JP2004058402A - 金属板被覆用フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】熱接着性を有し、絞りしごき成形において十分な成形特性を有しながら、耐衝撃性、耐レトルト性に優れた金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ブチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とエチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とからなるフィルムであり、カルボキシル基末端基量が35当量/トン以上であり、表面粗さRaが0.02μm以上であることを特徴とする金属板被覆用フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】ブチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とエチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とからなるフィルムであり、カルボキシル基末端基量が35当量/トン以上であり、表面粗さRaが0.02μm以上であることを特徴とする金属板被覆用フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、2ピース金属飲料缶のように絞りしごき加工の施される金属缶の製造用金属板に熱ラミネートされるフィルムであって、従来使用されているポリエステルフィルムに比べて優れた成形加工特性を有しながら、耐衝撃性にも優れる金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の製造方法としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを加熱により金属板に貼り合わせた後、絞りしごき成形によりカップ状に製缶する方法が知られている。金属缶用に使用されるポリエステルフィルムは大きく二つの種類に分類される。一つは、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸配向層と、当該配向層より低融点のポリエステルからなる接着層とから構成される積層フィルムであり、他の一つは、非晶性または低配向のポリエステルフィルムである。
しかしながら、前者の積層フィルムは、耐レトルト性、耐衝撃性、耐錆性などの保護特性の点では概ね良好であるが、成形加工の際、フィルムにクラックやしわが発生したり、白化したりする場合がある。一方、後者の非晶性ポリエステルフィルムは、成形加工特性の点では優れるが保護特性に劣る。また、低配向のポリエステルフィルムは、保護特性および成形加工特性の点で中間的な性能であり、未だ十分なレベルには至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、熱接着性を有し、絞りしごき成形において十分な成形特性を有しながら、耐衝撃性、耐レトルト性に優れた金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなるフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、ブチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とエチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とからなるフィルムであり、カルボキシル基末端基量が35当量/トン以上であり、表面粗さRaが0.02μm以上であることを特徴とする金属板被覆用フィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルム(以下「フィルム」と略称することがある)で使用するポリエステル樹脂組成物について説明する。
ポリエステル樹脂組成物は、ブチレンテレフタレート単位を主体とする樹脂(1)およびエチレンテレフタレート単位を主体とする樹脂(2)よりなる。
上記の樹脂(1)とは、ブチレンテレフタレート単位を、好ましくは85モル%以上含有する樹脂を指す。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが使用される。
【0007】
上記の樹脂(2)とは、エチレンテレフタレート単位が、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する樹脂である。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが使用される。
上記樹脂(1)および樹脂(2)の共重合成分として用いられる多価カルボン酸の具体的例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、また多価アルコールの具体的例としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−2−ブチル−1−プロパンジオール等が挙げられる。
【0008】
本発明で用いるポリエステル樹脂組成物のリン含有量は、好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは100〜900ppm、特に好ましくは120〜800ppmの範囲である、リン含有量が50ppm未満では、樹脂(1)と樹脂(2)のエステル交換によるポリエステル樹脂組成物の固有粘度低下や融点降下が大きく、その結果、絞り成形特性が低下する傾向がある。また、リン含有量が1000ppmを超えると、異物発生の原因となる場合がある。リン元素の由来は、ポリエステル重合時に使用される重合安定剤の有機リン化合物または無機リン化合物であることが好ましい。ポリエステル樹脂に直接燐化合物を添加し溶融練り混みを行う場合は、熱分解による異物が発生しやすく、成形時に破断やピンホール発生の原因となるおそれがある。
【0009】
