JP2004197682A - 建設機械 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン7の冷却水等の流体を冷却するラジエータ10等の冷却器と、この冷却器に冷却風を供給する冷却ファン12とを有する冷却装置8を備えた建設機械である。冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えを可能とする。エンジン回転中における冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えを不能とする切換禁止手段43を備えた。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブルドーザ、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記建設機械には、一般に、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラと、これらに冷却風を供給する冷却ファン等を有する冷却装置が搭載されている。そして、冷却装置としては、その冷却ファンの正回転と逆回転との切換えが可能なものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の冷却装置は、図13に示すような回路図で示されるように構成される。すなわち、エンジン51に対してラジエータ52及びオイルクーラ53を別置きで配置し、これらを冷却ファン54によって冷却する。また、冷却ファン54はファン駆動回路58にて回転駆動される。ファン駆動回路58は、エンジン51により駆動される油圧ポンプ55と、この油圧ポンプ55から供給される作動油により作動される油圧モータ56と、油圧ポンプ55と油圧モータ56との間に介設される電磁切換弁57等を備える。すなわち、エンジン51の駆動により、油圧ポンプ55から吐出された圧油が上記電磁切換弁57を介して油圧モータ56に供給される。この際、冷却ファン54は、電磁切換弁57の切換にて制御される油圧モータ56によって、正回転又は逆回転に駆動される。また、電磁切換弁57を中立状態とすることによって、冷却ファン54の回転を停止させることができる。
【0004】
そして、冷却ファン54を正回転させれば、冷却ファン54からの冷却風が図13の矢印Xの方向に吹き出すことになる。このため、この正回転では、この冷却風をオイルクーラ53及びラジエータ52に送って、作動油及び冷却水を冷却することができる。しかしながら、エンジン始動時において、冷却水及び作動油の温度が機械稼動に適した温度(暖気温度)に達していなければ、冷却ファン54は停止状態が維持される。そして、エンジン51が始動して冷却水温度が所定温度に上昇したが、作動油が所定温度に上昇していない場合に、冷却ファン54を逆回転させることにより、冷却ファン54にて上記矢印Xと反対方向に冷却風を吸い込んで、この冷却風をラジエータ52を通過させることによって、温風としてこの温風でオイルクーラ53内の作動油を暖める暖気運転を行う。そして、冷却水及び作動油の温度が暖気温度に達すれば、この暖気運転を停止して、冷却ファン54を正回転に戻して、冷却水及び作動油を冷却する通常運転を行う。
【0005】
また、オイルクーラ53及びラジエータ52にはごみ等が付着することがあるが、上記冷却ファン54を正回転させれば、冷却ファン54からの冷却風を図13の矢印Xの方向に吹き出して、オイルクーラ53及びラジエータ52に付着しているごみ等のうち、反冷却ファン側のごみ等は吹き飛ばすことができる。この場合、冷却ファン側のごみ等は吹き飛ばすことは困難である。そこで、冷却ファン54を逆回転させることにより、上記矢印Xと反対方向に冷却風を吸い込んで、この冷却風をラジエータ52及びオイルクーラ53を通過させ、これによって、ラジエータ52及びオイルクーラ53に付着しているごみ等のうち、正回転において吹き飛ばされないものを、この逆回転により吹き飛ばすようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−68142号公報(第2−5頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジン回転中に、正回転→逆回転、又は逆回転→正回転の連続切換えを行えば、油圧回路内にピーク圧が発生し、これによって、油圧回路内の各種油圧機器等が故障するおそれがあった。また、上記冷却装置では、冷却ファン54の正回転と逆回転との切換えにおいて、冷却ファン54の停止が可能であるので、正回転→停止→逆回転、又は逆回転→停止→正回転に切換えることが可能である。しかしながら、エンジン51の回転中に冷却ファン54が突然に停止すれば、オペレータ等に対して、冷却ファン54のファン駆動回路等が故障したのではないかという不安感を与えるおそれがある。また、もし仮に冷却ファンの近くに人が位置するような場合には、注意力が冷却ファン54に向かない状態で、突然に冷却ファン54が回転してしまうおそれがあり、危険である。そして、このような突然の冷却ファン54の回転に対する防護対策は難しく、またその対策には多くの費用を要し、コスト高を招くことになる。
