JP2004202278A - 重金属含有アニオン用吸着材料を用いたセレン化合物含有水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンとして共存している水溶液より、これらのイオンを確実に除去し得る、選択的なセレン化合物を含有する水溶液の処理方法の提供。
【解決手段】セレン化合物を含有する水と、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料とを混合処理し、当該樹脂にセレン化合物を吸着させた後、樹脂微紛体状物を分離させることを特徴とするセレン化合物を含有する水溶液の処理方法であり、セレン化合物が含有している水溶液中に溶存しているセレン酸イオンならびに亜セレン酸イオンを吸着除去するに際して、吸着材料として、樹脂中にカルボキシル基を含有させ、カルボキシル基に鉄イオンを吸着させることにより、目的とするセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の有毒物質イオンを吸着させる方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】セレン化合物を含有する水と、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料とを混合処理し、当該樹脂にセレン化合物を吸着させた後、樹脂微紛体状物を分離させることを特徴とするセレン化合物を含有する水溶液の処理方法であり、セレン化合物が含有している水溶液中に溶存しているセレン酸イオンならびに亜セレン酸イオンを吸着除去するに際して、吸着材料として、樹脂中にカルボキシル基を含有させ、カルボキシル基に鉄イオンを吸着させることにより、目的とするセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の有毒物質イオンを吸着させる方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セレン化合物を含有する水溶液の処理方法に関し、詳細には、石炭火力発電所の排煙脱硫排水、石油精製工場排水、あるいは着色ガラス製造工程等で発生するセレン化合物含有排水からセレン化合物を効率よく除去することができるセレン化合物を含有する水溶液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭火力発電所の排煙脱硫排水や、石油精製工場排水にはセレン化合物を含有している場合が多い。また、セレン化合物は工業原料として、あるいはガラスの脱色剤や着色剤、高級顔料、鉄鋼や鋼等の添加剤に使用されており、これらの工場廃水のなかにもセレン化合物が含有されていることが多い。セレン自体は、必須微量元素であり、その欠乏により肝壊死、肝障害、滲出性素質、筋ジストロフィー等が生じ、組織や膜脂質において特異的に抗酸化作用を示す一方、セレン酸化合物、亜セレン酸化合物等のセレン化合物は極めて有毒な物質であるとされている。したがって、これらの工場排水のなかにセレン化合物が高濃度で含有されることは稀ではあるが、セレン化合物に対する規制が行われるに至り、排水中のセレン化合物の除去処理が必要とされてきている。水質汚濁防止法に基づくセレンの排水基準にあっては、0.1mg/L(1.0ppm)が示されており、排水中のセレンは、通常コロイド状のセレン化合物、4価の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)または6価のセレン酸イオン(SeO4 2−)として存在することが多い。
【0003】
このようなセレン酸イオンあるいは亜セレン酸イオン等のイオンを排水中から効率よく除去する方法としては、かかるイオンを吸着するイオン交換樹脂や液体キレート剤等の材料を使用し、除去すればよい。しかしながら、これまでセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを効率よく吸着でき得る吸着材料は存在していない。これは、セレンの化学的性質が硫黄(S)に似ていることから、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンが、それぞれ硫酸イオンあるいは亜硫酸イオンに近い挙動を示すため、イオン交換樹脂や液体キレート剤に対して一種の妨害作用を示すためであると説明されてきている。
【0004】
したがって、従来から実施されているセレン化合物含有排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンの除去方法としては、固定化法による除去が提案されているに過ぎない。このような固定化法による除去技術としては、例えば、塩化第一鉄/水酸化ナトリウムにより形成される水酸化第一鉄を用いて、4価の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)または6価のセレン酸イオン(SeO4 2−)を還元し、セレン(Se0)とし、水酸化鉄との混合物として共沈除去する方法である(特許文献1)。しかしながら、この方法にあっては、大量の鉄を用いると共に、生成される水酸化第一鉄の粒子が極めて小さいために、セレン化合物との共沈分離が難しく、そのため、高分子凝集剤を一緒に併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させることにより分離する手段が提案されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−224586号公報
【特許文献2】
特開平9−290299号公報
【0006】
ところで、低品位の石炭には硫黄の他にセレン化合物を大量に含有していることが多い。このうち硫黄の場合については、低品位の石炭を空気あるいは酸素を過剰供給させて高温にて完全燃焼し、発生する大気汚染の元凶物質であるSOXガスを、排煙脱硫プロセスにおける消石灰[Ca(OH)2]スラリー中を通過させ、SO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化し、完全に除去することが可能となってきている。しかしながら、セレン化合物については、硫黄と同様にガス化し、酸化されて亜セレン酸イオンあるいはセレン酸イオンとして排水中に溶解しているが、これを完全に除去することは、現在の技術では不可能である。また排水中のセレン化合物の濃度は、0.5ppm程度で溶解しており、これを水質汚濁防止法に基づくセレン化合物の排水基準にあっては、0.1ppm以下にすることも、極めて困難なものであるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、セレンが酸化されてセレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンとして共存している水溶液より、これらのイオンを確実に不溶化し、除去し得る、特異的、かつ選択的なセレン化合物を含有する水溶液の処理方法を提供することを課題とする。特に、鉄化合物による凝集のみでは除去し難い6価のセレン(SeO4 2−;セレン酸イオン)を含む排水から、効率よく除去し得る処理方法を提供することを課題とする。
また、本発明はかかる処理方法に使用する重金属含有アニオン吸着材料およびその処理方法を提供することを課題とする。
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明者は、従来から検討されているセレン化合物含有水の処理方法として使用されてきている凝集・沈澱法の問題点を検討した。その結果、セレン酸イオンおよび亜セレン酸イオンを吸着または不溶化させる物質として、従来から第一鉄塩、例えば塩化第一鉄を水酸化アルカリ、例えば水酸化ナトリウムと共に用い、水酸化物である水酸化第一鉄を生成し、このものによりセレン酸イオンまたは亜セレン酸イオンを還元し、セレンと水酸化鉄との混合物として共沈・除去している。しかしながら、生成した水酸化第一鉄は、空気に触れると空気中の酸素により容易に酸化され、目的とするセレン酸イオンおよび亜セレン酸イオンを還元する前に、酸化鉄に変換されてしまう。したがって大過剰の鉄イオンを必要とする問題点があった。
【0009】
また、生成した水酸化第一鉄の粒子が極めて小さいために、セレンとの共沈分離が難しく、そのため、高分子凝集剤を一緒に併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させなければならない問題点があった。
【0010】
しかしながら、本発明者が先に提案している樹脂中にポリアクリル酸構造を含有せしめ、かかる樹脂を微紛体状とし、樹脂中に含有させたカルボキシル基にセレンイオンの吸着座席としての鉄イオンを吸着・固定させたアニオン吸着材料を使用すれば、鉄イオン自体を処理が簡単な微細紛体状の樹脂中に存在せしめたことより、セレンイオンを吸着後にあっても、排水からの濾過分離を極めて容易なものとなることを見出した。
【0011】
また、セレンイオンの吸着座席としての鉄イオンが、樹脂微粉末状物のカルボキシル基に多数吸着・固着されていることより、特に水溶液中に大過剰の鉄イオンを存在させる必要はなくなると共に、また処理液に対するpH調整も容易なものとなること、さらに高分子凝集剤を併用して、いわゆる粗大フロックを形成させる必要もないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
