JP2004199909A - 二次電池用正極およびそれを用いた二次電池ならびに二次電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いた場合において、高温におけるサイクル寿命に優れ、かつ容量保存特性に優れる二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質と、LixBiOy(x>0、y>0)で表される化合物と、を含有する二次電池用正極を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】リチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質と、LixBiOy(x>0、y>0)で表される化合物と、を含有する二次電池用正極を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用正極およびこれを用いた二次電池、ならびに二次電池用正極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム金属やリチウム化合物を負極として用いる非水電解液二次電池において、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いると、4Vを超える起電力が得られたことから精力的に研究が行なわれている。このコバルト酸リチウムは電位平坦性、容量、放電電位、サイクル特性などトータルな性能で良好な特性を示すため、今日のリチウムイオン二次電池の正極活物質として広く用いられている。しかしながら、コバルトは可採埋蔵量が少なく、高価な材料である。また、コバルト酸リチウムは層状岩塩構造(α−NaFeO2構造)を有しているため、充電時のリチウム離脱により、電気陰性度の大きな酸素層が隣接することになる。そのため、実使用時にはリチウムの引き抜き量を制限する必要があり、過充電状態などリチウムの引き抜き量が多すぎる場合、酸素層間の静電反発力による構造変化を起こし発熱するため、電池の安全性に重大な問題を有しており、代替材料が求められている。
【0003】
コバルト酸リチウム以外の4V級非水電解液二次電池の正極活物質としてはニッケル酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウムなどが考えられている。しかしながら、ニッケル酸リチウムはコバルト酸リチウム以上の容量を有しているものの、結晶構造はコバルト酸リチウムと同じ層状構造で、充電時のNi4+の不安定性に起因し、コバルト酸リチウムよりも酸素脱離温度が低く、安全性確保はより困難な材料である。さらに、放電電位がコバルト酸リチウムよりも低いことや、Niの環境負荷が高いことを考慮すると、コバルト酸リチウムの代替材料としては魅力が薄い。
【0004】
一方、スピネル型マンガン酸リチウムは、安価なマンガンを原料としていることや、安定なスピネル型結晶であること、また、そのために過充電時にのみ使用される余分なリチウムをほとんど含んでおらずコバルト酸リチウムと比較し高い安全性を示すことから、非常に期待される材料であり、既に一部で実用化されている。特に資源供給や環境負荷の面でコバルトやニッケルと比較し有利であるため、前述の低価格という利点を加味し、ロードレベリング用の電力貯蔵や将来の電気自動車用電源として高いポテンシャルを有している。
【0005】
このように、スピネル型マンガン酸リチウムは、コスト・安全性・資源の安定供給・環境負荷の種々の面で優位性を示す材料であり、電力貯蔵あるいは電気自動車電源として大きな期待を集めている。しかしながら、これらの用途の場合、小型携帯向けとは異なり、高エネルギー密度という側面よりは、むしろ充放電サイクル寿命や容量保存特性といった長期信頼性に関するファクターや、パワー特性の方が重要になると考えられている。
【0006】
パワー特性は活物質自体の特性以外にも、電極設計・集電デザインなど構成・構造面の影響が大きいが、幸い、スピネル型マンガン酸リチウムを正極活物質として用いた電池のパワー特性は、同じ構成で他の正極活物質を用いた場合と比較し、同等以上の性能が得られており、この面では有望と思われる。
【0007】
一方、スピネル型マンガン酸リチウムは、これまでの様々な報告に見られるように、高温での充放電サイクル寿命や容量保存特性に改善の余地を有している。特に、スピネル型マンガン酸リチウムはDOD(Depth of Discharge)=80%付近における保存特性が他のDOD状態に比べ、著しく悪いことが分かっており、この領域における特異的な劣化を解消することは、重要な課題である。
【0008】
換言すると、スピネル型マンガン酸リチウムの高温サイクル特性ならびに保存特性、特にDOD=80%付近における保存特性を改善することは、電力貯蔵あるいは電気自動車用の電源の実用化への道を開くことであり、工業・産業面かつ環境保全面で非常に重要な意味を持つ。
【0009】
こうしたスピネル型マンガン酸リチウムの高温サイクル特性や保存特性を改善する手法として、LiMn2O4の近傍に他の物質を存在させる手法、特に、ビスマスもしくは酸化ビスマスのようなビスマス化合物をLiMn2O4の近傍に存在させる方法が検討されている。こうした技術が、特開2001−6678号公報(特許文献1)、特開2002−260632号公報(特許文献2)などに開示されている。こうした公報によれば、高温サイクル特性や保存特性が一定程度改善されるが、二次電池に対してさらなる高水準の特性が望まれる現在、こうした特性をさらに向上させる技術が望まれている。
【0010】
ところで、コバルト酸化物を用いた非水電解液二次電池の正極にLiBiO2(以下、適宜、LBOと表記する。)を含むことについては、特開平8−55624号公報(特許文献3)に記載されている。これは正極活物質としてコバルト酸化物を用いた場合に、この酸化物からなる結晶子の表面または結晶子間にBi、PbおよびBから選ばれる少なくとも1種の添加元素を導入する技術が記載されている。こうすることによって、酸化物に結晶子のサイズを大きくし、放電容量を大きくできるとされている。しかし、この技術は前述したようにコバルト酸化物を用いたものであり、本発明の意図するリチウムマンガン複合酸化物系の電極の課題に対し有用な教示を与えるものではない。リチウム含有マンガン複合化物を正極に使用した場合には、マンガンの溶出、および、不活性物質としての負極にマンガンが析出する。しかし、そのような挙動は、上記公報記載のコバルト酸化物系では起こらないからである。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−6678号公報
【特許文献2】
特開2002−260632号公報
【特許文献3】
特開平8−55624号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はリチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いた場合において、高温におけるサイクル寿命に優れ、かつ容量保存特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、リチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質と、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物と、を含有することを特徴とする二次電池用正極が提供される。
【0014】
本発明によれば、二次電池の高温環境下における容量保存特性ならびに充放電サイクル特性が大きく改善される。
【0015】
上記化合物はLixBiOy(x>0、y>0)で表される化合物とすることができる(以下、「LBO」と称する。)。LBOはリチウム含有複合酸化物からのMn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出を低減させるものと考えられ、二次電池の高温環境下における容量保存特性および充放電サイクル特性を向上させる。
【0016】
リチウムとビスマスの構成元素比は、モル比で35:65〜65:35の組成範囲にあることが好ましい。上記化合物とリチウムマンガン複合酸化物の存在比は、重量基準で0.5:99.5〜5:95にあるとよい。以上のような構成することにより、高温環境下における容量保存特性ならびに充放電サイクル特性が、より顕著に改善される。
【0017】
上記化合物は、CuKα線によるX線回折パターンにおいて2θが20°、26.5°および30°付近に、それぞれピークを有するものとすることができる。たとえば2θの値が、20±1°、26.5±1°、30±1°の各位置にピークを有するものとすることができる。上記化合物のうち、特にこのようなX線回折パターンを示すものは、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を向上させるのに適した構造となる。
【0018】
上記化合物は、空間群Ibamの結晶構造または準結晶構造を有するものであることが好ましい。こうした結晶構造をもつものは、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させることができる。この理由は明らかでないが、かかる構造の化合物は、リチウム含有複合酸化物からのMn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出を特に効果的に低減できることによるものと考えられる。
【0019】
リチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有するものとすることができる。
上記化合物は層状化合物としてもよい。
【0020】
また、本発明によれば、正極、負極および電解液を備え、前記正極が上述した二次電池用正極である二次電池が提供される。
【0021】
さらに本発明によれば、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物およびリチウムマンガン複合酸化物をバインダーとともに混合し合剤を作製する工程と、前記合剤を用いて集電体上に活物質層を形成する工程と、を含むことを特徴とする二次電池用正極の製造方法が提供される。リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物としては、たとえばLixBiOy(x>0、y>0)を用いることができる。
【0022】
本発明によれば、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させることのできる正極を安定的に製造することができる。
