JP2004204041A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期使用での異物混入による、廃家電製品から回収したポリプロピレン樹脂の物性低下に際して、機械物性、特に剛性を回復させ、マテリアルリサイクルを可能にするための方法および再生ポリプロピレン樹脂を提供する。
【解決手段】回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。さらに、前記反応基が、活性シラン基であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。さらに、前記反応基が、活性シラン基であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子・電気機器の基幹材料である樹脂の再利用に関するものである。詳しくは、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。さらに、再生ポリプロピレン樹脂中の異物により物性低下が起こる再生ポリプロピレン樹脂の特性改善方法、および前記再生ポリプロピレン樹脂を用いた樹脂マテリアルリサイクル方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題、資源・エネルギー問題に伴い、容器リサイクル法、家電リサイクル法が法定化されるなど、リサイクルの重要性が高まっている。金属・ガラスのマテリアルリサイクル技術は実用レベルでほぼ確立されたと言えるが、廃樹脂は、焼却、埋め立て処理がされているのが現状であり、樹脂のマテリアルリサイクルは技術・コストを含めた問題点が克服できていない。将来的には、家電リサイクル法における再商品化率の引き上げが予想され、樹脂のマテリアルリサイクルが必須となると思われる。
【0003】
廃樹脂は、リサイクルセンターに集められた家電製品を手解体、破砕、分別、洗浄などの工程を経た後、得られる。しかし、これら回収工程では、再生樹脂から異物を完全に除去することは困難である。再生樹脂中の異物は、樹脂強度・伸び・衝撃値など物性低下の原因となる。そのため、要求特性の低い部品などへの適用といったカスケードリサイクルが主体となり、同一製品から同一製品への適用といったクローズドリサイクル用途への展開が困難であった。
【0004】
バージン材との混合によって製品の品質を保持する方法が数多く提案されている。例えば、廃樹脂20〜30%にバージン材を70〜80%の混合比からなる再生成形品を製造することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法においては、バージン材の混合量に伴い物性は向上するものの、物性の低下したリサイクル材を混合する限り、バージン材同等の物性には至らないと言う欠点がある。
【0005】
さらに、相溶化剤やカップリング剤を用いた樹脂改質方法が提案されている。例えば、廃樹脂に低粘度ポリマー、カップリング剤と有機過酸化物を混練して、機械的特性の改善を図ることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、カップリング剤は、異物には結合するが、回収樹脂がポリプロピレン、ポリエチレンなど反応基を有しない高分子鎖とは反応しない。そのため、異物混入樹脂の靭性、剛性といった機械的性質の改質効果は不充分であった。さらには、リサイクル改質剤を調製するための工程が必要であり、工程数やコスト面が問題となっていた。
【0006】
通常、熱可塑性樹脂にタルクなどの無機フィラーを添加すると、材料の剛性が向上するが靭性が低下することが知られている。これを改善するために、エラストマーを添加し、剛性と靭性の物性バランスを保持する方法が考えられる。ポリプロピレンに対して相溶性の高いエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを添加すると、添加量の増加とともに靭性は向上するが、剛性が低下してしまうことは避けられなかった。添加するゴム量を必要最小限に抑えたとしても、成形品の剛性や表面硬度を実用範囲にするためにはタルクの添加が必要となる。しかし、タルクの添加量が多くなると、ゴムで補償できないほど脆くなり靭性が低下して実用範囲から外れてしまう傾向がある。例えば、特殊なエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを開発し、上記問題点を克服することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、廃プラスチックへの実施例は全く記述されておらず、効果の程度および適用の可能性は不明である。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−159900号公報(段落番号、[0008])
【特許文献2】
特開2001−72796号公報(段落番号、[0006])
【特許文献3】
特開2001−151978号公報(段落番号、[0011])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとしている課題は、異物混入による再生ポリプロピレン樹脂の物性低下に際して、機械物性を回復させるための方法および再生ポリプロピレン樹脂を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂により、機械物性が低下した回収ポリプロピレン樹脂をバージン樹脂と同等以上に向上できることを見いだし、本発明を提案するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の再生ポリプロピレン樹脂は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。
