JP2004192811A - 電子源及び画像形成装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】素子端部の断面形状を、素子端部の下に形成された犠牲層を除去することで切り立たせ、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない電子源を有する画像形成装置及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】素子電極間に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、この素子電極間に金属元素を含む容液の液滴を液滴状態で付与し、この液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成し、その後に犠牲層を除去する。
【選択図】 図1
【解決手段】素子電極間に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、この素子電極間に金属元素を含む容液の液滴を液滴状態で付与し、この液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成し、その後に犠牲層を除去する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子、電子源基板、及び画像形成装置の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(以下FE型素子と略す)、金属/絶縁層/金属型素子(以下MIM素子と略す)、表面伝導型電子放出素子(以下SCE素子と略す)等がある。
【0003】
これら技術について本出願人による先行技術の一部を紹介すると、素子をXYマトリクス形状に配置した例として、特開昭64−031332号公報、特開平07−326311号公報に詳述されている。
【0004】
配線形成方法に関しては特開平08−185818号公報や、特開平09−050757号公報に、駆動方法については特開平06−342636号公報等に詳述されている。
【0005】
これらの表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成として前述のM.ハートウェルの素子構成を、図5に示した模式図をもとに説明する。
【0006】
図5において1はガラス等からなる基板であり、その大きさおよびその厚みは、その上に設置される電子放出素子の個数、および個々の素子の設計形状、および電子源の使用時に容器の一部を構成する場合には、その容器を真空に保持するための耐大気圧構造等の力学的条件等に依存して適宜設定される。
【0007】
ガラスの材質としては、廉価な青板ガラスを使う事が一般的であるが、この上にナトリウムブロック層として、厚さ0.5μmのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板等を用いる必要がある。この他にナトリウムが少ないガラスや、石英基板でも作成可能である。
【0008】
また素子電極2、3の材料としては、一般的な導体材料が用いられ、例えばNi、Cr、Au、Mo、Pt、Ti等の金属やPd−Ag等の金属が好適であり、あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体や、ITO等の透明導電体等から適宜選択され、その膜厚は、好ましくは数十nmから数μmの範囲が適当である。
【0009】
この時の素子電極間隔L、素子電極長さW、素子電極2、3の形状等は、実素子が応用される形態等に応じて適宜設計されるが、間隔Lは好ましくは数百nmから1mmであり、より好ましくは素子電極間に印加する電圧等を考慮して1μmから100μmの範囲である。また、素子電極長さWは、好ましくは電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲である。
【0010】
さらにこの素子電極には、市販の白金Pt等の金属粒子を含有したペーストを、オフセット印刷等の印刷法によって塗布形成する事も可能である。
【0011】
またより精密なパターンを得る目的で、白金Pt等を含有する感光性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷法で塗布し、フォトマスクを用いて露光、現像するという工程でも形成可能である。
【0012】
この後、素子電極2、3を跨ぐ形で、電子源となる導電性薄膜4を作成する。
【0013】
導電性薄膜としては、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜が特に好ましい。またその膜厚は、素子電極2、3へのステップカバレージ、素子電極間の抵抗値、および亀裂部を形成するフォーミング処理条件等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは数nmから数百nmであり、特に好ましくは5nmから50nmの範囲とするのが良い。
【0014】
この導電性薄膜の新規な形成方法として、例えば特開平9−69334号公報に開示するような、液滴付与装置を用いる方法がある。この方法では、導電性膜形成溶液を液滴の状態で付与し、乾燥又は過熱焼成して導電性膜を得る。当該方法は、パターニング工程を行うことなく導電性薄膜を形成することができるため、大面積基板に多数の導電性薄膜を形成する際に非常に有効な手段である。
【0015】
本出願人らの研究によると導電性膜材料には、一般にはパラジウムPdが適しているが、これに限ったものではない。ここでは有機パラジウム溶液を塗付後、焼成して酸化パラジウムPdO膜を形成する方法を選んだ。その後水素が共存する還元雰囲気下で通電加熱し、パラジウムPd膜とし、同時に亀裂部を形成した。これが電子放出部5を形成することになる。
【0016】
尚、図示の便宜から、導電性薄膜は、平面形状、断面形状とも矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電導電性薄膜平面形状及び断面形状を忠実に表現しているわけではない。
【0017】
又、電子放出部5においても、導電性薄膜4の中央に矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0018】
