以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、「光合分波手段」とは、光結合器と光路長差付与手段で構成される回路、「位相生成手段」とは、位相Φを生成する手段、「位相生成光結合器」とは、位相生成手段および光結合器として機能する回路、を意味する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における光合分波回路を図4に示す。本回路は、2入力2出力の2個の位相生成光結合器111,112と、これら2個の位相生成光結合器111,112に挟まれた2本の光導波路からなる光路長差付与部分107と、位相生成光結合器111,112に接続するそれぞれ二本の入出力光導波路101,102及び103,104より構成されている。
この光合分波回路は、その透過特性が波長軸上において概ね等周期となるように、波長間隔のずれを補正する機能(位相生成機能)を備えている。この機能は、例えば、位相生成光結合器111,112の何れかまたは両方を、出力の位相差が光合分波回路の透過帯域にある波長に対して依存性をもつように構成することにより実現できる。また、光路長差付与部分107の光導波路上に、波長依存性をもつ位相差を生成可能な位相生成手段を設けることによっても係る機能を実現することが可能である。
以下に、この位相補正について詳しく説明する。
一般的な波長と周波数の関係を図5に示す。CWDMグリッド上の波長に対する周波数を、f=c/λより求め、プロットしたものを「等波長間隔」と示した。但し、fは周波数、cは光速度、λは波長である。また1470nm近傍での周波数間隔Δf1を求め(≒2.74THz)、1470nmにおける周波数を基準に、等しい周波数間隔でCWDMグリッドに対する周波数をプロットしたものを「等周波数間隔1」と示した。
1470nm近傍では両者は一致しているが、1470nmから離れるほど両者のずれは大きくなっていく。このことは図2に示した従来のマッハツェンダ干渉計の透過特性の傾向と一致する。即ち、1470nm近傍ではクロスポートの透過率は高く、スルーポートのクロストークは低く抑えられているが、長波長側に離れるほど透過特性はグリッドからずれ、波長軸上における透過率は低くなり、クロストークは劣化する。
そこで、図5の等波長間隔と等周波数間隔1のずれを補正するため、このずれを線形部分と非線形部分に分け、次のように補正した。まず、等波長間隔と等周波数間隔1のずれの線形部分の補正法について説明する。
1470nm近傍における周波数間隔と1610nm近傍における周波数間隔の平均値から周波数間隔Δf2を求め(≒2.53THz)、図6に示すように、1470nmにおける周波数を基準に、等しい周波数間隔でCWDMグリッド上の波長に対する周波数をプロットしたものを「等周波数間隔2」と示した。
1470nm付近では等波長間隔と等周波数間隔2とは一致し、長波長側に移るにつれ若干ずれが生じ、1610nm付近では再び両者は一致した。このような線形部分の補正により、等波長間隔と等周波数間隔とのずれはほとんど補正できることがわかる。
等波長間隔と等周波数間隔のずれの線形部分を補正したマッハツェンダ干渉計を図7に示す。この回路は、2個の光結合器201,301と、これら2個の光結合器201,301に挟まれた光路長差付与部分107と、光結合器201,301に接続するそれぞれ二本の入出力光導波路101,102及び103,104を有する。なお、光結合器201,301は方向性結合器を用いており、結合率は50%に設定してある。
従来のマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部分における光路長差はΔLであるのに対し、本回路の光路長差はΔL’=ΔL+αに設定されている。但し、ΔL=55.9μm、αは波長オーダーの光路長であり、α=2・λc(λcは中心波長であり、例えばλc=1.47μmならα=2.94μmである)に設定した。
この時の透過特性の波長依存性を図8に示す。図6に示した等波長間隔と等周波数間隔2のずれの傾向と同様に、波長軸上の真中では若干ずれているが、両端ではちょうどグリッド上に乗っている。そのため、波長領域の両端では波長軸上における透過率は高く、クロストークは低く抑えられており、特性は改善されている。
このように、等波長間隔と等周波数間隔のずれの線形部分は、光路長差付与部に波長オーダーの補正を与えることにより補正できる。しかし、依然として、波長軸上の中心部分には若干のずれがある。そこで、この等波長間隔と等周波数間隔のずれの非線形部分を位相生成光結合器により補正する方法を次に説明する。
CWDMグリッド上の各波長に対し、図6で示した等波長間隔と等周波数間隔2の周波数ずれを周波数間隔Δf2で割った値、即ち等波長間隔と等周波数間隔のずれの非線形部分の補正に必要な位相補正量をプロットした結果を図9に示した。すなわち、図9に示した位相補正量を各波長の光に対して与えることとすれば、等波長間隔と等周波数間隔2のずれの非線形部分を補正することができることとなる。
先ず、図9に示した出力位相差の波長依存性を関数的に表現する例について説明する。 波長と周波数の関係式f=c/λにおいて、m番目の波長λmとm番目の周波数fm=f0+mΔfとの関係は、
とあらわすことができる。但し、mは整数、Δfは周波数間隔である。この式は下記式のように展開することができる。
上式(6)において、第二項、第三項以降の項はそれぞれ波長と周波数の関係における線形部分、非線形部分をあらわす。従って、等波長間隔と等周波数間隔のずれの非線形部分の補正量をあらわすのに非線形多項式、特に二次関数以上の多項式を用いれば良い近似となる。
例えば、二次の多項式による近似を行う場合、多重回帰近似を行った結果、図9の曲線は、位相補正量Φが
と近似できた。
もちろん、二次関数以上の多項式には限定されず、任意の関数を用いて近似しても良い。例えば、ガウス関数を用いて近似する場合は、近似式は、位相補正量Φが
となった。
このような位相差の波長依存性を与える手段として、干渉回路の透過帯域の波長(本実施形態の場合1470〜1610nm)に対して互いに異なる出力位相差をもつ位相生成光結合器を用いることにした。出力の位相差の波長依存性が合分波回路の透過帯域に対して変化する位相生成光結合器の構成例を図10に示す。
この位相生成光結合器は、4つの光結合器201〜204と、隣接する光結合器201〜204に挟まれた3つの光路長差付与部分205〜207より構成されている。4つの光結合器201〜204の結合率を適切な値に設定し、3つの光路長差付与部205〜207に適切な光路長差を与えることにより、この位相生成光結合器の結合率の値と、出力の位相差の波長依存性を任意に設定することができる。
光結合器201,202,203,204には、結合率がそれぞれr1,r2,r3,r4の方向性結合器を用いることとした。また、光路長差付与部205,206,207の光路長差はそれぞれδ1、δ2、δ3とした。位相生成光結合器の出力の位相特性を上記(7)式の近似関数にフィッティングした結果、結合率r1=82%、r2=82%、r3=82%、r4=82%、光路長差δ1=−1.13λc、δ2=0.24λc、δ3=1.13λcが得られた。
ここでは、光路長差付与部が3つ(光結合器が4つ)の位相生成光結合器を用いることとしているが、光路長差付与部は2つでも良いし、4つでも良い。なお、光路長差付与部の数が多いほど位相生成光結合器の位相特性を制御する自由度が高まり、フィッティングの精度は高まる。しかし、光路長差付与部の数が増えるほど回路サイズも大きくなるため、充分な近似度が得られる最小限の光長差付与部数で位相生成光結合器を構成することが望ましい。具体的には、光路長差付与部の数が6つ(光結合器が7つ)を超えると回路サイズが大きくなってしまうため、光路長差付与部の数は6つ以下に設定するのが望ましい。
当然のことではあるが、光路長差付与部の大きさは、導波路の比屈折率差、光路長、光結合器の結合率、回路構成などにより変化し、必要な位相補正量は、使用する光結合器の波長依存性、導波路材料の特性、分波間隔、回路構成などにより異なるため、作製する回路に合わせて光路長差付与部の数を設定すれば良い。本実施形態における好適な干渉回路は、図11に示すように、光路長差付与部107に接続されている光合波部111,112の各々が、3つの光路長差付与部(205,206,207および305,306,307)を有するように構成されたものである。
図10に示した構成の位相生成光結合器を、従来構成の非対称マッハツェンダ干渉計が備える二つの光結合器として使用することとした。図12(a)には、この非対称マッハツェンダ干渉計の光結合器(位相生成光結合器)の二つの出力ポートから出力される光信号の位相差の波長依存性が、図12(b)には、光結合率の波長依存性が示してある。ここで、2πの位相差あたりの光路長の変化は1・λcであり、λcは中心波長、光路長差は一方の導波路(図10では下側の光路)に対する他方の導波路の相対的な光路長であらわした。非対称マッハツェンダ干渉計の従来の二つの光結合器を、本実施形態の位相生成光結合器で置き換えることにより、図12(a)に示されているように、一つの位相生成光結合器あたりに必要な位相補正量は図6に示した値の約半分となる。
なお、非対称マッハツェンダ干渉計の左右の位相生成光結合器で異なる位相補正量を与えても良いし、片側の位相生成光結合器のみで位相補正を行っても良いことはいうまでもない。例えば、図4において、位相生成光結合器111として出力の位相差が一定である従来の光結合器を用いる一方、位相生成光結合器112として出力の位相差が合分波器の透過帯域の波長に対して変化する位相生成光結合器(例えば、光路長差付与部が6つ(光結合器が7つ)の位相生成光結合器)を用いることとし、この位相生成光結合器112のみで図12(a)に示した位相補正量および図12(b)に示した結合率を実現しても同様の効果が得られる。
すなわち、干渉回路を構成する位相生成光結合器の一つのみを、出力位相差が波長依存性を有するように構成することとしても、等波長間隔回路を実現することができる。
図12(a)に示した位相補正量の波長依存性によれば、図10に示した構成の位相生成光結合器の出力ポートから出力される光信号の互いの位相差には2次関数以上の多項式で与えられる波長依存性があり、等波長間隔と等周波数間隔のずれの非線形部分の補正に必要な位相補正量を示す曲線と一致することがわかる。また、この位相生成光結合器の結合率の波長依存性は小さいため、この位相生成光結合器を用いた合分波回路の透過特性の波長依存性は小さいと予想される。
図10に示した位相生成光結合器を、図4の合分波回路を構成する二つの位相生成光結合器111,112として用いた場合の透過特性の波長依存性を図13に示した。光路長差付与部分107の光路長差はΔL’=ΔL+αであり、ΔL=55.9μm、α=3.5・λc(λcは中心波長であり例えばλc=1.47μmならα=5.145μmである)に設定した。
また、二つの位相生成光結合器の与える位相差が互いに強め合うようにするため、例えば図11に示したように、光路長差付与部107の中間点(図の点線)に対し、位相生成光結合器が互いに左右対称になるよう配置した。
等波長間隔と等周波数間隔のずれの線形部分は光路長差付与部で補正されている。さらに、等波長間隔と等周波数間隔のずれの非線形部分は、出力位相差が波長依存性を持つ位相生成光結合器で補正されたことにより、透過特性の波長依存性は全波長範囲でCWDMグリッド上に乗っている。なお、透過特性の波長依存性は小さく、全波長領域にわたってクロストークが良好である。
このような光合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングなどを用いてシリコン基板上に石英系光導波路を形成することにより作製した。なお、導波路の比屈折率差は0.75%、導波路のコア厚は7μm、コア幅は7μmとなるよう製造した。作製した回路は基板から切断した後、ファイバを接続し、モジュール化を行った。本実施形態で用いた導波路材料では、使用する波長帯域における屈折率の波長依存性が小さかったため、屈折率は定数であるものと仮定した。
但し、屈折率の波長依存性が大きい場合には、図6に示されている等波長間隔と等周波数間隔の関係を表すグラフが変化する。しかしその場合にも、屈折率の波長依存性を考慮して図12(a)に示したような波長に対する位相補正量を導出し、例えば多重回帰近似により位相生成光結合器の出力の位相特性を適切に設定することにより、屈折率の波長依存性も含めて、屈折率が一定の場合と同様に、等波長間隔と等周波数間隔のずれを補正することができる。
また、上記光合分波回路では光デバイスを実現する最低限の構成のみを説明したが、例えば、光合分波回路の偏波依存性を低減するために必要な構成としたり、温度依存性を低減するための構成とするようにしてもよい。
このように、本発明の光合分波回路を用いることにより、等波長間隔の光デバイスが実現可能となる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態における光合分波回路を図14に示す。この回路は、出力位相差が透過帯域の波長に対して各々異なる二つの位相生成光結合器111,112と、これら2個の位相生成光結合器に挟まれた1つの光路長差付与部分107と、位相生成光結合器111,112に接続するそれぞれ二本の入出力光導波路101,102と103,104より構成されている。
また、二つの位相生成光結合器111,112は、例えば、図15に示すように、4つの光結合器201〜204と、隣接する光結合器201〜204に挟まれた3つの光路長差付与部分205〜207より構成されている。
この合分波回路の透過特性は、波長軸上において概ね等周期であり、波長軸上で概ね周期的になるよう等波長間隔と等周波数間隔のずれが光路長差付与部と、出力の位相差が合分波回路の透過帯域に対して異なる位相生成光結合器により補正されている。
光干渉回路の特性は、一般に光路長差付与部分の光路長に依存し、作製誤差により光路長が設定値よりずれれば、設定通りの特性が得られない。そこで、本実施形態の光合分波回路は、光路長差付与部分の光路長を精度良く設定するため、光路長差付与部に位相調整手段を備えている。
図11に示すように、等波長間隔のマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部分107に位相調整手段401を備えており、位相調整を行うことにより光路長差ΔL’=ΔL+αを変化させることができる。
