JP2005088073A - はんだ槽、ヒータおよび金属基材の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 はんだ壺、ヒータなど鉛フリーはんだなどの錫合金に対して接触する金属基材の表面を覆う中間金属層21と、セラミックスからなる表面保護層20とを順次溶射により形成するようにする。
【選択図】 図3
Description
鉛フリーはんだは、錫−銀(Ag)−銅(Cu)系、錫−銅系、錫−亜鉛(Zn)系などが知られている。それらには、他の金属として、例えばビスマス(Bi)、インジウム(In)などが適宜含有される。これら鉛フリーはんだには、錫が約90%以上含まれるのが一般的である。
これら鉛フリーはんだは、従来の鉛−錫共晶はんだと同様に、ヒータとはんだ壺とを備えるはんだ槽において融解されて、はんだ壺内に貯留される。そしてこのようなはんだ槽は部品を載せたプリント基板やリード線をディッピングするのに用いられる。
従来、このようなはんだ壺やヒータが鉄鋼を基材として製作される場合、鉄が鉛フリーはんだに溶け込んで腐食することを防止するために、特殊な窒化処理を施したり、耐食性に優れるステンレス鋼を用いたりしていた。ところが、鉛フリーはんだでは、腐食性の強い錫が多量に含まれるとともに、融点が高いため加熱温度が上昇しているので、より腐食性が強まることが明らかとなった。
すなわち、はんだ壺など鉛フリーはんだに触れる箇所に短期間で孔が空いてしまうため交換頻度が高くなったり、貯留されたはんだに基材のイオン化物が溶け込むためはんだの品質が損なわれたりするといった問題があった。
そこで、窒化処理やステンレス鋼に代わる耐食性向上技術が強く望まれていた。
例えば、特許文献1には、母材のステンレス鋼の表面にガラス材またはセラミックス材を溶射してなる耐熱性コーティング層を設けたはんだ槽(上記のはんだ壺に相当)およびはんだ加熱装置が記載されている。また、母材と耐熱性コーティング層との間にモリブデン層とその酸化膜層とが形成されたはんだ槽およびはんだ加熱装置が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、セラミックス材による耐熱性コーティング層により、腐食の進行を抑えられるものの、はんだ槽は常時加熱されているため、熱膨張率が大きく異なるステンレス鋼とセラミックス材との境界部において熱応力が発生し、耐熱性コーティング層にひび割れが生じやすくなっていた。そこで、ひび割れ部から耐熱性コーティング層が剥離したり、ひび割れ部から錫が侵入して母材のステンレス鋼が腐食されたりする結果、寿命が短くなるという問題があった。
この発明によれば、溶射により金属基材を覆う中間金属層が形成されることにより、その上に溶射される表面保護層がなじみやすい凹凸表面を形成することができる。中間金属層と金属基材とは金属同士のため密着性がよく、一方セラミックスを溶射して形成される表面保護層は、中間金属層の凹凸表面により中間金属層との密着性を向上することができる。セラミックスは錫により腐食されないから、この表面保護層により金属基材が保護される。また、金属基材と中間金属層、ならびに中間金属層と表面保護層との間には、高い密着性を得られるので、それぞれの熱膨張率の違いによる熱応力が作用しても剥離が起こらないようにすることができる。
この発明によれば、例えばポンプなどのはんだ流形成手段を備えることによりはんだの流れを形成し被はんだ付け物に沿って流す、いわゆるフローはんだ槽において、はんだ流形成手段の金属部に中間金属層、表面保護層を設けるので、はんだ流形成手段の錫に対する耐食性を向上でき、信頼性の高いはんだ槽とすることができる。
この発明によれば、ヒータの金属管に、中間金属層、表面保護層を設けるので、ヒータをはんだ貯留領域に配置してもはんだを直接加熱できるはんだ槽とすることができ、しかもヒータの錫に対する耐食性を向上できるので、信頼性の高いはんだ槽とすることができる。
この発明によれば、温度センサを覆う金属管に、中間金属層、表面保護層を設けるので、温度センサの錫に対する耐食性を向上でき、信頼性の高いはんだ槽とすることができる。
この発明によれば、請求項3に用いることができるヒータとなるから、請求項3と同様の作用効果を備える。
この発明によれば、請求項1〜5のいずれかに記載のはんだ槽、またはヒータに表面保護層を形成するのに好適な表面処理方法となる。