該導電性薄膜を形成後、フォーミングと呼ばれる工程に於いて、上記素子膜を通電処理して内部に亀裂を生じさせ、電子放出部を形成する。
【0019】
具体的な方法は、上記基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部からXY配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電する事によって、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部を形成する。
【0020】
この時若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で通電加熱すると、水素によって還元が促進され酸化パラジウムPdOがパラジウムPd膜に変化する。この変化時に膜の還元収縮によって、一部に亀裂が生じる。
【0021】
多数の素子の特性ばらつきを抑えるのに、上記亀裂は中央部に起こり、かつなるべく直線状になることが望ましい。
【0022】
なおこのフォーミングにより形成した亀裂付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、現状の条件ではまだ発生効率が低い。
【0023】
また得られた導電性薄膜4の抵抗値Rsは、102から107Ωの値である。
【0024】
フォーミング処理に用いた電圧波形について簡単に紹介する。
【0025】
図7にこの説明図を示す。
【0026】
印加した電圧はパルス波形を用いたが、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合(図7−a)と、パルス波高値を増加させながら印加する場合(図7−b)とがある。
【0027】
図7−aに於いて、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1msec〜10msec、T2を10msec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は適宜選択する。
【0028】
図7−bでは、T1及びT2の大きさは同様にとり、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)を、例えば0.1Vステップ程度ずつ増加させる。
【0029】
なお、フォーミング処理の終了は、フォーミング用パルスの間に、導電性膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧、例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、抵抗値を求め、例えばフォーミング処理前の抵抗に対して1000倍以上の抵抗を示した時点で、フォーミングを終了とした。
【0030】
先に述べたように、この状態では電子発生効率が低いため、電子放出効率を上げるために、上記素子に活性化と呼ばれる処理を行うことが望ましい。
【0031】
この活性化処理は有機化合物が存在する適当な真空度のもとで、前記のフォーミングと同様にフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部からXY配線を通じてパルス電圧を素子電極に繰り返し印加することによって行う。そして炭素原子を含むガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を、前記亀裂近傍にカーボン膜として堆積させる工程である。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の液滴付着装置を用いて作られた導電性薄膜は、その断面形状が前記液滴の断面形状に依存するため、端部がなだらかな傾斜を有するものになりやすい。図6に当該方法で形成した電子放出素子の模式図を示す。図6中の番号は図5と同様であり、1は基板、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。図6(b)には、図6(a)のA−A’断面の模式図を示す。当該方法で形成した電子放出素子は、図6(b)に示すように、素子の端部に2nm以下程度の極薄膜領域が存在し、該極薄膜領域では、前述したフォーミング工程において、電子放出部である亀裂の形成がうまく進行せず、端部まで亀裂が形成されないことがある。
【0033】
前記亀裂が形成されていない領域では、素子駆動の際にオーミックな微小漏れ電流が流れることになる。
【0034】
ここで該漏れ電流の影響について説明する。
【0035】
SCE素子を用いた画像形成装置の比較的安価で単純な駆動方式の例では、駆動電圧Vに対し、走査ライン、及び選択ラインに±1/2Vを印加し、非選択ラインをGND電圧としている。
【0036】
このため、選択素子には駆動電圧Vがそのまま印加され、非選択素子には1/2Vが印加される。
【0037】
従って、非選択素子に漏れ電流が流れると選択素子の実行電圧が減少し、特に、大画面、高精細のために素子数が増加すると、漏れ電流の総和が大きくなり、各素子にかかる実行電圧が小さくなるため、画像形成装置としての充分な輝度が得られないという問題が生じる。
【0038】
なお、HDTVクラスの画像形成装置を一般的な駆動回路を用いて駆動する場合、充分な表示を得るためには、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2を電圧印加時の電流値Ifhの比If/Ifh比は1000/1以上必要と考えられている。
【0039】
しかし、前記端部に亀裂形成不良が存在する素子においては、If/Ifh比が数百/1程度と非常に悪く、画像形成装置として十分な輝度が得られないという問題があった。
【0040】
これを解決するために例えば特開2000−251667のような、該導電性膜の端部薄膜領域をレーザー等により破壊せしめる方法も提案されているが、数十万以上の電子源を有する大判画像表示装置の形成においては、より生産性の高い方法が望ましい。
【0041】
そこで本発明の目的は、素子端部の極薄膜領域を、素子端部の下に形成された犠牲層と共に除去することより、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない電子源を有する画像形成装置を歩留まり良く製造する方法および本方法で製造された画像形成装置を提供するものである。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、金属含有溶液の液滴を吐出して基板に付着させる工程を有する電子源基板の製造方法において、前記素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して導電性薄膜を形成した後に、該導電性薄膜端部の下に敷かれた犠牲層を除去する工程とによって解決される。