【0023】
この製造方法において、リチウム含有化合物とビスマス含有化合物とを混合し、酸素を含む雰囲気下で350℃を超え750℃以下の温度で焼成してLixBiOy(x>0、y>0)を得る工程をさらに含み、この工程により得られたLixBiOy(x>0、y>0)を用いて前記活物質層を形成する前記工程を実施する構成としてもよい。こうすることによって、上記性能を有する正極を製造安定性良く得ることができる。
【0024】
上記製造方法において、ビスマス含有化合物として、Bi(OH)3等が好ましく用いられる。また、リチウム含有化合物としてLi2CO3、LiOH、Li2OまたはLi2SO4等が好ましく用いられる。こうした原料は、一種または二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。こうすることにより、上記性能を有する正極を製造安定性良く得ることができる。
【0025】
LBOはR.Hoppeらの報告(Revue de Chimie Minerale, Vol.8, P.583-90, (1971))によると、Bi−O層を有するビスマス層状化合物である。ビスマス層状化合物は、特異な電気的特性を示すため、誘電材料や、超伝導材料として盛んに研究されている。これまでの研究によって、特異的な挙動を示す原因として、特にBi層状構造を有する強誘電体において、Bi−O層が重要な役割を担っていることが分かっている。
【0026】
LBOが、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させる理由については明らかではないが、LBOの化学的特性のみならず、その構造的特徴も性能向上に寄与しているものと推察される。
【0027】
LBOは、Li層をBi−O層が挟み込むBi層状化合物である。この点、室温付近、すなわち、710℃以下で蛍石型構造を有するBi2O3等と相違する。LBOを用いた電極では、上記したLBOの特異な構造と、LBOの化学的性質との相乗作用により、Mn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出の抑制が図られているものと考えられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる正極は、リチウムマンガン複合酸化物とLBOとを含む。
【0029】
リチウムマンガン複合酸化物としては、金属リチウム対極電位で4V領域にプラトーを有するLi1+xMn2−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)等を用いることができる。目的とする電池の諸特性の優先順位によっては、適宜、更にマンガンサイトを他のカチオンで置換しても良い。他のカチオンとしは、Li、Mg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、In、Sn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Ta、Bi、Pbなどが挙げられる。また、酸素サイトを他のアニオンで置換しても良い。他のアニオンとしては、Fなどが挙げられる。
【0030】
本発明において、正極活物質として5V級活物質を用いることもできる。すなわち、金属リチウム対極電位で4.5V以上にプラトーを有するものを用いることができる。たとえば、リチウム含有複合酸化物が好適に用いられる。リチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が例示される。リチウム含有複合酸化物は、たとえば下記一般式(I)または(II)で表される化合物とすることができる。
【0031】
Lia(NixMn2−x−yAy)O4 (I)
(式中、0<x、0≦y、x+y<2、0<aであり、好ましくは、0.4≦x≦0.6、0≦y、x+y<2、0<a<1.2であり、Aは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、KおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
Lia(NixMn2−x−y−zYyAz)(O4−wZw) (II)
(式中、0<x、0≦y、x+y+z<2、0<a、0<wであり、好ましくは、0.4≦x≦0.6、0<y、0≦z、x+y+z<2、0<a<1.2、0<w<1であり、Yは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、KおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、Aは、TiまたはSiの少なくとも一種である。Zは、FまたはClの少なくとも一種である。)
このような化合物を用いることにより、高い起電力を安定的に実現することができる。ここで、Mは少なくともNiを少なくとも含む構成とすれば、サイクル特性等がより向上する。xはMnの価数が+3.9価以上になるような範囲とすることが好ましい。上記化合物ではMnをより軽量なTiやSiで置換するが、こうすることで重量当たりの放電量が増大して高容量化が図られる。
【0032】
LBOは、リチウムとビスマスと酸素の化合物であれば良いが、リチウムとビスマスの組成比が35:65〜65:35であれば好ましい。一方、組成比が上記範囲から著しく離れると、目的とは異なる結晶構造を有したり、空間群に属したりする。よって、リチウムとビスマスと酸素を含み、結晶構造が空間群Ibamに属していれば、組成比範囲は特に問題としない。
【0033】
正極活物質の粒子形状は塊状・球状・板状その他、特に限定されず、粒径・比表面積も正極膜厚・正極の電極密度・バインダー種などを考慮して適宜選択する範囲で構わないが、エネルギー密度を高く保つために、集電体金属箔を除去した部分の正極電極密度が2.8g/cc以上となるような粒子形状・粒度分布・平均粒径・比表面積・真密度が望ましい。また、正極活物質、バインダー、導電性付与剤などにより構成される正極合剤のうち、正極活物質が占める重量比率が85%以上となるような粒子形状・粒度分布・平均粒径・比表面積・真密度が望ましい。
【0034】
Li1+xMn2−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)の合成に用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを用いることができる。また、Mn源としてMnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、などを用いることができる。他元素置換を行う場合は、その元素の、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などを用いることが出来る。F置換を行う場合は、LiFなどを用いることが出来る。
【0035】
以上の中で、Li源としてLi2CO3が、Mn源としてMnO2またはMn2O3が特に好ましい。
【0036】
また、Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)の合成に用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを、Ni源として、NiO、NiCl2、Ni(NO3)2、Ni(OH)2、NiCO3、NiSO4などを、Mn源としてMnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、などを、またNiとMnの複合酸化物なども用いることが出来る。Mnサイトの他元素置換を行う場合は、その元素の、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などや、NiとMnと他元素の複合酸化物を用いることが出来る。F置換を行う場合は、LiF、CaF2、BaF2、MgF2などを用いることが出来る。
【0037】
以上の中で、Li源としてはLi2CO3が、Ni、Mn源としては(Mn3/4Ni1/4)3O4が好ましい。Ti、Si、Al等の他元素置換を行う場合は、それぞれ、(Mn3/4−xNi1/4Tix)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Six)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Alx)3O4等の複合酸化物を用いることが好ましい。F置換を行う場合は、LiFを用いることが好ましい。
【0038】
以下、リチウムマンガン複合酸化物の合成方法について説明する。上記の出発原料を適宜選択し、所定の金属組成比となるように秤量・混合する。この際、Mn2O3異相の残留を避けるために各試薬の粒径は10μm以下が好ましい。混合はボールミル、ジェットミル、ピンミルなどを用いて行なうが、選択試薬の粒径・硬さなどにより適宜、装置を選択すれば良い。得られた混合粉は600℃〜950℃の温度範囲内で、空気中または酸素中で焼成する。
【0039】
得られたリチウムマンガン複合酸化物の比表面積は3m2/g以下であることが望ましく、更に1m2/g以下が特に好ましい。3m2/g以上の比表面積の場合、バインダーの必要量が多くなり、高エネルギー密度の電池が得られなくなる。
【0040】
LBOの合成は固相を経由して作製する方法や、液相を経由して作製する方法がある。
【0041】
固相法を用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを、ビスマス源としては、Bi(OH)3、Bi2O3、BiCl3、Bi(NO3)・5H2O、などが用いることが出来る。
【0042】
以上の中で、Li源としてはLi2CO3が、ビスマス源としてはBi(OH)3が特に好ましい。LBOを安定的に得ることができるからである。
【0043】
液相法はゾルゲル法、共沈法などを用いることが出来るが、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法を使用する場合の出発原料としては、Li源として、LiOC2H5、LiOH、などを、ビスマス源として、Bi(O−tert−C5H11)3、Bi(OCH(CH3)2)3、Bi(OC2H5)3を、溶媒としてはそれぞれ脱水精製した、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エタノールなどを用いることができる。
【0044】
以上の中で、Li源としてはLiOC2H5、ビスマス源としては、Bi(O−tert−C5H11)3、溶媒としては脱水精製した2−メトキシエタノールが特に好ましい。