また樹脂(1)と樹脂(2)との合計量に対する樹脂(1)の割合は、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。樹脂(1)の割合が20重量%未満の場合は、成形性が低下する傾向があり、70重量%を超える場合は、連続成形により高温(60〜65℃)となった絞りしごき成形機のポンチ、リング等の金型に接触した際に、フィルムが粘着挙動を示すことがある。
また、本発明で使用される前記の各ポリエステル樹脂の固有粘度[η]は、好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3の範囲である。[η]が0.8未満の場合は、成形性が低下する傾向がある。一方、[η]が1.5を超える場合は、生産性が低下したり、製膜の際にフィルムに流れムラが発生したりする傾向がある。
【0010】
本発明のフィルムは、上記ポリエステル樹脂組成物からなる単層または積層構造(上記ポリエステル樹脂組成物からなる層を以下の説明においてはA層と略記する)のフィルムであるが、何れかの層中に顔料を含有させて積層着色フィルムとすることができる。A層に顔料を含有させた場合、顔料に吸着している水分によるポリエステルレジンの加水分解が起こり、フィルムが脆くなり、ラミネート金属板の成形加工時のフィルム摩耗が増加する傾向があるので、A層以外の層に顔料を配合することが好ましい。
フィルムを着色することにより、金属板または成形缶外面にラミネートして、印刷インキの発色を向上される下地フィルムとして、または意匠性に優れた印刷性を得るための下地フィルムとして使用することができる。
【0011】
用いる着色顔料としては、特に制限されないが、通常、カーボンブラック、酸化鉄(黒色)、酸化鉄(赤色)、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、硫化亜鉛などが使用される。顔料含有量は、特に限定しないが、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%である。顔料が0.1重量%未満の場合は、着色性に劣り金属板表面の隠蔽性が劣る傾向がある。一方、30重量%を超える場合は、フィルム製膜の際に破断しやすくなり、また、製缶後のフィルムの耐衝撃性も著しく低下する傾向がある。
本発明のフィルムには、本発明の特性を損なわない範囲において、他のポリエステル系樹脂、それ以外の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂やエンジニアリングプラスチックス)、無機フィラー等の第3成分が適量含まれていてもよい。
【0012】
本発明のフィルムのカルボキシル基末端基量は、35当量/トン以上である。好ましくは40当量/トン以上90当量/トン以下さらに好ましくは40当量/トン以上80当量/トン以下である。なお、フィルムが積層構造の場合は、A層が上記カルボキシル基末端基量を満足すればよい。上記の組成物のカルボキシル基末端基量が35当量/トン未満では、耐熱性が低下し、その結果ポリエステル樹脂組成物の成形性が低下する。一方、90当量/トンを超えるとポリエステル組成物の熱安定性が低下し、フィルムの色相が悪化する。
また、本発明のフィルム(積層構造の場合は、A層表面)の表面粗さRaは、0.02μm以上であり、好ましくは0.03〜1.5μm、さらに好ましくは0.04〜1.0μmである。Raが0.02μm未満では、成形性が劣り、またフィルム加工時の巻き作業性も劣る。なお、2.0μmを超えるとフィルム走行時による摩擦で摩耗粉が発生しやすくなる傾向がある。
【0013】
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)に配合する滑剤粒子の具体例としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、カオリン、タルク、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン等の有機粒子が挙げられる。これら滑剤粒子は単独で含有してもよいし、二種以上を組み合せて含有してもよい。
滑剤粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜7μm、特に好ましくは0.5〜5μmである。0.1μm未満では、フィルム加工時の巻き作業性が劣る傾向がある。一方、10μmを超えると、製缶加工工程等において滑剤粒子が積層フィルムから脱落することがある。
【0014】
滑剤粒子の含有量は、好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.02〜0.8重量%、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%である。0.01重量%未満では、フィルム走行時による摩擦係数が上がり、取扱い性が低下する傾向がある。一方、1.0重量%を超えると、金属板加工工程でロールやレールとの間の摩擦によりフィルム表面から脱離する滑剤粒子が多くなり、周辺の加工ラインの清浄性が損なわれるおそれがある。特に金属缶内面用被覆用途では脱離した不活性物質が金属缶の内容物に移行しやすくなり、味覚の変化を起こす場合がある。
滑剤粒子の粒度分布幅(d25/d75)は、好ましくは1.0〜1.5であり、さらに好ましくは1.0〜1.4である。ここで、粒度分布幅(d25/d75)とは、25体積%における粒径と75体積%における粒径との比率、すなわち、25体積%における粒径(d25)/75体積%における粒径(d75)で示される値である。粒度分布幅が1.5を超えると、粗大粒子によるフィルム異物欠陥や積層フィルム製造工程において積層フィルムにフィルム破断が起きやすいために好ましくない。
【0015】
また本発明のフィルムには、必要に応じて、易印刷性、易滑性、離型性、帯電防止性、易接着性等を付与する目的のコーティング処理を行うこともできる。
本発明のフィルムの厚みは用途により異なるが、好ましくは5〜100μmである。5μm未満では積層フィルムの製膜性が低下しやすく、耐衝撃性が低下する傾向があり、50μmを超えると、ラミネート板の製造コストが増加しやすいとともに、省資源化しにくいという面がある。
