JP2004186481A - 情報記録媒体とその製造に使用する電子ビーム露光方法及び電子ビーム露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】設定パターン幅とパターンの端部形状とを補正しながら、基板に高精度のパターン描画を行なう電子ビーム露光装置を提供する。
【解決手段】一定線速度に回転され半径方向に移動する基板13に電子ビームが照射され、フォーマット信号Fbと揺動信号Fdが信号合成器24で合成された合成信号Fcにより、フォーマット信号Fbの論理値“1”の区間で、揺動信号Fdに応じて揺動するブランキング信号Faがブランキング電極9に印加され、揺動信号Fdの揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板13の入射電子ビームの単位面積の照射量が適確に制御された状態で、基板13のレジスト膜にパターンが描画され、ピット長で変化するパターン幅の補正と、パターン端部での幅の狭まりの補正も行なわれ、基板13に対して、高品質のパターンを描画することが可能になる。
【選択図】 図1
【解決手段】一定線速度に回転され半径方向に移動する基板13に電子ビームが照射され、フォーマット信号Fbと揺動信号Fdが信号合成器24で合成された合成信号Fcにより、フォーマット信号Fbの論理値“1”の区間で、揺動信号Fdに応じて揺動するブランキング信号Faがブランキング電極9に印加され、揺動信号Fdの揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板13の入射電子ビームの単位面積の照射量が適確に制御された状態で、基板13のレジスト膜にパターンが描画され、ピット長で変化するパターン幅の補正と、パターン端部での幅の狭まりの補正も行なわれ、基板13に対して、高品質のパターンを描画することが可能になる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクなどの情報記録媒体と、その製造に使用する電子ビーム露光方法及び電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクなどの情報記録媒体の記憶容量の増加に伴って、情報記録媒体に形成される案内溝やピットの微細化が進められ、これらの案内溝やピットは、レーザ光の露光では作成できなくなり、新たな光源として電子ビームを使用する電子ビーム露光装置によって、光ディスクなどの情報記録媒体の製造が行なわれるようになっている。
従来の電子ビーム露光装置は、図11及び図12に示すように、10−5torr以下に真空度が維持された鏡筒1内に、電子銃4、電子銃4から発生する電子ビーム5を収束するコンデンサレンズ6、収束された電子ビームを偏向するブランキング電極9、ブランキング電極9で偏向された電子ビームを通過させ、後段への入射電子ビームのON−OFFを行なう絞り10、絞り10を通過した入射電子ビームを偏向する偏向器11、偏向された入射電子ビームを収束するフォーカスレンズ7、収束光を表面にレジスト膜が被着された基板13のレジスト膜表面の所定位置に焦点を結ばせる対物レンズ8が、電子銃4と基板13間の光軸上に前述の順序で配設されている。
【0003】
一方、フォーマット信号Fbを出力するフォーマッタ21の出力端子が、ブランキングドライバ20に接続され、ブランキングドライバ20から出力されるブランキング信号Faが、ブランキング電極9に入力されるように構成され、フォーマット信号Fb1を出力するウォブルフォーマッタ23の出力端子が、偏向ドライバ22に接続され、偏向ドライバ22から出力されるウォブル信号Fwが、偏向器11に入力されるように構成されている。
そして、基板13は回転ステージ14によって、回転軸を中心に一定線速度となるように回転され、同時に基板13は、直動ステージ15によって、半径方向に一定ピッチで移動されるように構成されている。
【0004】
このような構成の従来の電子ビーム露光装置では、ブランキング電極9に印加されるブランキング信号Faによって、電子ビーム5の絞り10の通過が0N−0FF制御され、図13に示すように、フォーマット信号Fbの論理値“0”に対応して、論理値が“1”となるブランキング信号Faによって、図12に示すように、電子ビーム5が大きく偏向され、電子ビーム5の絞り10の通過が阻止される。
そして、フォーマット信号Fbの論理値の“1”に対応して、論理値が“0”となるブランキング信号Faによって、電子ビーム5が絞り10を通過して、対物レンズ8によって、基板13表面のレジスト膜の表面の所定位置に焦点を結んで照射される。この場合、フォーカスレーザ18の基板13での反射光を、センサ19で受光することにより、基板13の面ぶれが検出されると、フォーカスレンズ7が補正駆動され、入射ビームのフォーカスが制御され、入射ビーム径の変動が防止される。
【0005】
このようにして、従来の電子ビーム露光装置によると、電子ビーム5の連続照射によって、基板13の表面のレジスト膜に螺旋状に案内溝が形成され、電子ビーム5の間欠照射によって、基板13の表面のレジスト膜に螺旋状にピットが形成される。
また、例えば、トラッキングエラーを検出するために、ピットを変位形成する場合には、ウォルブフォーマッタ23からのフォーマット信号Fb1により、偏向ドライバ22から偏向器11に入力されるウォブル信号Fwによって、入射ビームが偏向されピットが変位形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の電子ビーム露光装置では、基板13は一定の線速度となるような回転速度で回転され、所定のビーム量の電子ビームの照射で、パターン形成が行なわれるために、基板13に入射する電子ビームの強度の制御ができないので、パターン幅やパターン深さを変更してパターンを形成することはできない。
この問題を解決するために、下記特許文献1には、円周方向にビームを偏向させ、部分的に線速度を変えることにより、単位面積当たりの電子ビームの照射量を変化させる方法と、電子ビーム径をデフォーカスすることにより変化させて、電子ビームの照射量を変化させる方法とが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−6509号公報
【0008】
しかし、円周方向に電子ビームを偏向させる方法は、電子ビームを基板に連続的に照射するグルーブの露光には使用することはできず、またこの方法では、円周方向に電子ビームを偏向させるので、パターン長の制御が難しい。
また、電子ビーム径をデフォーカスする方法は、安定した径が得られるまでに時間がかかり、例えば、ピット幅の変更に使用しようとしても迅速性の点で適用が困難である。
【0009】
本発明は、前述したような光ディスク原盤の作製の現状に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、パターン幅の設定が簡単に行なわれ、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、基板に対して高精度のパターン描画を行なう電子ビーム露光方法を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、パターン幅の設定が簡単に行なわれ、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、基板に対して高精度のパターンの描画を行なう電子ビーム露光装置を提供することにある。
【0011】
本発明の第3の目的は、パターン幅が簡単に設定され、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、高精度のパターン描画を行い情報記録媒体原盤を製造する情報記録媒体原盤の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第4の目的は、パターン幅が簡単に設定され、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、高精度のパターン描画が行なわれる基板から製造される情報記録媒体原盤に基づき製造される情報記録媒体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより、電子部材の原盤を作製する電子ビーム露光方法であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動ステップと、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御ステップとを有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動ステップで、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御ステップで、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0015】
前記第2の目的を達成するために、請求項2記載の発明は、電子ビームを、基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより、電子部材の原盤を作製する電子ビーム露光装置であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動手段と、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項2記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動手段で、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御手段で、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0017】
前記第2の目的を達成するために、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直に設定された状態で、請求項2記載の発明での作用が実行される。
【0019】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4記載の発明によると、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vに設定された状態で、請求項3記載の発明での作用が実行される。
