JP2004190046A - 水冷式鉄鋼製構造物および水冷式鉄鋼製構造物への保護皮膜の形成方法 - Google Patents

水冷式鉄鋼製構造物および水冷式鉄鋼製構造物への保護皮膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】操業過程において保護皮膜の表面部に発生するクラックが皮膜中、または、鉄鋼基材へ進展し難いようにし、かくして、水冷式鉄鋼製構造物の長寿命化による操業の安定化とコストダウンを図ることができる。
【解決手段】高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物を構成する鉄鋼基材の表面に保護皮膜が形成され、前記保護皮膜は、Niを主成分とする自溶合金皮膜と、前記自溶合金皮膜中および前記自溶合金皮膜と前記鉄鋼基材の表面との境界の内の少なくとも一方に形成された、Cuを主成分とする1層以上のクラック進展緩和層とからなる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物、例えば、製鋼工場における転炉排ガス冷却設備等の長寿命化に寄与するために、当該設備の鉄鋼基材の表面に形成した自溶合金溶射皮膜にクラック進展緩和層を1層以上形成し、これによって、操業過程において前記皮膜の表面部に発生するクラックが前記皮膜中、または、前記鉄鋼基材へ進展し難いようにし、かくして、長寿命化による操業の安定化とコストダウンを図ることができる水冷式鉄鋼製構造物および水冷式鉄鋼製構造物への自溶合金溶射皮膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、図8に示すように、製鋼工場の転炉1からの高温排ガスは、スカート2、フード3、ボイラー4、ダクト5等からなる排ガス冷却設備を通り、冷却および排熱が回収された後、集塵機6に送られてダストが除去され、そして、次工程に送られる。
【0003】
上記排ガス冷却設備は、使用中に高温のガス(>1273K)、溶鋼および副原料として投入される各種鉱石等から発生する高熱ダスト(濃度:100〜500g/Nm)により著しいエロージョン摩耗を受ける。また、副原料から発生するS、ClおよびF等による腐食性ガスおよび高温酸化による高温腐食、さらに、間欠式操業の繰り返しによる熱応力疲労を生じる。
【0004】
これらのエロージョン摩耗や高温腐食および熱応力疲労により、上記排ガス冷却設備が摩耗や基材クラックにより損傷して、冷却水が漏れ出すと、高温の溶鋼との反応で水蒸気爆発を起こし、重大災害につながる可能性がある。このため、冷却水の漏洩等が起こらないように、設備を停止して、溶接補修等のメンテナンスを行う必要性があり、このため生産活動が著しく阻害される。
【0005】
これらの問題を解決するために、特許第2565727号公報(特許文献1)には、使用温度において酸化物を形成するCr、Al、Yを必須成分とし、残部を同温度において酸化し難いNi、Co、Feの一種もしくは二種以上とする合金の溶射被覆層を有する高耐用性転炉排ガス冷却器が開示されている。以下、これを従来技術1という。
【0006】
また、特許第3039850号公報(特許文献2)には、パイプ等の基材表面に耐熱金属もしくはその合金あるいは炭化物サーメットの下地溶射皮膜を20〜500μm形成し、さらに必要に応じて多孔状無機質皮膜を介在させてから、その上にクロム酸とリン酸を主成分とするシール剤を塗布し、乾燥後、350〜550℃×0.3hr以上の条件で加熱焼成して、0.5〜20μm、好ましくは2〜5μm厚みの硬質のガラス質酸化クロム皮膜を上層に形成した複合溶射部材が開示されている。以下、これを従来技術2という。
【0007】
しかしながら、従来技術1は、基材と溶射皮膜との密着機構が機械的な投錨効果が主であるので、溶射粒子の結合性や基材との付着に問題があった。また、従来技術2は、施工形状の制約と耐剥離性、耐摩耗性の不足が問題点として指摘される。
【0008】