【0012】
本発明で用いられる樹脂強化剤は、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有するものなので、異物との相互作用により機械的性質を向上させる点で、ポリプロピレン樹脂のリサイクルにおいて非常に好適に用いることができる。
【0013】
樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン重合体、エチレン―プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体などがあげられる。なかでも、回収ポリプロピレン樹脂への分散性の点で、ホモポリプロピレン重合体が好ましい。
【0014】
樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRという)は、7(g/10分)以上が好ましい。MFRが7(g/10分)未満では回収ポリプロピレン樹脂中への分散性が悪くなる傾向がある。
【0015】
前記樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂骨格中の反応基は、活性シラン基、チタネート基、塩化クロム基があげられる。なかでも、1原子あたりに結合可能な官能基数の点で、活性シラン基が好ましい。
【0016】
ここで、活性シラン基とは、シリコン原子にアルコキシ基、アセトキシ基、メルカプト基、マレイン酸基などのうちの1種類が結合したものをいい、なかでも、金属くずのような異物との相互作用性の点で、アルコキシ基が好ましい。
【0017】
前記反応基は、ポリプロピレン樹脂骨格中に存在することが好ましいが、ここで、骨格中とは、反応基がポリプロピレンの炭素原子に化学的に結合していることをいう。
【0018】
このような樹脂強化剤として、XPM−800HM(三菱化学(株)製)、ポリプロピレン系シラン架橋ポリマーがあげられる。
【0019】
また、前記樹脂強化剤には、エチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン系エラストマーなどの公知の樹脂、ゴム成分やガラス、タルクなどのフィラーを含有してもよい。
【0020】
前記樹脂強化剤の含有量は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、30〜70重量部である。含有量は40〜60重量部が好ましく、45〜55重量部がより好ましい。含有量が30重量部より少ないと剛性向上の効果がない。70重量部をこえると靭性向上の効果がない。
【0021】
つぎに、回収ポリプロピレン樹脂とは、熱可塑性廃樹脂から取り出したポリプロピレン樹脂をいうが、かならずしもこれらには限られない。
【0022】
回収ポリプロピレン樹脂におけるポリプロピレン樹脂とは、ホモポリプロピレン、エチレン―プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体などがあげられる。なかでも、樹脂強化剤との相溶性の点で、ホモポリプロピレンが好ましい。
【0023】
このように、本発明の再生ポリプロピレン樹脂は、回収ポリプロピレン樹脂にポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有させることにより、物性を著しく向上することができる。
【0024】
市場から回収された回収ポリプロピレン樹脂には多くの異物が付着しており、これらの異物が応力の集中部となり、回収ポリプロピレン樹脂の機械特性は低下する。本発明に用いるポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤は、これら物性劣化した回収ポリプロピレン樹脂に含まれている金属などの異物と反応し、加えて、添加量を多めにすることにより前記樹脂強化剤を架橋させ、機械物性を著しく向上させるものである。
【0025】
前記樹脂強化剤同士の反応は製品成形後に高温高湿下で行なうことにより進行するので、溶融状態におけるポリプロピレン樹脂の流動性が低下するということはない。前記樹脂強化剤同士を反応させる条件としては、温度は80〜100℃が好ましい。温度が80℃より低いと到達架橋度が低いため、剛性改善の効果が小さくなる傾向がある。また、湿度は80〜100%RHが好ましい。湿度が80%RHより低いと架橋反応が進行せず、剛性が改善されない傾向がある。また、前記条件の保持時間は4〜48時間が好ましい。保持時間が4時間より短いと到達架橋度が低く、剛性改善の効果が小さくなり、48時間をこえると到達架橋度が一定となり、架橋反応がそれ以上進行しない傾向がある。
【0026】
ここで、前記異物とは回収ポリプロピレン樹脂中に含まれる異物をいい、具体的には金属片、メッキくず、繊維、他種樹脂、塗装片があげられる。なかでも、異物が金属片、メッキくずのような無機物質であると前記樹脂強化剤との相互作用が大きく効果がある。
【0027】
回収ポリプロピレン樹脂、およびポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有するときには、触媒を併用することが好ましい。触媒の具体例としては、XPM−800HM用触媒(三菱化学(株)製)があげられる。
【0028】
