JP2004190135A - 銀鉛含有物からの銀回収方法 - Google Patents

銀鉛含有物からの銀回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 銀鉛塩化物含有原料から銀および鉛を分離性良く回収する。
【解決手段】 銀鉛塩化物を含有する原料を希硫酸でスラリー化し、これに鉄粉を添加して塩化銀を還元し、メタリックの銀を析出させる工程(鉄粉による銀還元工程)、このスラリーにさらに硫酸を添加して塩化鉛を硫酸鉛に転化して沈澱化し、メタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を回収する工程(硫酸鉛化工程)、この混合物を還元熔錬し、銀を含むメタルと硫酸鉛を含むスラグとを形成させ、メタルとスラグを分離する工程(還元熔錬工程)、回収したメタルを酸化熔錬して粗銀を得る工程(酸化熔錬工程)を含むことを特徴とする銀鉛含有物からの銀の回収方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、銀鉛含有滓、特に銅電解スライムを湿式塩化処理して得た銀鉛含有滓から銀を効率良く鉛と分離して回収する方法に関する。また、好ましくは、銀を回収すると共に金、セレン等を回収する処理方法に関する。
従来、銅製錬における銅電解工程では、電解液に不溶な不純物が残渣として副生する。この銅電解スライムには白金、セレン、テルル、鉛、金、銀、銅などがかなりの量含まれており、これらの金属を分離回収する方法がこれまで多数提案されている。これらの金属の性質は様々であるため、全ての金属種を単一の方法で同時に分離回収することは困難であるので、個々の金属ごとに、あるいは同時に2種の金属をそれぞれ分離して回収する方法が従来から試みられている。これらの方法を組み合わせた連続処理するシステムが知られている。
例えば、銀を塩化物として含有する銅電解スライム中間処理物について、これを水酸化アルカリまたは炭酸アルカリの水溶液と反応させ、固液分離して得た残渣をさらに硝酸溶液と反応させて、残渣中の鉛を硝酸鉛として溶出させる一方、銀を残渣中に残し、これを固液分離して鉛と銀を分離する銀の濃縮法が知られている(特許文献1)。この処理方法は、銀の濃縮効果が従来の方法より高いが、アルカリを過剰に添加する必要があり、また反応温度が室温を超えると鉛と共に銀が溶出するため鉛と銀の分離が困難になるなどの問題がある。
また、銅電解スライムを焙焼して貴金属、ビスマス、鉛を含有する焙焼澱物を回収し、この焙焼澱物に所定量の鉄を加えて溶融し、高アンチモンスラグと貴鉛とを生成させ、この貴鉛を分銀工程で処理する方法が知られている(特許文献2)。しかし、この方法は鉛と銀の分離性が良いものの、熔錬工程で銀塊を製造するときに金が混入するため、銀の電解回収工程と金の電解回収工程が必要になるなどの問題がある。また、本処理方法は乾式処理であるため銀や金以外の貴金属について湿式方法との組み合わせが難しい。
さらに、銅電解スライムの塩化浸出澱物から銀を回収する方法として、この澱物を水でリパルプして鉄粉を加え、銀と鉛を同時に還元して塩素を除くことによってメタリックの銀と鉛を沈澱させ、この混合物を酸化炉で溶融し、鉛を酸化してスラグ化する一方、メタルの粗銀を分離回収する方法が知られている(特許文献3)。しかし、この回収方法は、鉄粉によって銀と鉛を同時に還元して両者をメタル化するものであり、銀の他に鉛を還元する量の鉄粉を必要とし、鉛含有量が多い場合には次工程の酸化溶練においてスラグ量が増し、後処理の負担が大きい。また、銀と鉛の分離性が必ずしも良くないため銀のロスが多く、澱物に含まれる鉛分が高い場合には適用し難いと云う問題がある。
特公昭60−59975号公報 特開平4−236731号公報 特開2001−316736号公報
