JP2004186764A - 圧電振動子の製造方法および、それに用いるマスク - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電素板を高精度に薄板化し圧電振動子の高周波化を容易にする保持部を持った圧電振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】課題を解決するために本発明は、圧電素板に誘電体膜を形成し、該圧電素板と該誘電体膜とで圧電素子を構成する圧電振動子の製造方法において、該圧電素板にマスクを接し、該マスクを介して誘電体膜を形成するものであり、該マスクを該圧電素板の主面の略半分に誘電体膜を形成し、その後該マスクを反転し残る該圧電素板の略半分に誘電体膜を形成することにより課題を解決する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電体を用い高周波の発振周波数を得るための極めて薄い振動子(薄板)の製造方法とそれに用いるマスク形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今の移動体・情報通信機器等に用いられる振動子やフィルターなどの圧電デバイスは機器の小型化、デジタル化への展開とあいまって、高周波数、広帯域化という基本仕様のハイスペック化の傾向にある。
【0003】
特に、移動体通信分野では通信網が高密度化するなど、多重通信時代が到来することに対し、これら高密度の通信網では従来より効率の良いフィルタリングとフィルタ特性の改善の要求とが望まれている。
【0004】
上記のような高周波を発振させるためには、圧電振動子の板厚を薄く加工することは必須な条件であり、従来の圧電振動子の加工方法の代表例では、研磨技術やエッチング技術などの薄板化技術を向上させることで、高周波化などに対応している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−274128号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電振動子(例えばATカット板の水晶振動子)を両面研磨機(俗に言うラッピングマシン)を用いて厚み研磨加工を行う方法では、被加工物が研磨加工中および被加工物の取り扱い(研磨作業中の被加工物を取り出すとき)に被加工物に割れ、欠けが生じる。高周波の素板を得るために板厚自体も極薄く、更には、被加工物の外形寸法も2ミリ角と非常に小さいことから、組立工程時においても取り扱いが非常に難しい。
【0007】
本発明の技術的な背景としては、一般的にな両面研磨機での量産加工における厚み加工の限界としては100μm程度と考えられている。この限界値は、高周波化を狙った水晶振動子などの厚み加工をするには、厚み数値で比較しても非常に厚く加工そのものが非常に不安定である。
【0008】
一方、高周波化を狙い化学エッチング(例えばフッ酸溶液を用いた)工法で圧電板の一部をエッチングしようとしても、水晶振動子の持つ結晶構造により材料内の欠陥が選択的に除去されるなどの問題が生じ一様な厚み制御が難しいことや、エッチング溶液の状態管理(エッチング時の液温や濃度など)などが起因となり、エッチングにより水晶振動子の一部分を選択的に薄く加工し厚み制御することも、その製造工程並びに品質維持については非常に不安定となっているのが現状である。
【0009】
また、エッチング工法を用い圧電板の一部に薄板部を形成したいわゆる逆メサ形状の水晶振動子の場合では、水晶の持つ結晶構造が異方性であることから、エッチング工法による加工では、設計値と実際値の寸法精度が合致しないことから、振動部の有効寸法を確保したり、エッチング工法による平坦度を確保することが難しく、薄板部を形成するために、十分な大きな圧電板を確保する必要があることから、昨今の要求である水晶振動子の小型化を満足することが難しい現状にもある。
【0010】
本発明は、このような従来の圧電デバイスの課題を考慮し、圧電体を高精度に薄板化した圧電振動子を用いることで、支持部分の改善を行うことにより、高周波化を容易にする圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで上記の課題を解決するために本発明は、圧電素板に誘電体膜を形成し、圧電素板と誘電体膜とで圧電素子を構成するこを特徴とする圧電振動子であり、薄板上の圧電素板に、誘電体膜を形成し圧電素板を支持する形態を構成するものである。
【0012】
