ、100〜200℃に加熱し、0.29MPa〜9.81MPaで圧締して得られる木製品。
(7)リグノフェノールをアルカリ性水溶液に溶解させ、硬化剤を添加することで、pH10.3以上の接着剤を調整し、調整した接着剤を用いて木材と被着体を接着させる木製品の製造方法であって、木材と被着体を接着させる前に、接着剤に加熱処理が行われていないことを特徴とする、木製品の製造方法。
本発明によれば、脱化石資源化を目指して、再生可能な植物資源に由来する接着剤を提供することが可能である。特に、植物資源に由来するリグノフェノールを用い、事前の樹脂化の工程を省くことで、製造工程の簡略化とコストダウンを図りながら、優れた接着性能を有する接着剤が提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明による接着剤は、リグノフェノールをアルカリ性水溶液に溶解させることで得られる。リグノフェノール及びアルカリ性水溶液の合計100質量部に対してリグノフェノールを25質量部以上含み、25〜50質量部含むことがより好ましく、30〜35質量部含むことがさらに好ましい。リグノフェノールの含有量が50質量部を超えると、接着剤を混合撹拌することが困難となり、実用上、接着剤の塗布に支障がでる傾向にある。また、リグノフェノールの含有量が25質量部未満となると、接着性能が著しく低下する傾向にある。
リグノフェノールは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、植物資源である木材資源に酸とフェノール誘導体を添加し、木材資源中のセルロース、ヘミセルロースを加水分解させ、また、木材資源中のリグニンをフェノール誘導体により安定化してリグノフェノールを製造する。木材資源に酸とフェノール誘導体を添加する方法としては、木材資源にフェノール誘導体を添加して含浸させた後、酸を添加し、系の粘度が低下したら、後述する疎水性の溶剤を添加し、さらに撹拌を行う方法が挙げられる。このようにすることで、セルロース及びヘミセルロース由来の糖成分と硫酸からなる層と、リグノフェノール、フェノール誘導体及び疎水性の溶剤からなる層に分離することが可能となる。
本発明において使用する木材資源は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンなどから構成されるものであり、例えば、木粉、木質チップなどを挙げることができる。また、使用する木材としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用することができる。
木材資源に添加する酸としては、無機酸、有機酸のいずれも用いることが可能である。酸は、セルロース及びヘミセルロースを加水分解するための触媒としてだけでなく、木材資源を構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの結合を解く役割も果たす。無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸などのいずれかを使用することができる。酸の濃度は、60〜90%が望ましい。酸の濃度が60%より低いと、セルロースとリグニンの解緩反応が進行せず、酸の濃度が90%より高いとリグニン及び添加剤であるp−クレゾールのベンゼン骨格がスルフォン化されやすくなり、不具合が生じる傾向にある。酸の中では、60%以上の硫酸が好ましい。有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。
木材資源に添加する酸の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは1000〜2000質量部である。酸の添加量が少ないと、木材原料は膨潤するだけで液状にならず、撹拌が困難になり、新しいタイプの押出混練機が必要となる。また、酸の添加量が多すぎると、酸の回収系への負担が増え、経済性が損なわれる。
リグニンを構成するp−クマリルアルコール、シナピルアルコール、コニフェリルアルコール中のフェニルプロパン単位のα炭素は化学的に不安定であるが、フェノール誘導体を添加することで、成形体などの種々の用途に活用できるリグノフェノールを得ることができる。ここで、リグノフェノールとは、リグニン中のフェニルプロパン単位のα炭素にフェノール誘導体が結合したジフェニルプロパン単位を含む重合体をいう。例えば、リグニンを構成するp−クマリルアルコール、シナピルアルコール、コニフェリルアルコールのうち、式(1):
Figure 2016030824
で表されるコニフェリルアルコールに、フェノール誘導体であるp−クレゾールでマスキングをした場合、式(2):
Figure 2016030824
で表される化合物が形成される。p−クマリルアルコール、シナピルアルコールについても、同様にフェノール誘導体が結合して、α炭素を安定化させる。