【0008】
この発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、オペレータに対する冷却ファンの作動信頼性の確保、及びオペレータ等の安全性の確保が可能である建設機械を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び効果】
そこで請求項1の建設機械は、エンジンの冷却水等の流体を冷却するラジエータ等の冷却器と、この冷却器に冷却風を供給する冷却ファンとを有する冷却装置を備えた建設機械であって、上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを可能とすると共に、エンジン回転中における上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを不能とする切換禁止手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
上記請求項1の建設機械によれば、切換禁止手段にて、エンジン回転中における冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを不能とするので、冷却ファンのショック等を防止でき、特に、冷却ファンのファン駆動回路が油圧回路であれば、切換えによる油圧回路内のピーク圧の発生を回避することができ、油圧機器等の故障を防止して、ファン駆動の信頼性を向上することができる。また、エンジン回転中のファン停止がなくなるので、オペレータ等に対して、冷却ファンのファン駆動回路等が故障したのではないかとの不安感を与えることがなくなって、オペレータ等に対する冷却ファンの作動信頼感を確保することができる。さらに、停止後の突然の予期しないファン回転が規制されるので、安全性に優れたものとなって、予期しないファン回転のための防護対策を必要とせず、コスト高を招くことがない。
【0011】
請求項2の建設機械は、上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを行う手動式切換スイッチを設けたことを特徴としている。
【0012】
上記請求項2の建設機械によれば、使用上の利便性の向上を図るために、手動式切換スイッチを設けたとしても、エンジン回転中における冷却ファンの正回転と逆回転との切換えが禁止されており、オペレータが誤操作しても回転方向が切換らないので、安全性の向上を確保することができる。
【0013】
請求項3の建設機械は、エンジン回転中に上記手動式切換スイッチの切換操作を行ったときに、切換不能である旨を表示する表示手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
上記請求項3の建設機械によれば、オペレータ等がエンジン回転中に手動式切換スイッチの切換操作を行ったときには、表示手段にて切換不能である旨が表示される。これにより、オペレータ等が現在において、冷却ファンの正回転と逆回転との切換えが行えない状態であって、誤操作したことと確認することができ、切換らないことによる不安感を確実に回避することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の建設機械の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図5は建設機械の一例としてのブルドーザの簡略図を示し、下部走行体1と、この下部走行体1の上部に配設される車体2とを備える。また、車体2の後部には運転室3が設けられ、車体2の前方には作業機4(この場合、ブレード5)が設けられている。そして、車体2の前部にはエンジンルーム6が設けられ、このエンジンルーム6に、図2に示すように、エンジン7、及び冷却装置8が搭載されている。上記冷却装置8は、エンジン7の冷却水を冷却する冷却器であるラジエータ10と、後述する動力伝達系P及び作業機用の作動油を冷却する冷却器であるオイルクーラ11と、ラジエータ10とオイルクーラ11とに冷却風を送る冷却ファン12とを備える。
【0016】