【0043】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(9)である。
【0044】
(1)基板上に、一対の素子電極間を連絡する導電性薄膜と、該導電性薄膜の一部に電子放出部を持つ電子放出素子が複数配列され、該電子放出素子間の配線および該素子への電圧印加端子が形成された電子源基板の製造方法であって、
該電子源基板の製造方法が、前記素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液の液滴を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成することを特徴とする電子源およびその製造方法
(2)前記導電性薄膜を形成した後、犠牲層材料を除去することを特徴とする(1)に記載の電子源およびその製造方法。
【0045】
(3)前記犠牲層が素子電極間に存在する導電性薄膜の両端部に形成されることを特徴とする(1)および(2)に記載の電子源およびその製造方法。
【0046】
(4)前記犠牲層材料を含む液滴および金属元素を含む溶液をインクジェット方式で付与することを特徴とする(1)〜(3)に記載の電子源およびその製造方法。
【0047】
(5)前記インクジェット方式が、熱エネルギーによって溶液内に気泡を形成させて該溶液を吐出する方式である(1)〜(4)に記載の電子源およびその製造方法。
【0048】
(6) 前記インクジェット方式が、力学的エネルギーによって溶液を吐出する方式である(1)〜(5)に記載の電子源およびその製造方法。
【0049】
(7)複数の吐出ヘッドを使用する(1)〜(6)に記載の電子源およびその製造方法。
【0050】
(8)前記の電子源基板を形成する際、列方向配線及び行方向配線が絶縁層を介して行列状に配置され、前記一対の素子電極の一方は前記絶縁基板上に接続して列方向配線とし、他方を絶縁層を介して接続して行方向配線としている(1)〜(7)に記載の電子源およびその製造方法。
【0051】
(9)電子源としての電子放出素子と、該素子への電圧印加手段と、該素子から放出される電子を受けて発光する発光体と、外部信号に基づいて該素子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置の製造方法であって、該電子放出素子を(1)〜(8)のいずれかに記載の方法で製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【0052】
(作用)
本発明によれば、電子源となる導電性薄膜を作成する際に、端部の極薄膜領域の存在しない導電性薄膜を作成することができるため、該導電膜にフォーミング、活性化等の処理を行い電子放出部を形成する工程において、該放出部の形成不良を防止することができ、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない良好な電子放出特性を持つ電子放出源を歩留まり良く製作することができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0054】
図1は、本発明の一実施例に係わる平面型表面伝導型電子放出素子の一例を示す模式図である。
【0055】
図1において1は基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部であり、各々の材料、構成等は、前述の特開平9−69334に開示されている。
【0056】
図1(b)は、図1(a)のAA’断面の模式図である。
【0057】
本発明における電子放出素子の断面は、図1(b)に示すように、導電性薄膜端部下の犠牲層除去工程を経る事により、端部の極薄膜領域が存在しておらず、導電性膜端部での電子放出部の形成不良を防止することができる。
【0058】
図3は本発明の製造方法における金属含有溶液を基板上に吐出して導電性薄膜を形成する工程の一例を示す模式図である。
【0059】
図3において、基板ステージ8上の基板1の上方に吐出ヘッド7が設置されており、該吐出ヘッド7に設けられた吐出ノズル9から、犠牲層材料を液滴状態で吐出し、基板1上に付着させる。なお、液滴塗布に使用する吐出ノズルは1つでも複数でも可能である。
【0060】
また、同様に基板1の上方に吐出ヘッド13が設置されており、該吐出ヘッド13に設けられた吐出ノズル14から前記金属含有溶液を液滴状態で吐出し、基板1上に付着させる。なお、液滴塗布に使用する吐出ノズルは、1つでも複数でも可能である。
【0061】
吐出ヘッド7および13には、インクジェット制御・駆動機構16が設けられており、ステージ8に設けられた位置検出機構17及びステージ駆動機構(不図示)と連動して液滴を吐出することで、基板上の目的位置に液滴を付着させることが出来る。
【0062】
これら一連の制御は、制御コンピュータ15で行う。
【0063】
なお、犠牲層材料および金属含有液滴の塗布に用いるヘッドは、液供給系の切り替え機構を設けることにより、同一のヘッドを用いることも可能である。
【0064】
本発明の特徴である犠牲層除去による導電性膜の端部形状制御について基板断面の模式図である図2(a)〜(f)用いて説明する。
【0065】
ヘッドから吐出された金属含有溶液は、該溶液中に含まれる膜形状保持剤、例えばポリビニルアルコールなどの作用により、基板上で過度に凝集・離散することなく液滴の状態を保持する。このとき、基板に付着した液滴の断面形状は該液滴を基板に付着させる工程における様々な条件の相互作用によって決定される。該条件は、例えば基板の表面状態、液滴が基板に付着した際の液滴中の溶媒揮発状態などが挙げられる。この液滴を焼成することで導電性金属膜を得るが、得られた導電性金属膜の断面形状・図2(a)は、焼成前の液滴の断面形状・図2(b)に依存するため、端部がなだらかなすそを引くことになる。このすそ引き部分が、電気的に不連続な極薄膜領域となる。
【0066】
そこで、図2(c)に示すように、あらかじめ犠牲層となる材料を含む溶液を基板上に塗布・乾燥させておいた後、図2(d)に示すように金属含有溶液を塗布する。そして焼成によって図2(e)に示す状態で導電性膜を得た後に、犠牲層を除去することで、図2(f)に示すような端部の極薄膜領域のない導電性薄膜を得ることができる。