本発明者等は、従来の処理方法における上記問題を解決したものであり、銅電解スライム等から銀と鉛を効率良く分離し、高品位の銀を効率良く回収する方法を提供する。さらに好ましくは銀と共に金およびセレン等を回収する処理方法を提供する。
すなわち、本発明は以下の構成からなる銀の回収方法等に関する。
(1)銀鉛塩化物を含有する原料を希硫酸でスラリー化し、これに鉄粉を添加して塩化銀を還元し、メタリックの銀を析出させる工程(鉄粉による銀還元工程)、このスラリーにさらに硫酸を添加して塩化鉛を硫酸鉛に転化して沈澱化し、メタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を回収する工程(硫酸鉛化工程)、この混合物を還元熔錬し、銀を含むメタルと硫酸鉛を含むスラグとを形成させ、メタルとスラグを分離する工程(還元熔錬工程)、回収したメタルを酸化熔錬して粗銀を得る工程(酸化熔錬工程)を有することを特徴とする銀鉛含有物から銀を回収する方法
(2)銀還元工程において、銀鉛塩化物を含有する原料に希硫酸を添加してpH1〜3の硫酸酸性スラリーにする上記(1)の銀回収方法。
(3)銀還元工程において、スラリー中の銀含有量に対して反応当量の1〜2倍の鉄粉を添加する上記(1)または(2)に記載する銀回収方法。
(4)硫酸鉛化工程において、スラリー中の鉛含有量に対して反応当量の1.5〜5倍の硫酸を添加する上記(1)、(2)または(3)に記載する銀回収方法。
(5)銀還元工程、硫酸鉛化工程、および還元熔錬工程を経ることによって原料中の鉛分の90%以上をスラグ化して分離する上記(1)〜(4)の何れかに記載する銀回収方法。
(6)酸化熔錬工程において、メタル相の鉛含有量が0.1%以下になるまで酸化熔錬を行ってスラグ相を分離する上記(1)〜(5)の何れかに記載する銀回収方法。
(7)酸化熔錬工程において、シリカ材料を添加して銀の反応を抑制する上記(1)〜(6)の何れかに記載する銀回収方法。
(8)回収した粗銀を電解精製して高純度銀を得る工程を含む上記(1)〜(7)の何れかに記載する銀回収方法。
(9)酸化熔錬工程で回収した粗銀を電解精製した電気銀を高周波誘導加熱によって溶融した後に鋳込んで銀インゴットを製造する工程を含む上記(1)〜(8)の何れかに記載する銀回収方法。
(10)銀鉛塩化物含有原料が銅電解スライムを塩化浸出して固液分離した澱物である上記(1)〜(9)の何れかに記載する銀回収方法。
(11)銀鉛塩化物含有澱物について上記(1)〜(10)の何れかの銀回収処理を行う一方、塩化浸出液について溶媒抽出によって金を選択的に抽出する工程と、金抽出後の溶媒を希塩酸で洗浄する工程と、溶媒中の金を還元して回収する工程を含む処理方法。
(12)上記(11)の金回収工程の後に、回収した金を高周波誘導加熱によって溶融し、これを鋳込んで金インゴットを製造する工程を含む処理方法。
(13)上記(11)または(12)の処理方法において、金の抽出残液を加熱して溶媒を蒸留除去した後に、この抽出残液に亜硫酸ガスを導入してセレンないしテルルおよび白金族を還元する工程と、還元析出したセレンを蒸留して高純度セレンを得る工程を含む処理方法。
(14)上記(13)の高純度セレンを回収する工程の後に、回収した高純度セレンを溶融状態で水中に滴下してショット状の金属セレンを得る工程を含む処理方法。
〔発明の具体的な説明〕
以下、本発明の銀回収方法を具体的に説明する。なお、%は特に示さない限りwt%である。
本発明の処理方法の概略を図1に示す。図示するように、本発明の銀回収方法は、銀鉛塩化物を含有する原料を希硫酸でスラリー化し、これに鉄粉を添加して塩化銀を還元し、メタリックの銀を析出させる工程(鉄粉による銀還元工程)、このスラリーにさらに硫酸を添加して塩化鉛を硫酸鉛に転化して沈澱化し、メタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を回収する工程(硫酸鉛化工程)、この混合物を還元熔錬し、銀を含むメタルと硫酸鉛を含むスラグとを形成させ、メタルとスラグを分離する工程(還元熔錬工程)、回収したメタルを酸化熔錬して粗銀を得る工程(酸化熔錬工程)を含むことを特徴とする銀鉛含有物からの銀の回収方法である。