一般に、耐摩耗性や耐食性に優れる自溶合金溶射は、ローラーやボイラーチューブ等に適用の事例がみられる。当該設備への適用例は、パイプを使用したメンブレン構造であるため、自溶合金溶射後の再溶融加熱による施工部材のひずみの要因で適用事例は少ないが、JISH8303に規定されるニッケル自溶合金4種の適用例がある。
【0009】
ニッケル自溶合金皮膜を適用した場合、無処理の場合に比較して、耐摩耗性、耐食性においては向上した。しかし、ニッケル自溶合金4種皮膜の場合、硬さが高く、伸びが数%しかないため熱疲労性応力腐食割れが皮膜表面から発生し、鉄鋼基材にクラックが進展し、結果的には水漏れにつながる問題を有している。
【0010】
【特許文献1】特許第2565727号公報
【特許文献2】特許第3039850号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記転炉排ガス冷却設備等の水冷式鉄鋼製構造物に形成される保護皮膜に関しては、上述のように、従来技術1および2では、耐剥離性、耐摩耗性が不十分であり、耐剥離性、耐摩耗性、耐食性において、高耐用性を示したニッケル自溶合金4種は、熱疲労性応力腐食割れに問題があった。
【0012】
従って、この発明の目的は、耐剥離性、耐摩耗性、耐食性に優れ、且つ、熱疲労性応力腐食性のクラックの進展緩和性にも優れた多層自溶合金溶射皮膜を被覆することによって、設備の長寿命化が図れ、メンテナンス費用や更新の費用等を含むトータルライフサイクルコストが削減でき、さらに操業が安定化して、設備の稼働率向上を達成することができる水冷式鉄鋼製構造物および水冷式鉄鋼製構造物への自溶合金皮膜の形成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物を構成する鉄鋼基材の表面に保護皮膜が形成され、前記保護皮膜は、Niを主成分とする自溶合金溶射皮膜と、前記自溶合金溶射皮膜中および前記自溶合金溶射皮膜と前記鉄鋼基材の表面との境界の内の少なくとも一方に形成された、Cuを主成分とする1層以上のクラック進展緩和層とからなることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記自溶合金溶射皮膜は、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部:Niおよび不可避的不純物からなり、シャルピー衝撃値が1.70J/cm以上、表面硬さがHCスケールで15以上であることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記クラック進展緩和層は、Cu:80質量%以上、残部:Niおよび不可避的不純物からなり、10〜100μmの膜厚を有することに特徴を有するものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物を構成する鉄鋼基材の表面に、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部:Niおよび不可避的不純物からなる自溶合金材料を溶射して溶射皮膜を形成し、次いで、前記溶射皮膜および前記鉄鋼基材の表面近傍を1223〜1356Kの温度に1秒以上保持して、シャルピー衝撃値が1.70J/cm以上、皮膜表面硬さがHCスケールで15以上の自溶合金溶射皮膜を形成するに当たり、前記自溶合金溶射皮膜中および前記自溶合金溶射皮膜と前記鉄鋼基材の表面との境界の内の少なくとも一方に、Cuを80%以上含有し、膜厚が10〜100μmからなるクラック進展緩和層を1層以上形成し、かくして、前記鉄鋼基材の表面に前記自溶合金溶射皮膜と前記クラック進展緩和層とからなる保護皮膜を形成することに特徴を有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、この発明を転炉フードに適用した場合の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、以下、保護皮膜の成分割合%は、全て質量%である。
【0018】
図1は、転炉に取り付けられた、この発明の転炉フードを示す概略断面図、図2は、この発明の転炉フードの下部を示す部分断面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、保護皮膜の拡大断面図、図5は、図3と別の断面形状のチューブによる場合の図2のA−A線断面図である。