また、図15に示すマッハツェンダ干渉計を構成する位相生成光結合器の光路長差付与部分205〜207に位相調整手段401を備えており、位相調整を行うことにより光路長差δ1、δ2、δ3を変化させることができる。
最小二乗曲線近似により、位相調整量(位相補正量)として、Φ≒8.12×10-6λ2−0.025λ+19.2が得られた。
このような位相特性を与える位相生成光結合器111,112を構成する光結合器201,202,203,204は、結合率がそれぞれr1=82%、r2=82%、r3=82%、r4=82%の方向性結合器を用いるとし、光路長差付与部205,206,207の光学的光路長差をそれぞれ位相調整手段で調整することにより、光路長差δ1=−1.13λc、δ2=0.24λc、δ3=1.13λcに設定した。
また、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部分107の光学的光路長差は位相調整手段で調整することによりΔL’=ΔL+α(ΔL=55.9μm、α=3.5・λc)となるよう設定した。
その結果、既に図13に示した特性のように、等波長間隔と等周波数間隔のずれが補正され、これにより、透過特性は全波長範囲でCWDMグリッドにほぼ一致させることができた。また、透過特性の波長依存性は小さく、全波長領域にわたってクロストークも良好である。
本実施形態の回路では、光路長差付与部に位相調整手段を備えているため、位相調整により光学的光路長を任意に変化させることができる。
そこで、図16および図17に示したように、三つの光路長差付与部205,206,207における光路長差が0である位相生成光結合器111,112を用い、位相調整手段により二つの光路の光学的光路長を変化させることにより光路長差を与えても良い。
位相調整は図16に示したように光路長差付与部における一方の導波路のみに行っても良いし、図17に示したように光路長差付与部の両側の導波路に行っても良い。
また、図16の光路長差付与部107に示したように、同一導波路に位相調整手段が数箇所設けられていても良いし、位相調整手段の形状、位置も自由に設定することができる。
もちろん、図15に示すように、予め光路長差を与えておき、位相調整手段により任意に光路長を変化させても良い。
このような合分波回路は、図18に示すように、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に下部クラッド503、コア502、上部クラッド501を作製し、石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として薄膜ヒータを形成した。
導波路の比屈折率差は0.75%、導波路のコア厚は7μm、コア幅は7μmとなるよう製造した。作製した回路は基板から切断した後、ファイバを接続し、モジュール化を行った。位相変化には薄膜ヒータを用い、導波路を局所加熱することにより導波路の屈折率を変化させて光学的光路長の調整を行った。
ここでは位相調整手段401として薄膜ヒータによる熱光学効果を用いる例を示したが、例えば、レーザなどによる光照射を用いても良いし、電気光学効果、磁気光学効果など位相調整ができればどのような手段を用いても良い。
上記実施形態で用いた導波路材料では、使用する波長帯域における屈折率の波長依存性が小さかったため、屈折率は定数であると仮定した。しかし、屈折率の波長依存性が大きい場合には、図6に示す等波長間隔と等周波数間隔の関係をあらわすグラフが変化する。その場合にも、屈折率の波長存性を考慮して波長に対する位相補正量を導出し、例えば最小二乗曲線近似により位相生成光結合器の出力の位相特性を適切に設定すれば、屈折率の波依存性も含めて、屈折率が一定の場合と同様に等波長間隔と等周波数間隔のずれを補正することができる。
また、上記光合分波回路では、光デバイスを実現する最低限の構成のみを説明したが、例えば、光合分波回路の偏波依存性を低減する構成としたり、温度依存性を低減する構成としてもよい。
以上、本実施形態では、薄膜ヒータ等の位相調整手段を用い、導波路の屈折率を変化させることにより光路長差付与部の光学的光路長差を調整し、作製誤差を軽減した。このように、位相調整手段は光学的光路長差を変化させる効果があり、光路長差付与手段として用いることにより、光合分波回路を構成する光路長差付与部の光学的光路長差を設計どうりの値に設定することができた。これにより、等波長間隔の光合分波回路を実現することができた。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態における合分波回路を図19に示す。この回路は、三つの位相生成光結合器111,112,113と、これら3個の位相生成光結合器に挟まれた2つの光路長差付与部分107,108と、位相生成光結合器111に接続するそれぞれ二本の入出力光導波路101,102と、位相生成光結合器113に接続するそれぞれ二本の入出力光導波路103,104より構成されている。
ここで、光路長差付与部分107の光路長差はΔL1’=ΔL1+α1、光路長差付与部分108の光路長差はΔL2’=ΔL2+α2に設定されており、α1,α2は第1の実施形態で説明した波長オーダーの光路長である。
また、三つの光合分波手段のうち少なくとも一つは、出力の位相差が光干渉計の透過帯域に対して異なる位相生成光結合器であり、位相成生機能を兼ねている。
第1および第2の実施形態では、従来のマッハツェンダ干渉計の構成をもとにした位相生成機能を備えた光合分波器であったが、本実施形態では、光路長差付与部107,108におけるそれぞれの光路長差がΔL1=ΔL、ΔL2=2・ΔL+π、位相生成光結合器111,112,113の分岐比がそれぞれ概ね50%、70%、10%である従来のラティス・フィルタの構成(非特許文献8を参照)をもとにしている。
このような光合分波回路の場合にも、第1の実施形態で説明した方法により、等周波数間隔の光合分波回路を等波長間隔にすることができる。
本実施形態の光合分波回路の透過特性の波長依存性を図20に示す。この光合分波回路は、光路長差付与部と出力の位相差が光合分波回路の透過帯域の波長に対して変化する位相生成光結合器を用いることにより、等波長間隔と等周波数間隔のずれが補正されている。その結果、波長軸上において概ね等周期の光合分波回路となっている。
本実施形態の光合分波回路を構成する位相生成光結合器の一つとして、M+1個(Mは2以上の整数)の光結合器と、隣接する光結合器に挟まれたM個の光路長差付与部分を有する位相生成光結合器を用いても良い。例えば、図21の光合分波回路では、位相生成光結合器111,113としては図10に示した位相生成光結合器を用いており、位相生成光結合器112としては、マッハツェンダ型光結合器を用いている。
また、本実施形態の光合分波回路の光路長差付与部に位相調整手段が設けられていても良い。そして、三つの光路長差付与部における光路長差がそれぞれ0である位相生成光結合器(図21の111,113)を用い、位相調整手段により二つの光路の光学的光路長を変化させることにより光路長差を与えても良い。
もちろん、図15に示したように予め光路長差を与えておき、位相調整手段により光路長を任意に変化させても良い。
更に、位相生成光結合器112の場合、光路長差付与部における光路長差を変化させることにより、マッハツェンダ型の分岐比可変の光結合器として機能させることもできる。
このような光合分波回路は、既に図18に示したように、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に下部クラッド503、コア502、上部クラッド501を作製し、石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として薄膜ヒータを形成し、導波路の比屈折率差は0.75%、導波路のコア厚は7μm、コア幅は7μmとなるよう製造した。さらに、作製した回路は基板から切断した後、ファイバを接続し、モジュール化を行った。なお、位相変化には薄膜ヒータを用い、導波路を局所加熱することにより導波路の屈折率を変化させて光路長の調整を行った。
ここでは、位相調整手段401として薄膜ヒータによる熱光学効果を用いる例を示したが、例えば、レーザなどによる光照射を用いても良いし、電気光学効果、磁気光学効果など位相調整ができればどのような手段を用いても良い。
本実施形態で用いた導波路材料では、使用する波長帯域における屈折率の波長依存性が小さかったため、屈折率は定数であると仮定した。しかし、屈折率の波長依存性が大きい場合には、図6に示した等波長間隔と等周波数間隔の関係をあらわすグラフが変化する。その場合にも、屈折率の波長依存性を考慮して波長に対する位相補正量を導出し、非線形多項式近以により位相生成光結合器の出力の位相特性を適切に設定すれば、屈折率の波長依存性も含めて、屈折率が一定の場合と同様に等波長間隔と等周波数間隔のずれを補正することができる。
また、上記の光合分波回路では、光デバイスを実現する最低限の構成のみを説明したが、例えば、光合分波回路の偏波依存性を低減する構成としてもよく、温度依存性を低減する構成としてもよい。
本実施形態では、本発明をラティス・フィルタに適用することにより、マッハツェンダ干渉計以外の干渉回路にも適用可能であることを示したが、例えば、ラティス・フィルタ以外にも、多段マッハツェンダ干渉回路、トランスバーサル・フィルタ等、その他の干渉回路であっても本発明は適用可能である。また、1入力2出力の干渉回路だけでなく、任意本数の入出力を持つ干渉回路に適用することができる。
このように、本実施形態の合分波回路を用いることにより、等波長間隔の合分波回路が実現できた。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態における光合分波回路を図22に示す。この回路は、二つの位相生成光結合器111,112と、これら2個の位相生成光結合器に挟まれた1つの光路長差付与部分107と、位相生成光結合器111に接続する入力導波路101,102より構成されている干渉回路において、位相生成光結合器112の二つの出力がアレイ導波路603と、アレイ導波路の両側に設けられた第一スラブ導波路602及び第二スラブ導波路604と、第二スラブ導波路に結合する8つの出力導波路605より構成されるアレイ導波路回折格子の第一スラブ導波路602に入射されている。
なお、干渉回路の二つの出力導波路を第一スラブ導波路602に接続する場合は、その接点の形状は任意であり、例えばテーパ導波路など形状が変化する光導波路がスラブ導波路に接続されていても良い。
ここで、光合分波手段のうち少なくとも1つは、出力の位相差が光合分波回路の透過域にある光に対して異なる位相を生成する位相生成手段であり、同時に、光結合器としても機能する位相生成光結合器である。
本実施形態の光合分波回路は、従来のマッハツェンダ干渉回路の二つの出力をアレイ導波路回折格子の第一スラブ導波路に入射させる構成(特許文献1参照)をもとにしている。従来の構成の場合、前段に設けられた干渉回路は等周波数間隔であったため等波長間隔のシステムに用いるには適していなかった。しかし、本実施形態で示す構成のように、前段に等波長間隔の合分波回路を用いれば、後段のアレイ導波路回折格子の出力波長間隔を前段に合わせることにより、回路全体として等波長間隔の光回路となる。
また、マッハツェンダ干渉回路を構成する位相生成光結合器112がアレイ導波路回折格子の第一スラブ導波路に結合された構成(特許文献2)をもとにした図23の構成を取ることもできる。ここで、位相生成光結合器がスラブ導波路に結合された構成とは、例えば、図10に示した位相生成光結合器を位相生成光結合器112として用いる場合は、光結合器204がスラブ導波路に直接結合されていることを指す。
また、例えば、位相生成光結合器111が6つの光結合器と隣接する光結合器に挟まれた5つの光路長差付与部より構成されてもよいし、位相生成光結合器112が通常の光結合器であってもよい。さらに、光結合器が方向性結合器、マルチモード干渉カプラ、可変カプラなどであってもよい。
更に、図24に示すように、前段のマッハツェンダ干渉回路の光路長差付与部の一方、若しくは両方の導波路に位相調整手段が設けられていても良い。
位相調整手段を用いることにより、前段のマッハツェンダ干渉回路と後段のアレイ導波路回折格子の波長を合わせることができる(非特許文献9を参照) 。
本実施形態の光合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いて石英系光導波路をシリコン基板上に形成した。導波路の比屈折率差は0.75%、導波路のコア厚は7μm、コア幅は7μmとなるよう製造した。また、作製した回路は基板から切断した後、ファイバを接続しモジュール化を行った。
前段のマッハツェンダ干渉回路の光路長差付与部に位相調整手段401を施した後の光合分波回路を図24に示し、その透過特性を図25に示す。
前段の干渉回路は等波長間隔であり、後段のアレイ導波路回折格子の出力波長間隔を前段に合わせることにより、回路全体として等波長間隔の特性が得られた。また、本構成の回路は、透過帯域が平坦なため、光通信システムで用いるのに適している。
本実施例で示した構成では、前段に等波長間隔のマッハツェンダ干渉回路を用いたが、これには限定されず、第3の実施形態で示したようなラティス・フィルタ型、多段マッハツェンダ型、トランスバーサル・フィルタ型、その他の干渉回路等、任意の等波長間隔の光合分波回路を使用しても良い。
また、後述する(第5の実施形態)光合分波回路が複数繋がれている位相生成機能を備えた光合分波器を前段に用い、その少なくとも二つの出力がアレイ導波路回折格子のスラブ導波路に入射するようにしてもよい。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態における光合分波回路を図26に示す。この回路は、前段の位相生成機能を備えた光合分波器801と、位相生成機能を備えた光合分波器801の二つの出力にそれぞれ接続された後段の位相生成機能を備えた光合分波器802,803とにより構成されている。ここで、前段の光合分波回路は波長間隔が20nmの等波長間隔マッハツェンダ干渉回路であり、後段の光合分波回路は波長間隔が40nmの等波長間隔マッハツェンダ干渉回路である。更に、前段と後段の干渉回路で入力光が4つの出力に分波されるように位相が設定されている。