フェノール誘導体としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体または3価のフェノール誘導体などが挙げられる。1価のフェノール誘導体としては、フェノール、ナフトール、アントロール、アントロキオールなどが挙げられる。これらの1価のフェノール誘導体はさらに1以上の置換基を有していてもよい。2価のフェノール誘導体としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどが挙げられる。これらの2価のフェノール誘導体はさらに1以上の置換基を有していてもよい。3価のフェノール誘導体としては、ピロガロールなどが挙げられる。ピロガロールはさらに1以上の置換基を有していてもよい。これらの1価から3価のフェノール誘導体が有する置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよい。電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリール基(フェニル基など)、水酸基などが挙げられる。また、リグニンを構成するフェニルプロパン単位のα炭素との反応性の点から、フェノール誘導体上のフェノール性水酸基の2つあるオルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。
フェノール誘導体の好ましい例としては、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられ、中でもp−クレゾールが好ましい。フェノール誘導体の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは500〜2000質量部である。フェノール誘導体は、リグニンのα−炭素をマスキングするのに必要な化学量論的な量以上を添加しなければならず、また相分離に必要な抽出剤としての量も加味して添加しなければならない。
木材資源に酸とフェノール誘導体を添加することで、主に酸とセルロース及びヘミセルロース由来の糖液とから構成される水層と、リグノフェノールとフェノール誘導体とから構成される油層に分離させるが、より短時間で二層に分離させるために疎水性の溶剤をさらに添加することが好ましい。分離された油層は、濾過機にて固液分離され、固体のリグノフェノールと、液体のp−クレゾールと疎水性溶剤に分離される。固液分離はフィルタープレス等を用いて行うことができ、リグノフェノールはケーク状で得られる。得られたリグノフェノールは、乾燥機にて乾燥される。
本発明で使用するリグノフェノールの重量平均分子量は、特に限定されないが、300〜8000であることが好ましく、500〜6000であることがより好ましく、1800〜4000であることがさらに好ましい。リグノフェノールの重量平均分子量が8000を超えると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する傾向にある。また、リグノフェノールの重量平均分子量が300未満であると、得られる接着剤の接着性能が低下する傾向にある。リグノフェノールの分子量がこの範囲であることで、木材と被着体を接着させる前に接着剤を樹脂化するための加熱処理を行わなくても、接着時に加熱をするだけで、優れた接着性を発現しやすくなる。なお、本発明における重量平均分子量は、測定装置(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を使用し、リグノフェノールをテトラヒドロフランに溶解させ、濾過し、その濾液をGPCで測定した。
本発明で使用するアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム水溶液が、リグノフェノールの溶解性に優れており、好ましい。これらのアルカリ性水溶液は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用するアルカリ性水溶液の濃度は、0.5〜4mol/Lに調整することが好ましく、1〜3mol/Lに調整することがより好ましく、1〜2mol/Lに調整することがさらに好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が4mol/Lを超えると、ゲル化により、塗布が困難となる傾向にある。また、アルカリ性水溶液の濃度が0.5mol/L未満であると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する傾向にある。なお、ここで、アルカリ性水溶液の濃度とは、接着剤中の水1Lに対する、塩基性の塩のモル濃度をいう。