【0021】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行に設定されるので、請求項2記載の発明での作用に加えて、ブランキング電圧の揺動によるパターン幅の変化やパターン側面の変動がない状態で、電子ビーム量を増加して短時間で、高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0023】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項6記載の発明によると、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍に設定されるので、請求項5記載の発明での作用に加えて、チャンネルビットの整数倍のピットパターンに対して、ブランキング電圧の揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように設定されて、全てのピットパターンで揺動周期との同期が取られ、パターン長さに変動のないさらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0025】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項7記載の発明は、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、前記照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅を補正する第1の振幅補正手段が、請求項2記載の発明にさらに設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項7記載の発明によると、請求項2記載の発明での作用に加えて、 基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、第1の振幅補正手段によって、照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅が補正されるので、一定の電子ビーム量での露光時のパターン長の減少に伴うパターン幅の短縮を補正して、さらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0027】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項8記載の発明は、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、前記照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅を、その他の領域より減少させる第2の振幅補正手段が、請求項2記載の発明にさらに設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項8記載の発明によると、請求項2記載の発明での作用に加えて、第2の振幅補正手段によって、基板への入射電子ビームにより基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅が、その他の領域より減少され、電子ビームの散乱の影響によるパターン端部でのパターン幅の狭まりを補正して、さらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0029】
前記第3の目的を達成するために、請求項9記載の発明は、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤を製造する情報記録媒体原盤の製造方法であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動工程と、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御工程とを有することを特徴とするものである。
【0030】
請求項9記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤が製造されるが、電子ビーム揺動工程で電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御工程で、ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されることにより、表面に高精度のグレーブやピットからなる高品質のパターンが形成された情報記録媒体原盤が製造される。
【0031】
前記第4の目的を達成するために、請求項10記載の発明は、電子ビームが基板に対して相対的に移動された状態で、前記基板方向に照射される前記電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されることにより、前記基板に入射する入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように制御された入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に、グレーブやピットが描画され、現像処理が施されることにより表面にグレーブやピットが形成されて製造される情報記録媒体原盤に対して、表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行い前記情報記録媒体原盤から剥離してスタンパが製造され、該スタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて製造されることを特徴とするものである。
【0032】
請求項10記載の発明によると、電子ビームが基板に対して相対的に移動され、基板方向に照射される電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板への入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板にはパターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されて、表面にグレーブやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体原盤が製造され、この情報記録媒体原盤の表面に導電膜を被着し、電気鋳造を行なうことにより、情報記録媒体原盤から剥離されてスタンパが製造され、得られるスタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて、表面に高精度のグレープやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体が提供される。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を、電子ビーム露光装置に係る実施の形態に基づいて説明する。[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態の要部の構成を示す説明図である。
【0034】
本実施の形態では、図1に示すように、すでに図12を参照して説明した従来の電子ビーム露光装置に対して、フォマット信号Fbを出力するフォーマッタ21の出力端子が、信号合成器24の第1の入力端子に接続され、揺動電圧Feが入力され、揺動信号Fdを出力するRF発信器25の出力端子が、信号合成器24の第2の入力端子に接続され、信号合成器24の出力端子が、ブランキングドライバ20の入力端子に接続され、ブランキングドライバ20の出力端子が、ブランキング電極9に接続されている。
本実施の形態のその他の部分の構成は、すでに、図11及び図12を参照して説明した従来の電子ビーム露光装置と同一なので重複する説明は行なわない。
【0035】
以上のような構成の本実施の形態の動作を、図2ないし図8を参照して説明する。
図2は本実施の形態の各部の信号の信号波形と、ブランキング信号と電子ビーム量との関係を示す特性図、図3は本実施の形態のブランキング信号の周波数と現像後の基板に形成される溝形状との関係を示す特性図、図4は本実施の形態のブランキング信号の振幅と電子ビーム量及び現像後に基板に形成される溝幅との関係を示す特性図で、図5は本実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン形状との関係を示す特性図、図6は本実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン長さとの関係を示す特性図、図7は本実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン幅の半径方向での変動の補正動作を示す特性図、図8は本実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン痰部の狭まりの補正動作を示す特性図である。
【0036】
本実施の形態では、図1において、ブランキング電極9に印加されるブランキング信号Faの電圧レベルは、電子ビーム5が絞り10を通過できる程度の正弦波の電圧レベルに設定される。このような電圧レベルのブランキング信号Faを、基板13の表面のレジスト膜に照射すると、ブランキング信号Faの周波数が所定値以下であると、現像後の基板13には、図3(b)の領域1に示すように、ブランキング信号Faに対応した蛇行溝が形成される。ここで、ブランキング信号Faの周波数を高めて行くと、同図(a)、(b)に示すように、溝側面の蛇行変動が消えて、現像後の基板13には、領域2に示すように一定幅の溝が形成される。
この場合、電子ビームの線速度をV(m/s)、電子ビーム径をa(m)とすると、ブランキング信号Faの周期TがT≦a/Vであると、周期Tはビーム径相当となり、現像後の基板13には、電子散乱により電子ビーム径のほぼ2倍の幅の溝が形成されるので、本実施の形態ではこの条件下で、ブランキング信号Faの周波数が設定される。
【0037】
一方、ブランキング信号Faの振幅が小さい間は、電子ビーム5の大半が絞り10を通過するが、図4(a)に示すように振幅を増加させて行くと、振幅の極大値と極小値の近傍の電子ビーム5が絞り10を通過しなくなり、同図(b)に示すように電子ビーム量Mebは減少し、現像後の基板13に形成される溝幅Wgは、同図(c)の領域2に示すように狭くなって行く。
この領域2では、溝幅Wgが電子ビーム量Mebを介して、ブランキング信号Faの揺動振幅の変動に対応付けられるので、本実施の形態では、領域2において、ブランキング信号Faの揺動振幅を制御して、現像後の基板13形成される溝幅が設定される。