銀鉛塩化物含有原料
本発明の銀と鉛の塩化物を含有する原料としては銅電解スライム等を用いることができる。先に述べたように一般に銅電解や銀電解においては電解液に不溶な成分が蓄積して電解スライムとなる。例えば、銅電解スライムには白金、セレン、テルル、鉛、金、銀、銅を多く含んでいる。この銅電解スライムを塩化浸出処理して金を液中に抽出する。塩化浸出処理は塩酸溶液中で電解スライムに塩素ガスや過酸化水素を添加することによって行われる。この時、スライム中の銀、鉛は不溶性の塩化銀、塩化鉛となり浸出澱物中に残る。
鉄粉による塩化銀還元工程
上記塩化浸出澱物に希硫酸を加えてリパルプする。希硫酸の添加量はスラリーがpH1〜3の弱酸性になる程度の量であれば良い。希硫酸でリパルプすることによって硫酸酸性のスラリーになる。このスラリーに鉄粉を添加して塩化銀を還元する。スラリー中の塩化銀は鉄粉によって還元されてメタリックの銀が析出する。このように硫酸酸性のスラリーにすることによって鉄粉を添加したときにスラリー中の塩化銀が選択的に還元されてメタリックの銀が沈澱し、一方、鉛は還元されずに一部は塩化鉛として残り、他は硫酸鉛になって沈澱する。鉄粉の使用量はスラリー中の銀含有量に対して反応当量の1〜2倍が適量である。鉄粉による塩化銀の還元によってスラリー温度が上昇するが、必要に応じて加熱し、60℃〜90℃の温度で鉄粉による還元を行うと良い。
硫酸鉛化工程
銀を析出沈澱させたスラリーにさらに硫酸を添加して塩化鉛を硫酸鉛に転じて沈澱させる。硫酸の添加量はスラリー中の鉛含有量に対して反応当量の1.5〜5倍程度であれば良い。これを固液分離してメタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を回収する。なお、この鉄還元工程および硫酸鉛化工程を経ることにより、原料中に含まれていた塩素分が液中に取り除かれるので、後段の乾式熔錬工程を行い易くなる。
還元熔錬工程
メタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を還元熔錬し、銀を含むメタルと硫酸鉛を含むスラグとを形成させる。硫酸鉛の大部分はスラグ化する。また、この還元熔錬によって硫酸鉛の一部が還元され、メタルの銀と鉛が合金化して貴鉛(Ag-Pb合金)を形成するので、銀がスラグに取り込まれる量(銀損失量)を抑えることができる。還元熔錬は混合物中の硫酸鉛含有量に対して反応当量の20%〜50%のコークス粉、および反応当量の20%〜50%の炭酸ソーダを添加して1100℃〜1300℃の温度で行えば良い。なお、この還元熔錬において分離されたスラグには鉛分が多く含まれているので、これを鉛製錬原料として用いることができる。
以上のように、銀の選択的な還元、鉛の硫酸鉛化、および還元熔錬によって銀と鉛の分離を進め、酸化熔錬における鉛処理の負担を低減する。具体的には、原料中の鉛分の概ね90%以上をスラグ化して分離することができる。因みに、銀鉛塩化物澱物中の銀含有量約20%、鉛含有量約40%のような銀よりも鉛含有量が格段に多い原料について、上記各処理工程を経ることによって含有鉛の95%以上をスラグ中に分離することができる。
酸化熔錬工程
銀を含むメタルを回収して酸化熔錬を行う。酸化熔錬は炉内の貴鉛(Ag-Pb合金)を1050℃〜1200℃、好ましくは1100℃前後に加熱し、ランスを通じてメタル相に空気ないし酸素富化空気を吹き込んで熔錬すると良い。鉛は銀よりも酸化され易いのでこの酸化熔錬によってメタル中の鉛は酸化鉛に転じてスラグ化する。同時に他の不純物金属も酸化されてスラグ化する。一方、上記操業条件下で銀は酸化されずにメタル相に残る。従って銀から鉛を容易に除去することができる。
