JP2004203905A - 金属板被覆用フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶化度が異なる少なくとも2種類のポリエステルを配合してなる熱接着性を有するポリエステルフィルムであり、当該フィルムの融点以上に加熱し60秒以上保持後急冷したときのフィルム表面の一方(A面)と軸受け用鋼球との間の動摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、金属缶蓋のように押し圧加工を施される、また2ピース金属飲料缶のように絞りしごき加工の施される厳しい摩擦条件下で成形加工を受ける金属缶などの製造用金属板に熱ラミネートされるフィルムであって、従来使用されているポリエステルフィルムに比べて優れた成形加工特性を有しながら、熱接着性にも優れる金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
成形加工用途の金属板被覆用ポリエステルフィルムは種々提案されてきている。例えば、特許文献1には、ワックスを含有させることで摩擦係数を下げたフィルム、特許文献2によれば機械的特性や耐熱性に優れ、高結晶化度を保持しながら金属板と熱圧着可能な、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなる金属板被覆用ポリエステルフィルムが記載されている。さらに特許文献3には、有機燐化合物を配合しポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのエステル交換反応を抑制した成形加工性や生産性に優れたフィルムが記載されている。また同様の目的で、特許文献4には、特定のシラノール基を有する珪素化合物を配合したフィルムが記載されている。さらに成形加工においてフィルムに傷や欠陥が生じることを防ぐために、特許文献5、特許文献6や特許文献7に、成形加工を施す前にフィルムを被覆した金属板を加熱、急冷することで被覆フィルムの低結晶化(非晶化)熱処理を行うことが記載されている。
【0003】
しかしながら、例えば特許文献1のようにワックスを含有させるとポリエステルフィルムと金属板との熱接着性が低下する問題がある。また成形加工、特に押し圧加工や絞りしごき加工のようにダイスよりフィルム被覆材料を押し曲げたり、引き延ばし成形加工したりする場合、ダイスとフィルムとの間には過酷な摩擦が生じフィルムに傷が発生しやすく、上記対策を施してもまだ十分なレベルには至っていない。
【特許文献1】特開平14−302560号公報 第2頁
【特許文献2】特開平10−110046号公報 第2頁
【特許文献3】特開平14−69277号公報 第2頁
【特許文献4】特開平14−194105号公報 第2頁
【特許文献5】特開平13−262371号公報 第6頁
【特許文献6】特開平13−262370号公報 第5頁
【特許文献7】特開平13−261020号公報 第6頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、優れた熱接着性を有し、かつ成形加工性に優れた金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成のフィルムよれば上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、結晶化度が異なる少なくとも2種類のポリエステルを配合してなる熱接着性を有するポリエステルフィルムであり、当該フィルムの融点以上に加熱し60秒以上保持後急冷したときのフィルム表面の一方(A面)と軸受け用鋼球との間の動摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする金属板被覆用ポリエステルフィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルム(以下、単に「フィルム」ということがある)における熱接着性について説明する。本発明における熱接着性とは、金属板の温度が、140℃以上フィルムの融点以下の温度に加熱され、フィルムと圧着したとき金属板に接着できることを意味する。金属板をフィルムの融点以上に加熱することでしか接着できないフィルムは、収縮しやすくラミネート工程で皺などが入りやすくなる、また温度管理やライン速度管理が厳しくなり生産効率が下がる。また、140℃未満で接着ができるフィルムはレトルト処理などにより100℃以上に加熱すると金属板より剥がれやすいため、これらのフィルムは、本発明の対象外である。
【0007】
本発明で使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとのポリエステルを主たる成分、すなわち50重量%以上含有するものである。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。一方、グリコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0008】