【0038】
本実施の形態では、揺動電圧Feの印加により、RF発信器25から出力される揺動信号Fdが、信号合成器24において、フォーマッタ21から出力されるフォーマット信号Fbと合成され、ブランキングドライバ20からは、図2(d)に示すように、フォーマット信号Fbの論理値“1”に対応して、前述したように所定振幅レベル以下に設定された揺動信号Fdが出力され、ブランキング電極9を介して、電子ビーム5に対して基板13の半径方向に印加される。
このようにして、軸芯を中心に一定線速度となるように回転され、一定速度で半径方向に移動する基板13に対して、基板13の半径方向に印加される揺動信号Fdによって、現像後の基板13には、揺動信号Fdの振幅に対応して幅が設定され、フォーマット信号Fbの論理値“1”の期間に対応して長さが設定されるピットやグルーブが形成される。
【0039】
以下に具体的な実施例を示して説明する。
(実施例1)
揺動時の電子ビーム電流を30nA、加速電圧を50kV、電子ビーム径を50nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを表面に被着塗布した基板13を、ピッチ0.35μm、線速度1m/s、揺動周波数20MHz(周期50nsecで電子ビーム径に相当)に選択し、揺動振幅を、入射電流遮断時の60%に設定して、基板13に対して、入射電子ビームでのグルーブ露光を行い、露光後にベークと現像処理を施して、表面にグルーブが形成された光ディスク原盤を製造した。
このようにして光ディスク原盤の表面に形成されたグルーブパターンは、電子ビームに対して揺動を行なわない場合よりも、30%ほど幅が広くなったが、グルーブ側面の変動は見られなかった。
しかし、揺動周波数を10MHz(周期100nsec)に低下させると、ベークと現像処理を施して得られる光ディスク原盤表面のグレーブ幅には変動が見られた。
【0040】
実施例1では、揺動周波数20MHzで基板13の全面にグルーブ露光を行なった所、露光時間にほぼ7時間を要し、グルーブ露光された基板13にベーク処理と現像処理を施した結果は、図7(b)の補正前のようになり、基板13の半径方向の距離が大きな領域でグルーブ幅が狭まる傾向にあった。
この問題を解決するために、電子ビーム量を半径の大きな領域で、同図(a)に示すように増加させる制御を行なった所、グルーブ幅の変動を、同図(b)の補正後に示すように抑えることができた。
【0041】
このようにしてグレーブが形成された基板13に、ベーク処理と現像処理を施すことにより、表面にグレーブやピットが精度よく形成された光ディスク原盤が製造され、この光ディスク原盤の表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行なって光ディスク原盤から剥離することにより、表面に高精度のグレーブやピットが形成されたスタンパが製造される。
このスタンパに径加工や研磨などの後処理が施され、さらに成形処理とAg−In−Sb−Te記録層、Ag反射層形成などの成膜処理とが施され、最後に特性検査が施されて情報記録媒体としての光ディスクが製造される。
そして、得られた光ディスクに情報を記録し、再生を行なった所、内周外周ともに良好な再生信号が得られた。
【0042】
(実施例2)
図2(a)に示すフォーマット信号Fbの論理値“1”の期間において、揺動信号Fdの振幅を変化させると、同図(b)に示す揺動電圧Feの振幅に対応して、同図(e)に示すように、電子ビーム量Mebが変化するが、この場合、電子ビーム強度Pbの補正制御をしないで露光を行い、ベーク処理と現像処理を行なった基板13には、図5(a)、(b)及び図6に示すように、ピット長が短い場合には十分なピット幅が得られない。
そこで、本実施の形態では、図5(c)に示すように、ピット長に応じてビーム強度Pbの補正が行なわれ、ピット長が変化しても均一な幅のピットが基板13に形成され、この基板13から実施例1で述べた工程を経て製造される光ディスクに対して情報の記録を行い再生を行なった所、最小ピットの変調度が向上し、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0043】
(実施例3)
一般に、電子ビーム露光では、レジスト内に照射される電子の散乱が広い範囲で発生するが、揺動振幅をパターン内で一定にすると、パターンの端部では中心部に比して電子の散乱の影響が少なくなり、図8(a)に示すブランキング信号Faに対応して、フォーマット信号Fbの論理値“1”の領域に発生する揺動信号Fdに対応して、同図(b)に示すように、パターン端部の幅が狭くなる傾向がある。
本実施の形態では、同図(c)に示すように、揺動信号Fdの振幅をパターン端部で小さくなるように補正制御することにより、同図(d)に示すように、全域にわたって均一幅のパターンが基板13に露光形成され、この基板13から、すでに実施例1で説明した工程を経て情報の高品質の記録・再生が可能な光ディスクが製造される。
【0044】
本実施の形態のその他の動作は、すでに説明した従来の電子ビーム露光装置の動作と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0045】
このように本実施の形態によると、軸芯を中心に一定線速度となるように回転され、所定速度で半径方向に移動する基板13に対して、電子ビームが照射され、フォーマット信号Fbと揺動信号Fdとが信号合成器24で合成され、得られる合成信号Fcにより駆動されるブランキングドライバ20からブランキング信号Faが出力され、フォーマット信号Fbの論理値が“1”の区間で、揺動信号Fdに対応して、揺動するブランキング信号Faがブランキング電極9に印加される。
そして、揺動信号Fdの揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板13に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、さらに、ピット長で変化するパターン幅の補正、パターン端部でのパターン幅の狭まりなども補正された状態で、基板13のレジスト膜にパターンの描画が行なわれるので、基板13に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
さらに、得られる基板にベーク処理と現像処理を施すことにより、表面にグレーブやピットが精度よく形成された光ディスク原盤が製造され、この光ディスク原盤の表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行なって光ディスク原盤から剥離することにより、表面に高精度のグレーブやピットが形成されたスタンパが製造され、得られるスタンパに径加工や研磨などの後処理が施され、さらに成形処理とAg−In−Sb−Te記録層、Ag反射層形成などの成膜処理とが施され、最後に特性検査が施されることにより、表面にピットやグレーブからなる高精度のパターンが形成された高品質の光ディスクを製造することが可能になる。
【0046】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態を、図9及び図10を参照して説明する。
図9は本実施の形態の要部の構成を示す説明図、図10は本実施の形態における現像後の原盤に形成されるパターン長さの補正動作の説明図である。
【0047】
本実施の形態では、ブランキング電極9が、電子ビーム5の移動方向に平行に配設され、フォーマット信号Fbによる電子ビーム5の絞り10の通過・遮断制御と、揺動信号Fdによる電子ビーム5の揺動制御とは、電子ビーム5の移動方向に行なわれるように構成されている。
本実施の形態のその他の部分の構成は、すでに説明した第1の実施の形態と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0048】
本実施の形態におけるフォーマット信号Fbによる電子ビーム5の絞り10の通過・遮断制御の動作と、揺動信号Fdによる電子ビーム5の揺動動作以外の動作は、すでに説明した第1の実施の形態の動作と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0049】
本実施の形態では、揺動信号Fdによりグレーブ幅が変動することがないので、パターン側面が変動することはなく、同一グレーブ幅のパターンを形成する場合に、第1の実施の形態の場合よりも、電子ビーム量を増加させて、露光時間を大幅に短縮することが可能になる。
本実施の形態のその他の効果は、すでに説明した第1の形態の形態で得られる効果と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0050】
以下に具体的な実施例を示して説明する。
(実施例4)
揺動時の電子ビームの電流値を50nA、加速電圧を50kV、電子ビーム径を100nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを被着塗布した基板13に対して、ピッチ0.35μm、線速度3m/s、揺動周波数30MHz(周期33nsec)に選択してグルーブ露光を行い、ベーク処理と現像処理を施して光ディスク原盤を作製した。この場合、揺動振幅は電子ビーム遮断時の振幅の60%に設定した。
このようにして作製した光ディスク原盤のグルーブパターンには側面の変動は認められらなかった。
この場合も、すでに説明した実施例1と同様に、半径ごとに揺動振幅を変更することにより溝幅の補正が行なわれ、得られた光ディスク原盤から、すでに実施例1に説明した工程を経て製造した光ディスクに情報の記録を行い再生を行なった所、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0051】
(実施例5)
本実施の形態でも、揺動信号Fdの周波数とフォーマット信号Fbとの同期を取ることにより、ピットのように断続するパターンの露光が行なわれるが、同期が取れていないと、ピットの書き始めでは、電子ビームが移動方向と逆方向に揺動すると、電子ビームが移動方向とは逆方向に移動することになって、パターン長が長くなり、ピットの書き終わりで、電子ビームがビームの移動方向に揺動すると、電子ビームが移動方向に移動することになって、同様にパターン長が長くなる。
光ディスクのような情報記録媒体の場合には、ピットパターンは、最小単位のチャネルビットの整数倍になっているので、図10に示すように、揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように制御すると、全てのピットパターンの揺動周期との同期を取ることができる。
