JP2004204036A - 消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、その製造方法、消しゴム消去性水性インキ組成物、及びボールペン - Google Patents
消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、その製造方法、消しゴム消去性水性インキ組成物、及びボールペン Download PDFInfo
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Abstract
【課題】インキ組成物の消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性を向上することのできる、インキ用樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、結着樹脂と顔料とからなり、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含有する水性インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、結着樹脂と顔料とからなり、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含有する水性インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、その製造方法、及び消しゴム消去性水性インキ組成物に関する。更に詳細には、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れた消しゴム消去性水性インキ組成物、該消しゴム消去性水性インキ組成物に用いられる樹脂粒子、及びその製造方法に関する。
【0002】
消去性水性インキは、紙面上に文字、図面等を筆記した場合に、これらの描線を消しゴムで消去することができるという特徴を有するものであり、サインペン等に用いられている。
従来より、このような消しゴムで消去することのできる筆跡をもたらすインキ組成物について多くの提案がなされている。このようなインキ組成物は、主に着色剤と樹脂とを含有してなり、有機溶剤を主溶剤として用いた油性インキと、水を主溶剤として用いた水性インキとが知られている。
水性インキとしては、近年多くの提案がなされている。
例えば、特開2001−19888号公報には、顔料と粘着性樹脂からなり、粒子分布が2〜20μmの範囲に70重量%以上含まれる粘着性着色樹脂粒状体を含有する、筆記用消しゴム消去性水性インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性インキ組成物は、消去性及び定着性に優れるものであるが、インキ流出性や保存性等に乏しいという問題があった。
【0003】
また、特開2000−103997号公報には、平均粒径が2μm以上であり、粒径が1.8μm以下のものが1.6重量%以下である着色剤を含む水性インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性インキ組成物は、定着性及び消去性がある程度は向上したものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0004】
また、特開2002−53788号公報には、ランダムコポリマーから選択される描線乾燥性向上剤を含み、表面張力が16〜45mN/mである水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性ボールペン用インキ組成物は、インキ流出性等の性能に優れるものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0005】
また、特開2002−265841号公報には、水、着色剤、分散剤、常温で難揮発性油状物質及び樹脂を含有する水性消去性マーキングペンインキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性消去性マーキングペンインキ組成物は定着性及び消去性がある程度は向上したものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0006】
上記公報に開示されたインキ組成物は、いずれも着色剤を含む樹脂を含有してなり、従って、この着色剤を含む樹脂を改良することにより、消去性水性インキ組成物の特性を向上できると考えられ、インキ組成物の製造に用いることのできる樹脂の改良が望まれている。すなわち、インキ組成物の消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性を向上することのできる樹脂が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−19888号公報
【特許文献2】
特開2000−103997号公報
【特許文献3】
特開2002−53788号公報
【特許文献4】
特開2002−265841号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インキ組成物の消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性を向上することのできる、インキ用樹脂粒子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、消しゴム消去性水性インキ組成物に用いる樹脂の体積平均粒径を特定の範囲とするとともに、体積平均粒径と個数平均粒径を特定の範囲とする、すなわち粒径分布を狭くすることにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。
【0010】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、結着樹脂と顔料とからなる、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を提供するものである。
上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を用いたインキ組成物に用いた場合、インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものとなる。
【0011】
上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより得ることができる。
また、本発明は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含有する、消しゴム消去性水性インキ組成物を提供するものである。
上記消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
【0012】
また、本発明は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することを特徴とする、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、まず本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子(本明細書において、単に「樹脂粒子」という場合もある)について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、結着剤と顔料とからなる。
【0014】
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーに広く用いられている樹脂を挙げることができる。結着樹脂のガラス転移温度は、通常、−70〜80℃であり、好ましくは−30〜70℃である。
【0015】
顔料としては、従来より水性インキ等に用いられるものであれば特に制限なく用いられる。例えば、酸化チタン、カーボンブラック、群青、コバルトブルー、酸化クロム、べんがら、黒鉛等の無機顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントバイオレット19等の有機顔料が挙げられる。その他にも、蛍光顔料、蓄光顔料等も使用可能である。
【0016】
顔料の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部であり、更に好ましくは3〜20重量部である。顔料の含有量が、結着樹脂100重量部に対して1重量部未満であるとインキ組成物とした際に十分な着色性能が得られない場合があり、一方、40重量部を超えると、粘度が高くなりすぎてインキ流出性が悪くなる場合がある。
【0017】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、3〜20μm、好ましくは4〜15μmの体積平均粒径(Dv)を有する。Dvが3μm未満であると樹脂粒子が紙の繊維間に浸透する割合が高くなり、良好な消去性が得られない。一方、20μmを超えると 上記樹脂粒子を含むインキ組成物を内蔵するボールペン等で紙に文字、図面等を記載した場合に、手や指での擦過によりインキが剥離しやすくなり、良好な定着性が得られない。
【0018】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5であり、好ましくは1.0〜1.35である。Dv/Dpが1.5を超えると良好な消去性やインキ流出性が得られない。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dp)をこのような範囲にするために、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0019】
消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の粒子とすることができる。通常、このコアシェル型粒子のコア層は結着樹脂及び顔料で構成され、シェル層は結着樹脂のみで構成される。
【0020】
コアシェル型粒子の場合、コア粒子の体積平均粒径(Dv)は3〜20μm、好ましくは4〜15μmである。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)の比である粒径分布(Dv/Dp)が1.0〜1.5であると好ましく、1.0〜1.35であると更に好ましい。