【0045】
作製したLBOの構造解析、及び、空間群の決定は、汎用型のX線装置と市販されているシュミレーションソフトを用い、リートベルト解析によって行なった。
【0046】
上記作製したリチウムマンガン複合酸化物とLBOによる複合正極活物質は、レート特性・低温放電特性・パルス放電特性・エネルギー密度・軽量化・小型化などの、電池として重視する特性に応じて適宜選択したバインダー種と導電性付与剤を混合し電極とする。バインダーは通常用いられている樹脂系結着剤で良く、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いることができる。集電体金属箔としてはAl箔が好ましい。
【0047】
本発明で用いられる負極は、リチウムイオンを挿入・脱離可能なリチウム金属、リチウム合金、カーボン材料から選ばれるものが望ましいが、リチウムと合金化する金属、金属酸化物あるいはそれらとカーボン材料の複合材料、遷移金属窒化物でも構わない。負極材料の選択は、容量・電圧・重量・サイズならびにレート特性・低温放電特性・パルス放電特性などの電池の使用目的に応じて適宜行なえば良い。
【0048】
負極活物質は、レート特性・低温放電特性・パルス放電特性・エネルギー特性・軽量化・小型化などの電池として重視する特性に応じて適宜選択したバインダー種と混合し電極とする。バインダーは通常、用いられているポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる他、ゴム系バインダーを用いることも出来る。集電体金属箔としては、Cu泊が好ましい。
【0049】
セパレーターは特に限定されないが、織布、硝子繊維、多孔性合成樹脂等を用いることが出来る。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン系の多孔膜が薄膜でかつ大面積化、膜強度や膜抵抗の面で適当である。
【0050】
非水電解液の溶媒としては、通常、よく用いられるものでよく、例えばカーボネート類、塩素化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類を用いることが出来る。好ましくは高誘電率溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、(−ブチロラクトン(GBL)等から少なくとも一種類、低粘度溶媒としてジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エステル類等から少なくとも一種類選択し、その混合液を用いる。EC+DEC、PC+DMC、PC+EC+DECなどが好ましいが溶媒の純度が低い場合や含有水分量が多い場合などは、電位窓が高電位側に広い溶媒種の混合比を高めると良い。さらに水分消費や耐酸化性向上、安全性向上等の目的で微量の添加剤を加えても良い。
【0051】
支持塩としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)N、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)3C、Li(CF3SO2)2N等から少なくとも一種類を用いるが、LiPF6を含む系が好ましい。支持塩の濃度は0.8M〜1.5Mが好ましく、さらに0.9M〜1.2Mがより好ましい。
【0052】
本発明に係る二次電池は、たとえば図4のような構造を有する。正極集電体3上に正極活物質層1が形成され、正極を構成している。また、負極集電体4上に負極活物質層2が形成され、負極を構成している。これらの正極と負極は、電解液に浸漬した状態の多孔質セパレータ5を介して対向配置されている。正極を収容する正極外装缶6と、負極を収容する負極外装缶7とが、絶縁パッキング部8を介して接合した構成となっている。
【0053】
正極と負極に電圧を印加することにより正極活物質からリチウムイオンが脱離し、負極活物質にリチウムイオンが吸蔵され、充電状態となる。また、正極と負極の電気的接触を電池外部で起こすことにより、充電時と逆に、負極活物質からリチウムイオンが放出され、正極活物質にリチウムイオンが吸蔵されることにより、放電が起こる。
【0054】
電池の構成としては、角型、ペーパー型、積層型、円筒型、コイン型など種々の形状を採用することが出来る。外装材料その他の構成部材は特に限定されるものではなく、電池形状に応じて選定すればよい。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(Li1+xMn2−xO4の合成)
Li1+xMn2−xO4の合成には、出発原料としてLi2CO3と電解二酸化マンガン(EMD)を用いた。
【0057】
上記の出発原料の混合の前段階として、反応性の向上と目的粒径を有するLi1+xMn2−xO4を得ることを目的に、Li2CO3の粉砕およびEMDの分級を行なった。Li1+xMn2−xO4は電池の正極活物質として用いる場合、充放電反応の均一性確保、スラリー作製の容易さ、安全性等の兼ね合いにより、5〜30μmの重量平均粒径が好ましいので、EMDの粒径もLi1+xMn2−xO4の目的粒径と同じ5〜30μmとした。一方、Li2CO3は均一反応の確保のためには5μm以下の粒径が望ましいので、D50粒径が1.4μmとなるように粉砕を行った。このように所定の粒径にそろえたEMDおよびLi2CO3を0.00≦x≦0.20の範囲の所定比となるように混合した。
【0058】
この混合粉を乾燥空気フローの雰囲気下、600〜800℃で一時焼成した後、再度、乾燥空気フローの雰囲気下、600〜800℃で二次焼成した。次いで、得られたLi1+xMn2−xO4の粒子中の粒径1μm以下の微小粒子を空気分級機により除去した。この時、得られたLi1+xMn2−xO4の比表面積は0.6〜0.9m2/gであった。また、タップ密度は2.14〜2.22g/cc、真密度は3.98〜4.13g/cc、D50粒径は11〜16μmという粉体特性であった。
【0059】
得られたLi1+xMn2−xO4は、過剰Li量xの値(仕込み組成比から算出)に対応して、x=0をAA−1、x=0.065(すなわち2Li/Mn=1.10)をAA−2、x=0.125(すなわち2Li/Mn=1.20)をAA−3と表記する。
【0060】
(Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4の合成)
Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4の合成には、出発原料としてLi2CO3と(Mn3/4Ni1/4)3O4を用いた。Mnサイトを他元素で置換したLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4を作製するためには、(Mn3/4−xNi1/4Tix)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Six)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Alx)3O4等の複合酸化物を用いた。F置換を行う場合は、LiFを用いた。
【0061】
混合の均一性を確保するため、上記の出発原料を所定比で秤量し、それらを湿式ボールミルにて、24時間混合した。その後、酸素フロー雰囲気中、750℃で8時間の焼成を2回繰り返した。
【0062】
得られた粉末は粉末エックス線回折より立方晶スピネル構造の単一相であることが確認され、格子定数は8.177オングストロームであった。また化学分析によりMnとNiがほぼ3対1の比であることも確認した。さらに、この粉体のMn価数を分析したところ3.99と算出された。
【0063】
次いで、得られた粉末を湿式遊星ボールミルにて48時間粉砕し、D50粒径が0.7μmのLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4、および、他元素置換Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4を得た。
【0064】
なお、得られたLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4、および、他元素置換Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4は、それぞれ仕込み組成比に対応して、LiNi0.5Mn1.5O4をAB−1、Li1.1Ni0.5Mn1.4O4をAB−2、LiNi0.5Mn1.3Ti0.2O4をAB−3、LiNi0.5Mn1.45Si0.05O4をAB−4、LiNi0.5Mn1.45Al0.05O3.95F0.05をAB−5と表記する。
【0065】
(LBOの作製)
LBOの合成には、出発原料として、Li2CO3とBi(OH)3を用いた。
【0066】
上記の出発原料を何種類かのモル比で秤量し、それらを湿式ボールミルにて、24時間混合した。その後乾燥空気フローの雰囲気下で350〜950℃の温度範囲で2〜8時間の焼成を行なった。
【0067】
得られた粉末は、粉末X線回折測定において、ICDDカード(ICDD= International Centre for DiffractionDataの略。ASTM(= American Society for Testing and Materials)カード、JCPDS(= Joint Committee of Powder Diffraction Standard)カードとも呼ばれる。国際回折データセンター発行)により評価を行なった。また、株式会社リガク製構造解析ソフト「Visual RIETAN」により構造解析シミュレーションを行なった。
【0068】
LBOのうち、800℃以上で焼成したものは回収が困難であった。また、焼成温度が450℃以下のものは未反応の原料が主生成相であった。従って、450℃〜750℃での熱処理を施したものを使用した。
【0069】
550℃以上の熱処理をした場合において、
Li:Biのモル比が0:100〜35:65のものは、Bi酸化物、Li4Bi6O11が主生成相であった。
【0070】
Li:Biのモル比が35:65〜65:35のものは、LiBiO2が主生成相であった。
【0071】
Li:Biのモル比が65:35〜0:100のものは、Li酸化物、Li3BiO4、Li5BiO5、およびLi7BiO6が主生成相であった。
【0072】
なお、上記化合物の空間群は、α−Bi2O3:P21/c、β−Bi2O3:P−421c、γ−Bi2O3:I23、θ−Bi2O3:Pn3m、Li4Bi6O11:(unknown)、Li3BiO4:(unknown)、Li5BiO5:cmおよびLi7BiO6:R3である。