本発明の接着剤は、硬化剤を含有することが好ましい。本発明の接着剤に使用される硬化剤としては、アルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物が挙げられる。アルデヒドとしては、特に限定されず、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。硬化剤として、アルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物を用いることにより、リグノフェノールにおけるフェノール構造と、アルデヒドが硬化反応を行い、接着性能が向上する。接着剤を使用する際の作業者の環境、安全の点で、硬化剤として、アルデヒドを生成する化合物を用いることが好ましい。
また、硬化剤には、樹脂の性質を改善するため、或いは、粘度調整をするために充填剤を添加してもよい。充填剤は、不活性な有機物系と無機鉱物質系に分類され、通常、樹脂に対して5〜20%添加されている。有機物系としては、ヤシ殻粉、クルミ粉または木粉などが挙げられ、無機鉱物質系としては、トノコ、タルク、胡粉、軽石粉、硅砂、チタン白、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
本発明で使用される、硬化剤としては、例えば、レゾルシノール系接着剤用硬化剤として用いられるホルムアルデヒドの二量体又は三量体が含まれる硬化剤、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。中でも、レゾルシノール系接着剤用硬化剤が、常温接着が可能であり、さらに、接着耐久性に優れている点で好ましい。これらの硬化剤は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化剤の添加量は、リグノフェノール100質量部に対し、17〜84質量部であることが好ましく、34〜67質量部であることがより好ましく、45〜55質量部であることがさらに好ましい。硬化剤の添加量がリグノフェノール100質量部に対し、84質量部を超えると、硬化剤を添加することによる接着性の向上効果は得られなくなる傾向にある。また、硬化剤の添加量が17質量部未満であると、十分な接着耐久性を有する接着剤が得られず、乾燥と湿潤が繰り返される条件下では、接着層のはく離が生じる可能性がある。
本発明の接着剤のpHは、10.3〜13に調整することが好ましく、10.4〜12.5に調整することがより好ましく、11.6〜11.9に調整することがさらに好ましい。接着剤のpHが13を超えると、接着剤の取り扱いが困難となったり、木材自体の脆弱化、あるいは変色を招き、接着性の低下、汚染の原因となる傾向にある。また、pHが10.3未満であると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下し、接着剤として利用することが困難となる傾向にある。
また、本発明の接着剤は、必要に応じて、粘度調整剤、酸化防止剤、顔料、染料などの添加剤を含有してもよい。本発明で使用する粘度調整剤としては、小麦粉、大麦粉、大豆粉、でんぷん粉などが挙げられる。中でも、小麦粉が糊液粘度の調整が容易で、微粉化がしやすく、安価かつ大量供給が可能の点で好ましい。これらの粘度調整剤は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘度調整剤の添加量は、リグノフェノール100質量部に対し、3〜33質量部であることが好ましく、7〜23質量部であることがより好ましく、10〜17質量部であることがさらに好ましい。粘度調整剤の添加量が、リグノフェノール100質量部に対し33質量部を超えると、接着剤の粘度が高くなりすぎて、接着剤を塗布する際の作業性に支障がでたり、接着性が低下したり、耐水性が低下する傾向にある。また、粘度調整剤の添加量が7質量部未満であると、圧締の際、接着層から滲みだしたり、木材中への浸透が過度になり、接着不良となる傾向にある。
さらに、本発明の木製品は、得られた接着剤を木材に塗布し、被着体と重ね合わせることで得られる。接着剤を木材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗布、スプレー塗布などが挙げられる。接着剤の塗布量は特に限定されないが、通常、木材の片面に塗布する場合は、150〜250g/mであることが好ましく、また、木材の両面に塗布する場合は、200〜350g/mであることが好ましいが、塗布から圧締までの時間が長い時、あるいは多孔質の樹種を接着する時は塗布量を多くし、反対の条件の時は少なくするなどの多少の調整は可能である。塗布量が多いと、圧締時にはみ出してしまう結果となり、不経済であるばかりでなく、接着層が厚くなり凝集力の低下をきたす傾向にあり、塗布量が少ないと、連続的で一様な膜を形成できなくなり、接着が不十分で製品不良の原因となる傾向にある。
