JP2004317537A - 電子ビーム描画方法、母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び電子ビーム描画装置 - Google Patents

電子ビーム描画方法、母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び電子ビーム描画装置 Download PDF

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修 増田
Kazumi Furuta
和三 古田
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Abstract

【課題】より短い時間をもって描画を行い、且つ、電子ビームの所定描画領域内における基材の形状に影響されることなく、その描画形状を均一に保つことを可能にする電子ビーム描画方法を提供する。
【解決手段】電子ビームを偏向させる偏向器の入力信号に対して、電子ビームの所定描画領域(フィールド)内における基材2の(曲面部2aの)形状に応じて振幅が調整された周波数信号を重畳させることで、基材2の被描画面(レジスト層Lの表面)においては、電子ビームBを副走査方向(図におけるY方向)に振ることにより、電子ビームBを蛇行させながら主走査方向(図におけるX方向)に走査すると同時に、その蛇行の度合いをフィールド内における所望の構造の描画形状に応じた値に調整する。
【選択図】 図13

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームによる描画技術に関するものであり、特に、被描画対象となる基材に対して所定のパターン、例えば光学素子に対応する回折パターン等を電子ビームによって描画する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報記録媒体として、例えばCD、DVD等が広く使用されており、これらの記録媒体を読み取る読取装置などの精密機器には、多くの光学素子が利用されている。これらの機器に利用される光学素子、例えば光レンズなどは、低コスト化並びに小型化の観点から、ガラス製の光レンズよりも樹脂製の光レンズを用いることが多い。
【0003】
このような樹脂製の光レンズは、一般の射出成形によって製造されており、射出成形用の成形型も、一般的な切削加工によって形成されている。
【0004】
ところで、最近では、光学素子に要求されるスペックや性能自体が向上してきており、例えば、光学機能面に回折構造などを有する光学素子を製造する際に、当該光学素子を射出成形するためには、成形型にそのような回折構造を付与するための面を形成しておく必要がある。
【0005】
しかしながら、現在用られているような成形技術や加工技術の切削バイトにて、成形型にそうした回折構造などの微細な形状を形成しようとすると、加工精度が劣るとともに、バイトの強度、寿命の点で限界があり、サブミクロンオーダー、或いは、それ以下の精密な加工を行うことが困難であった。
【0006】
特に、CD−ROMのピックアップレンズと比較して、DVD等の媒体におけるピックアップレンズでは、記録密度の増加に対して、より精度の高い回折構造が要求され、光の波長より小さいレベル、例えばnmレベルでの加工精度が求められる。しかし、上述のように従来の切削加工では、こうした加工精度は得られなかった。
【0007】
一方、光学素子などを含む基材の表面上に所定の形状を描画加工するものとしては、光露光などの手法、例えばマスク露光を用いた露光装置などによって加工を行うことが行われている。
【0008】
例えば、半導体のウエハ基板(フォトマスク)等の基材の表面に所望を形状を描画加工するための露光装置などを光学素子の面への加工もしくは成形型の加工などに用いることが考えられる。しかしながら、ウエハ基板用の装置は、平坦な材料しか加工することができないという問題がある。また、ウエハ基板用の装置では、基材の加工深さは、照射する光の露光エネルギー量で制御するが、光学素子のための回折格子などの精密加工、或いは、フォトニック結晶の作成などの場合、照射される光の波長より短い構造をレンズのような非平面上に正確に形成する必要がある。そのため、上述の制御手法の露光装置では求められるレベルの微細な加工には適さない。
【0009】
さらに、レーザービームによる加工が考えられるが、レーザービームではミクロンレベルの加工では用いられることがあるものの、ビーム径を光学的に制御しており、ビームの集束に限界がある。従って、サブミクロンレベル、特に光の波長に近いレベルの加工は困難である。また焦点深度についても深い焦点深度が得られず、オートフォーカス等のメカニカルな手段を常に用いる必要があり、これも精度の高い加工を阻む要因となっていた。特に、曲面形状(ここではマクロ的に変化する面を有する3次元形状を含む)を有する光学素子の描画で高い精度が要求された時には、この問題は顕著なものとなる。
【0010】
従って、平面状の基材を描画加工する場合は良いが、光レンズ用の成形型など、曲面等のダイナミックな3次元形状を有する基材に微細な形状を描画する場合には適さないという問題があった。
【0011】
そこで、このような光レンズ用の成形型を作製するために、その母型となる光学素子の光学機能面に回折構造を形成するべく、電子ビーム描画装置を用いて描画を行うことが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
この電子ビーム描画装置においては、光レンズの原型である基材の表面に対して電子ビームを照射し、これを所定の描画時間内に所定のドーズ量にて走査することで、バイナリー形状やブレーズ形状の回折構造を描画する。
【0013】
ところで、ドーズ量の最小分解能(以下、最小ドーズ分解能と称する)は、電子ビーム描画装置のD/A変換器の最小時間分解能により決定されるため、ドーズ量の調整は、特に、高い電流値にて時間をかけないように描画を行う場合には顕著に段階的となる。従って、ブレーズ形状の回折構造を描画する場合には、滑らかなブレーズ傾斜面を形成しようとしても、上述の最小ドーズ分解能の大きさに起因して、基材を現像後に得られるブレーズの傾斜面部分の形状が階段状になってしまうという問題がある。
【0014】
このように、ブレーズの傾斜面部分の形状が階段状になってしまうと、光レンズの光学特性が低下し、特に、回折効率の低下が招かれることとなる。また、製品の品質を鑑みた場合には、製品価値を低下させる要因にもなるため、光レンズの回折効率を向上させると共に、製品価値をも高めるためには、ブレーズの傾斜面部分の形状は、可能な限り滑らかにする必要がある。
【0015】
そこで、このような問題を解決するべく、太いビーム径(例えば、電子ビームのデフォーカス位置)にて描画を行い、基材を現像後に得られるブレーズの傾斜面部分の形状を滑らかにすることが考えられるが、このような場合には、ブレーズのエッジ部分において、その立ち上がり形状が鈍くなるという問題が生じる。
【0016】
このように、ブレーズのエッジ部分の立ち上がり形状が鈍くなってしまっても、光レンズの光学特性が低下し、特に、回折効率の低下が招かれることとなる。また、製品の品質を鑑みた場合には、製品価値を低下させる要因にもなるため、光レンズの回折効率を向上させると共に、製品価値をも高めるためには、ブレーズのエッジ部分の立ち上がり形状は、可能な限り鋭くする必要がある。
【0017】
また一方で、太いビーム径にて照射される電子ビームは、外乱の影響を大きく受けるなどの欠点を有しており、また、例えば一般的なスポットビーム方式の電子ビーム描画装置においては、電子ビームの径は、通常、数nmから数十nmの範囲に設定されているが、電子ビームの径をこれ以上に太くすると、収差などが生じて実用的でなくなるという問題が生じる。
【0018】
そこで、このような問題を解決するべく、本発明者は、細いビーム径にて描画を行いつつも、ブレーズの傾斜面部分を描画するべく電子ビームのドーズ量を第1のドーズ量から第2のドーズ量へ変化させる(但し、第1のドーズ量と第2のドーズ量の差は、D/A変換器の最小クロックに基づく最小調整単位のドーズ量となっている)際には、基材の第1のドーズ量にて描画される部分と第2のドーズ量にて描画される部分の間に、これら2つのドーズ量にて描画される部分が混在するドーズ混在傾斜部を設けることで、現像後には、ドーズ混在傾斜部を第1のドーズ量にて描画される部分と第2のドーズ量にて描画される部分の中間的な高さに形成して、結果として、ブレーズの傾斜面部分を滑らかにし、且つ、エッジ部分の立ち上がりを鋭く形成する手法を提案している。