したがって上記の課題を解決するための本発明は、セレン化合物を含有する水溶液の処理方法であり、特に、セレン化合物を含有する水と、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料とを混合処理し、当該樹脂にセレン化合物を吸着させた後、樹脂微紛状体を分離させることを特徴とするセレン化合物を含有する水溶液の処理方法である。
【0013】
すなわち本発明は、セレン化合物を含有する水溶液中に溶存しているセレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンを吸着除去するに際して、セレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンの吸着材料として、樹脂中にカルボキシル基を含有するものであり、その上で、当該カルボキシル基に鉄イオンを吸着させることにより樹脂自体の水溶性を制御し、目的とするセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の有毒物質イオンを特異的、かつ選択的に吸着させると共に、吸着後の分離が容易なものとした点に特徴を有するものである。
【0014】
本発明にあっては、そのようなカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂である重金属含有アニオン吸着材料は、ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し樹脂中にカルボキシル基を存在させたものであり、特に加水分解するポリウレタン樹脂フォームが、ポリオール成分としてポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタン樹脂フォームであるのが好ましい。
【0015】
また、本発明にあっては、カルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂である別の重金属含有アニオン吸着材料としては、ポリアクリルアミド系の樹脂、なかでもアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体が好ましい。
【0016】
本発明にあっては、上記の重金属含有アニオン吸着材料を使用してセレン化合物含有水を処理するにあたっては、ポリウレタン樹脂フォーム、特にポリオール成分としてポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた微紛体状の樹脂、および/または微紛体状のポリアクリルアミド系の樹脂を、鉄化合物を含有する水溶液と処理し得たスラリー状液のまま使用するのが好ましい。
したがって、本発明はまた、セレン化合物を含有する水溶液を処理するにあたって使用する、上記のスラリー状の重金属含有アニオン吸着材料である。
【0017】
本発明が提供するセレン化合物を含有する水溶液の処理方法により、セレン化合物を効率的に除去し得るセレン化合物含有水としては、特に、石炭火力発電所の排煙脱硫排水や、石油精製工場排水を挙げることができる。したがって、本発明は、またこれらのセレン化合物含有排水の処理方法を提供するものでもある。
【0018】
【発明の実施の形態】
ところで、石炭火力発電所の排煙脱硫排水の場合には、脱硫のために消石灰スラリーを通過させ、SOXガスはSO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化除去されていることより、SOXガスを除去した後の排水は、中性ないし弱アルカリ性を有している。したがって、この条件下での排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着除去する技術が求められている。
【0019】
この場合、例えば、文献等により紹介されている技術として、銅イオンを利用する方法も考えられる。しかしながら、本発明者の検討によれば、一種のポリカルボキシル基構造(例えば、ポリアクリル酸構造)を含有する微細樹脂粉状体に、重金属吸着座席として銅イオンを吸着させたものでは、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンの吸着能は認められないものであった。
【0020】
これに対して、ポリカルボキシル基構造を有する樹脂の微細樹脂紛状体に、重金属吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させたものにあっては、中性ないし弱アルカリ条件下において、排水中に溶存しているセレン酸イオンや亜セレン酸イオンを特異的に吸着する能力を発揮するものであった。特に本発明にあっては、ポリカルボキシル基構造を有する樹脂の微細樹脂粉状体を、鉄イオンを吸着させるべく、鉄化合物水溶液中に添加し、攪拌処理して得られたスラリー状液のもの、または分離・乾燥させた樹脂粉状体をセレン酸イオン、亜セレン酸イオンが溶存している対象排水中に投入することにより、容易にこれらのイオンの除去を達成することができる利点を有している。
【0021】
本発明が提供する処理方法で使用される、重金属含有アニオン吸着材料としての樹脂中にカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂としては、ポリウレタン樹脂をアルカリ加水分解することにより樹脂中にキレート形成基であるカルボキシル基を含有させ、微粉末化したもの、あるいはポリアクリルアミド系の樹脂粉粒体を挙げることができる。
【0022】
このようなポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂フォームがその表面積が大きく、加水分解と共に微粉末化したものが好ましいものである。かかるポリウレタンフォームは、いわゆるポリオール成分とイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤、触媒、その他の助剤の存在下に反応させて得られるポリウレタン樹脂フォームである。そのなかでも、特に本発明で使用するポリウレタン樹脂フォームは、樹脂成分としては、ポリエーテル系が好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂フォームでは、加水分解に際してキレート形成基であるカルボキシル基を生成させる場合に、樹脂のすべてが加水分解され、グリコールと二塩基酸およびジアミンまでが生成し、好ましいものではない。
【0023】
樹脂中にキレート形成基であるカルボキシル基をより多く含有するポリウレタン樹脂フォームを構成するポリオール成分としては、ポリマーポリオールが最も好ましい。その中でもポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールが好適に使用される。すなわち、ポリマーポリオールとして、ポリプロピレンオキサイドにアクリロニトリルモノマーをグラフト重合させたものを使用することにより、ポリウレタンフォーム中に当初からニトリル基を存在させておくことができるのである。
【0024】
ポリウレタン樹脂フォームの加水分解は、アルカリ水溶液との処理により行われる。すなわち、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物の水溶液、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の有機アミンの水溶液を使用し、当該アルカリ水溶液中に樹脂フォームを浸漬させ、加熱、攪拌・粉砕させることにより行われる。かかる操作により樹脂フォーム中に存在するニトリル基がカルボキシル基に置換されると共に、ポリウレタン樹脂フォームのウレタン結合も加水分解されて、その結果微細化し、微粉状体の樹脂として存在することとなる。
【0025】
本発明の処理方法に使用される、重金属含有アニオン吸着材料としての鉄イオン吸着樹脂におけるセレン化合物の吸着量は、セレン化合物含有排水との接触表面積に比例するために、樹脂は微細であればあるほど、そのセレン酸イオン、亜セレン酸イオンの吸着能が高まることとなる。したがって重金属含有アニオン吸着材料としての樹脂は微細であることが好ましい。
【0026】
これらの微粉状体を得るための手段としては、乾式粉砕法、湿式粉砕法のいずれもが可能であるが、ポリウレタン樹脂の場合には、上記したアルカリ加水分解を行うことから、湿式粉砕で行うのが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂としてポリウレタンフォームを使用し、かかるフォームから微粉状体を製造する場合には、原料のポリウレタンフォームのセルサイズによって異なるが、好ましいものは、高々500μm程度である。一般な軟質ポリウレタンフォームから微紛体状物を製造する際のセルサイズの下限は、100μm程度であるので、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料として、最も好ましい樹脂粉状体のサイズとしては、100〜200μm程度である。
【0027】
一方本発明で使用する、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂としてのポリアクリルアミド系の樹脂は、アニオン系のポリアクリルアミド系樹脂が好ましく、中でもアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体が特に好ましい。このアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体は、樹脂中にカルボキシル基を含有すると共に、既に微粉状体の樹脂としての形態を保持しているものを使用することもできる。
【0028】
かかるアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体としては、分子量が大きなものが好ましく、好ましい分子量の範囲としては100万ないし1000万程度である。分子量が100万未満のものでは水中での微粉状体の粒子状体を保つことができず、ゲル状のものとなってしまい好ましいものではない。そのためアクリルアミド・アクリル酸ナトリウムの比率を変化させ、所望の分子量を有する樹脂とすることができるが、特にアクリルアミドは、分子量を大きくする上で好ましいものであり、その比率は、モル比でアクリルアミドが60〜80%程度であり、アクリル酸ナトリウムが20〜40%程度のものであるのが好ましい。また微粉状体の粒子状としての平均粒子径は、200μm程度以下、好ましくは100μm程度以下で、表面積の大きいものであるのが好ましい。
【0029】
なお、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体を微粉状体化する場合には、冷凍粉砕を含めた乾式粉砕法、またはアルコール等の貧溶媒中での湿式粉砕法のいずれでもよい。湿式粉砕の場合には、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル等の手段により行うことができる。
【0030】
本発明においては、これらの樹脂中に含有するカルボキシル基には、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着するためのアニオン吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させておくことが必要である。そのための鉄イオンの吸着は例えば以下のようにして行われる。
【0031】
樹脂中にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂の場合には、吸着させる鉄イオンとして第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの両者を使用することができるが、特に第一鉄イオンが好ましい。第二鉄イオンの場合には酸化力を有しているものであり、基質であるウレタン樹脂の劣化を生じさせる恐れがあり好ましいものではない。
【0032】
鉄イオンの吸着は、例えば、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、過塩素酸第一鉄等の水溶性第一鉄化合物の水溶液と、上記で得られた樹脂中にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂の微粉状体とを、混合処理することにより行われる。より具体的には、上記のアルカリ加水分解処理を終了し、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂を得た後、適宜pH調整を行い、当該樹脂をイオン交換水で洗浄し、直ちに水溶性の第一鉄化合物の水溶液と処理する。また、水酸化物の生成を抑えるため、樹脂を酸で洗浄した後水溶性の第一鉄化合物の水溶液と処理することで行われる。
【0033】
一方、樹脂中にカルボキシル基を含有する樹脂として、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体を使用する場合には、吸着させる鉄イオンとしては第二鉄イオンを吸着させるのが好ましい。第一鉄イオンの場合には、樹脂中のカルボキシル基が鉄イオンを取り込むことが困難であり、また樹脂が溶解してしまい好ましいものではない。具体的には、樹脂粉末が水に溶解することを避けるため、大過剰の第二鉄化合物を含む水溶液中に、攪拌下に樹脂粉末を徐々に投入し処理することで行われる。また、逆に大過剰の第二鉄化合物を含む水溶液を、攪拌下に樹脂粉末中に、徐々に投入し処理することで行うこともできる。第二鉄化合物を含む水溶液を急速に投入すると、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体中のカルボキシル基と鉄イオンが十分に反応せず、樹脂紛体のみが溶解し始め、凝集するため好ましいものではない。
なお本発明にあっては、重金属含有アニオン吸着材料として、ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂粉状体と、カルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微粉状体とを単独で使用しても、混合体として使用しても良い。
【0034】
上記のように製造された鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有する樹脂粉状体を水分と分離し、乾燥させることで樹脂粉状体の本発明の重金属含有アニオン吸着材料を得ることができる。この樹脂粉状体を、セレン化合物を含有する水溶液に混合処理することで、樹脂粉状体がセレン化合物を吸着し、その後このセレン化合物を分離回収するのが本発明の処理方法である。
一方、カルボキシル基を含有する樹脂粉状体を、鉄化合物を含有する水溶液と混合処理し、カルボキシル基に鉄イオンを吸着させてスラリー状液とし、このスラリー状液のまま、セレン化合物を含有する水溶液と混合処理を行ってもよい。
スラリー状液のまま使用することで、鉄イオンの吸着処理およびセレン化合物の吸着処理と一貫した処理工程を行うことが、処理の簡便化を図ることが可能となる。
【0035】
以下に、スラリー状の本発明の重金属含有アニオン吸着材料を利用した処理方法の一例を、図面を参照にしながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法について、その実施の形態を示す模式的系統図である。
【0037】
図1に示す方法は、例えば、石炭火力発電所等で発生した排煙ガス7を、排煙脱硫プロセス中の消石灰[Ca(OH)2]スラリー槽5を通過させ、SOXガスをSO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化し、完全に除去した後のセレン化合物含有排水を本発明の処理方法で処理する系統的なシステム方法である。
【0038】
すなわち、上記で脱硫されたセレン化合物含有排水は、セレン化合物吸着処理槽4に通水され、そこで本発明の処理方法である鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料と混合処理され、排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンが、選択的に重金属含有アニオン吸着材料に吸着処理される。
【0039】
セレン化合物吸着処理槽4には、本発明の処理方法で使用される鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料が混合されているが、かかる重金属含有アニオン吸着材料は、具体的には次のようにしてセレン化合物吸着処理層4へ導入される。
【0040】
すなわち、樹脂処理層1は、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂を得るための加水分解処理層である。例えば、ポリウレタンフォーム中に当初からニトリル基を含有するポリウレタンフォームを、この樹脂処理槽1でアルカリ条件下に攪拌下、加水分解を行う。この樹脂処理層1において、処理されるポリウレタンフォームは、フォーム中に存在するニトリル基がカルボキシル基に置換されると共に、ポリウレタン樹脂フォームのウレタン結合も加水分解されて、その結果微細化し、微粉状体の樹脂として存在することとなる。
【0041】
一方、鉄化合物水溶液槽2には、樹脂処理槽1で加水分解処理された微粉状体の樹脂に含有されるカルボキシル基に、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着するためのアニオン吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させるための鉄化合物水溶液が貯蔵されている。
【0042】
本発明にあっては、樹脂処理槽1加水分解処理された微粉状体の樹脂を含有する水溶液と、鉄化合物水溶液槽2中の鉄化合物水溶液の両者が、混合槽3で混合処理され、混合槽3において微粉状体の樹脂中に含有するカルボキシル基に鉄イオンの吸着が行われ、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料が得られるが、重金属含有アニオン吸着材料は、単離・乾燥させることなく、鉄化合物を含有する水溶液と処理し得たスラリー状液のまま、セレン化合物吸着処理槽4へ投入される。
【0043】
かくしてセレン化合物吸着処理槽4には、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料がスラリー状液として投入される一方、消石灰スラリー槽5により脱硫処理されたセレン化合物含有水も流入され、混合処理されることにより、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料に、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンが吸着される。
【0044】
セレン化合物吸着処理槽4中で今処理され、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着した重金属含有アニオン吸着材料を含む処理完了液は、次のシックナー(沈澱処理槽)6へ導かれ、そこで吸着材料である樹脂微粉状体を分離させる一方、シックナー(沈澱処理槽)6をオーバーフローした処理水(浄水)は、より完全な処理を期するためフィルター濾過処理された後、系外へ排出・放流される。
