JP2004188449A - はんだ槽及びはんだ付け装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】錫を主成分とする鉛フリーはんだ37を容器35内で溶融させて貯留するはんだ槽100であって、容器35が、容器内面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなる。また、容器35は、はんだ37を貯留するはんだ貯留部39と、はんだ貯留部39の下部に一体に接続された加熱ブロック41とを有し、加熱ブロック41に形成した第1の収容孔に容器内のはんだ37を加熱する加熱手段47が収容される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、錫を主成分とする鉛フリーはんだを容器内で溶融させて貯留するはんだ槽及びはんだ付け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インバータ回路を有する高周波加熱装置などに用いられる昇圧トランスには、高周波による巻線の発熱の増加を抑えるため、エナメル線などの樹脂被覆導線の集合線であるリッツ線が用いられる。
【0003】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】
特開2001−155935号公報
【特許文献2】
特開平10−85929号公報
【0004】
上記特許文献1に開示されるリッツ線は、エナメル樹脂被覆導線の集合線からなる。このリッツ線は、加熱加圧し、導線の樹脂被覆を溶融固着して整形されることで、端子として利用される。図8に示すように、トランス1の端子3、5は、リッツ線7の両端部の一部を加熱加圧し、樹脂被覆を溶融固着させて整形して構成される。これにより、リッツ線7の両端部がばらけることがなく、ボビンの取付凹部に挿入する際も挿入し易くなる。また、挿入後もリッツ線7の一部がばらけ出すこともない。さらに、巻線の両端部を、端子3、5とすることができるため、別の端子金具を不要とすることができる。
【0005】
また、上記特許文献2には、エナメル線を溶融はんだに漬けてはんだ処理するろう付け方法が記載されている。この方法では、加熱されているろう浴中に、液状ろうが貯留され、このろう浴にパイプで接続されたろう湯桶に電気デバイスが浸漬される。これにより、電気デバイスの接触ピンと、この接触ピンの回りに巻き付けられた巻線材とがろう付けされる。
【0006】
従来、このような溶融はんだを貯留するためのはんだ槽11は、例えば図9に示すように、鋳物からなり、溶融はんだ13を貯留するはんだ槽本体15と、このはんだ槽本体15の下に連結された別体のヒータブロック17とから構成されていた。ヒータブロック17の内部には、カートリッジヒータ19が挿入され、カートリッジヒータ19の熱がヒータブロック17からはんだ槽本体15へ熱伝導することで、はんだ槽本体15内のはんだ13を溶融させた。また、はんだ槽本体15の上部開口の縁部には温度検出手段である熱電対21が掛け止めされ、熱電対21は検出先端がはんだ13に直接接触していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、鉛の人体、環境に与える悪影響から、従来の錫鉛(Sn−Pb)共晶はんだに代わり鉛フリーはんだへの移行が進んでいる。
しかしながら、従来の錫鉛共晶はんだは、錫が鉛に結合するため、腐食性を有していなかったが、近年用いられるようになってきた鉛フリーはんだは、錫の結合相手となる鉛が存在しないため、錫がはんだ槽の構成部材と結合して腐食を引き起こす所謂「錫喰われ」の症状を発生させることが報告されている。これに加えて、上記したエナメル樹脂被覆導線の集合線からなるリッツ線を、加熱加圧し、導線の樹脂被覆を溶融固着して整形する端子化方法では、良好な作業を実現するのに溶融はんだを400〜500℃に加熱しなければならず、このことが錫喰われをさらに助長させることとなった。
【0008】
即ち、通常のはんだ付け処理は、240〜260℃程度で行われるが、この温度ではエナメルが溶融しない場合があるため、はんだ温度を400〜500℃まで昇温させる必要がある。ところが、鉛フリーはんだのはんだ温度を約400℃以上に昇温させると、図10に示すように、はんだ槽の錫喰われが加速度的に進み、はんだ槽の損傷が大きくなることが知見されている。