酸化熔錬の進行に伴ってメタル相の鉛含有量が次第に低下し、スラグ相(PbO)の量が増加する。この酸化熔錬の際に、メタル相の銀が酸化してスラグ相に移行するのを極力抑えるために、珪砂(SiO2)などのシリカ材料を添加して銀の反応性を抑えて熔錬を行うと良い。珪砂の添加量は2モルのPbOに対して1モルのSiO2の割合になる量が適当である。
この酸化熔錬はメタル相の鉛含有率が0.1%以下になるまで行ってスラグ相を分離する。スラグ相を分離したメタル相には銀が酸化されずに残り、鉛分や不純物がスラグ化して除去された粗銀を回収することができる。なお、酸化熔錬の際に生成するスラグに含まれる銀の量は約10%程度であるが、還元熔錬工程において大部分の硫酸鉛がスラグ化されて既に除去されており、酸化熔錬工程ではスラグ自体の量が少ないので銀の損失量も少なく、従来の方法よりも銀の損失量を大幅に低減することができる。このスラグは必要に応じて前工程の還元熔錬に戻しても良い。
なお、本発明の還元熔錬および酸化熔錬はおのおの還元炉および酸化炉を用いて行っても良く、あるいは電気炉を還元状態に保って還元熔錬を行い、次いで炉内を酸化状態に保って酸化熔錬を行っても良い。また、必要に応じて酸化炉の次に精製炉を設けても良い。
以上のように、本発明の方法は、塩化浸出澱物の硫酸スラリー化、鉄粉による銀の選択的な還元、鉛の硫酸鉛化、および還元熔錬の各処理工程を通じて銀と鉛の分離を進めた後に酸化熔錬を行うので、酸化熔錬における鉛処理の負担が大幅に低減される。因みに、スラリー中の銀還元の際に鉛を同時に還元して金属銀と金属鉛を含む混合物にし、これをそのまま酸化熔錬する方法では、酸化熔錬における鉛のスラグ量が多いため、メタルの銀がスラグに取り込まれる量が多く、銀の損失量が大幅に増える。また酸化熔錬の際に酸化鉛の揮発量が多くなり、煙灰処理の負担が増すなどの問題がある。従って、特に銀含有量よりも鉛含有量が多い原料については銀と鉛を同時に還元する方法は適さない。一方、本発明の方法は酸化熔錬に先立って鉛分をできるだけ除去するので、このような問題がなく、銀よりも鉛の含有量が多い原料についても好適に処理することができる。
電解精製工程等
上記酸化熔錬を経て回収した粗銀をアノードに鋳造して電解精製を行うことにより純度99.99%水準の高純度電気銀を得ることができる。電解条件等は限定されない。なお電解精製して得た電気銀を溶融鋳造し、銀インゴットを製造する場合、高周波誘導加熱を利用すれば短時間に銀を溶融することができる。
金の回収工程
本発明の処理方法は銀鉛塩化物含有原料として銅電解スライムなどを塩化浸出して固液分離した澱物を用いることができ、この澱物から効率よく銀を回収することができる。一方、塩化浸出液には金が含まれているので、この浸出液からDBC等を用いた溶媒抽出によって金を選択的に抽出し、この溶媒中の金を還元して回収することができる。本発明の処理方法は、銀鉛塩化物含有澱物について上記銀回収処理を行う一方、溶媒抽出による金の選択的な抽出工程と、金抽出後の溶媒を希塩酸で洗浄する工程と、溶媒中の金を還元して回収する工程を含むことができる。なお、回収した金を溶融鋳造し、金インゴットを製造する場合、高周波誘導加熱を利用すれば短時間に金を溶融することができる。
セレン等の回収工程
さらに、上記金抽出残液にはセレンテルルおよび白金族元素が含まれているので、これを加熱して溶媒を蒸留除去した後に、この抽出残液に亜硫酸ガスを導入してセレンないしテルルおよび白金族を還元する。さらに還元析出したセレンを蒸留して高純度セレンを得ることができる。本発明の処理方法はこれらの工程を含むことができる。なお、回収した高純度セレンを溶融状態で水中に滴下してショット状にすることによって、取扱性の良い高純度セレン粒を得ることができる。
