JP2004200627A - 多数個取り配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚みが厚いセラミック母基板に分割溝を形成するにあたり、分割溝を深くするような場合に、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量が非常に大きくなり、クラック等の発生が顕著なものとなる。
【解決手段】配線基板領域4が縦横に配列形成されたセラミック母基板1の主面に、配線基板領域4の境界に沿って分割溝2を設けた多数個取り配線基板において、分割溝2を、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを角部における交差部2bの深さよりも深いものとした。ブレードを押圧・侵入させたときのセラミックグリーンシートの変形量を交差部2bで特に大きくさせることなく、各配線基板領域4毎に容易かつ確実に撓折することができ、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中してクラックを発生させる、という不具合や、焼成後のセラミック母基板1におけるクラックや割れ等の発生を防止できる。
【選択図】 図1
【解決手段】配線基板領域4が縦横に配列形成されたセラミック母基板1の主面に、配線基板領域4の境界に沿って分割溝2を設けた多数個取り配線基板において、分割溝2を、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを角部における交差部2bの深さよりも深いものとした。ブレードを押圧・侵入させたときのセラミックグリーンシートの変形量を交差部2bで特に大きくさせることなく、各配線基板領域4毎に容易かつ確実に撓折することができ、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中してクラックを発生させる、という不具合や、焼成後のセラミック母基板1におけるクラックや割れ等の発生を防止できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品が塔載されるセラミック基板を広面積の母基板中に縦横に多数個配列して成る多数個取り配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品を塔載するために用いられる配線基板は、酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックス材料から成る略四角平板状の絶縁基体の上面に電子部品を塔載するための電子部品塔載部を有し、この電子部品塔載部またはその周辺から絶縁基体の下面にかけて複数の配線導体が配設されて成る。そして、絶縁基体の電子部品搭載部に電子部品を塔載固定するとともに電子部品の電極をボンディングワイヤや半田等の電気的接続手段を介して配線導体に電気的に接続し、必要に応じて電子部品を樹脂や蓋体で気密封止することによって製品としての電子装置となる。
【0003】
ところで、このような配線基板は近時の電子装置の小型化の要求に伴い、その大きさが数mm角程度の極めて小さなものとなってきており、配線基板の取り扱いを容易とするために、また配線基板および電子装置の製作を効率よくするために1枚の広面積の母基板中から多数個の配線基板を同時集約的に得るようにした、いわゆる多数個取り配線基板の形態で製作されている。
【0004】
このような多数個取り配線基板は、略平板状の母基板の上下少なくとも一主面に分割溝を縦横に形成し、分割溝によって母基板を多数個の配線基板に区画しておき、分割溝に沿って母基板を撓折することによって個々の配線基板を得ることができる。
【0005】
この場合、前記各分割溝は、通常、母基板を撓折するために印加される曲げ応力を分割溝先端部に効果的に集中させるため、先端角が約20°〜30°程度の鋭いV字状の断面形を有し、母基板を分割溝に沿って撓折することを容易かつ確実なものとしている。また各分割溝は、その深さが母基板の厚みに対して約20〜40%となるように形成され、分割溝形成部位における母基板の機械的強度を適度に低下させることによって切断を容易としている。
【0006】
なお、この多数個取り配線基板は、セラミックグリーンシート積層法によって製作され、具体的には、まず、母基板用のセラミックグリーンシートを準備するとともに、このセラミックグリーンシート上に金属ペーストを印刷塗布して配線用導体を所定パターンに塗布し、次に、前記セラミックグリーンシートの一主面に、V字状の断面を有するブレード(刃)を押圧することにより分割溝を形成して各配線基板となる領域を区画し、最後にこのセラミックグリーンシートを高温で焼成することによって製造される。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−216507号公報
【特許文献2】
特開平11−26639号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の多数個取り配線基板によれば、セラミックグリーンシートに形成される分割溝がブレード(刃)と同じV字状の断面形を有し、上部ではその幅が広くなることから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成する場合に、ブレードの押圧・侵入により開裂するセラミックグリーンシートの変形量が各配線基板領域の角部における交差部で大きくなり、この変形により発生する応力がこの交差部に集中してクラックを発生させ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合を発生させてしまうという問題点があった。
【0009】
特に、高機能化等のために母基板の厚みが厚く、これに応じて分割溝の深さを深くするような場合には、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量も非常に大きくなり、クラック等の発生が顕著なものとなるという問題点があった。
