JP2004197060A - オフセットインキ用湿潤レーキ顔料の製法 - Google Patents

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Toshiji Shimada
利治 島田
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Abstract

【課題】耐水性が比較的弱いアゾレーキ顔料、染付レーキ顔料の粒子表面に疎水性皮膜を形成させることにより、オフセット印刷における乳化耐性、分散性が向上させた顔料の製造方法を提供することである。
【解決手段】顔料粒子表面に第一段階として石油樹脂とヨウ素価130以下の植物油を含有する油性被覆剤のO/Wエマルジョンで処理し、第二段階としてさらに油性被覆剤処理をおこない、顔料の一次粒子を湿潤化させることにより、粒子表面を親油性の被覆を行い、顔料の乳化耐性を向上することが出来る。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセットインキ用として有用なアゾレーキ顔料、染色レーキ顔料の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、印刷時の乳化耐性、分散性を向上せしめたアゾレーキ顔料、染付レーキ顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフセットインキは印刷機上で湿し水に乳化された状態で印刷が行われる。そのため、常に顔料粒子表面が湿し水の影響を受け、印刷機上で乳化にまつわるトラブルを起こしやすい。アゾレーキ顔料は水溶性のアゾ染料を金属により不溶化した顔料であり、染付レーキは塩基性染料を有機酸や無機酸を沈殿剤として不溶化した顔料である。これらのレーキ顔料は構造中に水可溶性基を持つため、耐水性が弱い傾向があり、フタロシアニン系顔料やジスアゾ系顔料等と比べて乳化にまつわるトラブルを起こしやすい欠点がある。
【0003】
また、これらのレーキ顔料は乾燥工程等において非常に硬い凝集を起こすため、その後、強力な分散・練肉に於いても一次粒子まで分散させることは難しい。
そのため、顔料ペーストを有機媒体と混練させ、顔料粒子を水相から有機媒体相に相転移させるフラッシングをいう方法が広く利用されている。また、顔料の分散性を向上させるために、スプレードライなどの機械的処理も一般的に行われている。
【0004】
顔料の一次粒子の表面を疎水性被覆剤で均一に処理することにより、これらの問題を解決する試みが為されている。顔料の一次粒子はきわめて微細なものであるため、粒子表面に被覆剤をいかに有効に被覆せしめるかが重要である。特公昭60−35375では、一次粒子表面を界面活性剤処理した後、疎水性液体を処理して湿潤顔料化している。この方法では、疎水性液体の被覆させる為に必要な前処理としての界面活性剤処理量が比較的多く必要であり、インキにした場合、それらの界面活性剤が印刷適性に問題となりやすい。また、特開2001−261994では、石油樹脂を含む樹脂溶液のO/Wエマルジョンで被覆を行い、オフセット印刷における水巾改良を報告している。この方法では、顔料表面に撥水性の連続膜が形成され、乳化適性及び分散性向上の効果を示す。しかしながら、安定なエマルジョンを形成させるために界面活性剤を使用しているため、界面活性剤が印刷適性に影響を与えないようにする為にはエマルジョンの処理量が制限されてしまい、表面積が大きい粒子に対し効果が不十分な場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
オフセットインキは常に印刷機上で湿し水と接触し、乳化された状態になっている為、耐水性が比較的弱いアゾレーキ顔料、染付レーキ顔料は印刷時に乳化によるトラブルを起こしやすい。そこで、乳化耐性を上げた顔料が望まれていた。