【0052】
この実施例でも、実施例2、3と同様に、図5に示すように、パターン長に応じて揺動振幅を制御し、図10に示すように、パターン端部で揺動振幅を小さくすることにより、ピツトやグリーブ幅が均一な光ディスク原盤が作製が可能である。
【0053】
揺動時の電子ビームの電流値を50nm、加速電圧を50kV、電子ビーム径を100nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを被着塗布した基板13をに対して、ピッチ0.35μm、線速度3m/s、揺動周波数50MHz(1チャネルビット20nsec)に選択してグルーブ露光を行い、ベーク処理と現像処理を施して光ディスク原盤を作製し、得られた光ディスク原盤から、すでに実施例1で説明した工程を経て製造された光ディスクに情報の記録を行い、再生を行なった所、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0054】
なお、各実施の形態では、電子ビーム露光装置が、回転ステージと直線移動ステージを備え、基板にグレーブやピットを螺旋軌跡に沿って形成する場合を説明したが、本発明は、前述した各実施の形態に限定されるものではなく、X−Yステージを備え、電子ビームの偏向器をX軸方向とY軸方向にそれぞれ具備し、基板に対して電子ビームの照射と遮断を繰り返し、遮断時に次の照射位置への偏向を行なって、基板に所定の二次元画像を描画し、例えば半導体用のマスク部材の製造を行なう構成にすることも可能である。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載の電子ビームの露光方法に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動ステップで、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御ステップで、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0056】
請求項2記載の電子ビームの露光装置に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動手段で、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御手段で、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0057】
請求項3記載の発明によると、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直に設定された状態で、請求項2記載の発明で得られる効果を実現することが可能になる。
【0058】
請求項4記載の発明によると、請求項3記載の発明において、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vに設定されることにより、請求項3記載の発明で得られる効果を実現することが可能になる。
【0059】
請求項5記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行に設定されるので、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、ブランキング電圧の揺動によるパターン幅の変化やパターン側面の変動がなく、電子ビーム量を増加して短時間で、高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0060】
請求項6記載の発明によると、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍に設定されるので、請求項5記載の発明で得られる効果に加えて、チャンネルビットの整数倍のピットパターンに対して、ブランキング電圧の揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように設定され、全てのピットパターンで揺動周期との同期が取られ、パターン長さに変動のない、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0061】
請求項7記載の発明によると、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、第1の振幅補正手段によって、照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅が補正されるので、一定の電子ビーム量での露光時のパターン長の減少に伴うパターン幅の短縮を補正して、基板に対して、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0062】
請求項8記載の発明によると、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、第2の振幅補正手段によって、基板への入射電子ビームにより基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅が、その他の領域より減少され、電子ビームの散乱の影響によるパターン端部でのパターン幅の狭まりを補正して、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0063】
請求項9記載の情報記録媒体原盤に製造方法に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤が製造されるが、電子ビーム揺動工程で電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御工程で、ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されることにより、表面に高精度のグレーブやピットからなる高品質のパターンが形成された情報記録媒体原盤を製造することが可能になる。
【0064】
請求項10記載の情報記録媒体に係る発明によると、電子ビームが基板に対して相対的に移動され、基板方向に照射される電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板への入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板にはパターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されて、表面にグレーブやピットからなるパターンが高精度に形成された情報記録媒体原盤が製造され、この情報記録媒体原盤の表面に導電膜を被着し、電気鋳造を行なうことにより、情報記録媒体原盤から剥離されてスタンパが製造され、得られるスタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて、表面に高精度のグレープやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の要部の構成を示す説明図である。
【図2】同実施の形態の各部の信号の信号波形と、ブランキング信号と電子ビーム量との関係を示す特性図である。
【図3】同実施の形態のブランキング信号の周波数と現像後の基板に形成される溝形状との関係を示す特性図である。
【図4】同実施の形態のブランキング信号の振幅と電子ビーム量及び現像後に基板に形成される溝幅との関係を示す特性図である。
【図5】同実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン形状との関係を示す特性図である。
【図6】同実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン長さとの関係を示す特性図である。
【図7】同実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン幅の半径方向での変動の補正動作を示す特性図である。
【図8】同実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン端部の狭まりの補正動作を示す特性図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の要部構成を示す説明図である。
【図10】同実施の形態における現像後の原盤に形成されるパターン長さの補正動作の説明図である。
【図11】従来の電子ビーム露光装置の全体構成を示す説明図である。
【図12】図11の要部の構成を示す説明図である。
【図13】従来の電子ビーム露光装置の各部の信号波形図である。
【符号の説明】
9 ブランキング電極
11 偏向器
13 基板
20 ブランキングドライバ
21 フォーマッタ
22 偏向ドライバ
23 ウォブルフォーマッタ
24 信号合成器
25 RF発信器
Fa ブランキング信号
Fb フォーマット信号
Fc 合成信号
Fd 揺動信号
Fe 揺動電圧
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクなどの情報記録媒体と、その製造に使用する電子ビーム露光方法及び電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクなどの情報記録媒体の記憶容量の増加に伴って、情報記録媒体に形成される案内溝やピットの微細化が進められ、これらの案内溝やピットは、レーザ光の露光では作成できなくなり、新たな光源として電子ビームを使用する電子ビーム露光装置によって、光ディスクなどの情報記録媒体の製造が行なわれるようになっている。
従来の電子ビーム露光装置は、図11及び図12に示すように、10−5torr以下に真空度が維持された鏡筒1内に、電子銃4、電子銃4から発生する電子ビーム5を収束するコンデンサレンズ6、収束された電子ビームを偏向するブランキング電極9、ブランキング電極9で偏向された電子ビームを通過させ、後段への入射電子ビームのON−OFFを行なう絞り10、絞り10を通過した入射電子ビームを偏向する偏向器11、偏向された入射電子ビームを収束するフォーカスレンズ7、収束光を表面にレジスト膜が被着された基板13のレジスト膜表面の所定位置に焦点を結ばせる対物レンズ8が、電子銃4と基板13間の光軸上に前述の順序で配設されている。
【0003】