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)の厚みは、用途にもよるが、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1.5〜15μm、最も好ましくは2.0〜10μmである。0.5μm未満では、ポリエステル表面から滑剤粒子が脱落しやすくなる傾向がある。一方、厚みが20μmを超えると製造コストが高くなる。
【0016】
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)の極限粘度が、0.70〜1.2の範囲であることが好ましい。この範囲を満足すると、フィルム表面とロールまたはレールとの摩擦で発生する樹脂の摩耗粉が少なく、また衝撃によりクラックなどの欠陥が生じにくい。
本発明のフィルムの製造法は、特に限定されないが、例えば、次のような方法が好適に採用される。すなわち、原料ポリエステルを押出機にて溶融し、Tダイより共押出して積層した後、冷却ロールにて急冷し非晶性シートとし、原料ポリエステルのガラス転移温度以上に加熱した後、縦延伸し、次いで、横延伸と逐次延伸するかまたは同時二軸延伸する。
【0017】
次に、金属材料製のシート材を加熱した後、その片面または両面に本発明のフィルムを加熱圧着し貼合せ、金属製板を製造する。
本発明のフィルムは、主に絞りしごき成形缶を目的として設計されているが、金属板の両面または片面にラミネート処理した後、金属板を所望のサイズに切断し、溶接により製缶するもの、例えば、飲料缶に代表される食品缶詰缶、ペール缶、ブリキ板製18L缶、鋼製ドラム等のフィルムとしても好適である。また、缶材の素材の種類は、特に制限されず、一般的に製缶に供される金属材料であれば問題なく使用し得る。缶材の素材の具体例としては、ブリキ、TFS(チンフリースチール)、アルミニウム等が挙げられる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの例に何ら限定されない。
また、本発明における評価方法、計算方法または測定方法については、下記に説明するとおりである。
【0019】
(1)層厚み
積層フィルムについては、その両面に金蒸着したものをエポキシ樹脂で包埋し、ウルトラミクロトームを用いてセクショニングした。そして、セクショニングによって得られた試料片の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、接着層および樹脂層の厚みを測定した。
【0020】
(2)極限粘度
フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中にポリマー1gを溶解し、30℃で測定した。
【0021】
(3)表面粗さ(Ra)
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定した。ただし、カットオフ値80μm、測定長2.5mmとした。
【0022】
(4)カルボキシル基末端基量
乾燥ポリエステル粉末0.1gにベンジルアルコール3mlを加えて加熱溶解した後、5mlのクロロホルムを加えて冷却した。次いで指示薬としてフェノールレツドを添加した後、0.1規定の水酸化ナトリウム−ベンジルアルコール溶液で滴定し、滴定量からカルボキシル基量を算出した。単位は当量/トンとした。
【0023】
(5)リン元素の定量
蛍光X線分光分析装置XRF1500によって定量した。
(6)巻き取り作業性
ポリエステルフィルムを製造するに際し、いったんマスターロールに巻き取り次いで所定の幅にスリットし巻き上げる際の状態を観察し、次の3ランクに分けた。
○:巻き上げロールにシワ発生が認められず、端面も揃っている
△:巻き上げロールにシワが若干認められるが、端面は揃っている
×:巻き上げロールにシワが多く認められ、端面も不揃いである
上記ランク○および△は、ポリエステルフィルムを製造する際の巻き作業性に問題のないレベルである。
【0024】
(7)成形性
(7−A)金属板へのフィルム貼合せおよび絞りしごき成形カップの作製:
上下2本のロールを有するラミネート装置を使用し、0.18mm厚のアルミニウム板の両面に各例にて得られたポリエステルフィルムを加圧ラミネートし、ラミネートアルミニウム板を作製した。貼合せ時のアルミニウム板温度は180〜190℃、貼合せ速度10m/分とした。得られたラミネート板を、熱風オーブンを使用して220℃で10秒間加熱処理した。ダイスとポンチを使用し数工程で、上記のラミネート板を、底面直径65mm、高さ150mmの成形容器(以下、カップと略す)に30〜60ストローク/分の速度で絞りしごき成形した。カップ底面より高さ120mm付近の側壁部の板厚は、元のアルミニウム板厚に対して約30%に減少していた。得られたカップについて以下の観察および試験を行って評価した。なお、絶縁性評価に関しては、外観上問題のない缶を選択して行った。
【0025】
(7−B)成形特性評価:
(B−1)成型時のカジリ
カップ成型時の、ダイスとの間でのカジリの発生に関して目視による観察を行い、以下に示す基準により評価した。
◎:60ストローク/分の速度で10000缶以上の連続成型を行っても、カジリの発生は全く見られない。
○:30ストローク/分の速度であれば1000缶以上の連続成型を行っても、カジリの発生は見られない。
△:30ストローク/分の速度であれば100缶以上連続成型可能であるが、カジリによるキズが見られるものが10缶以下存在する。
×:カジリの発生により、100缶の連続成型は不可能であり、キズが見られるもの や、成型機を停止せざるを得ないケースも起こる。
【0026】
(B−2)カップのフィルム外観:
成形後のカップ内外面について目視による観察を行い、以下に示す基準により評価した。
○:シワ、傷、穴あきが認められない。白色フィルムの場合も白色ムラは見られない。
△:シワまたは傷または穴あきが若干見られる。
×:シワ、傷、穴あきが発生している。白色フィルムの場合白色ムラが見られる。
【0027】
(B−3)保護特性(絶縁性)測定:
成形後のカップに0.5重量%NaCl水を入れ、電極を挿入し、缶体をアノードにして6.0Vの電圧をかけた時の電流値を測定し、以下に示す基準によりカップ内面の保護特性を評価した。電流値が小さいほど絶縁特性が良好であり、保護特性が高度であることを示す。なお、試験数は100缶にて実施した。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0028】
(B−4)レトルト処理試験:
レトルト処理(125℃、20分)後のカップ内外面について目視による観察を行ない、以下に示す基準により評価した。
◎:フィルム外観に変化なし。
○:内面フィルムの白化はやや目立つが、外面は白化極微少で実用レベル。
△:外面フィルムが縞状に白化するが、実用レベル。
×:フィルム激しい白化や、剥離も認められる。
【0029】
(B−5)レトルト処理後の絶縁性測定:
カップに0.5重量%NaCl水を入れ、以下に示す基準により評価した。なお、試験は100缶について行った。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0030】
(B−6)落下試験後の絶縁性測定:
耐衝撃性の指標として、カップに350gの水を入れ、50cmの高さから45℃の角度で落下させた後、カップに0.5重量%NaCl水を入れ、以下の表6に示す基準により評価した。なお、試験は100缶について行なった。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0031】
実施例および比較例において使用したポリエステル原料は、次のとおりである。
(1) ポリエステル PETa
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、触媒に酢酸マグネシウム四水塩を用いて通常の条件でエステル交換反応を終了した、その後平均粒径2.5μm不定形シリカを含むエチレングリコールスラリーを添加し、さらに安定剤および重合触媒としてエチルアシッドフォスフェートおよび三酸化アンチモンを加えて通常条件で重縮合反応を行った。ポリエステルに含まれる不定形シリカの含有量は、0.3重量%、極限粘度は0.62、マグネシウム含有量は300ppm、リン含有量は290ppm、アンチモン含有量は380ppmで、カルボキシル基末端基量は40当量/トンであった。
【0032】
(2) ポリエステル PETb
不定形シリカのかわりに、平均粒径1.8μmの高分子架橋粒子を用いたほか、PETaと同様にしPETbを得た。架橋高分子粒子の含有量は0.3重量%、極限粘度は0.63、マグネシウム含有量は300ppm、リン含有量は290ppm、アンチモン含有量は380ppm、カルボキシル基末端基量は40当量/トンであった。
【0033】
(3) ポリエステル PETc
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを使用し、通常の条件で重縮合した。極限粘度は0.67、マグネシウム含有量は30ppm、リン含有量は20ppm、アンチモン含有量は250ppmであり、カルボキシル基末端基量は36当量/トンであった。
【0034】
(4) ポリエステル PETd
PETcを80重量部、ルチル型酸化チタンを20重量部を溶融練り混みし原料チップを得た。極限粘度は0.65であった。
(5) ポリエステル PBTa
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1、4−ブタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、常法の重縮合で製造した。固有粘度([η])=1.10、カルボキシル基末端基量は44当量/トンであった。
(6)ポリエステル PBTb
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1、4−ブタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、常法の重縮合で製造した。固有粘度([η])=1.05、カルボキシル基末端基量は10当量/トンであった。
【0035】
実施例1
PETaを50重量部とPBTaを50重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機にて280℃でダイより押出し、直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムを、ロール延伸機を用いて60℃で3.5倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて100℃で4.0倍に横延伸した。さらに、フィルムの幅を固定した状態において、140℃で熱処理して25μmの延伸フィルムを得た。
【0036】
実施例2
PETaを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲1▼、そしてPETcを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲2▼を用いてそれぞれ280℃で溶融し、Tダイより共押出したものを直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、積層された非晶質の未延伸フィルムを得た。ここで、共押出しするときの2軸押出機▲1▼および▲2▼の吐出量は、▲1▼/▲2▼=10/15であった。続いて実施例1と同様にして延伸および熱処理を行い、25μmの積層フィルムを得た。
【0037】
実施例3
PETdを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲2▼を用いて溶融したほかは、実施例2と同様に行い、積層フィルムを得た。
【0038】
比較例1
PETcを50重量部とPBTbを50重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機で280℃で溶融押出したほかは、実施例1と同様に行い、単層フィルムを得た。
【0039】
比較例2
PBTaのかわりにPBTbを使用したほかは、実施例2と同様に行い、積層フィルムを得た。