このように、位相生成機能を備えた光合分波器が複数個繋がれた構成を取ることにより、1入力4出力の位相生成機能を備えた光合分波器を実現した。もちろん、本実施形態の位相生成機能を備えた光合分波器も、第2の実施形態で説明したように、光路長差付与部分に位相調整手段を備えていても良い。この位相調整部により光学的光路長差を調整しても良いし、例えば、位相生成機能を備えた光合分波器802の光路長差付与部にπの位相変化に相当する光学的光路長差を与えれば、λ1とλ3が出力されるポートが入れ替わる。
また、図26に示した前段の干渉回路の出力導波路と後段の干渉回路の入力導波路を接続する方法は一つの例であり、入出力導波路の構成を変えれば、出力される波長の出力ポートが変化する。
また、本実施形態の光合分波回路は、等波長間隔マッハツェンダ干渉回路を複数接続しているが、例えば、前段に第1の実施形態で説明した等波長間隔マッハツェンダ干渉回路(波長間隔20nm)を用い、後段に第3の実施形態で説明した等波長間隔ラティス・フィルタ(波長間隔40nm)を用いても良い。
このように、任意の等波長間隔合分波器回路を複数台繋ぐことにより1入力N出力の位相生成機能を備えた光合分波器が実現できる。
更に、図27に示したように、位相生成機能を備えた光合分波器801の二つの出力にアレイ導波路回折格子804,805を接続しても良い。そうすれば、前段の位相生成機能を備えた光合分波器801により波長が奇数と偶数チャネルに合分波され、後段のアレイ導波路回折格子804,805により個々の波長に合分波される。従って、同様に1入力N出力の位相生成機能を備えた光合分波器が実現できる。
もちろん、上記位相生成機能を備えた光合分波器の任意の光路長差付与部分に位相調整を行っても良い。
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態の光合分波回路を図28に示す。本回路はN+1個(Nは1以上の整数)の位相生成光結合器111〜115と、隣接する位相生成光結合器に挟まれたN個の光路長差付与部107〜109と、1個目の位相生成光結合器111に接続された2本の入力導波路101、102と、N+1個目の位相生成光結合器115に接続された2本の出力導波路103、104より構成されるN段ラティス・フィルタである。
N個の光路長差付与部107、108、109はそれぞれ2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はそれぞれΔL1+δL1、ΔL2+δL2、・・・、ΔLN+δLNに設定されている。また、位相生成光結合器111〜115には出力の位相差が透過帯域に対して波長依存性を有する位相生成光結合器を用いている。そしてこれら位相生成光結合器を位相生成手段として用いることにより、光路長差付与部107、108、109にそれぞれ波長依存性を有する位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)、・・・、ΨN(λ)が作用するようにしている。これらの位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)、・・・、ΨN(λ)を適切に設定することにより、図28の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができる。
具体例として、本実施形態では原理的に等周波数間隔である光合分波回路の透過スペクトルを等波長間隔に変換する設計手法を説明する。もちろん、本発明の第1の実施形態等で説明した手法を用いることにより、原理的に等周波数間隔である干渉回路を等波長間隔の干渉回路にすることもできるが、ここでは別の設計手法を用いることにする。
一般に光合分波回路、例えば位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に結合される光路長差付与部より構成されるN次(Nは1以上の整数)の光合分波回路(光遅延線回路)の透過特性は、この光合分波回路のインパルス応答のフーリエ変換であり、次式のように表すことができる。
ここで、ωは相対光角周波数、ΔLは光路長差付与部の光学的光路長差であり、屈折率の波長依存性を含む光路長差、cは光速である。この式(8)より、従来の光合分波回路は原理的に相対光角周波数に対し等間隔であることがわかる。もし光路長差付与部に波長依存性を有する位相Ψ(λ)を作用させることができれば、式(8)は本発明の光合分波回路の透過特性
に変換することができる。ただし、c=ωλ/2π、λは波長、ΔL´は光路長差付与部の光学的光路長差である。この式(9)より、波長依存性を有する位相Ψ(λ)を適切に設定することにより、光合分波回路の透過特性を任意に変形できることがわかる。
本実施形態では、例として透過スペクトルを等波長間隔に変換するので、次式で与えられる非線形位相Ψ(λ)を生成すればよい。
ただし、δL(=ΔL´−ΔL)は微小光学的光路長差、Δλは波長周期、mは整数、λcは中心波長である。数式(10)を展開すると、位相は次式によりあらわされる2次関数以上の多項式で近似できる。
したがって、式(11)より与えられる位相を光路長差付与部に作用させれば、中心波長λc、波長間隔Δλの等波長間隔光合分波回路が実現できる。
本実施形態では、位相生成光結合器を位相生成手段として用い、このように波長依存性のある位相を発生させる光合分波手段を位相生成光結合器と呼ぶことにする。
位相生成光結合器としては、光結合器と光路長差付与部より構成される干渉計型位相生成光結合器を用いても良い。具体的に、本実施形態ではM+1個(Mは1以上の整数)の光結合器と隣接する光結合器に挟まれたM個の光路長差付与部により構成されるラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を位相生成光結合器として用いることにする。
本構成の位相生成光結合器を位相生成光結合器として用いる利点は、ラティス・フィルタは原理的に損失が無いこと、そしてM+1個の光結合器の分岐比(結合角)とM個の光路長差付与部の光学的光路長差を適切に設定することにより、位相生成光結合器として機能させることができることである。また、光結合器として、近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用いることにする。
本発明における光合分波回路のn番目の二入力二出力ラティス・フィルタ型位相生成光結合器の伝達行列は次式で表すことができる。
ただし、Hn(z)とFn(z)はそれぞれn番目のラティス・フィルタ型位相生成光結合器のスルーポート、クロスポート伝達関数、Mnはn番目のラティス・フィルタ型位相生成光結合器の光路長差付与部の数、zは
で置き換えられる複素変数、Hn*(z)はHn(z)のパラ複素共役であり、上添え字*で表す通常の複素共役を用いて、
により定義される。また、式(12)のSn、p(p=1〜Mn)はp番目の光結合器と光路長差付与部からなる基本回路構成要素の伝達行列
式(12)のSn、p(p=Mn+1)はMn+1番目の光結合器の伝達行列
である。ただし、
はn番目のラティス・フィルタ型位相生成光結合器のp番目の光路長差付与部の光学的光路長差、
はn番目のラティス・フィルタ型位相生成光結合器のp番目の光結合器の結合角であり、より詳しく説明すると波長依存性を有する振幅結合率の角度表示である。
光合分波回路の例として、上記原理をマッハツェンダ干渉計に適用する。本発明の等波長間隔マッハツェンダ干渉計は、図29に示すようにN+1=2個の位相生成光結合器111と112と、隣接する位相生成光結合器111と112に挟まれたN=1個の光路長差付与部107と、1個目の位相生成光結合器111に接続された2本の入力導波路101、102と、2個目の位相生成光結合器112に接続された2本の出力導波路103、104より構成されている。光路長差付与部107は2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はΔL1+δL1に設定している。また、位相生成光結合器111と112は伝達行列がそれぞれS1、S2のM1段、M2段ラティス・フィルタ型位相生成光結合器である。
位相生成光結合器により生成される位相差で、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107に作用する位相は、式(12)を用いることにより
となる。本発明のマッハツェンダ干渉計において、二つの位相生成光結合器のうち一つを位相生成光結合器としてもよいし、両方を位相生成光結合器としてもよいが、ここでは第1の実施形態で説明したように、同じ位相生成光結合器を二つ用い、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107の中間点に対し、二つの位相生成光結合器が互いに線対称になるよう配置した。このとき、H1*(z)=H2*(z)=H*(z)と−F1*(z)=F2(z)=−F*(z)の関係が成立するので、式(16)は
に簡素化することができる。したがって、式(17)の位相生成光結合器により生成される位相が式(11)に一致し、同時に位相生成光結合器が結合角0.5の3dB光結合器として機能するように位相生成光結合器を設定すれば、本発明の等波長間隔マッハツェンダ干渉計を実現することができる。
位相生成光結合器の設計パラメータの導出には数値計算を行った。なお、パラメータの数が少ないほど位相生成光結合器を作製しやすくなるため、最適化の制約条件としてθ1(λ)=θ2(λ)=θ3(λ)=θ4(λ)=θ(λ)、
に設定した。もちろん、位相生成光結合器の設計パラメータを導出するのにこれらの制約条件は不要である。また、ラティス・フィルタ型位相生成光結合器の段数を多くするほど、そして制約条件を課さずに任意の設計パラメータを用いることにより、目的とする特性との近似度を高めることができる。しかし最適化により、上記制約条件を与えたとしても十分近似度の高い設計パラメータを導出することができた。さらに、近似しようとする位相関数に変数を導入することにより、位相生成光結合器の設計パラメータに柔軟性を持たせ、より近似を容易にすることができる。
そのため、式(11)に示したように、近似しようとする位相関数に変数δLを取り入れた。もちろん位相生成光結合器の設計に変数は必須ではないし、これ以外の変数を用いてもよいが、δLを用いたのは、光合分波回路の光路長差付与部の光学的光路長差をΔL´(=ΔL+δL)に設定するだけで、変数を容易に回路に反映させることができるからである。
式(17)が式(11)に一致し、結合角が0.5になるよう位相生成光結合器を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差、そして変数δLを非線形多項式近似により最適化した。最適化の結果、図30(a)に示す位相差と図30(b)に示す結合角を有する位相生成光結合器を得た。位相生成光結合器の出力の位相差、すなわち、生成される位相Φ(λ)は目的とする位相Ψ(λ)
に一致した。また、位相生成光結合器の結合角は概ね0.5の3dB光結合器として機能することがわかる。
図31に、作製した本発明の等波長間隔マッハツェンダ干渉計の模式図を示す。位相生成光結合器である位相生成光結合器111、112を構成する光結合器201〜204、301〜304の結合角は
位相生成光結合器111、112の光路長差付与部205、305の光学的光路長差は、
位相生成光結合器111、112の光路長差付与部206、306の光学的光路長差は、
位相生成光結合器111、112の光路長差付与部207、307の光学的光路長差は、
に設定した。二本の光遅延線からなるマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107の光学的光路長差はΔL1´(=ΔL1+δL1)に設定し、ΔL1は従来のマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部の光学的光路長差、光路長差付与部に付加する光学的光路長差は、
に設定した。
上記合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として幅40μm、ヒータ長4mmの薄膜ヒータを形成し、これらを用いて導波路の屈折率を変化させることにより光路長差付与部の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
導波路の比屈折率差は1.5%、導波路のコア厚は4.5μm、コア幅は4.5μmとなるよう製造した。このマッハツェンダ干渉計が作製されたチップをダイシングにより切り出し、入力、出力導波路にはシングルモードファイバを接続し、光モジュールを組み立てた。
図32に、作製した本発明の等波長間隔マッハツェンダ干渉計光モジュールの光学特性を示す。入力導波路102より光を入力し、出力導波路103より出力された光学特性をクロス、出力導波路104より出力された光学特性をスルーと表記した。本発明の原理を適用することにより、等波長周期40nmの光合分波回路を実現した。
図33に、相対波長に対しマッハツェンダ干渉計の透過帯の中心位置がCWDMグリッドからどれだけずれるかを示す。従来型のマッハツェンダ干渉計は等周波数間隔であり、等波長間隔でないため大きな軸ずれが発生することがわかる。一方、本発明の等波長間隔マッハツェンダ干渉計は等波長周期40nmであるため、軸ずれは生じない。そのため、波長領域で周期的なグリッドを用いるCWDMシステム用光合分波回路として適している。
図34に相対波長に対する損失、図35に相対波長に対するクロストークを示す。従来型のマッハツェンダ干渉計では透過帯の中心位置が波長グリッドからずれるため、CWDMグリッド上において損失が増大し、クロストークも劣化するが、本発明のマッハツェンダ干渉計は透過帯の中心位置が波長グリッドに完全に一致しているため、損失とクロストークはいずれも良好である。
以上、本実施形態では、一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に結合される光路長差付与部により構成される干渉計型光回路において、等波長間隔になるよう設計した位相を位相生成手段により光路長差付与部に作用させることにより、等波長間隔の光合分波回路を実現した。
さらに詳しく説明すると、位相生成手段として出力の位相差が透過帯域に対して異なることを特徴とする位相生成光結合器を用いた。具体的に位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、目的とする位相と結合角を有するよう設計パラメータを最適化することにより、位相生成光結合器として機能させることに成功した。本実施形態で説明した一連の設計手法を用いることにより、光合分波回路の一例として従来のマッハツェンダ干渉計を等波長間隔マッハツェンダ干渉計に変換した。このことは、一般の等周波数間隔の光遅延線回路を等波長間隔に変換できることを意味するものである。