また、触媒の含有量は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、2〜10重量部が好ましく、4〜6重量部がより好ましい。触媒の含有量が2重量部未満では剛性の改善効果が小さくなる傾向があり、10重量部をこえると剛性は改善されるが靭性が低くなる傾向がある。
【0029】
本発明において、前記樹脂強化剤の添加は、回収ポリプロピレン樹脂をホッパーに投入する工程で行なうことができる。この他にも、単軸もしくは二軸の溶融混練機を用いていったん再生ペレットを得た後に、射出成形機のホッパーに投入し、成形することも可能である。すなわち、回収ポリプロピレン樹脂に対する前記樹脂強化剤の添加は、溶融成形の工程と添加剤混合工程を具備していれば、一部の手段はなくても、また、記載以外の工程が併設されていてもよい。
【0030】
また、再生ポリプロピレン樹脂の耐久性や機械物性を安定させるため、酸化防止剤、光安定剤、銅害防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤や、回収ポリプロピレン樹脂と相溶するバージン樹脂を添加することもできる。
【0031】
【実施例】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で用いられた評価および物性の測定は以下に示す方法で行なった。
【0032】
(1)引張強度および引張伸び
ISO527に準じて測定した。
【0033】
(2)曲げ強度および曲げ弾性率
ISO178に準じて測定した。
【0034】
(3)シャルピー衝撃値
ISO179に準じて測定した。
【0035】
(試料作製方法)
使用済み洗濯機を解体し、ポリプロピレン樹脂からなる洗濯槽を取り出し、破砕、水洗、乾燥の工程を経て、フレーク状の回収ポリプロピレン樹脂(以下、rPPという)を得た。
【0036】
実施例1
つぎに、rPP 100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤(三菱化学(株)製「XPM−800HM」)40重量部、およびXPM−800HM用触媒2.0重量部をドライブレンドし、射出成形機のホッパーに投入し、成形温度230℃、金型温度40℃の条件でISO準拠の物性測定用試験片を成形した。試験片を85℃、85%RHの高温高湿下で48時間保持した後、物性測定を行なった。結果を表1に示した。なお、前記ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤に用いたポリプロピレン樹脂のMFRは16(g/10分)であった。
【0037】
比較例1〜2
比較のためrPPおよびバージンポリプロピレン樹脂の特性を合わせて表1に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1は、比較例1[回収ポリプロピレン樹脂(rPP)]に比べ物性が改善されている。また、比較例2[バージンポリプロピレン樹脂(vPP)]と比べ物性が同等以上になっている。特に、曲げ弾性率の向上が大きい。比較例1の物性低下は、試験片の破断面観察から金属類や異種樹脂のような異物が原因と推察している。
【0040】
実施例2〜4、比較例3〜4
つぎに、rPP100重量部に対しXPM−800HM、およびXPM−800HM用触媒の含有量を表2記載の樹脂組成のように変化させたほかは実施例1と同様にして物性測定用試験片を作製し、各機械特性を測定した。結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例2〜4は、比較例1に比べ、全ての物性が向上している。また、比較例2(vPP)と比べると、曲げ弾性率が向上している。比較例3は、XPM−800HMの含有量が少ないために衝撃値は改善されているものの、曲げ弾性率に対して充分な改善効果が得られていない。比較例4は、XPM−800HMの含有量が多いので、弾性率は高くなったが、逆に引張伸び、シャルピー衝撃値がほとんど改善されなかった。
【0043】
以上の結果より、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤を所定量含有する本発明にかかわる再生ポリプロピレン樹脂、再生ポリプロピレン樹脂の改質方法、およびリサイクル方法は、再生ポリプロピレン樹脂の物性の改善に非常に有効であり、再生ポリプロピレン樹脂材料の製品適用への可能性を充分に示唆するものであることが確認された。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明の再生ポリプロピレン樹脂によれば、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有するので、物性が低下した回収ポリプロピレン樹脂をバージン樹脂と同等以上に改善した再生ポリプロピレン樹脂が提供できる。また、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有することにより物性向上が期待できるため、回収ポリプロピレン樹脂のマテリアルリサイクル率の向上に大いに貢献し、再商品化率の向上を図ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子・電気機器の基幹材料である樹脂の再利用に関するものである。詳しくは、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。さらに、再生ポリプロピレン樹脂中の異物により物性低下が起こる再生ポリプロピレン樹脂の特性改善方法、および前記再生ポリプロピレン樹脂を用いた樹脂マテリアルリサイクル方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題、資源・エネルギー問題に伴い、容器リサイクル法、家電リサイクル法が法定化されるなど、リサイクルの重要性が高まっている。金属・ガラスのマテリアルリサイクル技術は実用レベルでほぼ確立されたと言えるが、廃樹脂は、焼却、埋め立て処理がされているのが現状であり、樹脂のマテリアルリサイクルは技術・コストを含めた問題点が克服できていない。将来的には、家電リサイクル法における再商品化率の引き上げが予想され、樹脂のマテリアルリサイクルが必須となると思われる。