【0073】
以下、熱処理温度を750℃とし、Li:Biのモル比を、35:65としたものをB−1、50:50としたものをB−2、65:35としたものをB−3と表記する。
【0074】
(構造解析)
リチウムとビスマスのモル比が50:50である代表的な酸化物はLiBiO2である。しかし、リチウムとビスマスのモル比を50:50とし、750℃で作製したLBO(=B−2)において評価を行なったところ、図1に示すように、汎用型X線回折装置で示されるプロファイルは、JCPDSカードNo.27−1221のLiBiO2におけるプロファイルとは、強度が一致しなかった。B−2のXRDプロファイルを図1および図2に示す。しかし、角度は一致するものが多かった。特に2θ=20±1°、2θ=26.5±1°、2θ=30±1°のピークが特徴的に一致した。そのため、結晶構造シミュレーションを行なった。その結果、生成物は空間群Ibamに属するが、8jサイトをビスマスと酸素が100%占有し、かつ、8fサイトをリチウムが100%占有しているようなICDDカード(=JCPDSカード、ASTMカード)の No.27−1221記載のLiBiO2の結晶構造とは異なっていることが分かった。(図2)
シミュレーションの結果、B−2の場合、図3に示すように、8fサイトのリチウム全てをビスマスと置換し、8jサイトのビスマスの70%をリチウムで置換した、全体としてややビスマスリッチ(Li:Bi=35:65)な組成が最も近いプロファイルを示すことが分かった。いずれにしても、空間群はIbamでシミュレーションが可能であり、リチウムとビスマスの位置が変わることでプロファイルは変化するものの、空間群はIbamには変わりが無いことが分かった。
【0075】
シミュレーションの結果、2θ=20±1°、2θ=26.5±1°、2θ=30±1°のピークは特徴的にB−2と一致した。なお、焼成温度を高温にするほど、LBOが融解しやすくなり、取り扱いが困難になることが分かっている。
【0076】
(比較例Bi2O3)
市販のBi2O3を比較のため使用した。以下、Bi2O3をD−1と表記する。
【0077】
(評価用電池の作製)
上記の材料より作製した正極活物質を使用し、評価用コイン型電池を作製した。電池の正極は、活物質:カーボンブラック:PVdF = 90:6:4(重量%)の混合比で作製し、負極はLi金属板とした。電解液は1MのLiPF6を支持塩とし、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比30:70で混合した溶液を溶媒とした。セパレーターは、ポリエチレン製のものを用いた。
【0078】
(容量保存特性の評価方法)
作製した電池を用いて容量保存特性を評価した。最初に各電池を室温において充電及び放電を一回ずつ行なった。このときの充放電電電流は予め測定した放電容量から計算し、満充電状態から10時間で放電終了となる電流値を使用した。
【0079】
4V級電池においては、放電側のカットオフ電圧は3V、充電側のカットオフ電圧は4.3Vとした。5V級電池においては、放電側のカットオフ電圧は3V、充電側のカットオフ電圧は4.9Vとした。
【0080】
その後、4V級電池においては各電池を所定の電流値で4.3Vまで充電し、8時間放電することでDOD=80%とし、60℃の恒温槽中で2週間放置した。5V級電池においては各電池を所定の電流値で4.9Vまで充電し、8時間放電することでDOD=80%とし、60℃の恒温槽中で2週間放置した。放置後に室温で再度所定の電流値で充電・放電操作をもう一度繰り返し、その時の放電容量を回復容量とした。
【0081】
(充放電サイクル試験の評価方法)
作製した電池を用いて充放電サイクル試験を行なった。
【0082】
4V級電池のサイクル評価は、予め測定した放電容量から計算し満充電状態から10時間で放電終了となる電流値で、4.3Vまで充電し、その後定電位充電を行い、同じ電流値で3Vまで放電させる、とうい操作を繰り返すことによって行なった。5V級電池のサイクル評価は、予め測定した放電容量から計算し満充電状態から10時間で放電終了となる電流値で、4.9Vまで充電し、その後定電位充電を行い、同じ電流値で3Vまで放電させる、とうい操作を繰り返すことによって行なった。なお、試験は60℃の温度で行なった。
【0083】
(実施例 1)
正極活物質として、B−1〜B−3とAA−3を2:98の重量比で混合した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これらを電池1−1〜1−3とする。
【0084】
(実施例2)
正極活物質として、B−2とAA−3を0.5:99.5の重量比で混合した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これらを電池2−1とする。
【0085】
(比較例1)
正極活物質として、正極活物質としてAA−1を用い、ビスマス酸化物を添加しないで使用した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これを電池3−1とする。
【0086】
(比較例2)
正極活物質として、AA−3とD−1を2:98の重量比で混合し正極活物質とした。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これを電池4−1とする。
【0087】
(実施例3)
溶出したMnの負極への析出比を測定するため、XPS測定による負極表面分析を行なった。正極活物質として、B−3とAA−3を2:98の重量%比で混合し正極活物質とした。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、45℃下、50サイクル経過後、アルゴングローブボックス内にて分解した。ただし、電解液は、プロパンスルトンを3wt%添加したものを使用している。その結果を表2に記す。
【0088】
(比較例3)
(実施例3)に従い、Mnスピネル(実施例記載のAA−3)にBi2O3(同D−1)による処理を加えたもの、および、何も処理をしていないMnスピネル(実施例記載のAA−3)のXPS測定による負極表面分析を行なった。測定条件は(実施例3)と同じである。いずれも、電解液はプロパンスルトンを3wt%添加したものを使用している。結果を表2に記す。
【0089】
(実施例4)
以下の正極活物質を作製し、これを用いて(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製した。
【0090】
試料1
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−1
試料2
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−2
試料3
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−3
試料4
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−4
試料5
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−5
また、処理剤B−2を添加しないこと以外は上記各試料と同様にして参考試料1〜5を作製し、これを用いて電池を作製した。
【0091】
得られた電池について、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。
【0092】
処理剤B−2を添加した試料1〜5は、未添加の比較試料1〜5と比較して、回復容量および容量維持率の改善効果を評価した。
試料1は比較試料1に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料2は比較試料2に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が4%程度向上した。
試料3は比較試料3に比べ、回復容量が5%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料4は比較試料4に比べ、回復容量が5%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料5は比較試料5に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が5%程度向上した。
【0093】
本実施例の結果から、5V級の二次電池においてもLBOの添加により、高温におけるサイクル寿命および容量保存特性が改善されることが明らかになった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物を含む正極としているため、高温におけるサイクル寿命および容量保存特性が顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】LBOのXRDプロファイルを示す図である。
【図2】実施例にて実施したシミュレーション結果を示す図である(8fサイトを全てLiイオンとし、8jサイトを全てBiイオンとしたもの)。
【図3】実施例にて実施したシミュレーション結果を示す図である(8fサイトのリチウム全てをビスマスと置換し、8jサイトのビスマスの70%をリチウムで置換したもの)。
【図4】本発明に関わるリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 多孔質セパレータ
6 正極外装缶
7 負極外装缶
8 絶縁パッキング部
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用正極およびこれを用いた二次電池、ならびに二次電池用正極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム金属やリチウム化合物を負極として用いる非水電解液二次電池において、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いると、4Vを超える起電力が得られたことから精力的に研究が行なわれている。このコバルト酸リチウムは電位平坦性、容量、放電電位、サイクル特性などトータルな性能で良好な特性を示すため、今日のリチウムイオン二次電池の正極活物質として広く用いられている。しかしながら、コバルトは可採埋蔵量が少なく、高価な材料である。また、コバルト酸リチウムは層状岩塩構造(α−NaFeO2構造)を有しているため、充電時のリチウム離脱により、電気陰性度の大きな酸素層が隣接することになる。そのため、実使用時にはリチウムの引き抜き量を制限する必要があり、過充電状態などリチウムの引き抜き量が多すぎる場合、酸素層間の静電反発力による構造変化を起こし発熱するため、電池の安全性に重大な問題を有しており、代替材料が求められている。