【0019】
【特許文献1】
特願2002−333722号公報
(段落〔0061〕‐〔0160〕、第1図乃至第4図)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように、細いビーム径にてブレーズの傾斜面部分と、ブレーズのエッジ部分の双方、即ち、ブレーズ全体を描画する場合には、描画にかかる時間が多大になるという問題が生じる。
【0021】
従って、現状の手法によっては、ブレーズの傾斜面部分を滑らかに形成し、且つ、ブレーズのエッジ部分の立ち上がりを鋭く形成すると同時に、ブレーズを描画するのにかかる時間を短く抑えるということは不可能な状況にある。
【0022】
また一方で、電子ビーム描画装置においては、1フィールド内において、同一の焦点深度内で描画を行う場合であっても、基材の形状によっては、各々の描画位置において、電子ビームの出射位置から当該描画位置までの距離に違いが生じるため、電子ビームには僅かながらにも収差が生じて、基材においては、ジャストフォーカス位置で描画される部分とデフォーカス位置で描画される部分とが生じることとなる。
【0023】
このようなジャストフォーカス位置で描画した部分とデフォーカス位置で描画した部分とでは、描画される際のドーズ量に違いが生じるため、現像後に得られるレジストの形状が一様でなくなるという問題がある。特に、被描画層であるレジスト層を基材まで到達しない程度に描画する場合には、現像後のレジスト層表面において、その平面性に顕著な違いが現れる。
【0024】
従って、このようなことを改善するために、電子ビームの収差を補正するべく電子ビームの径を調整する電子レンズの励磁を制御して、常に電子ビームのフォーカス位置におけるビーム径を一定にすることが望ましいが、ローティションや収差等の影響を加味しなくてはならず、制御が著しく困難になるという問題が生じる。
【0025】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より短い時間をもって描画を行い、且つ、電子ビームの所定描画領域内における基材の形状に影響されることなく、その描画形状を均一に保つことを可能にする電子ビーム描画方法を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、被描画対象である基材に対して、所定の描画領域毎に電子ビームを照射し、主走査方向に走査すると共に、前記主走査方向の走査を副走査方向に繰り返すことによって、所定のパターンを描画する電子ビーム描画方法であって、前記基材の形状データ及び前記所定のパターンの形状データを取得する取得ステップと、前記基材の被描画面を複数の描画領域に区分する区分ステップと、前記区分された複数の描画領域の内、所定の描画領域毎に、前記基材の形状データ及び前記所定のパターンの形状データに基づいて、出射される電子ビームを、主走査方向に偏向させるための第1の入力信号と、副走査方向に偏向させるための第2の入力信号を生成する信号生成ステップと、前記所定の描画領域における前記基材の形状データに応じた特定の周波数を有する周波数信号を調整する周波数調整ステップと、前記第2の入力信号に対して、前記周波数信号を重畳する重畳ステップと、前記出射される電子ビームを、前記第1の入力信号に従って偏向させることで主走査方向に走査すると共に、前記周波数信号が重畳された前記第2の入力信号に従って偏向させることで副走査方向に走査する走査ステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子ビーム描画方法の好適な一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
[基材の構成]
まず、電子ビーム描画装置により描画される基材の構成について説明する。尚、本例においては、曲面形状を成す基材の一面に円描画を行いつつ、ブレーズ形状の回折格子構造を形成する場合を例に採り、以下に説明を続けるが、本発明はこれに限らず、例えば基材の一面は、平面等であっても良い。また、回折格子構造は、バイナリー形状であっても良い。このような場合にも同様の効果を得ることができる。
【0029】
図1に、当該基材の現像処理後において、その一面に形成される描画パターン、並びに、その細部の形状を示す。図1に示すように、基材2の一面には、描画パターンの一例として円描画が施され、描画部分の一部であるE部分を拡大すれば、複数のブレーズ3からなる回折格子構造が形成されている。ブレーズ3は、傾斜部3b及び側壁部3aを形成し、傾斜部3bは、周方向に沿って曲面状に複数段形成されている。
【0030】
より詳細には、図2に示すように、基材2は、少なくとも一面に形成された曲面部2aを有し、回折格子を傾けて各ピッチL1毎に形成し、この回折格子の少なくとも1ピッチL1に、当該ピッチの区切り目位置にて曲面部2aより立ち上がる側壁部3aと、隣接する各側壁部3a、3a間に形成された傾斜部3bと、側壁部3aと傾斜部3bとの境界領域に形成された溝部3cとが形成されている。
【0031】
傾斜部3bは、一端が一方の側壁部3aの基端に接し、他端が他方の側壁部3aの先端に接する傾斜面を構成している。尚、この複数のブレーズ3からなる回折格子構造は、後述するように、曲面部2a上に塗布された塗布剤(レジスト)を電子ビーム描画装置により描画して、これを現像処理することで形成され、ブレーズ3の傾斜部3b、側壁部3a及び溝部3cは、後述する電子ビーム描画装置の描画により一様な形状を形成する。
【0032】
[電子ビーム描画装置の構成]
次に、上述の基材2を描画するために用いられる電子ビーム描画装置の具体的構成について説明する。
【0033】
図3に、電子ビーム描画装置の全体構成を示す説明図を示す。図3に示すように、当該電子ビーム描画装置1は、大電流で高解像度の電子線プローブを形成して、これを高速に描画対象の基材2上で走査するものであり、高解像度の電子線プローブを形成し、電子ビームを生成してターゲットに対してビーム照射を行う電子ビーム照射手段である電子銃12と、この電子銃12からの電子ビームを通過させるスリット14と、スリット14を通過する電子ビームの前記基材2に対する焦点位置を制御するための電子レンズ16と、電子ビームが出射される経路上に配設されたアパーチャー18と、電子ビームを偏向させることでターゲットである基材2上の走査位置等を制御する偏向器20と、偏向を補正する補正用コイル22とを含み構成されている。尚、これら各部は、鏡筒10内に配設されて、電子ビーム出射時には真空状態に維持される。
【0034】
尚、電子銃12は、本発明の「電子ビーム照射手段」に対応する。また、偏向器20は、本発明の「電子ビーム走査手段」に対応する。
【0035】
さらに、電子ビーム描画装置1は、描画対象となる基材2を載置するための載置台であるXYZステージ30と、このXYZステージ30上の載置位置に基材2を搬送するための搬送手段であるローダ40と、XYZステージ30上の基材2の表面の基準点を測定するための測定手段である測定装置80と、XYZステージ30を駆動するための駆動手段であるステージ駆動手段50と、ローダを駆動するためのローダ駆動装置60と、鏡筒10内及びXYZステージ30を含む筐体11内を真空となるように排気を行う真空排気装置70と、これらの制御を司る制御手段である制御回路100と、を含み構成されている。
【0036】
尚、電子レンズ16は、高さ方向に沿って複数箇所に離間して設置される各コイル17a、17b、17cに電流を供給することで電子的なレンズを複数生成し、上述の電流値を制御することで、電子ビームの焦点位置及び焦点幅(ビームウエストの幅)を調整する。
【0037】
測定装置80は、基材2に対してレーザーを照射することで基材2を測定する第1のレーザー測長器82と、第1のレーザー測長器82にて発光されたレーザー光(第1の照射光)が基材2を反射し当該反射光を受光する第1の受光部84と、前記第1のレーザー測長器82とは異なる照射角度から照射を行う第2のレーザー測長器86と、前記第2のレーザー測長器86にて発光されたレーザー光(第2の照射光)が基材2を反射し当該反射光を受光する第2の受光部88と、を含み構成されている。
