JP2004200657A - 電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性が低く、高温環境中ショートが発生するという課題を解決し、高耐圧性、高耐熱性、長寿命に優れた電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】陽極箔と陰極箔とその間に駆動用高分子電解質複合体14を含むセパレータを介在させたコンデンサ素子11と、このコンデンサ素子11を挿入して封止した金属ケース16とからなる電解コンデンサであって、前記駆動用高分子電解質複合体14は、電解質と、アクリル酸エステルの共重合体とを具備し、前記電解質がアクリル酸エステルの共重合体に取り込まれ、かつ前記セパレータにレーヨン繊維またはコットンリンターを用いた電解コンデンサ。
【選択図】図1

Description

本発明は電解質に固体のイオン伝導性で高分子系の電解質を用いた電解コンデンサに関するものである。
従来の電解コンデンサの構成を図2に示す。同図は部分断面斜視図であり、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させた表面に化成処理により誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔21とアルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔22とをセパレータ23を介して巻回することによりコンデンサ素子29が構成されている。このコンデンサ素子29は陽極箔21および陰極箔22にそれぞれ陽極リード25、陰極リード26を接続し、駆動用電解液24を含浸させるとともに、このコンデンサ素子29をアルミニウムケースなどの金属ケース28内に挿入してゴム等の封口板27で封止することにより得ることができる。
前記駆動用電解液24は、液体でイオン伝導性のものが知られており、エチレングリコールやγ−ブチルラクトンなどの有機溶媒と、硼酸もしくは硼酸アンモニウムなどを溶質としたものが用いられている。また、溶質としてアゼライン酸、ブチルオクタン二酸、5,6−デカンジカルボン酸、側鎖を有する二塩基酸等の二塩基酸及びそれらの塩の非水系を用いたものは、駆動用電解液24中の水分を低減できるため、100℃以上の環境下においても水分の内圧上昇による電解コンデンサの開弁を抑制することができるとされている。
また、液体のイオン伝導性の駆動用電解液24の代わりに固体の電子伝導性の電解質を用いた電解コンデンサが知られている。この電解質にはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが用いられており、等価直列抵抗(以下、ESRと称す)を小さくすることができることから、低ESRでインピーダンス特性に優れた電解コンデンサを提供することができるとされている。
また、電解質として固体でイオン伝導性を用いたものも提案されている。この電解質としては、無機系と高分子系の電解質がある。無機系の電解質は、イオン伝導率が高いという特長を有するが、重く、柔軟性に欠け、成形性が悪いという短所を有する。高分子系の電解質は、無機系の電解質に比べ、イオン伝導率が低いという短所を有するが、軽量で柔軟性、成形性等の機械的性能の面で優れているので注目を集めている。
前記固体のイオン伝導性で高分子系の電解質を用いた電解コンデンサとしては、例えば誘電体酸化皮膜を有する陽極箔と陰極箔との間にゲル状電解質層が形成され、このゲル状電解質が、(a)ポリアミド・ポリエーテルブロックポリマーおよびポリエステル・ポリエーテルブロックポリマーから選ばれる熱可塑性エラストマー、(b)極性有機溶媒、(c)溶質を含有したもの(特許文献1)、ポリビニルアルコールが付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールを含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化したもの(特許文献2)などが提案されている。
特開平09−082580号公報 特開平10−223481号公報
しかしながら、近年高調波対策回路や車両用に用いられる電解コンデンサは、従来の電解コンデンサ以上の高耐圧、高耐熱、長寿命と耐振動性などの高信頼性が必要とされており、その要求を満足させるためには、前記従来の液体のイオン伝導性の電解液では、更なる高耐圧比(火花発生電圧の向上)、高耐熱、長寿命の点で満足することができないという課題があった。
また、固体のイオン伝導性で高分子系の電解質は、高耐圧であるが、液体の電解液に比べてイオン伝導が抑制されることから、電解質そのものの抵抗が大きくなり、コンデンサとして抵抗損失が大きくなってしまう。そのため、セパレータの抵抗を小さくすることが重要となってくる。しかし、一般的なアルミ電解コンデンサのセパレータに用いられているマニラ紙、クラフト紙、エスパルト紙等は、密度が高いので、これらの密度を低くして用いようとすると、耐ショート性および引っ張り強度に課題を有する。