本発明では、少なくとも2種類以上の結晶化度の異なるポリエステルを配合してなる。結晶化度の異なるという意味は、配合される少なくとも2種類のポリエステル間で示差走査熱量計において融解に伴う吸熱ピークより計算される融解熱量の差が、10J/g以上、好ましくは15J/g以上、さらに好ましくは20J/g以上であることを意味する。融解熱量の差が、10J/g未満の2種類以上の原料を配合しても熱接着性の優れたフィルムを得ることはできない。
【0009】
具体的には、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートとイソフタル酸共重合体、ポリエチレンナフタレートとポリブチレンテレフタレートなど挙げられる。これらの中でも大量生産されているポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの配合が好ましい。
【0010】
上記配合についてより詳しく説明する。用いる樹脂組成物は、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂(1)およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂(2)よりなることが好ましい。上記の樹脂(1)とは、ブチレンテレフタレート単位を、好ましくは85モル%以上含有する樹脂を指す。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが通常使用される。上記の樹脂(2)とは、エチレンテレフタレート単位が、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する樹脂である。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが通常使用される。
【0011】
上記樹脂(1)および樹脂(2)の共重合成分として用いられる多価カルボン酸の具体的例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、また多価アルコールの具体的例としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−2−ブチル−1−プロパンジオール等が挙げられる。
【0012】
また樹脂(1)と樹脂(2)との合計量に対する樹脂(1)の割合は、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。樹脂(1)の割合が20重量%未満の場合は、熱接着性が低下する。70重量%を超える場合は、連続成形により高温(60〜65℃)となった絞りしごき成形機のポンチ、リング等の金型に接触した際に、フィルムが粘着挙動を示す。
【0013】
また本発明に使用される前記の各ポリエステル樹脂(1)の固有粘度[η]は、好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは0.9〜1.4、さらに特に好ましくは1.0〜1.3である。[η]が0.8未満の場合は、成形加工性が低下する傾向がある。一方、[η]が1.5を超える場合は、生産性が低下したり、製膜の際にフィルムに流れムラが発生したりする傾向がある。
本発明のフィルム表面の水滴接触角は、80゜以下、さらには75゜以下、特に70゜以下が好ましい。水滴接触角が80゜を超えるとフィルム表面の疎水性が高まり、金属板との熱接着性が低下する傾向がある。
【0014】
また本発明の低結晶化熱処理後のフィルムと鋼球との間の動摩擦係数は、0.30以下である。なお本発明における低結晶化熱処理とは、フィルムと金属板を熱接着後にフィルムの融点以上に60秒間保持した後、急冷しフィルム全体を非晶化する熱処理を意味する。また動摩擦係数とは、測定条件の詳細は後述するが、熱接着し低結晶化熱処理後のラミネート金属板フィルム表面と軸受け用鋼球との間の25℃における動摩擦係数である。動摩擦係数の値は、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.20以下、さらに特に好ましくは0.17以下である。動摩擦係数が0.30以上では成形加工における厳しい摩擦条件下において傷等の欠陥がフィルム表面に発生する。
【0015】
また低結晶化熱処理前のフィルムと金属との摩擦係数は、0.25〜1.0が好ましく、さらに好ましくは0.30〜0.8である。フィルムと金属との摩擦係数が0.25以下では、フィルム表面にワックス等の摩擦低減物質が析出している場合があり、フィルムのラミネート工程やその後の低結晶化熱処理工程でロール等との接触によりフィルム表面からワックス等の摩擦低減物質が脱離し、製造ラインの清浄性が低下することがあり、また低結晶化熱処理後の摩擦係数が下がらないことがある。一方、摩擦係数が1.0を超えるとフィルム製造工程でフィルムの巻き作業性が低下する傾向がある。
