JP2004189986A - 水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゲル化や分子量分布の増大がなく、高収率で着色の少ない水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造すること。
【解決手段】フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させ、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造する際に、本発明に従いアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加する。
【選択図】 なし
【解決手段】フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させ、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造する際に、本発明に従いアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は塗料用途、低屈折率材料用途、レジスト材料用途、シーリング剤用途等に有用な水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の安定な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水酸基を含有するフルオロオレフィン共重合体は、耐侯性塗料用途、低屈折率材料用途、レジスト材料用途、シーリング材料用途等幅広く用いられている。水酸基含有単量体としては通常、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が用いられることが多く、種々の目的に応じてエチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等の単量体成分と混合して、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等の含フッ素オレフィンとラジカル重合させることにより水酸基含有フルオロオレフィン共重合体が製造される。ここで得られる共重合体は、通常ビニルエーテル類と含フッ素オレフィン類の交互共重合体である。
【0003】
該共重合体の製造においては、しばしば分子量分布の増大あるいはゲル化が発生することが問題になっていた。特に水酸基含率の高いポリマーを合成する際にゲル化が起こりやすくなる。原因は明確にされていないが、本発明者らの解析では重合系中で微量の弗化水素酸が発生していることが確認されており、これが触媒となって残存ビニルエーテルの分解が起こり、分解生成物(アセトアルデヒド)がポリマーのゲル化を引き起こしているものと推察している。
【0004】
上記ゲル化を回避する手段として、アミン類の添加が有効であることが報告されている(例えば特許文献1〜3参照)。アミン類の添加はゲル化回避に対して効果的があるが、着色が起こりやすい問題、反応率が低下しやすい問題があり、また目的によっては生成ポリマー中へのアミン類の混入が好ましくない場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特許第2550526号公報(段落[0003])
【特許文献2】
特許第2585993号公報(段落[0006])
【特許文献3】
特開平4−372612号(段落[0005])
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造において、水酸基含率が高くても、ゲル化が起こらず、高収率で、着色の少ない生成物を得る方法を提供する事にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、以下に示す1)〜3)の本発明によって達成された。
1)フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させることにより水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造するに際し、ビニルオキシ基によって置換されていないアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加することを特徴とする水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0008】
2)上記1)に記載のフルオロオレフィン共重合体が、水酸基を有する重合単位を30〜60mol%の範囲で有することを特徴とする、上記1)に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0009】
3)上記1)に記載の添加物が炭素数1〜4の飽和のアルコール、アルコラートまたはカルボキシラートであることを特徴とする上記1)または2)に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0010】
4)フルオロオレフィンを他の単量体合計量に対して1.05当量〜1.2当量の範囲で添加して反応させることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で製造される、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体に関して以下に詳しく説明する。
該共重合体は、フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の構成成分とし、必要に応じてその他のビニルモノマーとともに共重合させたものである。
【0012】
フルオロオレフィンとしては、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パ-フルオロ(プロピルビニルエーテル)等を挙げることができ、2種類以上を組み合わせることができる。
【0013】
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2,3−ジヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシー2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシフェニルビニルエーテル等を挙げることができ2種類以上を組み合わせることができる。
【0014】
その他、上記モノマーと共重合可能な代表的なビニルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロペンチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、マレイン酸およびその誘導体、クロトン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体等を例として挙げることができるが、共重合性の観点からは、ビニルエーテル類、ビニルエステル類を用いることが好ましい。これらは目的に応じて2種類以上を組み合わせることができる。
【0015】
共重合体に占めるフルオロオレフィン重合単位の割合は、共重合性の観点から通常30〜70mol%の範囲であり、40〜60mol%の場合が一般的である。
共重合体中に占める水酸基含有ビニルエーテル重合単位の割合は、共重合性の観点から通常0.1〜70mol%の範囲であるが、1〜60mol%の範囲が好ましい。本発明の手法は特に30mol%以上の高水酸基含率の共重合体の合成に対しても有効である。
種々目的に応じて導入されるその他のビニルモノマーは、上記水酸基含有ビニルエーテルとの合計が30〜70mol%、好ましくは40〜60mol%となる様に設定される。
【0016】
フルオロオレフィンとビニルエーテル類の重合には交互共重合性があり、それぞれの単独重合性は低いため、1:1のモル比で仕込むことにより、フルオロオレフィンがほぼ50mol%導入された共重合体を比較的容易に得ることができるが、本発明の手法において得られた生成物では、若干フルオロオレフィンの含率が低くなる傾向がある。フルオロオレフィンをビニルエーテルに対して、1.05〜1.3当量、好ましくは1.1〜1.2当量の範囲で添加することにより、フルオロオレフィンがほぼ50mol%導入された生成物を安定して得ることができる。