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、分割溝の先端部にクラックが発生することがなく、母基板の機械的強度や信頼性に優れた多数個取り配線基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の多数個取り配線基板は、略四角形の配線基板領域が縦横に配列形成されたセラミック母基板の主面に、前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を設けた多数個取り配線基板において、前記分割溝は、前記配線基板領域の辺部における深さが、前記配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いことを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記分割溝は、前記配線基板領域の前記辺部において深く前記角部において浅い波型形状であることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記分割溝は、前記配線基板領域の縦または横の前記境界のいずれか一方の前記角部における深さが、他方の前記角部における深さより浅いことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部における深さが、配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いものとしたことから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域の角部における交差部で特に大きくさせることなく、各配線基板領域に容易・確実に撓折することができるような深さの分割溝を形成することができ、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の辺部において深く角部において浅い波型形状としておくと、より一層効果的に、配線基板領域の辺部において母基板の機械的強度を低下させて母基板の撓折をより容易とすることができるとともに、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いものとしておくと、分割溝の角部の交差部における深さが縦の境界と横の境界とで異なる深さとなることから、分割溝が角部における交差部で同じ深さとなることにより分割溝の底部分が交差してこの交差部に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の多数個取り配線基板について、添付図面に基づき説明する。図1は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、1はセラミック母基板、2は分割溝、3は配線導体である。このセラミック母基板1を分割溝2で縦横に区画し、多数の配線基板領域4をセラミック母基板1中に縦横に配列させることにより多数個取り配線基板が形成される。
【0018】
セラミック母基板1は、平板状の酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・窒化珪素質焼結体・炭化珪素質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化カルシウム・酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して泥漿状のセラミックスラリーとなすとともに、このセラミックスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形技術を採用しシート状となすことによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得て、しかる後、このセラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工により適当な形状とするとともに必要に応じてこれを複数枚積層し、最後にこのセラミックグリーンシートを還元雰囲気中にて約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0019】
またセラミック母基板1は、その上下の少なくとも一方の主面に分割溝2が縦横に形成され、この分割溝2によって多数個の四角形状の配線基板領域4が区画され縦横に配列されている。
【0020】
分割溝2は、多数個取り配線基板のセラミック母基板1をこれに沿って撓折して個々の配線基板領域4をそれぞれの配線基板に分割する際に曲げ応力を集中させる機能を有し、セラミック母基板1となるセラミックグリーンシートの主面に所定の断面形を有するブレード(金属製の刃)を押圧し、所定深さに侵入させることによって形成される。
【0021】
また各配線基板領域4は、その上面中央部に電子部品を塔載する搭載部を有し、この搭載部の周辺から下面にかけてタングステンやモリブデン・銅・銀等の金属材料から成る配線導体3を有している。
【0022】
配線導体3は、例えばタングステンから成る場合であれば、タングステン粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して得た金属ペーストを、セラミック母基板1となるセラミックグリーンシートの上面に予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布しておくことによって形成される。
【0023】
そして、各搭載部には半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品(図示せず)が塔載されるとともに、配線導体3にはこの電子部品の各電極が、例えばボンディングワイヤや半田バンプ等の電気的接続手段を介して電気的に接続される。
【0024】
そして、搭載部に電子部品を塔載するとともに、この電子部品の各電極を電気的接続手段を介して配線導体3に電気的に接続した後、各配線基板領域4の上面に図示しない蓋体を電子部品を覆うように固着することによって電子部品が気密に封止され、多数個の電子装置が縦横に配列形成されることとなり、分割溝2に沿ってセラミック母基板1を撓折することにより、各配線基板を用いた多数の電子装置が同時集約的に製造されるのである。