【0038】
ステージ駆動手段50は、XYZステージ30をX方向に駆動するX方向駆動機構52と、XYZステージ30をY方向に駆動するY方向駆動機構54と、XYZステージ30をZ方向に駆動するZ方向駆動機構56と、XYZステージ30をθ方向に駆動するθ方向駆動機構58とを含み構成されている。尚、この他、Y軸を中心とするα方向に回転駆動可能なα方向駆動機構、X軸を中心とするβ方向に回転駆動可能なβ方向駆動機構を設けて、ステージをピッチング、ヨーイング、ローリング可能に構成してもよい。これにより、XYZステージ30を3次元的に動作させたり、アライメントを行うことが可能になる。
【0039】
制御回路100は、電子銃12に電源を供給するための電子銃電源部102と、この電子銃電源部102での電流、電圧などを調整制御する電子銃制御部104と、電子レンズ16(複数の各電子的なレンズを各々)を動作させるためのレンズ電源部106と、このレンズ電源部106での各電子レンズに対応する各電流を調整制御するレンズ制御部108とを含み構成される。尚、電子銃電源部102は、電子銃12に電源を供給するための図示省略のD/A変換器を有しており、電子銃制御部104が、この図示省略のD/A変換器における電流、電圧などを調整制御することで、電子銃12から照射される電子ビームのドーズ量が調整される。従って、このD/A変換器の最小クロックに基づいて、当該電子ビーム描画装置の最小調整単位のドーズ量が決定されることとなる。
【0040】
さらに、制御回路100は、補正用コイル22を制御するためのコイル制御部110と、偏向器20にて成形方向の偏向を行う成形偏向部112aと、偏向器20にて副走査方向の偏向を行うための副偏向部112bと、偏向器20にて主走査方向の偏向を行うための主偏向部112cと、成形偏向部112aを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114aと、副偏向部112bを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114bと、主偏向部112cを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高精度D/A変換器114cとを含み構成される。
【0041】
さらに、制御回路100は、偏向器20における位置誤差を補正する、即ち、位置誤差補正信号などを各高速D/A変換器114a、114b、及び高精度D/A変換器114cに対して供給して位置誤差補正を促す、或いは、コイル制御部110に対して当該信号を供給することで補正用コイル22にて位置誤差補正を行う位置誤差補正回路116と、これら位置誤差補正回路116並びに各高速D/A変換器114a、114b及び高精度D/A変換器114cを制御して電子ビームの電界を制御する電界制御手段である電界制御回路118と、描画パターンなどを基材2に対して生成するためのパターン発生回路120とを含み構成される。因みに、パターン発生回路120は、後述するようにメモリ160に格納される様々な描画パターンの形状に関する情報に基づいて、所定の描画パターンを生成する。
【0042】
さらに、制御回路100は、第1のレーザー測長器82を上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行う第1のレーザー駆動制御回路130と、第2のレーザー測長器86を上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行う第2のレーザー駆動制御回路132と、第1のレーザー測長器82でのレーザー照射光の出力(レーザーの光強度)を調整制御するための第1のレーザー出力制御回路134と、第2のレーザー測長器86でのレーザー照射光の出力を調整制御するための第2のレーザー出力制御回路136と、第1の受光部84での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第1の測定算出部140と、第2の受光部88での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第2の測定算出部142とを含み構成される。
【0043】
さらに、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御するためのステージ制御回路150と、ローダ駆動装置60を制御するローダ制御回路152と、上述の第1、第2のレーザー駆動回路130、132・第1、第2のレーザー出力制御回路134、136・第1、第2の測定算出部140、142・ステージ制御回路150・ローダ制御回路152を制御する機構制御回路154と、真空排気装置70の真空排気を制御する真空排気制御回路156と、測定情報を入力するための測定情報入力部158と、入力された情報や他の複数の情報を記憶するための記憶手段であるメモリ160と、各種制御を行うための制御プログラムを記憶したプログラムメモリ162と、これらの各部の制御を司る、例えばCPUなどにて形成された制御部170とを含み構成されている。
【0044】
また、当該電子ビーム描画装置1では、測定情報入力部158などを含む、所謂「操作系」乃至は「操作手段」においては、アナログスキャン方式/デジタルスキャン方式の選択、基本的な形状の描画パターンの複数からの選択等、各種コマンド操が可能となっている。
【0045】
尚、上述の副偏向部112b、高速D/A変換器114b、電界制御回路118、メモリ160、プログラムメモリ162及び制御部170は、本発明の「走査ピッチ制御手段」を構成する。
【0046】
上述のような構成を有する電子ビーム描画装置1において、ローダ40によって搬送された基材2がXYZステージ30上に載置されると、真空排気装置70によって鏡筒10及び筐体11内の空気やダストなどを排気した後、電子銃12から電子ビームが照射される。
【0047】
電子銃12から照射された電子ビームは、電子レンズ16を介して偏向器20により偏向され、偏向された電子ビームB(以下、この電子レンズ16を通過後の偏向制御された電子ビームに関してのみ「電子ビームB」と符号を付与することがある)は、XYZステージ30上の基材2の表面、例えば曲面部(曲面)2a上の描画位置に対して照射されることで描画が行われる。
【0048】
この際に、測定装置80によって、基材2上の描画位置(描画位置のうち少なくとも高さ位置)、若しくは後述するような基準点の位置が測定され、制御回路100は、当該測定結果に基づき、電子レンズ16のコイル17a、17b、17cなどに流れる各電流値などを調整制御して、電子ビームBの焦点深度の位置、即ち焦点位置を制御し、当該焦点位置が前記描画位置となるように移動制御される。
【0049】
或いは、測定結果に基づき、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御することにより、前記電子ビームBの焦点位置が前記描画位置となるようにXYZステージ30を移動させる。
【0050】
また、本例においては、電子ビームの制御、XYZステージ30の制御の何れか一方の制御によって行っても、双方を利用して行ってもよい。
【0051】
(測定装置)
次に、測定装置80について、図4を参照しつつ説明する。測定装置80は、より詳細には、図4に示すように、第1のレーザー測長器82、第1の受光部84、第2のレーザー測長器86、第2の受光部88などを有する。
【0052】
第1のレーザー測長器82により電子ビームと交差する方向から基材2に対して第1の光ビームS1を照射し、基材2を透過する第1の光ビームS1の受光によって、第1の光強度分布が検出される。
【0053】
この際に、図4に示すように、第1の光ビームS1は、基材2の平坦部2bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、基材2の平坦部2b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。しかし、この場合には、基材2の曲面部2a上の(高さ)位置を測定することができない。
