JP2004191873A - 高屈折率皮膜形成用塗布組成物、高屈折率皮膜、反射防止膜、偏光板、及び、画像表示装置 - Google Patents

高屈折率皮膜形成用塗布組成物、高屈折率皮膜、反射防止膜、偏光板、及び、画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性(特に、耐光性)に優れた高屈折率皮膜、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置を提供すること。また、上記高屈折率皮膜、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置を安価で大量に提供すること。
【解決手段】コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有し、皮膜の屈折率が1.55〜2.40であることを特徴とする高屈折率皮膜、該高屈折率皮膜を形成するための塗布組成物、該高屈折率皮膜を有する反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高屈折率皮膜形成用の塗布組成物、高屈折率皮膜、高屈折率皮膜を用いた反射防止フィルム、偏光板、及び、画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(LCD)は大画面化が進み、反射防止フィルムを配置した液晶表示装置が増大している。
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面に配置される。そのため、反射防止フィルムには高い物理強度(耐擦傷性など)、耐薬品性、耐候性(耐湿熱性、耐光性など)が要求される。
【0003】
反射防止フィルムに用いる反射防止膜(高屈折率皮膜、中屈折率層、低屈折率皮膜などの積層構造からなる膜)としては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から普通に用いられている。金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法により形成することが通常に行われてきた。
【0004】
しかし、蒸着による金属酸化物の透明薄膜の形成方法は生産性が低く大量生産に適しておらず、生産性が高い塗布により形成する方法が提案されている。
反射防止フィルムを塗布で作製する場合、高屈折率皮膜は、高い屈折率を有する無機微粒子をより微細に分散し、皮膜の中に導入して作製することが好ましい。高い屈折率を有する無機微粒子を微細な分散状態を保ったまま、より多く皮膜中に導入することで、より高い屈折率を有する透明な高屈折率皮膜が形成されることが知られている(例えば、特許文献1〜7参照。)。
【0005】
また、高屈折率皮膜に、極めて高い屈折率を有する二酸化チタン微粒子を導入することが非常に有効であるということが知られている(例えば、特許文献3〜7参照。)。
【0006】
一方、液晶表示装置において偏光板は不可欠な光学材料であり、一般に、偏光膜が2枚の保護フィルムによって保護されている構造をしている。
これらの保護フィルムに反射防止機能を付与することが出来れば、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−110401号公報
【特許文献2】
特開平8−179123号公報
【特許文献3】
特開平11−153703号公報
【特許文献4】
特開2001−166104号公報
【特許文献5】
特開2001−188104号公報
【特許文献6】
特開2002−116323号公報
【特許文献7】
特開2002−156508号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しがしながら、上記のように反射防止フィルムに二酸化チタンを用いた場合、二酸化チタン微粒子は光触媒機能を有しているため、太陽光のもとで長時間使用すると、反射防止フィルムに含有される有機化合物を分解し、物理的強度、光学性能などを著しく悪化させるという不具合を生じる。このような現象は二酸化チタン微粒子が微細な分散状態を保って含有されている高屈折率皮膜に用いた場合には特に顕著に発生する。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み成されたものであって、その第一の目的は、耐候性に優れた高屈折率皮膜を提供することである。
本発明の別の目的は、耐候性に優れた高屈折率皮膜を作製するための塗布組成物を提供することにある。
さらに、本発明は、耐候性に優れた反射防止フィルムを安価で大量に提供することを目的とする。
また、本発明は、適切な手段により反射防止処理がされている偏光板、及び、画像表示装置を提供することも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記諸課題は、下記構成の高屈折率皮膜形成用の塗布組成物、高屈折率皮膜、及び、高屈折率皮膜を用いた反射防止フィルムにより達成された。
(1)コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有し、屈折率が1.55〜2.40であることを特徴とする高屈折率皮膜。
(2)前記無機微粒子に含有される元素が、無機微粒子の内部に存在することを特徴とする(1)に記載の高屈折率皮膜。
(3)前記無機微粒子が少なくともコバルトを含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の高屈折率皮膜。
【0011】
(4)前記無機微粒子が、平均粒径1〜200nmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
(5)前記無機微粒子を分散するために用いる分散剤を含有し、該分散剤がアニオン性基を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
(6)前記分散剤のアニオン性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、又は、リン酸基であることを特徴とする(5)に記載の高屈折率皮膜。
(7)前記分散剤が、架橋又は重合性官能基を有することを特徴とする(6)又は(7)に記載の高屈折率皮膜。
(8)前記分散剤の架橋又は重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基又はアリル基であることを特徴とする(7)に記載の高屈折率皮膜。
(9)前記分散剤の重量平均分子量(Mw)が1000以上であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
【0012】
(10)有機化合物のバインダーを含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
(11)前記有機化合物のバインダーが、電離放射線硬化性化合物の硬化物を含有することを特徴とする(10)に記載の高屈折率皮膜。
(12)前記有機化合物のバインダーが、前記分散剤の硬化物を含有することを特徴とする(10)又は(11)に記載の高屈折率皮膜。
(13)前記高屈折率皮膜が酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成されたことを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
(14)前記酸素濃度が4体積%以下の雰囲気であることを特徴とする(13)に記載の高屈折率皮膜。
(15)前記酸素濃度の雰囲気が、窒素パージ(本明細書では窒素ガス置換により他の気体を除去することを窒素パージと呼ぶ)により実現されたことを特徴とする(13)又は(14)に記載の高屈折率皮膜。
(16)(1)〜(15)のいずれかに記載の高屈折率皮膜を形成するための塗布組成物。
【0013】
(17)透明支持体上に(1)〜(15)の高屈折率皮膜を有する反射防止フィルム。
(18)該高屈折率皮膜を有する側の表面に、含フッ素化合物を主体とする最外層を有することを特徴とする(17)に記載の反射防止フィルム。
(19)透明支持体と高屈折率皮膜との間に、ハードコート層を有することを特徴とする(17)又は(18)に記載の反射防止フィルム。
(20)透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする(17)〜(19)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0014】
(21)該高屈折率皮膜を有する側の表面に凹凸を有し、該表面の平均表面粗さ(Ra)が0.01〜0.4μmであることを特徴とする(17)〜(20)に記載の反射防止フィルム。
(22)前記高屈折率皮膜を有する側の表面の動摩擦係数が0.25以下であることを特徴とする(17)〜(21)に記載の反射防止フィルム。
(23)前記高屈折率皮膜を有する側の表面の水に対する接触角が90゜以上であることを特徴とする(17)〜(22)に記載の反射防止フィルム。
【0015】
(24)(17)〜(23)に記載の反射防止フィルムを保護フィルムの少なくとも一方として用いたことを特徴とする偏光板。
(25)(17)〜(23)に記載の反射防止フィルムを保護フィルムの一方として用い、光学異方性のある光学補償フィルムを保護フィルムのもう一方として用いたことを特徴とする偏光板。
(26)前記光学補償フィルムが、透明支持体の一方の面に光学異方層を有し、該光学異方層がディスコティック構造単位を有する化合物を含有し、該ディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする(25)に記載の偏光板。
【0016】
(27)(17)〜(23)のいずれかに記載の反射防止フィルムが画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
(28)(24)〜(26)のいずれかに記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
(29)(24)〜(26)のいずれかに記載の偏光板を、液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板のうち、表示側の偏光板として用い、且つ、(17)〜(23)のいずれかに記載の反射防止フィルムを液晶セルとは反対側へ向けて配置したことを特徴とする画像表示装置。
(30)該画像表示装置がTN、STN、IPS、VA、OCBのモードの透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする(27)〜(29)のいずれかに記載の画像表示装置。
【0017】
【本発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細を説明する。
〔高屈折率皮膜〕
本発明の高屈折率皮膜は、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有し、屈折率が1.55〜2.40であることを特徴とする。本発明の高屈折率皮膜は、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれている皮膜であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率皮膜と総称して呼ぶ。高屈折率皮膜の屈折率はより好ましくは1.60〜2.20、特に好ましくは1.65〜2.10である。以下、本発明の高屈折率皮膜について詳述する。
【0018】
(二酸化チタンを主成分とする無機微粒子)
本発明の高屈折率皮膜には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
本発明の無機微粒子は高屈折率皮膜の屈折率を制御すると共に、皮膜の硬化収縮を抑える機能がある。
【0019】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、その一次粒子の平均粒径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。無機微粒子を200nm以下に微細化することにより透明性を損なわない高屈折率皮膜を形成できる。
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
また、高屈折率皮膜における無機微粒子の含有量は、高屈折率皮膜の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。
【0020】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。
【0021】
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)から選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率皮膜の耐候性を改良することができる。
このうち、無機微粒子に少なくともCoを含有していることが好ましい。また、上記の元素を2種類以上を併用することも好ましい。
また、Co、Al、Zrは、酸化物として存在することも好ましい。
【0022】
無機微粒子中のTi(チタン)に対する、Co、Al、Zrの含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
【0023】
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部、あるいはまた表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。
Co、Al、Zrを二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させる(例えば、ドープする)には、種々の手法がある。例えば、イオン注入法(表面科学,Vol.18,No.5,pp.262-268,1998;青木 康)や、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号、特開平5−330825号公報に記載の手法があげられる。