接着剤を塗布した木材を接着する方法としては、例えば、ホットプレスによる熱圧接着方法、高周波による高周波加熱接着方法、コールドプレスによる常温接着方法などが挙げられる。例えば、幅はぎ板を製造する場合においては、高周波加熱接着方法が、木材を接着するために必要な時間が短いため、エネルギーコストが低く、且つ、生産性を高めることができる点で好ましい。
接着剤を塗布した木材を被着体と重ね合わせ、ホットプレスなどにより熱圧接着させるための加熱温度は、100〜200℃であることが好ましく、140℃〜160℃であることがより好ましい。加熱温度が200℃より高いと、接着剤が分解し、接着性能が低下したり、製品に狂いやそり、割れ、変色を生じる傾向にある。また、加熱温度が100℃未満であると、十分な接着力を得ることができず、接着層にはく離が生じる傾向にある。また、ホットプレスなどにより熱圧接着させるための圧締圧力は、0.29〜9.81MPaであることが好ましく、例えば、集成材を製造する場合においては、0.78〜1.47MPaであることがより好ましく、合板を製造する場合においては、0.69〜0.98MPaであることがより好ましい。例えば、集成材を製造する場合において、圧締圧力が1.47MPaを超えると、接着剤が連続した膜とならず、接着不良となる傾向にある。また、圧締圧力が0.78MPa未満であると、接着層が厚くなり、十分な接着力を得ることができなくなる傾向にある。ホットプレスなどにより熱圧接着させるための加熱温度及び圧締圧力は、被着体の密度により調整することが望ましい。
本発明の木製品の製造方法は、リグノフェノールをアルカリ性水溶液に溶解させ、さらに硬化剤を添加して、pHを10.3以上に調整し、得られた接着剤を用いて木材と被着体とを接着させる方法である。リグノフェノールは比較的分子量が大きく、また、リグノフェノールと硬化剤(特にアルデヒド類)との反応性も高いため、木材と被着体を接着させる前に加熱処理を行い、接着剤を樹脂化する工程を経なくても、接着時に加熱をすることで優れた接着強度を有する木製品を得ることができる。
本発明の木製品は、前記接着剤を介して木材と被着体を重ね合わせて得られる。接着剤が適用される被着体としては、木材(つまり、木材と木材を接着する)、プラスチック、金属、紙などが挙げられる。ここで、本発明の木製品の作製に用いられる木材は、スギ、ヒノキ、カラマツ、ケヤキ、ミズナラなどの樹木を切り出して得られる材木だけでなく、集成材、合板、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなどの材木を用いて得られる木質材料などが含まれる。
また、本発明の接着剤は、集成材、合板、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなどを作製する際の接着剤として用いることもできる。よって、本発明の木製品としては、前記接着剤を用いた、集成材、合板、OSB、パーティクルボード、ファイバーボードなども含まれる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
リグノフェノールは、島根県隠岐の島町布施地区にあるリグノフェノール製造実証プラントにおいて、スギ木粉試料から相分離系変換システムにより得られたものを用いた。得られたリグノフェノールを1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)に溶解させ主剤とし、撹拌することにより接着剤を得た。水酸化ナトリウム水溶液及びリグノフェノールの混合割合は、質量比7:3である。得られた接着剤の組成を表1に示す。接着剤のpHは11.8であった。
(実施例2)
接着剤を得る際に、さらに、レゾルシノール系接着剤用硬化剤(株式会社オーシカ製、D用硬化剤、ホルムアルデヒドの三量体とヤシ殻を含む)を添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、接着剤を得た。水酸化ナトリウム水溶液、リグノフェノール及び硬化剤の混合割合は、質量比7:3:1.5である。得られた接着剤の組成を表1に示す。接着剤のpHは11.5であった。
(熱圧接着試験)
実施例1及び2で得られた接着剤を用い、以下に示す熱圧接着方法により接着試験を行った。被着材として、含水率15%以下のスギ材を幅130mm×厚さ5mm×長さ200mmに裁断したスギ辺材板を2枚作製した。次に、一方のスギ辺材板の裏側に、実施例1及び2で得られた接着剤を刷毛塗布方法により250g/mで塗布した。接着剤を塗布した面と、他方のスギ辺板材の裏側を向かい合わせたものを試験体とし、熱圧接着試験装置(高松横井工業株式会社製、FHP−H300型)を使用し、ホットプレス温度200℃、圧締時間17分、圧締圧力0.29MPaの条件により熱圧接着試験を行った。それぞれの実施例について2個の試験体にて、熱圧接着試験を行い、下記の基準で評価を行った。試験結果を表1に示す。
○:2体ともに、接着した