【0054】
そこで、本例においては、さらに第2のレーザー測長器86を設けている。即ち、第2のレーザー測長器86によって、第1の光ビームS1と異なる電子ビームとほぼ直交する方向から基材2に対して第2の光ビームS2を照射し、基材2を透過する第2の光ビームS2が第2の受光部88に含まれるピンホール84を介して受光されることによって、第2の光強度分布が検出される。
【0055】
この場合、図5(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2a上を透過することとなるので、前記第2の強度分布に基づき、基材2の平坦部2bより突出する曲面部2a上の(高さ)位置を測定算出することができる。
【0056】
具体的には、第2の光ビームS2がXY基準座標系における曲面部2a上のある位置(x、y)の特定の高さを透過すると、この位置(x、y)において、図5(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2aの曲面にて当たることにより散乱光SS1、SS2が生じ、この散乱光分の光強度が弱まることとなる。このようにして、図6に示すように、第2の受光部88にて検出された第2の光強度分布に基づき、位置が測定算出される。
【0057】
この算出の際には、図6に示すように、第2の受光部88の信号出力Opは、図7に示す特性図のような、信号出力Opと基材の高さとの相関関係を有するので、制御回路100のメモリ160などにこの特性、即ち相関関係を示した相関テーブルを予め格納しておくことにより、第2の受光部88での信号出力Opに基づき、基材2の高さ位置を算出することができる。
【0058】
そして、この基材2の高さ位置を、例えば描画位置として、前記電子ビームの焦点位置の調整が行われ描画が行われることとなる。
【0059】
(描画位置算出の原理の概要)
次に、当該電子ビーム描画装置1における、描画を行う場合の描画位置算出の原理の概要について説明する。
【0060】
まず、基材2は、図8(A)、(B)に示すように、例えば樹脂等による光学素子、例えば光レンズ等にて形成されることが好ましく、断面略平板状の平坦部2bと、この平坦部2bより突出形成された曲面をなす曲面部2aと、を含んで構成されている。この曲面部2aの曲面は、球面に限らず、非球面などの他のあらゆる高さ方向に変化を有する自由曲面であってよい。
【0061】
このような基材2において、予め基材2をXYZステージ30上に載置する前に、基材2上の複数、例えば3個の基準点P00、P01、P02を決定してこの位置を測定しておく(第1の測定)。これによって、例えば、基準点P00とP01によりX軸、基準点P00とP02によりY軸が定義され、3次元座標系における第1の基準座標系が算出される。ここで、第1の基準座標系における高さ位置をHo(x、y)(第1の高さ位置)とする。これによって、基材2の厚み分布の算出を行うことができる。
【0062】
一方、基材2をXYZステージ30上に載置した後も、同様の処理を行う。即ち、図8(A)に示すように、基材2上の複数例えば3個の基準点P10、P11、P12を決定してこの位置を測定しておく(第2の測定)。これによって、例えば、基準点P10とP11によりX軸、基準点P10とP12によりY軸が定義され、3次元座標系における第2の基準座標系が算出される。
【0063】
さらに、これらの基準点P00、P01、P02、P10、P11、P12により第1の基準座標系を第2の基準座標系に変換するための座標変換行列などを算出して、この座標変換行列を利用して、第2の基準座標系における前記Ho(x、y)に対応する高さ位置Hp(x、y)(第2の高さ位置)を算出して、この位置を最適フォーカス位置、即ち、描画位置として電子ビームの焦点位置が合わされるべき位置とすることとなる。これにより、上述の基材2の厚み分布の補正を行うことができる。
【0064】
尚、上述の第2の測定は、電子ビーム描画装置1の第1の測定手段である測定装置80を用いて測定することができる。
【0065】
そして、第1の測定は、予め別の場所において他の測定装置を用いて測定しおく必要がある。このような、基材2をXYZステージ30上に載置する前に予め基準点を測定するための測定装置としては、上述の測定装置80と全く同様の構成の測定装置(第2の測定手段)を採用することができる。
【0066】
この場合、測定装置からの測定結果、即ち、基材2の厚み分布情報は、例えば、図3に示す測定情報入力部158にて入力されたり、制御回路100と接続される不図示のネットワークを介してデータ転送されて、メモリ160に格納されることとなる。もちろん、この測定装置が不要となる場合も考えられる。
【0067】
上述のようにして、描画位置が算出されて、電子ビームの焦点位置が制御されて描画が行われることとなる。
【0068】
具体的には、図8(C)に示すように、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW=ビーム径の最も細い所)の焦点位置を、3次元基準座標系における単位空間の1フィールド(m=1)内の描画位置に調整制御する(この制御は、上述したように、電子レンズ16による電流値の調整もしくはXYZステージ30の駆動制御の何れか一方又は双方によって行われる)。また、この際、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW=ビーム径の最も細い所)の焦点位置は、XYZステージ30の駆動制御により、1フィールドの中央部に調整される。尚、本例においては、1フィールドの高さ分を焦点深度FZより長くなるように、フィールドを設定してあるがこれに限定されるものではない。ここで、焦点深度FZとは、図9に示すように、電子レンズ16を介して照射される電子ビームBにおいて、ビームウエストBWが有効な範囲の高さを示す。因みに、上述のように、ビームウエストBWの幅は、電子レンズ16のコイル17a、17b、17cなどに流れる各電流値を制御することで調整される。また、電子ビームBの場合、図9に示すように、電子レンズ16の幅D、電子レンズ16よりビームウエストBWまでの深さfとすると、D/fは、0.01程度であり、例えば50nm程度の解像度を有し、焦点深度は例えば数十μ程度ある。
【0069】
そして、図8(C)に示すように、例えば1フィールド内をY方向にシフトしつつ順次X方向に走査することにより、1フィールド内の描画が行われることとなる。さらに、1フィールド内において、描画されていない領域があれば、当該領域についても、上述の焦点位置の制御を行いつつZ方向に移動し、同様の走査による描画処理を行うこととなる。
【0070】
次に、1フィールド内の描画が行われた後、他のフィールド、例えばm=2のフィールド、m=3のフィールドにおいても、上述同様に、測定や描画位置の算出を行いつつ描画処理がリアルタイムで行われることとなる。このようにして、描画されるべき描画領域について全ての描画が終了すると、基材2の表面における描画処理が終了することとなる。
【0071】
尚、本例では、この描画領域を被描画層とし、この被描画層における曲面部2aの表面の曲面に該当する部分を被描画面としている。
【0072】
さらに、上述のような各種演算処理、測定処理、制御処理などの処理を行う処理プログラムは、プログラムメモリ162に予め制御プログラムとして格納されることとなる。
【0073】
(制御系)
次に、当該電子ビーム描画装置1における制御系について、図10を参照しつつ説明する。
【0074】