コアシェル型粒子のコア層とシェル層との重量比率は特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1で使用される。
【0021】
コアシェル型粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。コアシェル型粒子のコア粒子径およびシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさおよびシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径および樹脂粒子製造時に用いたシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0022】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を製造する方法としては、例えば、懸濁重合法、懸濁重縮合法、懸濁付加反応法、シード重合法、分散重合法、液中溶媒蒸発法等が挙げられる。上記の中でも、懸濁重合法が好ましい。重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより製造する方法が特に好ましい。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法については後述する。
【0023】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、例えばボールペン等の筆記具用の消しゴム消去性水性インキ組成物として用いられる。
【0024】
以下、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を、好ましくは粘着剤(常温造膜性樹脂)、湿潤剤、分散剤及び防腐剤等の添加剤を配合して、水又は水系溶媒に分散させたものである。
粘着剤は、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を、非吸収面上に筆記し、水が揮散した後に、筆跡が前記着色剤を含む樹脂からなる被膜又は層を有し、且つ、この樹脂被膜又は層が前述した剥離剤の層と分離し得るようにするためのものである。上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を構成する結着樹脂のガラス転移温度が30℃より低い場合には、特に添加する必要がない。粘着剤とは、常温で造膜性を有する水不溶性樹脂のエマルジョン若しくはヒドロゾル、又は、本来、水不溶性であるが、塩基による造塩によって水可溶化された樹脂か、又は水溶性樹脂のことを意味する。
【0025】
粘着剤としては、例えば、(1) ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂若しくはウレタン樹脂のエマルジョン又はヒドロゾル、(2) 水可溶化された酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂又はウレタン樹脂、又は(3) 水溶性樹脂、又は(1)〜(3)の組み合わせ等が挙げられる。
上記エマルジョン若しくはヒドロゾル又は水可溶化された酢酸ビニル共重合体における共単量体としては、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等、不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等の、酢酸ビニル以外のビニルエステル化合物、エチレン、プロピレン、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル炭化水素が挙げられる。これらは混合して共単量体として用いられてもよい。更に、上記に加えて、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル等の前記不飽和カルボン酸のエステル類も共単量体として用いることができる。また、酢酸ビニル共重合体は、ポリ酢酸ビニルへのグラフト共重合体であってもよい。
【0026】
特に好ましい酢酸ビニル共重合体としては、例えば、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸共重合体、酢酸ビニル−スチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。ポリ酢酸ビニルや、上述の酢酸ビニル共重合体のエマルジョン及びヒドロゾルは、容易に市販品として入手することができる。
【0027】
水可溶化された酢酸ビニル共重合体としては、上記したような酢酸ビニル共重合体を無機又は有機塩基によって造塩させて水可溶化したものであって、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩や有機アミン塩のような有機塩が挙げられる。このような水可溶化された酢酸ビニル共重合体も、市販品として入手可能である。
【0028】
同様に、水可溶化されたアルキド樹脂も、過剰量の多塩基酸と多価アルコールとから得られる遊離カルボキシル基を有するアルキド樹脂をアルカリ金属塩基、アンモニウム塩基、有機アミン等にて中和造塩させて、水可溶化してなるもので、これらも市販品として入手可能である。
水可溶化されたウレタン樹脂は、例えば、重合体主鎖にカルボキシル基を有せしめ、このカルボキシル基をアルカリ金属塩基、アンモニウム塩基、有機アミン等にて中和造塩させて、水可溶化してなるものであり、これらも市販品として入手可能である。更に、アルキド樹脂やウレタン樹脂のエマルジョンやヒドロゾルも市販品として入手可能である。
【0029】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の合成樹脂が挙げられ、また、アラビアゴム、セラック等の天然の水溶性樹脂も使用可能である。
粘着剤は、本発明による消しゴム消去性水性インキ組成物において、固形分として、通常、0.1〜20重量%、好ましくは、0.3〜15重量%の範囲で含有される。粘着剤の含有量が20重量%より多いと、消しゴム消去性水性インキ組成物の粘度が高くなりすぎ、筆記性に劣ったり消去性が低下する場合があり、一方、0.1重量%未満であると、筆跡が延び、筆記面が汚れる場合があるが、結着樹脂のガラス転移温度が30℃未満である場合には、このような問題が生じないため、添加する必要はない。
【0030】
湿潤剤は、特に消しゴム消去性水性インキ組成物の乾燥速度を所望の範囲に調整するものであり、湿潤剤を添加することにより、保存性、キャップオフ性を更に向上させることが可能となる。湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,8−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールもチオジグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ジグリセリン、ソルビット等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテルの他、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。湿潤剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、1〜30重量%である。
【0031】
分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステルソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ等の陰イオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等の非イオン系界面活性剤等を使用できる。この中でも、陰イオン系界面活性剤が好ましく、特にナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物がより好ましい。分散剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、0.01〜1重量%である。
【0032】
防腐剤としては、例えばソルビタン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、ベンズイミダゾール系化合物等が挙げられる。防腐剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、0.2〜3重量%である。
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を水又は水系溶媒に分散させたものである。水の含有量は好ましくは60〜95重量%程度であり、更に好ましくは70〜80重量%程度である。
消しゴム消去性水性インキ組成物中の樹脂粒子の含有量は、好ましくは3〜40重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%である。樹脂粒子の含有量が3重量%未満であると、着色性が十分でなく、一方、40重量%を超えるとキャップオフ性が低下する場合がある。
【0033】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物には、さらに水溶性高分子を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、水溶性であれば特に制限はなく、例えば天然高分子、合成高分子、半合成高分子等のいずれであっても用いることができる。また、公知のゲルインキのゲル化剤として用いられているものが使用可能である。具体的には、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、プルラン、ラムザンガム、ウエランガム、サクシノグルカン等の多糖類が挙げられる。
消しゴム消去性水性インキ組成物中の水溶性高分子の含有量は、通常、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜6重量%である。水溶性高分子の含有量が0.1重量%未満であると、インキが分離する場合があり、一方、10重量%を超えると、粘度が高くなりすぎ、インキの流出性が悪くなる場合がある。