【0024】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の粒子形成過程において、Co、Al、Zrを導入する手法(例えば、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号、特開平5−330825号公報に記載)を用いることが特に好ましい。
【0025】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子には、目的により、さらに他の元素を含むこともできる。他の元素は、不純物として含んでいてもよい。他の元素の例には、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Mg、Si、PおよびSが含まれる。
【0026】
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理をされてもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co23,Co34など)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al23,Al(OH)3など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO2,Zr(OH)4など)、ケイ素を含有する無機化合物(SiO2など)、鉄を含有する無機化合物(Fe23など)などが含まれる。
中でも、コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3、Zr(OH)4が最も好ましい。
【0027】
表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。
【0028】
以上の表面処理は、2種類以上を併用することもできる。アルミニウムを含有する無機化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
【0029】
高屈折率皮膜に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定形状、紡錘形状である。
また、無機微粒子は高屈折率皮膜内で二種類以上を併用してもよい。
【0030】
(分散剤)
本発明の高屈折率皮膜に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよい。
無機微粒子の分散性をさらに改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0031】
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
【0032】
本発明の高屈折率皮膜に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散に用いる好ましい分散剤は、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤である。
【0033】
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい重量平均分子量(Mw)は2000〜1000000であり、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
【0034】
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤は、上記アニオン性基を側鎖又は末端に有することが好ましい。側鎖にアニオン性基を導入する方法としては、例えばアニオン性基含有モノマー(例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、燐酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル等を重合させる方法、水酸基、アミノ基等を有するポリマーに対して酸無水物を作用させる方法等の高分子反応の利用によって合成できる。
【0035】
側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有重合単位の組成は、全重合単位のうちの10-4〜100モル%の範囲であり、好ましくは1〜50モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
一方、末端にアニオン性基を導入する手法としては、アニオン性基含有連鎖移動剤(例えばチオグリコール酸等)の存在下で重合反応を行なう手法、アニオン性基含有重合開始剤(例えば和光純薬工業性V−501)を用いて重合反応を行なう手法等によって合成できる。
特に好ましい分散剤は、側鎖にアニオン性基を有する分散剤である。
【0036】
架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
【0037】
1分子当たりの分散剤に含有される架橋又は重合性官能基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有される架橋又は重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0038】
本発明の好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する重合単位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエンおよびポリ−1,2−イソプレン構造あるいは、(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドの重合単位であって、それに特定の残基(−COORまたは−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定の残基(R基)の例としては、-(CH2)n-CR1=CR2R3 、-(CH2O)n-CH2CR1=CR2R3 、-(CH2CH2O)n-CH2CR1=CR2R3、-(CH2)n-NH-CO-O-CH2CR1=CR2R3、-(CH2)n-O-CO-CR1=CR2R3および-(CH2CH2O) 2-X(R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、R1とR2またはR3は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜10の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる。エステル残基の具体例には、-CH2CH=CH2(特開昭64−17047号公報記載のアリル(メタ)アクリレートのポリマーに相当)、-CH2CH2O-CH2CH=CH2、-CH2CH2OCOCH=CH2、-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CH-C6H5、-CH2CH2OCOCH=CH-C6H5、-CH2CH2-NHCOO-CH2CH=CH2および-CH2CH2O-X(Xはジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基の具体例には、-CH2CH=CH2、-CH2CH2-Y (Yは1−シクロヘキセニル残基)および-CH2CH2-OCO-CH=CH2、-CH2CH2-OCO-C(CH3)=CH2が含まれる。
【0039】
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子間で直接、または重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成されて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0040】
側鎖に架橋又は重合性官能基を導入する方法は、例えば特開平3−249653号公報等に記載のごとく架橋又は重合性官能基含有モノマー(例えばアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリアルコキシシリルプロピルメタクリレート等)の共重合、ブタジエンあるいはイソプレンの共重合、3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーの共重合を行なった後に脱塩化水素を行なう方法、高分子反応による架橋又は重合性官能基の導入(例えばカルボキシル基含有ポリマーへのエポキシ基含有ビニルモノマーの高分子反応)等によって合成することができる。
【0041】
架橋又は重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有重合単位以外の全ての重合単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋又は重合単位のうちの5〜50モル%であり、特に好ましくは5〜30モル%である。
【0042】
本発明の好ましい分散剤は、架橋又は重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
本発明の好ましい分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体またはランダム共重合体であることが好ましく、コストおよび合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好ましい。
【0043】
以下に本発明の好ましい分散剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお特に記載の無い場合はランダム共重合体を表わす。
【0044】
【化1】
Figure 2004191873
【0045】
【化2】
Figure 2004191873
【0046】
【化3】
Figure 2004191873
【0047】
【化4】
Figure 2004191873
【0048】
【化5】
Figure 2004191873
【0049】
【化6】
Figure 2004191873
【0050】
分散剤の無機微粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0051】
(高屈折率皮膜及びその形成法)
高屈折率皮膜に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率皮膜の形成に使用する。無機微粒子の分散においては、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
【0052】
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0053】
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル、ダイノミル、および高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
【0054】
本発明に用いる高屈折率皮膜は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率皮膜形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率皮膜形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0055】
さらに、高屈折率皮膜形成用の塗布組成物に含まれるバインダーを皮膜の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。すなわち、高屈折率皮膜におけるバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率皮膜におけるバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率皮膜の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0056】
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0057】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、等を挙げることができる。
【0058】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0059】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。
【0060】
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
【0061】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX-S、BP-100、BDMK、CTX、BMS、2-EAQ、ABQ、CPTX、EPD、ITX、QTX、BTC、MCAなど)、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651、184、500、907、369、1173、2959、4265、4263など)、サートマー社製のEsacure(KIP100F、KB1、EB3、BP、X33、KT046、KT37、KIP150、TZT)等が挙げられる。
【0062】
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、高薄一弘著「最新UV硬化技術」((株)技術情報協会、159頁、1991年)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651、184、907)等が挙げられる。
【0063】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI、EPA)などが挙げられる。