【0067】
(実施例1)
マトリクス状に配線および素子電極を形成した基板を用い、多数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源基板を作製した。
【0068】
以下に図3、第4図を参照しながら説明する。
【0069】
1.絶縁基板1としてガラス基板を用い、有機溶剤等により充分に洗浄後、120℃で乾燥させた。該基板1上に、Pt膜を用いて電極幅500μm、電極ギャップ20μmの一対の素子電極を240列720行計172800組行列状に形成し、電極に各々配線を接続した。この配線としては、図4に示すようなマトリクス配線を採用した。
【0070】
2.前記基板をアルカリ洗浄液等にて洗浄後、シラン系撥水処理剤を用いて、表面処理を行った。
【0071】
3.その後、前記基板を図3のステージ8に吸着し、パターンの位置合せ等を行った。
【0072】
4.更に、吐出ヘッド7に犠牲層12の形成材料となる有機系のレジストをインクとして注入した。
【0073】
5.更に、吐出ヘッド13に導電性薄膜4の形成材料を含有した溶液をインクとして注入した。溶液は有機パラジウム含有溶液を使用した。
【0074】
6.次に、前述した基板1の素子電極に、ステージ8を+X方向にスキャンニングさせながら、位置検出機構17及びインクジェット制御・駆動機構16により、ノズル9に設計上の吐出タイミングで、同時に吐出信号を送って液滴を吐出し、一対の素子電極につき2個の犠牲層材料を基板上に付着させた。
【0075】
7.犠牲層材料を不図示の基板加熱機構により乾燥させ、犠牲層を形成した。
【0076】
8.次に、基板1の犠牲層を設けられた素子電極に、ステージ8を+X方向にスキャンニングさせながら、位置検出機構17及びインクジェット制御・駆動機構16により、ノズル14に設計上の吐出タイミングで、同時に吐出信号を送って液滴を吐出し、金属材料を含む溶液を塗布した。
【0077】
9.次に、350℃で30分間の加熱処理を行って、酸化パラジウム(PdO)微粒子からなる導電性薄膜4を形成した。
【0078】
10.その後、有機溶剤を用いて、犠牲層のみを基板上から除去した。
【0079】
11.さらに電極対2・3の間に電圧を印加し、導電性薄膜4に対し、フォーミング・活性化を行うことにより、電子放出部5を形成した。
【0080】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1500/1と良好であった。
【0081】
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0082】
(実施例2)
実施例1と基本的な手法は同様であるが、本実施例では酸化パラジウム微粒子の焼成を200℃で行った後に、有機溶剤を用いて犠牲層を基板上から除去し、その後に350℃の本焼成を行った。
【0083】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1500/1と良好であった。
【0084】
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0085】
(実施例3)
実施例1と基本的な手法は同様であるが、本実施例では熱分解性のレジストを用いて犠牲層を形成した。これにより、酸化パラジウムの350℃焼成時に犠牲層が同時に分解された。
【0086】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1800/1と良好であった。
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属含有溶液の液滴を吐出して基板に付着させる工程を有する電子源基板の製造方法において、素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液の液滴を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成した後に、犠牲層を除去することで、端部の極薄膜領域の存在しない導電性薄膜を作成することができるため、該導電膜にフォーミング、活性化等の処理を行い電子放出部を形成する工程において、該放出部の形成不良を防止することができ、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない良好な電子放出特性を持つ電子放出源を歩留まり良く製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により作成される電子放出素子の模式図。
【図2】本発明に関わる電子放出素子の製造方法の概念を模式的に表す説明図。
【図3】本発明に関わる電子放出素子の製造方法の一例を示す模式図。
【図4】電子放出素子を形成する製造プロセスの一例を示す模式図。
【図5】表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成を示す模式図。
【図6】従来の電子放出素子の一例を示す模式図。
【図7】フォーミング工程での電圧波形の一例。
【符号の説明】
1 基板
2、3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 絶縁膜
7 犠牲層材料吐出ヘッド
8 基板ステージ
9 犠牲層材料吐出ノズル
10 列方向配線
11 行方向配線
12 犠牲層材料液滴
13 金属含有材料塗布ヘッド
14 金属含有材料塗布ノズル
15 制御コンピュータ
16 インクジェット制御・駆動機構
17 位置検出機構
18 金属含有液滴
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子、電子源基板、及び画像形成装置の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(以下FE型素子と略す)、金属/絶縁層/金属型素子(以下MIM素子と略す)、表面伝導型電子放出素子(以下SCE素子と略す)等がある。
【0003】
これら技術について本出願人による先行技術の一部を紹介すると、素子をXYマトリクス形状に配置した例として、特開昭64−031332号公報、特開平07−326311号公報に詳述されている。
【0004】