本発明は前記従来の課題を解決するもので、固体のイオン伝導性で高分子系の電解質を用いて、耐熱性が高く、かつ高耐圧性、高耐熱性、長寿命に優れた高信頼性の電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために本発明の請求項1に記載の発明は、陽極箔と陰極箔とをその間に駆動用高分子電解質複合体を含むセパレータを介在させて巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を挿入して封止した金属ケースとからなる電解コンデンサであって、前記駆動用高分子電解質複合体は、電解質と、アクリル酸エステルの共重合体とを具備し、前記電解質は、極性溶媒と無機酸もしくは有機酸またはこれらの塩の少なくとも1つからなる溶質(カチオンとして金属塩および四級アンモニウム塩を含まない)とからなり、前記アクリル酸エステルの共重合体は、アクリル系誘導体で末端に水酸基を有し重合性の不飽和二重結合を1つ有する単官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第1モノマーと、アクリル系誘導体で重合性の不飽和二重結合を複数有する多官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第2モノマーとの重合体からなり、前記電解質がアクリル酸エステルの共重合体に取り込まれ、かつセパレータにレーヨン繊維またはコットンリンターを用いた構成とするものであり、レーヨン繊維は数μmの円形の繊維で、フィブリルの網状構造を有し、コットンリンターはレーヨン繊維よりもやや太いものの短い繊維であることから、抄紙してセパレータとしたときの表面積が他のセパレータよりも大きく、電解質の保持量が多くなるので、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害しないため、コンデンサとして抵抗損失を小さくすることができ、また、レーヨン繊維は微細繊維が無数の点接着で構成されているので耐ショート性を向上することができるので、高耐圧性、高耐熱性、長寿命、安全性に優れた電解コンデンサを得ることができるという作用を有する。
なお、前記極性溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ポリオキシアルキレンポリオール(分子量200以下のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシエチレン・オキシプロピレングリコールならびに、これら2種以上の併用)等、アミド溶媒(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロジリノン等)、アルコール溶媒(メタノール、エタノール等)、エーテル溶媒(メチラール、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、フラン溶媒(2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン等)、スルホラン溶媒(スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等)、カーボネート溶媒(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、スチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、またはメチルエチルカーボネート等)、ラクトン溶媒(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、3−メチル−1,3−オキサジリジン−2−オン、3−エチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン等)、イミダゾリジノン溶媒(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、ピロリドン溶媒の単独あるいは2種以上の併用が挙げられる。このうちではエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、水、ラクトン溶媒、アルコール溶媒、カーボネート溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒およびフラン溶媒が好ましい。
また、無機酸もしくは有機酸としては、ポリカルボン酸(2〜4価):脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、:不飽和ポリカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イコタン酸];芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸;脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸等)、ヘキサヒドロフタル酸;これらのポリカルボン酸のアルキル(炭素数1〜3)もしくはニトロ置換体、例えばシトラコン酸、ジメチルマレイン酸、ニトロフタル酸(3−ニトロフタル酸、4−ニトロフタル酸);および硫黄含有ポリカルボン酸、例えばチオプロピオン酸;モノカルボン酸;脂肪族モノカルボン酸(炭素数1〜30)[飽和モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リンゴ酸、酒石酸:不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸];芳香族モノカルボン酸、例えば安息香酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸;オキシカルボン酸、例えばサリチル酸、マンデル酸、レゾルシン酸等が挙げられ、さらに、ほう酸、りん酸、けいタングステン酸、けいモリブデン酸、りんタングステン酸、りんモリブデン酸等があり、特に電気二重層コンデンサ用としては、4−フッ化ホウ酸、6−フッ化リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等やこれらの塩が挙げられる。