【0017】
該共重合体の数平均分子量は1*103〜1*106の範囲が好ましく、特に好ましくは、5*103〜2*105の場合である。
【0018】
以下に本発明の手法によって合成される、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の代表的な例としては下記構造式のように表すことができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化1】
【0020】
このうち、上記構造式の組み合わせの例を下記の表1に示した。
なお、下記表中のa〜fは各重合単位のモル%を、Mnは数平均分子量を表わす。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明では、上記水酸基含有共重合体の製造にあたり、ビニルオキシ基によって置換されていないアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを添加することによってゲル化が抑制される。
【0023】
本発明で有用なアルコールとしては、メタノール、エタノール、i-プロノ‐ル、n-プロパノ‐ル、n-ブタノール、sec-ブタノール、t‐ブタノール、n-ペンタノ‐ル、n-ヘキサノ‐ル、オクタノール、シクロヘサノ‐ル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスロトール、アリルアルコール、フェノール等を挙げる事ができるが、好ましくは飽和のアルコールであり、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和アルコールである。
【0024】
本発明で有用なアルコラートは上記アルコールのアルカリ金属塩(ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩等)、アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウム塩等)等が挙げられるが好ましくはアルカリ金属塩である。さらに飽和のアルコラートが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和のアルコラートである。
【0025】
本発明で有用なカルボキシラートとしては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等を挙げる事ができるが好ましくはpKaが4以上のカルボン酸のアルカリ金属塩である。さらに好ましくは飽和のカルボキシラートであり、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和のカルボキシラートである。
【0026】
本発明においては上記添加剤を水酸基含有ビニルエーテル単量体に対して、0.001〜10当量の範囲で添加するが、好ましくは0.005〜5当量の範囲であり、特に好ましくは0.01〜2当量の範囲である。
【0027】
本発明における共重合体の製造は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行なうことができる。またこの際回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0028】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0029】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等種々の有機溶剤または水の単独あるいは2種以上の混合物で合っても良い。また、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の本発明の添加剤として有用なアルコールが溶媒をかねても良い。
本発明において特に好ましい溶媒はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤である。
溶剤の量は単量体総重量の5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%であり、特に好ましくは20〜50質量%である。
【0030】
重合に用いられるラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)のようなアゾ系開始剤や、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tーブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム(例えば、亜硫酸水素ナトリウムと組み合わせてレドックス開始剤として用いても良い)のようなパーオキサイド系開始剤が好ましい。重合開始剤の使用量はモノマーの重合性や必要とする重合体の分子量に応じて調節することが可能であるが、単量体総量に対して0.01〜10.0質量%の範囲が好ましい。
また、添加に際して重合開始剤の半減期を勘案して複数回に分けて添加しても良い。特に半減期の短いものについては複数回に分けて添加することが好ましい。
【0031】
重合温度は生成する共重合体の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0032】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0033】
本発明の製造法で得られる着色のない透明性に優れたポリマーは、塗料用途に適しており、さらにこのポリマーを含む被膜は屈折率が低めであるためこの特徴を用いた光学用途にも好ましく用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例中、ポリマーの屈折率はアッベ屈折計(アタゴ(株)製)にて25℃の温度で測定された値を示す。
【0035】
実施例1
内容量1Lのステンレス製撹拌機付オートクレーブにヒドロキシエチルビニルエーテルの88.1g(1mol)、メタノール34.0g(1.06mol)、和光純薬工業(株)社製重合開始剤V-65(商品名)7.7gおよびメチルエチルケトン68gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン165g(1.1mol)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の内部圧力は1.4MPaであった。該温度を保持し2時間攪拌した後に和光純薬工業(株)社製重合開始剤V-65(商品名)7.7gをメチルエチルケトン12gに溶解した溶液を窒素ガス圧を利用して追加添加した。さらに65℃で5時間攪拌を続けた後(内部圧力0.5MPa)、80℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が80℃になった時点の内部圧力は0.7MPaであった。80℃で1時間攪拌した後(内部圧は0.7MPaのまま変化せず)、加熱をやめ放冷した。
オートクレーブを開放することにより、無色透明のポリマー溶液が得られた。
固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.406であった。元素分析より求めたF含率は47.80%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0036】
実施例2
合成例1においてメタノールの代わりにナトリウムメトキシド1.08g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを33g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は89%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.4065であった。元素分析より求めたF含率は47.78%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0037】
実施例3