配線形成方法に関しては特開平08−185818号公報や、特開平09−050757号公報に、駆動方法については特開平06−342636号公報等に詳述されている。
【0005】
これらの表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成として前述のM.ハートウェルの素子構成を、図5に示した模式図をもとに説明する。
【0006】
図5において1はガラス等からなる基板であり、その大きさおよびその厚みは、その上に設置される電子放出素子の個数、および個々の素子の設計形状、および電子源の使用時に容器の一部を構成する場合には、その容器を真空に保持するための耐大気圧構造等の力学的条件等に依存して適宜設定される。
【0007】
ガラスの材質としては、廉価な青板ガラスを使う事が一般的であるが、この上にナトリウムブロック層として、厚さ0.5μmのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板等を用いる必要がある。この他にナトリウムが少ないガラスや、石英基板でも作成可能である。
【0008】
また素子電極2、3の材料としては、一般的な導体材料が用いられ、例えばNi、Cr、Au、Mo、Pt、Ti等の金属やPd−Ag等の金属が好適であり、あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体や、ITO等の透明導電体等から適宜選択され、その膜厚は、好ましくは数十nmから数μmの範囲が適当である。
【0009】
この時の素子電極間隔L、素子電極長さW、素子電極2、3の形状等は、実素子が応用される形態等に応じて適宜設計されるが、間隔Lは好ましくは数百nmから1mmであり、より好ましくは素子電極間に印加する電圧等を考慮して1μmから100μmの範囲である。また、素子電極長さWは、好ましくは電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲である。
【0010】
さらにこの素子電極には、市販の白金Pt等の金属粒子を含有したペーストを、オフセット印刷等の印刷法によって塗布形成する事も可能である。
【0011】
またより精密なパターンを得る目的で、白金Pt等を含有する感光性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷法で塗布し、フォトマスクを用いて露光、現像するという工程でも形成可能である。
【0012】
この後、素子電極2、3を跨ぐ形で、電子源となる導電性薄膜4を作成する。
【0013】
導電性薄膜としては、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜が特に好ましい。またその膜厚は、素子電極2、3へのステップカバレージ、素子電極間の抵抗値、および亀裂部を形成するフォーミング処理条件等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは数nmから数百nmであり、特に好ましくは5nmから50nmの範囲とするのが良い。
【0014】
この導電性薄膜の新規な形成方法として、例えば特開平9−69334号公報に開示するような、液滴付与装置を用いる方法がある。この方法では、導電性膜形成溶液を液滴の状態で付与し、乾燥又は過熱焼成して導電性膜を得る。当該方法は、パターニング工程を行うことなく導電性薄膜を形成することができるため、大面積基板に多数の導電性薄膜を形成する際に非常に有効な手段である。
【0015】
本出願人らの研究によると導電性膜材料には、一般にはパラジウムPdが適しているが、これに限ったものではない。ここでは有機パラジウム溶液を塗付後、焼成して酸化パラジウムPdO膜を形成する方法を選んだ。その後水素が共存する還元雰囲気下で通電加熱し、パラジウムPd膜とし、同時に亀裂部を形成した。これが電子放出部5を形成することになる。
【0016】
尚、図示の便宜から、導電性薄膜は、平面形状、断面形状とも矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電導電性薄膜平面形状及び断面形状を忠実に表現しているわけではない。
【0017】
又、電子放出部5においても、導電性薄膜4の中央に矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0018】
該導電性薄膜を形成後、フォーミングと呼ばれる工程に於いて、上記素子膜を通電処理して内部に亀裂を生じさせ、電子放出部を形成する。
【0019】
具体的な方法は、上記基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部からXY配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電する事によって、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部を形成する。
【0020】
この時若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で通電加熱すると、水素によって還元が促進され酸化パラジウムPdOがパラジウムPd膜に変化する。この変化時に膜の還元収縮によって、一部に亀裂が生じる。
【0021】
多数の素子の特性ばらつきを抑えるのに、上記亀裂は中央部に起こり、かつなるべく直線状になることが望ましい。
【0022】
なおこのフォーミングにより形成した亀裂付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、現状の条件ではまだ発生効率が低い。
【0023】
また得られた導電性薄膜4の抵抗値Rsは、102から107Ωの値である。
【0024】
フォーミング処理に用いた電圧波形について簡単に紹介する。
【0025】
図7にこの説明図を示す。
【0026】
印加した電圧はパルス波形を用いたが、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合(図7−a)と、パルス波高値を増加させながら印加する場合(図7−b)とがある。
【0027】
図7−aに於いて、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1msec〜10msec、T2を10msec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は適宜選択する。