光重合反応は、高屈折率皮膜の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
【0064】
本発明に用いる高屈折率皮膜は、下記一般式(1)で表される化合物、及び/又は、その誘導体化合物を含有することもできる。
【0065】
一般式(1)
(R1)m−Si(OR2)n
【0066】
一般式(1)式中、R1は置換もしくは無置換のアルキル基もしくは、アリール基を表す。R2は置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアシル基を表す。mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。
一般式(1)においてR1は置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、t−ブチル、sec−ブチル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0067】
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、(メタ)アクリロイル等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が好ましい。
【0068】
これらのうちで更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていても良い。
【0069】
2は置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアシル基を表す。R2の置換基として用いることのアルキル基ならびに置換基はR1と同様である。R2として好ましくは無置換のアルキル基もしくは無置換のアシル基であり、特に好ましくは無置換のアルキル基である。
【0070】
mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。R1もしくはR2が複数存在するとき、複数のR1もしくはR2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。mとして好ましくは0、1、2であり、特に好ましくは1である。
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
【化7】
Figure 2004191873
【0072】
【化8】
Figure 2004191873
【0073】
【化9】
Figure 2004191873
【0074】
【化10】
Figure 2004191873
【0075】
【化11】
Figure 2004191873
【0076】
【化12】
Figure 2004191873
【0077】
これらの具体例の中で、(1)、(12)、(18)、(19)等が特に好ましい。
一般式(1)の化合物の含有量は、高屈折率皮膜の全固形分の1〜90質量%が好ましく、より好ましくは2〜80質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
【0078】
本発明の高屈折率皮膜に含まれるバインダーは、さらにシラノール基を有することが好ましい。バインダーがさらにシラノール基を有することで、高屈折率皮膜の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば架橋又は重合性官能基を有する一般式(1)で表される化合物を上記の高屈折率皮膜形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(1)で表される化合物を架橋反応、又は、重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0079】
一般式(1)で表される化合物で特に好ましいのは、架橋又は重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
高屈折率皮膜においてバインダーは、アミノ基または四級アンモニウム基を有することも好ましい。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する高屈折率皮膜のバインダーは、例えば、架橋又は重合性官能基とアミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーを上記の高屈折率皮膜形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
【0081】
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率皮膜における無機微粒子の良好な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率皮膜を作製することが出来る。
【0082】
アミノ基または四級アンモニウム基を有する好ましいモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーの分散剤に対する使用量は、1〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。高屈折率皮膜の塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率皮膜の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることができる。
【0083】
架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
【0084】
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋又は重合構造を有する。
【0085】
アニオン性基は、連結基を介してバインダーの側鎖として、主鎖に結合していることが好ましい。
アニオン性基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。架橋又は重合構造は、二つ以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)する。架橋又は重合構造は、三つ以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋又は重合構造は、−CO−、−O−、−S−、窒素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価以上の基からなることが好ましい。
【0086】
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96モル%であることが好ましく、4〜94モル%であることがさらに好ましく、6〜92モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98モル%であることが好ましく、6〜96モル%であることがさらに好ましく、8〜94モル%であることが最も好ましい。
【0087】
バインダーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋又は重合構造の双方を有していてもよい。バインダーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋又は重合構造もない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
その他の繰り返し単位としては、シラノール基、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0088】
シラノール基を有する繰り返し単位では、シラノール基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。シラノール基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。シラノール基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98モル%であることが好ましく、4〜96モル%であることがさらに好ましく、6〜94モル%であることが最も好ましい。
【0089】
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位では、アミノ基または四級アンモニウム基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。アミノ基または四級アンモニウム基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることが好ましく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜32モル%であることが好ましく、0.5〜30モル%であることがさらに好ましく、1〜28モル%であることが最も好ましい。
【0090】
なお、シラノール基、及び、アミノ基、四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位あるいは架橋又は重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
架橋又は重合しているバインダーは、高屈折率皮膜形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によって形成することが好ましい。
【0091】
高屈折率皮膜に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0092】
高屈折率皮膜には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
また、高屈折率皮膜は、後述する平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能を付与した防眩層を兼ねることもできる。
高屈折率皮膜の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率皮膜を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。高屈折率皮膜がハードコート層を兼ねる場合、0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜7μm、特に好ましくは2〜5μmである。
【0093】
高屈折率皮膜の形成において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。
高屈折率皮膜を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率皮膜の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率皮膜と高屈折率皮膜と隣接する層との接着性を改良することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0094】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
高屈折率皮膜の好ましい塗布溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
塗布溶媒は、ケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。
【0095】
塗布溶媒には、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
高屈折率皮膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
高屈折率皮膜のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0096】
〔反射防止フィルム〕
また、本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に上記した高屈折率皮膜を有するものである。また、本発明の反射フィルムはさらに高屈折率皮膜より低い屈折率である低屈折率皮膜を有していてもよい。以下、本発明の反射防止フィルムが有する透明支持体および各層について詳述する。
(透明支持体)
透明支持体としては、プラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしてはセルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましく、特に、液晶表示装置に用いる場合、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0097】
透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムの場合、トリアセチルセルロースを溶剤に溶解することで調整したトリアセチルセルロースドープを単層流延、複数層共流延の何れかの流延方法により作製したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
【0098】
特に、環境保全の観点から、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶剤に溶解することで調整したトリアセチルセルロースドープを用いて作製したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
単層のトリアセチルセルロースフィルムは、特開平7−11055号公報等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作製され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースフィルムは、特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作製される。