以上、得られた結果をまとめて下記表1および2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、絞りしごき成形においてカジリ等の問題がなく、十分な成形特性を有しながら、耐衝撃性、耐レトルト性にも優れた金属板熱ラミネート用積層ポリエステルフィルムが提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、2ピース金属飲料缶のように絞りしごき加工の施される金属缶の製造用金属板に熱ラミネートされるフィルムであって、従来使用されているポリエステルフィルムに比べて優れた成形加工特性を有しながら、耐衝撃性にも優れる金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の製造方法としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを加熱により金属板に貼り合わせた後、絞りしごき成形によりカップ状に製缶する方法が知られている。金属缶用に使用されるポリエステルフィルムは大きく二つの種類に分類される。一つは、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸配向層と、当該配向層より低融点のポリエステルからなる接着層とから構成される積層フィルムであり、他の一つは、非晶性または低配向のポリエステルフィルムである。
しかしながら、前者の積層フィルムは、耐レトルト性、耐衝撃性、耐錆性などの保護特性の点では概ね良好であるが、成形加工の際、フィルムにクラックやしわが発生したり、白化したりする場合がある。一方、後者の非晶性ポリエステルフィルムは、成形加工特性の点では優れるが保護特性に劣る。また、低配向のポリエステルフィルムは、保護特性および成形加工特性の点で中間的な性能であり、未だ十分なレベルには至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、熱接着性を有し、絞りしごき成形において十分な成形特性を有しながら、耐衝撃性、耐レトルト性に優れた金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなるフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、ブチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とエチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とからなるフィルムであり、カルボキシル基末端基量が35当量/トン以上であり、表面粗さRaが0.02μm以上であることを特徴とする金属板被覆用フィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の金属板熱ラミネート用ポリエステルフィルム(以下「フィルム」と略称することがある)で使用するポリエステル樹脂組成物について説明する。
ポリエステル樹脂組成物は、ブチレンテレフタレート単位を主体とする樹脂(1)およびエチレンテレフタレート単位を主体とする樹脂(2)よりなる。
上記の樹脂(1)とは、ブチレンテレフタレート単位を、好ましくは85モル%以上含有する樹脂を指す。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが使用される。
【0007】
上記の樹脂(2)とは、エチレンテレフタレート単位が、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する樹脂である。共重合成分としては、多価カルボン酸および/または多価アルコールが使用される。
上記樹脂(1)および樹脂(2)の共重合成分として用いられる多価カルボン酸の具体的例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、また多価アルコールの具体的例としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−2−ブチル−1−プロパンジオール等が挙げられる。
【0008】
本発明で用いるポリエステル樹脂組成物のリン含有量は、好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは100〜900ppm、特に好ましくは120〜800ppmの範囲である、リン含有量が50ppm未満では、樹脂(1)と樹脂(2)のエステル交換によるポリエステル樹脂組成物の固有粘度低下や融点降下が大きく、その結果、絞り成形特性が低下する傾向がある。また、リン含有量が1000ppmを超えると、異物発生の原因となる場合がある。リン元素の由来は、ポリエステル重合時に使用される重合安定剤の有機リン化合物または無機リン化合物であることが好ましい。ポリエステル樹脂に直接燐化合物を添加し溶融練り混みを行う場合は、熱分解による異物が発生しやすく、成形時に破断やピンホール発生の原因となるおそれがある。
【0009】
また樹脂(1)と樹脂(2)との合計量に対する樹脂(1)の割合は、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。樹脂(1)の割合が20重量%未満の場合は、成形性が低下する傾向があり、70重量%を超える場合は、連続成形により高温(60〜65℃)となった絞りしごき成形機のポンチ、リング等の金型に接触した際に、フィルムが粘着挙動を示すことがある。
また、本発明で使用される前記の各ポリエステル樹脂の固有粘度[η]は、好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3の範囲である。[η]が0.8未満の場合は、成形性が低下する傾向がある。一方、[η]が1.5を超える場合は、生産性が低下したり、製膜の際にフィルムに流れムラが発生したりする傾向がある。
【0010】