【0028】
図7−bでは、T1及びT2の大きさは同様にとり、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)を、例えば0.1Vステップ程度ずつ増加させる。
【0029】
なお、フォーミング処理の終了は、フォーミング用パルスの間に、導電性膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧、例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、抵抗値を求め、例えばフォーミング処理前の抵抗に対して1000倍以上の抵抗を示した時点で、フォーミングを終了とした。
【0030】
先に述べたように、この状態では電子発生効率が低いため、電子放出効率を上げるために、上記素子に活性化と呼ばれる処理を行うことが望ましい。
【0031】
この活性化処理は有機化合物が存在する適当な真空度のもとで、前記のフォーミングと同様にフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部からXY配線を通じてパルス電圧を素子電極に繰り返し印加することによって行う。そして炭素原子を含むガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を、前記亀裂近傍にカーボン膜として堆積させる工程である。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の液滴付着装置を用いて作られた導電性薄膜は、その断面形状が前記液滴の断面形状に依存するため、端部がなだらかな傾斜を有するものになりやすい。図6に当該方法で形成した電子放出素子の模式図を示す。図6中の番号は図5と同様であり、1は基板、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。図6(b)には、図6(a)のA−A’断面の模式図を示す。当該方法で形成した電子放出素子は、図6(b)に示すように、素子の端部に2nm以下程度の極薄膜領域が存在し、該極薄膜領域では、前述したフォーミング工程において、電子放出部である亀裂の形成がうまく進行せず、端部まで亀裂が形成されないことがある。
【0033】
前記亀裂が形成されていない領域では、素子駆動の際にオーミックな微小漏れ電流が流れることになる。
【0034】
ここで該漏れ電流の影響について説明する。
【0035】
SCE素子を用いた画像形成装置の比較的安価で単純な駆動方式の例では、駆動電圧Vに対し、走査ライン、及び選択ラインに±1/2Vを印加し、非選択ラインをGND電圧としている。
【0036】
このため、選択素子には駆動電圧Vがそのまま印加され、非選択素子には1/2Vが印加される。
【0037】
従って、非選択素子に漏れ電流が流れると選択素子の実行電圧が減少し、特に、大画面、高精細のために素子数が増加すると、漏れ電流の総和が大きくなり、各素子にかかる実行電圧が小さくなるため、画像形成装置としての充分な輝度が得られないという問題が生じる。
【0038】
なお、HDTVクラスの画像形成装置を一般的な駆動回路を用いて駆動する場合、充分な表示を得るためには、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2を電圧印加時の電流値Ifhの比If/Ifh比は1000/1以上必要と考えられている。
【0039】
しかし、前記端部に亀裂形成不良が存在する素子においては、If/Ifh比が数百/1程度と非常に悪く、画像形成装置として十分な輝度が得られないという問題があった。
【0040】
これを解決するために例えば特開2000−251667のような、該導電性膜の端部薄膜領域をレーザー等により破壊せしめる方法も提案されているが、数十万以上の電子源を有する大判画像表示装置の形成においては、より生産性の高い方法が望ましい。
【0041】
そこで本発明の目的は、素子端部の極薄膜領域を、素子端部の下に形成された犠牲層と共に除去することより、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない電子源を有する画像形成装置を歩留まり良く製造する方法および本方法で製造された画像形成装置を提供するものである。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、金属含有溶液の液滴を吐出して基板に付着させる工程を有する電子源基板の製造方法において、前記素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して導電性薄膜を形成した後に、該導電性薄膜端部の下に敷かれた犠牲層を除去する工程とによって解決される。
【0043】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(9)である。
【0044】
(1)基板上に、一対の素子電極間を連絡する導電性薄膜と、該導電性薄膜の一部に電子放出部を持つ電子放出素子が複数配列され、該電子放出素子間の配線および該素子への電圧印加端子が形成された電子源基板の製造方法であって、
該電子源基板の製造方法が、前記素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液の液滴を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成することを特徴とする電子源およびその製造方法
(2)前記導電性薄膜を形成した後、犠牲層材料を除去することを特徴とする(1)に記載の電子源およびその製造方法。
【0045】
(3)前記犠牲層が素子電極間に存在する導電性薄膜の両端部に形成されることを特徴とする(1)および(2)に記載の電子源およびその製造方法。
【0046】
(4)前記犠牲層材料を含む液滴および金属元素を含む溶液をインクジェット方式で付与することを特徴とする(1)〜(3)に記載の電子源およびその製造方法。
【0047】
(5)前記インクジェット方式が、熱エネルギーによって溶液内に気泡を形成させて該溶液を吐出する方式である(1)〜(4)に記載の電子源およびその製造方法。
【0048】
(6) 前記インクジェット方式が、力学的エネルギーによって溶液を吐出する方式である(1)〜(5)に記載の電子源およびその製造方法。
【0049】
(7)複数の吐出ヘッドを使用する(1)〜(6)に記載の電子源およびその製造方法。