【0009】
これは、図11に示すように、はんだ槽材料25の結晶粒界に錫(Sn)が入り込み、はんだ槽母材に含有される不純物(例えばカーボン(C)や硫黄(S)等)27と結合し、微視的な剥離が繰り返されて孔開きとなるためである。この他、引っ張り応力の作用する部位では、局部的に生じた歪みによって皮膜の破壊が継続的に発生し、その結果、割れ(応力腐食割れ)を起こすことも報告されている。
【0010】
これに対し、図12に示すように、窒化チタン層29を形成する表面処理を施すことも考えられるが、窒化チタンの膜は多孔性の性状を有するため、窒化チタン層29の微孔を介してはんだのSnが入り込み、はんだ槽材料25の不純物27と結合して結局はんだ槽に孔が開いた。即ち、窒化チタン層29では、十分な錫の遮蔽効果を得ることができなかった。
【0011】
また、このことは、温度検出手段(温度センサ)についても同様のことが言えた。例えば熱電対等の温度センサは、はんだに直付けする構造とした場合、鉛フリーでは腐食する。これに対し、SUS316、304等からなるシース部を被せ、さらにこのシース部にセラミックコーティングしたものもあるが、高価である上、セラミックコーティングには割れも発生する。また、このような温度センサの場合、ある程度の耐食性の向上は期待できるものの、温度センサへのコーティング処理に手間が掛かり、また、コーティングしてもコーティング材料(セラミックス)とセンサ母材(ステンレス)との線膨張係数の差から、温度変化履歴によりクラックが生じ易く、一旦クラックが生じると、結局その部分から腐食が進むこととなった。
【0012】
従って、これまでは、鉛フリーはんだを用いた場合、高価なチタンにより形成されたはんだ槽に孔が開くと、再び新しいチタンのはんだ槽に交換して対応するしかなく、消耗部材コストが嵩み極めて不経済なものとなっていた。
さらに、被はんだ付け部材に対するはんだ付け工程の効率を上げるため、はんだ付け装置の構造を変更する必要もあった。
【0013】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、高い耐浸食性を維持して長期間に渡って安定かつ安全に、しかも、効率良くはんだ処理を行うことができる安価なはんだ槽及びはんだ付け装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載のはんだ槽は、錫を主成分とする鉛フリーはんだを容器内で溶融させて貯留するはんだ槽であって、前記容器が、容器内面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなることを特徴とする。
【0015】
このはんだ槽では、ステンレス系材料からなる容器内面の表層に窒化クロム層が形成され、表層の窒化クロムにカーボンやイオンなどの不純物が存在し難くなる。これにより、錫が入り込まず、容器に孔が開かなくなって、はんだ漏れが防止される。また、表層が窒化クロムで覆われることで、硬度が高くなり、耐摩耗性が向上する。そして、ステンレス系材料を主材料としたはんだ槽は、チタンと比較してアルゴン溶接も可能であり、加工性が良好となると共に、チタンに比べて安価なことから、経済性にも有利となる。
【0016】
請求項2記載のはんだ槽は、前記容器が、前記はんだを400〜500℃に加熱して貯留することを特徴とする。
【0017】
このはんだ槽では、容器が、400〜500℃に加熱されるはんだを貯留する。これにより、被はんだ付け部材のはんだ付け部分(例えば複数の樹脂被覆導線の集合線であるリッツ線)がはんだ槽に浸漬されると、はんだ付け部分の樹脂被覆が溶融されると共に、この溶融部分にはんだが固着されて整形され、リッツ線そのものの端子化が可能となる。
【0018】
請求項3記載のはんだ槽は、前記容器が、前記はんだを貯留するはんだ貯留部と、該はんだ貯留部の下部に一体に接続された加熱ブロックとを有し、該加熱ブロックに形成した第1の収容孔に前記容器内のはんだを加熱する加熱手段が収容されていることを特徴とする。
【0019】
このはんだ槽では、容器のはんだ貯留部と加熱ブロックとが一体に接続され、はんだ貯留部と加熱ブロックとの熱伝達効率が高まり、はんだ貯留部と加熱手段との温度差が小さくなる。このことから、はんだ貯留部を所定温度に昇温させる際に、加熱手段が必要以上に熱をもたなくなる。その結果、加熱手段が必要以上に加熱することによる歪みがなくなり、加熱手段が容易に抜脱できて、迅速な交換が可能となる。また、はんだ貯留部の底面が障害物の存在しない平坦面となり、沈殿物の清掃が容易に行えるようになる。