図1は、本発明の実施形態に係るはんだ槽について説明するための斜視説明図である。図2は、本発明の実施形態に係るはんだ槽の詳細構成を説明するための、図1におけるA−A断面を含む模式説明図である。図3は、本発明の実施形態に係る金属基材の表面処理方法により形成された保護層の概略構成を説明するための模式説明図である。
はんだ槽1は、はんだを加熱融解して所定温度に保って貯留し、必要に応じて上方から、リード線、プリント基板、電子部品などを融解はんだにつけることができるようにしたものであり、特に鉛フリーはんだを貯留するのに好適なものである。
その概略構成は、基台4に、はんだ壺2、加熱部3(ヒータ)および温度調節部5が収められてなる。
はんだ壺2の材質は、ステンレス鋼板(金属基材)、例えば、SUS304、SUS316などからなり、はんだ貯留部2bの内周面およびフランジ部2aの上面側に保護層2Bが全面にわたって設けられている。符号6は、融解して貯留された鉛フリーはんだを示す。
本実施形態の場合、はんだ壺本体2Aがステンレス鋼板であり、Cr、Niのいずれともなじみがよいので、Cr:Niの比の範囲は比較的自由に決めることができるが、例えば1:1、あるいはそれに近い比を好適に採用することができる。
中間金属層21の厚さt1は、約50μm程度とすることができる。
ここで、中間金属層21の表面には、溶射後に自然状態の空気と接触して酸化膜が形成されている場合があるが、数nm程度ときわめて薄いため、その有無は無視できる。
なお、一般的には、鉛フリーはんだ6は錫を90%程度以上含んでいるため、融解した錫にほとんど溶け出さなければ、鉛フリーはんだ6にもほとんど溶け出さないと考えることができる。
表面保護層20の厚さt2は、薄すぎると、強度不足となりひび割れの原因ともなり、厚すぎると熱伝導性が悪くなり、はんだ壺2の温度制御の応答性が低下する。例えばセラミック材料としてAl2O3を用いる場合、0.4mm〜0.5mm程度が好適である。
発熱体3aは、例えばニクロム線などの高抵抗で耐熱性を有する電熱線をはんだ貯留部2bの外周部を取り巻くようにコイル状に巻いて構成され、端部に通電用の電線5dが接続されたものである。
伝熱体3bは、発熱体3aを内部に含む円筒状部材であり、その内径側にはんだ貯留部2bの外周部が挿嵌され、上部端面がフランジ部2aの裏面と当接可能な形状とされ、はんだ壺2を上方側に着脱可能としている。
保護カバー3cは、伝熱体3bの外周部を覆うカバーである。図2では、略図のため伝熱体3bに当接するように描かれているが、伝熱体3bの熱を外周側に伝わりにくいように隙間を設けたり、断熱性を有する構成としたりすることが好ましい。
まず、保護層2Bを設ける側のはんだ壺本体2Aの表面に溶射の妨げとなる付着物がある場合は、必要に応じてこれを除去し清浄化する。
そして、表面に適宜混合率のCrとNi、または他の少量金属を含むCr−Ni合金を溶射し、中間金属層21を形成する。なお、中間金属層21の付着力を強化するために、例えばサンドブラスト処理などを予め施して、はんだ壺本体2Aの表面を目粗ししておいてもよい(図3の境界面S1参照)。
次に、セラミックス材料を中間金属層21上に溶射する。
一般に、Cr、Ni、あるいはCr−Ni合金は、線材として供給され、セラミックス材料は粉体として供給されるという違いはあるものの、本実施形態の溶射方法は適宜の溶射装置を用いた溶射方法を用いることができる。例えば、フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射などを必要に応じて用いることができる。
境界面S2がこのように凹凸形状を有することにより、その上に形成される表面保護層20を中間金属層21に対して強固に付着させることができる。すなわち、表面保護層20と中間金属層21とは熱膨張率が異なるので、それぞれの層が延びる方向(図3の左右方向)に剪断応力が生じて剥離の原因ともなるが、本実施形態では、境界面S2が層の厚さ方向(図3の上下方向)に凹凸形状をなして係合し合うため、層間の剥離が起こりにくいという利点がある。
また、中間金属層21、表面保護層20を溶射により形成するので、例えば真空蒸着などの他のコーティング方法に比べて、層厚の可変範囲を大きくとることができるとともに、材質の選択範囲を広げることができるものである。したがって、はんだ壺2の大きさや使用温度などに応じて、中間金属層21、表面保護層20の厚さや材質を比較的自由に選択できることができるという利点がある。
さらに、中間金属層21を溶射で形成するために、表面に比較的大きな凹凸を有する境界面S2が形成され、境界面S2の熱変形による剪断応力が作用しても、剥離が起こりにくく、はんだ壺本体2Aの腐食の原因ともなるひび割れの発生を防止できるという利点がある。