【0050】
(8)前記の電子源基板を形成する際、列方向配線及び行方向配線が絶縁層を介して行列状に配置され、前記一対の素子電極の一方は前記絶縁基板上に接続して列方向配線とし、他方を絶縁層を介して接続して行方向配線としている(1)〜(7)に記載の電子源およびその製造方法。
【0051】
(9)電子源としての電子放出素子と、該素子への電圧印加手段と、該素子から放出される電子を受けて発光する発光体と、外部信号に基づいて該素子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置の製造方法であって、該電子放出素子を(1)〜(8)のいずれかに記載の方法で製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【0052】
(作用)
本発明によれば、電子源となる導電性薄膜を作成する際に、端部の極薄膜領域の存在しない導電性薄膜を作成することができるため、該導電膜にフォーミング、活性化等の処理を行い電子放出部を形成する工程において、該放出部の形成不良を防止することができ、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない良好な電子放出特性を持つ電子放出源を歩留まり良く製作することができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0054】
図1は、本発明の一実施例に係わる平面型表面伝導型電子放出素子の一例を示す模式図である。
【0055】
図1において1は基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部であり、各々の材料、構成等は、前述の特開平9−69334に開示されている。
【0056】
図1(b)は、図1(a)のAA’断面の模式図である。
【0057】
本発明における電子放出素子の断面は、図1(b)に示すように、導電性薄膜端部下の犠牲層除去工程を経る事により、端部の極薄膜領域が存在しておらず、導電性膜端部での電子放出部の形成不良を防止することができる。
【0058】
図3は本発明の製造方法における金属含有溶液を基板上に吐出して導電性薄膜を形成する工程の一例を示す模式図である。
【0059】
図3において、基板ステージ8上の基板1の上方に吐出ヘッド7が設置されており、該吐出ヘッド7に設けられた吐出ノズル9から、犠牲層材料を液滴状態で吐出し、基板1上に付着させる。なお、液滴塗布に使用する吐出ノズルは1つでも複数でも可能である。
【0060】
また、同様に基板1の上方に吐出ヘッド13が設置されており、該吐出ヘッド13に設けられた吐出ノズル14から前記金属含有溶液を液滴状態で吐出し、基板1上に付着させる。なお、液滴塗布に使用する吐出ノズルは、1つでも複数でも可能である。
【0061】
吐出ヘッド7および13には、インクジェット制御・駆動機構16が設けられており、ステージ8に設けられた位置検出機構17及びステージ駆動機構(不図示)と連動して液滴を吐出することで、基板上の目的位置に液滴を付着させることが出来る。
【0062】
これら一連の制御は、制御コンピュータ15で行う。
【0063】
なお、犠牲層材料および金属含有液滴の塗布に用いるヘッドは、液供給系の切り替え機構を設けることにより、同一のヘッドを用いることも可能である。
【0064】
本発明の特徴である犠牲層除去による導電性膜の端部形状制御について基板断面の模式図である図2(a)〜(f)用いて説明する。
【0065】
ヘッドから吐出された金属含有溶液は、該溶液中に含まれる膜形状保持剤、例えばポリビニルアルコールなどの作用により、基板上で過度に凝集・離散することなく液滴の状態を保持する。このとき、基板に付着した液滴の断面形状は該液滴を基板に付着させる工程における様々な条件の相互作用によって決定される。該条件は、例えば基板の表面状態、液滴が基板に付着した際の液滴中の溶媒揮発状態などが挙げられる。この液滴を焼成することで導電性金属膜を得るが、得られた導電性金属膜の断面形状・図2(a)は、焼成前の液滴の断面形状・図2(b)に依存するため、端部がなだらかなすそを引くことになる。このすそ引き部分が、電気的に不連続な極薄膜領域となる。
【0066】
そこで、図2(c)に示すように、あらかじめ犠牲層となる材料を含む溶液を基板上に塗布・乾燥させておいた後、図2(d)に示すように金属含有溶液を塗布する。そして焼成によって図2(e)に示す状態で導電性膜を得た後に、犠牲層を除去することで、図2(f)に示すような端部の極薄膜領域のない導電性薄膜を得ることができる。
【0067】
(実施例1)
マトリクス状に配線および素子電極を形成した基板を用い、多数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源基板を作製した。
【0068】
以下に図3、第4図を参照しながら説明する。
【0069】
1.絶縁基板1としてガラス基板を用い、有機溶剤等により充分に洗浄後、120℃で乾燥させた。該基板1上に、Pt膜を用いて電極幅500μm、電極ギャップ20μmの一対の素子電極を240列720行計172800組行列状に形成し、電極に各々配線を接続した。この配線としては、図4に示すようなマトリクス配線を採用した。
【0070】
2.前記基板をアルカリ洗浄液等にて洗浄後、シラン系撥水処理剤を用いて、表面処理を行った。
【0071】
3.その後、前記基板を図3のステージ8に吸着し、パターンの位置合せ等を行った。
【0072】
4.更に、吐出ヘッド7に犠牲層12の形成材料となる有機系のレジストをインクとして注入した。
【0073】
5.更に、吐出ヘッド13に導電性薄膜4の形成材料を含有した溶液をインクとして注入した。溶液は有機パラジウム含有溶液を使用した。
【0074】
6.次に、前述した基板1の素子電極に、ステージ8を+X方向にスキャンニングさせながら、位置検出機構17及びインクジェット制御・駆動機構16により、ノズル9に設計上の吐出タイミングで、同時に吐出信号を送って液滴を吐出し、一対の素子電極につき2個の犠牲層材料を基板上に付着させた。
【0075】
7.犠牲層材料を不図示の基板加熱機構により乾燥させ、犠牲層を形成した。
【0076】
8.次に、基板1の犠牲層を設けられた素子電極に、ステージ8を+X方向にスキャンニングさせながら、位置検出機構17及びインクジェット制御・駆動機構16により、ノズル14に設計上の吐出タイミングで、同時に吐出信号を送って液滴を吐出し、金属材料を含む溶液を塗布した。