また、図2に示すように、動力伝達系Pは、HSS(ハイドロスティックステアリングシステム)ポンプ13と、トルクコンバータ14と、ファンポンプ15と、トランスミッション16と、HSSモータ17等から構成される。すなわち、エンジン7で発生した動力はダンパ18によってねじり振動を緩和されて、ユニーバーサルジョイント19を介してトルクコンバータ14に伝達される。また、エンジン7からの動力は負荷の変動に応じて、トルクコンバータ14によりオイル(作動油)を介して、トランスミッション入力シャフト(タービンシャフト)に伝達される。そして、トランスミッション16は動力をそのベベルピニオンからベベルギアー20に伝達する。このベベルギアー20から横軸に伝わった動力は、HSSユニット21に伝達される。また、PTO22により駆動されるHSSポンプ13は吐出油(作動油)によりHSSモータ17を回転する。HSSユニット21の左右一対の遊星歯車部の回転をHSSモータ17によって制御し、左右の回転数に差を生じさせることにより旋回方向を操作する。そして、HSSユニット21のブレーキ23を出た動力はファイナルドライブ24へ伝達される。ファイナルドライブ24はスプロケットを回転させ、トラックシュ25を駆動させて、この車両(建設機械)を走行させる。また、PTO22により駆動されるファンポンプ15の吐出油によりファンモータ26を回転する。
【0017】
図1に示すように、上記冷却装置8は、冷却ファン12を回転駆動させるためのファン駆動回路9を含む。ファン駆動回路9は、エンジン7により駆動される上記油圧ポンプ(ファンポンプ)15と、この油圧ポンプ15から供給される作動油により作動される上記油圧モータ(ファンモータ)26と、油圧ポンプ15と油圧モータ26との間に介設される電磁切換弁27等を備える。すなわち、エンジン7の駆動により、可変容量型の油圧ポンプ15が駆動し、この油圧ポンプ15から吐出された圧油が管路28を経由して電磁切換弁27の入力ポートに流入し、この電磁切換弁27から油圧モータ26に供給される。油圧モータ26からの戻り油は、電磁切換弁27、管路29を経由してオイルクーラ11に入り、このオイルクーラ11で冷却されて管路31を通って作動油タンク32に戻る。なお、管路28、29の間には、油圧ポンプ15及び油圧モータ26の停止時に慣性で回転する油圧モータ26の油を循環させるチェック弁33が接続されている。また、油圧モータ26の出力軸には冷却ファン12が取付けられて、この油圧モータ26の出力軸26の駆動で冷却ファン12が回転する。
【0018】
そして、作動油タンク32には、作動油の温度を検出する作動油温度センサ34が設けられ、その検出値がコントローラ35に入力される。油圧ポンプ15は、サーボ弁15bの作動により出力容量が制御されて吐出量を変化させる。この吐出量により、冷却ファン12の回転数が制御される。電磁比例弁15cは、コントローラ35からの指令電流値に応じたパイロット圧をサーボ弁15bに出力し、サーボ弁15bはこのパイロット圧に基づいて油圧ポンプ15の傾転角を制御する。そして、上記電磁切換弁27は2位置弁であり、コントローラ35からの電流指令信号によりA位置、B位置に切換って出力流量及びその方向を制御し、これによって、冷却ファン12の回転方向を制御している。
【0019】
また、作業機4は図示省略の作動機駆動用回路にて作動する。作動機駆動用回路は、エンジン7の駆動にて駆動する可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプからの圧油がコントロールバルブを介して供給される油圧シリンダ等を備える。すなわち、油圧ポンプから吐出した圧油がコントロールバルブを介して油圧シリンダに供給され、この油圧シリンダの伸縮により、作業機4が作動する。また、油圧シリンダからの戻り油は、上記コントロールバルブ等を介してオイルクーラ11に入り、このオイルクーラ11で冷却されて管路31を通って作動油タンク32に戻る。
【0020】
エンジン7の水ポンプ7aから流出した冷却水は、往路36aと通ってラジエータ10に入り、このラジエータ10で冷却され、復路36bを通ってエンジン7のウォータジャケット7bに戻る。そして、ラジエータ10の往路36aには、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ38が設けられ、エンジン7には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ39が設けられている。そして、冷却水温度センサ38にて検出された冷却水温度、及びエンジン回転数センサ39にて検出されたエンジン回転数等は上記コントローラ35に入力される。
【0021】