【0003】
コバルト酸リチウム以外の4V級非水電解液二次電池の正極活物質としてはニッケル酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウムなどが考えられている。しかしながら、ニッケル酸リチウムはコバルト酸リチウム以上の容量を有しているものの、結晶構造はコバルト酸リチウムと同じ層状構造で、充電時のNi4+の不安定性に起因し、コバルト酸リチウムよりも酸素脱離温度が低く、安全性確保はより困難な材料である。さらに、放電電位がコバルト酸リチウムよりも低いことや、Niの環境負荷が高いことを考慮すると、コバルト酸リチウムの代替材料としては魅力が薄い。
【0004】
一方、スピネル型マンガン酸リチウムは、安価なマンガンを原料としていることや、安定なスピネル型結晶であること、また、そのために過充電時にのみ使用される余分なリチウムをほとんど含んでおらずコバルト酸リチウムと比較し高い安全性を示すことから、非常に期待される材料であり、既に一部で実用化されている。特に資源供給や環境負荷の面でコバルトやニッケルと比較し有利であるため、前述の低価格という利点を加味し、ロードレベリング用の電力貯蔵や将来の電気自動車用電源として高いポテンシャルを有している。
【0005】
このように、スピネル型マンガン酸リチウムは、コスト・安全性・資源の安定供給・環境負荷の種々の面で優位性を示す材料であり、電力貯蔵あるいは電気自動車電源として大きな期待を集めている。しかしながら、これらの用途の場合、小型携帯向けとは異なり、高エネルギー密度という側面よりは、むしろ充放電サイクル寿命や容量保存特性といった長期信頼性に関するファクターや、パワー特性の方が重要になると考えられている。
【0006】
パワー特性は活物質自体の特性以外にも、電極設計・集電デザインなど構成・構造面の影響が大きいが、幸い、スピネル型マンガン酸リチウムを正極活物質として用いた電池のパワー特性は、同じ構成で他の正極活物質を用いた場合と比較し、同等以上の性能が得られており、この面では有望と思われる。
【0007】
一方、スピネル型マンガン酸リチウムは、これまでの様々な報告に見られるように、高温での充放電サイクル寿命や容量保存特性に改善の余地を有している。特に、スピネル型マンガン酸リチウムはDOD(Depth of Discharge)=80%付近における保存特性が他のDOD状態に比べ、著しく悪いことが分かっており、この領域における特異的な劣化を解消することは、重要な課題である。
【0008】
換言すると、スピネル型マンガン酸リチウムの高温サイクル特性ならびに保存特性、特にDOD=80%付近における保存特性を改善することは、電力貯蔵あるいは電気自動車用の電源の実用化への道を開くことであり、工業・産業面かつ環境保全面で非常に重要な意味を持つ。
【0009】
こうしたスピネル型マンガン酸リチウムの高温サイクル特性や保存特性を改善する手法として、LiMn2O4の近傍に他の物質を存在させる手法、特に、ビスマスもしくは酸化ビスマスのようなビスマス化合物をLiMn2O4の近傍に存在させる方法が検討されている。こうした技術が、特開2001−6678号公報(特許文献1)、特開2002−260632号公報(特許文献2)などに開示されている。こうした公報によれば、高温サイクル特性や保存特性が一定程度改善されるが、二次電池に対してさらなる高水準の特性が望まれる現在、こうした特性をさらに向上させる技術が望まれている。
【0010】
ところで、コバルト酸化物を用いた非水電解液二次電池の正極にLiBiO2(以下、適宜、LBOと表記する。)を含むことについては、特開平8−55624号公報(特許文献3)に記載されている。これは正極活物質としてコバルト酸化物を用いた場合に、この酸化物からなる結晶子の表面または結晶子間にBi、PbおよびBから選ばれる少なくとも1種の添加元素を導入する技術が記載されている。こうすることによって、酸化物に結晶子のサイズを大きくし、放電容量を大きくできるとされている。しかし、この技術は前述したようにコバルト酸化物を用いたものであり、本発明の意図するリチウムマンガン複合酸化物系の電極の課題に対し有用な教示を与えるものではない。リチウム含有マンガン複合化物を正極に使用した場合には、マンガンの溶出、および、不活性物質としての負極にマンガンが析出する。しかし、そのような挙動は、上記公報記載のコバルト酸化物系では起こらないからである。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−6678号公報
【特許文献2】
特開2002−260632号公報
【特許文献3】
特開平8−55624号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はリチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いた場合において、高温におけるサイクル寿命に優れ、かつ容量保存特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、リチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質と、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物と、を含有することを特徴とする二次電池用正極が提供される。
【0014】
本発明によれば、二次電池の高温環境下における容量保存特性ならびに充放電サイクル特性が大きく改善される。
【0015】
上記化合物はLixBiOy(x>0、y>0)で表される化合物とすることができる(以下、「LBO」と称する。)。LBOはリチウム含有複合酸化物からのMn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出を低減させるものと考えられ、二次電池の高温環境下における容量保存特性および充放電サイクル特性を向上させる。
【0016】
リチウムとビスマスの構成元素比は、モル比で35:65〜65:35の組成範囲にあることが好ましい。上記化合物とリチウムマンガン複合酸化物の存在比は、重量基準で0.5:99.5〜5:95にあるとよい。以上のような構成することにより、高温環境下における容量保存特性ならびに充放電サイクル特性が、より顕著に改善される。
【0017】
上記化合物は、CuKα線によるX線回折パターンにおいて2θが20°、26.5°および30°付近に、それぞれピークを有するものとすることができる。たとえば2θの値が、20±1°、26.5±1°、30±1°の各位置にピークを有するものとすることができる。上記化合物のうち、特にこのようなX線回折パターンを示すものは、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を向上させるのに適した構造となる。
【0018】
上記化合物は、空間群Ibamの結晶構造または準結晶構造を有するものであることが好ましい。こうした結晶構造をもつものは、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させることができる。この理由は明らかでないが、かかる構造の化合物は、リチウム含有複合酸化物からのMn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出を特に効果的に低減できることによるものと考えられる。
【0019】
リチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有するものとすることができる。
上記化合物は層状化合物としてもよい。
【0020】
また、本発明によれば、正極、負極および電解液を備え、前記正極が上述した二次電池用正極である二次電池が提供される。
【0021】
さらに本発明によれば、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物およびリチウムマンガン複合酸化物をバインダーとともに混合し合剤を作製する工程と、前記合剤を用いて集電体上に活物質層を形成する工程と、を含むことを特徴とする二次電池用正極の製造方法が提供される。リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物としては、たとえばLixBiOy(x>0、y>0)を用いることができる。
【0022】
本発明によれば、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させることのできる正極を安定的に製造することができる。
【0023】
この製造方法において、リチウム含有化合物とビスマス含有化合物とを混合し、酸素を含む雰囲気下で350℃を超え750℃以下の温度で焼成してLixBiOy(x>0、y>0)を得る工程をさらに含み、この工程により得られたLixBiOy(x>0、y>0)を用いて前記活物質層を形成する前記工程を実施する構成としてもよい。こうすることによって、上記性能を有する正極を製造安定性良く得ることができる。
【0024】
上記製造方法において、ビスマス含有化合物として、Bi(OH)3等が好ましく用いられる。また、リチウム含有化合物としてLi2CO3、LiOH、Li2OまたはLi2SO4等が好ましく用いられる。こうした原料は、一種または二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。こうすることにより、上記性能を有する正極を製造安定性良く得ることができる。
【0025】
LBOはR.Hoppeらの報告(Revue de Chimie Minerale, Vol.8, P.583-90, (1971))によると、Bi−O層を有するビスマス層状化合物である。ビスマス層状化合物は、特異な電気的特性を示すため、誘電材料や、超伝導材料として盛んに研究されている。これまでの研究によって、特異的な挙動を示す原因として、特にBi層状構造を有する強誘電体において、Bi−O層が重要な役割を担っていることが分かっている。
【0026】
LBOが、二次電池の高温環境下における容量保存特性や充放電サイクル特性を確実かつ顕著に向上させる理由については明らかではないが、LBOの化学的特性のみならず、その構造的特徴も性能向上に寄与しているものと推察される。
【0027】