一方、フォーマット信号Fbを出力するフォーマッタ21の出力端子が、ブランキングドライバ20に接続され、ブランキングドライバ20から出力されるブランキング信号Faが、ブランキング電極9に入力されるように構成され、フォーマット信号Fb1を出力するウォブルフォーマッタ23の出力端子が、偏向ドライバ22に接続され、偏向ドライバ22から出力されるウォブル信号Fwが、偏向器11に入力されるように構成されている。
そして、基板13は回転ステージ14によって、回転軸を中心に一定線速度となるように回転され、同時に基板13は、直動ステージ15によって、半径方向に一定ピッチで移動されるように構成されている。
【0004】
このような構成の従来の電子ビーム露光装置では、ブランキング電極9に印加されるブランキング信号Faによって、電子ビーム5の絞り10の通過が0N−0FF制御され、図13に示すように、フォーマット信号Fbの論理値“0”に対応して、論理値が“1”となるブランキング信号Faによって、図12に示すように、電子ビーム5が大きく偏向され、電子ビーム5の絞り10の通過が阻止される。
そして、フォーマット信号Fbの論理値の“1”に対応して、論理値が“0”となるブランキング信号Faによって、電子ビーム5が絞り10を通過して、対物レンズ8によって、基板13表面のレジスト膜の表面の所定位置に焦点を結んで照射される。この場合、フォーカスレーザ18の基板13での反射光を、センサ19で受光することにより、基板13の面ぶれが検出されると、フォーカスレンズ7が補正駆動され、入射ビームのフォーカスが制御され、入射ビーム径の変動が防止される。
【0005】
このようにして、従来の電子ビーム露光装置によると、電子ビーム5の連続照射によって、基板13の表面のレジスト膜に螺旋状に案内溝が形成され、電子ビーム5の間欠照射によって、基板13の表面のレジスト膜に螺旋状にピットが形成される。
また、例えば、トラッキングエラーを検出するために、ピットを変位形成する場合には、ウォルブフォーマッタ23からのフォーマット信号Fb1により、偏向ドライバ22から偏向器11に入力されるウォブル信号Fwによって、入射ビームが偏向されピットが変位形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の電子ビーム露光装置では、基板13は一定の線速度となるような回転速度で回転され、所定のビーム量の電子ビームの照射で、パターン形成が行なわれるために、基板13に入射する電子ビームの強度の制御ができないので、パターン幅やパターン深さを変更してパターンを形成することはできない。
この問題を解決するために、下記特許文献1には、円周方向にビームを偏向させ、部分的に線速度を変えることにより、単位面積当たりの電子ビームの照射量を変化させる方法と、電子ビーム径をデフォーカスすることにより変化させて、電子ビームの照射量を変化させる方法とが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−6509号公報
【0008】
しかし、円周方向に電子ビームを偏向させる方法は、電子ビームを基板に連続的に照射するグルーブの露光には使用することはできず、またこの方法では、円周方向に電子ビームを偏向させるので、パターン長の制御が難しい。
また、電子ビーム径をデフォーカスする方法は、安定した径が得られるまでに時間がかかり、例えば、ピット幅の変更に使用しようとしても迅速性の点で適用が困難である。
【0009】
本発明は、前述したような光ディスク原盤の作製の現状に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、パターン幅の設定が簡単に行なわれ、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、基板に対して高精度のパターン描画を行なう電子ビーム露光方法を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、パターン幅の設定が簡単に行なわれ、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、基板に対して高精度のパターンの描画を行なう電子ビーム露光装置を提供することにある。
【0011】
本発明の第3の目的は、パターン幅が簡単に設定され、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、高精度のパターン描画を行い情報記録媒体原盤を製造する情報記録媒体原盤の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第4の目的は、パターン幅が簡単に設定され、設定されるパターン幅と端部形状を補正して、高精度のパターン描画が行なわれる基板から製造される情報記録媒体原盤に基づき製造される情報記録媒体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより、電子部材の原盤を作製する電子ビーム露光方法であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動ステップと、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御ステップとを有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動ステップで、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御ステップで、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0015】
前記第2の目的を達成するために、請求項2記載の発明は、電子ビームを、基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより、電子部材の原盤を作製する電子ビーム露光装置であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動手段と、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項2記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動手段で、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御手段で、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0017】
前記第2の目的を達成するために、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直に設定された状態で、請求項2記載の発明での作用が実行される。
【0019】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4記載の発明によると、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vに設定された状態で、請求項3記載の発明での作用が実行される。
【0021】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行に設定されるので、請求項2記載の発明での作用に加えて、ブランキング電圧の揺動によるパターン幅の変化やパターン側面の変動がない状態で、電子ビーム量を増加して短時間で、高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0023】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項6記載の発明によると、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍に設定されるので、請求項5記載の発明での作用に加えて、チャンネルビットの整数倍のピットパターンに対して、ブランキング電圧の揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように設定されて、全てのピットパターンで揺動周期との同期が取られ、パターン長さに変動のないさらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0025】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項7記載の発明は、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、前記照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅を補正する第1の振幅補正手段が、請求項2記載の発明にさらに設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項7記載の発明によると、請求項2記載の発明での作用に加えて、 基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、第1の振幅補正手段によって、照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅が補正されるので、一定の電子ビーム量での露光時のパターン長の減少に伴うパターン幅の短縮を補正して、さらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0027】
同様に前記第2の目的を達成するために、請求項8記載の発明は、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、前記照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅を、その他の領域より減少させる第2の振幅補正手段が、請求項2記載の発明にさらに設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項8記載の発明によると、請求項2記載の発明での作用に加えて、第2の振幅補正手段によって、基板への入射電子ビームにより基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅が、その他の領域より減少され、電子ビームの散乱の影響によるパターン端部でのパターン幅の狭まりを補正して、さらに高品質のパターンの描画が行なわれる。
【0029】