【0020】
請求項4記載のはんだ槽は、前記加熱ブロックが第2の収容孔を有し、該第2の収容孔に前記容器内のはんだの温度を検出する温度検出手段が収容されていることを特徴とする。
【0021】
このはんだ槽では、温度検出手段が加熱ブロックの第2の収容孔に収容され、はんだが少ない場合であっても、正確な温度が測定可能となる。即ち、はんだ貯留部内の例えば所定高さで温度検出手段を配設した場合には、溶融はんだがその位置より低くなることで、温度検出手段が表出し、はんだ温度の検出が不能となるが、本構成によれば、温度検出手段の表出することがなくなるので、常にはんだ温度の検出が可能となり、はんだ温度の検出が不能となることによる加熱手段の必要以上の加熱が防止される。また、温度検出手段をセラミックコートした場合の構造の複雑化が防止でき、しかも、セラミックコートの場合に生じた曲げや熱膨張係数の違いによるクラックが発生しなくなる。
【0022】
請求項5記載のはんだ槽は、外表面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなり、前記容器内のはんだに浸漬する高さ位置で前記容器に固設されると共に内部に収容孔を有する第1中間配置部材を備え、該第1中間配置部材の収容孔に前記容器内のはんだを加熱する加熱手段が収容されていることを特徴とする。
【0023】
このはんだ槽では、第1中間配置部材の周囲が直接はんだに接触するので、熱伝導の効率が良好となり、加熱手段が必要以上に発熱しなくなり、加熱手段の長寿命化が図れると共に、加熱手段の迅速な交換が可能となる。また、熱伝導率が高まるので、はんだ温度の立ち上げ時間の短縮も可能となる。
【0024】
請求項6記載のはんだ槽は、外表面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなり、前記容器内のはんだに浸漬する高さ位置で前記容器に固設されると共に内部に収容孔を有する第2中間配置部材を備え、該第2中間配置部材の収容孔に前記容器内のはんだの温度を検出する温度検出手段が収容されていることを特徴とする。
【0025】
このはんだ槽では、温度検出手段が第2中間配置部材の収容孔に収容され、シース部が錫に喰われて腐食することがなくなる。また、第2中間配置部材から温度検出手段を取り出すことが可能であるので、温度検出手段の交換が容易となる。
【0026】
請求項7記載のはんだ付け装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のはんだ槽と、被はんだ付け部材のはんだ付け部分を前記はんだ槽のはんだに浸漬するように前記被はんだ付け部材と前記はんだ槽とを相対移動させる駆動手段と、該駆動手段の浸漬動作及び前記はんだ槽のはんだ温度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0027】
このはんだ付け装置では、はんだ槽に対して浸食性の高い高温の鉛フリーはんだが使用される場合であっても、必要最低限の高温度に保たれた鉛フリーはんだがはんだ槽に貯留され、被はんだ付け部材のはんだ付け部分がこのはんだ槽に浸漬されることで、はんだ付け部分の樹脂被覆が溶融されると共に、樹脂被覆の溶融されたはんだ付け部分に、はんだが固着される。これにより、高い耐浸食性を維持して、長期間に渡って安定かつ安全に、しかも、効率良くはんだ処理が自動で行えるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るはんだ槽及びはんだ付け装置の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るはんだ槽の加熱ブロック一体構造の実施の形態を表す斜視図、図2ははんだ槽の一部分を切り欠いた(a)正面図と(b)側面図、図3は図1の平面図、図4は図2に示したはんだ槽のA部表層を拡大した模式図、図5は本発明に係るはんだ付け装置の概略構成図である。
【0029】