ところで、上記コントローラ35は、マイクロコンピュータや数値演算プロセッサ等の演算処理装置を主体にして構成されており、後述する各種のデータを記憶する記憶部を有している。また、このコントローラ35には、冷却ファン12の回転方向を切換えるための手動式切換スイッチ40が設けられ、この切換スイッチ40を操作して、正回転と、逆回転と、逆回転であって、ファン回転数を最大回転数とする清掃モードとの切換を行うことができる。すなわち、切換スイッチ40とコントローラ35と電磁切換弁27等にて、冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを行う切換手段42を構成している。なお、手動式切換スイッチ40としては、押し釦式やダイヤル式等の種々の方式を使用することができる。また、この切換スイッチ40が配置される操作パネル41(図1参照)は運転室3に設けられ、この運転室3内のオペレータの切換スイッチ操作を可能としている。
【0022】
そして、コントローラ35の記憶部には、冷却水温度Twに基づく目標ファン回転数Nw、作動油温度Toに基づく目標ファン回転数No、エンジン回転数Eに基づく上限目標ファン回転数Ne等が記憶されている。冷却水温度Twに基づく目標ファン回転数Nwは、図7に示すような冷却水温度Twと目標ファン回転数Nwとの関係を示すグラフから設定でき、作動油温度Toに基づく目標ファン回転数Noは、図8に示すような作動油温度Toと目標ファン回転数Noとの関係を示すグラフから設定でき、エンジン回転数Eに基づく上限目標ファン回転数Neは、図9に示すようなエンジン回転数Eと上限目標ファン回転数Neとの関係を示すグラフから設定できる。なお、これらのグラフは実験等にて作成される。
【0023】
また、図10は、冷却水温度Tw及び作動油温度Toが所定低温度Tc以下の時の目標ファン回転数Ncを示し、図11は、目標ファン回転数Nに対する目標ポンプ容量Dpと電磁比例弁15cへの指令電流値Iとの関係を示している。そして、これら図10と図11のこれらのデータも、実験等にて作成されてコントローラ35の記憶部に記憶されている。
【0024】
ところで、上記建設機械によれば、冷却ファン12を正回転させれば、冷却ファン12からの冷却風が、図1の矢印Xの方向に吹き出してエンジルーム6から外部へ排出される。このため、この正回転では、この冷却風をオイルクーラ11及びラジエータ10に送って、作動油及び冷却水を冷却することができる。そして、外気温度が低い場合には、冷却ファン12を逆回転させることにより、冷却ファン12にて上記矢印Xと反対方向に冷却風を吸い込んで、この冷却風をラジエータ10を通過させることによって、温風としてこの温風でオイルクーラ11内の作動油を暖める暖気運転を行う。すなわち、暖気運転を行うことによって、エンジン7側に温風を送って、オイルクーラ11の作動油を暖め、次にエンジン7を通過することによって、エンジン7のエネルギーを回収して、さらにこの温風が暖められ、その温風にて、動力伝達系Pや作動機駆動回路を循環する作動油、さらには作動油タンク32内の作動油を暖めることができる。しかも、温風が運転室3にも送られることになって、運転室3をわずかながら暖めることができる。
【0025】
また、冷却ファン12は正回転させても逆回転(清掃モードを省く逆回転)させても、上記冷却器を流れる冷却水等の流体の温度に応じて上記冷却ファン12の回転数を制御して、冷却器の冷却高効率化運転となる負荷連動運転を行うようにしている。この場合、エンジン回転中における上記冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えを不能とする切換禁止手段43を備えている。そして、この切換禁止手段43は上記コントローラ35にて構成している。
【0026】
すなわち、図3に示すように、上記切換スイッチ40を操作して、モード(正回転モード、逆回転モード)を選択すれば、その切換信号がコントローラ35に入力され、ファンモータ(油圧モータ)26に対しては電磁切換弁27の切換えに応じてファン回転方向が制御され、ファンポンプ(油圧ポンプ)15に対してはファン回転数が制御される。この際、図4に示すように、エンジン回転中であれば、上記切換スイッチ40を操作して、ファン回転方向を変更しようとしても変更することができない。
【0027】