また、アクリル系誘導体で末端に水酸基を有し重合性の不飽和二重結合を1つ有する単官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第1モノマーは、末端にアルキル基を有したアクリル酸エステルよりも溶媒との親和性が向上し、架橋してできた共重合体マトリックス内に無機酸もしくは有機酸またはこれらの塩のいずれか1種以上の溶質を溶かし込んだ極性溶媒を取り込みやすくすることができ、イオン伝導度を高めることができる。この具体的なものとしては一般式(1)〜(4)のものが挙げられる。
Figure 2004200657
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また、アクリル系誘導体で重合性の不飽和二重結合を複数有する多官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第2モノマーは、溶媒との親和性および架橋密度を上げることができ、電解液の含有量を向上することができる。これにより、更に高いイオン伝導度を実現でき、かつ共重合体マトリックスが物理的極間距離を維持するため、電解コンデンサの耐ショート性において優れた特性を示すものである。この具体的なものとしては一般式(5)〜(16)のものが挙げられる。
Figure 2004200657
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本発明の請求項2に記載の発明は、セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターにマニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を含むもの或いはそれらを重ね合わせたものであり、レーヨン繊維またはコットンリンター単独よりも抄紙したときの繊維間密度を大きくすることができるので、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害しないようにすることができるという作用を有する。
本発明の請求項3に記載の発明は、セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターと、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種またはその混抄したものを重ね合わせたものであり、この重ね合わせたセパレータを用いることにより、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害せず、耐ショート性の向上を図ることができるという作用を有する。
本発明の請求項4に記載の発明は、セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターにマニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を含むものと、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を重ね合わせたものであり、この組み合わせたセパレータを用いるものである。
本発明の請求項5に記載の発明は、セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターの代わりに、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種またはそれらを混抄したものを重ね合わせたものであり、セルロース系の低密度のセパレータを二重紙または三重紙にすることにより、一重紙と同じ秤量で比較すると、繊維間隔が見掛け上緻密になり、かつ微細の貫通孔を多数有しているので、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害しないため、コンデンサとして抵抗損失を小さくすることができ、また、耐ショート性の向上を図ることができるという作用を有する。
本発明の請求項6に記載の発明は、コンデンサの陽極箔と陰極箔とを隔離しているセパレータの秤量が0.01〜55g/m2の範囲のものを用いて構成したものであり、従来の電解液または高分子固体電解質では、これら秤量の低いセパレータを用いた場合、ショートを引き起こし安定な特性を保つことができないのに対し、本発明の駆動用高分子電解質複合体を用いた場合、セパレータに高分子マトリックスが網目状に張り巡らされるため、コンデンサの電極間の極間距離を物理的に保つことができるので、耐圧の安定性が向上し、従来では適用できなかった中高圧のコンデンサにも秤量の低いセパレータの使用を可能にし、良好なコンデンサ特性を得ることができるという作用を有する。特に、前記セパレータを用いることにより、電解コンデンサ内のセパレータの占める抵抗分を大きく下げることが可能となるため、低ESR化、低インピーダンス化に大きな効果を有するものである。
なお、セパレータ秤量が0.01g/m2未満では、耐ショート性を向上させることができず、55g/m2を超えると、耐ショート性は向上するが、コンデンサ特性の向上を図ることができない。最適な範囲は1〜30g/m2である。
本発明の請求項7に記載の発明は、セパレータが紙力増強加工を施したものとするものであり、セパレータの引っ張り強度を向上させるものである。
本発明の請求項8に記載の発明は、溶質が無機酸および有機酸のアンモニウム塩、一級アミン塩、二級アミン塩、三級アミン塩およびアミジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの塩である構成とするものであり、これらの溶質にはカチオンとして金属塩および四級アンモニウム塩を用いないために、電解コンデンサに適用した場合、耐ショート性を向上させつつ、高いイオン伝導度を引き出すことができ、また、四級アミン塩では劣化により液漏れが発生し、安全性に課題があるのに対し、アンモニウム塩、一級アミン塩、二級アミン塩、三級アミン塩およびアミジン塩は劣化後も安定した特性を維持することができるという作用を有する。