△:1体は完全にはく離し、もう1体は半分はく離
×:2体ともに、完全にはく離した
(含水率試験)
前記含水率は、集成材の日本農林規格(以下、JAS)に定められた以下に示す方法により測定した。まず、適当な大きさの木材片の質量を測定し、これを試験体の乾燥前の質量とした。次に、試験体を103±2℃の乾燥器中で乾燥させ、6時間以上の間隔をおいて測定したときの質量差が試験体質量の0.1%以下となったときの質量を測定し、これを全乾質量とし、下記式(1)により、含水率を算出した。
Figure 2016030824
さらに、前記熱圧接着試験において、○と評価した実施例1及び2で得られた接着剤について、造作用集成材のJASに定められた以下に示す方法により、浸せきはく離試験を行った。なお、JASに定められた集成材とは、ひき板、小角材などを、繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着したものを指す。さらに、集成材は、用途に応じて、造作用集成材と構造用集成材に分類される。造作用集成材とは、集成材のうち、素地のままのもの、素地の美観を表したもの、または、これらの表面に加工若しくは塗装を施したものであり、主として構造物などの内部造作に用いられるものを指す。
(浸せきはく離試験)
実施例1及び2で得られた接着剤を用い、前記熱圧接着試験と同様の操作方法により、試験体を作製した。試験体を室温10〜25℃の水中に6時間浸せきさせた後、40±3℃の恒温乾燥器中に入れ、恒温乾燥器中の湿気がこもらないようにして18時間乾燥させた。乾燥後、スギ辺材板の幅方向における接着部分のうち、はく離した部分の長さを測定し、その合計を算出した。これをはく離部分の長さの合計とし、下記式(2)により、水への浸せきを行う前のスギ辺材板の幅方向における接着層の長さ(130mm×2辺)で除することにより、はく離率を算出した。それぞれの実施例について2個の試験体にて、はく離率を算出し、平均値をとった。試験結果を表1に示す。
Figure 2016030824
なお、算出したはく離率は、下記基準で評価した。
○:はく離率10%以下もしくは試験体2個のうち、1個ははく離率0%
×:はく離率10%超えかつ試験体2個のうち、2個ともはく離が認められるもの
さらに、前記浸せきはく離試験において、○と評価した実施例1及び2で得られた接着剤について、構造用集成材のJASに定められた以下に示す方法により、煮沸はく離試験を行った。なお、構造用集成材とは、集成材のうち、所要の耐力を目的として等級区分したひき板を、繊維方向を互いに平行にして積層接着したものであり、主として構造物の耐力部材として用いられるものを指す。
(煮沸はく離試験)
実施例1及び2で得られた接着剤を用い、前記熱圧接着試験と同様の操作方法により、試験体を作製した。試験体を沸騰水中に4時間浸せきさせた後、さらに室温10〜25℃の水中に1時間浸せきさせ、その後、70±3℃の恒温乾燥器中に入れ、恒温乾燥器中の湿気がこもらないようにして、試験体の質量が試験前の質量の100〜110%の範囲となるように乾燥させた。乾燥後、スギ辺材板の幅方向における接着部分のうち、はく離した部分の長さを測定し、その合計を算出した。これをはく離部分の長さの合計とし、下記式(2)により、沸騰水への浸せきを行う前のスギ辺材板の幅方向における接着層の長さ(130mm×2辺)で除することにより、はく離率を算出した。それぞれの実施例について4個の試験体にて、はく離率を算出し、平均値をとった。試験結果を表1に示す。
Figure 2016030824
なお、算出したはく離率は、下記基準で評価した。
○:はく離率5%以下もしくは試験体4個のうち、1個以上ははく離率0%
×:はく離率5%超えかつ試験体4個のうち、4個ともはく離が認められるもの
Figure 2016030824
実施例1と実施例2の比較から、硬化剤を含有させることが、より好ましいことがわかる。
(ブロックせん断試験)
実施例2で得られた接着剤について試験体を作製し、構造用集成材のJASに定められた方法により、ブロックせん断試験を行った。被着材として、含水率15%以下のスギ材を幅75mm×厚さ12mm×長さ900mmに裁断したスギ辺材板を2枚作製した。次に、一方のスギ辺材板の裏側に、実施例2で得られた接着剤を刷毛塗布方法により250g/mで塗布した。接着剤を塗布した面と、他方のスギ辺材板の裏側を向かい合わせたものを試験体とし、前記熱圧接着試験装置を使用し、試験体を作製した。なお、試験体は、ホットプレスによる熱圧接着の温度条件を80℃、120℃、140℃、160℃、200℃と順次変えた試験体及びコールドプレスによる常温接着25℃にて試験体を作製した。なお、ホットプレス温度80℃における試験体については、ホットプレス直後に試験体がはく離した。