【0099】
例えば、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する。
単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去する。
【0100】
上記のような、トリアセチルセルロースを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし、地球環境や作業環境の観点では、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。ジクロロメタン等を実質的に含まない溶剤を用いてトリアセチルセルロースのドープを調整する場合には、下記のような特殊な溶解法を用いることが好ましい。
【0101】
第一の方法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。まず室温付近の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、トリアセチルセルロースと溶剤の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶剤中にトリアセチルセルロースが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
【0102】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。まず室温付近の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。本発明のトリアセチルセルロース溶液は、各種溶剤を含有する混合溶剤中にトリアセチルセルロースを添加し予め膨潤させることが好ましい。本法において、トリアセチルセルロースの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶剤混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶剤の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はトリアセチルセルロース溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。
【0103】
上記の透明支持体の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚は1〜300μmがよく、好ましくは30〜150μm、特に好ましくは40〜120μm、最も好ましくは40〜100μmである。
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2 、TiO2 、BaSO4 、CaCO3 、タルクおよびカオリンが含まれる。
【0104】
透明支持体は、表面処理を実施してもよい。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理とコロナ放電処理が特に好ましい。
【0105】
(最外層)
反射防止フィルムの高屈折率皮膜を有する面側に、含フッ素化合物を主体とする最外層を構築することが好ましい。含フッ素化合物を主体とする最外層は、低屈折率皮膜、又は、防汚層として機能する。
【0106】
本発明において、「含フッ素化合物を主体とする」とは、最外層中に含まれる含フッ素化合物が最外層の全質量に対し、50質量%以上であることを意味し、60質量%以上含まれることがより好ましい。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47、さらに好ましくは1.38〜1.45である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含むことが好ましく、45〜75質量%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0107】
含フッ素化合物には、含フッ素ポリマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素エーテルなどが挙げられる。
含フッ素ポリマーとしては、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの架橋反応、又は、重合反応により合成されたものが挙げられる。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが含まれる。
【0108】
含フッ素ポリマーとしてフッ素原子を含む繰り返し構造単位とフッ素原子を含まない繰り返し構造単位からなる共重合体も用いることができる。
上記共重合体は、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーとフッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることができる。
フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーとしては、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレンおよびその誘導体(例、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド(例、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミドおよびアクリロニトリルが挙げられる。
【0109】
含フッ素シラン化合物としては、パーフルオロアルキル基を含むシラン化合物(例、(ヘプタデカフルオロ−1,2,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン等)が挙げられる。
含フッ素界面活性剤は、その親水性部分がアニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性のいずれであってもよい。そして疎水性部分を構成する炭化水素の水素原子の一部または全部が、フッ素原子により置換されている。
【0110】
含フッ素エーテルは、一般に潤滑剤として使用されている化合物である。含フッ素エーテルとしては、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
最外層には、架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーを用いることが特に好ましい。架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーは、架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマーを架橋又は重合させることにより得られる。
【0111】
架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマーは、架橋又は重合性基を有さない含フッ素ポリマーに架橋又は重合性基を側鎖として導入することにより得ることができる。架橋又は重合性基としては、光、好ましくは紫外線照射、電子ビーム(EB)照射あるいは加熱により反応して含フッ素ポリマーが架橋又は重合構造を有するようになる官能基であることが好ましい。架橋又は重合性基としては、(メタ)アクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロールおよび活性メチレン等の基が挙げられる。架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマーとして、市販品を用いてもよい。
架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマーの架橋又は重合反応は、最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することにより実施することが好ましい。
【0112】
最外層は、含フッ素化合物以外に充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤(ジメチルシリコンなどのシリコン化合物等)、界面活性剤等を含有することができる。特に、無機微粒子、シランカップリング剤、滑り剤を含有することが好ましい。
【0113】
最外層に含まれる無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)などが好ましい。特に好ましいのは二酸化珪素(シリカ)である。該無機微粒子の一次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。最外層において無機微粒子は、より微細に分散されていることが好ましい。無機微粒子の形状は米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、短繊維状、リング状、あるいは不定形状であることが好ましい。
【0114】
最外層に含まれるシランカップリング剤としては、前記一般式(1)で表される化合物、及び、又は、その誘導体化合物を用いることができる。好ましいのは、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基を含有するシランカップリング剤であり、特に好ましいのはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)を含有するシランカップリング剤である。
【0115】
一般式(1)で表される化合物で特に好ましいのは、架橋又は重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
滑り剤としては、ジメチルシリコン、ポリシロキサンセグメントが導入された含フッ素化合物が好ましい。
【0116】
最外層は、含フッ素化合物、その他所望により含有される任意成分を溶解あるいは分散させた塗布組成物を塗布と同時、または塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
特に、最外層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた最外層を得ることができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0117】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
最外層を低屈折率皮膜として用いる場合、膜厚は30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜150nm、特に好ましくは60〜120nmである。最外層を防汚層として用いる場合、膜厚は3〜50nmが好ましく、より好ましくは5〜35nm、特に好ましくは7〜25nmである。
【0118】
最外層は反射防止フィルムの物理強度を改良するために、表面の動摩擦係数が0.25以下であることが好ましい。ここで記載した動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で表面を移動させたときの、表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0119】
(低屈折率皮膜)
低屈折率皮膜は前記の最外層を兼ねてもよいし、最外層の下層に位置していてもよい。
低屈折率皮膜が前記の最外層を兼ねる場合、最外層について既に述べたことを適用することができる。低屈折率皮膜が最外層の下層に位置する場合、低屈折率皮膜は、ケイ素化合物を含むことが好ましい。
また、低屈折率皮膜の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50、好ましくは1.35〜1.48、特に好ましくは1.40〜1.48である。
低屈折率皮膜が最外層の下層に位置する場合、低屈折率皮膜は塗布法または気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成することができる。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率皮膜を塗布で作製する場合、下記一般式(2)で表される化合物、その加水分解物、および該加水分解物が縮合して生成した架橋ケイ素ポリマーからなる群から選ばれた化合物で作製することが好ましく、特に架橋ケイ素ポリマーで作製することが好ましい。
【0120】
一般式(2)
abSiZ4-a-b
【0121】
一般式(2)中:Xは、炭素数1〜12の有機基(例えばアルキル、アリール、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルケニル、またはエポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基等)を表す。Yは、炭素数1〜3の炭化水素基である。Zは、ハロゲン原子またはアルコキシ基(例えば、OCH3、OC25、OC37等)を表す。aおよびbは、同一または異なって、0〜2の整数である。特に限定されないが、一般式(2)の具体例としてメチルシリケート、エチルシリケート等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシ又はトリアシルオキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどのジアルコキシ又はジアシルオキシシラン類などがあげられる。
特に硬度を必要とする場合にはエポキシ基、(メタ)アクリロイル基を含むケイ素化合物が好ましい。これらのケイ素化合物は単独又は2種類以上組み合わせることができる。
【0122】