なお、セレン化合物吸着処理槽4でセレン化合物を吸着処理した処理完了液は、シックナー(沈澱処理層)6へ導入する前に、適宜pH調整(好ましくは7〜8.6程度)され、処理完了液中に溶存している過剰の鉄イオンFe2+、Fe3+を鉄水酸化物に変換させ、沈澱処理槽6において沈澱除去されることとなる。
【0045】
シックナー(沈澱処理槽)6において沈澱したセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着した重金属含有アニオン吸着材料は、フィルター濾過処理され、セレン化合物含有スラブとして、廃棄処理される。なお、フィルター濾過処理された濾液は再度セレン化合物吸着処理槽4へ再循環され、濾液中に残存する恐れのあるセレン酸イオン、亜セレン酸イオンは同様の吸着処理をすることにより、セレン化合物の吸着処理をより完全なものとする。
【0046】
以上の方法により、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンは、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料を用いる特異的な処理方法により、ほぼ完全に吸着除去することが可能となった。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定する意図を有するものではない。
【0048】
実施例1:ポリウレタン樹脂フォームの製造
アクリロニトリルを21%含有する水酸基価56.1のグリセリンベースポリプロピレンオキサイド系ポリマーポリオール(A)と、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50でグリセリンに付加した水酸基価56.1のポリアルキレンオキサイド(B)の混合ポリオールを、トルエンジイソシナネートと、常法に従い反応させ、密度0.029のポリウレタンフォームを得た。次いで、この得られたフォームを、水素:酸素=2.2:1の混合気体を用いて、爆発法によりセル膜を除去し、無膜化されたポリウレタン樹脂フォームとした。
【0049】
鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有するアニオン吸着用ポリウレタン樹脂粉状体含有スラリーの製造
上記で得られたポリウレタン樹脂フォームを10mm角状に切り出し、その50gを、3Lガラス製フラスコに入れ、水2900g、水酸化ナトリウム150gおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5gを投入し、85℃で攪拌翼(4枚羽根)により攪拌(500rpm/分)を行い、ポリウレタンフォームと攪拌翼との衝突粉砕を加えながら、加水分解を進行させた。
反応開始後およそ2.5時間経過後からフォームの微細粉砕化が認められ、3.5時間でフォームの微細粉砕化が完全に進行した。その後30分間攪拌を継続した。反応終了時点では、ポリウレタン樹脂は、目視では微細な粉状体として反応容器内に存在した。
【0050】
次いで、上記で得た反応溶液を中性付近にpH調整後、硫酸第一鉄35gを含む水溶液2000g中に攪拌下投入した。投入直後から樹脂の微粉状体が着色して、鉄イオンの良好な吸着を暗示させた。攪拌を30分間継続させた後、鉄イオンを吸着したカルボキシル基を有するアニオン吸着用ポリウレタン樹脂粉状体を含むスラリー状液を得た。
なお、スラリー状液中の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体については、硝酸にて分解させて誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で鉄吸着含量を定量したところ、樹脂粉状体1g当り7.1mgの鉄が吸着していることが判明した。
【0051】
亜セレン酸イオンの吸着能
上記で得られたスラリー状の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体を用いて亜セレン酸イオンの吸着能を以下の方法により検討した。
すなわち、pH8.0の亜セレン酸4.4ppm、0.5ppmおよび0.1ppm含有水溶液(関東化学社製標準液を使用し、液温25℃で、各濃度に調整した)1,000mL中に実施例2で得たスラリー状の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体を投入し、30分間浸透させた。水溶液部分のセレン化合物濃度を、誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で定量した結果、セレン化合物の吸着率は下記の表1の通りであった。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例2:鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有するポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂粉状体含有スラリーの製造
ポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体として、センカ(株)製のセンカフロックSS1830A(微粒子粉砕品)を使用した。このものの性状は、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムの比率が70%/30%(モル比)の強アニオンタイプであり、pH7.5(0.5%水溶液;25℃)、粘土は1200mPa・s/25℃の白色顆粒状物である。
センカフロックSS1830A(微粒子粉砕品)15gを、硫酸第二鉄・n水和物10gの水190gの水溶液中に攪拌下投入し、30分間攪拌を継続し、本発明の鉄イオンを吸着したポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂状物を含むスラリー状液を得た。
なお、得られたスラリー中の鉄イオン吸着樹脂粉状体を、硝酸にて分解させて誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で鉄吸着含量を定量したところ、樹脂粉状体1g当り15.0mgの鉄が吸着していることが判明した。
【0054】
亜セレン酸イオンの吸着能
上記で得られた鉄イオン吸着ポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂粉状体含有スラリー状液を使用し、上記試験例1と同様の亜セレン酸水溶液により亜セレン酸イオンの吸着能を検討した。
その結果を下記表2に示した。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
以上記載したように、本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法は、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを、簡便な手段により吸着、除去し得る利点を有している。
特に、これまでセレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを吸着除去し得る手段がなく、例えば、塩化第一鉄/水酸化ナトリウムにより形成される水酸化第一鉄を用いて、4価の亜セレンイオンまたは6価のセレン酸イオンを還元し、セレン化合物と水酸化鉄との混合物とし、高分子凝集剤を併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させることにより分離する凝集・固定化方法しかなかった現状下では、本発明方法は、極めて特異的なものである。
【0057】
従来の凝集・固定化法では、還元剤としての性質が強い塩化第一鉄を使用するものであり、溶存する酸素により酸化され易く、そのためセレンイオンを還元するためには大量の鉄化合物を添加しなければならないこと、さらに水酸化第一鉄が微細粒子であり共沈しにくく、高分子凝集剤を併用しなければならない不利益・煩雑さがあったが、本発明方法ではこのような点を解消し、極めて簡便な手段でセレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを効率よく、かつ選択的に吸着・除去することができる。
【0058】
特に、従来法の鉄化合物による凝集・固定化のみでは除去し難い6価のセレン(セレン酸イオン)を含む排水から、効率よくかかるセレン酸イオンを除去し得る処理方法が提供される点で、その産業上の利用価値は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法の、実施の形態を示す模式的系統図である。
【符号の説明】
1:樹脂処理槽
2:鉄化合物水溶液槽
3:混合槽
4:セレン吸着処理槽
5:消石灰スラリー槽