本実施の形態によるはんだ槽100は、外装板31からなる筺体33の内部に、容器35が設けられている。この容器35と外装板31との間には、図示しない所定間隔の空隙及び断熱材が設けられている。容器35は、はんだ37を貯留するはんだ貯留部39と、このはんだ貯留部39の下部に一体に形成された加熱ブロック41とからなる。
【0030】
はんだ貯留部39と加熱ブロック41は、一つの無垢材から一体に形成するものであって、双方の間は良好な熱伝導性が得られるようになっている。また、はんだ貯留部39と加熱ブロック41は、加熱ブロック41のみを無垢材から形成し、はんだ貯留部39を構成する側壁39aを、この加熱ブロック41に一体に溶接する構造とすることもできる。さらに、上記一体構成に限らず、例えば、はんだ貯留部39と加熱ブロック41とを別体に構成して、それぞれを接合する接続面を平滑な鏡面状に形成し、空隙層が形成されないように極力面接触に近い状態で接続する実質的に一体にされた構成としてもよい。なお、この接続面には、500℃程度の耐熱性を有する熱伝導性の良好な接合材を介在させてもよい。これにより、空隙層を完全に除去して高い熱伝導性が得られるようにできる。
【0031】
これらの構造とすることで、いずれの場合も、別体のはんだ貯留部と加熱ブロックとを点接触状態で連結されていた従来構造に比べ、高い熱伝導率が得られるようになる。
【0032】
はんだ貯留部39及び加熱ブロック41は、ステンレス系材料からなる。容器35の内面(はんだ貯留部39の内壁面39b及び底面39c)には、窒化クロム層43(図4参照)が形成されている。この窒化クロム層43は、例えば窒素ガス中にステンレス系材料を晒し、ステンレス系材料中のクロムを窒素と結合させて窒化クロム層を形成する、所謂真空窒化処理等によって得ることができる。この窒化クロム層43は、ビッカース硬さHv1200位になり、高周波焼入鋼材の約2倍の硬度となる。この硬さによって鉄工ヤスリも及ばない耐摩耗性が得られるようになる。
【0033】
そして、窒化クロム層43は、カーボンやイオウ等の不純物が存在し難いため、錫との結合が抑止できる。容器35は、このように表層に窒化クロム層43を形成したステンレス系材料からなるので、チタンと比較して、アルゴン溶接も可能となって加工性が良好となる。さらに、価格面でもチタンに比べて安価となる。
【0034】
容器35は、400〜500℃に加熱した、所謂高温はんだと呼ばれるはんだ37を貯留する。これにより、被はんだ付け部材のはんだ付け部分(例えば複数の樹脂被覆導線の集合線であるリッツ線)がはんだ貯留部39に浸漬されると、はんだ付け部分の樹脂被覆が溶融されると共に、この溶融部分にはんだ37が固着されて整形され、リッツ線そのものの端子化が可能となる。
【0035】
加熱ブロック41には複数の第1の収容孔45が平行に形成され、第1の収容孔45ははんだ貯留部39内のはんだ37を加熱する加熱手段(電気ヒータ)47を収容している。第1の収容孔45の内径は、電気ヒータ47の外径に対して0.5mm大きいH7(JIS B 0401)のはめあいとなっている。
【0036】
また、加熱ブロック41には第2の収容孔49が形成され、第2の収容孔49ははんだ貯留部39内のはんだ37の温度を検出する温度検出手段(熱電対式温度センサ)51を収容している。電気ヒータ47と溶融はんだ7との間には、熱伝導及び熱伝達による温度勾配が生じる。このため、第2の収容孔49は、温度センサ51ができるだけはんだ温度の近似値を得ることができるように、電気ヒータ47よりはんだ貯留部39に近い位置に配設されている。なお、熱電対式温度センサ51によるはんだ37の温度検出にあたっては、必要に応じて温度補償(実際の温度との相関演算)を行う。これにより、正確な温度測定が可能となる。
【0037】
上記のはんだ槽100は、図5に示すように、駆動手段53と、制御手段であるプログラマブルシーケンサやコンピュータ等の制御装置55とを付属部材として備えることで、はんだ付け装置200を構成することができる。駆動手段53は、被はんだ付け部材のはんだ付け部分を、はんだ貯留部39のはんだ37に浸漬するように、被はんだ付け部材とはんだ槽100とを相対移動可能としている。本実施の形態の構成では、載置固定したはんだ槽100に対し、被はんだ付け部材57を挟持可能とした挟持機構59を備えた昇降ハンド61が、上下方向に昇降することによって、被はんだ付け部材57のはんだ付け部分のみをはんだ貯留部39のはんだ37に浸漬可能としている。