また、白金族を含むセレン蒸留残渣をアルカリ溶融し、さらに水浸出してセレンを含む浸出液と白金族を含む残物とに分離する。これらの残物に含まれる白金族は酸化剤の存在下で塩酸を加えて溶解することができ、この白金族含有溶液から白金族を回収することができる。
本発明の銀回収方法は、電解スライムの塩化浸出澱物等について、これを硫酸酸性スラリーにした後に、塩化銀を還元してメタリックの銀を脱塩析出させる一方、塩化鉛を硫酸鉛に転じて沈澱化し、この混合物を還元熔錬して硫酸鉛をスラグ化することによってメタルに含まれる銀と鉛の分離を進め、さらにこのメタルを酸化熔錬して浴中の鉛をスラグに追い出して粗銀を回収する方法であり、各工程を通じて銀と鉛の分離を進めながら銀を回収する方法である。従って、鉛含有量の多い塩化浸出澱物についても鉛含有量が少ない粗銀を回収することができ、しかも銀のロスが少なく効率よく銀を回収することができる。
このように本発明の銀回収方法によれば、銅電解スライムの塩化浸出澱物などから、鉛の品位にかかわらず、銀を効率よく鉛から分離して回収することができる。また、本発明の方法は、原料に含まれる鉛を硫酸鉛としてスラグオフするので、原料中の鉛品位が高くても銀と鉛の分離性が良く、また還元炉で熔錬するので銀のスラグ中へのロスも最小限に抑えることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に示し、また比較例を示す。下記実施例に示すように、本発明の銀回収方法によれば、粗銀の回収量が多く、しかも粗銀の鉛含有率は0.02%(実施例1)、0.06%(実施例2)であり、格段に鉛含有量が低い。また、スラグ中に取り込まれる銀の損失量が少ない。一方、硫酸鉛化工程および還元熔錬を行わない比較例では酸化熔錬後に回収した粗銀の回収率が低く、しかも粗銀の鉛含有率は9.2%と高く、またスラグ中に含まれる銀の損失量が多い。
銅電解ステイムを脱銅処理後、塩化浸出して得られた銀鉛塩化物含有澱物(Ag15.2%、Pb54.5%)1000gに希硫酸(濃度0.1N)を3L加えてリパルプし、pH1.2の硫酸酸性スラリーにした。このスラリーを80℃に昇温して攪拌しながら鉄粉59gを添加し、1時間反応させた。このスラリーに引き続き50%硫酸を740mL加え、80℃に保ちつつ1時間攪拌して反応させた。この反応生成物を固液分離して固形物1020gを回収した。固形物の分析値はAg:14.7%、Pb:53.4%、Cl:0.81%であった。この固形物をコークス粉15gおよびソーダ灰100gと共に電気炉に入れ、1100℃にて1時間保持して還元熔錬を行った。生成物からスラグを分離してメタル(貴鉛)165gを得た。このメタルの鉛含有量は8.4%であった。更に、このメタルを電気炉中で1050℃にて80%酸素富化空気を吹込んで酸化溶錬を行った。得られたメタルの粗銀は146gであり、その鉛含有量は0.02%であった。一方、スラグに含まれる銀の合計損失量は2.7%であった。
実施例1と同様の銀鉛塩化物含有澱物(Ag29.6%、Pb39.9%)1000gに希硫酸(濃度0.1N)を3L加えてリパルプし、pH1.2の硫酸酸性スラリーにした。このスラリーを80℃に昇温して攪拌しながら鉄粉115gを添加し、1時間反応させた。このスラリーに引続き50%硫酸を540mL加え、80℃に保ちつつ1時間攪拌して反応させた。この反応生成物を固液分離して固形物952gを回収した。固形物の分析値はAg:31.0%、Pb:41.7%、C1:0.76%であった。この固形物をコークス粉10gおよびソーダ灰75gと共に電気炉に入れ、1100℃にて1時間保持して還元熔錬を行った。生成物からスラグを分離してメタル(貴鉛)325gを得た。このメタルの鉛含有量は9.2%であった。更に、このメタルを電気炉中で1050℃にて80%酸素富化空気を吹込んで酸化熔錬を行った。得られたメタルの粗銀は281gであり、鉛含有量は0.06%であった。一方、スラグに含まれる銀の合計損失量は4.7%であった。