なお、アンモニウム塩としては前記無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩などが挙げられ、アミン塩を構成するアミンとして1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン、ジエタノールアミン等)、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、トリエタノールアミン等)が挙げられ、アミジン塩として、アルキル置換アミジン基を有する化合物およびアルキル置換アミジン基を有する化合物の4級化物が、炭素数1〜11のアルキル基またはアリールアルキル基で4級化されたイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物から選ばれる化合物が挙げられる。
具体的には、アルキル置換アミジン基を有する化合物の4級化物が1−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−(−3’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−メチル−3−エチル−イミダゾリニウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリニウムが挙げられる。
本発明の請求項9に記載の発明は、陽極箔が表面から深さ方向に伸びたトンネル状ピット形状を有する構成とするものであり、陽極箔の容量引き出し率を容易に向上させることができるという作用を有する。
本発明の電解コンデンサは、電解質と、アクリル酸エステルの共重合体とを具備し、前記電解質は、極性溶媒と無機酸もしくは有機酸またはこれらの塩の少なくとも1つからなる溶質(カチオンとして金属塩および四級アンモニウム塩を含まない)とからなり、前記アクリル酸エステルの共重合体は、アクリル系誘導体で末端に水酸基を有し重合性の不飽和二重結合を1つ有する単官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第1モノマーと、アクリル系誘導体で重合性の不飽和二重結合を複数有する多官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第2モノマーとの重合体からなり、前記電解質がアクリル酸エステルの共重合体に取り込まれた駆動用高分子電解質複合体からなり、かつセパレータにレーヨン繊維またはコットンリンターを用いた構成とするものであり、レーヨン繊維は数μmの円形の繊維で、フィブリルの網状構造を有し、コットンリンターはレーヨン繊維よりもやや太いものの短い繊維であることから、抄紙してセパレータとしたときの表面積が他のセパレータよりも大きく、電解質の保持量が多いので、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害しないため、コンデンサとして抵抗損失を小さくすることができ、また、レーヨン繊維は微細繊維が無数の点接着で構成されているので耐ショート性を向上することができるので、高耐圧性、高耐熱性、長寿命、安全性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
図1は本発明の一実施の形態における電解コンデンサの構成を示す部分断面正面図である。同図において、アルミニウム箔をエッチング処理により実効表面積を拡大した表面に陽極酸化により誘電体酸化皮膜を形成して引出し用の陽極リード12を接続した陽極箔と、アルミニウム箔をエッチング処理して引出し用の陰極リード13を接続した陰極箔とをセパレータを介して巻回することによりコンデンサ素子11を構成し、このコンデンサ素子11をイオン伝導性を有する駆動用高分子電解質複合体14を形成することができる溶液を含浸してアルミニウムの金属ケース16内に挿入して金属ケース16の開口部を封口板15で封止する。
その後、この金属ケース16に加熱などの熱を加えることによりコンデンサ素子11の内部および外表面と、金属ケース16の内面に駆動用高分子電解質複合体14が形成され、コンデンサ素子11が金属ケース16内に固定された状態で電解コンデンサが構成されている。なお、金属ケース16は外装樹脂17で覆われている。
前記駆動用高分子電解質複合体14は、アクリル酸エステル類が重合開始剤のもとでラジカル重合反応を起こし、共重合体マトリックスを形成すると同時に無機酸もしくは有機酸またはこれらの塩のいずれか1種以上の溶質を溶かし込んだ極性溶媒が架橋した共重合体マトリックス中に取り込まれた構成を有するものである。
また、前記セパレータはレーヨン繊維またはコットンリンターを用いる。或いはマニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を含むもの、さらには、これらの組み合わせたものを用いることができる。セルロース系の中でも、レーヨン繊維は数μmの円形の繊維で他のセルロースよりも細く、コットンリンターはレーヨン繊維よりもやや太いものの短い繊維であることから、抄紙してセパレータとしたときの表面積が他のセパレータよりも大きく、電解質の保持量が多いので、駆動用高分子電解質複合体のイオン透過を阻害しないため、コンデンサとして抵抗損失を小さくすることができ、微細繊維が無数の点接着で構成されるので耐ショート性を向上することができる。