LBOは、Li層をBi−O層が挟み込むBi層状化合物である。この点、室温付近、すなわち、710℃以下で蛍石型構造を有するBi2O3等と相違する。LBOを用いた電極では、上記したLBOの特異な構造と、LBOの化学的性質との相乗作用により、Mn溶出、および、不活性物質としての負極へのマンガンの析出の抑制が図られているものと考えられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる正極は、リチウムマンガン複合酸化物とLBOとを含む。
【0029】
リチウムマンガン複合酸化物としては、金属リチウム対極電位で4V領域にプラトーを有するLi1+xMn2−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)等を用いることができる。目的とする電池の諸特性の優先順位によっては、適宜、更にマンガンサイトを他のカチオンで置換しても良い。他のカチオンとしは、Li、Mg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、In、Sn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Ta、Bi、Pbなどが挙げられる。また、酸素サイトを他のアニオンで置換しても良い。他のアニオンとしては、Fなどが挙げられる。
【0030】
本発明において、正極活物質として5V級活物質を用いることもできる。すなわち、金属リチウム対極電位で4.5V以上にプラトーを有するものを用いることができる。たとえば、リチウム含有複合酸化物が好適に用いられる。リチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が例示される。リチウム含有複合酸化物は、たとえば下記一般式(I)または(II)で表される化合物とすることができる。
【0031】
Lia(NixMn2−x−yAy)O4 (I)
(式中、0<x、0≦y、x+y<2、0<aであり、好ましくは、0.4≦x≦0.6、0≦y、x+y<2、0<a<1.2であり、Aは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、KおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
Lia(NixMn2−x−y−zYyAz)(O4−wZw) (II)
(式中、0<x、0≦y、x+y+z<2、0<a、0<wであり、好ましくは、0.4≦x≦0.6、0<y、0≦z、x+y+z<2、0<a<1.2、0<w<1であり、Yは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、KおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、Aは、TiまたはSiの少なくとも一種である。Zは、FまたはClの少なくとも一種である。)
このような化合物を用いることにより、高い起電力を安定的に実現することができる。ここで、Mは少なくともNiを少なくとも含む構成とすれば、サイクル特性等がより向上する。xはMnの価数が+3.9価以上になるような範囲とすることが好ましい。上記化合物ではMnをより軽量なTiやSiで置換するが、こうすることで重量当たりの放電量が増大して高容量化が図られる。
【0032】
LBOは、リチウムとビスマスと酸素の化合物であれば良いが、リチウムとビスマスの組成比が35:65〜65:35であれば好ましい。一方、組成比が上記範囲から著しく離れると、目的とは異なる結晶構造を有したり、空間群に属したりする。よって、リチウムとビスマスと酸素を含み、結晶構造が空間群Ibamに属していれば、組成比範囲は特に問題としない。
【0033】
正極活物質の粒子形状は塊状・球状・板状その他、特に限定されず、粒径・比表面積も正極膜厚・正極の電極密度・バインダー種などを考慮して適宜選択する範囲で構わないが、エネルギー密度を高く保つために、集電体金属箔を除去した部分の正極電極密度が2.8g/cc以上となるような粒子形状・粒度分布・平均粒径・比表面積・真密度が望ましい。また、正極活物質、バインダー、導電性付与剤などにより構成される正極合剤のうち、正極活物質が占める重量比率が85%以上となるような粒子形状・粒度分布・平均粒径・比表面積・真密度が望ましい。
【0034】
Li1+xMn2−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)の合成に用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを用いることができる。また、Mn源としてMnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、などを用いることができる。他元素置換を行う場合は、その元素の、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などを用いることが出来る。F置換を行う場合は、LiFなどを用いることが出来る。
【0035】
以上の中で、Li源としてLi2CO3が、Mn源としてMnO2またはMn2O3が特に好ましい。
【0036】
また、Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4(xは0.00≦x≦0.20の範囲)の合成に用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを、Ni源として、NiO、NiCl2、Ni(NO3)2、Ni(OH)2、NiCO3、NiSO4などを、Mn源としてMnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、などを、またNiとMnの複合酸化物なども用いることが出来る。Mnサイトの他元素置換を行う場合は、その元素の、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などや、NiとMnと他元素の複合酸化物を用いることが出来る。F置換を行う場合は、LiF、CaF2、BaF2、MgF2などを用いることが出来る。
【0037】
以上の中で、Li源としてはLi2CO3が、Ni、Mn源としては(Mn3/4Ni1/4)3O4が好ましい。Ti、Si、Al等の他元素置換を行う場合は、それぞれ、(Mn3/4−xNi1/4Tix)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Six)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Alx)3O4等の複合酸化物を用いることが好ましい。F置換を行う場合は、LiFを用いることが好ましい。
【0038】
以下、リチウムマンガン複合酸化物の合成方法について説明する。上記の出発原料を適宜選択し、所定の金属組成比となるように秤量・混合する。この際、Mn2O3異相の残留を避けるために各試薬の粒径は10μm以下が好ましい。混合はボールミル、ジェットミル、ピンミルなどを用いて行なうが、選択試薬の粒径・硬さなどにより適宜、装置を選択すれば良い。得られた混合粉は600℃〜950℃の温度範囲内で、空気中または酸素中で焼成する。
【0039】
得られたリチウムマンガン複合酸化物の比表面積は3m2/g以下であることが望ましく、更に1m2/g以下が特に好ましい。3m2/g以上の比表面積の場合、バインダーの必要量が多くなり、高エネルギー密度の電池が得られなくなる。
【0040】
LBOの合成は固相を経由して作製する方法や、液相を経由して作製する方法がある。
【0041】
固相法を用いる出発原料としては、Li源としてLi2CO3、LiOH、Li2O、Li2SO4などを、ビスマス源としては、Bi(OH)3、Bi2O3、BiCl3、Bi(NO3)・5H2O、などが用いることが出来る。
【0042】
以上の中で、Li源としてはLi2CO3が、ビスマス源としてはBi(OH)3が特に好ましい。LBOを安定的に得ることができるからである。
【0043】
液相法はゾルゲル法、共沈法などを用いることが出来るが、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法を使用する場合の出発原料としては、Li源として、LiOC2H5、LiOH、などを、ビスマス源として、Bi(O−tert−C5H11)3、Bi(OCH(CH3)2)3、Bi(OC2H5)3を、溶媒としてはそれぞれ脱水精製した、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エタノールなどを用いることができる。
【0044】
以上の中で、Li源としてはLiOC2H5、ビスマス源としては、Bi(O−tert−C5H11)3、溶媒としては脱水精製した2−メトキシエタノールが特に好ましい。
【0045】
作製したLBOの構造解析、及び、空間群の決定は、汎用型のX線装置と市販されているシュミレーションソフトを用い、リートベルト解析によって行なった。
【0046】
上記作製したリチウムマンガン複合酸化物とLBOによる複合正極活物質は、レート特性・低温放電特性・パルス放電特性・エネルギー密度・軽量化・小型化などの、電池として重視する特性に応じて適宜選択したバインダー種と導電性付与剤を混合し電極とする。バインダーは通常用いられている樹脂系結着剤で良く、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いることができる。集電体金属箔としてはAl箔が好ましい。
【0047】
本発明で用いられる負極は、リチウムイオンを挿入・脱離可能なリチウム金属、リチウム合金、カーボン材料から選ばれるものが望ましいが、リチウムと合金化する金属、金属酸化物あるいはそれらとカーボン材料の複合材料、遷移金属窒化物でも構わない。負極材料の選択は、容量・電圧・重量・サイズならびにレート特性・低温放電特性・パルス放電特性などの電池の使用目的に応じて適宜行なえば良い。
【0048】
負極活物質は、レート特性・低温放電特性・パルス放電特性・エネルギー特性・軽量化・小型化などの電池として重視する特性に応じて適宜選択したバインダー種と混合し電極とする。バインダーは通常、用いられているポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる他、ゴム系バインダーを用いることも出来る。集電体金属箔としては、Cu泊が好ましい。
【0049】
セパレーターは特に限定されないが、織布、硝子繊維、多孔性合成樹脂等を用いることが出来る。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン系の多孔膜が薄膜でかつ大面積化、膜強度や膜抵抗の面で適当である。
【0050】