合成例1においてメタノールの代わりに酢酸ナトリウム1.64g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを33g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.406であった。元素分析より求めたF含率は47.82%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0038】
実施例4
合成例1においてヘキサフルオロプロピレンの添加量を150g(1.0mol)にした以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.4102であった。元素分析より求めたF含率は46.4%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの48:52の共重合体(F含率理論量46.40%)であることが確認された。
【0039】
比較例1
合成例1において、メタノールを添加せずメチルエチルケトンを34g追加した以外は合成例1と同様にして重合を行った。オートクレーブを開放したところ淡黄色のゲルが生成していた。
【0040】
比較例2
合成例1においてメタノールの代わりにトリエチルアミン2.02g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを31g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、黄色に着色したポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマー収率は29%と低いものであった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は5千、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であり、屈折率は1.417であった。
【0041】
上記実施例から明らかなように、本発明の手法に従うことにより、ゲル化や分子量分布の増大がなく、高収率で着色の少ない水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造できることが分かる。
【0042】
【発明の効果】
フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させ、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造する際に、本発明に従いアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加することにより、ゲル化や分子量分布の増大がなく、高収率で着色の少ない水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は塗料用途、低屈折率材料用途、レジスト材料用途、シーリング剤用途等に有用な水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の安定な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水酸基を含有するフルオロオレフィン共重合体は、耐侯性塗料用途、低屈折率材料用途、レジスト材料用途、シーリング材料用途等幅広く用いられている。水酸基含有単量体としては通常、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が用いられることが多く、種々の目的に応じてエチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等の単量体成分と混合して、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等の含フッ素オレフィンとラジカル重合させることにより水酸基含有フルオロオレフィン共重合体が製造される。ここで得られる共重合体は、通常ビニルエーテル類と含フッ素オレフィン類の交互共重合体である。
【0003】
該共重合体の製造においては、しばしば分子量分布の増大あるいはゲル化が発生することが問題になっていた。特に水酸基含率の高いポリマーを合成する際にゲル化が起こりやすくなる。原因は明確にされていないが、本発明者らの解析では重合系中で微量の弗化水素酸が発生していることが確認されており、これが触媒となって残存ビニルエーテルの分解が起こり、分解生成物(アセトアルデヒド)がポリマーのゲル化を引き起こしているものと推察している。
【0004】
上記ゲル化を回避する手段として、アミン類の添加が有効であることが報告されている(例えば特許文献1〜3参照)。アミン類の添加はゲル化回避に対して効果的があるが、着色が起こりやすい問題、反応率が低下しやすい問題があり、また目的によっては生成ポリマー中へのアミン類の混入が好ましくない場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特許第2550526号公報(段落[0003])
【特許文献2】
特許第2585993号公報(段落[0006])
【特許文献3】
特開平4−372612号(段落[0005])
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造において、水酸基含率が高くても、ゲル化が起こらず、高収率で、着色の少ない生成物を得る方法を提供する事にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、以下に示す1)〜3)の本発明によって達成された。
1)フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させることにより水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造するに際し、ビニルオキシ基によって置換されていないアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加することを特徴とする水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0008】
2)上記1)に記載のフルオロオレフィン共重合体が、水酸基を有する重合単位を30〜60mol%の範囲で有することを特徴とする、上記1)に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0009】
3)上記1)に記載の添加物が炭素数1〜4の飽和のアルコール、アルコラートまたはカルボキシラートであることを特徴とする上記1)または2)に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0010】
4)フルオロオレフィンを他の単量体合計量に対して1.05当量〜1.2当量の範囲で添加して反応させることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で製造される、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体に関して以下に詳しく説明する。
該共重合体は、フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の構成成分とし、必要に応じてその他のビニルモノマーとともに共重合させたものである。
【0012】
フルオロオレフィンとしては、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パ-フルオロ(プロピルビニルエーテル)等を挙げることができ、2種類以上を組み合わせることができる。
【0013】
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2,3−ジヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシー2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシフェニルビニルエーテル等を挙げることができ2種類以上を組み合わせることができる。