【0019】
図1から図4に示すように、この発明の転炉フード3の下部は、チューブ内側にフィン7Aが形成された多数本のU字状円形鉄鋼製チューブ7を、フィン7A同士を互いに溶接して筒状に接合したものによって構成されている。各チューブ7の一端は、給水ヘッダー8に接続され、他端は、排水ヘッダー9に接続されていて、転炉操業中、給水ヘッダー8からチューブ7内に供給される冷却水により、転炉フード3の下部が冷却される。
【0020】
なお、図5に示すように、転炉フード3の下部を、チューブ中央部にフィン7Aが形成された多数本のU字状円形鉄鋼製7を、フィン7A同士を互いに溶接して筒状に接合したものによって構成したものでも良い。
【0021】
上記転炉フード3の下部の入口部分3Aは、特に、前述したように、転炉操業中にエロージョン摩耗や高温腐食および熱応力疲労が生じやすい。従って、この発明は、上述の冷却に加え、入口部分3Aに保護皮膜10を形成して、上記問題に対処している。保護皮膜10は、第1層10A(クラック進展緩和層)、第2層10B(自溶合金溶射皮膜)、第3層10C(クラック進展緩和層)および第4層10D(自溶合金溶射皮膜)から構成される。保護皮膜10の形成方法について、以下に説明する。
【0022】
先ず、入口部分3Aの炉内側にブラスト処理を施して、入口部分3Aの表面のスケール、汚れ等を除去する。この際、その後に行われる処理、すなわち、溶射による皮膜形成後、1223〜1356Kの温度に、1秒以上保持することからなる処理により形成される保護皮膜が剥離しないように、Rmax30μm以上の表面粗さとなるようにブラスト処理する。
【0023】
このようにしてブラスト処理した入口部分3Aに、クラック進展緩和層としての10〜100μmの膜厚を有する第1層10Aを形成する。すなわち、Cuを80%以上含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる粉末合金を入口部分3Aに溶射して第1層を形成する。この場合の溶射法としては、フレーム式溶射法や高速フレーム溶射法およびプラズマ溶射法が適用できる。また、溶射合金が線状の場合には、フレーム式溶射法およびアーク溶射法が適用できる。なお、溶射法以外に、メッキ法により第1層10Aを形成しても良い。第1層10Aは、後述する自溶合金皮膜中にクラック進展緩和層を形成する場合は、省略することもできる。
【0024】
次に、第1層10A上に、自溶合金溶射皮膜としての100〜1000μmの膜厚を有する第2層10Bを形成する。すなわち、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる粉末合金を第1層10A上に溶射して第2層10Bを形成する。この場合の溶射法としては、フレーム式溶射法や高速フレーム溶射法およびプラズマ溶射法が適用できる。
【0025】
次に、第2層10B上に、クラック進展緩和層としての10〜100μmの膜厚を有する第3層10Cを形成する。すなわち、Cuを80質量%以上含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる粉末合金をする合金を第2層10B上に溶射して第3層10Cを形成する。この場合の溶射法としては、フレーム式溶射法や高速フレーム溶射法およびプラズマ溶射法が適用できる。また、溶射合金が線状の場合には、フレーム式溶射法およびアーク溶射法が適用できる。なお、溶射法以外に、メッキ法で第3層10Cを形成しても良い。第1層10Aを形成する場合は、第3層10Cを省略することもできる。
【0026】
次に、第3層10C上に、自溶合金溶射皮膜としての100〜1000μmの膜厚を有する第4層10Dを形成する。すなわち、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる粉末合金を第3層10C上に溶射して第4層10Cを形成する。この場合の溶射法としては、フレーム式溶射法や高速フレーム溶射法およびプラズマ溶射法が適用できる。また、第3層と第4層とをさらに交互に重ねることもできるが、コスト面や次工程で行われる溶射皮膜の熱処理、すなわち、溶射皮膜と入口部分3Aの表面(鉄鋼基材表面)近傍を1223〜1356Kの温度に、1秒以上保持するまでの残留応力による皮膜剥離の観点から、総膜厚が2000μmを超えないようにする。