そこで、本発明は、印刷時の乳化耐性、分散性を向上せしめたアゾレーキ顔料、染付レーキ顔料の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究の結果、合成後の顔料スラリーに第一段階として石油樹脂とヨウ素価130以下の植物油を含有する油性被覆剤のO/Wエマルジョンで処理し、第二段階としてさらに油性被覆剤の直接処理をおこない、顔料の一次粒子を湿潤化させることにより、従来技術の問題点が解決されることを見いだした。第一段階のエマルジョン処理により、顔料粒子表面が疎水性化しているため、第二段階の被覆剤も効率よく吸着させることができ、粒子表面の被覆を完全に行うことができる。また、二段階に分けることにより、活性剤の使用量を必要最小限に抑え、被覆剤の量を目的、顔料の種類に応じて調整することができる。
【0007】
本発明では顔料の一次粒子表面に均一な疎水性被覆を形成することにより、顔料の乳化耐性向上を為し得た。また、顔料の一次粒子表面を顔料製造時に被覆することにより、顔料の分散性も向上した。顔料の分散性は、凝集との関連が特に大きいが、一次粒子表面に被膜を形成したため粒子の凝集を抑え、分散性も向上する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアゾレーキ顔料とは、カーミン6B、パーマネントレッド2B、レーキレッドC等が挙げられる。染付レーキ顔料とはローダミンB、メチルバイオレット等をタンニン酸等の有機酸、並びに、燐タングステン酸・燐モリブデン酸等の無機酸で顔料化したものが代表的なものである。本発明における湿潤化された顔料の形状としては、水分を含んだペースト、乾燥をしたパウダーを含むものをする。本発明で得られる乳化耐性及び分散性の改善は顔料の形状とは関係なく得られる。処理を行う顔料スラリー濃度は特に制限は無いが、常法で合成した顔料スラリーを使用するため、通常顔料濃度1〜4%として存在する。
【0009】
本発明に使用される湿潤被覆剤としては、石油樹脂とヨウ素価130以下の植物油を含有する油性液体を使用する。石油樹脂は、石油系炭化水素の重合によって得られる石油樹脂、又は石油樹脂を変性した変性石油樹脂を指す。単独でも混合でも問題なく使用できる。ヨウ素価が130以下の植物油とは、一般には半乾性油、不乾性油と呼ばれるもので、亜麻仁油、大豆油・サフラワー油・ナタネ油・ヒマシ油等が代表的なものであり、変性したものや、2種以上の混合でも問題なく使用できる。乾性油と呼ばれるヨウ素価が高い植物油を使用した場合、酸化重合してしまい、本発明における効果が十分に得られない場合がある。被覆剤を必要に応じて他の物質、例えば石油系炭化水素溶剤等で粘度のコントロールをすることは可能である。被覆剤の粘度が高すぎるとエマルジョンの形成や第二段階での直接処理が難しくなる傾向があり、100ポイズから600ポイズが使用しやすい傾向にある。被覆剤の使用量は、顔料の一次粒子を湿潤化させるのに必要な最小量以上が必要であるが、使用量が少ないと湿潤効果が小さく、多すぎると被覆剤が湿潤顔料に吸着できず流出してしまうので、第一段階、第二段階を合わせた被覆剤全体で顔料に対して20%から200%が望ましい。
【0010】
本発明に使用するO/Wエマルジョンを作るには、活性剤が必要であるが、エマルジョンを作る能力があり、且つ、オフセット適性のある物であれば特定の物に限定する必要はない。一般にアニオン系、カチオン系、ノニオン系活性剤が利用出来る。活性剤の使用量は種類により異なるが、顔料に対し0.5%から3%が望ましい。
【0011】
第二段階の処理は油性被覆剤を噴射処理、滴下あるいはその他の方法によって直接添加することができる。この操作時の温度は適宜選択できるが、常温から100℃、好ましくは60℃から90℃である。
【0012】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。例中、特に断りの無い限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0013】
〈実施例1〉