【0034】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物には、必要に応じて従来より水性インキに用いられている各種添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば防錆剤、粘度調整剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、その粘度は最終製品の用途に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは100〜10,000mPa・sであり、更に好ましくは500〜5,000mPa・sである。なお、消しゴム消去性水性インキ組成物の粘度は、各成分の配合等により適宜調節することができる。
【0036】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、各種の筆記具、インクジェットプリンター用インキ等に適用することができる。筆記具としては、例えばマーカー、サインペン、ボールペン等のいずれにも用いることができる。特に、優れた定着性、消去性等の特性を有するので、ボールペン(水性ボールペン)用として最適である。
【0037】
次に、本発明のボールペンについて説明する。本発明のボールペンは、上記消しゴム消去性水性インキ組成物を内蔵してなる。
本発明のボールペンは、インキとして、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を用いており、その他は公知のボールペン用部材を用いればよい。例えば、インキ収容管としては公知の材料、大きさのものを用いればよい。また、インキ収容管の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂性パイプや金属製パイプが使用可能である。また、ボールペンチップについても公知のものが使用可能である。
【0038】
ボールペンの組み立ては、公知のボールペン組み立て方法に従えばよい。例えば、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を、洋白ボールペンチップ(ボール材質:超硬合金、セラミックス等)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管に充填してボールペンレフィールとし、次いで本体にボールペンレフィールを取り付け、尾栓を装着した後、ボールペンレフィールを遠心分離機により管中の空気を除去することにより、ボールペンを得ることができる。
【0039】
次に、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することを特徴とする。
水性媒体とは、水又は水を主成分とする溶媒のことを意味する。
【0040】
結着樹脂原料である重合性単量体としては、例えば、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン系単量体;等が挙げられる。
上記モノビニル単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル系単量体との併用などが好適に用いられる。
【0041】
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体を用いてもよい。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。架橋性単量体の使用量は、モノビニル単量体100重量部当たり、通常、10重量部以下、好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0042】
また、モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いてもよい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。
【0043】
マクロモノマーは、前記モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーの使用量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。
【0044】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法においては、分散安定剤として無機化合物を用いる。無機化合物としては、重合して得られる樹脂粒子の体積平均粒径が3〜20μm、好ましくは4〜15μm、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.35となるものであれば特に制限なく用いることができる。このような無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの無機塩;シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の無機水酸化物;等が挙げられる。上記の中でも、難水溶性無機化合物である、リン酸カルシウムや水酸化マグネシウムが好ましい。
【0045】
上記難溶性無機塩の使用量は、重合性単量体100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部であり、更に好ましくは2〜7重量部である。難溶性無機塩の使用量が、重合性単量体100重量部に対して1重量部未満であると重合安定性が低下して凝集物が発生する場合があり、一方、10重量部より多いと、良好な消去性を得られない場合がある。
【0046】
また、水性媒体中には、難溶性無機塩と共に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することができる。
【0047】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロールイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0048】
上記重合開始剤の中でも、用いられる重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加してもよいが、懸濁重合の場合は重合性単量体組成物の液滴形成工程終了後の懸濁液、乳化重合の場合は乳化工程終了後の乳化液に、直接添加してもよい。
【0049】
また、重合に際しては、反応系に分子量調整剤を添加することが好ましい。該分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0050】
上述した、コアシェル型樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。具体的には、粉砕法、重合法、会合法又は転相乳化法により得られた樹脂粒子をコア粒子として、それに、シェル層を被覆することによりコアシェル型樹脂粒子が得られる。この製造方法の中でも、in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0051】
in situ重合法によるコアシェル型樹脂粒子の製造方法を以下に説明する。
コア粒子が分散している水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型樹脂粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、または別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加しても、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加してもよい。
【0052】
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
シェル用重合性単量体を添加する際に水溶性の重合開始剤を添加するとコアシェル型樹脂粒子を得やすくなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなると考えられる。
【0054】
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0055】
懸濁重合の際の温度は、好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは 50〜90℃である。また、反応時間に特に制限はないが、重合率が90%以上に達するまで反応を行えばよく、好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜10時間である。重合終了後に、常法に従い、濾過、洗浄、脱水の操作を、必要に応じて数回繰り返すことにより樹脂粒子を得る。また、濾過、洗浄、脱水の操作に加え、乾燥を行ってもよい。
【0056】
懸濁重合後に得られる樹脂粒子の水分散液は、酸又はアルカリを添加して、分散安定剤を水に溶解して、除去することが好ましい。分散安定剤として、難水溶性金属水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0057】
濾過脱水の方法は特に制限されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち遠心濾過法が好適である。濾過脱水装置としては、ピーラーセントリフュージョン、サイホンピーラーセントリヒュージョンなどを挙げることができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下の実施例において、部および%は、特に断りのない限り重量部又は重量%を表す。
【0058】
本実施例では、以下の方法で消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、消しゴム消去性水性インキ組成物の評価を行った。
(1)消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の粒径
消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)は粒径測定機(ベックマン・コールター社製、機種名「マルチサイザー」)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、測定粒子個数:100,000個の条件で行った。
【0059】