【0038】
この昇降ハンド61は、油圧シリンダ或いはラック・ピニオン機構等によって昇降駆動される。この駆動機構の駆動源となる油圧源又は電動モータは、駆動ドライバ63によって駆動が制御される。
【0039】
一方、制御装置55は、駆動系制御部65と、加熱制御部67と、温度管理部69とからなる。温度管理部69は、温度センサ51から得たはんだ貯留部39内のはんだ温度に基づき、加熱指示信号を加熱制御部67へ送出する。この加熱指示信号を受けた加熱制御部67は、電気ヒータ47をオン・オフ制御して、はんだ温度が一定温度に保持されるよう制御を行うようになっている。
【0040】
また、駆動系制御部65は、図示しないホスト側の制御コンピュータからの動作指示信号或いは図示しない操作パネルからの動作指示信号に基づき、被はんだ付け部材57の挟持及び昇降動作のための制御信号を駆動ドライバ63へ送出するようになっている。
【0041】
上記構成のはんだ槽100によれば、ステンレス系材料からなる容器35内面の表層に窒化クロム層43が形成され、表層の窒化クロム層43にカーボンやイオンなどの不純物が存在し難くなる。これにより、錫が入り込まず、容器35に孔が形成されることがなくなり、はんだ漏れが防止される。また、表層が窒化クロム層43で覆われることで硬度が高くなり、耐摩耗性が向上する。そして、ステンレス系材料を主材料としたはんだ槽100は、チタンと比較して加工性が良く安価なことから、経済性にも有利となる。
【0042】
また、はんだ槽100は、容器35のはんだ貯留部39と加熱ブロック41とが一体に接続され、はんだ貯留部39と加熱ブロック41との熱伝達効率が高まり、はんだ貯留部39と電気ヒータ47との温度差が小さくなる。このことから、はんだ貯留部39を所定温度に昇温させる際に、電気ヒータ47が必要以上に加熱されることがなくなる。その結果、電気ヒータ47の過加熱による歪みがなくなり、メンテナンス時に、電気ヒータ47が容易に抜脱可能となり、迅速な交換作業が可能となる。また、はんだ貯留部39の底面が障害物の存在しない平坦面となり、沈殿物の清掃が容易に行える。
【0043】
また、温度センサ51が加熱ブロック41の第2の収容孔49に収容され、はんだ37が少ない場合であっても、支障なく正確な温度が測定可能となる。即ち、はんだ貯留部39内の例えば所定高さで温度センサ51を配設した場合には、溶融はんだ37がその位置より低くなることで、温度センサ51が表出し、はんだ温度の検出が不能となるが、本構成によれば、温度センサ51の表出することがなくなるので、常にはんだ温度の検出が可能となり、はんだ温度の検出が不能となることによる電気ヒータ47の必要以上の加熱が防止される。そして、温度センサ51をセラミックコートした場合の構造の複雑化が防止でき、しかも、セラミックコートの場合に生じた曲げや、熱膨張係数の違いによるクラックの発生がなくなる。
【0044】
さらに、上記のはんだ付け装置200によれば、はんだ37に対して浸食性の高い高温の鉛フリーはんだが使用される場合であっても、必要最低限の高温度で保持された鉛フリーはんだ37がはんだ槽100に貯留され、被はんだ付け部材57のはんだ付け部分がこのはんだ槽100に浸漬されることで、はんだ付け部分の樹脂被覆が溶融されると共に、樹脂被覆の溶融されたはんだ付け部分に、はんだ37が固着される。これにより、高い耐浸食性を維持して、長期間に渡って安定かつ安全に、しかも、効率良くはんだ処理が自動で行えるようになる。
【0045】
次に、本発明に係るはんだ槽の他の実施の形態を説明する。
図6は加熱手段及び温度検出手段をパイプ構造としたはんだ槽の一部分を切り欠いた(a)正面図と(b)側面図、図7は図6の平面図である。なお、本実施の形態では、図1〜図5に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0046】
この実施の形態によるはんだ槽300は、容器71がはんだ貯留部73のみからなり、加熱ブロックを有していない。はんだ貯留部73は、ステンレス系材料からなり、内面の表層に、上記した窒化クロム層43が形成されている。このはんだ貯留部73の内部には、溶融はんだに浸漬する高さ位置で、第1中間配置部材75が固設されている。第1中間配置部材75は、ステンレス系材料からなり、外面の表層に、上記した窒化クロム層43が形成されている。第1中間配置部材75はパイプ状に形成され、両端がはんだ貯留部73の側壁を貫通している。第1中間配置部材75は内部に収容孔77を有し、収容孔77ははんだ貯留部73の外部に開口している。この収容孔77には、はんだ貯留部73内のはんだを加熱するための電気ヒータ47が収容されている。