もちろん、目的とする特性を実現するための位相を導出し、数値計算により位相生成光結合器の設計パラメータを最適化する過程を経る上記一連の設計アルゴリズムは本発明を実現するための一つの手法であり、第一実施形態のように、目的とする光学特性になるよう透過特性より位相補正量を直接導出する手法など、その他の手法を用いても等波長間隔合分波回路を実現できる。
また、近似する位相関数は本実施形態で示した関数に限らず、得たい透過特性により任意に設定することができる。等波長間隔に限定されず、例えば、任意の波長領域では任意の波長間隔になるよう設計することができる。等波長間隔にしたのは、本発明の特徴である位相設計の一例である。さらに、位相の表し方は必ずしも一意に決まるものではなく、同じ特性を実現するのに複数の表し方が可能である。例えば、本実施形態で用いる光合分波回路は二出力のラティス・フィルタであり、いずれの出力導波路からも光信号を取り出すことができるので、m=m´/2(m´は整数)としてもよいし、その他の関数を用いても良い。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態における光合分波回路を図36に示す。本回路は、N+1個(N=2)の位相生成光結合器111〜113と、隣接する位相生成光結合器に挟まれたN(N=2)個の光路長差付与部107〜108と、1個目の位相生成光結合器111に接続された2本の入力導波路101、102と、N+1=3個目の位相生成光結合器113に接続された2本の出力導波路103、104より構成される2段ラティス・フィルタである。
2個の光路長差付与部107、108はそれぞれ2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はそれぞれΔL1+δL1、ΔL2+δL2に設定されている。また、位相生成光結合器111〜113には出力の位相差が透過帯域に対して波長依存性を有する位相生成光結合器を用いている。そしてこれら位相生成光結合器を位相生成手段として用いることにより、光路長差付与部107、108にそれぞれ波長依存性を有する位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)が作用するようにしている。これらの位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)を適切に設定することにより、図36の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができる。
具体例として、本実施形態では原理的に等周波数間隔である光合分波回路の透過スペクトルを等波長間隔に変換した波長基準器を説明する。第6の実施形態で説明した位相を光路長差付与部に作用させれば、中心波長λc、波長間隔Δλの等波長間隔の波長基準器が実現できる。本実施形態では位相生成手段として位相生成光結合器を用い、これらの位相生成光結合器を位相生成光結合器として機能させることにより、目的とする光学特性を実現する。
本実施形態では、位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、位相生成光結合器111と112により光路長差付与部107に位相Ψ1(λ)、位相生成光結合器112と113により光路長差付与部108に位相Ψ2(λ)を作用させることにする。また、基本光学的光路長差をΔLとすると、1個目の光路長差付与部107のΔL1=ΔL、2個目の光路長差付与部108のΔL2=ΔLに設定した。ここで、基本光学的光路長差ΔLは従来型のラティス・フィルタ型波長基準器の光路長差付与部の光路長差に等しい。
また、位相生成光結合器112を近接した二本の光導波路からなる方向性結合器、位相生成光結合器111と113は伝達行列がそれぞれS1、S3のM1段、M3段ラティス・フィルタ型位相生成光結合器とした。さらに、位相生成光結合器112を中心に回路全体が線対称になるよう設計し、回路パラメータ数を減らすことにより回路の作製を容易にした。もちろん、上記構成は回路構成の一例であり、位相生成光結合器111〜113をそれぞれ異なる特性を有する位相生成光結合器とするなど、その他の回路構成を用いてもよい。
位相生成光結合器111〜113の伝達行列はそれぞれ、
であらわされる。第6の実施形態で説明したように、位相生成光結合器の位相差により光路長差付与部107と108に作用する位相Φ1(λ)、Φ2(λ)と、目的とする位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)がそれぞれ一致し、同時に結合角が0.3の光結合器として機能するよう位相生成光結合器の設計パラメータの最適化を行った。
ここでは、位相生成光結合器112を中心に回路全体を線対称にしており、光路長差付与部107と108の設計は等しいので、光路長差付与部107のみ最適化すればよい。最適化の結果、位相生成光結合器を6段ラティス・フィルタとした。なお、パラメータの数が少ないほど位相生成光結合器を作製しやすくなるため、最適化の制約条件としてθ1,1(λ)=θ1,2(λ)=θ1,3(λ)=θ1,4(λ)=θ1,5(λ)=θ1,6(λ)=θ(λ)、
に設定した。
もちろん、位相生成光結合器の設計パラメータを導出するのにこれらの制約条件は不要であるし、これ以外の制約条件を設定してもよい。また、ラティス・フィルタ型位相生成光結合器の段数を多くするほど、そして制約条件を課さずに任意の設計パラメータを用いることにより、目的とする特性との近似度を高めることができる。
しかし最適化により、上記制約条件を与えたとしても十分近似度の高い設計パラメータを導出することができた。さらに、近似しようとする位相関数に変数を導入することにより、位相生成光結合器の設計パラメータに柔軟性を持たせ、より近似を容易にすることができる。
そのため、近似する位相関数に変数δL1を取り入れた。もちろん位相生成光結合器の設計に変数は必須ではないし、これ以外の変数を用いてもよいが、δL1を用いたのは、光合分波回路の光路長差付与部の光学的光路長差をΔL1´(=ΔL1+δL1)に設定するだけで、変数を容易に回路に反映させることができるからである。
生成される位相差Φ1(λ)と目的とする位相Ψ1 (λ)が一致し、結合角が0.3になるよう位相生成光結合器を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差、そして変数δL1を共役勾配法により最適化した。最適化の結果、位相生成光結合器111と112により図37(a)に示す位相差Φ1(λ)を生成させ、位相Ψ1 (λ)をよく近似できている様子がわかる。同時に図37(b)に示す結合角を有する位相生成光結合器(位相生成光結合器111)を実現した。
図38に、作製した本発明の等波長間隔ラティス・フィルタ型波長基準器の模式図を示す。位相生成光結合器である位相生成光結合器111、113を構成する光結合器211〜217、311〜317の結合角は
位相生成光結合器111、113の光路長差付与部231、331の光学的光路長差は
光路長差付与部232、332の光学的光路長差は
光路長差付与部233、333の光学的光路長差は
光路長差付与部234、334の光学的光路長差は
光路長差付与部235、335の光学的光路長差は
光路長差付与部236、336の光学的光路長差は
に設定した。
二本の光遅延線からなるマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107、108の光学的光路長差はΔL1´=ΔL2´=ΔL´(=ΔL+δL)に設定し、ΔLは従来のラティス・フィルタの光路長差付与部の光学的光路長差、光路長差付与部に付加する光学的光路長差は
に設定した。また、方向性結合器310の結合角は0.4に設定した。
上記合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として幅70μm、ヒータ長8mmの薄膜ヒータを形成し、これらを用いて導波路の屈折率を変化させることにより光路長差付与部の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
導波路の比屈折率差は1.5%、導波路のコア厚は4.5μm、コア幅は4.5μmとなるよう製造した。このマッハツェンダ干渉計が作製されたチップをダイシングにより切り出し、入力、出力導波路には分散シフトファイバを接続し、光モジュールを組み立てた。
図39(a)に従来型波長基準器、図39(b)に本発明の原理を適用した波長基準器の透過特性を示す。ここでは入力導波路102より光を入力し、出力導波路103より出力された光学特性を示す。従来型のラティス・フィルタは等周波数間隔なので、波長軸上では等間隔にすることができない。一方、本発明の原理を適用することにより、等波長周期40nmの波長基準器を実現した。
図40に、相対波長に対しラティス・フィルタの透過帯の中心位置がCWDMグリッドからどれだけずれるかを示す。従来型のラティス・フィルタは等周波数間隔であり、等波長間隔でないため大きな軸ずれが発生することがわかる。一方、本発明の等波長間隔ラティス・フィルタは等波長周期40nmであるため、軸ずれは生じない。そのため、波長領域で周期的なグリッドを用いるCWDMシステム用波長基準器として適している。
図41に、相対波長に対する損失を示す。従来型のラティス・フィルタでは透過帯の中心位置が波長グリッドからずれるため、CWDMグリッド上において損失が増大するが、本発明のラティス・フィルタは透過帯の中心位置が波長グリッドに完全に一致しているため、軸ずれによる損失は生じない。
以上、本実施形態では、一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に結合される光路長差付与部により構成される干渉計型光回路において、等波長間隔になるよう設計した位相を位相生成手段により光路長差付与部に作用させることにより、等波長間隔の光合分波回路を実現した。さらに詳しく説明すると、位相生成手段として出力の位相差が透過帯域に対して異なることを特徴とする位相生成光結合器を用いた。具体的に位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、目的とする位相と結合角を有するよう設計パラメータを最適化することにより、位相生成光結合器として機能させることに成功した。具体的に光合分波回路の一例として従来のラティス・フィルタ型波長基準器を等波長間隔ラティス・フィルタ型波長基準器に変換した。
また、近似する位相関数は得たい透過特性により任意に設定することができる。等波長間隔の波長基準器に限定されず、例えば、任意の波長領域では任意の波長間隔になるよう設計することができる。そのため、位相を適切に設定することにより、任意の位置に透過率のピーク、すなわち波長基準位置が来るような波長基準器を実現することができる。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態における光合分波回路を図42に示す。本回路はN+1個(N=2)の位相生成光結合器111〜113と、隣接する位相生成光結合器に挟まれたN(N=2)個の光路長差付与部107〜108と、1個目の位相生成光結合器111に接続された2本の入力導波路101、102と、N+1=3個目の位相生成光結合器113に接続された2本の出力導波路103、104より構成される2段ラティス・フィルタである。
2個の光路長差付与部107、108はそれぞれ2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はそれぞれΔL1+δL1、ΔL2+δL2に設定されている。また、位相生成光結合器111〜113には出力の位相差が透過帯域に対して波長依存性を有する位相生成光結合器を用いている。そしてこれら位相生成光結合器を位相生成手段として用いることにより、光路長差付与部107、108にそれぞれ波長依存性を有する位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)が作用するようにしている。これらの位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)を適切に設定することにより、図36の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができる。
具体例として、本実施形態では原理的に等周波数間隔である光合分波回路の透過スペクトルを等波長間隔に変換したインタリーブ・フィルタを説明する。第6の実施形態で説明した位相を光路長差付与部に作用させれば、中心波長λc、波長間隔Δλの等波長間隔のインタリーブ・フィルタを実現できる。本実施形態では位相生成手段として位相生成光結合器を用い、これらの位相生成光結合器を位相生成光結合器として機能させることにより、目的とする光学特性を実現する。
本実施形態では、位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、位相生成光結合器111と112により光路長差付与部107に位相Ψ1(λ)、位相生成光結合器112と113により光路長差付与部108に位相Ψ2(λ)を作用させることにする。また、基本光学的光路長差をΔLとすると、1個目の光路長差付与部107のΔL1=ΔL、2個目の光路長差付与部108のΔL2=−2ΔLに設定した。ここで、基本光学的光路長差ΔLは従来型のラティス・フィルタ型インタリーブ・フィルタの光路長差付与部の光路長差に等しい。
また、図43(b)に示すように、位相生成光結合器112を近接した二本の光導波路からなる結合角0.38の方向性結合器310、位相生成光結合器111と113は伝達行列がそれぞれS1、S3のM1段、M3段ラティス・フィルタ型位相生成光結合器とした。
第6の実施形態で説明したように、位相生成光結合器の位相差により光路長差付与部107と108に作用する位相Φ1(λ)、Φ2(λ)と、目的とする位相Ψ1(λ)、Ψ2(λ)がそれぞれ一致し、同時に位相生成光結合器111、113の結合角がそれぞれ0.5、0.15の光結合器として機能するよう位相生成光結合器の設計パラメータの最適化を行った。最適化の結果、図43(a)および図43(c)に示すように、位相生成光結合器111、113をそれぞれ6段、10段ラティス・フィルタ型位相生成光結合器とした。