【0025】
なお、セラミック母基板1の外側には枠状の捨て代領域5が形成されており、多数個取り配線基板の取扱いを容易なものとしている。
【0026】
本発明の多数個取り配線基板においては、図2に示す如く、分割溝2は、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くすることが重要である。
【0027】
このように、分割溝2について、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くしておくと、セラミックグリーンシートに分割溝2を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域4の角部における交差部2bで特に大きくさせることなく、各配線基板領域4に容易かつ確実に撓折することができるような深さの分割溝2を形成することができ、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、セラミック母基板1にクラックや割れ等の問題が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0028】
このように、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くする場合は、辺部2aにおける深さが角部における交差部2bの深さよりも10%乃至30%程度深くなるようにして形成することが好ましい。
【0029】
例えば、セラミック母基板1の厚さが2mm〜4mm程度の厚いセラミック多層配線基板において、分割溝2の深さは、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bにおける深さに対して10%乃至30%程度深いものとし、すなわち、辺部2aにおける深さを0.60mmとし、角部における交差部2bにおける深さを0.50mm程度とする。
【0030】
また、分割溝2は、配線基板領域4の辺部2aにおいて深く角部において浅い波型形状であることが好ましい。このように、分割溝2を辺部2aにおいて深く角部における交差部2bにおいて浅い波型形状とすることにより、角部における交差部2bへの応力の集中をより一層効果的に防止することができ、クラックや割れ等の不具合の発生をより一層確実に防ぐことができる。
【0031】
さらに、図3は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す図1と同様の平面図であり、同図中の(A)は平面図に示すAで示した分割溝2の断面図であり、同じく(B)はBで示した分割溝2の断面図である。
【0032】
図3に示すように、分割溝2は、配線基板領域4の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いことが好ましい。図3においては、配線基板領域4の縦の境界に沿って設けた分割溝2(Aで示す)の配線基板領域4の角部における深さが、配線基板領域4の横の境界に沿って設けた分割溝2(Bで示す)の配線基板領域4の角部における深さより浅い場合を示している。
【0033】
このことにより、縦および横の境界に沿った分割溝2の底部分が角部における交差部2bで同じ深さとなってしまうことによってこの交差部分に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0034】
かくして、本発明の多数個取り配列基板によれば、分割溝2の底部、特に配線基板領域4の角部における交差部2bにクラックが発生することが効果的に防止され、セラミック母基板1の機械的強度の不良や、配線導体3の断線等の不具合が発生することを有効に防止することができるとともに、セラミック母基板1を分割溝2に沿って各配線基板領域4毎に正確かつ容易に撓折することができる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、分割溝2はセラミック母基板1の上下両主面に形成しても下側の主面のみに形成してもよく、また配線導体2の露出表面をニッケル・銅・金等のめっき層で被覆するようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部における深さが、配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いものとしたことから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域の角部における交差部で特に大きくさせることなく、各配線基板領域に容易・確実に撓折することができるような深さの分割溝を形成することができ、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部において深く角部において浅い波型形状としておくと、より一層効果的に、配線基板領域の辺部において母基板の機械的強度を低下させて母基板の撓折をより容易とすることができるとともに、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0038】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いものとしておくと、分割溝の角部の交差部における深さが縦の境界と横の境界とで異なる深さとなることから、分割溝が角部における交差部で同じ深さとなることにより分割溝の底部分が交差してこの交差部に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、(A)は配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の分割溝の断面図、(B)は、他方の分割溝の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・セラミック母基板