そして、上記の圧電振動子の製造方法の工程で、圧電素板上に誘電体膜を形成する工程で、該圧電素板上に接するように金属マスクを配置し、マスクを介してスパッタリング法により誘電体膜を形成することを特徴とするものである。
【0013】
要するに本発明は、薄板の圧電素板に圧電素板を保持し支持する形態にすることで、従来の課題に挙げた色々な問題を改善し、高周波の基本波振動を得た圧電振動子を得ることを目的とするものであるが、従来のエッチング工法などを用いること無く、高周波の振動子とその製造方法を簡易化するこができる。
【0014】
そのことにより、従来の圧電振動子の薄板化に伴うエッチングと水晶振動子の異方性結晶の問題を解消し、素板の小型化の実現を容易にするなど、製造工程の各工程における作業性と品質維持、歩留まりの改善と向上を実現するものである。
【0015】
また本発明では、従来から圧電素板に励振電極を形成する場合に、圧電素板の主面に所望となる電極を形成する考えと同様に、誘電体膜を形成するためにマスクを配置し、マスクを介して誘電体膜を形成するものである。
【0016】
圧電素板にマスクを介して誘電体膜を形成する一例として、マスクを圧電素板の主面の略半分に誘電体膜を形成し、その後マスクを反転し残る圧電素板の略半分に誘電体膜を形成するものであり、この場合のマスク形状として、圧電素板の振動部を形成するマスク部分の厚みと、マスク部分を保持する部分との厚みが異なることも特徴となる。
【0017】
上述の圧電振動子の製造とそれに用いるマスクとにより、前述の課題を解決することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。図1は本発明の圧電振動子3の概念を示す斜視図である。
【0019】
図1(a)は本発明の圧電振動子3の斜視図である。圧電材料として、例えば水晶材料を用いた水晶の薄板素板の支持部に、誘電体膜2を形成するものである。図1はそのひとつの例として示したもので、薄板素板の片面、あるいは両面に誘電体膜2を形成したものである。そして図1(c)は容器内の圧電振動子3を搭載したときの概念を示したものである。なお、図中には素板の電極は図示していない。また、本願発明では、圧電素板1に金属マスク4を接し、マスク4を介して誘電体膜2を形成し、誘電体膜2の形成にはスパッタリング法を用いたものである。
【0020】
図1(a)を詳説すると、図1(a)は薄板素板の振動部5周囲に誘電体膜2を形成したもので、図1(b)は同様に圧電素板1の振動部5周囲の圧電素板1の両面に誘電体膜2を形成した例である。このように、圧電素板1の振動部5を逃げた部位(支持部に相当)に誘電体膜2を形成したものである。なお、図1に描画する内容も同様であるが、圧電素板1の厚みは、2〜20μmで、誘電体膜2の厚みは0.02〜3μm程度を所望の厚みとして想定する。そして、図2は図1(b)の振動部5周辺を拡大しその断面を示したもので、図からも分かるように、振動部5の周囲に誘電体膜2を配置した形態が分かる。
【0021】
次に本発明の圧電振動子3の製造工程について図3で説明する。(1)薄板状の圧電板上の主面の略半分に誘電体膜2を形成する工程と、(2)そのマスク4の上からスパッタリング法で誘電体膜2を形成する工程と、(3)その後マスク4を反転する工程と、(4)そのマスク4の上からスパッタリング法で誘電体膜2を形成する工程とにより圧電素板1上に図1に示すような圧電素板1の中心部を振動部として圧電振動子の板厚の薄い部分を確保しながら、その外周部に誘電体膜2を形成した圧電振動子の製造方法の流れを示したものである。
【0022】
一方、他の製造方法の実施例を図4に示すもので、(1)薄板状の圧電板上にマスク4を配置する工程と、(2)該マスク4の上からスパッタリング法で誘電体膜2を形成する工程とにより圧電素板1上に図1に示すような圧電素板1の中心部を振動部として圧電振動子の板厚の薄い部分を確保しながら、その外周部に誘電体膜2を形成した圧電振動子の製造方法の流れを示したものである。
【0023】
ところで、図3と図4に示す圧電振動子の製造フローに用いる、誘電体膜2を形成すめために使用するマスク4の形状を図5に示す。図5(a)に斜視図で示すのは図3の製造方法に用いるマスク4を描画したもので、図5(b)に斜視図で示すのは図4の製造方法に用いるマスク4を描画したものである。また、図5(c)は誘電体膜2を形成した状態を示す圧電素板1の様子を示した斜視図である。図5(c)では片面にのみ誘電体膜2を形成した状態を示しているが、同様のマスクを圧電素板1の両面に配置すれば、圧電素板1の裏面にも誘電体膜2を形成することもできる。
【0024】