なお、パラメータの数が少ないほど位相生成光結合器を作製しやすくなるため、最適化の制約条件としてθ1,1(λ)=θ1,2(λ)=θ1,3(λ)=θ1,4(λ)=θ1,5(λ)=θ1,6(λ)=θ1(λ)、そして、θ3,1(λ)=θ3,2(λ)=θ3,3(λ)=θ3,4(λ)=θ3,5(λ)=θ3,6(λ)=θ3,7(λ)=θ3,8(λ)=θ3,9(λ)=θ3,10(λ)=θ3(λ)に設定した。
もちろん、位相生成光結合器の設計パラメータを導出するのにこれらの制約条件は不要であるし、これ以外の制約条件を設定してもよい。また、ラティス・フィルタ型位相生成光結合器の段数を多くするほど、そして制約条件を課さずに任意の設計パラメータを用いることにより、目的とする特性との近似度を高めることができる。しかし最適化により、上記制約条件を与えたとしても十分近似度の高い設計パラメータを導出することができた。
さらに、近似しようとする位相関数に変数を導入することにより、位相生成光結合器の設計パラメータに柔軟性を持たせ、より近似を容易にすることができる。そのため、近似する位相関数Ψ1(λ)、Ψ2(λ)にそれぞれ変数δL1、δL2を取り入れた。もちろん位相生成光結合器の設計に変数は必須ではないし、これ以外の変数を用いてもよいが、δL1、δL2を用いたのは、光合分波回路の光路長差付与部107、108の光学的光路長差をそれぞれΔL1´(=ΔL1+δL1)、ΔL2´(=ΔL2+δL2)に設定するだけで、変数を容易に回路に反映させることができるからである。
まず、生成される位相差Φ1(λ)と目的とする位相Ψ1 (λ)が一致し、結合角が0.5になるよう位相生成光結合器を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差、そして変数δL1を共役勾配法により最適化した。最適化の結果、位相生成光結合器111と112により図44(a)に示す位相差Φ1(λ)を生成させ、位相Ψ1 (λ)をよく近似できている様子がわかる。同時に図44(b)に示す結合角を有する位相生成光結合器(位相生成光結合器111)を実現した。
次に、生成される位相差Φ2(λ)と目的とする位相Ψ2 (λ)が一致し、結合角が0.15になるよう位相生成光結合器を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差、そして変数δL2を共役勾配法により最適化した。
最適化の結果、位相生成光結合器112と113により図45(a)に示す位相差Φ2(λ)を生成させ、位相Ψ2 (λ)をよく近似できている様子がわかる。同時に図45(b)に示す結合角を有する位相生成光結合器(位相生成光結合器113)を実現した。
位相生成光結合器である位相生成光結合器111、113を構成する光結合器211〜217、311〜321の結合角はそれぞれ
に設定した。また、位相生成光結合器111の光路長差付与部231、232、233、234、235、236の光学的光路長差は
に設定した。さらに、位相生成光結合器113の光路長差付与部331、332、333、334、335、336、337、338、339、340の光学的光路長差は
に設定した。
二本の光遅延線からなるマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107、108の光学的光路長差はそれぞれΔL1´=ΔL+δL1、ΔL2´=−2ΔL+δL2に設定し、ΔLは従来のラティス・フィルタの光路長差付与部の光学的光路長差、光路長差付与部に付加する光学的光路長差は
に設定した。また、方向性結合器310の結合角は0.38である。
上記合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として幅40μm、ヒータ長5mmの薄膜ヒータを形成し、これらを用いて導波路の屈折率を変化させることにより光路長差付与部の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
導波路の比屈折率差は1.5%、導波路のコア厚は4.5μm、コア幅は4.5μmとなるよう製造した。このマッハツェンダ干渉計が作製されたチップをダイシングにより切り出し、入力、出力導波路にはシングルモードファイバを接続し、光モジュールを組み立てた。
図46に、本発明の原理を適用したラティス型インタリーブ・フィルタの透過特性を示す。ここでは入力導波路102より光を入力し、出力導波路103より出力された光学特性をクロス、出力導波路104より出力された光学特性をスルーと表記した。本発明の原理を適用することにより、等波長周期40nm、すなわちチャネル間隔20nmの等波長間隔インタリーブ・フィルタを実現した。
本発明の等波長間隔インタリーブ・フィルタはCWDMグリッドからの軸ずれがないので、軸ずれによる損失、クロストークが生じず、CWDMグリッド用の光合分波回路として最適である。
以上、本実施形態では、一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に結合される光路長差付与部により構成される干渉計型光回路において、等波長間隔になるよう設計した位相を位相生成手段により光路長差付与部に作用させることにより、等波長間隔の光合分波回路を実現した。
さらに詳しく説明すると、位相生成手段として出力の位相差が透過帯域に対して異なることを特徴とする位相生成光結合器を用いた。具体的に位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、目的とする位相と結合角を有するよう設計パラメータを最適化することにより、位相生成光結合器として機能させることに成功した。具体的に光合分波回路の一例として従来のラティス・フィルタ型インタリーブ・フィルタを等波長間隔ラティス・フィルタ型インタリーブ・フィルタに変換した。
本発明の光合分波回路は単体でも使用することができるが、本発明の第4の実施形態で説明したようにアレイ導波路格子などその他の光回路を本実施形態の光合分波回路に接続して使用してもよいし、同一チップ上にアレイ導波路格子などの光回路と一体集積し、光合分波モジュールとしてもよい。このように、本発明の等波長間隔合分波回路を従来の光回路と組み合わせても良い。
因みに、アレイ導波路格子は光合分波手段(スラブ導波路)と光路長差付与部(アレイ導波路) より構成される干渉回路であるが、本発明の各実施形態で用いる光遅延線回路とは異なる原理で動作する光回路である。そのため透過特性は異なるものであり、アレイ導波路格子の透過特性は通常、等波長間隔である。なお、アレイ導波路格子は本発明と異なる手法を用いることにより等周波数間隔にできることが知られている。
また、従来のラティス型インタリーブ・フィルタにおいて、クロストークと波長分散を低減するため、回路を多段に接続する手法が報告されている。図47に示すように、本発明の等波長間隔合分波回路を縦列接続することにより、同様の効果が得られる。光信号を入力導波路103から入力した場合、出力導波路122と124から出力されるよう回路を構成している。また、前段の光合分波回路801と後段の光合分波回路802、803で中心波長が半波長異なるように回路を設計している。もちろん、これ以外の入出力ポートを使用してもよいし、多段に接続する方法も多数あり、本発明の光合分波回路を任意の構成で多段に接続しても良い。
また、第5の実施形態で説明したように、前段の光合分波回路801と後段の光合分波回路802、803の波長間隔が2倍異なるようにすれば、等波長間隔の1×4インタリーブ・フィルタが実現できる。もちろん、任意のP入力Q出力合分波回路を構成することができる。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第9の実施形態)
本発明の各実施形態では主に波長領域で使用する光合分波回路を説明してきたが、本発明の原理は波長領域だけではなく、光周波数領域にも適用することができる。本実施形態では、その具体的な一例を示す。
第6の実施形態で説明したように、光合分波手段と光路長差付与部より構成される光遅延線回路の透過特性は下記式のように表すことができる。
ここで、nは光周波数依存性を有する屈折率、ΔLは光路長差、cは光速、fは光周波数である。従来型光遅延線回路は光周波数領域で等周期であるが、その透過特性は光周波数間隔Δfと中心光周波数fcで特徴づけることができる。しかし、従来型光遅延線回路で自由に設定できるのは光路長差ΔLのみであるため、光周波数間隔Δfと中心光周波数fcを同時に設定することができず、いずれか一方のみ設定できた。
具体的には、光路長差ΔLは次の二式により光周波数間隔Δfと中心光周波数fcに関連している。
ただし、mは整数、Ngは群屈折率である。式(23)、式(24)をそれぞれ式(22)に代入すると、透過特性は下記式のように変形できる。
ただし、ncは中心光周波数における屈折率、Ngcは中心光周波数における群屈折率である。式(25)では光周波数間隔を任意の値に設定できるため、光周波数間隔がΔfの等周波数間隔の光合分波回路になるが、中心光周波数は自由に設定することはできない。一方、式(26)では中心光周波数を任意の値に設定できるため、中心光周波数がfcの等周波数間隔の光合分波回路になるが、光周波数間隔は自由に設定することはできない。
具体的に、光周波数間隔800GHzの従来型マッハツェンダ干渉計の透過特性の透過帯の中心位置が光周波数グリッドからどれだけずれるかを図48(a)および図48(b)に示す。ただし、ここで光周波数グリッドとは、中心光周波数191THz、光周波数間隔800GHzのグリッドと仮定する。
図48(a)は式(25)を用いて設計した場合の軸ずれ量、図48(b)は式(26)を用いて設計した場合の軸ずれ量である。図48(a)では光周波数間隔を800GHzに設定しているので、各光周波数において軸ずれ量は一定だが、中心光周波数を設定できないので、光周波数グリッドからの軸ずれは大きい。一方、図48(b)では中心光周波数を191THzに設定しているので、中心光周波数では光周波数グリッドからのずれは零であるが、光周波数間隔を設定できないので、中心光周波数から離れるほど光周波数グリッドからの軸ずれは大きくなる。
このように、従来型の光遅延線回路は一般に光周波数間隔Δfと中心光周波数fcのどちらか一方のみ自由に設定でき、両者を同時に任意の値に設定することはできない。もちろん、特殊な場合として
(msは整数)を満たすなら光周波数間隔Δfと中心光周波数fcを同時に設定することができるが、このような特殊な場合に限られる。
本実施形態では、光周波数依存性を有する位相生成手段を応用することにより、光周波数間隔Δfと中心光周波数fcを同時に任意の値に設定できることを示す。本発明の光遅延線回路の透過特性は、
と表すことができる。ただし、cは光速、ΔL´は光路長差付与部の光路長差、Ψ(f)は位相生成手段により生成される位相である。この式より、光周波数依存性を有する位相Ψ(f)を適切に設定することにより、光合分波回路の透過特性を任意に変形できることがわかる。本実施形態では例として光周波数間隔がΔfで中心光周波数fcの透過スペクトルを有する等周波数間隔の光遅延線回路を得たいので、次式で与えられる非線形位相Ψ(f)を光遅延線回路の光路長差付与部に作用させればよい。
ただし、δL(=ΔL´−ΔL)は微小光路長差、ΔLは従来のマッハツェンダ干渉計の光路長差、mcは整数である。
以上説明した原理を光遅延線回路の例としてマッハツェンダ干渉計に適用し、任意の光周波数間隔と中心光周波数を有する等周波数間隔光遅延線回路を実現できることを示す。本実施形態では位相生成手段として位相生成光結合器を用いることにより、光周波数依存性のある位相を発生させ、目的とする光学特性を実現する。
具体的に式(28)で表される位相を光周波数間隔800GHzのマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部に作用させた場合に、透過特性の透過帯の中心位置が光周波数グリッドからどれだけずれるかを図49に示す。中心光周波数191THz、光周波数間隔800GHzに設定しているので、光周波数グリッドと完全に一致し、光周波数グリッドからの軸ずれを解消できることがわかる。
位相生成光結合器として光結合器と光路長差付与部より構成される干渉計型位相生成光結合器を用いた。具体的に、本実施形態ではM+1個(Mは1以上の整数)の光結合器と隣接する光結合器に挟まれたM個の光路長差付与部により構成されるラティス・フィルタ型の光合分波手段を位相生成手段として用いることにする。
本構成の光合分波手段を位相生成手段として用いる利点は、ラティス・フィルタは原理的に損失が無いこと、そしてM+1個の光結合器の分岐比(結合角)とM個の光路長差付与部の光学的光路長差を適切に設定することにより、位相生成光結合器として機能させることができることである。また、光結合器として、近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用いることにする。
本発明における光合分波回路のn番目の二入力二出力ラティス・フィルタ型位相生成光結合器の伝達行列は第6の実施形態で示した式(12)で表すことができる。ただし、zは
で置き換えられる複素変数である。
また、式(12)のSn、p(p=1〜Mn)はp番目の光結合器と光路長差付与部からなる基本回路構成要素の伝達行列
はn番目のラティス・フィルタ型位相生成光結合器のp番目の光結合器の結合角であり、より詳しく説明すると光周波数依存性を有する振幅結合率の角度表示である。
位相生成光結合器により生成される位相差で、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部に作用する位相は、
となる。
本発明の任意光周波数間隔、中心光周波数を有するマッハツェンダ干渉計において、二つの位相生成光結合器のうち一つを位相生成光結合器としてもよいし、両方を位相生成光結合器としてもよいが、ここでは第1の実施形態で説明したように、同じ位相生成光結合器を二つ用い、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部の中間点に対し、二つの位相生成光結合器が互いに線対称になるよう配置した。
このとき、H1*(z)=H2*(z)=H*(z)と−F1*(z)=F2(z)=F*(z)の関係が成立するので、式(30)は、