比較例
実施例1と同一の銀鉛塩化物含有澱物1000gを水でリパルプし、希塩酸を少量添加してスラリーのpHを1.5とし、これに鉄粉220gを添加し、80℃で2時間攪拌して反応させた。反応後のスラリーを固液分離して固形物を776g回収した。この固形物の分析値はAg:19.6%.Pb:70.2%,Cl:l.20%であり、銀と鉛は何れもメタリックの形態になっていた。この固形物を電気炉に入れ、1050℃で80%酸素富化空気を吹込んで酸化熔錬を行ったところ、119gのメタル(粗銀)と528gのスラグが得られた。メタル中の鉛含有量は0.93%であり、スラグに含まれる銀の損失量は22.4%であった。
本発明の回収方法の概略を示す工程図

Claims (14)

  1. 銀鉛塩化物を含有する原料を希硫酸でスラリー化し、これに鉄粉を添加して塩化銀を還元し、メタリックの銀を析出させる工程(鉄粉による銀還元工程)、このスラリーにさらに硫酸を添加して塩化鉛を硫酸鉛に転化して沈澱化し、メタリックの銀と硫酸鉛を含む混合物を回収する工程(硫酸鉛化工程)、この混合物を還元熔錬し、銀を含むメタルと硫酸鉛を含むスラグとを形成させ、メタルとスラグを分離する工程(還元熔錬工程)、回収したメタルを酸化熔錬して粗銀を得る工程(酸化熔錬工程)を有することを特徴とする銀鉛含有物から銀を回収する方法
  2. 銀還元工程において、銀鉛塩化物を含有する原料に希硫酸を添加してpH1〜3の硫酸酸性スラリーにする請求項1の銀回収方法。
  3. 銀還元工程において、スラリー中の銀含有量に対して反応当量の1〜2倍の鉄粉を添加する請求項1または2に記載する銀回収方法。
  4. 硫酸鉛化工程において、スラリー中の鉛含有量に対して反応当量の1.5〜5倍の硫酸を添加する請求項1、2または3に記載する銀回収方法。
  5. 銀還元工程、硫酸鉛化工程、および還元熔錬工程を経ることによって原料中の鉛分の90%以上をスラグ化して分離する請求項1〜4の何れかに記載する銀回収方法。
  6. 酸化熔錬工程において、メタル相の鉛含有量が0.1%以下になるまで酸化熔錬を行ってスラグ相を分離する請求項1〜5の何れかに記載する銀回収方法。
  7. 酸化熔錬工程において、シリカ材料を添加して銀の反応を抑制する請求項1〜6の何れかに記載する銀回収方法。
  8. 回収した粗銀を電解精製して高純度銀を得る工程を含む請求項1〜7の何れかに記載する銀回収方法。
  9. 酸化熔錬工程で回収した粗銀を電解精製した電気銀を高周波誘導加熱によって溶融した後に鋳込んで銀インゴットを製造する工程を含む請求項1〜8の何れかに記載する銀回収方法。
  10. 銀鉛塩化物含有原料が銅電解スライムを塩化浸出して固液分離した澱物である請求項1〜9の何れかに記載する銀回収方法。
  11. 銀鉛塩化物含有澱物について請求項1〜10の何れかの銀回収処理を行う一方、塩化浸出液について溶媒抽出によって金を選択的に抽出する工程と、金抽出後の溶媒を希塩酸で洗浄する工程と、溶媒中の金を還元して回収する工程を含む処理方法。
  12. 請求項11の金回収工程の後に、回収した金を高周波誘導加熱によって溶融し、これを鋳込んで金インゴットを製造する工程を含む処理方法。
  13. 請求項11または12の処理方法において、金の抽出残液を加熱して溶媒を蒸留除去した後に、この抽出残液に亜硫酸ガスを導入してセレンないしテルルおよび白金族を還元する工程と、還元析出したセレンを蒸留して高純度セレンを得る工程を含む処理方法。
  14. 請求項13の高純度セレンを回収する工程の後に、回収した高純度セレンを溶融状態で水中に滴下してショット状の金属セレンを得る工程を含む処理方法。

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