本発明のフィルムは、上記ポリエステル樹脂組成物からなる単層または積層構造(上記ポリエステル樹脂組成物からなる層を以下の説明においてはA層と略記する)のフィルムであるが、何れかの層中に顔料を含有させて積層着色フィルムとすることができる。A層に顔料を含有させた場合、顔料に吸着している水分によるポリエステルレジンの加水分解が起こり、フィルムが脆くなり、ラミネート金属板の成形加工時のフィルム摩耗が増加する傾向があるので、A層以外の層に顔料を配合することが好ましい。
フィルムを着色することにより、金属板または成形缶外面にラミネートして、印刷インキの発色を向上される下地フィルムとして、または意匠性に優れた印刷性を得るための下地フィルムとして使用することができる。
【0011】
用いる着色顔料としては、特に制限されないが、通常、カーボンブラック、酸化鉄(黒色)、酸化鉄(赤色)、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、硫化亜鉛などが使用される。顔料含有量は、特に限定しないが、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%である。顔料が0.1重量%未満の場合は、着色性に劣り金属板表面の隠蔽性が劣る傾向がある。一方、30重量%を超える場合は、フィルム製膜の際に破断しやすくなり、また、製缶後のフィルムの耐衝撃性も著しく低下する傾向がある。
本発明のフィルムには、本発明の特性を損なわない範囲において、他のポリエステル系樹脂、それ以外の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂やエンジニアリングプラスチックス)、無機フィラー等の第3成分が適量含まれていてもよい。
【0012】
本発明のフィルムのカルボキシル基末端基量は、35当量/トン以上である。好ましくは40当量/トン以上90当量/トン以下さらに好ましくは40当量/トン以上80当量/トン以下である。なお、フィルムが積層構造の場合は、A層が上記カルボキシル基末端基量を満足すればよい。上記の組成物のカルボキシル基末端基量が35当量/トン未満では、耐熱性が低下し、その結果ポリエステル樹脂組成物の成形性が低下する。一方、90当量/トンを超えるとポリエステル組成物の熱安定性が低下し、フィルムの色相が悪化する。
また、本発明のフィルム(積層構造の場合は、A層表面)の表面粗さRaは、0.02μm以上であり、好ましくは0.03〜1.5μm、さらに好ましくは0.04〜1.0μmである。Raが0.02μm未満では、成形性が劣り、またフィルム加工時の巻き作業性も劣る。なお、2.0μmを超えるとフィルム走行時による摩擦で摩耗粉が発生しやすくなる傾向がある。
【0013】
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)に配合する滑剤粒子の具体例としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、カオリン、タルク、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン等の有機粒子が挙げられる。これら滑剤粒子は単独で含有してもよいし、二種以上を組み合せて含有してもよい。
滑剤粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜7μm、特に好ましくは0.5〜5μmである。0.1μm未満では、フィルム加工時の巻き作業性が劣る傾向がある。一方、10μmを超えると、製缶加工工程等において滑剤粒子が積層フィルムから脱落することがある。
【0014】
滑剤粒子の含有量は、好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.02〜0.8重量%、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%である。0.01重量%未満では、フィルム走行時による摩擦係数が上がり、取扱い性が低下する傾向がある。一方、1.0重量%を超えると、金属板加工工程でロールやレールとの間の摩擦によりフィルム表面から脱離する滑剤粒子が多くなり、周辺の加工ラインの清浄性が損なわれるおそれがある。特に金属缶内面用被覆用途では脱離した不活性物質が金属缶の内容物に移行しやすくなり、味覚の変化を起こす場合がある。
滑剤粒子の粒度分布幅(d25/d75)は、好ましくは1.0〜1.5であり、さらに好ましくは1.0〜1.4である。ここで、粒度分布幅(d25/d75)とは、25体積%における粒径と75体積%における粒径との比率、すなわち、25体積%における粒径(d25)/75体積%における粒径(d75)で示される値である。粒度分布幅が1.5を超えると、粗大粒子によるフィルム異物欠陥や積層フィルム製造工程において積層フィルムにフィルム破断が起きやすいために好ましくない。
【0015】
また本発明のフィルムには、必要に応じて、易印刷性、易滑性、離型性、帯電防止性、易接着性等を付与する目的のコーティング処理を行うこともできる。
本発明のフィルムの厚みは用途により異なるが、好ましくは5〜100μmである。5μm未満では積層フィルムの製膜性が低下しやすく、耐衝撃性が低下する傾向があり、50μmを超えると、ラミネート板の製造コストが増加しやすいとともに、省資源化しにくいという面がある。
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)の厚みは、用途にもよるが、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1.5〜15μm、最も好ましくは2.0〜10μmである。0.5μm未満では、ポリエステル表面から滑剤粒子が脱落しやすくなる傾向がある。一方、厚みが20μmを超えると製造コストが高くなる。
【0016】
本発明のフィルム(積層構造の場合はA層)の極限粘度が、0.70〜1.2の範囲であることが好ましい。この範囲を満足すると、フィルム表面とロールまたはレールとの摩擦で発生する樹脂の摩耗粉が少なく、また衝撃によりクラックなどの欠陥が生じにくい。
本発明のフィルムの製造法は、特に限定されないが、例えば、次のような方法が好適に採用される。すなわち、原料ポリエステルを押出機にて溶融し、Tダイより共押出して積層した後、冷却ロールにて急冷し非晶性シートとし、原料ポリエステルのガラス転移温度以上に加熱した後、縦延伸し、次いで、横延伸と逐次延伸するかまたは同時二軸延伸する。