に簡素化することができる。したがって、式(31)の位相生成光結合器により生成される位相が式(28)に一致し、同時に位相生成光結合器が結合角0.5の3dB光結合器として機能するように位相生成光結合器を設定すれば、光周波数間隔Δfと中心光周波数fcを同時に任意の値に設定できるマッハツェンダ干渉計を実現することができる。
本実施形態では、位相生成光結合器をマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部の中心に対し線対称に配置している。最適化の結果、位相生成光結合器を3段ラティス・フィルタとした。なお、パラメータの数が少ないほど位相生成光結合器を作製しやすくなるため、最適化の制約条件としてθ1,1(λ)=θ1,2(λ)=θ1,3(λ)=θ2,1(λ)=θ2,2(λ)=θ2,3(λ)=θ(λ)に設定した。
もちろん、位相生成光結合器の設計パラメータを導出するのにこれらの制約条件は不要であるし、これ以外の制約条件を設定してもよい。また、マッハツェンダ干渉計の二つの位相生成光結合器を異なる設計にしてもよいし、一方のみを位相生成手段として機能させてもよい。また、ここでは位相生成機能を有する位相生成光結合器として3段ラティス・フィルタを用いたが、2段のラティス・フィルタを用いてもよいし、4段以上のラティス・フィルタを用いてもよいし、1段のラティス・フィルタ、すなわちマッハツェンダ干渉計を用いてもよい。もちろん、その他の光合分波手段を位相生成光結合器として機能させることができる。
さらに、近似しようとする位相関数に変数を導入することにより、位相生成光結合器の設計パラメータに柔軟性を持たせ、より近似を容易にすることができる。そのため、近似する位相関数に変数δL1を取り入れた。もちろん位相生成光結合器の設計に変数は必須ではないし、これ以外の変数を用いてもよいが、δL1を用いたのは、光合分波回路の光路長差付与部の光学的光路長差をΔL1´(=ΔL1+δL1)に設定するだけで、変数を容易に回路に反映させることができるからである。
生成される位相差Φ1(λ)と目的とする位相Ψ1 (λ)が一致し、結合角が0.5になるよう位相生成光結合器を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差、そして変数δL1を共役勾配法により最適化した。
最適化の結果、位相生成光結合器111と112により図50(a)に示す位相差Φ1(λ)を生成させ、位相Ψ1 (λ)をよく近似できた。図50(b)は図50(a)の非線形部分のみを抜き出した位相であるが、位相生成光結合器により生成される位相差と目的とする位相がよく一致していることがわかる。
同時に、図51に示すように位相生成光結合器を結合角0.5の光結合器として機能させることができた。
図52に、作製した本発明のマッハツェンダ干渉計の模式図を示す。位相生成光結合器である位相生成光結合器111、112を構成する光結合器201〜204、301〜304の結合角は
位相生成光結合器111、112の光路長差付与部205、305の光学的光路長差は
光路長差付与部206、306の光学的光路長差は
光路長差付与部207、307の光学的光路長差は
に設定した。
二本の光遅延線からなるマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107の光路長差はΔL1´=ΔL1+δL1に設定し、ΔL1は従来のマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部の光路長差、光路長差付与部に付加する光路長差は
に設定した。
上記合分波回路は、火炎堆積法、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングを用いてシリコン基板504上に石英系光導波路を形成することにより作製した。また、光導波路を形成後、光導波路上に位相調整手段401として幅70μm、ヒータ長2mmの薄膜ヒータを形成し、これらを用いて導波路の屈折率を変化させることにより光路長差付与部の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
導波路の比屈折率差は0.75%、導波路のコア厚は7μm、コア幅は7μmとなるよう製造した。このマッハツェンダ干渉計が作製されたチップをダイシングにより切り出し、入力、出力導波路にはシングルモードファイバを接続し、光モジュールを組み立てた。
図53に、作製した本発明のマッハツェンダ干渉計光モジュールの光学特性を示す。入力導波路102より光を入力し、出力導波路103より出力された光学特性をクロス、出力導波路104より出力された光学特性をスルーと表記した。本発明の原理を適用することにより、光周波数周期800GHz、中心光周波数191THzの光合分波回路を実現した。もちろん、ITUグリッドに合うように光周波数周期を100GHz、中心光周波数を191THzに設定しても良い。
図54に、光周波数に対しマッハツェンダ干渉計の透過帯の中心位置が光周波数グリッド(光周波数周期800GHz、中心光周波数191THz)からどれだけずれるかを示す。本発明のマッハツェンダ干渉計に軸ずれは生じず、理論通り図49の特性を実現した。
以上、本実施形態では、一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に結合される光路長差付与部により構成される干渉計型光回路において、光周波数依存性を有する位相を位相生成手段により光路長差付与部に作用させることにより、光周波数間隔と中心光周波数を同時に任意の値に設定できる光合分波回路を実現した。
さらに詳しく説明すると、位相生成手段として出力の位相差が透過帯域に対して異なる(光周波数依存性を有する)ことを特徴とする位相生成光結合器を用いた。具体的に位相生成光結合器としてラティス・フィルタ型の位相生成光結合器を用い、目的とする位相と結合角を有するよう設計パラメータを最適化することにより、位相生成光結合器として機能させることに成功した。本実施形態で説明したように、本発明は従来の光合分波回路を波長領域で使用する場合だけでなく、光周波数領域で使用する場合にも有用である。
もちろん、目的とする特性を実現するための位相を導出し、数値計算により位相生成光結合器の設計パラメータを最適化する過程を経る上記一連の設計アルゴリズムは本発明を実現するための一つの手法であり、第1の実施形態のように、目的とする光学特性になるよう透過特性より位相補正量を直接導出する手法など、その他の手法を用いてもよい。
また、近似する位相関数は本実施形態で示した関数に限らず、得たい透過特性により任意に設定することができる。任意の光周波数間隔で任意の中心光周波数を有する光合分波回路に限定されず、例えば、任意の光周波数領域では任意の光周波数間隔になるよう設計することもできる。
さらに、位相の表し方は必ずしも一意に決まるものではなく、同じ特性を実現するのに複数の表し方が可能である。例えば、
の時は位相を、
と表すこともできる。
このような位相を光周波数間隔800GHzのマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部に作用させた場合に、透過特性の透過帯の中心位置がそれぞれ光周波数グリッドからどれだけずれるかを図55に示す。ただし、光周波数グリッドは中心光周波数190.8THz、光周波数間隔800GHzに設定している。
を満たすので式(32)が有効であり、透過帯の中心位置は光周波数グリッドと完全に一致し、光周波数グリッドからの軸ずれは零であることがわかる。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第10の実施形態)
本発明の各実施形態では主に、M+1個(Mは1以上の整数)の光結合器と隣接する光結合器に挟まれたM個の光路長差付与部により構成されるラティス・フィルタ型の光合分波手段を位相生成手段として用いた。それは、ラティス・フィルタは原理的に損失が無いこと、そしてM+1個の光結合器の分岐比(結合角)とM個の光路長差付与部の光学的光路長差を適切に設定することにより、位相生成光結合器として機能させることができることによる。また、光結合器として、近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用いたのは、方向性結合器の結合長を調整するだけで、結合角を変化させることができるからである。
しかし、位相生成手段としてラティス・フィルタを多段に接続した光合分波手段や、その他光結合器と光路長差付与部より構成される任意の干渉計型光合分波手段を用いても良い。本実施形態では、位相生成手段のその他の構成例を示す。なお、本発明の原理は位相生成手段の構成に依らずに適用できるので、位相生成手段は本発明の各実施形態の構成に限られるものではない。
図56に、本発明の第10の実施形態における位相生成手段を示す。この位相生成手段はM+1個(Mは1以上の整数)の光結合器201〜204と、隣接する光結合器201〜204に挟まれたM個の光路長差付与部205〜207と、1個目の光結合器201に繋がれた入力ポートと、M+1個目の光結合器204に繋がれた出力ポートにより構成されている。光結合器201〜204として主に近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用いたが、もちろんマルチモード干渉カプラ、可変カプラ、X分岐カプラ、Y分岐カプラなど任意の種類のものを用いることができるし、干渉計型の光結合器を用いることもできる。ここでは、図56に示すように、干渉計型の光結合器の例として、製造偏差に対して安定な分岐比が得られる安定化光結合器(非特許文献10を参照)を用いた。
安定化光結合器は4つの光結合器(方向性結合器)211〜214と3組の光路長差付与部231〜233からなるラティス回路であり、回路全体で分岐要素になる。光結合器(方向性結合器)211〜214の結合角は0.5に設定されており、光路長差付与部231、232、233の光路長差はそれぞれλc/4、γ、−λc/4(λcは中心波長)に設定されている。安定化カプラの結合角はγの値を調整することで設定することができる。このような光結合器を、位相生成光結合器111を構成する光結合器201〜204として用いることにより、製造誤差に対するトレランスが大きくなる。
光合分波手段111を構成する光結合器、すなわち安定化カプラ201〜204の結合角と、光合分波手段111を構成する光路長差付与部205〜207の光学的光路長差を最適化することにより、製造誤差に対し安定な特性を有する位相生成光結合器を実現した。
(第10の実施形態の第1変形)
図57に、本発明の第10実施形態の第1変形における位相生成手段を示す。図の光合分波手段114は複数の光合分波手段111、112、113より構成されている。具体的には、光合分波手段111の二つの出力ポートに光合分波手段112、113が縦列接続されている。光合分波手段114は位相生成光結合器であるが、光合分波手段114を構成する光合分波手段111、112、113も位相生成光結合器である。このように、位相生成光結合器として機能する複数の光合分波手段を用いて任意のP入力Q出力(P、Qは自然数)位相生成光結合器を構成してもよい。
図57の構成は4入力4出力の位相生成光結合器であるが、任意のポートを入力ポートもしくは出力ポートとして使用してもよい。また、本発明の実施形態では、位相生成光結合器の一つの入力ポートより光を入力し、二つの出力ポートより出力される光の振幅結合率(結合角)と位相差を位相生成光結合器として使用した。しかし、本実施形態のように入出力ポートの数は任意であり、例えば四つの出力ポートを有する場合は、それぞれのポートより出力される光の振幅結合率(結合角)と相対位相差を定義することができる。
図58に、図57の位相生成光結合器114を用いた本発明の光合分波回路を示す。本回路はN+1個(N=1)の位相生成光結合器114、115と、隣接する位相生成光結合器に挟まれたN(N=1)個の光路長差付与部107と、1個目の位相生成光結合器114に接続された4本の入力導波路101〜104と、N+1=2個目の位相生成光結合器115に接続された2本の出力導波路105、106より構成されるマッハツェンダ干渉計である。
光路長差付与部107は2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はそれぞれΔL1+δL1に設定されている。N+1=2個目の位相生成光結合器115として任意の位相生成光結合器を用いることができるが、ここでは、光結合器である方向性結合器を用いた。1個目の位相生成光結合器114には出力の位相差が透過帯域に対して波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相生成光結合器を用いている。そしてこの位相生成光結合器を位相生成手段として用いることにより、光路長差付与部107に波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相Ψ1が作用するようにしている。この位相Ψ1を適切に設定することにより、図58の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができた。
(第10の実施形態の第2変形)
図59に、本発明の第10実施形態の第2変形における位相生成手段を示す。図の位相生成光結合器111は光結合器201〜204と光遅延線251〜255より構成されている。位相生成光結合器111の構成は、広義にはトランスバーサル型光合分波回路と呼ぶことができる。
この光合分波回路は、光結合器201と、光結合器201に接続された入力ポートと、光結合器201の一方の出力ポートに接続された光遅延線251と、光結合器201の他方の出力ポートに接続された光遅延線254と、光遅延線254に接続された光結合器202と、光結合器202に接続される光遅延線252と253と、光遅延線252と253に接続される光結合器203と、光結合器203と光遅延線251に接続される光結合器204と、光結合器204に接続される出力ポートより構成される。
位相生成光結合器111を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光路長差を適切に設定することにより、位相生成光結合器として機能させることができる。もちろん、トランスバーサル型光合分波回路の構成法はいくつもあり、本構成はその構成例の一つである。