なお、前記セパレータは、セパレータの引っ張り強度を向上させる目的で紙力増強加工を施してもよい。この紙力増強加工を施すことにより、引っ張り強度が向上し、耐ショート性をさらに向上させることができる。
前記紙力増強加工は、セパレータに澱粉、植物性ガム、カルボキシアルキルセルロース、ポリオキシエチレンフタレートなどの水溶液を塗布もしくは含浸処理することにより行うことができる。
以下、本実施の形態について実施例を用いて詳細に説明する。
(実施例1〜3、比較例1〜2)
直流エッチング処理により表面から垂直にトンネル状ピットを形成して粗面化した後に陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜(化成電圧520V)を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔とアルミニウム箔を交流エッチング処理した陰極箔とをレーヨン繊維とコットンリンターおよびクラフトとヘンプの二重紙、マニラ麻とエスパルトの二重紙のセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)をそれぞれ介在させて巻回することによりコンデンサ素子を得た。なお、比較例1のセパレータには前記と同様のそれぞれのセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)を用い、比較例2のセパレータにはマニラ紙(厚さ50μm、秤量25g/m2)を用いた。ここで、秤量というのは、密度と厚みの積である。
次に、(表1)に示した実施例1〜3および比較例2の駆動用高分子電解質複合体を形成するための駆動用高分子電解質複合体溶液を用いて、前記コンデンサ素子に含浸させた。なお、(化1)のアクリル酸エステル誘導体の構造を(表2)に、また(化5)のアクリル酸エステル誘導体の構造を(表3)に示す。また、前記駆動用高分子電解質複合体溶液の水分を2wt%になるように調製した。なお、比較例1は駆動用電解質である。
Figure 2004200657
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次に、前記夫々のコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムの金属ケースに挿入後、この金属ケースの開口部を、樹脂加硫ブチルゴム封止部材(ブチルゴムポリマー30部、カーボン20部、無機充填剤50部から構成、封止部材硬度:70IRHD[国際ゴム硬さ単位])でカーリング処理により封止したサンプルを夫々作製した。
続いて、比較例1を除くサンプルに所定の温度で熱を加えることにより、コンデンサ素子の内部および外表面に駆動用高分子電解質複合体を形成し、かつコンデンサ素子が金属ケースの内面に固定された状態で電解コンデンサを得た。
以上の実施例1〜3および比較例1〜2の電解コンデンサを各20個作製し、その寿命試験を行った結果を(表4)に示す。なお、電解コンデンサの定格はいずれも400V47μF(高圧級)で、試験温度は105℃中でリップル負荷試験を行った。
Figure 2004200657
(表4)の結果から、実施例1〜3の電解コンデンサは、比較例1〜2と電解質の電気的な特性は同等であったが、高温中での電解コンデンサの長時間の安定性については、比較例1ではエージング中に全数ショートが発生し、比較例2では寿命試験中にショートが多発したのに対し、実施例1〜3は非常に安定であり、歴然とした差があることが判る。
(実施例4〜7、比較例3)
交流エッチング処理により表面を粗面化した後に陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜(化成電圧90V)を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔とアルミニウム箔を交流エッチング処理した陰極箔とをレーヨン繊維とヘンプの混抄紙のセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)を介在させて巻回することによりコンデンサ素子を得た。
次に、(表5)に示した実施例4〜7および比較例3の駆動用高分子電解質複合体を形成するための駆動用高分子電解質複合体溶液を用いて、前記コンデンサ素子に夫々含浸させた。なお、前記駆動用高分子電解質複合体溶液の水分を2wt%になるように調製した。
Figure 2004200657
次に、夫々のコンデンサ素子を用いて前記実施例1と同様にして夫々電解コンデンサを各20個作製し、その寿命試験を行った結果を(表6)に示す。なお、比較例3のセパレータにはヘンプ紙(厚さ50μm、秤量25g/m2)を用いており、また、電解コンデンサの定格はいずれも63V330μF(低圧級)で、試験温度は125℃中でDC負荷試験を行った。
Figure 2004200657
(表6)の結果から、実施例4〜7の電解コンデンサは、比較例3と電解質の電気的な特性は同等であったが、高温中での電解コンデンサの長時間の安定性については、比較例3では寿命試験中に特性の変化が大きかったのに対し、実施例4〜7は非常に安定であり、歴然とした差があることが判る。
(実施例8〜11、比較例4)
実施例8〜11および比較例4で用いる駆動用高分子電解質複合体溶液の電解質とアクリル酸エステルの配合比およびアクリル酸エステルの種類を変えた構成材料を(表7)に示す。なお、前記駆動用高分子電解質複合体溶液の水分を2wt%になるように調製した。
Figure 2004200657