【0016】
一般に低結晶化処理によりフィルム表面粗度は低下し、摩擦係数は上がる傾向にあるため、本発明において、フィルム中には低結晶化熱処理後の動摩擦係数を低減するためにワックスなどの摩擦低減物質を含有することが好ましい。摩擦低減物質の含有量は、通常0.05〜2.5重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、さらに好ましくは0.2〜1.5重量%である。摩擦低減物質が0.05重量%未満では、摩擦低減効果が十分に発揮されないことがある。また2.5重量%を超えるとフィルムの熱接着性が低下しラミネート条件が厳しくなり生産性が低下したり、フィルム製造工程で破断しやすくなったりすることがある。
【0017】
本発明に用いる摩擦低減物質の融点は、結晶化度の異なる2種類以上のポリエステル混合物のガラス転移温度Tg℃以上、さらにはTg+3℃〜200℃、特にTg+5℃〜180℃が好ましい。摩擦低減物質の融点が、混合樹脂のTg℃未満では、フィルム延伸熱処理工程で、摩擦低減物質がフィルム中に取り込まれてしまうため、低結晶化熱処理後の摩擦低減効果が低下する傾向がある。
好ましい摩擦低減物質は、高級脂肪酸、脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル化合物、または脂肪族カルボン酸とアミン化合物のアミド化合物である。該エステル化合物やアミド化合物は、石油系ワックスと比較してポリエステルへの分散性に優れている。当該化合物の具体的例としては、モンタン酸、ステアリルステアレート、ソルビタントリステアレート、グリセリントリステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
【0018】
これらの中でもポリアルキレングリコールとのカルボン酸またはカルボン酸無水物とのジエステル化合物が好ましい。当該エステル化合物を用いた場合、例えばポリチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート混合物におけるエステル交換反応が進みにくく、成形加工性をさらに改善できる。なおエステル交換反応の程度は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合物の場合、ポリエチレンテレフタレート由来の融点が、ポリエチレンテレフタレート自身の融点(255℃)からどの程度低下したかにより評価できる。
【0019】
さらにエステル化合物は、フィルムに適量含有させても水滴接触角の上昇が他の化合物と比較して小さく、その結果熱接着性に悪影響を与えることなく摩擦低減効果を発揮できる。
エステル化合物のアルキレングリコールの具体的例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。また、ジエステル化合物のカルボン酸またはカルボン酸無水物は、炭素数が8以上飽和または不飽和炭化水素基、好ましくは12以上の飽和または不飽和炭化水素基である。具体的には、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、アルケニルコハク酸無水物である。
【0020】
さらに本発明のフィルムのリン含有量は、好ましくは30〜1000ppm、さらに好ましくは50〜900ppm、特に好ましくは80〜800ppmである。リン含有量が30ppm未満では、エステル交換の固有粘度低下や融点降下を抑制する効果が乏しい傾向がある。一方、1000ppmを超えると、異物発生の原因となることがある。リン元素の由来は、ポリエステル重合時に使用される重合安定剤の有機リン化合物または無機リン化合物であることが、フィルム中の異物を低減しピンホール等の発生を抑制でき好ましい。
【0021】
また、本発明のフィルムが金属板と接着する面と反対面の表面粗さRaは、0.02μm以上、さらには0.03〜0.2μm、特に0.04〜0.15μmの範囲が好ましい。Raが0.02μm未満では、成形性が劣る傾向があり、またフィルム加工時の巻き作業性が劣ることがある。また、Raが0.2μmを超えると、フィルム走行時による摩擦で摩耗粉が発生しやすくなる場合がある。
【0022】
本発明のフィルムは上記表面粗さを実現するため滑剤粒子を含有することが好ましい。滑剤粒子の具体例としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、カオリン、タルク、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン等の有機粒子が挙げられる。これら滑剤粒子は単独で含有してもよいし、二種以上を組み合せて含有してもよい。
【0023】
滑剤粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜7μm、特に好ましくは0.5〜5μmである。0.1μm未満では、フィルム加工時の巻き作業性が劣る傾向がある。一方、10μmを超えると、製缶加工工程等において滑剤粒子が積層フィルムから脱落することがある。