前記第3の目的を達成するために、請求項9記載の発明は、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤を製造する情報記録媒体原盤の製造方法であり、前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動工程と、前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御工程とを有することを特徴とするものである。
【0030】
請求項9記載の発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤が製造されるが、電子ビーム揺動工程で電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御工程で、ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されることにより、表面に高精度のグレーブやピットからなる高品質のパターンが形成された情報記録媒体原盤が製造される。
【0031】
前記第4の目的を達成するために、請求項10記載の発明は、電子ビームが基板に対して相対的に移動された状態で、前記基板方向に照射される前記電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されることにより、前記基板に入射する入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように制御された入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に、グレーブやピットが描画され、現像処理が施されることにより表面にグレーブやピットが形成されて製造される情報記録媒体原盤に対して、表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行い前記情報記録媒体原盤から剥離してスタンパが製造され、該スタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて製造されることを特徴とするものである。
【0032】
請求項10記載の発明によると、電子ビームが基板に対して相対的に移動され、基板方向に照射される電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板への入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板にはパターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されて、表面にグレーブやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体原盤が製造され、この情報記録媒体原盤の表面に導電膜を被着し、電気鋳造を行なうことにより、情報記録媒体原盤から剥離されてスタンパが製造され、得られるスタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて、表面に高精度のグレープやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体が提供される。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を、電子ビーム露光装置に係る実施の形態に基づいて説明する。[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態の要部の構成を示す説明図である。
【0034】
本実施の形態では、図1に示すように、すでに図12を参照して説明した従来の電子ビーム露光装置に対して、フォマット信号Fbを出力するフォーマッタ21の出力端子が、信号合成器24の第1の入力端子に接続され、揺動電圧Feが入力され、揺動信号Fdを出力するRF発信器25の出力端子が、信号合成器24の第2の入力端子に接続され、信号合成器24の出力端子が、ブランキングドライバ20の入力端子に接続され、ブランキングドライバ20の出力端子が、ブランキング電極9に接続されている。
本実施の形態のその他の部分の構成は、すでに、図11及び図12を参照して説明した従来の電子ビーム露光装置と同一なので重複する説明は行なわない。
【0035】
以上のような構成の本実施の形態の動作を、図2ないし図8を参照して説明する。
図2は本実施の形態の各部の信号の信号波形と、ブランキング信号と電子ビーム量との関係を示す特性図、図3は本実施の形態のブランキング信号の周波数と現像後の基板に形成される溝形状との関係を示す特性図、図4は本実施の形態のブランキング信号の振幅と電子ビーム量及び現像後に基板に形成される溝幅との関係を示す特性図で、図5は本実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン形状との関係を示す特性図、図6は本実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン長さとの関係を示す特性図、図7は本実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン幅の半径方向での変動の補正動作を示す特性図、図8は本実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン痰部の狭まりの補正動作を示す特性図である。
【0036】
本実施の形態では、図1において、ブランキング電極9に印加されるブランキング信号Faの電圧レベルは、電子ビーム5が絞り10を通過できる程度の正弦波の電圧レベルに設定される。このような電圧レベルのブランキング信号Faを、基板13の表面のレジスト膜に照射すると、ブランキング信号Faの周波数が所定値以下であると、現像後の基板13には、図3(b)の領域1に示すように、ブランキング信号Faに対応した蛇行溝が形成される。ここで、ブランキング信号Faの周波数を高めて行くと、同図(a)、(b)に示すように、溝側面の蛇行変動が消えて、現像後の基板13には、領域2に示すように一定幅の溝が形成される。
この場合、電子ビームの線速度をV(m/s)、電子ビーム径をa(m)とすると、ブランキング信号Faの周期TがT≦a/Vであると、周期Tはビーム径相当となり、現像後の基板13には、電子散乱により電子ビーム径のほぼ2倍の幅の溝が形成されるので、本実施の形態ではこの条件下で、ブランキング信号Faの周波数が設定される。
【0037】
一方、ブランキング信号Faの振幅が小さい間は、電子ビーム5の大半が絞り10を通過するが、図4(a)に示すように振幅を増加させて行くと、振幅の極大値と極小値の近傍の電子ビーム5が絞り10を通過しなくなり、同図(b)に示すように電子ビーム量Mebは減少し、現像後の基板13に形成される溝幅Wgは、同図(c)の領域2に示すように狭くなって行く。
この領域2では、溝幅Wgが電子ビーム量Mebを介して、ブランキング信号Faの揺動振幅の変動に対応付けられるので、本実施の形態では、領域2において、ブランキング信号Faの揺動振幅を制御して、現像後の基板13形成される溝幅が設定される。
【0038】
本実施の形態では、揺動電圧Feの印加により、RF発信器25から出力される揺動信号Fdが、信号合成器24において、フォーマッタ21から出力されるフォーマット信号Fbと合成され、ブランキングドライバ20からは、図2(d)に示すように、フォーマット信号Fbの論理値“1”に対応して、前述したように所定振幅レベル以下に設定された揺動信号Fdが出力され、ブランキング電極9を介して、電子ビーム5に対して基板13の半径方向に印加される。
このようにして、軸芯を中心に一定線速度となるように回転され、一定速度で半径方向に移動する基板13に対して、基板13の半径方向に印加される揺動信号Fdによって、現像後の基板13には、揺動信号Fdの振幅に対応して幅が設定され、フォーマット信号Fbの論理値“1”の期間に対応して長さが設定されるピットやグルーブが形成される。
【0039】
以下に具体的な実施例を示して説明する。
(実施例1)
揺動時の電子ビーム電流を30nA、加速電圧を50kV、電子ビーム径を50nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを表面に被着塗布した基板13を、ピッチ0.35μm、線速度1m/s、揺動周波数20MHz(周期50nsecで電子ビーム径に相当)に選択し、揺動振幅を、入射電流遮断時の60%に設定して、基板13に対して、入射電子ビームでのグルーブ露光を行い、露光後にベークと現像処理を施して、表面にグルーブが形成された光ディスク原盤を製造した。
このようにして光ディスク原盤の表面に形成されたグルーブパターンは、電子ビームに対して揺動を行なわない場合よりも、30%ほど幅が広くなったが、グルーブ側面の変動は見られなかった。
しかし、揺動周波数を10MHz(周期100nsec)に低下させると、ベークと現像処理を施して得られる光ディスク原盤表面のグレーブ幅には変動が見られた。
【0040】
実施例1では、揺動周波数20MHzで基板13の全面にグルーブ露光を行なった所、露光時間にほぼ7時間を要し、グルーブ露光された基板13にベーク処理と現像処理を施した結果は、図7(b)の補正前のようになり、基板13の半径方向の距離が大きな領域でグルーブ幅が狭まる傾向にあった。
この問題を解決するために、電子ビーム量を半径の大きな領域で、同図(a)に示すように増加させる制御を行なった所、グルーブ幅の変動を、同図(b)の補正後に示すように抑えることができた。
【0041】
このようにしてグレーブが形成された基板13に、ベーク処理と現像処理を施すことにより、表面にグレーブやピットが精度よく形成された光ディスク原盤が製造され、この光ディスク原盤の表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行なって光ディスク原盤から剥離することにより、表面に高精度のグレーブやピットが形成されたスタンパが製造される。
このスタンパに径加工や研磨などの後処理が施され、さらに成形処理とAg−In−Sb−Te記録層、Ag反射層形成などの成膜処理とが施され、最後に特性検査が施されて情報記録媒体としての光ディスクが製造される。
そして、得られた光ディスクに情報を記録し、再生を行なった所、内周外周ともに良好な再生信号が得られた。
【0042】
(実施例2)