図60に示す構成等も広義にはトランスバーサル型光合分波回路と呼ぶことができる。この光合分波回路は、光結合器201と、光結合器201に接続された入力ポートと、光結合器201の一方の出力ポートに接続された光遅延線251と、光結合器201の他方の出力ポートに接続された光遅延線254と、光遅延線254に接続された光結合器202と、光結合器202に接続される光遅延線252と253と、光遅延線252と253と光遅延線251に接続される光結合器203と、光結合器203に接続される3つの出力ポートより構成される。光結合器203は3入力3出力のマルチモード干渉計等で構成しても良いし、複数の光結合器で構成しても良い。位相生成光結合器111を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光路長差を適切に設定することにより、位相生成光結合器として機能させることができる。
(第11の実施形態)
本発明の第11の実施形態における光合分波回路を図61に示す。本回路はN+1個(Nは1以上の整数)の光結合器211〜215と、隣接する光結合器に挟まれたN個の光路長差付与部107〜109と、1個目の光結合器211に接続された2本の入力導波路101、102と、N+1個目の光結合器215に接続された2本の出力導波路103、104より構成されるN段ラティス・フィルタである。
N個の光路長差付与部107、108、109はそれぞれ2本の光遅延線より構成されており、その光学的光路長差はそれぞれΔL1+δL1、ΔL2+δL2、・・・、ΔLN+δLNに設定されている。また、光路長差付与部107、108、109には透過帯域に対して波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相Ψ1、Ψ2、・・・、ΨNが作用している。上記位相を適切に設定することにより、図61の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができる。波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相Ψ1、Ψ2、・・・、ΨNを作用させる手法として、光路長差付与部に位相生成手段を設けた。
図62は、二本の光遅延線からなる光路長差付与部107〜109のそれぞれの光遅延線に位相生成光結合器111〜116を備える様子を示す。位相生成結合器として、光結合器と光路長差付与部より構成される任意の構成の位相生成光結合器を用いることができる。
図63は本実施形態の光合分波回路の簡単な例として、マッハツェンダ干渉計の模式図を示す。本回路はN+1=2個の光結合器211、216と、隣接する光結合器に挟まれたN=1個の光路長差付与部107と、1個目の光結合器211に接続された2本の入力導波路101、102と、N+1個目の光結合器216に接続された2本の出力導波路104、105と、光路長差付与部107の一方の光遅延線に挿入された位相生成結合器112と、位相生成結合器112に接続された入力導波路103と、位相生成結合器112に接続された出力導波路106より構成される。光路長差付与部107には作製誤差を解消するための位相誤差調整手段401として薄膜ヒータが形成されており、二本の光遅延線と位相誤差調整手段401により、光路長差付与部107の光学的光路長差がΔL1+δL1になるようにしている。
位相生成光結合器111としては、光結合器212〜215と、隣接する光結合器に挟まれた光路長差付与部231〜233より構成されるラティス型位相生成手段を用いた。そして、目的とする位相Ψ1を近似する位相Φを生成するよう、位相生成光結合器111を構成する光結合器の結合角と光路長差付与部の光学的光路長差を最適化した。
位相生成光結合器112の使用していない入出力ポートは、モニターポートとして使用することができる。また、図63では位相生成光結合器111のスルーポートを使用したが、クロスポートを使用してもよい。もちろん、任意のP入力Q出力の位相生成手段を用いてよい。
また、図63は光遅延線に一つの位相生成手段のみを有する構成であるが、一つの光遅延線に複数の位相生成手段を有してもよいし、二本の光遅延線からなる光路長差付与部の両方の光遅延線に位相生成手段を備えても良い。また、マッハツェンダ干渉計の位相生成光結合器を光結合器211、216としたが、図64に示すように、これらの光結合器を、位相生成機能を有する位相生成光結合器としてもよい。
以上、光合分波回路の光路長差付与部に位相生成手段を備える構成法を説明し、簡単な例としてマッハツェンダ干渉計の具体的な構成図を示した。
(第12の実施形態)
本発明の第12の実施形態における光合分波回路を図65に示す。任意の特性を実現できる光遅延線回路としてラティス・フィルタやトランスバーサル・フィルタ等のフィルタ構成が一般に用いられているが、本実施形態で説明する多段マッハツェンダ干渉計も同様に任意の特性を実現できるフィルタ構成の一つである。
本回路は2個の位相生成光結合器111、112と、隣接する位相生成光結合器に挟まれた1つの光路長差付与部107より構成されるマッハツェンダ干渉計が多段に接続された構成である。1段目のマッハツェンダ干渉計の位相生成光結合器111に2本の入力導波路103、104が接続されており、位相生成光結合器112の一方には出力導波路124、他方には2段目のマッハツェンダ干渉計が接続されている。2段目のマッハツェンダ干渉計の位相生成光結合器113に1本の入力導波路102が接続されており、位相生成光結合器114の一方には出力導波路123、他方には3段目のマッハツェンダ干渉計が接続されている。3段目のマッハツェンダ干渉計の位相生成光結合器115に1本の入力導波路101が接続されており、位相生成光結合器116には二本の出力導波路121、122が接続されている。
光路長差付与部107、108、109の光学的光路長差はそれぞれΔL1´=ΔL+δL1、ΔL2´=2・ΔL+δL2、ΔL3´=3・ΔL+δL3に設定した。ただし、ΔLは従来のマッハツェンダ干渉計の基本光学的光路長差である。
位相生成光結合器111と112のうちいずれか一方、もしくは両方を位相生成光結合器にし、光路長差付与部に位相を作用させることにより1段目のマッハツェンダ干渉計の光学特性を修正でき、例えば等波長間隔にすることができる。
また、位相生成光結合器113と114のうちいずれか一方、もしくは両方を位相生成光結合器にし、光路長差付与部に位相を作用させることにより2段目のマッハツェンダ干渉計の光学特性を修正でき、例えば等波長間隔にすることができる。
さらに、位相生成光結合器115と116のうちいずれか一方、もしくは両方を位相生成光結合器にし、光路長差付与部に位相を作用させることにより3段目のマッハツェンダ干渉計の光学特性を修正でき、例えば等波長間隔にすることができる。多段に接続されたマッハツェンダ干渉計をそれぞれ等波長間隔になるようにすれば、回路全体として等波長間隔の光合分波回路になる。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第13の実施形態)
図66に、本発明の第13の実施形態における光合分波回路を示す。本回路は一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器111、112と、これらの位相生成光結合器に結合される光遅延線251〜253からなる光路長差付与部により構成される干渉回路であり、広義のトランスバーサル型光合分波回路である。
さらに詳しく説明すると、本回路は、位相生成光結合器111と、位相生成光結合器111に接続される一本以上の入力導波路101〜102と、位相生成光結合器111に接続される3本以上の光遅延線251〜253からなる光路長差付与部と、光遅延線251〜253に接続される位相生成光結合器112と、位相生成光結合器112に接続される一本以上の出力導波路103〜104より構成されている。
位相生成光結合器111、112は位相生成光結合器であり、単体で位相生成手段として機能させても良いし、複数の位相生成光結合器を組み合わせて一つの位相生成手段として機能させてもよい。これらの位相生成光結合器を位相生成手段として用いることにより、光路長差付与部に波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相Ψを作用させることができる。この位相Ψを適切に設定することにより、図66の光合分波回路の光学特性を任意に設定することができる。
例えば、トランスバーサル型光合分波回路に位相生成手段を取り入れれば、本発明の各実施形態で説明した非線形多項式で近似される位相を生成することができ、波長領域で使用する干渉回路や光周波数領域で使用する干渉回路の光学特性を変形することができる。さらに、本実施形態では、干渉回路を構成する位相生成光結合器のうち少なくとも一つに、波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相生成機能を備えている。
具体的な光合分波回路として、従来の等周波数間隔であるトランスバーサル型インタリーブ・フィルタ(特許文献3参照)の透過特性を修正し、等波長間隔のトランスバーサル型インタリーブ・フィルタに変換した。図67に示すように位相生成光結合器111、及び112として、光結合器と光路長差付与部より構成される位相生成機能付き位相生成光結合器113と114、及び115と116を複数組み合わせた位相生成光結合器を用いた。
位相生成光結合器111は、位相生成機能を有する位相生成光結合器113と、位相生成光結合器113に接続された二本の入力ポートと、位相生成光結合器113に接続された一本の出力ポートと、位相生成光結合器113に接続された位相生成機能を有する位相生成光結合器114と、位相生成光結合器114に接続された一本の入力ポートと、位相生成光結合器114に接続された二本の出力ポートより構成される。
位相生成光結合器112は、位相生成機能を有する位相生成光結合器115と、位相生成光結合器115に接続された二本の入力ポートと、位相生成光結合器115に接続された一本の出力ポートと、位相生成光結合器115に接続された位相生成機能を有する位相生成光結合器116と、位相生成光結合器116に接続された一本の入力ポートと、位相生成光結合器116に接続された二本の出力ポートより構成される。
光遅延線251の相対的な光学的光路長差を0・ΔL+0.5λcとして、光遅延線252の相対的な光学的光路長差をΔL1´=ΔL1+δL1=ΔL+δL1、光遅延線253の相対的な光学的光路長差をΔL2´=ΔL2+δL2=3・ΔL+δL2に設定した。位相生成光結合器113の結合角は0.55、位相生成光結合器114の結合角は0.22、位相生成光結合器115の結合角は0.22、そして位相生成光結合器116の結合角は0.5に設定した。また、位相生成光結合器113、114そして115、116は位相生成光結合器として用い、光遅延線252に位相Φ1(λ)、光遅延線253に位相Φ2(λ)を作用させた。
以上、本実施形態は、位相生成手段を用いることにより従来型の光合分波回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例である。
(第13の実施形態の変形)
図68に、本発明の第13実施形態の変形にかかる光合分波回路を示す。本回路は一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器111、112と、113、114と、これらの位相生成光結合器に結合される光遅延線251〜255からなる光路長差付与部により構成される干渉回路であり、広義のトランスバーサル型光合分波回路である。
さらに詳しく説明すると、本回路は位相生成光結合器と、この位相生成光結合器に接続される光遅延線が交互に接続されたトランスバーサル型光合分波回路である。また、波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相生成手段を、位相生成光結合器もしくは光路長差付与部のうち少なくとも一つに備えている。
図68の例では、もし位相生成手段を位相生成光結合器に備えるなら、位相生成光結合器111もしくは114を、出力の位相差が透過帯域に対して異なることを特徴とする位相生成光結合器とすればよい。もし位相生成手段を光路長差付与部に備えるなら、位相生成光結合器112もしくは113を位相生成光結合器とすればよい。
例えば、光遅延線251と254は光路長差付与部を形成しているが、光遅延線254に位相生成光結合器112が接続されているので、位相生成光結合器112を位相生成光結合器にすれば、光遅延線251と254からなる光路長差付与部に位相生成手段を備えることができる。
具体的な光合分波回路として、従来の等周波数間隔であるトランスバーサル型インタリーブ・フィルタの透過特性を修正し、等波長間隔のトランスバーサル型インタリーブ・フィルタに変換した。
図69に、本実施形態の変形における光合分波回路の模式図を示す。本回路は、位相生成光結合器111と、位相生成光結合器111に接続される二本の入力導波路102、103と、位相生成光結合器111に接続される二本の光遅延線251、254と、光遅延線254に接続される位相生成光結合器112と、位相生成光結合器112に接続される一本の入力導波路101と、位相生成光結合器112に接続される二本の光遅延線252、253と、光遅延線252、253に接続される位相生成光結合器113と、位相生成光結合器113に接続される一本の出力導波路104と、位相生成光結合器113に接続される1本の光遅延線255と、光遅延線255と光遅延線251に接続される位相生成光結合器114と、位相生成光結合器114に接続される二本の出力導波路105、106より構成される。
光遅延線251、252、253には位相調整手段401を設け、これらを用いて光遅延線の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
また、本構成では、位相生成光結合器と光路長差付与部の両方に位相生成手段を備えている。具体的には、位相生成光結合器111と114、そして112と113を位相生成光結合器として機能させることにより、位相生成光結合器に位相生成手段を備え、かつ光遅延線からなる光路長差付与部に位相生成手段を備えている。