2・・・・分割溝
2a・・配線基板領域の辺部
2b・・配線基板領域の角部における交差部
3・・・・配線導体
4・・・・配線基板領域
5・・・・捨て代領域
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品が塔載されるセラミック基板を広面積の母基板中に縦横に多数個配列して成る多数個取り配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品を塔載するために用いられる配線基板は、酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックス材料から成る略四角平板状の絶縁基体の上面に電子部品を塔載するための電子部品塔載部を有し、この電子部品塔載部またはその周辺から絶縁基体の下面にかけて複数の配線導体が配設されて成る。そして、絶縁基体の電子部品搭載部に電子部品を塔載固定するとともに電子部品の電極をボンディングワイヤや半田等の電気的接続手段を介して配線導体に電気的に接続し、必要に応じて電子部品を樹脂や蓋体で気密封止することによって製品としての電子装置となる。
【0003】
ところで、このような配線基板は近時の電子装置の小型化の要求に伴い、その大きさが数mm角程度の極めて小さなものとなってきており、配線基板の取り扱いを容易とするために、また配線基板および電子装置の製作を効率よくするために1枚の広面積の母基板中から多数個の配線基板を同時集約的に得るようにした、いわゆる多数個取り配線基板の形態で製作されている。
【0004】
このような多数個取り配線基板は、略平板状の母基板の上下少なくとも一主面に分割溝を縦横に形成し、分割溝によって母基板を多数個の配線基板に区画しておき、分割溝に沿って母基板を撓折することによって個々の配線基板を得ることができる。
【0005】
この場合、前記各分割溝は、通常、母基板を撓折するために印加される曲げ応力を分割溝先端部に効果的に集中させるため、先端角が約20°〜30°程度の鋭いV字状の断面形を有し、母基板を分割溝に沿って撓折することを容易かつ確実なものとしている。また各分割溝は、その深さが母基板の厚みに対して約20〜40%となるように形成され、分割溝形成部位における母基板の機械的強度を適度に低下させることによって切断を容易としている。
【0006】
なお、この多数個取り配線基板は、セラミックグリーンシート積層法によって製作され、具体的には、まず、母基板用のセラミックグリーンシートを準備するとともに、このセラミックグリーンシート上に金属ペーストを印刷塗布して配線用導体を所定パターンに塗布し、次に、前記セラミックグリーンシートの一主面に、V字状の断面を有するブレード(刃)を押圧することにより分割溝を形成して各配線基板となる領域を区画し、最後にこのセラミックグリーンシートを高温で焼成することによって製造される。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−216507号公報
【特許文献2】
特開平11−26639号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の多数個取り配線基板によれば、セラミックグリーンシートに形成される分割溝がブレード(刃)と同じV字状の断面形を有し、上部ではその幅が広くなることから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成する場合に、ブレードの押圧・侵入により開裂するセラミックグリーンシートの変形量が各配線基板領域の角部における交差部で大きくなり、この変形により発生する応力がこの交差部に集中してクラックを発生させ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合を発生させてしまうという問題点があった。
【0009】
特に、高機能化等のために母基板の厚みが厚く、これに応じて分割溝の深さを深くするような場合には、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量も非常に大きくなり、クラック等の発生が顕著なものとなるという問題点があった。
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、分割溝の先端部にクラックが発生することがなく、母基板の機械的強度や信頼性に優れた多数個取り配線基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の多数個取り配線基板は、略四角形の配線基板領域が縦横に配列形成されたセラミック母基板の主面に、前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を設けた多数個取り配線基板において、前記分割溝は、前記配線基板領域の辺部における深さが、前記配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いことを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記分割溝は、前記配線基板領域の前記辺部において深く前記角部において浅い波型形状であることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記分割溝は、前記配線基板領域の縦または横の前記境界のいずれか一方の前記角部における深さが、他方の前記角部における深さより浅いことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部における深さが、配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いものとしたことから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域の角部における交差部で特に大きくさせることなく、各配線基板領域に容易・確実に撓折することができるような深さの分割溝を形成することができ、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の辺部において深く角部において浅い波型形状としておくと、より一層効果的に、配線基板領域の辺部において母基板の機械的強度を低下させて母基板の撓折をより容易とすることができるとともに、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いものとしておくと、分割溝の角部の交差部における深さが縦の境界と横の境界とで異なる深さとなることから、分割溝が角部における交差部で同じ深さとなることにより分割溝の底部分が交差してこの交差部に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の多数個取り配線基板について、添付図面に基づき説明する。