このとき、圧締圧力は熱圧、常温ともに0.98MPaとし、圧締時間は熱圧では35分、常温では24時間の条件とした。試験体を作製後、各試験体から構造用集成材のJASに定められたブロック試験片を採取し、試験片がせん断したときの荷重が、試験機の容量の15〜85%に該当する試験機(ミネベア株式会社製、AL−100kNB型)及び試験片のせん断面と荷重軸が平行であって、試験片に回転モーメントなどが生じないように設計されたブロックせん断試験装置(ミネベア株式会社製、JASせん断試験治具)を使用し、約15.7MPa/分の荷重速度の条件で試験片をせん断させた。
(せん断強さの算出)
せん断強さは、下記式(3)により算出した。結果を表2に示す。
Figure 2016030824
(木破率の算出)
木破率は、点格子板を使用し、以下のようにして算出した。ブロックせん断試験にて、せん断させた試験片のせん断面の上に、144個の点を有する点格子板を重ね、試験片が木破している部分と重なり合っている点の数を数え、下記式(4)により、木破率を算出した。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表2に示す。
Figure 2016030824
(比較例1)
レゾルシノール系接着剤(株式会社オーシカ製、ディアノール D−40)100質量部に対し、レゾルシノール系接着剤用硬化剤(株式会社オーシカ製、D用硬化剤)15質量部を添加して、接着剤を得た。
比較例1で得られた接着剤について、実施例2と同様にして、試験体を作製し、各試験体からブロックせん断試験片を採取し、ブロックせん断試験を行い、せん断強さ及び木破率を算出した。ただし、比較例1で得られた接着剤については、コールドプレスによる常温接着20℃のみにて試験体を作製した。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表2に示す。
Figure 2016030824
表2からわかるように、実施例2で得られた接着剤は、ホットプレス温度140℃以上で、せん断強さ及び木破率ともにJAS基準値を満たし、比較例1で得られた接着剤と同程度の接着性能が確認できた。特に、ホットプレス温度160℃において、最も優れたせん断強さ及び木破率を示した。
そこで、実施例2で得られた接着剤について、ホットプレス温度160℃、圧締圧力0.98MPa、圧締時間35分の条件とする以外は、前記熱圧接着試験と同様の操作方法により、試験体を作製し、各試験体から構造用集成材のJASに定められたはくり試験片を採取し、浸せきはく離試験及び煮沸はく離試験を行った。なお、算出したはく離率は、下記JAS基準値で評価した。浸せきはく離試験及び煮沸はく離試験を5個の試験体でそれぞれ行い、はく離率を算出した。浸せきはく離試験の結果を表3に示し、また、煮沸はく離試験の結果を表4に示す。
○:はく離率5%以下
×:はく離率5%超え
Figure 2016030824
Figure 2016030824
表3からわかるように、実施例2で得られた接着剤をホットプレス温度160℃において熱圧接着させた試験体は、5体すべてにはく離が発生しなかった。また、表4からわかるように、5体中4体の試験片がJAS基準値を満たすことが確認できた。したがって、スギ木粉試料から調製したリグノフェノールを利用した接着剤を用いて木製品を製造する場合にあっては、160℃のホットプレス温度で熱圧接着させることが、より好ましいことがわかる。
さらに、得られた接着剤を被着材に塗布する作業において、接着剤を、作業に適した粘度に調整するため、以下に示す実施例3〜5により接着剤を得た。
(実施例3)
小麦粉(日清製粉株式会社神戸工場製、商品名日清フラワー薄力小麦粉)10質量部をさらに添加した以外は、実施例2と同様の操作を行い、接着剤を得た。接着剤のpHは11.6であった。得られた接着剤の組成を表5に示す。
(実施例4)
小麦粉の添加量を3質量部に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、接着剤を得た。接着剤のpHは11.6であった。得られた接着剤の組成を表5に示す。
(実施例5)
小麦粉の添加量を1質量部に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、接着剤を得た。接着剤のpHは11.6であった。得られた接着剤の組成を表5に示す。
Figure 2016030824
実施例3〜5で得られた接着剤について、実施例2で得られた接着剤の熱圧接着試験と同様の操作(ホットプレス温度160℃、圧締時間35分、圧締圧力0.98MPa)により試験体を作製し、各試験体からブロックせん断試験片を採取し、ブロックせん断試験を行った。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表6に示す。
Figure 2016030824