光遅延線251の相対的な光学的光路長差を0・ΔL+0.5λcとして、光遅延線252の相対的な光学的光路長差を0・ΔL、光遅延線254の相対的な光学的光路長差をΔL1´=ΔL1+δL1=ΔL/2+δL1、光遅延線253の相対的な光学的光路長差をΔL2´=ΔL2+δL2=2・ΔL+δL2、光遅延線255の相対的な光学的光路長差をΔL3´=ΔL3+δL3=ΔL/2+δL3に設定した。位相生成光結合器111の結合角は0.55、位相生成光結合器112の結合角は0.22、位相生成光結合器113の結合角は0.22、そして位相生成光結合器114の結合角は0.5に設定した。また、位相生成光結合器111〜114は位相生成光結合器として用い、光遅延線254に位相Φ1(λ)、光遅延線253に位相Φ2(λ)、光遅延線255に位相Φ3(λ)を作用させた。
もちろん、図69の構成は本発明の実施例の一つであり、その他の構成を取ることもできる。例えば、図70に示すように光合分波回路を構成してもよい。本回路は一つ以上の入力と二つ以上の出力を持つ位相生成光結合器111、112と、光結合器201と、これらの位相生成光結合器もしくは光結合器に結合される光遅延線251〜254からなる光路長差付与部により構成される干渉回路であり、広義のトランスバーサル型光合分波回路である。
さらに詳しく説明すると、本回路は、位相生成光結合器111と、位相生成光結合器111に接続される二本の入力導波路102、103と、位相生成光結合器111に接続される二本の光遅延線251、254と、光遅延線254に接続される位相生成光結合器112と、位相生成光結合器112に接続される一本の入力導波路101と、位相生成光結合器112に接続される二本の光遅延線252、253と、光遅延線252、253と光遅延線251に接続される光結合器201と、光結合器201に接続される三本の出力導波路104、105、106より構成される。光遅延線251、252、253には位相調整部401を設け、これらを用いて光遅延線の光学的光路長差の作製誤差を補正した。
光結合器201として3入力3出力のマルチモード干渉計カプラを用いたが、その他の光結合器を用いてもよいし、複数の光結合器を組み合わせて一つの光結合器として機能させてもよい。
位相生成光結合器111と112は位相生成光結合器として用い、光遅延線251〜254に位相を作用させて従来型の光合分波回路の光学特性を修正した。
(第14の実施形態)
図71(a)に本発明の第14の実施形態における光合分波回路を示す。本発明の各実施形態で説明した光合分波回路では、作製した回路の偏波依存性が小さかったため、偏波について考慮しなかった。しかし、偏波依存性が大きい場合は偏波を考慮して回路を設計・作製することにより、偏波依存性を解消することができる。反対に、偏波依存性を適切に発生させることにより、例えば偏波インタリーブ・フィルタや偏光ビームスプリッタなど偏波依存性を有する光合分波回路を実現することもできる。
図71(a)に示すマッハツェンダ干渉計は複屈折制御部411、412を有する。光路長差付与部に適切な複屈折を発生させることにより光学的光路長差に偏波依存性を発生させ、光合分波回路の光学特性を偏波無依存、もしくは偏波依存にすることができる。
複屈折制御部としては、例えば、波長板挿入、ドーパント添加、応力付与薄膜、導波路形状の制御、レーザ照射、薄膜ヒータなどを用いてもよいし、その他の手段を用いても良い。
もちろん、図71(a)に図示した箇所だけでなく、光合分波回路全体に複屈折制御を適用してもよい。また、例えば、図71(b)に示すように、位相生成手段として用いる光合分波部の光路長差付与部に複屈折制御部を設け、位相生成光結合器111の偏波特性を制御してもよい。なお、ここでいう位相生成手段の偏波特性とは、偏波依存性を有する位相差と結合角を表す。さらに、位相生成光結合器111を構成する光結合器201〜204を偏波依存光結合器とし、結合角の偏波依存性を取り入れて位相生成光結合器111の偏波特性を設計してもよい。位相生成光結合器111の偏波特性を制御することにより、例えばTE偏光、TM偏光の出力の位相差ΦTE(λ)、ΦTM(λ)、及びTE偏光、TM偏光の結合角θTE(λ)、θTM(λ)をそれぞれ個別に設定することができる。
また、図72に示したように、光信号をアレイ導波路の第2スラブから本実施形態の光合分波回路に入射するように、回路を構成してもよい。
具体例として、マッハツェンダ干渉計型の偏波インタリーブ・フィルタの透過特性を図73に示す。TE偏光とTM偏光の波長間隔を40nmに設定し、TE偏光とTM偏光の中心波長が互いに波長周期の1/2(20nm)ずれるよう、TE偏光、TM偏光においてそれぞれ異なる位相ΨTE(λ)、ΨTM(λ)を光路長差付与部に作用させることにより、等波長間隔の偏波インタリーブ・フィルタを実現した。
(第15の実施形態)
本発明の各実施形態で用いた光遅延線は、主にFIR (Finite Impulse Response)型フィルタであった。例えば、マッハツェンダ干渉計、ラティス・フィルタ、そしてトランスバーサル・フィルタはFIR型フィルタの代表例であり、任意の透過特性を実現できることから、広く用いられている。しかし、FIR型フィルタ以外にもIIR (Infinite Impulse Response)型フィルタがあり、本発明の原理を適用することにより、その光学特性を修正することができる。IIR型フィルタとしてリング共振器を用いた光遅延線回路が知られている。
図74に本発明の第15の実施形態における光合分波回路を示す。本回路はIIR型フィルタとしては最も簡単な構成例の一つであり、二つの位相生成光結合器111と112と、位相生成光結合器111と112に挟まれた光路長差付与部107と、位相生成光結合器111と112に接続された入力導波路101、102と、出力導波路103、104より構成されるマッハツェンダ干渉計の光路長差付与部107に光合分波手段114を有し、光合分波手段114により、リング共振器(光遅延線)からなる光路長差付与部108を結んでいる。
本合分波回路では、波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相生成手段を用いることにより透過特性を修正している。位相生成手段として位相生成光結合器を用いてもよい。そして、光合分波手段もしくは光路長差付与部のうち少なくとも一つに位相生成光結合器を備えていてもよい。例えば、位相生成光結合器111ないしは112を位相生成手段として機能させて本回路の光学特性を修正してもよいし、光路長差付与部に備えられた光合分波手段114により位相を供給し、本回路の光学特性を修正してもよい。もちろん、リング共振器上に光合分波手段113を形成し、位相生成手段として機能させてもよい。
以上、本実施形態で示した共振器型光回路は、従来型の共振器型光回路の光学特性を修正できることを説明する一つの例であり、本発明の手法は任意の共振器型光回路に適用することができる。
(第16の実施形態)
図75に本発明の第16の実施形態における光合分波回路の構成を示す。本回路は、一つ以上の入力と二つ以上の出力を有する位相生成光結合器111と、位相生成光結合器111に接続される光路長差付与部107により構成される干渉回路であり、位相生成光結合器111は出力の位相差が波長依存性もしくは光周波数依存性を有する位相生成光結合器として機能させている。
光路長差付与部107には光の反射手段として反射板811が形成されており、光路長差付与部を伝搬した光は反射手段により反射されるようにしている。光合分波手段111には二つの入出力導波路101、102が接続されており、共に入力導波路もしくは出力導波路として使用することができる。
図76に具体的な回路の構成例を示す。ここでは位相生成光結合器111としてラティス型位相生成光結合器を用いた。また、光路長差付与部に位相調整手段401として薄膜ヒータを形成し、これらを用いて光路長差付与部の光学的光路長差を調整した。
(第17の実施形態)
図77に本発明の第17の実施形態における光合分波回路の構成を示す。本回路は、位相生成機能を用いたマッハツェンダ干渉計であり、その光路長差付与部107の真中に溝が形成され、薄膜812が挿入されている。
薄膜812として例えば半波長板を用いれば、偏波依存性を低減することができる。このように、本発明の光合分波回路の光路に、光合分波回路を構成する材料とは異なる材料を配置することができる。
また、薄膜以外の材料を挿入することができる。例えばシリコン樹脂を光路長差付与部に導入し、本回路の屈折率の温度依存性を打ち消しあうようにすれば、光合分波回路を温度無依存化することができる。さらに、マッハツェンダ干渉計の光路長差付与部だけにではなく、光合分波手段など、任意の箇所に任意の物を挿入してよい。
(その他の実施形態)
以上述べた各実施形態では、位相生成機能を備えた光合分波器をシリコン基板上に形成された石英系光導波路を用いて作製したと説明したが(作製例は、非特許文献11を参照)、本発明の合分波回路の構成は光導波路の種類、形状、材料によらない。
例えば、その導波路材料がポリイミド、シリコン、半導体、LiNbO3などであっても良いし、基板材質が石英などであっても良い。また、例えばその製造方法が、スピンコート法、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、イオン拡散法、イオンビーム直接描画法などであっても本発明は適用可能である。
さらに、各実施形態で述べた位相生成機能を備えた光合分波器を、例えば図78に示した光通信システムに使用しても良い。本発明の位相生成機能を備えた光合分波器801に光信号を入力すると波長分割多重され、合波された光信号は光ファイバ807を伝った後、本発明の位相生成機能を備えた光合分波器802で分波され波長ごとに信号が受信される。
また、各実施形態で述べた位相生成機能を備えた光合分波器の光モジュールは、次のように組み立てた。光モジュールは、図79に示すように、熱伝導性の良い筐体701の内部にペルチェ保持板702を固定ネジ703で固定し、図示はしないがペルチェ保持板702を掘削して作製した凹部にペルチェ素子と温度センサ(熱伝対)をその近傍に配置している。なお、ペルチェ素子、及び温度センサの直上に位相生成機能を備えた光合分波器704が来るように配置している(図示せず)。
PLCチップ704の端部にはガラス板705を接着剤で接着し、ファイバ706を保持しているファイバブロック707と光結合するように接着している。ファイバ706は筐体701の縁に設けた凹部に断熱性弾性接着剤708で接着してあり、更にファイバコード709を有するファイバブーツ710を筐体701に埋め込むように保持している。PLCチップ704はペルチェ保持板に断熱性弾性接着剤708で接されている。最後に、これらを被うように蓋をかぶせてネジ止めし本発明の光モジュールを組み立てた。なお、蓋とネジ止め部は図示していない。
本発明の位相生成機能を備えた光合分波器は、異なるチップとして作製される場合もあるが、それらをチップ間で直接接続することにより一つのチップにしても良いし、複数チップ間で光を結合させ、光モジュールを形成しても良い。また、それぞれのチップごとに別々の光モジュールを作製し、光モジュール間をファイバで結合しても同様の特性が得られる。
また、図示はしないが、一つの筐体内部に上記2つ以上のチップをそれぞれペルチェ保持板の上に保持させた光モジュールも同様の特性が得られた。さらに、例えば積層導波路や光ファイバなどを用いて光導波路を構成しても良いし、平面光導波路と光ファイバなど、複数種類の光導波路を組み合わせて構成しても良い。
また、光導波路にグレーティングが形成されていてもよく、あるいは、光導波路が途中で分割・分断されていてもよい。
もちろん、本発明の光合分波器は導波路に限定されず、光を空間中に伝搬させた空間光学系で干渉回路を構成しても良い。例えば、この空間光学系は半透明鏡、全反射鏡、多層膜などにより構成されていても良い。
図80に、空間光学系を用いたマッハツェンダ干渉計の構成例を示す。このように、空間光学系を用いても、回路を導波路で構成した場合と同様の光合分波器が実現できる。また、以上に述べた各実施形態における光合分波回路は、本発明の構成例の一つであり、これらの構成に限定されるものではない。
以上、各実施形態で用いた光路長差付与部分と光結合器より構成される位相生成光結合器は、位相特性が波長依存性もしくは光周波数依存性を持つ位相生成手段の一例であり、出力の位相差が透過帯域の波長の光に対して変化するその他の位相生成手段を用いても良い。
また、上記位相生成手段を構成する光結合器としては、方向性結合器以外にもマルチモード干渉カプラ、可変カプラ、X分岐、Y分岐など任意の種類のものを用いることができる。
さらに、上記位相生成光結合器に与えた結合率や光路長差付与部の光路長差の値も一つの例であるし、例えば図10の位相生成光結合器を構成する光結合器の結合率r1,r2,r3,r4を等しい値に設定したが、これらが異なっていても良い。
また、本発明の各実施形態では、正方形の導波路を用いたが、長方形、多角形、円形などの任意の形状とすることが可能である。
また、例えば、光導波路のコア幅を部分的に変えて、その部分の屈折率を他の部分と異なるように設定することもできる。
さらに、光導波路の屈折率の波長依存性を変化させるように、導波路の構造、材料、応力などを適切に設定すれば、光導波路自体を位相生成手段として利用することも可能である。
以上説明したように、MZ(マッハツェンダ)干渉計、ラティス・フィルタ、タランスバーサルフィルタ、リング共振器など、光遅延線と光結合器より構成される従来の光合分波回路において、従来は、透過する波長のそれぞれの間隔が不均一であり、中心波長から離れるに従って波長グリッドからずれ、等周波数間隔となっていた。本発明は、このずれを補正することによって、光合分波回路を等周波数間隔から等波長間隔ヘフィットさせた位相生成機能を備えた光合分波器である。
補正する設計指針としては、等波長間隔と使用波長域の上下における上記のずれを線形部分と非線形部分とに分け、線形部分は、ずれの平均値を算出し位相調整により補正する回路とした。一方、非線形部分は2次以上の多項式で表される位相関数にフィットするように複数個のMZ素子を縦列接続させた位相生成手段を用いて補正した。これらの補正を組み合わせることでずれを補正するものである。
このように、目的とする位相関数Ψを透過特性より直接導出してもよいし、位相関数Ψに中心波長、波長間隔、中心光周波数、光周波数間隔のうち何れかのパラメータを含むことで、これらのパラメータが任意の値に設定された光合分波回路を実現することができる。
また、目的とする位相Ψに一致するよう位相生成手段により生成されるΦを設計することにより、従来型の光合分波回路の光学特性を修正することができる。
また、同時に、位相生成手段が振幅結合率Θの光結合器として機能するようにすれば、位相生成手段を位相生成光結合器として機能させることができる。