6:シックナー(沈澱処理層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、セレン化合物を含有する水溶液の処理方法に関し、詳細には、石炭火力発電所の排煙脱硫排水、石油精製工場排水、あるいは着色ガラス製造工程等で発生するセレン化合物含有排水からセレン化合物を効率よく除去することができるセレン化合物を含有する水溶液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭火力発電所の排煙脱硫排水や、石油精製工場排水にはセレン化合物を含有している場合が多い。また、セレン化合物は工業原料として、あるいはガラスの脱色剤や着色剤、高級顔料、鉄鋼や鋼等の添加剤に使用されており、これらの工場廃水のなかにもセレン化合物が含有されていることが多い。セレン自体は、必須微量元素であり、その欠乏により肝壊死、肝障害、滲出性素質、筋ジストロフィー等が生じ、組織や膜脂質において特異的に抗酸化作用を示す一方、セレン酸化合物、亜セレン酸化合物等のセレン化合物は極めて有毒な物質であるとされている。したがって、これらの工場排水のなかにセレン化合物が高濃度で含有されることは稀ではあるが、セレン化合物に対する規制が行われるに至り、排水中のセレン化合物の除去処理が必要とされてきている。水質汚濁防止法に基づくセレンの排水基準にあっては、0.1mg/L(1.0ppm)が示されており、排水中のセレンは、通常コロイド状のセレン化合物、4価の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)または6価のセレン酸イオン(SeO4 2−)として存在することが多い。
【0003】
このようなセレン酸イオンあるいは亜セレン酸イオン等のイオンを排水中から効率よく除去する方法としては、かかるイオンを吸着するイオン交換樹脂や液体キレート剤等の材料を使用し、除去すればよい。しかしながら、これまでセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを効率よく吸着でき得る吸着材料は存在していない。これは、セレンの化学的性質が硫黄(S)に似ていることから、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンが、それぞれ硫酸イオンあるいは亜硫酸イオンに近い挙動を示すため、イオン交換樹脂や液体キレート剤に対して一種の妨害作用を示すためであると説明されてきている。
【0004】
したがって、従来から実施されているセレン化合物含有排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンの除去方法としては、固定化法による除去が提案されているに過ぎない。このような固定化法による除去技術としては、例えば、塩化第一鉄/水酸化ナトリウムにより形成される水酸化第一鉄を用いて、4価の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)または6価のセレン酸イオン(SeO4 2−)を還元し、セレン(Se0)とし、水酸化鉄との混合物として共沈除去する方法である(特許文献1)。しかしながら、この方法にあっては、大量の鉄を用いると共に、生成される水酸化第一鉄の粒子が極めて小さいために、セレン化合物との共沈分離が難しく、そのため、高分子凝集剤を一緒に併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させることにより分離する手段が提案されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−224586号公報
【特許文献2】
特開平9−290299号公報
【0006】
ところで、低品位の石炭には硫黄の他にセレン化合物を大量に含有していることが多い。このうち硫黄の場合については、低品位の石炭を空気あるいは酸素を過剰供給させて高温にて完全燃焼し、発生する大気汚染の元凶物質であるSOXガスを、排煙脱硫プロセスにおける消石灰[Ca(OH)2]スラリー中を通過させ、SO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化し、完全に除去することが可能となってきている。しかしながら、セレン化合物については、硫黄と同様にガス化し、酸化されて亜セレン酸イオンあるいはセレン酸イオンとして排水中に溶解しているが、これを完全に除去することは、現在の技術では不可能である。また排水中のセレン化合物の濃度は、0.5ppm程度で溶解しており、これを水質汚濁防止法に基づくセレン化合物の排水基準にあっては、0.1ppm以下にすることも、極めて困難なものであるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、セレンが酸化されてセレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンとして共存している水溶液より、これらのイオンを確実に不溶化し、除去し得る、特異的、かつ選択的なセレン化合物を含有する水溶液の処理方法を提供することを課題とする。特に、鉄化合物による凝集のみでは除去し難い6価のセレン(SeO4 2−;セレン酸イオン)を含む排水から、効率よく除去し得る処理方法を提供することを課題とする。
また、本発明はかかる処理方法に使用する重金属含有アニオン吸着材料およびその処理方法を提供することを課題とする。
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明者は、従来から検討されているセレン化合物含有水の処理方法として使用されてきている凝集・沈澱法の問題点を検討した。その結果、セレン酸イオンおよび亜セレン酸イオンを吸着または不溶化させる物質として、従来から第一鉄塩、例えば塩化第一鉄を水酸化アルカリ、例えば水酸化ナトリウムと共に用い、水酸化物である水酸化第一鉄を生成し、このものによりセレン酸イオンまたは亜セレン酸イオンを還元し、セレンと水酸化鉄との混合物として共沈・除去している。しかしながら、生成した水酸化第一鉄は、空気に触れると空気中の酸素により容易に酸化され、目的とするセレン酸イオンおよび亜セレン酸イオンを還元する前に、酸化鉄に変換されてしまう。したがって大過剰の鉄イオンを必要とする問題点があった。
【0009】
また、生成した水酸化第一鉄の粒子が極めて小さいために、セレンとの共沈分離が難しく、そのため、高分子凝集剤を一緒に併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させなければならない問題点があった。
【0010】
しかしながら、本発明者が先に提案している樹脂中にポリアクリル酸構造を含有せしめ、かかる樹脂を微紛体状とし、樹脂中に含有させたカルボキシル基にセレンイオンの吸着座席としての鉄イオンを吸着・固定させたアニオン吸着材料を使用すれば、鉄イオン自体を処理が簡単な微細紛体状の樹脂中に存在せしめたことより、セレンイオンを吸着後にあっても、排水からの濾過分離を極めて容易なものとなることを見出した。
【0011】
また、セレンイオンの吸着座席としての鉄イオンが、樹脂微粉末状物のカルボキシル基に多数吸着・固着されていることより、特に水溶液中に大過剰の鉄イオンを存在させる必要はなくなると共に、また処理液に対するpH調整も容易なものとなること、さらに高分子凝集剤を併用して、いわゆる粗大フロックを形成させる必要もないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
したがって上記の課題を解決するための本発明は、セレン化合物を含有する水溶液の処理方法であり、特に、セレン化合物を含有する水と、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料とを混合処理し、当該樹脂にセレン化合物を吸着させた後、樹脂微紛状体を分離させることを特徴とするセレン化合物を含有する水溶液の処理方法である。
【0013】
すなわち本発明は、セレン化合物を含有する水溶液中に溶存しているセレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンを吸着除去するに際して、セレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオンの吸着材料として、樹脂中にカルボキシル基を含有するものであり、その上で、当該カルボキシル基に鉄イオンを吸着させることにより樹脂自体の水溶性を制御し、目的とするセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の有毒物質イオンを特異的、かつ選択的に吸着させると共に、吸着後の分離が容易なものとした点に特徴を有するものである。
【0014】
本発明にあっては、そのようなカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂である重金属含有アニオン吸着材料は、ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し樹脂中にカルボキシル基を存在させたものであり、特に加水分解するポリウレタン樹脂フォームが、ポリオール成分としてポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタン樹脂フォームであるのが好ましい。
【0015】
また、本発明にあっては、カルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂である別の重金属含有アニオン吸着材料としては、ポリアクリルアミド系の樹脂、なかでもアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体が好ましい。
【0016】
本発明にあっては、上記の重金属含有アニオン吸着材料を使用してセレン化合物含有水を処理するにあたっては、ポリウレタン樹脂フォーム、特にポリオール成分としてポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた微紛体状の樹脂、および/または微紛体状のポリアクリルアミド系の樹脂を、鉄化合物を含有する水溶液と処理し得たスラリー状液のまま使用するのが好ましい。