滑剤粒子の含有量は、好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.02〜0.8重量%、さらに特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。0.01重量%未満では、フィルム走行時による摩擦係数が上がり取扱い性が低下する傾向がある。一方、1.0重量%を超えると金属板加工工程でロールやレールとの間の摩擦によりフィルム表面から脱離する滑剤粒子が多くなり周辺の加工ラインの清浄性が損なわれることがある。特に金属缶被覆用途では脱離した不活性物質が金属缶の内容物に移行しやすくなり味覚の変化を起こす恐れがあり好ましくない。
【0024】
滑剤粒子の粒度分布幅(d25/d75)は、好ましくは1.0〜1.5でありさらに好ましくは1.0〜1.4である。1.5を超えると、粗大粒子によるフィルム異物欠陥やフィルム製造工程においてフィルム破断が起きやすいために好ましくない。ここで、粒度分布幅(d25/d75)とは、25体積%における粒径と75体積%における粒径との比率、すなわち、25体積%における粒径(d25)/75体積%における粒径(d75)で示される値である。
【0025】
本発明のフィルムには、本発明の特性を損なわない範囲において、他のポリエステル系樹脂、それ以外の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂やエンジニアリングプラスチックス)、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤成分が適量含まれていてもよい。
また本発明のフィルムは、さらに必要に応じて金属板との接着面の反対面は、易印刷性、易滑性、離型性、帯電防止性、易接着性等を付与する目的のコーティング処理を行うこともできる。
【0026】
また本発明のフィルムの厚みは用途により異なるが、好ましくは5〜100μmである。フィルム厚みが5μm未満では、積層フィルムの製膜性が低下する傾向がある。一方、フィルム厚みが100μmを超えると、ラミネート板の製造コストが増加しやすいとともに、省資源化しにくい場合がある。
本発明のフィルムの製造法は、特に限定されないが、例えば、次のような方法が好適に採用される。すなわち、原料ポリエステルを押出機にて溶融し、Tダイより押出し、冷却ロールにて急冷し非晶性シートとし、原料ポリエステルのガラス転移温度以上に加熱した後、縦延伸し、次いで、横延伸と逐次延伸するかまたは同時二軸延伸する。
【0027】
次に、金属材料製のシート材を加熱した後、その片面または両面に本発明のフィルムを加熱圧着し貼合せ、金属製板を製造する。
本発明のフィルムは、主に押し圧成形加工、絞りしごき成形加工等の厳しい摩擦条件下にさらされる金属板被覆用フィルムとして設計されているが、金属板の両面または片面にラミネート処理した後、金属板を所望のサイズに切断し、溶接などにより形状をつくるもの、例えば、化粧板、防錆用鋼板、飲料缶に代表される食品缶詰缶、ペール缶、ブリキ板製18L缶、鋼製ドラム等のフィルムとしても好適である。また、金属板の素材の種類は、特に制限されず、具体例としては圧延鋼板、ブリキ、TFS(チンフリースチール)、アルミニウム等が挙げられる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの例に何ら限定されない。
まず、以下の各例のフィルムにおける評価方法、計算方法または測定方法について説明する。
【0029】
(1)水滴接触角
23℃、50%RHで試料フィルムと、蒸留水との接触角を、協和界面化学(株)社製接触角計 CA−DT−A型を用いて測定した。接触角は、左右2点、試料数3で計6点測定し、平均値を求め接触角とした。なお、水滴の直径は2mmで、滴下後1分後の数値を読み取った。
【0030】
(2)融点
ティー・エイ・インスツルメント社製MDSC2910を用いて、昇温速度20℃/分で0℃から300℃まで測定を行い、結晶融解における吸熱ピーク温度を融点とした。
【0031】
(3)リン含有量
蛍光X線分光分析装置XRF1500によって定量した。
【0032】
(4)熱接着性
上下2本のロールを有するラミネート装置を使用し、0.18mm厚のアルミニウム板の片面に各例にて得られたポリエステルフィルムを加圧ラミネートし、ラミネートアルミニウム板を作製した。貼合せ時のアルミニウム板温度は180と200℃、貼合せ速度10m/分とした。得られたラミネート板を、熱風オーブンを使用して230℃で10秒間加熱処理し、熱接着性を以下のように評価した。
◎:貼合せ温度180℃でフィルムが80%以上アルミ板に密着し、その後230℃で10秒間加熱処理しても剥がれいもの
○:貼合せ温度200℃でフィルムが80%以上アルミ板に密着し、その後230℃で10秒間加熱処理しても剥がれないもの