図10に示すように、メモリ160には、上述の予め測定情報入力部158にて入力された、若しくは、予め制御回路100と接続される不図示のネットワークを介してデータ転送された基材2の厚み分布情報が、その他の情報161dとして格納されており(これにより、基材の形状データが取得される。)、さらに、形状記憶テーブル161には、この基材2の厚み分布情報に基づき設定された、例えば、基材2の曲面部2aに描画するブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの各走査位置に対応するドーズ分布を予め定義したドーズ分布情報161aや、同じく、ブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの各走査位置に対応するビーム径を予め定義したビーム径情報161bや、ブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bを描画する際の各描画位置に対応するフィールドの区分、及び、後述する重畳量分割フィールドの区分の大きさを予め定義したフィールド区分情報161cが格納されている。因みに、フィールドの区分の大きさは、副偏向部112bからの入力信号により偏向器20にて偏向される電子ビームBの偏向範囲(走査範囲)に基づき設定される。また、重畳量分割フィールドの区分の大きさは、このフィールドの区分の大きさに基づき設定される。さらに、メモリ160には、後述する電子ビームBの偏向信号に重畳する周波数の振幅の補正を行うための重畳量補正テーブル164が格納されている。
【0075】
一方、プログラムメモリ162には、制御部170が後述する処理を行うための処理プログラム163aや、その他の処理プログラム163cが格納されている。
【0076】
因みに、図10に示す設定手段181は、メモリ160の形状記憶テーブル161に含まれるドーズ分布情報161a、ビーム径情報161b、フィールド区分情報161cと、メモリ160に格納される重畳量補正テーブル164などを設定するためのものである。また、表示手段182は、例えば走査線毎のドーズ分布情報等を表示するためのものである。
【0077】
このような構成において、制御部170は、メモリ160の形状記憶テーブル161に格納されるドーズ分布情報161aとビーム径情報161bに基づいて、プログラムメモリ162に格納される処理プログラム163aに従って、ブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの各走査位置に対応するドーズ量を算出すると共に、これをフィールド区分情報161cに基づいて区分したフィールドの各々と対応させる。さらに、制御部170の制御の下、パターン発生回路120は、区分したフィールドの各々に対応する描画パターンを発生させる。これにより、描画パターンの形状データが取得される。
【0078】
さらに、制御部170は、上述のドーズ量から、ブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの各走査位置に対応するプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径を算出する。そして、算出したプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径に基づいて、電子銃制御部104、電界制御回路118及びレンズ制御部108などの制御を行う。これにより、描画を行う際のプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径は適切化される。尚、電子ビームBの径は、アパーチャー18の開口部の大きさを変更することでも調整することができる。
【0079】
さらに、制御部170は、機構制御回路154により、ステージ制御回路150を制御して、このステージ制御回路150がステージ駆動手段50を駆動制御することで、電子ビームBの焦点位置が所定フィールド内の中央部に位置するようにXYZステージ30が移動される。これにより、適切化された電子ビームBが所定フィールド内の所定描画位置に照射される。
【0080】
(周波数重畳回路)
次に、本発明の特徴部分である副偏向部112b、より詳細には、副偏向部112bを構成する周波数重畳回路について、図11を参照しつつ説明する。
【0081】
図11に示すように、副偏向部112bは、高速D/A変換機114bからの入力に基づいて、予め当該装置において定義されるX方向に関する偏向信号、より詳細には、X方向に関する“+”と“−”の位相の偏向信号を偏向器20の対向配置される偏向板21a、21bの各々に出力する入出力回路113a、113bと、X方向と直交するY方向に関する偏向信号、より詳細にはY方向に関する“+”と“−”の位相の偏向信号を偏向器20の対向配置される偏向板21c、21dの各々に出力する入出力回路113c、113dと、これら入出力回路113a、113b及び入出力回路113c、113dの内、何れかの位相側(本例においては、“−”の位相側である入出力回路113b、113d)に入力される信号に対して、特定の周波数を有する周波数信号(例えば高周波信号)を重畳する周波数重畳回路115と、を含んで構成されている。因みに、入出力回路113b、113dは、高速D/A変換機114bから入力され、入出力回路113a、113cを経由した電子ビームBの偏向信号と、周波数重畳回路115からの周波数信号とを加算処理することで、これらを重畳すると共に、その極性を反転させる。また、これら入出力回路113b、113dは、通常の演算回路によって構成することができる。
【0082】
尚、高周波重畳回路115及び入出力回路113b、113dで、本発明の「周波数重畳手段」を構成する。
【0083】
上述したように、制御部170は、電子銃制御部104、電界制御回路118及びレンズ制御部108などの制御を行うことで、描画を行う際のプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径を適切化した上で、機構制御回路154により、ステージ制御回路150を制御して、このステージ制御回路150がステージ駆動手段50を駆動制御することで、電子ビームBの焦点位置が所定フィールド内の中央部に位置するように、言い換えれば、所定フィールド内の中央部に電子銃12の電子ビームの出射位置が位置するようにXYZステージ30を移動する。
【0084】
このような準備が行われた上で、電子銃12から電子ビームが照射されると、電子ビームは、電子レンズ16を介して偏向器20により偏向され、偏向された電子ビームBは、XYZステージ30上の被描画対象である基材2の表面、即ち、曲面部2a上の所定フィールド内の所定位置に対して照射される。この際、電子ビームBは、上述の偏向器20により偏向され、例えばフィールド内を副走査方向にシフトしつつ順次主走査方向に走査されることで(所定フィールド毎に、主走査方向の電子ビームの走査を副走査方向に繰り返すことで)、所定パターンの描画が行われる。
【0085】
ここで、例えば基材2の曲面部2aにブレーズ形状の回折構造を成形する場合には、1フィールド内において、制御部170による制御の下、上述のような構成を有する副偏向部112bによって、以下に説明するような電子ビームの描画が行われる。
【0086】
尚、以下においては、上述した“予め当該装置において定義されるX方向”と“X方向と直交するY方向”は、それぞれ電子ビームBの主走査方向と副走査方向に一致することとする。これに伴い、X方向に関する偏向信号は、本発明の「第1の入力信号」に対応することになる。また、Y方向に関する偏向信号は、本発明の「第2の入力信号」に対応することになる。
【0087】
上述したように、所定フィールド内の中央部に電子銃12の電子ビームの出射位置が位置するようにXYZステージ30を移動した上で、基材2の曲面部2a上の所定フィールド内における所定位置に対して電子ビームを照射する場合には、電子ビームBは、電子銃12の電子ビームの出射位置から当該所定位置までの距離の違いにより僅かながらにも収差を生じ、各位置において、基材2の曲面部2a上のレジスト層Lに対して、図12に示すような状態で照射されることとなる。但し、図12においては、電子銃12の電子ビームの出射位置の直下に位置する基材2の電子ビームBの副走査方向における断面図を示しており、以下においては、この基材2の電子ビームBの副走査方向における電子ビームBの照射状態について説明する。
【0088】