【0003】
廃樹脂は、リサイクルセンターに集められた家電製品を手解体、破砕、分別、洗浄などの工程を経た後、得られる。しかし、これら回収工程では、再生樹脂から異物を完全に除去することは困難である。再生樹脂中の異物は、樹脂強度・伸び・衝撃値など物性低下の原因となる。そのため、要求特性の低い部品などへの適用といったカスケードリサイクルが主体となり、同一製品から同一製品への適用といったクローズドリサイクル用途への展開が困難であった。
【0004】
バージン材との混合によって製品の品質を保持する方法が数多く提案されている。例えば、廃樹脂20〜30%にバージン材を70〜80%の混合比からなる再生成形品を製造することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法においては、バージン材の混合量に伴い物性は向上するものの、物性の低下したリサイクル材を混合する限り、バージン材同等の物性には至らないと言う欠点がある。
【0005】
さらに、相溶化剤やカップリング剤を用いた樹脂改質方法が提案されている。例えば、廃樹脂に低粘度ポリマー、カップリング剤と有機過酸化物を混練して、機械的特性の改善を図ることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、カップリング剤は、異物には結合するが、回収樹脂がポリプロピレン、ポリエチレンなど反応基を有しない高分子鎖とは反応しない。そのため、異物混入樹脂の靭性、剛性といった機械的性質の改質効果は不充分であった。さらには、リサイクル改質剤を調製するための工程が必要であり、工程数やコスト面が問題となっていた。
【0006】
通常、熱可塑性樹脂にタルクなどの無機フィラーを添加すると、材料の剛性が向上するが靭性が低下することが知られている。これを改善するために、エラストマーを添加し、剛性と靭性の物性バランスを保持する方法が考えられる。ポリプロピレンに対して相溶性の高いエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを添加すると、添加量の増加とともに靭性は向上するが、剛性が低下してしまうことは避けられなかった。添加するゴム量を必要最小限に抑えたとしても、成形品の剛性や表面硬度を実用範囲にするためにはタルクの添加が必要となる。しかし、タルクの添加量が多くなると、ゴムで補償できないほど脆くなり靭性が低下して実用範囲から外れてしまう傾向がある。例えば、特殊なエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを開発し、上記問題点を克服することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、廃プラスチックへの実施例は全く記述されておらず、効果の程度および適用の可能性は不明である。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−159900号公報(段落番号、[0008])
【特許文献2】
特開2001−72796号公報(段落番号、[0006])
【特許文献3】
特開2001−151978号公報(段落番号、[0011])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとしている課題は、異物混入による再生ポリプロピレン樹脂の物性低下に際して、機械物性を回復させるための方法および再生ポリプロピレン樹脂を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂により、機械物性が低下した回収ポリプロピレン樹脂をバージン樹脂と同等以上に向上できることを見いだし、本発明を提案するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の再生ポリプロピレン樹脂は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂に関する。
【0012】
本発明で用いられる樹脂強化剤は、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有するものなので、異物との相互作用により機械的性質を向上させる点で、ポリプロピレン樹脂のリサイクルにおいて非常に好適に用いることができる。
【0013】
樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン重合体、エチレン―プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体などがあげられる。なかでも、回収ポリプロピレン樹脂への分散性の点で、ホモポリプロピレン重合体が好ましい。
【0014】
樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRという)は、7(g/10分)以上が好ましい。MFRが7(g/10分)未満では回収ポリプロピレン樹脂中への分散性が悪くなる傾向がある。