非水電解液の溶媒としては、通常、よく用いられるものでよく、例えばカーボネート類、塩素化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類を用いることが出来る。好ましくは高誘電率溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、(−ブチロラクトン(GBL)等から少なくとも一種類、低粘度溶媒としてジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エステル類等から少なくとも一種類選択し、その混合液を用いる。EC+DEC、PC+DMC、PC+EC+DECなどが好ましいが溶媒の純度が低い場合や含有水分量が多い場合などは、電位窓が高電位側に広い溶媒種の混合比を高めると良い。さらに水分消費や耐酸化性向上、安全性向上等の目的で微量の添加剤を加えても良い。
【0051】
支持塩としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)N、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)3C、Li(CF3SO2)2N等から少なくとも一種類を用いるが、LiPF6を含む系が好ましい。支持塩の濃度は0.8M〜1.5Mが好ましく、さらに0.9M〜1.2Mがより好ましい。
【0052】
本発明に係る二次電池は、たとえば図4のような構造を有する。正極集電体3上に正極活物質層1が形成され、正極を構成している。また、負極集電体4上に負極活物質層2が形成され、負極を構成している。これらの正極と負極は、電解液に浸漬した状態の多孔質セパレータ5を介して対向配置されている。正極を収容する正極外装缶6と、負極を収容する負極外装缶7とが、絶縁パッキング部8を介して接合した構成となっている。
【0053】
正極と負極に電圧を印加することにより正極活物質からリチウムイオンが脱離し、負極活物質にリチウムイオンが吸蔵され、充電状態となる。また、正極と負極の電気的接触を電池外部で起こすことにより、充電時と逆に、負極活物質からリチウムイオンが放出され、正極活物質にリチウムイオンが吸蔵されることにより、放電が起こる。
【0054】
電池の構成としては、角型、ペーパー型、積層型、円筒型、コイン型など種々の形状を採用することが出来る。外装材料その他の構成部材は特に限定されるものではなく、電池形状に応じて選定すればよい。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(Li1+xMn2−xO4の合成)
Li1+xMn2−xO4の合成には、出発原料としてLi2CO3と電解二酸化マンガン(EMD)を用いた。
【0057】
上記の出発原料の混合の前段階として、反応性の向上と目的粒径を有するLi1+xMn2−xO4を得ることを目的に、Li2CO3の粉砕およびEMDの分級を行なった。Li1+xMn2−xO4は電池の正極活物質として用いる場合、充放電反応の均一性確保、スラリー作製の容易さ、安全性等の兼ね合いにより、5〜30μmの重量平均粒径が好ましいので、EMDの粒径もLi1+xMn2−xO4の目的粒径と同じ5〜30μmとした。一方、Li2CO3は均一反応の確保のためには5μm以下の粒径が望ましいので、D50粒径が1.4μmとなるように粉砕を行った。このように所定の粒径にそろえたEMDおよびLi2CO3を0.00≦x≦0.20の範囲の所定比となるように混合した。
【0058】
この混合粉を乾燥空気フローの雰囲気下、600〜800℃で一時焼成した後、再度、乾燥空気フローの雰囲気下、600〜800℃で二次焼成した。次いで、得られたLi1+xMn2−xO4の粒子中の粒径1μm以下の微小粒子を空気分級機により除去した。この時、得られたLi1+xMn2−xO4の比表面積は0.6〜0.9m2/gであった。また、タップ密度は2.14〜2.22g/cc、真密度は3.98〜4.13g/cc、D50粒径は11〜16μmという粉体特性であった。
【0059】
得られたLi1+xMn2−xO4は、過剰Li量xの値(仕込み組成比から算出)に対応して、x=0をAA−1、x=0.065(すなわち2Li/Mn=1.10)をAA−2、x=0.125(すなわち2Li/Mn=1.20)をAA−3と表記する。
【0060】
(Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4の合成)
Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4の合成には、出発原料としてLi2CO3と(Mn3/4Ni1/4)3O4を用いた。Mnサイトを他元素で置換したLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4を作製するためには、(Mn3/4−xNi1/4Tix)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Six)3O4、(Mn3/4−xNi1/4Alx)3O4等の複合酸化物を用いた。F置換を行う場合は、LiFを用いた。
【0061】
混合の均一性を確保するため、上記の出発原料を所定比で秤量し、それらを湿式ボールミルにて、24時間混合した。その後、酸素フロー雰囲気中、750℃で8時間の焼成を2回繰り返した。
【0062】
得られた粉末は粉末エックス線回折より立方晶スピネル構造の単一相であることが確認され、格子定数は8.177オングストロームであった。また化学分析によりMnとNiがほぼ3対1の比であることも確認した。さらに、この粉体のMn価数を分析したところ3.99と算出された。
【0063】
次いで、得られた粉末を湿式遊星ボールミルにて48時間粉砕し、D50粒径が0.7μmのLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4、および、他元素置換Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4を得た。
【0064】
なお、得られたLi1+xNi0.5Mn1.5−xO4、および、他元素置換Li1+xNi0.5Mn1.5−xO4は、それぞれ仕込み組成比に対応して、LiNi0.5Mn1.5O4をAB−1、Li1.1Ni0.5Mn1.4O4をAB−2、LiNi0.5Mn1.3Ti0.2O4をAB−3、LiNi0.5Mn1.45Si0.05O4をAB−4、LiNi0.5Mn1.45Al0.05O3.95F0.05をAB−5と表記する。
【0065】
(LBOの作製)
LBOの合成には、出発原料として、Li2CO3とBi(OH)3を用いた。
【0066】
上記の出発原料を何種類かのモル比で秤量し、それらを湿式ボールミルにて、24時間混合した。その後乾燥空気フローの雰囲気下で350〜950℃の温度範囲で2〜8時間の焼成を行なった。
【0067】
得られた粉末は、粉末X線回折測定において、ICDDカード(ICDD= International Centre for DiffractionDataの略。ASTM(= American Society for Testing and Materials)カード、JCPDS(= Joint Committee of Powder Diffraction Standard)カードとも呼ばれる。国際回折データセンター発行)により評価を行なった。また、株式会社リガク製構造解析ソフト「Visual RIETAN」により構造解析シミュレーションを行なった。
【0068】
LBOのうち、800℃以上で焼成したものは回収が困難であった。また、焼成温度が450℃以下のものは未反応の原料が主生成相であった。従って、450℃〜750℃での熱処理を施したものを使用した。
【0069】
550℃以上の熱処理をした場合において、
Li:Biのモル比が0:100〜35:65のものは、Bi酸化物、Li4Bi6O11が主生成相であった。
【0070】
Li:Biのモル比が35:65〜65:35のものは、LiBiO2が主生成相であった。
【0071】
Li:Biのモル比が65:35〜0:100のものは、Li酸化物、Li3BiO4、Li5BiO5、およびLi7BiO6が主生成相であった。
【0072】
なお、上記化合物の空間群は、α−Bi2O3:P21/c、β−Bi2O3:P−421c、γ−Bi2O3:I23、θ−Bi2O3:Pn3m、Li4Bi6O11:(unknown)、Li3BiO4:(unknown)、Li5BiO5:cmおよびLi7BiO6:R3である。
【0073】
以下、熱処理温度を750℃とし、Li:Biのモル比を、35:65としたものをB−1、50:50としたものをB−2、65:35としたものをB−3と表記する。
【0074】
(構造解析)
リチウムとビスマスのモル比が50:50である代表的な酸化物はLiBiO2である。しかし、リチウムとビスマスのモル比を50:50とし、750℃で作製したLBO(=B−2)において評価を行なったところ、図1に示すように、汎用型X線回折装置で示されるプロファイルは、JCPDSカードNo.27−1221のLiBiO2におけるプロファイルとは、強度が一致しなかった。B−2のXRDプロファイルを図1および図2に示す。しかし、角度は一致するものが多かった。特に2θ=20±1°、2θ=26.5±1°、2θ=30±1°のピークが特徴的に一致した。そのため、結晶構造シミュレーションを行なった。その結果、生成物は空間群Ibamに属するが、8jサイトをビスマスと酸素が100%占有し、かつ、8fサイトをリチウムが100%占有しているようなICDDカード(=JCPDSカード、ASTMカード)の No.27−1221記載のLiBiO2の結晶構造とは異なっていることが分かった。(図2)
シミュレーションの結果、B−2の場合、図3に示すように、8fサイトのリチウム全てをビスマスと置換し、8jサイトのビスマスの70%をリチウムで置換した、全体としてややビスマスリッチ(Li:Bi=35:65)な組成が最も近いプロファイルを示すことが分かった。いずれにしても、空間群はIbamでシミュレーションが可能であり、リチウムとビスマスの位置が変わることでプロファイルは変化するものの、空間群はIbamには変わりが無いことが分かった。
【0075】
シミュレーションの結果、2θ=20±1°、2θ=26.5±1°、2θ=30±1°のピークは特徴的にB−2と一致した。なお、焼成温度を高温にするほど、LBOが融解しやすくなり、取り扱いが困難になることが分かっている。
【0076】
(比較例Bi2O3)
市販のBi2O3を比較のため使用した。以下、Bi2O3をD−1と表記する。
【0077】
(評価用電池の作製)