(2)消去性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作成し、このボールペンを用いて、レポート用紙(コクヨ製、品番レ−116AN)の紙面に直径約2cmの円を連続して描き、得られた筆跡を消しゴム(シードゴム工業社製、商品名:STAR Radar)を用いて、筆記から5秒後及び1日後に擦過して消去性の難易度を判定した。下記評価基準に従って評価を行った。
○:容易に消去できる。
△:10回までの擦過で消去できるものの、若干筆跡が残る。
×:10回までの擦過では消去できない。
(3)定着性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを用いて、上質紙に筆記し、乾燥後に描線を指で擦り、描線の汚れ状態を鉛筆の種類と比較して調べた。鉛筆の筆記荷重は500gとした。下記評価基準に従って評価を行った。
○:2H以下の汚れであった。
△:2H〜2B程度の汚れであった。
×:2B以上の汚れであった。
【0060】
(4)インキ流出性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを用いて上質紙に筆記した場合におけるインキ流出量(mg/100m)を測定した。
(5)保存性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを50℃の温度に1ヶ月保存し、1ヶ月経過後のインキ分離の有無、インキ流出性(目詰まり、途切れ及び濃度)について観察を行い、下記評価基準に従って評価を行った。
○:インキが全く分離せず、インキ流出性は良好であった。
△:若干インキが分離し、インキ流出性にも問題があった。
×:全く実用できないほどインキが分離した。
【0061】
(6)キャップオフ性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンのキャップを開けたままで1時間放置した後の筆記状態を観察し、下記評価基準に従って評価を行った。なお、筆記は、縦1cm×横1cmの正方形内に「A」の文字を筆記し、何文字で筆記が可能となるかを観察した。
○:すぐに筆記可能であった。
△:3文字以内で筆記可能となった。
×:20文字以上筆記できなかった。
【0062】
実施例1
スチレン80部及びn−ブチルアクリレート20部からなるコア用重合性単量体組成物、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25」)7部を混合し、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物Aを得た。
【0063】
一方、イオン交換水200部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)6.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)5.0部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液Aを調製した。生成した前記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径はD50(個数粒径分布の50%累積値)が0.35μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.84μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器における粒径の測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0064】
一方、メチルメタクリレート3部及び水100部を混合し、シェル用重合性単量体の水分散液Aを得た。
【0065】
上記で得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに、コア用重合性単量体組成物Aを投入し、液滴が安定するまで撹拌を行った。液滴が安定した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルO」)6部を添加し、次いで15,000rpmで回転するエバラマイルダー(荏原製作所(株)製、商品名「MDN303V」)を用いて剪断撹拌を行い、単量体組成物の液滴を形成した。この形成したコア用単量体混合物の水分散液を、撹拌翼を装着した反応器に入れ、85℃の温度で重合反応を開始し、重合転化率がほぼ100%に達した時に、前記シェル用重合性単量体Aに水溶性開始剤(和光純薬工業(株)製、商品名「VA−086」)(2,2’−アゾビス(2−メチル−N(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)0.3部を溶解し、その溶液を反応器に入れた。重合反応を4時間継続した後、反応を停止し、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の水分散液を得た。得られた重合体粒子の水分散液の固形分濃度は27重量%であった。
【0066】
上述のようにして得られたコアシェル型重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸を用いて洗浄し(25℃、10分間)、系のpHを4.5以下にした。この水分散液をろ過し、連続式ベルトフィルター(住友重機会工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて脱水、洗浄し、固形分をろ過分離し、消しゴム消去性樹脂粒子を含む水分散液(固形分濃度:50重量%)を得た。得られた重合体粒子ケーキの固形分を50重量%となるように調整した。
【0067】
水溶性高分子としてラムザンガム0.35重量部、湿潤剤としてエチレングリコール3.5重量部、分散剤としてナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部、防腐剤として安息香酸ナトリウム1重量部を水に溶解して混合した。この溶液を撹拌しながら、先に調整した消しゴム消去性樹脂粒子を含む水分散液(固形分濃度:50重量%)15重量部を徐々に添加し、添加後も3時間撹拌を行い、消しゴム消去性水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
高速撹拌TK−ホモミキサーを備えた容器に、イオン交換水710重量部に、0.1モルNa3PO4水溶液450重量部を添加し、回転数を200rpsに調整して60℃の温度に加温した。次いで、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液68重量部を添加し、難溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒体系を得た。得られた分散媒体系を、水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに代えて用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、消しゴム消去性水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
セパラブルフラスコ(2リットル)に水480部を入れ、更にポリビニルアルコール(日本合成社製、商品名「ゴーセノールGL−03」)20部を溶解して分散媒とした。この分散媒にカーボンブラック(デグサ社製、商品名「Printex L」)8部、スチレン80部、n−ブチルアクリレート20部からなるコア用重合性単量体組成物、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部からなる樹脂粒子組成物を加え、高速撹拌により約7μmの液滴とした後、撹拌を続けながら60℃の温度で6時間懸濁重合を行った。次いで、反応系を室温まで冷却した後、分散媒中のポリビニルアルコールを除去するために水600部を加えて洗浄し、遠心分離法により樹脂粒状体を分離した。得られた樹脂粒状体のスラリーに、更に水600部を加えて洗浄した後、再度遠心分離法により分離し、水で固形分を50重量%になるように調整し、樹脂粒状体分散液Bを得た。得られた樹脂粒状体分散液中の粒状体のガラス転移温度は8℃であり、体積平均粒径は8.2μmであり、Dv/Dpは1.65であった。
【0070】
上記のようにして得られた樹脂粒状体分散液Bを混合しディスパーにて均質になるまで撹拌して消しゴム消去水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の消しゴム消去性水性インキ組成物の評価結果から、以下のことがわかる。
体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が、本発明で規定した範囲より大きい消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含む、比較例1の消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性水性インキ流出性、保存性が劣るものである。
これに対して、本発明の実施例1及び2の消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性水性インキ流出性、保存性、定着性、キャップオフ性に優れるものである。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述した通り、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、水性インキ組成物に用いた場合に、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
【0074】
また、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記樹脂粒子を含有しており、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
また、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法によれば、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れる消しゴム消去性水性インキ樹脂粒子を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、その製造方法、及び消しゴム消去性水性インキ組成物に関する。更に詳細には、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れた消しゴム消去性水性インキ組成物、該消しゴム消去性水性インキ組成物に用いられる樹脂粒子、及びその製造方法に関する。