図1は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、1はセラミック母基板、2は分割溝、3は配線導体である。このセラミック母基板1を分割溝2で縦横に区画し、多数の配線基板領域4をセラミック母基板1中に縦横に配列させることにより多数個取り配線基板が形成される。
【0018】
セラミック母基板1は、平板状の酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・窒化珪素質焼結体・炭化珪素質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化カルシウム・酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して泥漿状のセラミックスラリーとなすとともに、このセラミックスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形技術を採用しシート状となすことによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得て、しかる後、このセラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工により適当な形状とするとともに必要に応じてこれを複数枚積層し、最後にこのセラミックグリーンシートを還元雰囲気中にて約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0019】
またセラミック母基板1は、その上下の少なくとも一方の主面に分割溝2が縦横に形成され、この分割溝2によって多数個の四角形状の配線基板領域4が区画され縦横に配列されている。
【0020】
分割溝2は、多数個取り配線基板のセラミック母基板1をこれに沿って撓折して個々の配線基板領域4をそれぞれの配線基板に分割する際に曲げ応力を集中させる機能を有し、セラミック母基板1となるセラミックグリーンシートの主面に所定の断面形を有するブレード(金属製の刃)を押圧し、所定深さに侵入させることによって形成される。
【0021】
また各配線基板領域4は、その上面中央部に電子部品を塔載する搭載部を有し、この搭載部の周辺から下面にかけてタングステンやモリブデン・銅・銀等の金属材料から成る配線導体3を有している。
【0022】
配線導体3は、例えばタングステンから成る場合であれば、タングステン粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して得た金属ペーストを、セラミック母基板1となるセラミックグリーンシートの上面に予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布しておくことによって形成される。
【0023】
そして、各搭載部には半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品(図示せず)が塔載されるとともに、配線導体3にはこの電子部品の各電極が、例えばボンディングワイヤや半田バンプ等の電気的接続手段を介して電気的に接続される。
【0024】
そして、搭載部に電子部品を塔載するとともに、この電子部品の各電極を電気的接続手段を介して配線導体3に電気的に接続した後、各配線基板領域4の上面に図示しない蓋体を電子部品を覆うように固着することによって電子部品が気密に封止され、多数個の電子装置が縦横に配列形成されることとなり、分割溝2に沿ってセラミック母基板1を撓折することにより、各配線基板を用いた多数の電子装置が同時集約的に製造されるのである。
【0025】
なお、セラミック母基板1の外側には枠状の捨て代領域5が形成されており、多数個取り配線基板の取扱いを容易なものとしている。
【0026】
本発明の多数個取り配線基板においては、図2に示す如く、分割溝2は、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くすることが重要である。
【0027】
このように、分割溝2について、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くしておくと、セラミックグリーンシートに分割溝2を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域4の角部における交差部2bで特に大きくさせることなく、各配線基板領域4に容易かつ確実に撓折することができるような深さの分割溝2を形成することができ、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、セラミック母基板1にクラックや割れ等の問題が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0028】
このように、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bの深さよりも深くする場合は、辺部2aにおける深さが角部における交差部2bの深さよりも10%乃至30%程度深くなるようにして形成することが好ましい。
【0029】