パラトルイジンメタスルホン酸100部を常法によりジアゾ化し、次いでβオキシナフトエ酸100部と常法によりカップリング反応をさせる。このカップリング反応で得られた染料溶液に5%ロジン石けん450部を添加した後、25%塩化カルシウム水溶液380部を添加してレーキ化を行い、顔料分2%のスラリーを得た。この顔料スラリーに油性液体20部と活性剤(アセタミン86)2部からなるW/Oエマルジョンの添加処理を行い、85℃まで昇温させる。更に上記油性液体180部を噴射処理にて添加し、30分間熟成させる。濾過、水洗し、本発明のアゾレーキ化合物のペースト(本発明顔料1)を得た。油性液体は変性石油樹脂(日石ネオポリマー130)100部とサフラワー油80部、石油系炭化水素溶剤(スピンドル油)20部を溶解してつくった。
【0014】
〈比較例1〉
上記実施例1でW/Oエマルジョンと油性液体を添加しないほかは、実施例1と同一条件及び同一操作でアゾレーキ化合物(比較顔料1)を得た。
【0015】
〈試験例1〉
実施例1及び比較例1についてそれぞれテストフラッシャーと3本ロールミルにより同一条件でインキ化を行った。インキ処方は顔料18%となるように調整した。このインキを用い印刷テストを行った。印刷機は小森スプリントII単色機を使用した。評価としては標準として比較顔料のインキを用い、乳化により転移性が悪くなる印刷条件で印刷テストを行った。即ち、湿し水過剰での印刷条件における印刷効果を見ることにより、乳化耐性をみた。
【0016】
印刷テストにおいて実施例1は比較例1が印刷出来ない条件において良好な印刷物を得ることが出来た。これは顔料表面の撥水性により乳化耐性が向上していることを示す。尚、通常の印刷条件における比較においても実施例1の印刷物は比較例1の印刷物より光沢が良好であった。
【0017】
〈実施例2〉
上記実施例1を乾燥し、本発明のアゾレーキ化合物のパウダー(本発明顔料2)を得た。
【0018】
〈比較例2〉
上記比較例1を乾燥し、アゾレーキ化合物のパウダー(比較顔料2)を得た。
【0019】
〈実施例3〉
ローダミン染料100部を溶解し、コンプレックスアシッドで顔料化する。この顔料スラリーに20部の油性液体と活性剤2部からなるW/Oエマルジョンの添加処理を行い、70℃まで昇温させる。更に上記油性液体100部を噴射処理にて添加し、30分間熟成させる。濾過、水洗し、80℃乾燥し、本発明の染付レーキ化合物のパウダー(本発明顔料3)を得た。
【0020】
〈比較例3〉
上記実施例3でW/Oエマルジョンと油性液体を添加しないほかは、実施例3と同一条件及び同一操作で染付レーキ化合物のパウダー(比較顔料3)を得た。
【0021】
〈試験例2〉
実施例2、3及び比較例2、3についてそれぞれ3本ロールミルにより同一条件でインキ化を行った。ロールを1回通したインキをグラインドメーターで測定し、分散性を確認した。グラインドメーターはJIS、K5701平版インキ及び凸版インキの試験方法に基づいて使用した。分散性はグラインドメーターリーディング(以下GRと記す)の数値が小さいほど、分散性が良いことを意味する。インキ処方は顔料18%となるように調整した。試験例1と同様の印刷試験を行った。
【0022】
分散性テストの結果、実施例2はGR2、比較例2はGR5。実施例3はGR4、比較例3はGR8となった。実施例はいずれも分散性が向上していることを示す。また、印刷テストにおいても実施例1と同様、乳化適性の向上が確認された。
【0023】
【発明の効果】
本発明の湿潤アゾレーキ顔料及び湿潤染付レーキ顔料は、顔料製造時に顔料粒子表面を石油樹脂と植物油を含有する油性液体のO/Wエマルジョンで処理した後、さらに油性液体を処理することからなり、2段階の処理により顔料の一次粒子表面を有効に処理することによりインキ化時の分散性が非常に良好であると同時に、できたインキの乳化耐性が良好である結果を示した。

Claims (2)

  1. 顔料製造時に顔料粒子表面を石油樹脂とヨウ素価130以下の植物油を含有する油性液体のO/Wエマルジョンで処理した後、さらに油性液体を処理することを特徴とするオフセットインキ用湿潤アゾレーキ顔料。
  2. 顔料製造時に顔料粒子表面を石油樹脂とヨウ素価130以下の植物油を含有する油性液体のO/Wエマルジョンで処理した後、さらに油性液体を処理することを特徴とするオフセットインキ用湿潤染付レーキ顔料。
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