△:貼合せ温度200℃でフィルムが80%以上アルミ板に密着するが、その後230℃で10秒間加熱処理すると剥がれるもの
×:貼合せ温度200℃でフィルムがアルミ板に密着した面積が80%未満のもの
【0033】
(5)動摩擦係数の測定
・低結晶化熱処理前の動摩擦係数
上記にしたがってフィルムをアルミニウム板にラミネートしたのち、直径3/8インチの軸受け用鋼球を3個固定した治具に荷重をかけ、フィルムと3個の鋼球の接点にかかる荷重を120gとしたあと20mm/分で滑らせて摩擦力を測定した。なお、測定は、温度23℃±1℃、湿度50%±5%の雰囲気下で行い、5mm滑らせた点での値を動摩擦係数とした。
・低結晶化熱処理後のフィルム表面と鋼球との間の動摩擦係数
上記にしたがってフィルムをアルミニウム板にラミネートしたのち、フィルムの融点(2つ以上融点が観察される場合は、高い方)のプラス10℃に設定されたオーブンに60秒間入れて取り出し室温の鉄板上に置いて急冷し、低結晶化熱処理ラミネート板を作成した。次に直径3/8インチの軸受け用鋼球を3個固定した治具に荷重をかけ、フィルムと3個の鋼球の接点にかかる荷重を120gとしたあと20mm/分で滑らせて摩擦力を測定した。なお、測定は、温度23℃±1℃、湿度50%±5%の雰囲気下で行い、5mm滑らせた点での値を動摩擦係数とした。
【0034】
(6)成形加工性
ダイスとポンチを使用し数工程で、上記のラミネート板を、底面直径65mm、高さ150mmの成形容器(以下、カップと略す)に30ストローク/分の速度で絞りしごき成形した。カップ底面より高さ120mm付近の側壁部の板厚は、元のアルミニウム板厚に対して約30%に減少していた。得られたカップについて、カップ成形時の、ダイスとフィルムの間でのカジリの発生に関して目視による観察を行い、以下に示す基準により評価した。
◎:30ストローク/分の速度で1000缶以上の連続成形を行っても、カジリの発生は全く見られないもの
○:30ストローク/分の速度で100缶以上の連続成形を行っても、カジリの発生は見られないもの
△:30ストローク/分の速度で、100缶の連続成形を行うとカジリによる傷が見られるものが1缶以上10缶以下存在するもの
×:カジリの発生により、100缶の連続成形は不可能であり、キズが見られるものや、成形機を停止せざるを得ないケース。
【0035】
実施例および比較例において使用したポリエステル原料は、次のとおりである。
(1)ポリエステルA−1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを使用し、触媒に酢酸マグネシウム四水塩を用いて通常の条件でエステル交換反応を終了した、その後平均粒径2.5μm不定形シリカを含むエチレングリコールスラリーを添加し、さらに安定剤および重合触媒としてエチルアシッドフォスフェートおよび三酸化アンチモンを加えて通常条件で重縮合した。ポリエステルに含まれる不定形シリカの含有量は、0.2重量%、極限粘度は、0.67、マグネシウム含有量は、30ppm、リン含有量は、20ppm、アンチモン含有量は、250ppmであり、カルボキシル基末端基量は、36当量/トンであった。
【0036】
(2)ポリエステルA−2
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、触媒に酢酸カルシウム二水塩を用いて通常の条件でエステル交換反応を終了した、その後平均粒径2.5μm不定形シリカを含むエチレングリコールスラリーを添加し、さらに安定剤および重合触媒としてエチルアシッドフォスフェートおよび三酸化アンチモンを加えて通常条件で重縮合反応を行った。ポリエステルに含まれる不定形シリカの含有量は、0.2重量%、極限粘度は0.62、カルシウム含有量は、250ppm、リン含有量は、250ppm、アンチモン含有量は380ppmで、カルボキシル基末端基量は、40当量/トンであった。
【0037】
(3)ポリエステルB−1
(CH2−CH2−O)の繰り返し単位が200から300のポリエチレングリコールにステアリン酸を反応させ合成されたポリエチレングリコールジステアレート(融点 56℃)をポリエステルA−1に5.0重量%溶融練り混みした。
【0038】
(4)ポリエステルB−2
モンタン酸(融点89℃)をポリエステルA−1に5.0重量%溶融練り混みした。
【0039】
(5)ポリエステルC
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1、4−ブタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、常法の重縮合で製造された。極限粘度は1.05、カルボキシル基末端基量が、10当量/トンであった。
【0040】
(6)ポリエステルD
ポリエステルA−1の製造において、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル77重量部とイソフタル酸ジメチル23重量部に変更して合成した。
【0041】