【0002】
消去性水性インキは、紙面上に文字、図面等を筆記した場合に、これらの描線を消しゴムで消去することができるという特徴を有するものであり、サインペン等に用いられている。
従来より、このような消しゴムで消去することのできる筆跡をもたらすインキ組成物について多くの提案がなされている。このようなインキ組成物は、主に着色剤と樹脂とを含有してなり、有機溶剤を主溶剤として用いた油性インキと、水を主溶剤として用いた水性インキとが知られている。
水性インキとしては、近年多くの提案がなされている。
例えば、特開2001−19888号公報には、顔料と粘着性樹脂からなり、粒子分布が2〜20μmの範囲に70重量%以上含まれる粘着性着色樹脂粒状体を含有する、筆記用消しゴム消去性水性インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性インキ組成物は、消去性及び定着性に優れるものであるが、インキ流出性や保存性等に乏しいという問題があった。
【0003】
また、特開2000−103997号公報には、平均粒径が2μm以上であり、粒径が1.8μm以下のものが1.6重量%以下である着色剤を含む水性インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性インキ組成物は、定着性及び消去性がある程度は向上したものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0004】
また、特開2002−53788号公報には、ランダムコポリマーから選択される描線乾燥性向上剤を含み、表面張力が16〜45mN/mである水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性ボールペン用インキ組成物は、インキ流出性等の性能に優れるものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0005】
また、特開2002−265841号公報には、水、着色剤、分散剤、常温で難揮発性油状物質及び樹脂を含有する水性消去性マーキングペンインキ組成物が開示されている。該公報に開示された水性消去性マーキングペンインキ組成物は定着性及び消去性がある程度は向上したものであるが、定着性及び消去性を更に向上させることが望まれている。
【0006】
上記公報に開示されたインキ組成物は、いずれも着色剤を含む樹脂を含有してなり、従って、この着色剤を含む樹脂を改良することにより、消去性水性インキ組成物の特性を向上できると考えられ、インキ組成物の製造に用いることのできる樹脂の改良が望まれている。すなわち、インキ組成物の消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性を向上することのできる樹脂が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−19888号公報
【特許文献2】
特開2000−103997号公報
【特許文献3】
特開2002−53788号公報
【特許文献4】
特開2002−265841号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インキ組成物の消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性を向上することのできる、インキ用樹脂粒子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、消しゴム消去性水性インキ組成物に用いる樹脂の体積平均粒径を特定の範囲とするとともに、体積平均粒径と個数平均粒径を特定の範囲とする、すなわち粒径分布を狭くすることにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。
【0010】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、結着樹脂と顔料とからなる、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を提供するものである。
上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を用いたインキ組成物に用いた場合、インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものとなる。
【0011】
上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより得ることができる。
また、本発明は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含有する、消しゴム消去性水性インキ組成物を提供するものである。
上記消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
【0012】
また、本発明は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することを特徴とする、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、まず本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子(本明細書において、単に「樹脂粒子」という場合もある)について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、結着剤と顔料とからなる。
【0014】
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーに広く用いられている樹脂を挙げることができる。結着樹脂のガラス転移温度は、通常、−70〜80℃であり、好ましくは−30〜70℃である。
【0015】
顔料としては、従来より水性インキ等に用いられるものであれば特に制限なく用いられる。例えば、酸化チタン、カーボンブラック、群青、コバルトブルー、酸化クロム、べんがら、黒鉛等の無機顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントバイオレット19等の有機顔料が挙げられる。その他にも、蛍光顔料、蓄光顔料等も使用可能である。
【0016】
顔料の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部であり、更に好ましくは3〜20重量部である。顔料の含有量が、結着樹脂100重量部に対して1重量部未満であるとインキ組成物とした際に十分な着色性能が得られない場合があり、一方、40重量部を超えると、粘度が高くなりすぎてインキ流出性が悪くなる場合がある。
【0017】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、3〜20μm、好ましくは4〜15μmの体積平均粒径(Dv)を有する。Dvが3μm未満であると樹脂粒子が紙の繊維間に浸透する割合が高くなり、良好な消去性が得られない。一方、20μmを超えると 上記樹脂粒子を含むインキ組成物を内蔵するボールペン等で紙に文字、図面等を記載した場合に、手や指での擦過によりインキが剥離しやすくなり、良好な定着性が得られない。
【0018】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5であり、好ましくは1.0〜1.35である。Dv/Dpが1.5を超えると良好な消去性やインキ流出性が得られない。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dp)をこのような範囲にするために、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0019】
消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の粒子とすることができる。通常、このコアシェル型粒子のコア層は結着樹脂及び顔料で構成され、シェル層は結着樹脂のみで構成される。
【0020】
コアシェル型粒子の場合、コア粒子の体積平均粒径(Dv)は3〜20μm、好ましくは4〜15μmである。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)の比である粒径分布(Dv/Dp)が1.0〜1.5であると好ましく、1.0〜1.35であると更に好ましい。
コアシェル型粒子のコア層とシェル層との重量比率は特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1で使用される。
【0021】
コアシェル型粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。コアシェル型粒子のコア粒子径およびシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさおよびシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径および樹脂粒子製造時に用いたシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0022】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を製造する方法としては、例えば、懸濁重合法、懸濁重縮合法、懸濁付加反応法、シード重合法、分散重合法、液中溶媒蒸発法等が挙げられる。上記の中でも、懸濁重合法が好ましい。重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより製造する方法が特に好ましい。本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法については後述する。
【0023】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、例えばボールペン等の筆記具用の消しゴム消去性水性インキ組成物として用いられる。
【0024】