図2(a)に示すフォーマット信号Fbの論理値“1”の期間において、揺動信号Fdの振幅を変化させると、同図(b)に示す揺動電圧Feの振幅に対応して、同図(e)に示すように、電子ビーム量Mebが変化するが、この場合、電子ビーム強度Pbの補正制御をしないで露光を行い、ベーク処理と現像処理を行なった基板13には、図5(a)、(b)及び図6に示すように、ピット長が短い場合には十分なピット幅が得られない。
そこで、本実施の形態では、図5(c)に示すように、ピット長に応じてビーム強度Pbの補正が行なわれ、ピット長が変化しても均一な幅のピットが基板13に形成され、この基板13から実施例1で述べた工程を経て製造される光ディスクに対して情報の記録を行い再生を行なった所、最小ピットの変調度が向上し、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0043】
(実施例3)
一般に、電子ビーム露光では、レジスト内に照射される電子の散乱が広い範囲で発生するが、揺動振幅をパターン内で一定にすると、パターンの端部では中心部に比して電子の散乱の影響が少なくなり、図8(a)に示すブランキング信号Faに対応して、フォーマット信号Fbの論理値“1”の領域に発生する揺動信号Fdに対応して、同図(b)に示すように、パターン端部の幅が狭くなる傾向がある。
本実施の形態では、同図(c)に示すように、揺動信号Fdの振幅をパターン端部で小さくなるように補正制御することにより、同図(d)に示すように、全域にわたって均一幅のパターンが基板13に露光形成され、この基板13から、すでに実施例1で説明した工程を経て情報の高品質の記録・再生が可能な光ディスクが製造される。
【0044】
本実施の形態のその他の動作は、すでに説明した従来の電子ビーム露光装置の動作と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0045】
このように本実施の形態によると、軸芯を中心に一定線速度となるように回転され、所定速度で半径方向に移動する基板13に対して、電子ビームが照射され、フォーマット信号Fbと揺動信号Fdとが信号合成器24で合成され、得られる合成信号Fcにより駆動されるブランキングドライバ20からブランキング信号Faが出力され、フォーマット信号Fbの論理値が“1”の区間で、揺動信号Fdに対応して、揺動するブランキング信号Faがブランキング電極9に印加される。
そして、揺動信号Fdの揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板13に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、さらに、ピット長で変化するパターン幅の補正、パターン端部でのパターン幅の狭まりなども補正された状態で、基板13のレジスト膜にパターンの描画が行なわれるので、基板13に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれる。
さらに、得られる基板にベーク処理と現像処理を施すことにより、表面にグレーブやピットが精度よく形成された光ディスク原盤が製造され、この光ディスク原盤の表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行なって光ディスク原盤から剥離することにより、表面に高精度のグレーブやピットが形成されたスタンパが製造され、得られるスタンパに径加工や研磨などの後処理が施され、さらに成形処理とAg−In−Sb−Te記録層、Ag反射層形成などの成膜処理とが施され、最後に特性検査が施されることにより、表面にピットやグレーブからなる高精度のパターンが形成された高品質の光ディスクを製造することが可能になる。
【0046】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態を、図9及び図10を参照して説明する。
図9は本実施の形態の要部の構成を示す説明図、図10は本実施の形態における現像後の原盤に形成されるパターン長さの補正動作の説明図である。
【0047】
本実施の形態では、ブランキング電極9が、電子ビーム5の移動方向に平行に配設され、フォーマット信号Fbによる電子ビーム5の絞り10の通過・遮断制御と、揺動信号Fdによる電子ビーム5の揺動制御とは、電子ビーム5の移動方向に行なわれるように構成されている。
本実施の形態のその他の部分の構成は、すでに説明した第1の実施の形態と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0048】
本実施の形態におけるフォーマット信号Fbによる電子ビーム5の絞り10の通過・遮断制御の動作と、揺動信号Fdによる電子ビーム5の揺動動作以外の動作は、すでに説明した第1の実施の形態の動作と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0049】
本実施の形態では、揺動信号Fdによりグレーブ幅が変動することがないので、パターン側面が変動することはなく、同一グレーブ幅のパターンを形成する場合に、第1の実施の形態の場合よりも、電子ビーム量を増加させて、露光時間を大幅に短縮することが可能になる。
本実施の形態のその他の効果は、すでに説明した第1の形態の形態で得られる効果と同一なので、重複する説明は行なわない。
【0050】
以下に具体的な実施例を示して説明する。
(実施例4)
揺動時の電子ビームの電流値を50nA、加速電圧を50kV、電子ビーム径を100nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを被着塗布した基板13に対して、ピッチ0.35μm、線速度3m/s、揺動周波数30MHz(周期33nsec)に選択してグルーブ露光を行い、ベーク処理と現像処理を施して光ディスク原盤を作製した。この場合、揺動振幅は電子ビーム遮断時の振幅の60%に設定した。
このようにして作製した光ディスク原盤のグルーブパターンには側面の変動は認められらなかった。
この場合も、すでに説明した実施例1と同様に、半径ごとに揺動振幅を変更することにより溝幅の補正が行なわれ、得られた光ディスク原盤から、すでに実施例1に説明した工程を経て製造した光ディスクに情報の記録を行い再生を行なった所、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0051】
(実施例5)
本実施の形態でも、揺動信号Fdの周波数とフォーマット信号Fbとの同期を取ることにより、ピットのように断続するパターンの露光が行なわれるが、同期が取れていないと、ピットの書き始めでは、電子ビームが移動方向と逆方向に揺動すると、電子ビームが移動方向とは逆方向に移動することになって、パターン長が長くなり、ピットの書き終わりで、電子ビームがビームの移動方向に揺動すると、電子ビームが移動方向に移動することになって、同様にパターン長が長くなる。
光ディスクのような情報記録媒体の場合には、ピットパターンは、最小単位のチャネルビットの整数倍になっているので、図10に示すように、揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように制御すると、全てのピットパターンの揺動周期との同期を取ることができる。
【0052】
この実施例でも、実施例2、3と同様に、図5に示すように、パターン長に応じて揺動振幅を制御し、図10に示すように、パターン端部で揺動振幅を小さくすることにより、ピツトやグリーブ幅が均一な光ディスク原盤が作製が可能である。
【0053】
揺動時の電子ビームの電流値を50nm、加速電圧を50kV、電子ビーム径を100nmとし、化学増幅型電子線レジストEN005−PNを被着塗布した基板13をに対して、ピッチ0.35μm、線速度3m/s、揺動周波数50MHz(1チャネルビット20nsec)に選択してグルーブ露光を行い、ベーク処理と現像処理を施して光ディスク原盤を作製し、得られた光ディスク原盤から、すでに実施例1で説明した工程を経て製造された光ディスクに情報の記録を行い、再生を行なった所、内周外周とも良好な再生信号が得られた。
【0054】
なお、各実施の形態では、電子ビーム露光装置が、回転ステージと直線移動ステージを備え、基板にグレーブやピットを螺旋軌跡に沿って形成する場合を説明したが、本発明は、前述した各実施の形態に限定されるものではなく、X−Yステージを備え、電子ビームの偏向器をX軸方向とY軸方向にそれぞれ具備し、基板に対して電子ビームの照射と遮断を繰り返し、遮断時に次の照射位置への偏向を行なって、基板に所定の二次元画像を描画し、例えば半導体用のマスク部材の製造を行なう構成にすることも可能である。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載の電子ビームの露光方法に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動ステップで、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御ステップで、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0056】
請求項2記載の電子ビームの露光装置に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンが描画されるが、電子ビーム揺動手段で、電子ビームのブランキング電圧が揺動されて、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御手段で、ブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されるので、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が適確に制御され、基板に対して、パターン幅が高精度に制御設定された高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0057】
請求項3記載の発明によると、請求項2記載の発明において、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直に設定された状態で、請求項2記載の発明で得られる効果を実現することが可能になる。
【0058】
請求項4記載の発明によると、請求項3記載の発明において、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vに設定されることにより、請求項3記載の発明で得られる効果を実現することが可能になる。
【0059】