これらのケイ素化合物は各種硬化剤、触媒を用いて硬化することが好ましく、例えば、ルイス酸、ルイス塩基を含む各種酸・塩基、及びこれらから形成される中性又は塩基性塩、例えば有機カルボン酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、臭素酸、亜セレン酸、チオ硫酸、オルトケイ酸、チオシアン酸、亜硝酸、アルミン酸、炭酸の金属塩、特にアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、更にアルミニウム、ジルコニウム、チタニウムのアルコキシド又はこれらの錯化合物などがあげられる。特に、好ましいのはアルミキレート化合物で、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセテートなどである。
【0123】
また、低屈折率皮膜には、無機微粒子、例えばLiF、MgF2、SiO2等の微粒子を添加することが好ましく、なかでもSiO2が特に好ましい。
低屈折率皮膜の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
低屈折率皮膜のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
低屈折率皮膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0124】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率皮膜の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0125】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、高屈折率皮膜で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が200nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。ここでいう平均粒径は重量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。
無機微粒子としては、高屈折率皮膜で例示した無機微粒子に加え、二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ATO、ITO、酸化亜鉛などの微粒子が挙げられる。好ましくは、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ATO、ITO、酸化亜鉛である。
【0126】
ハードコート層に含まれる無機微粒子の一次粒子の好ましい平均粒径は5〜200nm、より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nm、特に好ましくは20〜50nmである。
ハードコート層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましい。
ハードコート層の中における無機微粒子の粒子サイズは、好ましくは平均粒径で5〜300nm、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは20〜150nm、特に好ましくは20〜80nmである。
【0127】
ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。
前記したように、高屈折率皮膜はハードコート層を兼ねることができる。高屈折率皮膜がハードコート層を兼ねる場合、高屈折率皮膜で記載した手法を用いて高い屈折率を有する無機微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
【0128】
ハードコート層は、さらに後述する平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
【0129】
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層の形成において、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れたハードコート層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0130】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、ハードコート層形成用の塗布組成物を塗布することで構築することが好ましい。
【0131】
塗布溶媒としては、高屈折率皮膜で例示したケトン系溶剤であることが好ましい。ケトン系溶剤を用いることで、透明支持体(特に、トリアセチルセルロース支持体)の表面とハードコート層との接着性がさらに改良する。
特に好ましい塗布溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
塗布溶媒は、高屈折率皮膜で例示したケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
塗布溶媒は、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0132】
(反射防止フィルムの表面凹凸)
本発明に用いる反射防止フィルムは、高屈折率皮膜を有する側の表面に凹凸を形成し、防眩性を付与することもできる。
防眩性は表面の平均表面粗さ(Ra)と相関している。表面の凹凸は100cm2の面積の中からランダムに1mm2を取り出し、取り出した表面の1mm2の面積当たりに対し、平均表面粗さ(Ra)が0.01〜0.4μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.3μm、さらに好ましくは0.05〜0.25μm、特に好ましくは0.07〜0.2μmである。
平均表面粗さ(Ra)に関しては、奈良次郎著、テクノコンパクトシリーズ▲6▼「表面粗さの測定・評価法」((株)総合技術センター)に記載されている。
【0133】
本発明に用いる反射防止フィルムの表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することが出来る。
表面の凹凸の形成法としては公知の手法が用いられる。本発明では、フィルムの表面に高い圧力で凹凸の形状を有する版を押し当てる(例えば、エンボス加工)ことにより形成する手法、また、反射防止フィルム上のいずれかの層に粒子を含有させて防眩層とし、反射防止フィルムの表面に凹凸を形成する手法が好ましい。
エンボス加工により表面に凹凸を形成する方法では、公知の手法が適用できるが、特開2000−329905号公報に記載されている手法により凹凸を形成することが特に好ましい。
【0134】
反射防止フィルムのいずれかの層に粒子を含有させて防眩層を形成する場合、防眩層に用いる粒子としては、平均粒径が0.2〜10μmの粒子が好ましい。ここでいう平均粒径は、二次粒子(粒子が凝集していない場合は一次粒子)の重量平均径である。
粒子としては、無機粒子と有機粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
【0135】
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂から作製される粒子などが挙げられる。好ましくは、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子であり、特に好ましくはポリメチルメタクリレート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子である。
【0136】
凹凸を形成するために防眩層に用いる粒子としては、樹脂粒子である方が好ましい。
粒子の平均粒径は、好ましくは0.5〜7.0μm、更に好ましくは1.0〜5.0μm、特に好ましくは1.5〜4.0μmである。
粒子の屈折率は1.35〜1.80であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.75、さらに好ましくは1.45〜1.75である。
粒子の粒径分布は狭いほど好ましい。粒子の粒径分布を示すS値は下記式で表され、2以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.7以下である。
【0137】
S=[D(0.9)−D(0.1)]/D(0.5)
D(0.1):体積換算粒径の積算値の10%値
D(0.5):体積換算粒径の積算値の50%値
D(0.9):体積換算粒径の積算値の90%値
また、粒子の屈折率は特に限定されないが、防眩層の屈折率とほぼ同じである(屈折率差で0.005以内)か、0.02以上異なっていることが好ましい。
【0138】
粒子の屈折率と、防眩層の屈折率をほぼ同じにすることで、反射防止フィルムを画像表示面に装着したときのコントラストが改良される。
粒子の屈折率と防眩層の屈折率の間に屈折率の差を付けることで、反射防止フィルムを液晶表示面に装着したときの視認性(ギラツキ故障、視野角特性など)が改良される。
粒子の屈折率と防眩層の屈折率の間に屈折率の差を付ける場合、0.03〜0.5であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.3である。
防眩性を付与する粒子は、反射防止フィルム上に構築されたいずれかの層に含有させることができ、好ましくはハードコート層、低屈折率皮膜、高屈折率皮膜であり、特に好ましくはハードコート層、高屈折率皮膜である。複数の層に添加してもよい。
【0139】
(反射防止フィルムのその他の層)
より優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製するために、高屈折率皮膜の屈折率と透明支持体の屈折率の間の屈折率を有する中屈折率層を設けることが好ましい。
中屈折率層は、本発明の高屈折率皮膜において記載したのと同様に作製することが好ましく、屈折率の調整には皮膜中の無機微粒子の含有率を制御することで可能である。
反射防止フィルムには、以上に述べた以外の層を設けてもよい。例えば、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0140】
また、反射防止フィルムを液晶表示装置に適用する場合、視野角特性を改良する目的で、平均粒径が0.1〜10μmの粒子を添加したアンダーコート層を新たに構築することができる。ここでいう平均粒径は、二次粒子(粒子が凝集していない場合は一次粒子)の重量平均径である。粒子の平均粒径は、好ましくは0.2〜5.0μm、更に好ましくは0.3〜4.0μm、特に好ましくは0.5〜3.5μmである。
【0141】
粒子の屈折率は1.35〜1.80であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.75、さらに好ましくは1.45〜1.75である。
粒子の粒径分布は狭いほど好ましい。粒子の粒径分布を示すS値は前記式で表され、1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.7以下である。
【0142】
また、粒子の屈折率とアンダーコート層の屈折率との屈折率の差が0.02以上であることが好ましい。より好ましくは、屈折率の差が0.03〜0.5、さらに好ましくは屈折率の差が0.05〜0.4、特に好ましくは屈折率の差が0.07〜0.3である。
アンダーコート層に添加する粒子としては、防眩層で記載した無機粒子と有機粒子が挙げられる。
アンダーコート層は、ハードコート層と透明支持体の間に構築することが好ましい。また、ハードコート層を兼ねることもできる。
アンダーコート層に平均粒径が0.1〜10μmの粒子を添加する場合、アンダーコート層のヘイズは、3〜60%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50%であり、さらに好ましくは7〜45%、特に好ましくは10〜40%である。
【0143】
(反射防止フィルムの形成法等)
本発明において反射防止フィルムを構成する各層は、塗布法により作製したものが好ましい。塗布で形成する場合、各層はディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2,681,294号明細書記載)により作製することができる。2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号の各明細書および原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973年)に記載がある。ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法が好ましい。
また、反射防止フィルムの各層には、前述した微粒子、重合開始剤、光増感剤の他に、樹脂、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、なども添加することができる。
【0144】
本発明において反射防止フィルムは、物理強度(耐擦傷性など)を改良するために、高屈折層を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。ここで記載した動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で高屈折率皮膜を有する側の表面を移動させたときの、高屈折率皮膜を有する側の表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
また、反射防止フィルムは、防汚性能を改良するために、高屈折率皮膜を有する側の表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
反射防止フィルムが防眩機能を持たない場合、ヘイズは低いほど好ましい。
反射防止フィルムが防眩機能を有する場合、ヘイズは、0.5〜50%であることが好ましく、1〜40%であることがさらに好ましく、1〜30%であることが最も好ましい。
【0145】
(反射防止フィルムの構成)
本発明の反射防止フィルムの構成例を図面を引用しながら説明する。