例えば、切換スイッチ(モード選択スイッチ)40を操作した場合、コントローラ35では、スイッチ状態の認識を行って、ステップS21で現在の回転方向に対して回転方向がかわるか否かの判断を行う。そして、ステップS21で回転方向が変わらないならば、ステップS22へ移行してそのままの状態を維持させる信号をファン駆動回路9に送信し、ステップS21で回転方向が変わるものであれば、ステップS23へ移行して、エンジン7が回転中か否かを判断する。ステップS23でエンジン7が回転中であれば、ステップS24へ移行して反転不能(切換不能)とする。また、ステップS23でエンジン7が回転中でなければ、つまり停止していれば、ステップS25へ移行して、上記切換スイッチ40の切換えに応じて切換えを行う信号をファン駆動回路9に送信する。そして、ステップS24で反転不能とした後は、ステップS26及びステップS27へ移行する。ステップS26では、ステップS22と同様、そのままの状態を維持させる信号をファン駆動回路9に送信し、ステップS27では、図1に示すように、操作パネル41の設けられるランプ45を点灯することによって、切換不能である旨をオペレータに知らせる。すなわち、ランプ45が切換不能である旨を表示する表示手段46を構成することになる。
【0028】
次に、図6等を使用して正回転時と逆回転(清掃モードを省く逆回転)時における負荷連動運転を説明する。まず、ステップS1のように、冷却水温度センサ38により検出した冷却水温度Twに対応する目標ファン回転数Nwを上記図7に示すグラフのテーブル等から求める。また、ステップS2のように、作動温度センサ34により検出した作動油温度Toに対応する目標ファン回転数Noを上記図8に示すグラフのテーブル等から求める。次にステップS3へ移行して、冷却水温度Twに対応する目標ファン回転数Nwと、作動油温度Toに対応する目標ファン回転数Noとを比較して、大きい方を選択する。これは、冷却水温度Tw及び作動油温度Toが共に所定値以下の温度となるようなファン回転数を設定するためである。
【0029】
その後は、ステップS4へ移行して、エンジン回転数センサ39により検出したエンジン回転数Eに対応する上限目標ファン回転数Neを図9に示すグラフのテーブル等から選択して、ステップS5で、エンジン回転数Eに対応する目標ファン回転数Neと、上記ステップS3で選択した目標ファン回転数とを比較して、小さい方を選択する。そして、ステップS6で、冷却水温度Twと作動油温度Toとが所定温度以下の場合に対する目標ファン回転数Ncを図10に示すグラフのテーブル等から選択して、ステップS7で、ステップS6で選択した目標ファン回転数と、ステップS5で選択した目標ファン回転数とを比較して、大きい方を選択する。これを最終の目標ファン回転数として選択することになる。
【0030】
次に、ステップS8で、ステップS7において選択した目標ファン回転数に対する目標ポンプ容量Dpを求める。この場合、この目標ポンプ容量Dpは、次の数1の数式から求めることができる。
【0031】
【数1】
【0032】
そして、ステップS9で、数1にて求めた目標ポンプ容量Dpに対応した電磁比例弁15cへの指令電流値I1を図11に示すグラフのテーブル等に基づいて求める。ステップS10で、ステップS9で求めた指令電流値I1をコントローラ35から電磁比例弁15cに出力する。これにより、冷却ファン12の回転数は、冷却水温度Tw、作動油温度To、及びエンジン回転数Eに応じて各目標ファン回転数Nw、No、Ne、Ncのいずれかの回転数に制御される。
【0033】
ところで、図7に示すように、冷却水温度Twに対する回転数Nwは所定の水温制御範囲(例えば、80℃から100℃)において、0から最大回転数Nmaxまで略線形に増加しており、また、図8に示すように、作動油温度Toに対する回転数Noは所定の油温制御範囲(例えば、80℃から110℃)において、0から最大回転数Nmaxまで略線形に増加しており、さらに、図9に示すように、エンジン回転数Eに対応する目標ファン回転数Neは、所定回転数(例えば、1500rpm)までは最大回転数Nmaxに向けて略線形に増加し、所定回転数以上では最大回転数Nmaxで制限される。
【0034】
従って、冷却水温度Tw及び作動油温度Toがそれぞれ所定の水温制御範囲(例えば、80℃から100℃)及び油温制御範囲(例えば、80℃から110℃)内の値のときに、所定エンジン回転数以上になると、ファン回転数は、エンジン回転数から求まる上限目標ファン回転数Neよりも小さい値となるように選択される。この際、冷却水温度Tw又は作動油温度Toのいずれか大きいほうが、所定低温度Tc(例えば、80℃)未満である場合に対する目標ファン回転数Nc(例えば、10rpm)よりも大きいので、この大きい方の回転数が選択される。このため、所定エンジン回転数以上のときの目標ファン回転数Nの上限値は、図12に示すような冷却水温度Twに応じた目標ファン回転数Nw、あるいは、作動油温度Toに応じた目標ファン回転数Noにそれぞれ設定される。なお、所定エンジン回転数未満のときには、エンジン回転数Eから求まる目標ファン回転数Neのほうが、ステップS3で選択された回転数よりも小さいので、この目標ファン回転数Neが設定される。