図12に示すように、例えば電子銃12より照射される電子ビームBのビームウエストBWが、図における中央に位置する基材2の曲面部2a上のレジスト層Lの表面に一致するように、その焦点位置が調整される場合には、当該位置が電子ビームBのジャストフォーカス位置になる(尚、当該位置は、電子銃12の電子ビームの出射位置の直下に位置するものとする)。すると、図における左側に位置する基材2の曲面部2a上のレジスト層Lの表面においては、当該位置が電子ビームBのジャストフォーカス位置よりも高い場所に位置するため、電子ビームBはジャストフォーカス位置よりも手前側の位置で照射され、ジャストフォーカス位置でなくなる。同様に、図における右側に位置する基材2の曲面部2a上のレジスト層Lの表面においては、当該位置が電子ビームBのジャストフォーカス位置よりも低い場所に位置するため、電子ビームBはジャストフォーカス位置よりも奥側の位置で照射され、ジャストフォーカス位置でなくなる。因みに、基材2の曲面部2a上のジャストフォーカス位置でなくなる部分においては、電子ビームBのビーム径は、ジャストフォーカス位置である部分と比較してより大きくなる。これは、図9に示すように、電子レンズ16を介して照射される電子ビームBのビーム径は、ビームウエストBWの位置において最も細くなるからである。
【0089】
尚、上述した電子ビームBのジャストフォーカス位置になる部分とジャストフォーカス位置でなくなる部分の関係は、上述したように、電子銃12の電子ビームの出射位置が、当該フィールド内の中央部に位置するように位置調整されることから、基材2の電子ビームBの主走査方向に関しても同様に生じることになる。
【0090】
このように、基材2の曲面部2a上のレジスト層Lにおいてジャストフォーカス位置で描画される部分とデフォーカス位置で描画される部分とが生じると、ジャストフォーカス位置で描画された部分とデフォーカス位置で描画された部分とでは、現像後に得られるレジスト形状、即ち、ブレーズ3の側壁部3aや傾斜部3bの形状が一様でなくなるため、これを改善する必要がある。
【0091】
そこで、当該電子ビーム描画装置1においては、図13に示すように、電子ビームBを副走査方向(図におけるY方向)に振ることにより、電子ビームを蛇行させつつ主走査方向(図におけるX方向)に走査すると同時に、フィールド内における基材2の(曲面部2aの)形状に応じて、その蛇行の度合いを調整することで、現像後に得られるブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの形状を一様にする描画を行うこととする。
【0092】
より詳細には、図14に示すように、副偏向部112bの周波数重畳回路115によって、電子ビームBの副走査方向であるY方向に関する偏向信号、より詳細には、入出力回路113dに入力されるY方向に関する偏向信号に対して、周波数信号を重畳することで、図13に示すように、電子ビームBを被描画層であるレジスト層Lにおいて、図におけるY方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながらX方向に走査する。
【0093】
但し、上述の周波数信号は、フィールド内における基材2の(曲面部2aの)形状に対応して、振幅が制御されたものとなっており、図13に示すように、電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅が、電子ビームの出射位置からフィールド内における基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整される。これにより、現像後に得られるブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの形状を一様にすることができる。尚、この周波数信号の振幅の調整の詳細については後述する。
【0094】
尚、本例においては、X方向と電子ビームBの主走査方向とが一致しているので、X方向に関する偏向信号、より詳細には、入出力回路113bに入力されるX方向に関する偏向信号に対して周波数信号を重畳する必要はない。
【0095】
ところで、当該電子ビーム描画装置1においては、基材2の曲面部2aにブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bを描画する場合に、従来の場合と比べて電子ビームを走査する走査回数を少なくすることができる。これは、図15(A)、(B)から明らかなように、電子ビームBを、図におけるY方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながらX方向に走査する場合には、例えビームウエストBWの幅Dが、従来におけるビームウエストBWの幅Dと同様の値であっても、それ以上の範囲を描画することができるからである。
【0096】
即ち、当該電子ビーム描画装置1においては、ブレーズ3の傾斜部3bを描画する際に、電子ビームBを副走査方向(Y方向)に振ることにより、電子ビームを蛇行させながら主走査方向(X方向)に走査することで、あたかも電子ビームを従来よりも太いビーム径にて走査したのと同様の効果を得ることができると共に、1フィールド内における基材2の(曲面部2aの)形状、具体的には、高さ位置に応じて、電子ビームBをY方向に振ることにより、電子ビームBを蛇行させる際の、電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅を、電子ビームの出射位置からフィールド内における基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整することで、上述した1フィールド内における基材2の(曲面部2aの)形状に起因する電子ビームBのビーム径のバラツキを補正して、結果として、現像後に得られるブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの形状を一様にすることができる。
【0097】
因みに、このように電子ビームBをY方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながらX方向に走査する場合であっても、電子ビームBをX方向に走査する速度は、従来の場合と同様である。これは、電子ビームBの主走査方向であるX方向に関する偏向信号、より詳細には、入出力回路113a、113bに入力されるX方向に関する偏向信号に関しては、従来と変わりはないからである。
【0098】
従って、当該電子ビーム描画装置1においては、電子ビームBを副走査方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながら走査することで、描画を行う際の電子ビームBの走査回数を減少させることができ、より短時間で描画を終了させることができる。また、走査回数を従来の場合と同等とした場合においても、より滑らかな形状を得る効果が得られる。
【0099】
ところが、このような場合には、被描画層であるレジストLの単位面積当たりのドーズ量は低下するため、制御部170の制御の下、電子銃制御部104が、電子銃電源部102における電流、電圧などを調整制御することで、電子銃12から照射される電子ビームBの照射量を調整(多く)して、ドーズ量を従来の場合と同等にする。
【0100】
さらに、当該電子ビーム描画装置1においては、上述した電子ビームBの副走査方向であるY方向に関する偏向信号に対して重畳する周波数信号の振幅に応じて、隣接する電子ビームBの走査ピッチ(描画間隔)を調整する制御を行う。尚、この走査ピッチの調整の詳細については後述する。
【0101】
図11に戻って、周波数重畳回路115は、制御部170からのゲイン外部コントロール信号に従って、入出力回路113b、113dに入力される信号に重畳する周波数信号の振幅を各々調整する可変ゲイン回路117a、117bと、入出力回路113b、113dに入力される信号に重畳する周波数信号の周波数を調整する可変周波数回路119と、を含んで構成されている。因みに、可変ゲイン回路117a、117bは、可変抵抗減衰器などによって構成することができる。また、可変周波数回路119は、VCO(Valtage Control Oscillator)などによって構成することができる。
【0102】
尚、可変ゲイン回路117a、117b及び制御部170は、本発明の「振幅調整手段」を構成する。
【0103】
これにより、当該電子ビーム描画装置1においては、図13に示すように、電子ビームBを被描画層であるレジスト層Lにおいて、図におけるY方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながらX方向に走査する際の走査線の軌跡に関する振幅を調整することができる。
【0104】