【0017】
次に、金属材料製のシート材を加熱した後、その片面または両面に本発明のフィルムを加熱圧着し貼合せ、金属製板を製造する。
本発明のフィルムは、主に絞りしごき成形缶を目的として設計されているが、金属板の両面または片面にラミネート処理した後、金属板を所望のサイズに切断し、溶接により製缶するもの、例えば、飲料缶に代表される食品缶詰缶、ペール缶、ブリキ板製18L缶、鋼製ドラム等のフィルムとしても好適である。また、缶材の素材の種類は、特に制限されず、一般的に製缶に供される金属材料であれば問題なく使用し得る。缶材の素材の具体例としては、ブリキ、TFS(チンフリースチール)、アルミニウム等が挙げられる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの例に何ら限定されない。
また、本発明における評価方法、計算方法または測定方法については、下記に説明するとおりである。
【0019】
(1)層厚み
積層フィルムについては、その両面に金蒸着したものをエポキシ樹脂で包埋し、ウルトラミクロトームを用いてセクショニングした。そして、セクショニングによって得られた試料片の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、接着層および樹脂層の厚みを測定した。
【0020】
(2)極限粘度
フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中にポリマー1gを溶解し、30℃で測定した。
【0021】
(3)表面粗さ(Ra)
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定した。ただし、カットオフ値80μm、測定長2.5mmとした。
【0022】
(4)カルボキシル基末端基量
乾燥ポリエステル粉末0.1gにベンジルアルコール3mlを加えて加熱溶解した後、5mlのクロロホルムを加えて冷却した。次いで指示薬としてフェノールレツドを添加した後、0.1規定の水酸化ナトリウム−ベンジルアルコール溶液で滴定し、滴定量からカルボキシル基量を算出した。単位は当量/トンとした。
【0023】
(5)リン元素の定量
蛍光X線分光分析装置XRF1500によって定量した。
(6)巻き取り作業性
ポリエステルフィルムを製造するに際し、いったんマスターロールに巻き取り次いで所定の幅にスリットし巻き上げる際の状態を観察し、次の3ランクに分けた。
○:巻き上げロールにシワ発生が認められず、端面も揃っている
△:巻き上げロールにシワが若干認められるが、端面は揃っている
×:巻き上げロールにシワが多く認められ、端面も不揃いである
上記ランク○および△は、ポリエステルフィルムを製造する際の巻き作業性に問題のないレベルである。
【0024】
(7)成形性
(7−A)金属板へのフィルム貼合せおよび絞りしごき成形カップの作製:
上下2本のロールを有するラミネート装置を使用し、0.18mm厚のアルミニウム板の両面に各例にて得られたポリエステルフィルムを加圧ラミネートし、ラミネートアルミニウム板を作製した。貼合せ時のアルミニウム板温度は180〜190℃、貼合せ速度10m/分とした。得られたラミネート板を、熱風オーブンを使用して220℃で10秒間加熱処理した。ダイスとポンチを使用し数工程で、上記のラミネート板を、底面直径65mm、高さ150mmの成形容器(以下、カップと略す)に30〜60ストローク/分の速度で絞りしごき成形した。カップ底面より高さ120mm付近の側壁部の板厚は、元のアルミニウム板厚に対して約30%に減少していた。得られたカップについて以下の観察および試験を行って評価した。なお、絶縁性評価に関しては、外観上問題のない缶を選択して行った。
【0025】
(7−B)成形特性評価:
(B−1)成型時のカジリ
カップ成型時の、ダイスとの間でのカジリの発生に関して目視による観察を行い、以下に示す基準により評価した。
◎:60ストローク/分の速度で10000缶以上の連続成型を行っても、カジリの発生は全く見られない。
○:30ストローク/分の速度であれば1000缶以上の連続成型を行っても、カジリの発生は見られない。
△:30ストローク/分の速度であれば100缶以上連続成型可能であるが、カジリによるキズが見られるものが10缶以下存在する。
×:カジリの発生により、100缶の連続成型は不可能であり、キズが見られるもの や、成型機を停止せざるを得ないケースも起こる。
【0026】
(B−2)カップのフィルム外観:
成形後のカップ内外面について目視による観察を行い、以下に示す基準により評価した。
○:シワ、傷、穴あきが認められない。白色フィルムの場合も白色ムラは見られない。
△:シワまたは傷または穴あきが若干見られる。
×:シワ、傷、穴あきが発生している。白色フィルムの場合白色ムラが見られる。
【0027】
(B−3)保護特性(絶縁性)測定:
成形後のカップに0.5重量%NaCl水を入れ、電極を挿入し、缶体をアノードにして6.0Vの電圧をかけた時の電流値を測定し、以下に示す基準によりカップ内面の保護特性を評価した。電流値が小さいほど絶縁特性が良好であり、保護特性が高度であることを示す。なお、試験数は100缶にて実施した。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0028】
(B−4)レトルト処理試験:
レトルト処理(125℃、20分)後のカップ内外面について目視による観察を行ない、以下に示す基準により評価した。
◎:フィルム外観に変化なし。
○:内面フィルムの白化はやや目立つが、外面は白化極微少で実用レベル。
△:外面フィルムが縞状に白化するが、実用レベル。
×:フィルム激しい白化や、剥離も認められる。
【0029】
(B−5)レトルト処理後の絶縁性測定:
カップに0.5重量%NaCl水を入れ、以下に示す基準により評価した。なお、試験は100缶について行った。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0030】