【0035】
また、冷却水温度Tw及び作動油温度Toが徐々に上昇した場合、上記ステップS3にて選択された目標ファン回転数Nw又は目標ファン回転数Noが最大目標ファン回転数(例えば、988rpm)になっても、所定のエンジン回転数Es以上ではこの最大目標ファン回転数よりも上限目標ファン回転数Neが小さくなるように設定されている。したがって、冷却水温度Tw又は作動油温度Toが所定最高温度に達し、かつエンジン7が所定のエンジン回転数Es以上のときには、目標ファン回転数Nは上限目標ファン回転数に設定される。すなわち、冷却水温度Twをパラメータとすると、冷却水温度Tw又は作動油温度Toが所定の最高温度に達するまでは、目標ファン回転数は図12に示すように、冷却水温度Tw又は作動油温度Toに応じた目標ファン回転数に制限され、冷却水温度Tw又は作動油温度Toが所定の最高温度に達したら、所定のエンジン回転数Es以上では上限目標ファン回転数Neに制限される。なお、作動油温度Toをパラメータとしても、ファン回転数はこのように制限される。
【0036】
このように、負荷連動運転を行えば、ファン回転数Nは、エンジン回転数Eの変化にかかわらず、冷却水温度Tw又は作動油温度Toに応じて所定の回転数以下に制御されるので、エンジン負荷が大きくなりエンジン回転数Eが低下しても、またエンジン負荷が小さくなりエンジン回転数Eが上昇しても、ファン回転数Nはほぼ一定に制御される。これによって、冷却器の冷却能力の低下や、逆に過冷却による不必要なエネルギーの消費がなく、効率的な冷却が可能となる。また、過剰な高速でのファン回転が無くなって、冷却ファン12の騒音低減を達成できると共に、ファン駆動エネルギーの増大に見合う冷却能力の増加が得られ、冷却器に対して効率的な冷却が可能となる。さらに、冷却ファン12を必要充分な回転数以上としないので、エンジン負荷を軽減して、作業機4による作業に必要なエンジン出力に余裕を持たせることができる。
【0037】
そして、冷却水温度Tw及び作動油温度Toが所定低温度(例えば、80℃)以下では、冷却水温度Twに基づく目標ファン回転数Nw及び作動油温度Toに基づく目標ファン回転数Noが0rpmに設定されるので、上記図6のステップS7では、低回転の目標ファン回転数Ncが選択される。すなわち、冷却水温度Tw及び作動油温度Toが所定低温度以下では、冷却能力の無い程度の回転とされる。
【0038】
ところで、上記建設機械では、暖気運転を行いつつ、この建設機械の走行や作業機4による作業を行うことができる。このため、外気温度が極めて低い寒冷地等において、この建設機械を使用すれば、暖気運転を行うことによって、エンジン7側に温風を送って、オイルクーラ11の作動油を暖め、次にエンジン7を通過することによって、エンジン7のエネルギーを回収して、さらにこの温風が暖められ、その温風にて、動力伝達系Pや作動機駆動回路を循環する作動油、さらには作動油タンク32内の作動油を暖めることができる。これによって、正回転時に比べて効率向上を達成でき、外気温度が極めて低い寒冷地等においても、走行や作業機4による作業を安定して行うことができる。しかも、温風が運転室3にも送られることになって、運転室3をわずかながら暖める効果もある。
【0039】
また、エンジン停止中においては、切換手段42にて冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えを行うことができるので、この切換えを簡単かつ確実に行うことができ、切換操作性の向上を図ることができる。さらに、切換禁止手段43にて、エンジン回転中における冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えを不能とするので、冷却ファン12のショック等を防止でき、特に、冷却ファン12のファン駆動回路9が油圧回路であるので、切換えによる油圧回路内のピーク圧の発生を回避することができ、油圧機器等の故障を防止して、ファン駆動の信頼性を向上することができる。また、エンジン回転中のファン停止がなくなるので、オペレータ等に対して、冷却ファンのファン駆動回路等が故障したのではないかとの不安感を与えることがなくなって、オペレータ等に対する冷却ファンの作動信頼感を確保することができる。さらに、停止後の突然の予期しないファン回転が規制されるので、安全性に優れたものとなって、予期しないファン回転のための防護対策を必要とせず、コスト高を招くことがない。このように、エンジン回転中のファン停止をなくすことによって、作業上の利便性を多少は犠牲にしながらも、作業信頼感及び安全性を確保した。