図5(a)では、図4の製造方法に記載するように、薄板状の圧電板上の主面の略半分に相当する面積を被う形状を持ったマスク4である。略半分の面積の中心部部分が振動部に合致し、略半分の面積を図中で言う右方向と左方向で反転することで、図1に示すような圧電振動子を形成するものである。
【0025】
また、図5(b)は、圧電素板1に誘電体膜2を形成し、圧電素板1と誘電体膜2とで圧電素子を構成するために用いる誘電体膜2形成用のマスク4であり、部分的な拡大図に示すように、圧電素板1の振動部に合致する部分(T1)を形成するマスク4部分の厚みと、マスク4部分を保持する部分(T2)との厚みが異なることを表現したものである。
【0026】
このように振動部と振動部を保持する部分のマスク4に厚み差を設けることで、圧電素板1に誘電体膜2をスパッタリング法で形成したときのマスク4の保持部分への誘電体膜2を効率的に形成することができる。その理由としては、誘電体の飛散は四方八方から圧電素板に付着することから、圧電素板1の振動部(T1)を形成するマスク4部分の厚みと、マスク4部分を保持する部分(T2)の僅かな厚み差の隙間(G)から誘電体膜2を形成することができるからである。
【0027】
上述のマスク4の隙間(G)の作成については、例えばマスク4をエッチングで製作する場合には、ハーフエッチング処理を施すことで容易に形成でき、マスク4を放電加工で製作する場合には、同様に放電加工処理を施すことで容易に形成できる。実際の隙間(G)の寸法はマスク4の板厚の半分がマスク4の製作時の限界となる。
【0028】
なお、上記の図5(a)、図5(b)に示すマスク構成では、特に図示していないが、従来の圧電振動子の電極を形成するための蒸着工程で用いる、いわゆる蒸着マスクと同様の思想で、圧電素板1を保持する、スペーサ、補助枠などと組み合わせて構成されたものを想定している。
【0029】
以上のように本発明の圧電振動子は、最終的には基本波周波数は100MHz以上であり、従来のエッチング工法により圧電素板1の1部分を削り薄板部分構成する圧電振動子に対し、エッチング工法の特色と圧電素板1が水晶材料であった場合の結晶構造という異方性とエッチング工法による諸問題を解消することができる。なお、本発明には誘電体膜2材料としてSiOあるいはZnOを想定している。
【0030】
また、本実施例では圧電素板1に誘電体膜2を形成することを主題として記述しているが、本発明は薄板圧電素板1を例えば2インチの外形寸法持つ圧電板に複数、同時に誘電体膜2を形成できることは言うまでも無く、誘電体膜2の形成にはスパッタリング法以外の飛散手法を用いても同様の効果を奏する。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製造方法によって、高周波化、小型化に対応できる薄板の圧電振動子を安定して製造できることから、製造歩留まりの改善と品質の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電振動子の概念を説明する斜視図である。
【図2】本発明の振動部を説明する拡大部分断面図である。
【図3】本発明の製造フローを説明する工程図である。
【図4】本発明の他の製造フローを説明する工程図である。
【図5】本発明の誘電体膜を形成するために用いる金属マスクの形状を示した斜視図である。
【符号の説明】
1 圧電素板
2 誘電体膜
3 圧電振動子
4 金属マスク

Claims (4)

  1. 圧電素板に誘電体膜を形成し、該圧電素板と該誘電体膜とで圧電素子を構成する圧電振動子の製造方法において、
    該圧電素板上の金属マスクを介して誘電体膜を形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
  2. 請求項1の記載において、圧電素板上に誘電体膜を形成する工程をスパッタリング法を用いたことを特徴とする圧電素子の製造方法。
  3. 請求項1の記載において、該マスクを該圧電素板の主面の略半分に誘電体膜を形成し、その後該マスクを反転し残る該圧電素板の略半分に誘電体膜を形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
  4. 圧電素板に誘電体膜を形成し、該圧電素板と該誘電体膜とで圧電素子を構成するために用いる誘電体膜形成用の金属マスクにおいて、
    該圧電素板の振動部を形成する該マスク部分の厚みと、該マスク部分を保持する部分との厚みが異なることを特徴とする圧電振動子の製造方法に用いるマスク。
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