【0077】
9.次に、350℃で30分間の加熱処理を行って、酸化パラジウム(PdO)微粒子からなる導電性薄膜4を形成した。
【0078】
10.その後、有機溶剤を用いて、犠牲層のみを基板上から除去した。
【0079】
11.さらに電極対2・3の間に電圧を印加し、導電性薄膜4に対し、フォーミング・活性化を行うことにより、電子放出部5を形成した。
【0080】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1500/1と良好であった。
【0081】
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0082】
(実施例2)
実施例1と基本的な手法は同様であるが、本実施例では酸化パラジウム微粒子の焼成を200℃で行った後に、有機溶剤を用いて犠牲層を基板上から除去し、その後に350℃の本焼成を行った。
【0083】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1500/1と良好であった。
【0084】
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0085】
(実施例3)
実施例1と基本的な手法は同様であるが、本実施例では熱分解性のレジストを用いて犠牲層を形成した。これにより、酸化パラジウムの350℃焼成時に犠牲層が同時に分解された。
【0086】
本実施例の製造方法により作製した電子放出素子の漏れ電流の評価を行ったところ、駆動電圧印加時の電流値Ifと駆動電圧の1/2の電圧を印加した時の電流値Ifhの比If/Ifh比が1800/1と良好であった。
こうして作製された電子源基板に、フェースプレート、及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作製し、更に、駆動回路を接続して画像形成装置を作製し、均一性・輝度共に良好な画像形成装置を歩留まりよく得ることができた。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属含有溶液の液滴を吐出して基板に付着させる工程を有する電子源基板の製造方法において、素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液の液滴を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成した後に、犠牲層を除去することで、端部の極薄膜領域の存在しない導電性薄膜を作成することができるため、該導電膜にフォーミング、活性化等の処理を行い電子放出部を形成する工程において、該放出部の形成不良を防止することができ、電子放出に寄与しない無効な漏れ電流の少ない良好な電子放出特性を持つ電子放出源を歩留まり良く製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により作成される電子放出素子の模式図。
【図2】本発明に関わる電子放出素子の製造方法の概念を模式的に表す説明図。
【図3】本発明に関わる電子放出素子の製造方法の一例を示す模式図。
【図4】電子放出素子を形成する製造プロセスの一例を示す模式図。
【図5】表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成を示す模式図。
【図6】従来の電子放出素子の一例を示す模式図。
【図7】フォーミング工程での電圧波形の一例。
【符号の説明】
1 基板
2、3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 絶縁膜
7 犠牲層材料吐出ヘッド
8 基板ステージ
9 犠牲層材料吐出ノズル
10 列方向配線
11 行方向配線
12 犠牲層材料液滴
13 金属含有材料塗布ヘッド
14 金属含有材料塗布ノズル
15 制御コンピュータ
16 インクジェット制御・駆動機構
17 位置検出機構
18 金属含有液滴
Claims (9)
- 基板上に、一対の素子電極間を連絡する導電性薄膜と、該導電性薄膜の一部に電子放出部を持つ電子放出素子が複数配列され、該電子放出素子間の配線および該素子への電圧印加端子が形成された電子源基板の製造方法であって、
該電子源基板の製造方法が、前記素子電極間もしくはその周辺に犠牲層となる材料を含む溶液を液滴状態で付与し、これを乾燥して犠牲層を形成した後に、該犠牲層の存在する素子電極間に金属元素を含む溶液の液滴を液滴の状態で付与し、該液滴を乾燥して電子放出源となる導電性薄膜を形成することを特徴とする電子源およびその製造方法。 - 前記導電性薄膜を形成した後、犠牲層材料を除去することを特徴とする請求項1に記載の電子源およびその製造方法。
- 前記犠牲層が素子電極間に存在する導電性薄膜の両端部に形成されることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の電子源およびその製造方法。
- 前記犠牲層材料を含む液滴および金属元素を含む溶液をインクジェット方式で付与することを特徴とする請求項1〜3に記載の電子源およびその製造方法。
- 前記インクジェット方式が、熱エネルギーによって溶液内に気泡を形成させて該溶液を吐出する方式である請求項1〜4に記載の電子源およびその製造方法。
- 前記インクジェット方式が、力学的エネルギーによって溶液を吐出する方式である請求項1〜5に記載の電子源およびその製造方法。
- 複数の吐出ヘッドを使用する請求項1〜6に記載の電子源およびその製造方法。
- 前記の電子源基板を形成する際、列方向配線及び行方向配線が絶縁層を介して行列状に配置され、前記一対の素子電極の一方は前記絶縁基板上に接続して列方向配線とし、他方を絶縁層を介して接続して行方向配線としている請求項1〜7に記載の電子源およびその製造方法。
- 電子源としての電子放出素子と、該素子への電圧印加手段と、該素子から放出される電子を受けて発光する発光体と、外部信号に基づいて該素子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置の製造方法であって、該電子放出素子を請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
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