より詳細には、例えば、可変ゲイン回路117bによって、1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の(曲面部2aの)高さ位置に応じて、電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅が、電子ビームの出射位置から1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように、電子ビームBの副走査方向であるY方向に関する偏向信号、より詳細には、入出力回路113dに入力されるY方向に関する偏向信号に対して重畳される周波数信号の振幅を調整することで、図13に示すように、電子ビームBを被描画層であるレジスト層Lにおいて、図におけるY方向に振ることにより、電子ビームを蛇行させながらX方向に走査する際の走査線の軌跡に関する振幅を適切に調整することができる。
【0105】
尚、電子ビームBの副走査方向であるY方向に関する偏向信号、より詳細には、入出力回路113dに入力されるY方向に関する偏向信号に対して重畳される周波数信号は、所謂、高周波信号であり、偏向器20の応答周波数帯域(カットオフ周波数)に近いため、例えば可変周波数回路119によって、電子ビームBを被描画層であるレジスト層Lにおいて、図におけるY方向に振ることにより、電子ビームBを蛇行させながらX方向に走査する際の走査線の軌跡に関する周波数を調整することも可能である。
【0106】
尚、上述したように、入出力回路113b、113dに入力される信号に重畳する周波数信号の振幅は、制御部170からのゲイン外部コントロール信号に従って、可変ゲイン回路117a、117bが調整する。
【0107】
この際、制御部170は、1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の(曲面部2aの)高さ位置に関する情報を、予めメモリ160にその他の情報161dとして格納された基材2の厚み分布情報より得て、さらに、プログラムメモリ162に格納された処理プログラムに従って演算処理を行うことで、電子銃12の電子ビームの出射位置から1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離を算出して、さらに、その距離に対応する周波数信号の振幅を算出して(この際、周波数信号の振幅は、電子ビームの出射位置からフィールド内における基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整される。)、その振幅に関する情報を上述のゲイン外部コントロール信号として可変ゲイン回路117a、117bに送信する。
【0108】
ところで、制御部170は、上述の可変ゲイン回路117bによる電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅の調整に関する制御に加えて、隣接する電子ビームBの走査ピッチ(描画間隔)を調整する制御を行う。具体的には、制御部170は、電子ビームの走査間隔を、ビームウエストBWの幅と、電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅と、電子ビームBの走査線の軌跡に関する周波数とから決定される近接効果による影響(描画影響範囲)を鑑みて、互いの描画影響範囲が重なることなく、且つ、描画影響範囲から漏れる部分が無くなる値に決定する。因みに、このビームウエストBWの幅と、電子ビームBの走査線の軌跡に関する振幅及び周波数から決定される近接効果による影響、即ち、描画影響範囲に関する情報は、予め、メモリ160にその他の情報161dとして格納されている。
【0109】
この際、制御部170は、上述した周波数信号の振幅及び周波数に関する情報と、メモリ160に、その他の情報161dとして格納される描画影響範囲に関する情報とに基づいて、プログラムメモリ162に格納された処理プログラムに従って演算処理を行うことで、隣接する電子ビームBの描画間隔を算出して、さらに、電界制御回路118を制御することで、その描画間隔に電子ビームBの走査ピッチを調整する制御を行う。
【0110】
(描画処理)
ここで、当該電子ビーム描画装置1の制御部170による描画処理の流れについて、図16及び図17に示すフローチャートを参照しつつ説明する。尚、本例においては、基材2の曲面部2aにブレーズ形状の回折構造を描画する場合を例に挙げるが、例えば基材の一面は、平面等であっても良い。また、回折格子構造は、バイナリー形状であっても良い。このような場合にも同様の効果を得ることができる。
【0111】
<取得ステップ:その1>
図16に示すように、制御部170は、まず、描画を行う事前準備として、予め測定情報入力部158にて入力された、若しくは、予め制御回路100と接続される不図示のネットワークを介してデータ転送された基材2の厚み分布情報をメモリ160にその他の情報161dとして格納する(これにより、基材の形状データが取得される。)(S00)。
【0112】
次に、制御部170は、1フィールド内の各重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)に対して照射される電子ビームBのビーム径の測定を行う(S01)。尚、この電子ビームBのビーム径は、例えばライン描画やスポット描画を行った基材の被描画層であるレジスト層の現像後の形状から判断することにしても良い。
【0113】
次に、制御部170は、この電子ビームBのビーム径の測定結果と、予めメモリ160にその他の情報161dとして格納された基材2の厚み分布情報、より詳細には、1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の(曲面部2aの)高さ位置に関する情報とに基づいて、プログラムメモリ162に格納された処理プログラムに従って演算処理を行うことで、電子銃12の電子ビームの出射位置から1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離を算出して、さらに、その距離に対応する(電子ビームの出射位置からフィールド内における基材2の被描画面(曲面部2a上のレジスト層Lの表面)までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整される)周波数信号の振幅を算出することで、1フィールド内における重畳量分割フィールドの各々に対応する重畳量補正テーブルを作成する(S02)。尚、此処に言う重畳量補正テーブルとは、具体的には、フィールド内の各重畳量分割フィールドにおいて電子ビームBを走査する際に、上述した電子ビームBを偏向させるための偏向信号に対して重畳する周波数信号の振幅を補正する補正値を規定するためのものであって、フィールド内の各重畳量分割フィールドと、その重畳量分割フィールドにおいて電子ビームBを走査する際に、電子ビームBを偏向させるための偏向信号に対して重畳する周波数信号の基準となる振幅に対する補正値とを関連付けたテーブルのことである。因みに、周波数信号の基準となる振幅とは、フィールド内の中央部に位置する重畳量分割フィールドにおいて電子ビームBを走査する際に、電子ビームBを偏向させるための偏向信号に対して重畳する周波数信号の振幅のことである。
【0114】
次に、制御部170は、この重畳量補正テーブル164をメモリ160に格納する(S03)。
【0115】
このような事前準備が行われた後、制御部170は、基材2の曲面部2aにブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bを描画する処理を行う。
【0116】
<取得ステップ:その2>
図17に示すように、制御部170は、まず、メモリ160の形状記憶テーブル161に格納されるドーズ分布情報161a及びビーム径情報161bに基づいて、パターン発生回路120により描画パターンに関する情報(描画パターンデータ)を作成する(S04)。これにより、基材及び描画パターンの形状データが取得される。
【0117】
<区分ステップ>
さらに、制御部170は、メモリ160に格納されるフィールド区分情報に基づいて、ブレーズ3を描画するためのフィールドの分割を行う。これにより、各フィールドに関する描画パターンが作成される(S05)。