【0015】
前記樹脂強化剤に用いられるポリプロピレン樹脂骨格中の反応基は、活性シラン基、チタネート基、塩化クロム基があげられる。なかでも、1原子あたりに結合可能な官能基数の点で、活性シラン基が好ましい。
【0016】
ここで、活性シラン基とは、シリコン原子にアルコキシ基、アセトキシ基、メルカプト基、マレイン酸基などのうちの1種類が結合したものをいい、なかでも、金属くずのような異物との相互作用性の点で、アルコキシ基が好ましい。
【0017】
前記反応基は、ポリプロピレン樹脂骨格中に存在することが好ましいが、ここで、骨格中とは、反応基がポリプロピレンの炭素原子に化学的に結合していることをいう。
【0018】
このような樹脂強化剤として、XPM−800HM(三菱化学(株)製)、ポリプロピレン系シラン架橋ポリマーがあげられる。
【0019】
また、前記樹脂強化剤には、エチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン系エラストマーなどの公知の樹脂、ゴム成分やガラス、タルクなどのフィラーを含有してもよい。
【0020】
前記樹脂強化剤の含有量は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、30〜70重量部である。含有量は40〜60重量部が好ましく、45〜55重量部がより好ましい。含有量が30重量部より少ないと剛性向上の効果がない。70重量部をこえると靭性向上の効果がない。
【0021】
つぎに、回収ポリプロピレン樹脂とは、熱可塑性廃樹脂から取り出したポリプロピレン樹脂をいうが、かならずしもこれらには限られない。
【0022】
回収ポリプロピレン樹脂におけるポリプロピレン樹脂とは、ホモポリプロピレン、エチレン―プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体などがあげられる。なかでも、樹脂強化剤との相溶性の点で、ホモポリプロピレンが好ましい。
【0023】
このように、本発明の再生ポリプロピレン樹脂は、回収ポリプロピレン樹脂にポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有させることにより、物性を著しく向上することができる。
【0024】
市場から回収された回収ポリプロピレン樹脂には多くの異物が付着しており、これらの異物が応力の集中部となり、回収ポリプロピレン樹脂の機械特性は低下する。本発明に用いるポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤は、これら物性劣化した回収ポリプロピレン樹脂に含まれている金属などの異物と反応し、加えて、添加量を多めにすることにより前記樹脂強化剤を架橋させ、機械物性を著しく向上させるものである。
【0025】
前記樹脂強化剤同士の反応は製品成形後に高温高湿下で行なうことにより進行するので、溶融状態におけるポリプロピレン樹脂の流動性が低下するということはない。前記樹脂強化剤同士を反応させる条件としては、温度は80〜100℃が好ましい。温度が80℃より低いと到達架橋度が低いため、剛性改善の効果が小さくなる傾向がある。また、湿度は80〜100%RHが好ましい。湿度が80%RHより低いと架橋反応が進行せず、剛性が改善されない傾向がある。また、前記条件の保持時間は4〜48時間が好ましい。保持時間が4時間より短いと到達架橋度が低く、剛性改善の効果が小さくなり、48時間をこえると到達架橋度が一定となり、架橋反応がそれ以上進行しない傾向がある。
【0026】
ここで、前記異物とは回収ポリプロピレン樹脂中に含まれる異物をいい、具体的には金属片、メッキくず、繊維、他種樹脂、塗装片があげられる。なかでも、異物が金属片、メッキくずのような無機物質であると前記樹脂強化剤との相互作用が大きく効果がある。
【0027】
回収ポリプロピレン樹脂、およびポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有するときには、触媒を併用することが好ましい。触媒の具体例としては、XPM−800HM用触媒(三菱化学(株)製)があげられる。
【0028】
また、触媒の含有量は、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、2〜10重量部が好ましく、4〜6重量部がより好ましい。触媒の含有量が2重量部未満では剛性の改善効果が小さくなる傾向があり、10重量部をこえると剛性は改善されるが靭性が低くなる傾向がある。
【0029】
本発明において、前記樹脂強化剤の添加は、回収ポリプロピレン樹脂をホッパーに投入する工程で行なうことができる。この他にも、単軸もしくは二軸の溶融混練機を用いていったん再生ペレットを得た後に、射出成形機のホッパーに投入し、成形することも可能である。すなわち、回収ポリプロピレン樹脂に対する前記樹脂強化剤の添加は、溶融成形の工程と添加剤混合工程を具備していれば、一部の手段はなくても、また、記載以外の工程が併設されていてもよい。
【0030】
また、再生ポリプロピレン樹脂の耐久性や機械物性を安定させるため、酸化防止剤、光安定剤、銅害防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤や、回収ポリプロピレン樹脂と相溶するバージン樹脂を添加することもできる。
【0031】
【実施例】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で用いられた評価および物性の測定は以下に示す方法で行なった。