図4は、本実施形態に係るはんだ槽の変形例を説明するための斜視説明図である。図5は、図4のB−B断面である。図6は、本変形例に用いるシーズヒータの概略斜視図である。
本変形例の角形はんだ槽10(はんだ槽)は、上記に説明したはんだ槽1のはんだ壺2に代えて角形はんだ壺11(はんだ壺)を、加熱部3a代えてシーズヒータ12(ヒータ)をそれぞれ備え、鉛フリーはんだ6の温度を計測するための温度センサ13がはんだ貯留部11bに設けられる。以下では、上記実施形態と異なる点を中心に簡単に説明する。
はんだ壺本体11Aの材質は、はんだ壺本体2Aと同様である。また保護層2Bの構成は、すでに述べた通りである。
シーズヒータ12の概略構成は、発熱体12a、伝熱体12b、金属管12cからなる。
発熱体12a、伝熱体12bは、周知のシーズヒータの構成を採用することができる。すなわち、発熱体12aは、ジュール熱を発生させるための電熱線であり、径方向の略中心に配置されている。そして角形はんだ壺11の外側に出された端部(不図示)において温度調節部5に電気的に接続されている。伝熱体12bは、発熱体12aを径方向に覆って絶縁被覆するとともに発熱体12aで発生した熱を径方向に伝熱するものである。
金属管12cは、伝熱体12bを覆って保護するとともに、外部に放熱するためのもので、耐熱性、耐食性の高い金属、例えばステンレス鋼からなり、表面に保護層2Bが形成されている。保護層2Bの構成と形成方法は、上記に説明したはんだ壺本体11Aなどの表面に設けた保護層2Bと同様なので説明を省略する。
また、上記の説明では、金属基材がステンレス鋼の例で説明した。従来の鉛フリーはんだ用のはんだ壺やヒータはステンレス鋼が用いられることが多いので、このようにすることにより、従来の成型用金型を共通利用できる利点があるが、中間金属層との密着性がよければ他の鉄鋼や他の金属を用いてもよいことは言うまでもない。
2 はんだ壺
2A はんだ壺本体(金属基材)
2B 保護層
3 加熱部(ヒータ)
3a、12a 発熱体
6 鉛フリーはんだ
10 角形はんだ槽(はんだ槽)
11 角形はんだ壺(はんだ壺)
11A はんだ壺本体(金属基材)
12 シーズヒータ(ヒータ)
13 温度センサ
13c 金属管
20 表面保護層
21 中間金属層
Claims (6)
- はんだを加熱して融解するヒータと、該ヒータにより融解された液体状のはんだを貯留するはんだ壺とを備えるはんだ槽であって、
前記はんだ壺が金属を基材として形成され、少なくとも前記はんだが貯留される側の表面上で前記基材を覆う中間金属層と、セラミックスからなる表面保護層とが、前記基材側から順次、溶射により形成されてなることを特徴とするはんだ槽。 - 前記はんだ壺のはんだ貯留領域に、前記融解されたはんだの流れを形成して被はんだ付け物に沿って流すはんだ流形成手段を備え、
該はんだ流形成手段の金属部の表面に、該金属部を覆う中間金属層と、セラミックスからなる表面保護層とが、この順に溶射により形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のはんだ槽。 - 前記ヒータが、絶縁被覆された発熱体を金属管で覆ってなるヒータであって、前記はんだ壺のはんだ貯留領域に配置されてなり、
前記金属管の表面に、該金属管を覆う中間金属層と、セラミックスからなる表面保護層とが、この順に溶射により形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ槽。 - 前記はんだ壺のはんだ貯留領域に、金属管に覆われた温度センサが配置され、
該温度センサの金属管の表面に、該金属管を覆う中間金属層と、セラミックスからなる表面保護層とが、この順に溶射により形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のはんだ槽。 - 絶縁被覆された発熱体を金属管で覆ってなるヒータであって、
前記金属管の表面に、該金属管を覆う中間金属層と、セラミックスからなる表面保護層とが、この順に溶射により形成されてなることを特徴とするヒータ。 - 融解された錫合金に曝されるはんだ槽、ヒータなどに用いる金属基材の表面処理方法であって、
前記金属基材の表面に、該金属基材を覆う中間金属層を溶射によって形成し、
該中間金属層の上に、セラミックスを溶射して表面保護層を形成することを特徴とする金属基材の表面処理方法。
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