(B−6)落下試験後の絶縁性測定:
耐衝撃性の指標として、カップに350gの水を入れ、50cmの高さから45℃の角度で落下させた後、カップに0.5重量%NaCl水を入れ、以下の表6に示す基準により評価した。なお、試験は100缶について行なった。
◎:平均値が0.005mA未満を示す。
○:平均値が0.005〜0.01mAの値を示す。
△:平均値が0.01〜0.1mAの値を示す。
×:平均値が0.1mA以上の値を示す。
【0031】
実施例および比較例において使用したポリエステル原料は、次のとおりである。
(1) ポリエステル PETa
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、触媒に酢酸マグネシウム四水塩を用いて通常の条件でエステル交換反応を終了した、その後平均粒径2.5μm不定形シリカを含むエチレングリコールスラリーを添加し、さらに安定剤および重合触媒としてエチルアシッドフォスフェートおよび三酸化アンチモンを加えて通常条件で重縮合反応を行った。ポリエステルに含まれる不定形シリカの含有量は、0.3重量%、極限粘度は0.62、マグネシウム含有量は300ppm、リン含有量は290ppm、アンチモン含有量は380ppmで、カルボキシル基末端基量は40当量/トンであった。
【0032】
(2) ポリエステル PETb
不定形シリカのかわりに、平均粒径1.8μmの高分子架橋粒子を用いたほか、PETaと同様にしPETbを得た。架橋高分子粒子の含有量は0.3重量%、極限粘度は0.63、マグネシウム含有量は300ppm、リン含有量は290ppm、アンチモン含有量は380ppm、カルボキシル基末端基量は40当量/トンであった。
【0033】
(3) ポリエステル PETc
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを使用し、通常の条件で重縮合した。極限粘度は0.67、マグネシウム含有量は30ppm、リン含有量は20ppm、アンチモン含有量は250ppmであり、カルボキシル基末端基量は36当量/トンであった。
【0034】
(4) ポリエステル PETd
PETcを80重量部、ルチル型酸化チタンを20重量部を溶融練り混みし原料チップを得た。極限粘度は0.65であった。
(5) ポリエステル PBTa
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1、4−ブタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、常法の重縮合で製造した。固有粘度([η])=1.10、カルボキシル基末端基量は44当量/トンであった。
(6)ポリエステル PBTb
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1、4−ブタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、常法の重縮合で製造した。固有粘度([η])=1.05、カルボキシル基末端基量は10当量/トンであった。
【0035】
実施例1
PETaを50重量部とPBTaを50重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機にて280℃でダイより押出し、直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムを、ロール延伸機を用いて60℃で3.5倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて100℃で4.0倍に横延伸した。さらに、フィルムの幅を固定した状態において、140℃で熱処理して25μmの延伸フィルムを得た。
【0036】
実施例2
PETaを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲1▼、そしてPETcを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲2▼を用いてそれぞれ280℃で溶融し、Tダイより共押出したものを直ちに20℃の冷却ドラムにて急冷し、積層された非晶質の未延伸フィルムを得た。ここで、共押出しするときの2軸押出機▲1▼および▲2▼の吐出量は、▲1▼/▲2▼=10/15であった。続いて実施例1と同様にして延伸および熱処理を行い、25μmの積層フィルムを得た。
【0037】
実施例3
PETdを50重量部とPBTaを50重量部の混合物をベント付き2軸押出機▲2▼を用いて溶融したほかは、実施例2と同様に行い、積層フィルムを得た。
【0038】
比較例1
PETcを50重量部とPBTbを50重量部との混合物をベント付き2軸混練押出機で280℃で溶融押出したほかは、実施例1と同様に行い、単層フィルムを得た。
【0039】
比較例2
PBTaのかわりにPBTbを使用したほかは、実施例2と同様に行い、積層フィルムを得た。
以上、得られた結果をまとめて下記表1および2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、絞りしごき成形においてカジリ等の問題がなく、十分な成形特性を有しながら、耐衝撃性、耐レトルト性にも優れた金属板熱ラミネート用積層ポリエステルフィルムが提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
Claims (3)
- ブチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とエチレンテレフタレートを主たる構成単位とする樹脂とからなるフィルムであり、カルボキシル基末端基量が35当量/トン以上であり、表面粗さRaが0.02μm以上であることを特徴とする金属板被覆用フィルム。
- 請求項1記載のフィルムを構成層の一つとする積層構造のフィルムであることを特徴とする金属板被覆用フィルム。
- 何れかの層中に顔料を含有することを特徴とする請求項2記載の金属板被覆用フィルム。
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