【0032】
(1)引張強度および引張伸び
ISO527に準じて測定した。
【0033】
(2)曲げ強度および曲げ弾性率
ISO178に準じて測定した。
【0034】
(3)シャルピー衝撃値
ISO179に準じて測定した。
【0035】
(試料作製方法)
使用済み洗濯機を解体し、ポリプロピレン樹脂からなる洗濯槽を取り出し、破砕、水洗、乾燥の工程を経て、フレーク状の回収ポリプロピレン樹脂(以下、rPPという)を得た。
【0036】
実施例1
つぎに、rPP 100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤(三菱化学(株)製「XPM−800HM」)40重量部、およびXPM−800HM用触媒2.0重量部をドライブレンドし、射出成形機のホッパーに投入し、成形温度230℃、金型温度40℃の条件でISO準拠の物性測定用試験片を成形した。試験片を85℃、85%RHの高温高湿下で48時間保持した後、物性測定を行なった。結果を表1に示した。なお、前記ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤に用いたポリプロピレン樹脂のMFRは16(g/10分)であった。
【0037】
比較例1〜2
比較のためrPPおよびバージンポリプロピレン樹脂の特性を合わせて表1に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1は、比較例1[回収ポリプロピレン樹脂(rPP)]に比べ物性が改善されている。また、比較例2[バージンポリプロピレン樹脂(vPP)]と比べ物性が同等以上になっている。特に、曲げ弾性率の向上が大きい。比較例1の物性低下は、試験片の破断面観察から金属類や異種樹脂のような異物が原因と推察している。
【0040】
実施例2〜4、比較例3〜4
つぎに、rPP100重量部に対しXPM−800HM、およびXPM−800HM用触媒の含有量を表2記載の樹脂組成のように変化させたほかは実施例1と同様にして物性測定用試験片を作製し、各機械特性を測定した。結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例2〜4は、比較例1に比べ、全ての物性が向上している。また、比較例2(vPP)と比べると、曲げ弾性率が向上している。比較例3は、XPM−800HMの含有量が少ないために衝撃値は改善されているものの、曲げ弾性率に対して充分な改善効果が得られていない。比較例4は、XPM−800HMの含有量が多いので、弾性率は高くなったが、逆に引張伸び、シャルピー衝撃値がほとんど改善されなかった。
【0043】
以上の結果より、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基として活性シラン基を有する樹脂強化剤を所定量含有する本発明にかかわる再生ポリプロピレン樹脂、再生ポリプロピレン樹脂の改質方法、およびリサイクル方法は、再生ポリプロピレン樹脂の物性の改善に非常に有効であり、再生ポリプロピレン樹脂材料の製品適用への可能性を充分に示唆するものであることが確認された。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明の再生ポリプロピレン樹脂によれば、回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有するので、物性が低下した回収ポリプロピレン樹脂をバージン樹脂と同等以上に改善した再生ポリプロピレン樹脂が提供できる。また、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤を含有することにより物性向上が期待できるため、回収ポリプロピレン樹脂のマテリアルリサイクル率の向上に大いに貢献し、再商品化率の向上を図ることができる。
Claims (2)
- 回収ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂骨格中に反応基を有する樹脂強化剤30〜70重量部を含有する再生ポリプロピレン樹脂。
- 前記反応基が、活性シラン基である請求項1記載の再生ポリプロピレン樹脂。
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JP2002374531A JP2004204041A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 熱可塑性樹脂組成物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008540156A (ja) * | 2005-05-04 | 2008-11-20 | ブリュックナー マシーネンバウ ゲーエムベーハー | 包装用高強度ポリプロピレンベース保護フィルム、その製造方法と使用方法 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002374531A patent/JP2004204041A/ja active Pending
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JP2008540156A (ja) * | 2005-05-04 | 2008-11-20 | ブリュックナー マシーネンバウ ゲーエムベーハー | 包装用高強度ポリプロピレンベース保護フィルム、その製造方法と使用方法 |
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