上記の材料より作製した正極活物質を使用し、評価用コイン型電池を作製した。電池の正極は、活物質:カーボンブラック:PVdF = 90:6:4(重量%)の混合比で作製し、負極はLi金属板とした。電解液は1MのLiPF6を支持塩とし、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比30:70で混合した溶液を溶媒とした。セパレーターは、ポリエチレン製のものを用いた。
【0078】
(容量保存特性の評価方法)
作製した電池を用いて容量保存特性を評価した。最初に各電池を室温において充電及び放電を一回ずつ行なった。このときの充放電電電流は予め測定した放電容量から計算し、満充電状態から10時間で放電終了となる電流値を使用した。
【0079】
4V級電池においては、放電側のカットオフ電圧は3V、充電側のカットオフ電圧は4.3Vとした。5V級電池においては、放電側のカットオフ電圧は3V、充電側のカットオフ電圧は4.9Vとした。
【0080】
その後、4V級電池においては各電池を所定の電流値で4.3Vまで充電し、8時間放電することでDOD=80%とし、60℃の恒温槽中で2週間放置した。5V級電池においては各電池を所定の電流値で4.9Vまで充電し、8時間放電することでDOD=80%とし、60℃の恒温槽中で2週間放置した。放置後に室温で再度所定の電流値で充電・放電操作をもう一度繰り返し、その時の放電容量を回復容量とした。
【0081】
(充放電サイクル試験の評価方法)
作製した電池を用いて充放電サイクル試験を行なった。
【0082】
4V級電池のサイクル評価は、予め測定した放電容量から計算し満充電状態から10時間で放電終了となる電流値で、4.3Vまで充電し、その後定電位充電を行い、同じ電流値で3Vまで放電させる、とうい操作を繰り返すことによって行なった。5V級電池のサイクル評価は、予め測定した放電容量から計算し満充電状態から10時間で放電終了となる電流値で、4.9Vまで充電し、その後定電位充電を行い、同じ電流値で3Vまで放電させる、とうい操作を繰り返すことによって行なった。なお、試験は60℃の温度で行なった。
【0083】
(実施例 1)
正極活物質として、B−1〜B−3とAA−3を2:98の重量比で混合した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これらを電池1−1〜1−3とする。
【0084】
(実施例2)
正極活物質として、B−2とAA−3を0.5:99.5の重量比で混合した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これらを電池2−1とする。
【0085】
(比較例1)
正極活物質として、正極活物質としてAA−1を用い、ビスマス酸化物を添加しないで使用した。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これを電池3−1とする。
【0086】
(比較例2)
正極活物質として、AA−3とD−1を2:98の重量比で混合し正極活物質とした。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。これを電池4−1とする。
【0087】
(実施例3)
溶出したMnの負極への析出比を測定するため、XPS測定による負極表面分析を行なった。正極活物質として、B−3とAA−3を2:98の重量%比で混合し正極活物質とした。作製した正極活物質を用い、(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製し、(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、45℃下、50サイクル経過後、アルゴングローブボックス内にて分解した。ただし、電解液は、プロパンスルトンを3wt%添加したものを使用している。その結果を表2に記す。
【0088】
(比較例3)
(実施例3)に従い、Mnスピネル(実施例記載のAA−3)にBi2O3(同D−1)による処理を加えたもの、および、何も処理をしていないMnスピネル(実施例記載のAA−3)のXPS測定による負極表面分析を行なった。測定条件は(実施例3)と同じである。いずれも、電解液はプロパンスルトンを3wt%添加したものを使用している。結果を表2に記す。
【0089】
(実施例4)
以下の正極活物質を作製し、これを用いて(評価用コイン型電池の作製)に記述した方法で電池を作製した。
【0090】
試料1
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−1
試料2
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−2
試料3
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−3
試料4
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−4
試料5
処理剤:B−2
リチウムマンガン複合酸化物:AB−5
また、処理剤B−2を添加しないこと以外は上記各試料と同様にして参考試料1〜5を作製し、これを用いて電池を作製した。
【0091】
得られた電池について、(容量保存特性の評価方法)、および(充放電サイクル試験の評価方法)で記述した方法で、電気的評価を行なった。
【0092】
処理剤B−2を添加した試料1〜5は、未添加の比較試料1〜5と比較して、回復容量および容量維持率の改善効果を評価した。
試料1は比較試料1に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料2は比較試料2に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が4%程度向上した。
試料3は比較試料3に比べ、回復容量が5%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料4は比較試料4に比べ、回復容量が5%程度、容量維持率が5%程度向上した。
試料5は比較試料5に比べ、回復容量が4%程度、容量維持率が5%程度向上した。
【0093】
本実施例の結果から、5V級の二次電池においてもLBOの添加により、高温におけるサイクル寿命および容量保存特性が改善されることが明らかになった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物を含む正極としているため、高温におけるサイクル寿命および容量保存特性が顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】LBOのXRDプロファイルを示す図である。
【図2】実施例にて実施したシミュレーション結果を示す図である(8fサイトを全てLiイオンとし、8jサイトを全てBiイオンとしたもの)。
【図3】実施例にて実施したシミュレーション結果を示す図である(8fサイトのリチウム全てをビスマスと置換し、8jサイトのビスマスの70%をリチウムで置換したもの)。
【図4】本発明に関わるリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 多孔質セパレータ
6 正極外装缶
7 負極外装缶
8 絶縁パッキング部
Claims (14)
- リチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質と、リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物と、を含有することを特徴とする二次電池用正極。
- 前記化合物はLixBiOy(x>0、y>0)であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極。
- 前記化合物におけるリチウムとビスマスの構成元素比が、モル比で35:65〜65:35の組成範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池用正極。
- 前記化合物とリチウムマンガン複合酸化物の存在比が、重量基準で0.5:99.5〜5:95にあることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の二次電池用正極。
- 前記化合物は、CuKα線によるX線回折パターンにおいて2θが20°、26.5°および30°付近に、それぞれピークを有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の二次電池用正極。
- 前記化合物は、空間群Ibamの結晶構造または準結晶構造を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の二次電池用正極。
- 前記リチウムマンガン複合酸化物が、スピネル構造を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の二次電池用正極。
- 前記化合物は層状化合物であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の二次電池用正極。
- 正極、負極および電解液を備え、前記正極が請求項1乃至8いずれかに記載の二次電池用正極であることを特徴とする二次電池。
- リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む化合物およびリチウムマンガン複合酸化物をバインダーとともに混合し合剤を作製する工程と、前記合剤を用いて集電体上に活物質層を形成する工程と、を含むことを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
- リチウム、ビスマスおよび酸素を構成元素として含む前記化合物がLixBiOy(x>0、y>0)であることを特徴とする請求項10に記載の二次電池用正極の製造方法。
- リチウム含有化合物とビスマス含有化合物とを混合し、酸素を含む雰囲気下で350℃を超え750℃以下の温度で焼成してLixBiOy(x>0、y>0)を得る工程をさらに含み、この工程により得られたLixBiOy(x>0、y>0)を用いて前記活物質層を形成する前記工程を実施することを特徴とする請求項11に記載の二次電池用正極の製造方法。
- 前記ビスマス含有化合物がBi(OH)3であることを特徴とする請求項12に記載の二次電池用正極の製造方法。
- 前記リチウム含有化合物がLi2CO3、LiOH、Li2OまたはLi2SO4を含むことを特徴とする請求項12または13に記載の二次電池用正極の製造方法。
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