表6からわかるように、アルカリ性水溶液にリグノフェノールを溶解させた溶液に対し、小麦粉の添加量を10質量部、3質量部とした実施例3及び4で得られた接着剤は、せん断強さ及び木破率ともにJAS基準値を十分に満たすことを確認できた。ただし、実施例3で得られた接着剤は、粘度が高くなり、刷毛塗布が若干、難しくなる。一方、小麦粉の添加量を1質量部とした実施例5で得られた接着剤は、せん断強さがJAS基準値に近い。小麦粉3質量部を添加することがより望ましく、さらに、実施例4で得られた接着剤は、実施例5で得られた接着剤に比べ、接着性能に優れていることがわかる。
さらに、実施例4で得られた接着剤について、構造用集成材のJASに定められた以下に示す方法により、ホルムアルデヒド放散量試験を行った。
(ホルムアルデヒド放散量試験)
実施例4で得られた接着剤を用い、実施例2で得られた接着剤の熱圧接着試験と同様の操作(ホットプレス温度160℃、圧締時間35分、圧締圧力0.98MPa)により試験体を作製した。熱圧接着後の試験体の長さ方向の端部から5cm以上離れた部分より、断面寸法をそのままにして、表面積が450cmとなるようにして、2個の試験片を採取した。この試験片をアクリル樹脂製で内容量が約40Lの試験容器中に設置し、20℃±1℃で24時間−0、+5分放置して、放散するホルムアルデヒドを試験容器の底部に置いた20mLの蒸留水中に吸収させて試料溶液とした。併せて、試験片を入れない状態の試験容器中に設置した蒸留水をバックグラウンド溶液とした。この試料溶液とバックグラウンド溶液のホルムアルデヒド濃度の測定を、アセチルアセトン吸光光度法によって行い、ホルムアルデヒド量と吸光度との関係線を作成した。この関係線をもとに、試験片のホルムアルデヒド放散量を求めた。試験結果を表7に示す。
Figure 2016030824
表7からわかるように、ホルムアルデヒド放散量は、JAS基準値のF☆☆☆☆レベルであり、実施例4で得られた接着剤を用いて木製品を製造する場合であっても、その使用に制限が設けられないものと判断できる。
さらに、硬化剤の好ましい添加量を検討するため、以下に示す実施例6及び7により接着剤を得た。
(実施例6)
レゾルシノール系接着剤用硬化剤の添加量を10質量部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、接着剤を得た。接着剤のpHは11.7であった。接着剤の組成を表8に示す。
(実施例7)
さらに、レゾルシノール系接着剤用硬化剤の添加量を5質量部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、接着剤を得た。接着剤のpHは11.8であった。接着剤の組成を表8に示す。
Figure 2016030824
実施例4、6及び7で得られた接着剤について、被着材としてクロマツ材を用いたこと以外は、実施例2で得られた接着剤の熱圧接着試験と同様の操作(ホットプレス温度160℃、圧締時間35分、圧締圧力0.98MPa)により試験体を作製し、各試験体からブロックせん断試験片を採取し、ブロックせん断試験を行った。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表9に示す。
Figure 2016030824
表9からわかるように、アルカリ性水溶液にリグノフェノールを溶解させた溶液に対し、硬化剤の添加量を15質量部とした実施例4で得られた接着剤は、せん断強さ及び木破率ともにJAS基準値を十分に満たすことを確認できた。
さらに、リグノフェノールを溶解する水酸化ナトリウム水溶液の好ましい濃度を検討するため、以下に示す比較例2により接着剤を得た。
(比較例2)
1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、接着剤を得た。得られた接着剤の組成及び水酸化ナトリウム水溶液に対するリグノフェノールの溶解性の結果を表10に示す。
Figure 2016030824
表10に示したように、リグノフェノールは、1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液には完全に溶解した一方、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液には完全に溶解せず、接着剤の混合撹拌が困難となった。
さらに、本発明者らは、アルカリ性水溶液に対するリグノフェノールの好ましい含有量を検討するため、以下に示す比較例3により接着剤を得た。
(比較例3)
リグノフェノールを20質量部に変更し、さらに、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を80質量部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、接着剤を得た。水酸化ナトリウム水溶液、リグノフェノール、硬化剤及び小麦粉の混合割合は、質量比8:2:1.5:0.3である。得られた接着剤の組成を表11に示す。