【0027】
なお、上記何れの自溶合金溶射皮膜も各成分範囲は、Cr:20%以下、Fe:5%以下、Cu:4%以下、Mo:4%以下、Si:1.5〜5%、B:1〜4.5%、Co:1%以下、C:0.05〜1.1%、残部:Niおよび不可避的不純物である。
【0028】
このようにして、溶射皮膜をフード3の入口部分3Aに形成した後、溶射皮膜および入口部分3Aの表面近傍を1223〜1356Kの温度に1秒以上保持して、溶射皮膜を固液共存状態に維持する。これにより、溶射皮膜形成粒子の融合と基材との拡散層の形成を達成して、溶射皮膜内にCr硼化物やCr炭化物等の硬質成分を析出させる。この結果、保護皮膜(多層自溶合金溶射皮膜)の緻密化が達成され、耐食性が向上し、入口部分3Aの表面と溶射皮膜の界面との合金化により密着力が高まり、耐剥離性が向上する。さらに、溶射皮膜中の硬質成分の析出により耐摩耗性が高くなる。このようにして、入口部分3Aの表面に、自溶合金溶射皮膜とからなる保護皮膜10が形成される。
【0029】
クラック進展緩和層を、Cuを80%以上含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる合金により構成したのは、Cuは、衝撃値が大きいので、クラック進展緩和作用が大きく、しかも、Niとの親和性が高く、さらに、鉄鋼基材から浸炭が少ないからである。しかし、Cu含有量が80%未満では、上述の効果が得られない。従って、クラック進展緩和層のCu含有量は、80%以上とする。なお、Cu含有量の上限は、100%であっても良い。クラック進展緩和層の膜厚が10μm未満では、十分なクラック進展緩和効果が少なく、一方、100μmを超えると、自溶合金皮膜の膜厚が薄くなり、十分な自溶合金溶射皮膜の効果が得られない。従って、クラック進展緩和層の膜厚は、10〜100μmとする。
【0030】
加熱温度が1223K未満の温度は、当該材料の固相線温度以下であり、上述の反応が固体拡散反応となり、所定の性能を発揮する上で溶射皮膜と入口部分3Aの表面との付着力の信頼性に欠ける。一方、1356Kを超える温度では、当該材料の液相線温度以上となり、流動化して構造物の表面から流れ出し、均一な皮膜形成ができない問題がある。また、1223〜1356Kの温度範囲内での1秒未満の短時間では、所定の皮膜性能を発揮させることができない。従って、溶射皮膜をフード3の入口部分3Aに形成した後、溶射皮膜および入口部分3Aの表面近傍を1223〜1356Kの温度に1秒以上保持する。
【0031】
加熱の方法としては、ガスバーナーによる方法、高周波誘導加熱による方法、雰囲気調整したガス炉または電気炉中で加熱する方法があるが、大きさおよび形状に制約がある場合には、ガストーチ法を用いるのが好ましい。加熱する際に、構造物に発生する変形(ひずみ)を防止または最小にするために、適切な拘束用の治工具を用いることが好ましい。当該成分の内、BおよびSiがこの合金系の融点を下げる作用と溶融時に溶剤(フラックス)の役割を果たして、皮膜中の酸化物の除去効果を発揮する。
【0032】
しかし、B含有量が1%未満およびSi含有量が1.5%未満では、その効果が少なく、一方、B含有量が4.5%超およびSi含有量が5%超の領域では、過剰の硼化物や金属間化合物の生成により皮膜の引張強さの低下を招く。従って、B含有量は、1〜4.5%とし、Si含有量は、1.5〜5%とする。なお、層構成は、実用上2〜3層で十分である。
【0033】