以下、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を、好ましくは粘着剤(常温造膜性樹脂)、湿潤剤、分散剤及び防腐剤等の添加剤を配合して、水又は水系溶媒に分散させたものである。
粘着剤は、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を、非吸収面上に筆記し、水が揮散した後に、筆跡が前記着色剤を含む樹脂からなる被膜又は層を有し、且つ、この樹脂被膜又は層が前述した剥離剤の層と分離し得るようにするためのものである。上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を構成する結着樹脂のガラス転移温度が30℃より低い場合には、特に添加する必要がない。粘着剤とは、常温で造膜性を有する水不溶性樹脂のエマルジョン若しくはヒドロゾル、又は、本来、水不溶性であるが、塩基による造塩によって水可溶化された樹脂か、又は水溶性樹脂のことを意味する。
【0025】
粘着剤としては、例えば、(1) ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂若しくはウレタン樹脂のエマルジョン又はヒドロゾル、(2) 水可溶化された酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂又はウレタン樹脂、又は(3) 水溶性樹脂、又は(1)〜(3)の組み合わせ等が挙げられる。
上記エマルジョン若しくはヒドロゾル又は水可溶化された酢酸ビニル共重合体における共単量体としては、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等、不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等の、酢酸ビニル以外のビニルエステル化合物、エチレン、プロピレン、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル炭化水素が挙げられる。これらは混合して共単量体として用いられてもよい。更に、上記に加えて、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル等の前記不飽和カルボン酸のエステル類も共単量体として用いることができる。また、酢酸ビニル共重合体は、ポリ酢酸ビニルへのグラフト共重合体であってもよい。
【0026】
特に好ましい酢酸ビニル共重合体としては、例えば、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸共重合体、酢酸ビニル−スチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。ポリ酢酸ビニルや、上述の酢酸ビニル共重合体のエマルジョン及びヒドロゾルは、容易に市販品として入手することができる。
【0027】
水可溶化された酢酸ビニル共重合体としては、上記したような酢酸ビニル共重合体を無機又は有機塩基によって造塩させて水可溶化したものであって、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩や有機アミン塩のような有機塩が挙げられる。このような水可溶化された酢酸ビニル共重合体も、市販品として入手可能である。
【0028】
同様に、水可溶化されたアルキド樹脂も、過剰量の多塩基酸と多価アルコールとから得られる遊離カルボキシル基を有するアルキド樹脂をアルカリ金属塩基、アンモニウム塩基、有機アミン等にて中和造塩させて、水可溶化してなるもので、これらも市販品として入手可能である。
水可溶化されたウレタン樹脂は、例えば、重合体主鎖にカルボキシル基を有せしめ、このカルボキシル基をアルカリ金属塩基、アンモニウム塩基、有機アミン等にて中和造塩させて、水可溶化してなるものであり、これらも市販品として入手可能である。更に、アルキド樹脂やウレタン樹脂のエマルジョンやヒドロゾルも市販品として入手可能である。
【0029】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の合成樹脂が挙げられ、また、アラビアゴム、セラック等の天然の水溶性樹脂も使用可能である。
粘着剤は、本発明による消しゴム消去性水性インキ組成物において、固形分として、通常、0.1〜20重量%、好ましくは、0.3〜15重量%の範囲で含有される。粘着剤の含有量が20重量%より多いと、消しゴム消去性水性インキ組成物の粘度が高くなりすぎ、筆記性に劣ったり消去性が低下する場合があり、一方、0.1重量%未満であると、筆跡が延び、筆記面が汚れる場合があるが、結着樹脂のガラス転移温度が30℃未満である場合には、このような問題が生じないため、添加する必要はない。
【0030】
湿潤剤は、特に消しゴム消去性水性インキ組成物の乾燥速度を所望の範囲に調整するものであり、湿潤剤を添加することにより、保存性、キャップオフ性を更に向上させることが可能となる。湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,8−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールもチオジグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ジグリセリン、ソルビット等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテルの他、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。湿潤剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、1〜30重量%である。
【0031】
分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステルソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ等の陰イオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等の非イオン系界面活性剤等を使用できる。この中でも、陰イオン系界面活性剤が好ましく、特にナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物がより好ましい。分散剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、0.01〜1重量%である。
【0032】
防腐剤としては、例えばソルビタン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、ベンズイミダゾール系化合物等が挙げられる。防腐剤の添加量は、消しゴム消去性水性インキ組成物の全重量中、通常、0.2〜3重量%である。
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を水又は水系溶媒に分散させたものである。水の含有量は好ましくは60〜95重量%程度であり、更に好ましくは70〜80重量%程度である。
消しゴム消去性水性インキ組成物中の樹脂粒子の含有量は、好ましくは3〜40重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%である。樹脂粒子の含有量が3重量%未満であると、着色性が十分でなく、一方、40重量%を超えるとキャップオフ性が低下する場合がある。
【0033】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物には、さらに水溶性高分子を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、水溶性であれば特に制限はなく、例えば天然高分子、合成高分子、半合成高分子等のいずれであっても用いることができる。また、公知のゲルインキのゲル化剤として用いられているものが使用可能である。具体的には、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、プルラン、ラムザンガム、ウエランガム、サクシノグルカン等の多糖類が挙げられる。
消しゴム消去性水性インキ組成物中の水溶性高分子の含有量は、通常、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜6重量%である。水溶性高分子の含有量が0.1重量%未満であると、インキが分離する場合があり、一方、10重量%を超えると、粘度が高くなりすぎ、インキの流出性が悪くなる場合がある。
【0034】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物には、必要に応じて従来より水性インキに用いられている各種添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば防錆剤、粘度調整剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、その粘度は最終製品の用途に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは100〜10,000mPa・sであり、更に好ましくは500〜5,000mPa・sである。なお、消しゴム消去性水性インキ組成物の粘度は、各成分の配合等により適宜調節することができる。
【0036】
本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、各種の筆記具、インクジェットプリンター用インキ等に適用することができる。筆記具としては、例えばマーカー、サインペン、ボールペン等のいずれにも用いることができる。特に、優れた定着性、消去性等の特性を有するので、ボールペン(水性ボールペン)用として最適である。
【0037】
次に、本発明のボールペンについて説明する。本発明のボールペンは、上記消しゴム消去性水性インキ組成物を内蔵してなる。
本発明のボールペンは、インキとして、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を用いており、その他は公知のボールペン用部材を用いればよい。例えば、インキ収容管としては公知の材料、大きさのものを用いればよい。また、インキ収容管の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂性パイプや金属製パイプが使用可能である。また、ボールペンチップについても公知のものが使用可能である。