【0047】
また、はんだ貯留部73の内部には、溶融はんだに浸漬する高さ位置で、第2中間配置部材79が固設されている。第2中間配置部材79は、ステンレス系材料からなり、内面の表層に、上記した窒化クロム層43が形成されている。第2中間配置部材79はパイプ状に形成され、両端がはんだ貯留部73の側壁を貫通している。第2中間配置部材79は内部に収容孔81を有し、収容孔81ははんだ貯留部73の外部に開口している。この収容孔81には、はんだ貯留部73内のはんだ37の温度を検出する温度検出手段である温度センサ51が収容されている。
【0048】
このように構成されたはんだ槽300によれば、第1中間配置部材75の周囲が直接はんだ37に接触するので、熱伝導の効率が良好となり、電気ヒータ47が必要以上に発熱しなくなり、電気ヒータ47の長寿命化が図れ、これに加え、電気ヒータ47の迅速な交換も可能となる。また、熱伝導率が高まるので、はんだ温度の立ち上げ時間の短縮も可能となる。
【0049】
そして、温度センサ51が第2中間配置部材79の収容孔81に収容され、シース部が錫に喰われて腐食することがなくなる。また、第2中間配置部材79から温度センサ51を取り出すことが可能であるので、温度センサ51の交換が容易となる。
【0050】
なお、上記した実施の形態では、加熱手段が棒状の電気ヒータ47である場合を例に説明したが、本発明に係るはんだ槽は、加熱手段として面ヒータとしてもよい。このような面ヒータを用いれば、高速昇温が可能になると共に、加熱効率をより良好にすることができる。また、平面的に均一な加熱が可能となるので、はんだ貯留部の温度分布を均一化させることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るはんだ槽によれば、鉛フリーはんだを容器内で溶融貯留するはんだ槽において、ステンレス系材料からなる容器内面に窒化クロム層を形成したので、表層の窒化クロムにカーボンやイオンなどの不純物が存在し難くなる。これにより、錫が入り込まず、容器に孔が形成されなくなり、はんだ漏れを防止することができる。また、表層が窒化クロムで覆われることで、硬度が高くなり、耐摩耗性を向上させることができる。そして、はんだ槽の主材料はステンレス系材料であるので、チタンと比較してアルゴン溶接も可能となって加工性が良好となり、しかも、安価であるので経済性にも有利となる。この結果、長期に渡って漏れの生じない信頼性の高いはんだ槽を安価に得ることができる。
【0052】
本発明に係るはんだ付け装置によれば、はんだ槽と、被はんだ付け部材とはんだ槽とを相対移動させる駆動手段と、駆動手段の浸漬動作及びはんだ槽のはんだ温度を制御する制御手段とを備えたので、はんだ槽に対して浸食性の高い高温の鉛フリーはんだを使用する場合であっても、必要最低限の高温度に保たれた鉛フリーはんだをはんだ槽に貯留し、被はんだ付け部材のはんだ付け部分をこのはんだ槽に自動で浸漬して、はんだ付け部分の樹脂被覆を溶融すると共にはんだを固着させることができる。この結果、高い耐浸食性を維持して長期間に渡って安定かつ安全に、しかも、効率良くはんだ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るはんだ槽の加熱ブロック一体構造の実施の形態を表す斜視図である。
【図2】図1のはんだ槽の一部分を切り欠いた(a)正面図と(b)側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図2に示したはんだ槽のA部表層を拡大した模式図である。
【図5】本発明に係るはんだ付け装置の概略構成図である。
【図6】加熱手段及び温度検出手段をパイプ構造としたはんだ槽はんだ槽の一部分を切り欠いた(a)正面図と(b)側面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】リッツ線を用いた昇圧トランスの斜視図である。
【図9】従来のはんだ槽の断面図である。
【図10】はんだ温度と錫喰われとの相関を表したグラフである。