【0014】
その他、上記モノマーと共重合可能な代表的なビニルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロペンチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、マレイン酸およびその誘導体、クロトン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体等を例として挙げることができるが、共重合性の観点からは、ビニルエーテル類、ビニルエステル類を用いることが好ましい。これらは目的に応じて2種類以上を組み合わせることができる。
【0015】
共重合体に占めるフルオロオレフィン重合単位の割合は、共重合性の観点から通常30〜70mol%の範囲であり、40〜60mol%の場合が一般的である。
共重合体中に占める水酸基含有ビニルエーテル重合単位の割合は、共重合性の観点から通常0.1〜70mol%の範囲であるが、1〜60mol%の範囲が好ましい。本発明の手法は特に30mol%以上の高水酸基含率の共重合体の合成に対しても有効である。
種々目的に応じて導入されるその他のビニルモノマーは、上記水酸基含有ビニルエーテルとの合計が30〜70mol%、好ましくは40〜60mol%となる様に設定される。
【0016】
フルオロオレフィンとビニルエーテル類の重合には交互共重合性があり、それぞれの単独重合性は低いため、1:1のモル比で仕込むことにより、フルオロオレフィンがほぼ50mol%導入された共重合体を比較的容易に得ることができるが、本発明の手法において得られた生成物では、若干フルオロオレフィンの含率が低くなる傾向がある。フルオロオレフィンをビニルエーテルに対して、1.05〜1.3当量、好ましくは1.1〜1.2当量の範囲で添加することにより、フルオロオレフィンがほぼ50mol%導入された生成物を安定して得ることができる。
【0017】
該共重合体の数平均分子量は1*103〜1*106の範囲が好ましく、特に好ましくは、5*103〜2*105の場合である。
【0018】
以下に本発明の手法によって合成される、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の代表的な例としては下記構造式のように表すことができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化1】
【0020】
このうち、上記構造式の組み合わせの例を下記の表1に示した。
なお、下記表中のa〜fは各重合単位のモル%を、Mnは数平均分子量を表わす。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明では、上記水酸基含有共重合体の製造にあたり、ビニルオキシ基によって置換されていないアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを添加することによってゲル化が抑制される。
【0023】
本発明で有用なアルコールとしては、メタノール、エタノール、i-プロノ‐ル、n-プロパノ‐ル、n-ブタノール、sec-ブタノール、t‐ブタノール、n-ペンタノ‐ル、n-ヘキサノ‐ル、オクタノール、シクロヘサノ‐ル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスロトール、アリルアルコール、フェノール等を挙げる事ができるが、好ましくは飽和のアルコールであり、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和アルコールである。
【0024】
本発明で有用なアルコラートは上記アルコールのアルカリ金属塩(ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩等)、アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウム塩等)等が挙げられるが好ましくはアルカリ金属塩である。さらに飽和のアルコラートが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和のアルコラートである。
【0025】
本発明で有用なカルボキシラートとしては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等を挙げる事ができるが好ましくはpKaが4以上のカルボン酸のアルカリ金属塩である。さらに好ましくは飽和のカルボキシラートであり、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和のカルボキシラートである。
【0026】
本発明においては上記添加剤を水酸基含有ビニルエーテル単量体に対して、0.001〜10当量の範囲で添加するが、好ましくは0.005〜5当量の範囲であり、特に好ましくは0.01〜2当量の範囲である。
【0027】
本発明における共重合体の製造は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行なうことができる。またこの際回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0028】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0029】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等種々の有機溶剤または水の単独あるいは2種以上の混合物で合っても良い。また、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の本発明の添加剤として有用なアルコールが溶媒をかねても良い。
本発明において特に好ましい溶媒はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤である。
溶剤の量は単量体総重量の5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%であり、特に好ましくは20〜50質量%である。
【0030】
重合に用いられるラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)のようなアゾ系開始剤や、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tーブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム(例えば、亜硫酸水素ナトリウムと組み合わせてレドックス開始剤として用いても良い)のようなパーオキサイド系開始剤が好ましい。重合開始剤の使用量はモノマーの重合性や必要とする重合体の分子量に応じて調節することが可能であるが、単量体総量に対して0.01〜10.0質量%の範囲が好ましい。
また、添加に際して重合開始剤の半減期を勘案して複数回に分けて添加しても良い。特に半減期の短いものについては複数回に分けて添加することが好ましい。
【0031】
重合温度は生成する共重合体の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0032】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0033】
本発明の製造法で得られる着色のない透明性に優れたポリマーは、塗料用途に適しており、さらにこのポリマーを含む被膜は屈折率が低めであるためこの特徴を用いた光学用途にも好ましく用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例中、ポリマーの屈折率はアッベ屈折計(アタゴ(株)製)にて25℃の温度で測定された値を示す。
【0035】
実施例1