実施例1
ポリエステルB−1を20重量部、ポリエステルCを40重量部とポリエステルDを40重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機にて280℃でダイより押出し、直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムをロール延伸機を用いて55℃で3.5倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて90℃で4.0倍に横延伸した。さらに、フィルムの幅を固定した状態において、200℃で熱処理して15μmの延伸フィルムを得た。
【0042】
実施例2
ポリエステルA−1を20重量部、ポリエステルB−1を20重量部とポリエステルCを60重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機にて275℃でダイより押出し、直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムをロール延伸機を用いて55℃で3.5倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて90℃で4.0倍に横延伸した。さらに、フィルムの幅を固定した状態において、150℃で熱処理して15μmの延伸フィルムを得た。
【0043】
実施例3
ポリエステルの配合をポリエステルA−2を25重量%、ポリエステルB−2を15重量%、ポリエステルCを60重量%としたほか、実施例2と同じ条件でフィルムを得た。
【0044】
実施例4
ポリエステルA−1のかわりにポリエステルA−2を用いたほか、実施例2と同じ条件でフィルムを得た。
実施例5
ポリエステルB−1のかわりにポリエステルB−2を用いたほか、実施例1と同じ条件でフィルムを得た。
【0045】
比較例1
ベント付き2軸押出機に供給する樹脂をポリエステルA−1が40重量部とポリエステルCが60重量部の混合物としたほか、実施例2と同じ条件でフィルムを得た。
【0046】
比較例2
ポリエステルA−1を80重量部、ポリエステルB−1を20重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機にて280℃でダイより押出し、直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムを、ロール延伸機を用いて85℃で3.5倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて100℃で4.0倍に横延伸した。さらに、フィルムの幅を固定した状態において、200℃で熱処理して15μmの延伸フィルムを得た。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜5のフィルムは、表1に示すように結晶化度の異なる2種類のポリエステルの混合物からなるポリエステルフィルムであり、さらに摩擦低減化合物が、適量含有されている。そのため熱接着性や成形加工性が良好である。特に実施例4は、フィルムのリン濃度が30ppm以上で摩擦低減物質としてポリアルキレングリコールエステル化合物が含有している。そのため成形加工性が特に優れる。また水滴接触角が大きくならず、熱接着性に対する悪影響がほとんどない。一方、比較例1は、摩擦低減化合物が含有されておらず成形加工性が悪いと評価された。比較例2は、2種類以上の結晶化度の異なるポリエステル混合物ではなくポリエチレンテレフタレートのみからなる単層のフィルムであり、熱接着性不良と評価された。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、金属缶蓋のように押し圧加工を施される、また2ピース金属飲料缶のように絞りしごき加工の施される厳しい摩擦条件下でも傷等の欠陥の発生問題がなく、十分な成形加工性を有しながら、熱接着性に優れた金属板被覆用ポリエステルフィルムが提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
Claims (2)
- 結晶化度が異なる少なくとも2種類のポリエステルを配合してなる熱接着性を有するポリエステルフィルムであり、当該フィルムの融点以上に加熱し60秒以上保持後急冷したときのフィルム表面の一方(A面)と軸受け用鋼球との間の動摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする金属板被覆用ポリエステルフィルム。
- ポリアルキレングリコールとのカルボン酸またはカルボン酸無水物とのエステル化合物を0.05〜2.5重量%含有することを特徴する請求項1記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。
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