また、Crは、CrB相やCr相を形成して、硬度を高めて耐摩耗性を向上させるが、20%超では、これらが過剰に形成されて靭性を劣化する。Fe、Cuは、Niに固溶してNiを強化する作用を有するが、Fe:5%超、Cu:4%超では、金属間化合物を形成したり、粒界に析出し、靭性および耐食性等の性能を劣化させる。Moは、NiおよびCrBに固溶して、Niを強化する作用を有するが、4%が固溶限であり、4%超では、金属間化合物を形成したり、粒界に析出し、靭性および耐食性等の性能を劣化させる。Cは、Crと結合して、クロム炭化物を形成して、Niを強化する作用を有するが、1.1%超では、クロム炭化物が増加して、靭性を劣化させる。Coは、Ni製造過程で完全に分離できない不可避的不純物であるが、1.0%以下であれば、性能に悪影響を及ぼさない。
【0034】
優れた耐摩耗性が必要な場合は、層構成の最表層の表面硬さを高くする必要があり、そのためには、材料成分の内、Niおよび不可避的不純物以外で、Crを12〜20%、Cを0.4〜1.1%、Bを2.5〜4.5%およびSiを2〜5%の範囲に制御することによって、1223〜1356Kの温度に1秒以上保持した後の保護皮膜の表面硬さをHCスケールで50〜65にすることができる。
【0035】
水冷式鉄鋼製構造物は、全体の組み立てが完成する前に、この発明による保護皮膜を形成することが好ましく、一般的には、3〜15本のチューブにより構成されたコンポーネントの状態でこの発明による保護皮膜を形成する。
【0036】
全体組み立て後においても、適切な変形防止用拘束治工具の使用とガスバーナー加熱により、保護皮膜の形成が可能である。
【0037】
次に、この発明を実施例により、さらに説明する。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
鉄鋼基材(SS400)にニッケル自溶合金4種を0.6mm形成した後、再溶融処理して比較試験片を調製した。また、本発明試験片を以下のようにして調製した。
【0039】
鉄鋼基材(SS400)に、Cr:9〜11%、Fe:4%以下、B:1.5〜4.5%、Si:2〜5%、C:0.05〜0.5%、残部:Niおよび不可避的不純物からなり、シャルピー衝撃値が1.8J/cmの第1層(自溶合金溶射皮膜)を0.3mmの厚さに溶射により形成し、次いで、第1層上に、Cu:85%、残部がNiと不可避的不純物からなる第2層(クラック進展緩和層)を0.1mmの厚さに溶射により形成し、次いで、第2層上に、Cr:12〜17%、Fe:5%以下、Cu:4%以下、Mo:4%以下、B:2.5〜4%、Si:3.5〜5%、C:0.4〜0.9%、残部がNiと不可避的不純物からなり、シャルピー衝撃値が1.75J/cmの第3層(自溶合金溶射皮膜)を0.2mmの厚さに溶射により形成し、そして、このようにして溶射皮膜を形成した鉄鋼基材を、1243〜1353Kに約5秒保持して、表面硬さがHC50〜55の保護皮膜が形成された本発明試験片を調製した。
【0040】
各々の試験片を873Kの雰囲気温度に30分間保持後、流水に投入し、水冷する熱衝撃試験を10回繰り返し、保護皮膜に発生する欠陥を溶剤除去式染色探傷試験(PT)で確認した。この結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 2004190046
【0042】
また、10回熱衝撃を加えた後のPT指示模様を図6(a)、(b)に示す。さらに、図7(a)、(b)に熱衝撃試験後の断面組織写真を示す。なお、図6(a)および図7(a)は、比較試験片、図6(b)および図7(b)は、本発明試験片である。
【0043】
表1から明らかなように、比較試験片は、1回の熱衝撃により割れが認められたが、本発明試験片は、9回の熱衝撃を加えても割れが認められず、10回の熱衝撃でも割れの発生はわずかであった。この割れの発生状況は、図6(a)、(b)から明らかである。また、図7(a)から明らかなように、比較試験片は、保護皮膜のクラックが鉄鋼基材まで達し、鉄鋼基材表面に酸化層を形成しているのに対して、図7(b)の本発明試験片は、第3層目でクラックの進展が止まっており、クラックの進展を第2層が緩和していることが分かった。
【0044】
(実施例2)