次に、(表7)に示した駆動用高分子電解質複合体溶液を用いて前記実施例1と同様にして夫々電解コンデンサを各20個作製し、その寿命試験を行った結果を(表8)および(表9)に示す。なお、実施例8のセパレータにはコットンリンターのセパレータの秤量を変えたものを、実施例9のセパレータにはレーヨン繊維とマニラ紙の混抄紙で秤量を変えたもの、実施例10のセパレータにはコットンリンターとクラフト紙の混抄紙で秤量を変えたもの、実施例11のセパレータには秤量が一定で、(表9)に示したようにレーヨン繊維、コットンリンター、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトを組み合わせたもの、比較例4のセパレータにはレーヨン繊維のセパレータ(秤量22.5g/m2)をそれぞれ用いており、また、電解コンデンサの定格はいずれも400V330μF(高圧級)で、試験温度は125℃中でDC負荷試験を行った。
Figure 2004200657
Figure 2004200657
(表8)に示すように、実施例8のコットンリンターのセパレータの秤量を変えた電解コンデンサは、その秤量が55g/m2を超えると125℃DC負荷試験後のtanδが過大になるのに対し、秤量が55g/m2以下では製品特性にも問題なく、外観異常も見られない。しかし、秤量が0.01g/m2未満では全数ショートが発生した。
また、実施例9および実施例10のレーヨン繊維またはコットンリンターとの混抄紙でも特性に問題なく、外観異常も見られなかった。
また、(表9)に示すように、実施例11のセパレータの秤量を同一にして、セパレータの種類を変えたものを用いたものでは、クラフト紙の一重紙だけが、試験中に特性の変化が大になったが、その他のセパレータは問題なく、外観異常も見られなかった。
これに対して、比較例4に示すように電解質にアクリル酸エステルからなる駆動用高分子電解質複合体を用いない場合、セパレータにレーヨン繊維を用いても全数ショートが発生した。
以上のように、本発明の実施の形態に基づく駆動用高分子電解質複合体とセパレータにレーヨン繊維またはコットンリンターとセルロース系の二重紙、三重紙またはその混抄を用いた電解コンデンサは、高温での寿命特性を向上させ、かつ安定に供給することができる。
本発明は、高耐圧、高耐熱、長寿命と耐振動性などの信頼性および安全性に優れた電解コンデンサであり、高調波対策回路や車両用に用いることができる電解コンデンサを提供することができる。
本発明の一実施の形態による電解コンデンサの構成を示す部分断面正面図 従来の電解コンデンサの構成を示す部分断面斜視図
符号の説明
11 コンデンサ素子
12 陽極リード
13 陰極リード
14 駆動用高分子電解質複合体
15 封口板
16 金属ケース
17 外装樹脂

Claims (9)

  1. 陽極箔と陰極箔とをその間に駆動用高分子電解質複合体を含むセパレータを介在させて巻回した電解コンデンサであって、前記駆動用高分子電解質複合体は、電解質と、アクリル酸エステルの共重合体とを具備し、前記電解質は、極性溶媒と無機酸もしくは有機酸またはこれらの塩の少なくとも1つからなる溶質(カチオンとして金属塩および四級アンモニウム塩を含まない)とからなり、前記アクリル酸エステルの共重合体は、アクリル系誘導体で末端に水酸基を有し重合性の不飽和二重結合を1つ有する単官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第1モノマーと、アクリル系誘導体で重合性の不飽和二重結合を複数有する多官能モノマー群の中の少なくとも1つからなる第2モノマーとの重合体からなり、前記電解質がアクリル酸エステルの共重合体に取り込まれ、かつセパレータにレーヨン繊維またはコットンリンターを用いた電解コンデンサ。
  2. セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターにマニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を含むもの或いはそれらを重ね合わせたものである請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターと、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種またはその混抄したものを重ね合わせたものである請求項1に記載の電解コンデンサ。
  4. セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターにマニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を含むものと、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種を重ね合わせたものである請求項1に記載の電解コンデンサ。
  5. セパレータがレーヨン繊維またはコットンリンターの代わりに、マニラ麻、クラフト、ヘンプ、エスパルトの少なくとも1種またはそれらの混抄したものを重ね合わせたものである請求項1に記載の電解コンデンサ。
  6. セパレータの秤量が0.01〜55g/m2の範囲である請求項1〜6のいずれか1つに記載の電解コンデンサ。
  7. セパレータが紙力増強加工を施したものである請求項6に記載の電解コンデンサ。
  8. 溶質が無機酸および有機酸のアンモニウム塩、一級アミン塩、二級アミン塩、三級アミン塩およびアミジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの塩である請求項1に記載の電解コンデンサ。
  9. 陽極箔が表面から深さ方向に伸びたトンネル状ピット形状を有するものである請求項1に記載の電解コンデンサ。
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