図1は、優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示す態様は、透明支持体1、ハードコート層2、高屈折率皮膜3、低屈折率皮膜(最外層)4の順序の層構成を有する。透明支持体1と高屈折率皮膜3と低屈折率皮膜4は以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率皮膜の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率皮膜の屈折率
【0146】
図1(a)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率皮膜が下記数式(1)、低屈折率皮膜が下記数式(2)をそれぞれ満足することがさらに優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
【0147】
数式(1)(mλ/4)×0.7<n11<(mλ/4)×1.3
数式(1)中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率皮膜の屈折率であり、そして、d1は高屈折率皮膜の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
【0148】
数式(2)(nλ/4)×0.7<n22<(nλ/4)×1.3
数式(2)中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率皮膜の屈折率であり、そして、d2は低屈折率皮膜の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
なお、上記数式(1)および数式(2)を満たすとは、上記各波長の範囲において数式(1)を満たすm(正の整数、一般に1、2または3である)、及び、数式(2)を満たすn(正の奇数、一般に1である)が存在することを意味している。以下、数式(3)〜(8)についても同様である。
【0149】
図1(b)に示す態様は、透明支持体1、ハードコート層2、中屈折率層5、高屈折率皮膜3、低屈折率皮膜(最外層)4の順序の層構成を有する。透明支持体1、中屈折率層5、高屈折率皮膜3および低屈折率皮膜4は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率皮膜の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率皮膜の屈折率
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(3)、高屈折率皮膜が下記数式(4)、低屈折率皮膜が下記数式(5)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
【0150】
数式(3)(hλ/4)×0.7<n33<(hλ/4)×1.3
数式(3)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
【0151】
数式(4)(iλ/4)×0.7<n44<(iλ/4)×1.3
数式(4)中、iは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率皮膜の屈折率であり、そして、d4は高屈折率皮膜の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
【0152】
数式(5)(jλ/4)×0.7<n55<(jλ/4)×1.3
数式(5)中、jは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率皮膜の屈折率であり、そして、d5は低屈折率皮膜の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
【0153】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(6)、高屈折率皮膜が下記数式(7)、低屈折率皮膜が下記数式(8)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。
ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
数式(6)(hλ/4)×0.80<n33<(hλ/4)×1.00
数式(7)(iλ/4)×0.75<n44<(iλ/4)×0.95
数式(8)(jλ/4)×0.95<n55<(jλ/4)×1.05
【0154】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(a)〜(b)では、高屈折率皮膜を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
ハードコート層、中屈折率層、高屈折率皮膜に、平均粒径が0.2〜10μmの粒子を含有させて、防眩機能を有する反射防止フィルムを作製することも好ましい。
【0155】
図2(a)に示す態様は、透明支持体1、防眩層(高屈折率皮膜)6、そして低屈折率皮膜(最外層)4の順序の層構成を有する。防眩層に含まれる粒子7は、平均粒径が0.2〜10μmの粒子である。
図2(b)に示す態様は、透明支持体1、ハードコート層2、防眩層(高屈折率皮膜)6、そして低屈折率皮膜(最外層)4の順序の層構成を有する。防眩層6に含まれる粒子7は、平均粒径が0.2〜10μmの粒子である。
【0156】
図2(a)〜(b)に示す態様では透明支持体1、防眩層(高屈折率皮膜)6、低屈折率皮膜4は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
防眩層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率皮膜の屈折率
【0157】
図2(a)〜(b)のような層構成では、低屈折率皮膜4が下記数式(9)を満足することが優れた反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
数式(9)(kλ/4)×0.7<n<(kλ/4)×1.3
数式(9)中、kは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率皮膜の屈折率であり、そして、dは低屈折率皮膜の層厚(nm)である。また、λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
なお、上記数式(9)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(9)を満たすk(正の奇数、一般に1)が存在することを意味している。
なお、図2(a)〜(b)に示した態様は、高屈折率皮膜にハードコート性を付与する場合に好ましく用いられ、極めて物理強度(耐擦傷性など)に優れた反射防止フィルムを作製できる。
【0158】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、偏向膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方に、本発明の反射防止フィルムを有する。偏光板用保護フィルムは、上記のように、高屈折率皮膜を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。
【0159】
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角を非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0160】
(偏光膜)
本発明の偏光板に用いることのできる偏光膜としては公知のものを用いることできる。偏光膜に用いられるポリマーフィルムに関しては特に制限はなく、熱可塑性で、揮発性溶剤に可溶の適宜なポリマーからなるフィルムを用いることができる。ポリマーの例としては、PVA、ポリカーボネート、セルロースアシレート、ポリスルホン等が挙げられる。また、ポリマーフィルムの延伸方法に関しても特に制限はなく、公知の延伸方法を用いることができる。
【0161】
(偏光板用保護フィルム)
本発明の反射防止フィルムを偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、高屈折率皮膜を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。さらに好ましくは30°以下であり、特に好ましくは25°以下である。
接触角を40°以下にすることは、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
【0162】
透明支持体としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。
本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、下記2つの手法が挙げられる。
(1)鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、高屈折率皮膜、ハードコート層、最外層など)を塗設する手法。
(2)透明支持体の一方の面に上記の各層(例、高屈折率皮膜、ハードコート層、低屈折率皮膜、最外層など)を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法。
【0163】
(1)において、透明支持体の一方の面のみが鹸化処理されている場合、各層は鹸化処理されていない側に塗設する。透明支持体の両方の面が鹸化処理されている場合、各層を塗設する側の鹸化処理した透明支持体の表面をコロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理などの手法により表面処理し、その後、各層を塗設することが好ましい。
(2)において、反射防止フィルム全体を鹸化液に浸せきすることが好ましい。この場合、反射防止フィルムは各層を有する側の表面を保護フィルムで保護して鹸化液に浸せきし、偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面を鹸化処理することもできる。
さらにまた、反射防止フィルムの偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面に鹸化処理液を塗布して、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理することもできる。
(2)の手法が、偏光板用保護フィルムを安価に製造できる点で好ましい。
【0164】
偏光板用保護フィルムは、光学性能(反射防止性能、防眩性能など)、物理性能(耐擦傷性など)、耐薬品性、防汚性能(耐汚染性など)、耐候性(耐湿熱性、耐光性)において、本発明の反射防止フィルムで記載した性能を満足することが好ましい。
従って、高屈折率皮膜を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
また、高屈折率皮膜を有する側の表面の水に対する接触角は90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0165】
(鹸化処理)
上記の鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に透明支持体、又は、反射防止フィルムを適切な時間浸漬して実施するのが好ましい。
アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3規定であり、特に好ましくは1〜2規定である。好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃である。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0166】
鹸化処理することにより、透明支持体の表面が親水化される。 偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、高屈折率皮膜を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは25゜以下である。
【0167】
(光学補償フィルム)
光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特許2587396号、特許2565644号、特開2002−82226号等の光学補償シートが挙げられる。中でも、特開2001−100042号に記載されている透明支持体上にディスコティック構造単位を有する化合物から形成された光学異方性層を有し、該ディスコティック化合物の円盤面と支持体とのなす角度が透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。すなわち、ディスコティック構造単位を有する化合物の配向状態としては、例えば、ハイブリッド配向、ベント配向、ツイスト配向、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向等であっても良く、ハイブリッド配向であることが特に好ましい。
該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
【0168】
また、透明支持体がセルロースエステルである態様、光学異方性層と透明支持体との間に配向層が形成されている態様、透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、且つ該透明支持体面の法線方向に光軸を有しする態様、光学的に二軸性を有する態様、更に下記の条件を満足する態様も好ましい。
20≦{(nx+ny)/2−nz}×d≦400
式中、nxは面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率、nzは面に垂直方向の屈折率である。また、dは光学異方性層の厚さ(nm)である。
【0169】
〔画像表示装置〕
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。反射防止フィルムは、反射防止フィルムの透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。