内容量1Lのステンレス製撹拌機付オートクレーブにヒドロキシエチルビニルエーテルの88.1g(1mol)、メタノール34.0g(1.06mol)、和光純薬工業(株)社製重合開始剤V-65(商品名)7.7gおよびメチルエチルケトン68gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン165g(1.1mol)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の内部圧力は1.4MPaであった。該温度を保持し2時間攪拌した後に和光純薬工業(株)社製重合開始剤V-65(商品名)7.7gをメチルエチルケトン12gに溶解した溶液を窒素ガス圧を利用して追加添加した。さらに65℃で5時間攪拌を続けた後(内部圧力0.5MPa)、80℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が80℃になった時点の内部圧力は0.7MPaであった。80℃で1時間攪拌した後(内部圧は0.7MPaのまま変化せず)、加熱をやめ放冷した。
オートクレーブを開放することにより、無色透明のポリマー溶液が得られた。
固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.406であった。元素分析より求めたF含率は47.80%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0036】
実施例2
合成例1においてメタノールの代わりにナトリウムメトキシド1.08g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを33g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は89%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.4065であった。元素分析より求めたF含率は47.78%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0037】
実施例3
合成例1においてメタノールの代わりに酢酸ナトリウム1.64g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを33g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.406であった。元素分析より求めたF含率は47.82%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの1:1の共重合体(F含率理論量47.87%)であることが確認された。
【0038】
実施例4
合成例1においてヘキサフルオロプロピレンの添加量を150g(1.0mol)にした以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、淡黄色透明のポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマーの収率は90%であった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は1万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合開始から1時間おきにサンプリングを行なった結果から、分子量および分子量分布は重合初期から重合後期にかけてほぼ一定であることが確認された。
さらに該溶液をヘキサン/イソプロパノール(20/1)から2回再沈殿を行い、残存モノマーを完全に除去した後、屈折率を測定したところ1.4102であった。元素分析より求めたF含率は46.4%であり、ほぼヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの48:52の共重合体(F含率理論量46.40%)であることが確認された。
【0039】
比較例1
合成例1において、メタノールを添加せずメチルエチルケトンを34g追加した以外は合成例1と同様にして重合を行った。オートクレーブを開放したところ淡黄色のゲルが生成していた。
【0040】
比較例2
合成例1においてメタノールの代わりにトリエチルアミン2.02g(0.02mol)、を添加し、メチルエチルケトンを31g追加した以外は合成例1と同様にして、ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体を合成した。
オートクレーブを開放することにより、黄色に着色したポリマー溶液が得られた。固形分から算出したポリマー収率は29%と低いものであった。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は5千、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であり、屈折率は1.417であった。
【0041】
上記実施例から明らかなように、本発明の手法に従うことにより、ゲル化や分子量分布の増大がなく、高収率で着色の少ない水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造できることが分かる。
【0042】
【発明の効果】
フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させ、水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造する際に、本発明に従いアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加することにより、ゲル化や分子量分布の増大がなく、高収率で着色の少ない水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造できる。
Claims (6)
- フルオロオレフィンと水酸基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分として重合させることにより水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を製造するに際し、ビニルオキシ基によって置換されていないアルコール、アルコラート、またはカルボキシラートを水酸基含有ビニルエーテルに対して0.001〜10当量の範囲で添加することを特徴とする水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
- 前記フルオロオレフィン共重合体が、水酸基を有する重合単位を30〜60mol%の範囲で有することを特徴とする、請求項1に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
- 請求項1に記載の添加物が炭素数1〜4の飽和のアルコール、アルコラートまたはカルボキシラートであることを特徴とする請求項1または2に記載の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体の製造方法。
- 請求項1〜3いずれかに記載の製造方法によって製造された水酸基含有フルオロオレフィン共重合体。
- 請求項4の水酸基含有フルオロオレフィン共重合体を含む塗料。
- 請求項5の塗料から作成された低屈折率の透明被膜。
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WO2013121910A1 (ja) | 2012-02-14 | 2013-08-22 | 丸善石油化学株式会社 | ヒドロキシル基含有ビニルエーテルのホモポリマー又はランダム共重合体の製造方法 |
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WO2013121910A1 (ja) | 2012-02-14 | 2013-08-22 | 丸善石油化学株式会社 | ヒドロキシル基含有ビニルエーテルのホモポリマー又はランダム共重合体の製造方法 |
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TWI570137B (zh) * | 2012-02-14 | 2017-02-11 | Maruzen Petrochem Co Ltd | And a method for producing a homopolymer or a random copolymer containing a vinyl vinyl ether |
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