したがって、本発明はまた、セレン化合物を含有する水溶液を処理するにあたって使用する、上記のスラリー状の重金属含有アニオン吸着材料である。
【0017】
本発明が提供するセレン化合物を含有する水溶液の処理方法により、セレン化合物を効率的に除去し得るセレン化合物含有水としては、特に、石炭火力発電所の排煙脱硫排水や、石油精製工場排水を挙げることができる。したがって、本発明は、またこれらのセレン化合物含有排水の処理方法を提供するものでもある。
【0018】
【発明の実施の形態】
ところで、石炭火力発電所の排煙脱硫排水の場合には、脱硫のために消石灰スラリーを通過させ、SOXガスはSO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化除去されていることより、SOXガスを除去した後の排水は、中性ないし弱アルカリ性を有している。したがって、この条件下での排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着除去する技術が求められている。
【0019】
この場合、例えば、文献等により紹介されている技術として、銅イオンを利用する方法も考えられる。しかしながら、本発明者の検討によれば、一種のポリカルボキシル基構造(例えば、ポリアクリル酸構造)を含有する微細樹脂粉状体に、重金属吸着座席として銅イオンを吸着させたものでは、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンの吸着能は認められないものであった。
【0020】
これに対して、ポリカルボキシル基構造を有する樹脂の微細樹脂紛状体に、重金属吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させたものにあっては、中性ないし弱アルカリ条件下において、排水中に溶存しているセレン酸イオンや亜セレン酸イオンを特異的に吸着する能力を発揮するものであった。特に本発明にあっては、ポリカルボキシル基構造を有する樹脂の微細樹脂粉状体を、鉄イオンを吸着させるべく、鉄化合物水溶液中に添加し、攪拌処理して得られたスラリー状液のもの、または分離・乾燥させた樹脂粉状体をセレン酸イオン、亜セレン酸イオンが溶存している対象排水中に投入することにより、容易にこれらのイオンの除去を達成することができる利点を有している。
【0021】
本発明が提供する処理方法で使用される、重金属含有アニオン吸着材料としての樹脂中にカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂としては、ポリウレタン樹脂をアルカリ加水分解することにより樹脂中にキレート形成基であるカルボキシル基を含有させ、微粉末化したもの、あるいはポリアクリルアミド系の樹脂粉粒体を挙げることができる。
【0022】
このようなポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂フォームがその表面積が大きく、加水分解と共に微粉末化したものが好ましいものである。かかるポリウレタンフォームは、いわゆるポリオール成分とイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤、触媒、その他の助剤の存在下に反応させて得られるポリウレタン樹脂フォームである。そのなかでも、特に本発明で使用するポリウレタン樹脂フォームは、樹脂成分としては、ポリエーテル系が好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂フォームでは、加水分解に際してキレート形成基であるカルボキシル基を生成させる場合に、樹脂のすべてが加水分解され、グリコールと二塩基酸およびジアミンまでが生成し、好ましいものではない。
【0023】
樹脂中にキレート形成基であるカルボキシル基をより多く含有するポリウレタン樹脂フォームを構成するポリオール成分としては、ポリマーポリオールが最も好ましい。その中でもポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールが好適に使用される。すなわち、ポリマーポリオールとして、ポリプロピレンオキサイドにアクリロニトリルモノマーをグラフト重合させたものを使用することにより、ポリウレタンフォーム中に当初からニトリル基を存在させておくことができるのである。
【0024】
ポリウレタン樹脂フォームの加水分解は、アルカリ水溶液との処理により行われる。すなわち、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物の水溶液、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の有機アミンの水溶液を使用し、当該アルカリ水溶液中に樹脂フォームを浸漬させ、加熱、攪拌・粉砕させることにより行われる。かかる操作により樹脂フォーム中に存在するニトリル基がカルボキシル基に置換されると共に、ポリウレタン樹脂フォームのウレタン結合も加水分解されて、その結果微細化し、微粉状体の樹脂として存在することとなる。
【0025】
本発明の処理方法に使用される、重金属含有アニオン吸着材料としての鉄イオン吸着樹脂におけるセレン化合物の吸着量は、セレン化合物含有排水との接触表面積に比例するために、樹脂は微細であればあるほど、そのセレン酸イオン、亜セレン酸イオンの吸着能が高まることとなる。したがって重金属含有アニオン吸着材料としての樹脂は微細であることが好ましい。
【0026】
これらの微粉状体を得るための手段としては、乾式粉砕法、湿式粉砕法のいずれもが可能であるが、ポリウレタン樹脂の場合には、上記したアルカリ加水分解を行うことから、湿式粉砕で行うのが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂としてポリウレタンフォームを使用し、かかるフォームから微粉状体を製造する場合には、原料のポリウレタンフォームのセルサイズによって異なるが、好ましいものは、高々500μm程度である。一般な軟質ポリウレタンフォームから微紛体状物を製造する際のセルサイズの下限は、100μm程度であるので、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料として、最も好ましい樹脂粉状体のサイズとしては、100〜200μm程度である。
【0027】
一方本発明で使用する、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂としてのポリアクリルアミド系の樹脂は、アニオン系のポリアクリルアミド系樹脂が好ましく、中でもアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体が特に好ましい。このアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体は、樹脂中にカルボキシル基を含有すると共に、既に微粉状体の樹脂としての形態を保持しているものを使用することもできる。
【0028】
かかるアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体としては、分子量が大きなものが好ましく、好ましい分子量の範囲としては100万ないし1000万程度である。分子量が100万未満のものでは水中での微粉状体の粒子状体を保つことができず、ゲル状のものとなってしまい好ましいものではない。そのためアクリルアミド・アクリル酸ナトリウムの比率を変化させ、所望の分子量を有する樹脂とすることができるが、特にアクリルアミドは、分子量を大きくする上で好ましいものであり、その比率は、モル比でアクリルアミドが60〜80%程度であり、アクリル酸ナトリウムが20〜40%程度のものであるのが好ましい。また微粉状体の粒子状としての平均粒子径は、200μm程度以下、好ましくは100μm程度以下で、表面積の大きいものであるのが好ましい。
【0029】
なお、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体を微粉状体化する場合には、冷凍粉砕を含めた乾式粉砕法、またはアルコール等の貧溶媒中での湿式粉砕法のいずれでもよい。湿式粉砕の場合には、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル等の手段により行うことができる。
【0030】
本発明においては、これらの樹脂中に含有するカルボキシル基には、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着するためのアニオン吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させておくことが必要である。そのための鉄イオンの吸着は例えば以下のようにして行われる。
【0031】
樹脂中にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂の場合には、吸着させる鉄イオンとして第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの両者を使用することができるが、特に第一鉄イオンが好ましい。第二鉄イオンの場合には酸化力を有しているものであり、基質であるウレタン樹脂の劣化を生じさせる恐れがあり好ましいものではない。
【0032】