【図11】はんだ槽の錫喰われの過程を(a)〜(d)で表した模式図である。
【図12】チタン層を形成したはんだ槽の錫喰われの状況を(a)(b)で表した模式図である。
【符号の説明】
35、71…容器
37…鉛フリーはんだ
39、73…はんだ貯留部
43…窒化クロム層
41…加熱ブロック
45…第1の収容孔
47…電気ヒータ(加熱手段)
49…第2の収容孔
51…温度センサ(温度検出手段)
53…駆動手段
55…制御装置(制御手段)
57…被はんだ付け部材
75…第1中間配置部材
77、81…収容孔
79…第2中間配置部材
100、300…はんだ槽
200…はんだ付け装置
Claims (7)
- 錫を主成分とする鉛フリーはんだを容器内で溶融させて貯留するはんだ槽であって、
前記容器が、容器内面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなることを特徴とするはんだ槽。 - 前記容器が、前記はんだを400〜500℃に加熱して貯留することを特徴とする請求項1記載のはんだ槽。
- 前記容器が、前記はんだを貯留するはんだ貯留部と、該はんだ貯留部の下部に一体に接続された加熱ブロックとを有し、該加熱ブロックに形成した第1の収容孔に前記容器内のはんだを加熱する加熱手段が収容されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のはんだ槽。
- 前記加熱ブロックが第2の収容孔を有し、該第2の収容孔に前記容器内のはんだの温度を検出する温度検出手段が収容されていることを特徴とする請求項3記載のはんだ槽。
- 外表面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなり、前記容器内のはんだに浸漬する高さ位置で前記容器に固設されると共に内部に収容孔を有する第1中間配置部材を備え、
該第1中間配置部材の収容孔に前記容器内のはんだを加熱する加熱手段が収容されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のはんだ槽。 - 外表面に窒化クロム層の形成されたステンレス系材料からなり、前記容器内のはんだに浸漬する高さ位置で前記容器に固設されると共に内部に収容孔を有する第2中間配置部材を備え、
該第2中間配置部材の収容孔に前記容器内のはんだの温度を検出する温度検出手段が収容されていることを特徴とする請求項5記載のはんだ槽。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のはんだ槽と、
被はんだ付け部材のはんだ付け部分を前記はんだ槽のはんだに浸漬するように前記被はんだ付け部材と前記はんだ槽とを相対移動させる駆動手段と、
該駆動手段の浸漬動作及び前記はんだ槽のはんだ温度を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするはんだ付け装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006159225A (ja) * | 2004-12-03 | 2006-06-22 | Tamura Seisakusho Co Ltd | はんだ槽の侵食防止方法及び侵食防止装置 |
JP2010099676A (ja) * | 2008-10-22 | 2010-05-06 | Tamura Seisakusho Co Ltd | はんだ漏れ検出機能付きはんだ槽 |
JP2013503749A (ja) * | 2009-09-02 | 2013-02-04 | レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード | ウェーブソルダリング装置に希ガスを供給する装置 |
US8610095B2 (en) | 2009-01-29 | 2013-12-17 | Gigaphoton Inc. | Extreme ultraviolet light source device |
-
2002
- 2002-12-10 JP JP2002358477A patent/JP2004188449A/ja active Pending
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