Figure 2016030824
比較例3で得られた接着剤について、実施例2で得られた接着剤の熱圧接着試験と同様の操作(ホットプレス温度160℃、圧締時間35分、圧締圧力0.98MPa)により試験体を作製し、各試験体からブロックせん断試験片を採取し、ブロックせん断試験を行った。なお、被着材として、スギ材の他にクロマツ材を用い、それぞれの試験体を作製した。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表12に示す。
Figure 2016030824
表12からわかるように、リグノフェノールとアルカリ性水溶液の合計100質量部に対し、リグノフェノール20質量部を含有させて得られた接着剤は、スギ材及びクロマツ材ともに、せん断強さがJAS基準値を下回り、さらに、クロマツ材においては、木破率もJAS基準値を下回ることを確認できた。したがって、リグノフェノールの含有量が20質量部では、接着剤中のリグノフェノールの含有割合が少なく、得られる接着剤は、十分な接着強度が得られない。このような接着剤は、高い接着強度が比較的要求されない造作用集成材、テーブル天板などの接着に利用することが可能である。
さらに、本発明者らは、高周波加熱接着による接着性能を検討するため、実施例4で得られた接着剤を用い、以下に示す高周波加熱接着方法により接着を行った。
(高周波加熱接着)
被着体として、含水率15%以下のスギ材を幅30mm×厚さ17mm×長さ950mmに裁断したスギ平割を2枚作製した。次に、一方のスギ平割の材幅面に、実施例4で得られた接着剤を刷毛塗布方法により250g/m塗布した。接着剤を塗布した面と、他方のスギ平割の材幅面を向かい合わせた試験体を、高周波木工接着機(山本ビニター株式会社製、MWY−8HL)の定盤上の捨て板間に設置し、高周波出力8.0kW、圧締圧力0.78MPaの条件により高周波加熱接着させた。なお、試験体は、高周波加熱時間を30秒、60秒、90秒、120秒、300秒及び420秒の6条件とし、それぞれの試験体からブロックせん断試験片を採取し、ブロックせん断試験を行った。せん断強さ及び木破率の平均値と標準偏差を表13に示す。
Figure 2016030824
表13からわかるように、実施例4で得られた接着剤は、高周波加熱時間30〜120秒では、せん断強さ及び木破率ともにJAS基準値を下回り、接着性能が低下することを確認できた。一方、高周波加熱時間を300秒、420秒と長くするにしたがって、せん断強さ及び木破率ともにJAS基準値を上回り、接着性能が向上することを確認できた。
高周波加熱による接着方法は、7分で8.82N/mmのせん断強さの木製品が得られることから、幅はぎ板のような木製品を製造する場合では、短時間で接着させることができるため、生産性に優れることがわかる。
(実施例8)
小麦粉(日清製粉株式会社神戸工場製、商品名日清フラワー薄力小麦粉)3質量部をさらに添加し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、接着剤を得た。リグノフェノールは、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液には完全に溶解し、得られた接着剤のpHは10.4であった。実施例8で得られた接着剤について、被着材としてクロマツ材を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、熱圧接着試験を行ったところ、クロマツ材は剥離することなく、良好に接着した。

Claims (7)

  1. リグノフェノールがアルカリ性水溶液に溶解し、リグノフェノール及びアルカリ性水溶液の合計100質量部に対してリグノフェノール25質量部以上を含み、pHが10.3以上である、接着剤。
  2. さらに硬化剤を含有する、請求項1に記載の接着剤。
  3. 硬化剤がアルデヒド、又は、アルデヒドを生成する化合物である、請求項2に記載の接着剤。
  4. リグノフェノールの重量平均分子量が、300〜8000である請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤を用いて木材と被着体を接着させて得られる木製品。
  6. 請求項2〜4のいずれかに記載の接着剤を用いて木材と被着体を接着させ、100〜200℃に加熱し、0.29MPa〜9.81MPaで圧締して得られる木製品。
  7. リグノフェノールをアルカリ性水溶液に溶解させ、硬化剤を添加することで、pH10.3以上の接着剤を調整し、調整した接着剤を用いて木材と被着体を接着させる木製品の製造方法であって、木材と被着体を接着させる前に、接着剤に加熱処理が行われていないことを特徴とする、木製品の製造方法。
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