請求項5記載の発明によると、電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行に設定されるので、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、ブランキング電圧の揺動によるパターン幅の変化やパターン側面の変動がなく、電子ビーム量を増加して短時間で、高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0060】
請求項6記載の発明によると、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍に設定されるので、請求項5記載の発明で得られる効果に加えて、チャンネルビットの整数倍のピットパターンに対して、ブランキング電圧の揺動周期の整数倍がチャネルビットになるように設定され、全てのピットパターンで揺動周期との同期が取られ、パターン長さに変動のない、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0061】
請求項7記載の発明によると、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、第1の振幅補正手段によって、照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅が補正されるので、一定の電子ビーム量での露光時のパターン長の減少に伴うパターン幅の短縮を補正して、基板に対して、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0062】
請求項8記載の発明によると、請求項2記載の発明で得られる効果に加えて、第2の振幅補正手段によって、基板への入射電子ビームにより基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅が、その他の領域より減少され、電子ビームの散乱の影響によるパターン端部でのパターン幅の狭まりを補正して、さらに高品質のパターンの描画を行なうことが可能になる。
【0063】
請求項9記載の情報記録媒体原盤に製造方法に係る発明によると、電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、電子ビームを基板方向に照射し、基板への入射電子ビームによって、基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤が製造されるが、電子ビーム揺動工程で電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、基板に入射する電子ビーム量が制御され、照射量制御工程で、ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板に対して、パターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されることにより、表面に高精度のグレーブやピットからなる高品質のパターンが形成された情報記録媒体原盤を製造することが可能になる。
【0064】
請求項10記載の情報記録媒体に係る発明によると、電子ビームが基板に対して相対的に移動され、基板方向に照射される電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上に設定され、基板への入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように照射量が制御された入射電子ビームによって、基板にはパターン幅が高精度に設定された高品質のパターンの描画が行なわれ、この基板が現像処理されて、表面にグレーブやピットからなるパターンが高精度に形成された情報記録媒体原盤が製造され、この情報記録媒体原盤の表面に導電膜を被着し、電気鋳造を行なうことにより、情報記録媒体原盤から剥離されてスタンパが製造され、得られるスタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて、表面に高精度のグレープやピットからなる高品質のパターンが適確に形成された情報記録媒体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の要部の構成を示す説明図である。
【図2】同実施の形態の各部の信号の信号波形と、ブランキング信号と電子ビーム量との関係を示す特性図である。
【図3】同実施の形態のブランキング信号の周波数と現像後の基板に形成される溝形状との関係を示す特性図である。
【図4】同実施の形態のブランキング信号の振幅と電子ビーム量及び現像後に基板に形成される溝幅との関係を示す特性図である。
【図5】同実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン形状との関係を示す特性図である。
【図6】同実施の形態の電子ビーム強度と現像後に基板に形成されるパターン長さとの関係を示す特性図である。
【図7】同実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン幅の半径方向での変動の補正動作を示す特性図である。
【図8】同実施の形態における現像後の基板に形成されるパターン端部の狭まりの補正動作を示す特性図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の要部構成を示す説明図である。
【図10】同実施の形態における現像後の原盤に形成されるパターン長さの補正動作の説明図である。
【図11】従来の電子ビーム露光装置の全体構成を示す説明図である。
【図12】図11の要部の構成を示す説明図である。
【図13】従来の電子ビーム露光装置の各部の信号波形図である。
【符号の説明】
9 ブランキング電極
11 偏向器
13 基板
20 ブランキングドライバ
21 フォーマッタ
22 偏向ドライバ
23 ウォブルフォーマッタ
24 信号合成器
25 RF発信器
Fa ブランキング信号
Fb フォーマット信号
Fc 合成信号
Fd 揺動信号
Fe 揺動電圧
Claims (10)
- 電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画する電子ビーム露光方法であり、
前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動ステップと、
前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御ステップと
を有することを特徴とする電子ビーム露光方法。 - 電子ビームを、基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画する電子ビーム露光装置であり、
前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動手段と、
前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御手段と
を有することを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に垂直であることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム露光装置。
- 照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期Tが、電子ビームの移動速度をV、電子ビームの直径をaとして、T≦a/Vであることを特徴とする請求項3記載の電子ビーム露光装置。
- 電子ビーム揺動手段による電子ビームの揺動方向が、電子ビームの基板に対する移動方向に平行であることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム露光装置。
- 基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの周期が、照射量制御手段によるブランキング電圧の揺動周期の整数倍であることを特徴とする請求項5記載の電子ビーム露光装置。
- 基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの形状に応じて、前記照射量制御手段により設定されるブランキング電圧の振幅を補正する第1の振幅補正手段が、請求項2記載の発明にさらに設けられていることを特徴とする電子ビーム露光装置。
- 基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に形成されるパターンの電子ビームの移動方向の端部近傍において、前記照射量制御手段により設定されるランキング電圧の振幅を、その他の領域より減少させる第2の振幅補正手段が、さらに設けられていることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム露光装置。
- 電子ビームを基板に対して相対的に移動させながら、前記電子ビームを前記基板方向に照射し、前記基板への入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜にパターンを描画することにより情報記録媒体原盤を製造する情報記録媒体原盤の製造方法であり、
前記電子ビームのブランキング電圧を揺動することにより、前記基板に入射する電子ビーム量を制御する電子ビーム揺動工程と、
前記ブランキング電圧の揺動幅を基準振幅以下に、揺動周波数を基準周波数以上にそれぞれ設定して、前記基板に入射する電子ビームの単位面積当たりの照射量を制御する照射量制御工程と
を有することを特徴とする情報記録媒体原盤の製造方法。 - 電子ビームが基板に対して相対的に移動された状態で、前記基板方向に照射される前記電子ビームを偏向するブランキング電圧の揺動幅が基準振幅以下に、揺動周波数が基準周波数以上にそれぞれ設定されることにより、前記基板に入射する入射電子ビームの単位面積当たりの照射量が制御され、このように制御された入射電子ビームによって、前記基板の表面に被着されたレジスト膜に、グレーブやピットが描画され、現像処理が施されることにより表面にグレーブやピットが形成されて製造される情報記録媒体原盤に対して、表面に導電膜を被着させ、電気鋳造を行い前記情報記録媒体原盤から剥離してスタンパが製造され、該スタンパに成形処理、成膜処理及び後処理が施されて製造されることを特徴とする情報記録媒体。
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