図3及び図4は本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に適用する様々な態様を模式的に示す概略断面図である。
【0170】
図3(a)は、反射防止フィルムを画像表示装置、特に、PDP、ELD、CRTに適用する好ましい態様である。反射防止フィルムは、透明支持体(1)を粘着剤層(8)を介して画像表示装置の画像表示面に接着している。
【0171】
図3(b)と図4(c)及び(d)は、反射防止フィルムをLCDに適用する好ましい態様である。図3(b)では、反射防止フィルムの透明支持体(1)が粘着剤層(8)を介して偏光膜の保護フィルム(9)に接着しており、もう一方の偏光膜の保護フィルム(10)が粘着剤層(8)を介して液晶表示装置の液晶表示面に接着している。
【0172】
図4(c)では、反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の透明支持体(1)が粘着剤層(8)を介して偏光膜(11)に接着しており、偏光膜の保護フィルム(10)が粘着剤層(8)を介して液晶表示装置の液晶表示面に接着している。図4(d)では、本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)は透明支持体(1)が直接偏光膜(11)に接着しており、偏光膜の保護フィルム(10)が粘着剤層(8)を介して液晶表示装置の液晶表示面に接着している。粘着剤層(8)には、粒子,染料などの添加剤を添加してもよい。
【0173】
本発明に用いる反射防止フィルム、及び、偏光板は、 ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面および内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【0174】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
[実施例1−1]
(ハードコート層用塗布液の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)315.0gに、シリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液(MEK−ST、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製)450.0g、メチルエチルケトン15.0g、シクロヘキサノン220.0g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)16.0g、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0175】
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
コバルトを含有する二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)において、表面処理(水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムの表面処理)を実施していない粒子を作製した。
上記の粒子257.1gに、下記分散剤38.6g、およびシクロヘキサノン704.3gを添加してダイノミルにより分散し、重量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0176】
【化13】
Figure 2004191873
【0177】
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)58.4g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.1g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1g、メチルエチルケトン482.4g、およびシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用の塗布液を調製した。
【0178】
(高屈折率皮膜用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)49.9g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)4.0g、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.3g、メチルエチルケトン455.8g、およびシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率皮膜用の塗布液を調製した。
【0179】
(シラン化合物の調整)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)161質量部、シュウ酸123質量部、エタノール415質量部を加え混合したのち、70℃で4時間反応させた後、室温まで冷却し、硬化性組成物として透明なシラン化合物を得た。重量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0180】
(低屈折率皮膜用塗布液の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(オプスターJN7228、固形分濃度6質量%、JSR(株)製)を溶媒置換して、熱架橋性フッ素ポリマーの固形分濃度10質量%のメチルイソブチルケトン溶液を得た。上記、熱架橋性フッ素ポリマー溶液56.0gにシリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液(MEK−ST、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製)8.0g、上記シラン化合物を1.75g、およびメチルイソブチルケトン73.0g、シクロヘキサノン33.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率皮膜用の塗布液を調製した。
【0181】
(反射防止フィルムの作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士写真フイルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ3.5μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.65、膜厚67nm)を形成した。
【0182】
中屈折率層の上に、高屈折率皮膜用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率皮膜(屈折率1.93、膜厚107nm)を形成した。
【0183】
高屈折率皮膜の上に、低屈折率皮膜用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。80℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、120℃で10分間加熱して、低屈折率皮膜(屈折率1.43、膜厚86nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルムを作製した。
【0184】
[比較例1−A]
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、二酸化チタン微粒子(TTO−55N、石原産業(株)製)を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0185】
[実施例1−2]
(二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子の作製、及び、ドープ法において公知の手法(特開平5−330825)に基づき、鉄(Fe)をコバルトに変更した以外は同様にして、二酸化チタン粒子の中にコバルトをドープしたコバルト含有の二酸化チタン微粒子を作製した。
コバルトのドープ量は、Ti/Co(質量比)で、98.5/1.5となるようにした。
作製した二酸化チタン粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が44m2/gであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、上記で作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0186】
[実施例1−3]
(二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子の作製、及び、ドープ法において公知の手法(特開平5−330825)に基づき、鉄(Fe)をアルミニウムに変更した以外は同様にして、二酸化チタン粒子の中にアルミニウムをドープしたアルミニウム含有の二酸化チタン微粒子を作製した。アルミニウムのドープ量は、Ti/Al(質量比)で、97.5/2.5となるようにした。
作製した二酸化チタン粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが39nm、比表面積が43m2/gであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、上記で作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0187】
[実施例1−4]
(二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子の作製、及び、ドープ法において公知の手法(特開平5−330825)に基づき、鉄(Fe)をジルコニウムに変更した以外は同様にして、二酸化チタン粒子の中にジルコニウムをドープしたジルコニウム含有の二酸化チタン微粒子を作製した。ジルコニウムのドープ量は、Ti/Zr(質量比)で、97.5/2.5となるようにした。
作製した二酸化チタン粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が39m2/gであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、上記で作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0188】
[実施例1−5]
(二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子の作製、及び、ドープ法において公知の手法(特開平5−330825)に基づき、鉄(Fe)をコバルトとアルミニウムに変更した以外は同様にして、二酸化チタン粒子の中にコバルトとアルミニウムをドープしたコバルト、アルミニウム含有の二酸化チタン微粒子を作製した。コバルトとアルミニウムのドープ量は、Ti/Co/Al(質量比)で、97.5/1.25/1.25となるようにした。
作製した二酸化チタン粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が39m2/gであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、上記で作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0189】
[比較例1−B]
(二酸化チタン粒子の作製)
ドープする元素を無くした以外は、実施例1−2と全く同様にして二酸化チタン微粒子を作製した。
作製した二酸化チタン粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが39nm、比表面積が42m2/gであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、上記で作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例1−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0190】
(反射防止フィルムの評価)
以上で作製した反射防止フィルム(実施例1−1〜5、比較例1−A、B)について、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)ヘイズの評価
ヘイズメーター(NHD−1001DP、日本電色工業(株)製)を用いて、反射防止フィルムのヘイズを評価した。
【0191】
(2)反射率の評価
分光光度計(V−550、ARV−474、日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。450〜650nmの波長範囲における平均反射率を求めた。
【0192】
(3)耐候性の評価
キセノンアークランプ式耐光性試験機(XF型)を用いて、温度63℃、相対湿度50%の雰囲気下で、石英フィルターの透過光における露光時間0時間、300時間、600時間、900時間において、耐候性試験を行った。
露光後の反射防止フィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。
【0193】
反射防止フィルムの高屈折率皮膜を有する側の表面において、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)による密着試験を同じ場所で繰り返し3回行なった。剥がれの有無を目視で観察し、下記の4段階評価を行った。
100升において剥がれが全く認められなかったもの :◎
100升において剥がれが認められたものが2升以内のもの :○
100升において剥がれが認められたものが10〜3升のもの :△
100升において剥がれが認められたものが10升をこえたもの :×
【0194】
【表1】
Figure 2004191873
【0195】