【0038】
ボールペンの組み立ては、公知のボールペン組み立て方法に従えばよい。例えば、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物を、洋白ボールペンチップ(ボール材質:超硬合金、セラミックス等)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管に充填してボールペンレフィールとし、次いで本体にボールペンレフィールを取り付け、尾栓を装着した後、ボールペンレフィールを遠心分離機により管中の空気を除去することにより、ボールペンを得ることができる。
【0039】
次に、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法について説明する。
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法は、重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することを特徴とする。
水性媒体とは、水又は水を主成分とする溶媒のことを意味する。
【0040】
結着樹脂原料である重合性単量体としては、例えば、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン系単量体;等が挙げられる。
上記モノビニル単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル系単量体との併用などが好適に用いられる。
【0041】
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体を用いてもよい。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。架橋性単量体の使用量は、モノビニル単量体100重量部当たり、通常、10重量部以下、好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0042】
また、モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いてもよい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。
【0043】
マクロモノマーは、前記モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーの使用量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。
【0044】
本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法においては、分散安定剤として無機化合物を用いる。無機化合物としては、重合して得られる樹脂粒子の体積平均粒径が3〜20μm、好ましくは4〜15μm、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.35となるものであれば特に制限なく用いることができる。このような無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの無機塩;シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の無機水酸化物;等が挙げられる。上記の中でも、難水溶性無機化合物である、リン酸カルシウムや水酸化マグネシウムが好ましい。
【0045】
上記難溶性無機塩の使用量は、重合性単量体100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部であり、更に好ましくは2〜7重量部である。難溶性無機塩の使用量が、重合性単量体100重量部に対して1重量部未満であると重合安定性が低下して凝集物が発生する場合があり、一方、10重量部より多いと、良好な消去性を得られない場合がある。
【0046】
また、水性媒体中には、難溶性無機塩と共に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することができる。
【0047】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロールイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0048】
上記重合開始剤の中でも、用いられる重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加してもよいが、懸濁重合の場合は重合性単量体組成物の液滴形成工程終了後の懸濁液、乳化重合の場合は乳化工程終了後の乳化液に、直接添加してもよい。
【0049】
また、重合に際しては、反応系に分子量調整剤を添加することが好ましい。該分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0050】
上述した、コアシェル型樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。具体的には、粉砕法、重合法、会合法又は転相乳化法により得られた樹脂粒子をコア粒子として、それに、シェル層を被覆することによりコアシェル型樹脂粒子が得られる。この製造方法の中でも、in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0051】
in situ重合法によるコアシェル型樹脂粒子の製造方法を以下に説明する。
コア粒子が分散している水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型樹脂粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、または別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加しても、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加してもよい。
【0052】
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
シェル用重合性単量体を添加する際に水溶性の重合開始剤を添加するとコアシェル型樹脂粒子を得やすくなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなると考えられる。
【0054】
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0055】
懸濁重合の際の温度は、好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは 50〜90℃である。また、反応時間に特に制限はないが、重合率が90%以上に達するまで反応を行えばよく、好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜10時間である。重合終了後に、常法に従い、濾過、洗浄、脱水の操作を、必要に応じて数回繰り返すことにより樹脂粒子を得る。また、濾過、洗浄、脱水の操作に加え、乾燥を行ってもよい。
【0056】
懸濁重合後に得られる樹脂粒子の水分散液は、酸又はアルカリを添加して、分散安定剤を水に溶解して、除去することが好ましい。分散安定剤として、難水溶性金属水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0057】
濾過脱水の方法は特に制限されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち遠心濾過法が好適である。濾過脱水装置としては、ピーラーセントリフュージョン、サイホンピーラーセントリヒュージョンなどを挙げることができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下の実施例において、部および%は、特に断りのない限り重量部又は重量%を表す。
【0058】
本実施例では、以下の方法で消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子、消しゴム消去性水性インキ組成物の評価を行った。
(1)消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の粒径
消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)は粒径測定機(ベックマン・コールター社製、機種名「マルチサイザー」)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、測定粒子個数:100,000個の条件で行った。
【0059】
(2)消去性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作成し、このボールペンを用いて、レポート用紙(コクヨ製、品番レ−116AN)の紙面に直径約2cmの円を連続して描き、得られた筆跡を消しゴム(シードゴム工業社製、商品名:STAR Radar)を用いて、筆記から5秒後及び1日後に擦過して消去性の難易度を判定した。下記評価基準に従って評価を行った。
○:容易に消去できる。
△:10回までの擦過で消去できるものの、若干筆跡が残る。
×:10回までの擦過では消去できない。
(3)定着性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを用いて、上質紙に筆記し、乾燥後に描線を指で擦り、描線の汚れ状態を鉛筆の種類と比較して調べた。鉛筆の筆記荷重は500gとした。下記評価基準に従って評価を行った。
○:2H以下の汚れであった。
△:2H〜2B程度の汚れであった。
×:2B以上の汚れであった。
【0060】
(4)インキ流出性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを用いて上質紙に筆記した場合におけるインキ流出量(mg/100m)を測定した。
(5)保存性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンを50℃の温度に1ヶ月保存し、1ヶ月経過後のインキ分離の有無、インキ流出性(目詰まり、途切れ及び濃度)について観察を行い、下記評価基準に従って評価を行った。
○:インキが全く分離せず、インキ流出性は良好であった。