鉄イオンの吸着は、例えば、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、過塩素酸第一鉄等の水溶性第一鉄化合物の水溶液と、上記で得られた樹脂中にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂の微粉状体とを、混合処理することにより行われる。より具体的には、上記のアルカリ加水分解処理を終了し、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂を得た後、適宜pH調整を行い、当該樹脂をイオン交換水で洗浄し、直ちに水溶性の第一鉄化合物の水溶液と処理する。また、水酸化物の生成を抑えるため、樹脂を酸で洗浄した後水溶性の第一鉄化合物の水溶液と処理することで行われる。
【0033】
一方、樹脂中にカルボキシル基を含有する樹脂として、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体を使用する場合には、吸着させる鉄イオンとしては第二鉄イオンを吸着させるのが好ましい。第一鉄イオンの場合には、樹脂中のカルボキシル基が鉄イオンを取り込むことが困難であり、また樹脂が溶解してしまい好ましいものではない。具体的には、樹脂粉末が水に溶解することを避けるため、大過剰の第二鉄化合物を含む水溶液中に、攪拌下に樹脂粉末を徐々に投入し処理することで行われる。また、逆に大過剰の第二鉄化合物を含む水溶液を、攪拌下に樹脂粉末中に、徐々に投入し処理することで行うこともできる。第二鉄化合物を含む水溶液を急速に投入すると、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体中のカルボキシル基と鉄イオンが十分に反応せず、樹脂紛体のみが溶解し始め、凝集するため好ましいものではない。
なお本発明にあっては、重金属含有アニオン吸着材料として、ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂粉状体と、カルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微粉状体とを単独で使用しても、混合体として使用しても良い。
【0034】
上記のように製造された鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有する樹脂粉状体を水分と分離し、乾燥させることで樹脂粉状体の本発明の重金属含有アニオン吸着材料を得ることができる。この樹脂粉状体を、セレン化合物を含有する水溶液に混合処理することで、樹脂粉状体がセレン化合物を吸着し、その後このセレン化合物を分離回収するのが本発明の処理方法である。
一方、カルボキシル基を含有する樹脂粉状体を、鉄化合物を含有する水溶液と混合処理し、カルボキシル基に鉄イオンを吸着させてスラリー状液とし、このスラリー状液のまま、セレン化合物を含有する水溶液と混合処理を行ってもよい。
スラリー状液のまま使用することで、鉄イオンの吸着処理およびセレン化合物の吸着処理と一貫した処理工程を行うことが、処理の簡便化を図ることが可能となる。
【0035】
以下に、スラリー状の本発明の重金属含有アニオン吸着材料を利用した処理方法の一例を、図面を参照にしながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法について、その実施の形態を示す模式的系統図である。
【0037】
図1に示す方法は、例えば、石炭火力発電所等で発生した排煙ガス7を、排煙脱硫プロセス中の消石灰[Ca(OH)2]スラリー槽5を通過させ、SOXガスをSO4 2−の形で石こう(CaSO4)として固定化し、完全に除去した後のセレン化合物含有排水を本発明の処理方法で処理する系統的なシステム方法である。
【0038】
すなわち、上記で脱硫されたセレン化合物含有排水は、セレン化合物吸着処理槽4に通水され、そこで本発明の処理方法である鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料と混合処理され、排水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンが、選択的に重金属含有アニオン吸着材料に吸着処理される。
【0039】
セレン化合物吸着処理槽4には、本発明の処理方法で使用される鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料が混合されているが、かかる重金属含有アニオン吸着材料は、具体的には次のようにしてセレン化合物吸着処理層4へ導入される。
【0040】
すなわち、樹脂処理層1は、樹脂中にカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂を得るための加水分解処理層である。例えば、ポリウレタンフォーム中に当初からニトリル基を含有するポリウレタンフォームを、この樹脂処理槽1でアルカリ条件下に攪拌下、加水分解を行う。この樹脂処理層1において、処理されるポリウレタンフォームは、フォーム中に存在するニトリル基がカルボキシル基に置換されると共に、ポリウレタン樹脂フォームのウレタン結合も加水分解されて、その結果微細化し、微粉状体の樹脂として存在することとなる。
【0041】
一方、鉄化合物水溶液槽2には、樹脂処理槽1で加水分解処理された微粉状体の樹脂に含有されるカルボキシル基に、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着するためのアニオン吸着座席として鉄イオンを吸着・固定させるための鉄化合物水溶液が貯蔵されている。
【0042】
本発明にあっては、樹脂処理槽1加水分解処理された微粉状体の樹脂を含有する水溶液と、鉄化合物水溶液槽2中の鉄化合物水溶液の両者が、混合槽3で混合処理され、混合槽3において微粉状体の樹脂中に含有するカルボキシル基に鉄イオンの吸着が行われ、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料が得られるが、重金属含有アニオン吸着材料は、単離・乾燥させることなく、鉄化合物を含有する水溶液と処理し得たスラリー状液のまま、セレン化合物吸着処理槽4へ投入される。
【0043】
かくしてセレン化合物吸着処理槽4には、本発明の処理方法で使用する重金属含有アニオン吸着材料がスラリー状液として投入される一方、消石灰スラリー槽5により脱硫処理されたセレン化合物含有水も流入され、混合処理されることにより、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微粉状体の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料に、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンが吸着される。
【0044】
セレン化合物吸着処理槽4中で今処理され、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着した重金属含有アニオン吸着材料を含む処理完了液は、次のシックナー(沈澱処理槽)6へ導かれ、そこで吸着材料である樹脂微粉状体を分離させる一方、シックナー(沈澱処理槽)6をオーバーフローした処理水(浄水)は、より完全な処理を期するためフィルター濾過処理された後、系外へ排出・放流される。
なお、セレン化合物吸着処理槽4でセレン化合物を吸着処理した処理完了液は、シックナー(沈澱処理層)6へ導入する前に、適宜pH調整(好ましくは7〜8.6程度)され、処理完了液中に溶存している過剰の鉄イオンFe2+、Fe3+を鉄水酸化物に変換させ、沈澱処理槽6において沈澱除去されることとなる。
【0045】
シックナー(沈澱処理槽)6において沈澱したセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを吸着した重金属含有アニオン吸着材料は、フィルター濾過処理され、セレン化合物含有スラブとして、廃棄処理される。なお、フィルター濾過処理された濾液は再度セレン化合物吸着処理槽4へ再循環され、濾液中に残存する恐れのあるセレン酸イオン、亜セレン酸イオンは同様の吸着処理をすることにより、セレン化合物の吸着処理をより完全なものとする。
【0046】
以上の方法により、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンは、鉄イオンを吸着させたカルボキシル基を含有する微紛体状の樹脂からなる重金属含有アニオン吸着材料を用いる特異的な処理方法により、ほぼ完全に吸着除去することが可能となった。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定する意図を有するものではない。
【0048】
実施例1:ポリウレタン樹脂フォームの製造
アクリロニトリルを21%含有する水酸基価56.1のグリセリンベースポリプロピレンオキサイド系ポリマーポリオール(A)と、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50でグリセリンに付加した水酸基価56.1のポリアルキレンオキサイド(B)の混合ポリオールを、トルエンジイソシナネートと、常法に従い反応させ、密度0.029のポリウレタンフォームを得た。次いで、この得られたフォームを、水素:酸素=2.2:1の混合気体を用いて、爆発法によりセル膜を除去し、無膜化されたポリウレタン樹脂フォームとした。
【0049】
鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有するアニオン吸着用ポリウレタン樹脂粉状体含有スラリーの製造