[実施例2−1]
(ハードコート層用塗布液の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)315.0gに、シリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液(MEK−ST、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製)450.0g、メチルエチルケトン15.0g、シクロヘキサノン220.0g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)16.0g、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
コバルトを含有する二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)において、表面処理(水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムの表面処理)を実施していない粒子を作製した。
上記の粒子257.1gに、下記の分散剤38.6g、添加剤(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート)2.6g、およびシクロヘキサノン701.7gを添加してダイノミルにより分散し、重量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0196】
【化14】
Figure 2004191873
【0197】
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)58.4g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.1g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1g、メチルエチルケトン482.4g、およびシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用の塗布液を調製した。
【0198】
(高屈折率皮膜用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)49.9g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)4.0g、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.3g、メチルエチルケトン455.8g、およびシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率皮膜用の塗布液を調製した。
【0199】
(シラン化合物の調整)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)161質量部、シュウ酸123質量部、エタノール415質量部を加え混合したのち、70℃で4時間反応させた後、室温まで冷却し、硬化性組成物として透明なシラン化合物を得た。重量平均分子量は1600であり、オリゴマー以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0200】
(低屈折率皮膜用塗布液の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(オプスターJN7228、固形分濃度6質量%、JSR(株)製)を溶媒置換して、熱架橋性フッ素ポリマーの固形分濃度10質量%のメチルイソブチルケトン溶液を得た。この熱架橋性フッ素ポリマー溶液56.0gにシリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液(MEK−ST、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製)8.0g、上記シラン化合物を1.75g、およびメチルイソブチルケトン73.0g、シクロヘキサノン33.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率皮膜用の塗布液を調製した。
【0201】
(反射防止フィルムの作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士写真フイルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ3.5μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.65、膜厚67nm)を形成した。
【0202】
中屈折率層の上に、高屈折率皮膜用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率皮膜(屈折率1.93、膜厚107nm)を形成した。
【0203】
高屈折率皮膜の上に、低屈折率皮膜用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。80℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、120℃で10分間加熱して、低屈折率皮膜(屈折率1.43、膜厚86nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルムを作製した。
【0204】
[比較例2−A]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、二酸化チタン微粒子(TTO−55N、石原産業(株)製)を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0205】
[実施例2−2]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、実施例1−2で作製したコバルトをドープした二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0206】
[実施例2−3]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、実施例1−3で作製したアルミニウムをドープした二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0207】
[実施例2−4]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、実施例1−4で作製したジルコニウムをドープした二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0208】
[実施例2−5]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、実施例1−5で作製したコバルトとアルミニウムをドープした二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.92、膜厚は107nmであった。
【0209】
[比較例2−B]
(反射防止フィルムの作製)
実施例2−1のコバルトを含有する二酸化チタン微粒子のかわりに、比較例1−Bで作製した二酸化チタン粒子を用いた。それ以外は、実施例2−1と全く同様にして反射防止フィルムを作製した。なお、高屈折率皮膜の屈折率は1.93、膜厚は107nmであった。
【0210】
(反射防止フィルムの評価)
以上で作製した反射防止フィルム(実施例2−1〜5、比較例2−A,B)について、実施例1と全く同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0211】
【表2】
Figure 2004191873
【0212】
[実施例3]
(画像表示装置の評価)
実施例1−1〜5、2−1〜5で作製した本発明の反射防止フィルムを、画像表示装置のディスプレイ面に装着して画像表示装置を作製した。本発明の反射防止フィルムを用いた画像表示装置は、反射防止性能に優れ、極めて視認性が優れていた。
【0213】
[実施例4]
(偏光板用保護フィルムの作製)
1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温した鹸化液を調整した。さらに、0.01Nの希硫酸水溶液を調製した。
実施例1−1〜1〜5、実施例2−1〜2−5で作製した反射防止フィルムにおいて、本発明の高屈折率皮膜を有する側とは反対側の透明支持体の表面を、上記鹸化液を用いて鹸化処理した。
鹸化処理した透明支持体表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄し、100℃で十分に乾燥させた。
反射防止フィルムの高屈折率皮膜を有する側とは反対側の、鹸化処理した透明支持体の表面の水に対する接触角を評価したところ、40度以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
(偏光板の作製)
膜厚75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製)を水1000質量部、ヨウ素7質量部、ヨウ化カリウム105質量部からなる水溶液に5分間浸漬し、ヨウ素を吸着させた。次いで、このフィルムを4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。
接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムを同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、反射防止性能に優れ、極めて視認性が優れていた。
【0214】
[実施例5]
(偏光板の作製)
ディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、透明支持体からの距離に伴って変化している光学補異方性を有する光学補償フィルム(ワイドビューフィルムSA−12B、富士写真フイルム(株)製)において、光学異方性層を有する側とは反対側の表面を実施例4と同様の条件で鹸化処理した。
実施例4で作製した偏光膜に、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に、実施例4で作製した反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には鹸化処理した光学補償フィルムのトリアセチルセルロース面を同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が非常に広く、さらに、反射防止性能に優れ、極めて視認性と表示品位が優れていた。
【0215】
【発明の効果】
コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する高屈折率皮膜を作製することにより、耐候性(特に、耐光性)に優れた反射防止フィルムを安価で大量に提供することができる。
さらにこれらにより上記特徴を保持した偏光板、画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(b)いずれも反射防止性能に優れた反射防止フィルムの層構成を模式的に示す概略断面図である。
【図2】(a)〜(b)いずれもさらに防眩性能を有する反射防止フィルムの層構成を模式的に示す概略断面図である。
【図3】(a)〜(b)いずれも反射防止フィルムを画像表示装置に適用する態様を模式的に示す概略断面図である。
【図4】(c)〜(d)いずれも反射防止フィルムを液晶表示装置に適用する態様を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 透明支持体
2 ハードコート層
3 高屈折率皮膜
4 低屈折率皮膜(最外層)
5 中屈折率層
6 防眩層
7 平均粒径が0.2〜10μmの粒子
8 粘着剤層
9 偏光膜の保護フィルム
10 偏光膜の保護フィルム
11 偏光膜

Claims (10)

  1. コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有し、屈折率が1.55〜2.40であることを特徴とする高屈折率皮膜。
  2. 前記無機微粒子に含有される元素が、無機微粒子の内部に存在することを特徴とする請求項1に記載の高屈折率皮膜。
  3. 前記無機微粒子が少なくともコバルトを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高屈折率皮膜。
  4. 有機化合物のバインダーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高屈折率皮膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の高屈折率皮膜を形成するための塗布組成物。
  6. 透明支持体上に請求項1〜4のいずれかに記載の高屈折率皮膜を有する反射防止フィルム。
  7. 偏光膜と保護フィルムとを有する偏光板であって、請求項6に記載の反射防止フィルムを保護フィルムの少なくとも一方として用いたことを特徴とする偏光板。
  8. 偏光膜と保護フィルムとを有する偏光板であって、請求項6に記載の反射防止フィルムを保護フィルムの一方として用い、光学異方性を有する光学補償フィルムを保護フィルムのもう一方として用いたことを特徴とする偏光板。
  9. 前記光学補償フィルムが、透明支持体の一方の面に光学異方層を有し、該光学異方層がディスコティック構造単位を有する化合物を含有し、該ディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする請求項8に記載の偏光板。
  10. 請求項6に記載の反射防止フィルムが画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
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