△:若干インキが分離し、インキ流出性にも問題があった。
×:全く実用できないほどインキが分離した。
【0061】
(6)キャップオフ性
水性インキ組成物を用いて水性ボールペンを作製し、この水性ボールペンのキャップを開けたままで1時間放置した後の筆記状態を観察し、下記評価基準に従って評価を行った。なお、筆記は、縦1cm×横1cmの正方形内に「A」の文字を筆記し、何文字で筆記が可能となるかを観察した。
○:すぐに筆記可能であった。
△:3文字以内で筆記可能となった。
×:20文字以上筆記できなかった。
【0062】
実施例1
スチレン80部及びn−ブチルアクリレート20部からなるコア用重合性単量体組成物、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25」)7部を混合し、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物Aを得た。
【0063】
一方、イオン交換水200部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)6.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)5.0部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液Aを調製した。生成した前記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径はD50(個数粒径分布の50%累積値)が0.35μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.84μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器における粒径の測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0064】
一方、メチルメタクリレート3部及び水100部を混合し、シェル用重合性単量体の水分散液Aを得た。
【0065】
上記で得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに、コア用重合性単量体組成物Aを投入し、液滴が安定するまで撹拌を行った。液滴が安定した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルO」)6部を添加し、次いで15,000rpmで回転するエバラマイルダー(荏原製作所(株)製、商品名「MDN303V」)を用いて剪断撹拌を行い、単量体組成物の液滴を形成した。この形成したコア用単量体混合物の水分散液を、撹拌翼を装着した反応器に入れ、85℃の温度で重合反応を開始し、重合転化率がほぼ100%に達した時に、前記シェル用重合性単量体Aに水溶性開始剤(和光純薬工業(株)製、商品名「VA−086」)(2,2’−アゾビス(2−メチル−N(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)0.3部を溶解し、その溶液を反応器に入れた。重合反応を4時間継続した後、反応を停止し、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の水分散液を得た。得られた重合体粒子の水分散液の固形分濃度は27重量%であった。
【0066】
上述のようにして得られたコアシェル型重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸を用いて洗浄し(25℃、10分間)、系のpHを4.5以下にした。この水分散液をろ過し、連続式ベルトフィルター(住友重機会工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて脱水、洗浄し、固形分をろ過分離し、消しゴム消去性樹脂粒子を含む水分散液(固形分濃度:50重量%)を得た。得られた重合体粒子ケーキの固形分を50重量%となるように調整した。
【0067】
水溶性高分子としてラムザンガム0.35重量部、湿潤剤としてエチレングリコール3.5重量部、分散剤としてナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部、防腐剤として安息香酸ナトリウム1重量部を水に溶解して混合した。この溶液を撹拌しながら、先に調整した消しゴム消去性樹脂粒子を含む水分散液(固形分濃度:50重量%)15重量部を徐々に添加し、添加後も3時間撹拌を行い、消しゴム消去性水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
高速撹拌TK−ホモミキサーを備えた容器に、イオン交換水710重量部に、0.1モルNa3PO4水溶液450重量部を添加し、回転数を200rpsに調整して60℃の温度に加温した。次いで、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液68重量部を添加し、難溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒体系を得た。得られた分散媒体系を、水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに代えて用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、消しゴム消去性水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
セパラブルフラスコ(2リットル)に水480部を入れ、更にポリビニルアルコール(日本合成社製、商品名「ゴーセノールGL−03」)20部を溶解して分散媒とした。この分散媒にカーボンブラック(デグサ社製、商品名「Printex L」)8部、スチレン80部、n−ブチルアクリレート20部からなるコア用重合性単量体組成物、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部からなる樹脂粒子組成物を加え、高速撹拌により約7μmの液滴とした後、撹拌を続けながら60℃の温度で6時間懸濁重合を行った。次いで、反応系を室温まで冷却した後、分散媒中のポリビニルアルコールを除去するために水600部を加えて洗浄し、遠心分離法により樹脂粒状体を分離した。得られた樹脂粒状体のスラリーに、更に水600部を加えて洗浄した後、再度遠心分離法により分離し、水で固形分を50重量%になるように調整し、樹脂粒状体分散液Bを得た。得られた樹脂粒状体分散液中の粒状体のガラス転移温度は8℃であり、体積平均粒径は8.2μmであり、Dv/Dpは1.65であった。
【0070】
上記のようにして得られた樹脂粒状体分散液Bを混合しディスパーにて均質になるまで撹拌して消しゴム消去水性インキ組成物を得た。
得られた消しゴム消去性水性インキ組成物について、上述した評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の消しゴム消去性水性インキ組成物の評価結果から、以下のことがわかる。
体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が、本発明で規定した範囲より大きい消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含む、比較例1の消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性水性インキ流出性、保存性が劣るものである。
これに対して、本発明の実施例1及び2の消しゴム消去性水性インキ組成物は、消去性水性インキ流出性、保存性、定着性、キャップオフ性に優れるものである。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述した通り、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子は、水性インキ組成物に用いた場合に、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
【0074】
また、本発明の消しゴム消去性水性インキ組成物は、上記樹脂粒子を含有しており、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れたものである。
また、本発明の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法によれば、消去性、定着性、インキ流出性、保存性、キャップオフ性等の特性に優れる消しゴム消去性水性インキ樹脂粒子を製造することができる。
Claims (5)
- 結着樹脂と顔料とからなる、3〜20μmの体積平均粒径(Dv)を有し、体積平均粒径と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が1.0〜1.5である、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子。
- 重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することにより得られた、請求項1に記載の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子。
- 請求項1又は2に記載の消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子を含有する、消しゴム消去性水性インキ組成物。
- 請求項3に記載の消しゴム消去性水性インキ組成物を内蔵してなるボールペン。
- 重合性単量体及び顔料を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤として無機化合物を含む水性媒体中に分散させて懸濁重合することを特徴とする、消しゴム消去性水性インキ用樹脂粒子の製造方法。
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-
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- 2002-12-25 JP JP2002374303A patent/JP2004204036A/ja active Pending
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