【0040】
さらに、上記建設機械では、使用上の利便性の向上を図るために、手動式切換スイッチ40を設けているが、この場合、エンジン回転中における冷却ファンの正回転と逆回転との切換えが禁止されており、オペレータが誤操作しても回転方向が切換らないので、安全性の向上を確保することができる。さらに、オペレータ等がエンジン回転中に手動式切換スイッチ40の切換操作を行ったときには、表示手段46にて切換不能である旨が表示される。これにより、オペレータ等が現在において、冷却ファン12の正回転と逆回転との切換えが行えない状態であって、誤操作したと確認することができ、切換らないことによる不安感を確実に回避することができる。
【0041】
ところで、オイルクーラ11及びラジエータ10には、ごみ等が付着するおそれがあるが、上記冷却ファン12を正回転させれば、冷却ファン12からの冷却風を図1の矢印Xの方向に吹き出して、オイルクーラ11及びラジエータ10に付着しているごみ等のうち、反冷却ファン側のごみ等は吹き飛ばすことができる。この場合、冷却ファン側のごみ等は吹き飛ばすことは困難である。そこで、冷却ファン12を逆回転となる清掃モード(逆回転であって、ファン回転数が最大となるモード)とすれば、上記矢印Xと反対方向に冷却風を吸い込んで、この冷却風をラジエータ10及びオイルクーラ11を通過させ、これによって、ラジエータ10及びオイルクーラ11に付着しているごみ等のうち、正回転において吹き飛ばされないものを、この逆回転により吹き飛ばすことができる。しかも、清掃モードのファン回転数が最大回転数であるので、ごみ吹き飛ばし性に優れ、冷却器に付着するごみ等を確実に除去することができる。これによって、冷却器能力の低下を防止することができる。このように、冷却ファン12を逆回転させる場合、暖気運転モードと、清掃モードとの2つのモードがあり、これを使い分けることによって、使用上の利便性の向上を図ることができる。
【0042】
以上にこの発明の建設機械の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、切換不能である旨を表示する表示手段46としては、ランプ45の点灯以外に、音(例えばブザー音)によるものであってもよく、この場合、音のみであっても、音とランプの点灯との組み合わせであってもよい。また、この建設機械としては、ブルドーザ以外のホイールローダや油圧ショベル等の種々の建設機械であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の建設機械の実施形態を示すファン駆動回路図である。
【図2】上記建設機械の簡略図である。
【図3】上記建設機械のファン切換時の制御を示すブロック図である。
【図4】上記建設機械の切換禁止状態の制御を示すフローチャート図である。
【図5】上記建設機械の全体側面図である。
【図6】上記建設機械の制御フローチャート図である。
【図7】冷却水温度と目標ファン回転数との関係図である。
【図8】作動油温度と目標ファン回転数との関係図である。
【図9】エンジン回転数と上限目標ファン回転数との関係図である。
【図10】冷却水温度及び作動油温度が所定低温度以下の時の目標ファン回転数を示す図である。
【図11】目標ポンプ容量と電磁比例弁への電流値との関係図である。
【図12】冷却水温度に対するエンジン回転数とファン回転数との関係図である。
【図13】従来の建設機械のファン駆動回路図である。
【符号の説明】
7 エンジン
8 冷却装置
10 ラジエータ
12 冷却ファン
40 手動式切換スイッチ
46 表示手段
Claims (3)
- エンジンの冷却水等の流体を冷却するラジエータ等の冷却器と、この冷却器に冷却風を供給する冷却ファンとを有する冷却装置を備えた建設機械であって、上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを可能とすると共に、エンジン回転中における上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを不能とする切換禁止手段を備えたことを特徴とする建設機械。
- 上記冷却ファンの正回転と逆回転との切換えを行う手動式切換スイッチを設けたことを特徴とする請求項1の建設機械。
- エンジン回転中に上記手動式切換スイッチの切換操作を行ったときに、切換不能である旨を表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項2の建設機械。
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