上記で得られたポリウレタン樹脂フォームを10mm角状に切り出し、その50gを、3Lガラス製フラスコに入れ、水2900g、水酸化ナトリウム150gおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5gを投入し、85℃で攪拌翼(4枚羽根)により攪拌(500rpm/分)を行い、ポリウレタンフォームと攪拌翼との衝突粉砕を加えながら、加水分解を進行させた。
反応開始後およそ2.5時間経過後からフォームの微細粉砕化が認められ、3.5時間でフォームの微細粉砕化が完全に進行した。その後30分間攪拌を継続した。反応終了時点では、ポリウレタン樹脂は、目視では微細な粉状体として反応容器内に存在した。
【0050】
次いで、上記で得た反応溶液を中性付近にpH調整後、硫酸第一鉄35gを含む水溶液2000g中に攪拌下投入した。投入直後から樹脂の微粉状体が着色して、鉄イオンの良好な吸着を暗示させた。攪拌を30分間継続させた後、鉄イオンを吸着したカルボキシル基を有するアニオン吸着用ポリウレタン樹脂粉状体を含むスラリー状液を得た。
なお、スラリー状液中の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体については、硝酸にて分解させて誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で鉄吸着含量を定量したところ、樹脂粉状体1g当り7.1mgの鉄が吸着していることが判明した。
【0051】
亜セレン酸イオンの吸着能
上記で得られたスラリー状の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体を用いて亜セレン酸イオンの吸着能を以下の方法により検討した。
すなわち、pH8.0の亜セレン酸4.4ppm、0.5ppmおよび0.1ppm含有水溶液(関東化学社製標準液を使用し、液温25℃で、各濃度に調整した)1,000mL中に実施例2で得たスラリー状の鉄イオン吸着ポリウレタン樹脂粉状体を投入し、30分間浸透させた。水溶液部分のセレン化合物濃度を、誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で定量した結果、セレン化合物の吸着率は下記の表1の通りであった。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例2:鉄イオンを吸着したカルボキシル基を含有するポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂粉状体含有スラリーの製造
ポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体として、センカ(株)製のセンカフロックSS1830A(微粒子粉砕品)を使用した。このものの性状は、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムの比率が70%/30%(モル比)の強アニオンタイプであり、pH7.5(0.5%水溶液;25℃)、粘土は1200mPa・s/25℃の白色顆粒状物である。
センカフロックSS1830A(微粒子粉砕品)15gを、硫酸第二鉄・n水和物10gの水190gの水溶液中に攪拌下投入し、30分間攪拌を継続し、本発明の鉄イオンを吸着したポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂状物を含むスラリー状液を得た。
なお、得られたスラリー中の鉄イオン吸着樹脂粉状体を、硝酸にて分解させて誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP)で鉄吸着含量を定量したところ、樹脂粉状体1g当り15.0mgの鉄が吸着していることが判明した。
【0054】
亜セレン酸イオンの吸着能
上記で得られた鉄イオン吸着ポリ(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム)共重合体樹脂粉状体含有スラリー状液を使用し、上記試験例1と同様の亜セレン酸水溶液により亜セレン酸イオンの吸着能を検討した。
その結果を下記表2に示した。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
以上記載したように、本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法は、セレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを、簡便な手段により吸着、除去し得る利点を有している。
特に、これまでセレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオン等の酸素酸イオンを吸着除去し得る手段がなく、例えば、塩化第一鉄/水酸化ナトリウムにより形成される水酸化第一鉄を用いて、4価の亜セレンイオンまたは6価のセレン酸イオンを還元し、セレン化合物と水酸化鉄との混合物とし、高分子凝集剤を併用して、いわゆる粗大フロックを形成させ、沈降させることにより分離する凝集・固定化方法しかなかった現状下では、本発明方法は、極めて特異的なものである。
【0057】
従来の凝集・固定化法では、還元剤としての性質が強い塩化第一鉄を使用するものであり、溶存する酸素により酸化され易く、そのためセレンイオンを還元するためには大量の鉄化合物を添加しなければならないこと、さらに水酸化第一鉄が微細粒子であり共沈しにくく、高分子凝集剤を併用しなければならない不利益・煩雑さがあったが、本発明方法ではこのような点を解消し、極めて簡便な手段でセレン化合物含有水中に溶存しているセレン酸イオン、亜セレン酸イオンを効率よく、かつ選択的に吸着・除去することができる。
【0058】
特に、従来法の鉄化合物による凝集・固定化のみでは除去し難い6価のセレン(セレン酸イオン)を含む排水から、効率よくかかるセレン酸イオンを除去し得る処理方法が提供される点で、その産業上の利用価値は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が提供するセレン化合物含有水の処理方法の、実施の形態を示す模式的系統図である。
【符号の説明】
1:樹脂処理槽
2:鉄化合物水溶液槽
3:混合槽
4:セレン吸着処理槽
5:消石灰スラリー槽
6:シックナー(沈澱処理層)
Claims (5)
- ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂微紛状体、および/またはカルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微紛体状のカルボキシル基に鉄イオンを吸着させた樹脂微粉状体であることを特徴とする重金属含有アニオン吸着材料。
- ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂微紛状体、および/またはカルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微粉状体と、鉄化合物を含有する水溶液とを混合処理してスラリー状物としたことを特徴とする重金属含有アニオン吸着材料。
- 加水分解するポリウレタン樹脂フォームが、ポリオール成分としてポリアクリロニトリルを導入したポリマーポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタン樹脂フォームであることを特徴とする請求項1または2に記載の重金属含有アニオン吸着材料。
- ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂微粉状体、および/またはカルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微粉状体のカルボキシル基に鉄イオンを吸着させた微粉状体を、セレン化合物を含有する水溶液に混合し、樹脂微粉状体にセレン化合物を吸着させた後、セレン化合物を吸着させた樹脂微粉状体を分離させることを特徴とするセレン化合物含有水溶液の処理方法。
- ポリウレタン樹脂フォームを加水分解し、樹脂中にカルボキシル基を存在させた樹脂微粉状体、および/またはカルボキシル基を有するポリアクリルアミド系樹脂の微粉状体と、鉄化合物を含有する水溶液とを混合処理したスラリー状物を、セレン化合物を含有する水溶液に混合し、樹脂微粉状体にセレン化合物を吸着させた後、セレン化合物を吸着させた樹脂粉状体を分離させることを特徴とするセレン化合物含有水溶液の処理方法。
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JP2002341405A JP2004202278A (ja) | 2002-11-05 | 2002-11-25 | 重金属含有アニオン用吸着材料を用いたセレン化合物含有水の処理方法 |
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CN107352741A (zh) * | 2017-07-27 | 2017-11-17 | 张家港市双盈印染有限公司 | 一种工业印染废水的处理方法 |
JP2018058013A (ja) * | 2016-10-04 | 2018-04-12 | 清水建設株式会社 | 陰イオン吸着方法 |
-
2002
- 2002-11-25 JP JP2002341405A patent/JP2004202278A/ja active Pending
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