従来、保護皮膜を形成しない下部フードボイラーの水冷式鉄鋼製基材は、約8ヵ月の使用で、最大約2mmの管厚減少が発生していたため、溶接補修等の対策を実施していた。しかし、図2に示す領域に、この発明に従って保護皮膜を形成して、転炉排ガス冷却設備下部フードボイラーを実作業環境で2年間使用したところ、この間、保護皮膜の形成領域において、皮膜の剥離、摩耗による鉄鋼基材の露出、腐食による鉄鋼基材の露出および熱疲労性応力腐食割れに起因する水漏れ等の操業に支障が発生する問題は、皆無であった。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、耐剥離性、耐食性、耐摩耗性に優れ且つ耐熱疲労性応力腐食割れ性にも優れた保護皮膜を、例えば、転炉排ガス冷却設備等の水冷式鉄鋼製構造物に形成したことにより、
(1)転炉等の操業に際して発生する地金およびダストに対する高い耐摩耗性を有し、高温腐食に曝される部位での耐食性に優れる。
(2)熱疲労性応力割れが鉄鋼基材へ進展し難く、ヒートクラックの発生防止に効果がある。
(3)保護皮膜は、耐剥離性に優れ、保護効果が長時間に渡って持続・維持できる。
等の効果があり、このことにより、当該設備の長寿命化が達成され、設備を休止しての補修の必要性が従来に比較して少なく、設備の稼働率が向上し、操業の安定化に大きく貢献した。
【図面の簡単な説明】
【図1】転炉に取り付けられた、この発明の転炉フードを示す概略断面図である。
【図2】この発明の転炉フードの下部を示す部分断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】保護皮膜の拡大断面図である。
【図5】図3と別の断面形状のチューブによる場合の図2のA−A線断面図である。
【図6】熱衝撃試験後のPT指示模様を示す写真である。
【図7】熱衝撃試験後の保護皮膜断面組織を示す顕微鏡写真である。
【図8】転炉排ガス冷却設備を示す概略図である。
【符号の説明】
1:転炉
2:スカート
3:フード
3A:入口部分
4:ボイラー
5:ダクト
6:集塵機
7:チューブ
7A:フィン
8:給水ヘッダー
9:排水ヘッダー
10:保護皮膜
10A:第1層
10B:第2層
10C:第3層
10D:第4層

Claims (4)

  1. 高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物を構成する鉄鋼基材の表面に保護皮膜が形成され、前記保護皮膜は、Niを主成分とする自溶合金溶射皮膜と、前記自溶合金溶射皮膜中および前記自溶合金溶射皮膜と前記鉄鋼基材の表面との境界の内の少なくとも一方に形成された、Cuを主成分とする1層以上のクラック進展緩和層とからなることを特徴とする水冷式鉄鋼製構造物。
  2. 前記自溶合金溶射皮膜は、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部:Niおよび不可避的不純物からなり、シャルピー衝撃値が1.70J/cm以上、表面硬さがHCスケールで15以上であることを特徴する、請求項1記載の水冷式鉄鋼製構造物。
  3. 前記クラック進展緩和層は、Cu:80質量%以上、残部:Niおよび不可避的不純物からなり、10〜100μmの膜厚を有することを特徴とする、請求項1または2記載の水冷式鉄鋼製構造物。
  4. 高温排ガスやダストによる高温摩耗および高温腐食環境に曝される水冷式鉄鋼製構造物を構成する鉄鋼基材の表面に、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびC、残部:Niおよび不可避的不純物からなる自溶合金材料を溶射して溶射皮膜を形成し、次いで、前記溶射皮膜および前記鉄鋼基材の表面近傍を1223〜1356Kの温度に1秒以上保持して、シャルピー衝撃値が1.70J/cm以上、皮膜表面硬さがHCスケールで15以上の自溶合金溶射皮膜を形成するに当たり、前記自溶合金溶射皮膜中および前記自溶合金溶射皮膜と前記鉄鋼基材の表面との境界の内の少なくとも一方に、Cuを80%以上含有し、膜厚が10〜100μmからなるクラック進展緩和層を1層以上形成し、かくして、前記鉄鋼基材の表面に前記自溶合金溶射皮膜と前記クラック進展緩和層とからなる保護皮膜を形成することを特徴とする、水冷式鉄鋼製構造物への保護皮膜の形成方法。
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