例えば、セラミック母基板1の厚さが2mm〜4mm程度の厚いセラミック多層配線基板において、分割溝2の深さは、配線基板領域4の辺部2aにおける深さを、配線基板領域4の角部における交差部2bにおける深さに対して10%乃至30%程度深いものとし、すなわち、辺部2aにおける深さを0.60mmとし、角部における交差部2bにおける深さを0.50mm程度とする。
【0030】
また、分割溝2は、配線基板領域4の辺部2aにおいて深く角部において浅い波型形状であることが好ましい。このように、分割溝2を辺部2aにおいて深く角部における交差部2bにおいて浅い波型形状とすることにより、角部における交差部2bへの応力の集中をより一層効果的に防止することができ、クラックや割れ等の不具合の発生をより一層確実に防ぐことができる。
【0031】
さらに、図3は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す図1と同様の平面図であり、同図中の(A)は平面図に示すAで示した分割溝2の断面図であり、同じく(B)はBで示した分割溝2の断面図である。
【0032】
図3に示すように、分割溝2は、配線基板領域4の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いことが好ましい。図3においては、配線基板領域4の縦の境界に沿って設けた分割溝2(Aで示す)の配線基板領域4の角部における深さが、配線基板領域4の横の境界に沿って設けた分割溝2(Bで示す)の配線基板領域4の角部における深さより浅い場合を示している。
【0033】
このことにより、縦および横の境界に沿った分割溝2の底部分が角部における交差部2bで同じ深さとなってしまうことによってこの交差部分に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域4の角部における交差部2bに応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0034】
かくして、本発明の多数個取り配列基板によれば、分割溝2の底部、特に配線基板領域4の角部における交差部2bにクラックが発生することが効果的に防止され、セラミック母基板1の機械的強度の不良や、配線導体3の断線等の不具合が発生することを有効に防止することができるとともに、セラミック母基板1を分割溝2に沿って各配線基板領域4毎に正確かつ容易に撓折することができる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、分割溝2はセラミック母基板1の上下両主面に形成しても下側の主面のみに形成してもよく、また配線導体2の露出表面をニッケル・銅・金等のめっき層で被覆するようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部における深さが、配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いものとしたことから、セラミックグリーンシートに分割溝を形成するためにブレードを押圧・侵入させたとき、ブレードの侵入に伴うセラミックグリーンシートの変形量を配線基板領域の角部における交差部で特に大きくさせることなく、各配線基板領域に容易・確実に撓折することができるような深さの分割溝を形成することができ、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中してクラックを発生させる、という不具合を効果的に防止することができ、焼成後に、母基板にクラックや割れ等の不具合が発生することを効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝を、配線基板領域の辺部において深く角部において浅い波型形状としておくと、より一層効果的に、配線基板領域の辺部において母基板の機械的強度を低下させて母基板の撓折をより容易とすることができるとともに、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【0038】
また、本発明の多数個取り配線基板において、分割溝を、配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の角部における深さが、他方の角部における深さより浅いものとしておくと、分割溝の角部の交差部における深さが縦の境界と横の境界とで異なる深さとなることから、分割溝が角部における交差部で同じ深さとなることにより分割溝の底部分が交差してこの交差部に応力が集中することを防ぐことができるので、さらに効果的に、配線基板領域の角部における交差部に応力が集中することを防止することができ、クラックの発生をより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、(A)は配線基板領域の縦または横の境界のいずれか一方の分割溝の断面図、(B)は、他方の分割溝の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・セラミック母基板
2・・・・分割溝
2a・・配線基板領域の辺部
2b・・配線基板領域の角部における交差部
3・・・・配線導体
4・・・・配線基板領域
5・・・・捨て代領域
Claims (3)
- 略四角形の配線基板領域が縦横に配列形成されたセラミック母基板の主面に、前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を設けた多数個取り配線基板において、前記分割溝は、前記配線基板領域の辺部における深さが、前記配線基板領域の角部における交差部の深さよりも深いことを特徴とする多数個取り配線基板。
- 前記分割溝は、前記配線基板領域の前記辺部において深く前記角部において浅い波型形状であることを特徴とする請求項1記載の多数個取り配線基板。
- 前記分割溝は、前記配線基板領域の縦または横の前記境界のいずれか一方の前記角部における深さが、他方の前記角部における深さより浅いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多数個取り配線基板。
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