【0118】
<走査ピッチ調整ステップ>、<信号生成ステップ>
この際、制御部170は、プログラムメモリ162に格納された処理プログラムに従って演算処理を行うことで、ブレーズ3に関する描画データ、具体的には、ブレーズ3の形状に応じたドーズ量を算出して、さらに、このドーズ量に基づいて、各フィールドに関するプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径に関する設定を行う。即ち、この際、走査ピッチは、周波数信号の振幅に応じて調整されると共に(S06)、電子ビームBを偏向させるための偏向信号(上述したX方向及びY方向に関する偏向信号)などが生成される(S07)。
【0119】
次に、制御部170は、ステージ制御回路150を制御することで、ステージ駆動手段50の駆動制御を行い、XYZステージ30を所望の位置に移動する。即ち、電子銃12の電子ビーム出射位置が第1のフィールドの中央部に位置するようにXYZステージ30を移動する(S08)。
【0120】
<周波数調整ステップ>
次に、制御部170は、この第1のフィールド内における描画位置、即ち、第1の重畳量分割フィールドの位置を算出する(S09)。さらに、メモリ160に格納される重畳量補正テーブル164を参照することで、この第1の重畳量分割フィールドに対応する重畳量の補正値を決定して、電子ビームBを偏向させるための偏向信号に対して重畳する周波数信号の重畳量に変更があるか否かを判断する(S10)。ここで、変更する必要があった場合には(S10、Yes)、その第1の重畳量分割フィールドに対応する重畳量の補正値に基づいて、周波数信号の重畳量、即ち、振幅の変更を行う(S11)。
【0121】
<走査ステップ>
次に、制御部170は、上述したプローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径に基づいて、電子銃制御部104、電界制御回路118及びレンズ制御部108などの制御を行うことで、プローブ電流、走査ピッチ及び電子ビームBの径を適切化して描画を開始する(S12)。
【0122】
次に、制御部170は、この第1のフィールド内における全ての重畳量分割フィールドにおいて全ての領域の描画が完了したか否かを判断する(S13)。ここで、描画が完了していない領域があった場合には(S13、No)、当該領域について、上述の焦点位置の制御を行いつつ、XYZステージ30を所望の高さに移動し、同様の走査による描画処理を行う(S09〜S12)。
【0123】
以降、S09からS13までの工程が、第1のフィールド内における全ての描画が完了するまで繰り返される。
【0124】
そして、第1のフィールド内における全ての描画が完了すると(S13、Yes)、制御部170は、全てのフィールドにおける全ての描画が完了したか否かを判断する(S14)。当然、全てのフィールドにおける全ての描画は完了していないので(S14、No)、次のフィールド内における描画へと以降する(S15)。具体的には、制御部170は、ステージ制御回路150を制御することで、ステージ駆動手段50の駆動制御を行い、XYZステージ30を所望の位置に移動する。即ち、電子銃12の電子ビーム出射位置が第2のフィールドの中央部に位置するようにXYZステージ30を移動する。
【0125】
以降、S09からS15までの工程が、全てのフィールドにおける全ての描画が完了するまで繰り返される。
【0126】
このようにして、全てのフィールドにおける全ての描画が終了すると(S14、Yes)、基材2の曲面部2aにブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bを描画する処理は終了する。
【0127】
[金型の製造方法]
上述においては、本発明に係る電子ビーム描画装置によって、基材上に回折光子などの精密加工を施す工程について開示したが、以下においては、上述の工程を含むプロセス全体の工程、即ち、光学素子等の光レンズを成形によって製造するための金型を製造する工程について、図18を参照しつつ説明する。
【0128】
まず、機械加工により金型(無電解ニッケル等)の加工を行う(加工工程)。次に、図18(A)に示すように、金型により所定の曲面からなる母光学面を有する基材200Aを樹脂成形する(樹脂成形工程)。さらに、基材200を洗浄した後に乾燥を行う。
【0129】
<形成ステップ>
次いで、基材200の表面処理を行う(樹脂表面処理工程)。この工程では、例えばAu蒸着などの工程を行うこととなる。具体的には、図18(B)に示すように、基材200の位置決めを行い、レジストLを滴下しつつスピナーを回転させて、スピンコートを行う。また、プリペークなども行う。これにより、母光学面上にレジスト膜が形成された基材200Bが得られる。
【0130】
スピンコーティングの後には、当該レジスト膜の膜厚測定を行い、レジスト膜の評価を行う(レジスト膜評価工程)。さらに、図18(C)に示すように、当該基材200BをX、Y、Z軸にて各々制御しつつ、基材200Bの位置決めを行い、基材200B上に形成すべき所定の構造(ここでは回折格子構造)に応じて、当該レジスト膜に電子ビームBによる描画(露光)を行う。
【0131】
<現像ステップ>
次に、基材200B上のレジスト膜Lの表面平滑化処理を行う(表面平滑化工程)。さらに、図18(D)に示すように、基材200Bの位置決めなどを行いつつ、現像処理を行う(現像工程)。この際、電子ビームBの描画による描画影響範囲、即ち、露光部分が取り除かれ、基材200Bの母光学面上に所定の構造パターン202が形成される。さらに、表面硬化処理を行う。
【0132】
次いで、SEM観察や膜厚測定器などにより、レジスト形状を評価する工程を行う(レジスト形状評価工程)。
【0133】
<エッチングステップ>
ここで、所定の形状を得るためにエッチングが必要な場合、即ち、現像工程において得られたレジスト形状を、さらにエッチングすることにより所定の形状を得る場合には、ドライエッチングなどによりエッチング処理を行う。このようにして、所定の構造を有する金型のマスターとなる母型が得られる。
【0134】
<電鋳ステップ>
そして、母型200Cのレジスト表面への金属の蒸着を行い、金型電鋳前処理を行う(金属蒸着工程)。次に、図18(E)に示すように、表面処理がなされた母型200Cに対し、電鋳処理などを行い、母型200C上の所定の構造が転写された電鋳部材203を作成する。
【0135】
次に、図18(F)に示すように、母型200Cと電鋳部材203とを剥離する処理を行い、また、外形を加工することにより金型204を得る。
【0136】
表面処理がなされた母型200Cと剥離した金型204に対して、表面処理を行う(金型表面処理工程)。そして、金型204の評価を行う。
【0137】
以上のようにして、後述する光学素子を射出成形するための成形型を容易に製造することができる。
【0138】
[光学素子の製造方法]
上述においては、光学素子等の光レンズを成形によって製造するための金型を製造する工程について説明したが、以下においては、上述の工程を含むプロセス全体の工程、即ち、光学素子等の光レンズを成形によって製造する工程について、図19を参照しつつ説明する。
【0139】
上述した評価後の金型204を用いて、図19(A)に示すように、成形品300を得るための樹脂成形を行う(樹脂成形工程)。次に、図19(B)に示すように、当該成形品300を洗浄した後に乾燥を行う。さらに、当該成形品300の評価を行う。ここで評価が良しとされれば、当該成形品300は、製品としての光学素子とされる。
【0140】
以上のようにして、光学素子を容易に製造することができる。
【0141】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る電子ビーム描画方法によれば、より短い時間をもって描画を行い、且つ、電子ビームの所定描画領域内における基材の形状に影響されることなく、その描画形状を均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学素子の原型である基材の一実施形態における概略構成について説明するための説明図である。
【図2】図1に示す基材の要部を詳細について説明するための説明図である。
【図3】電子ビーム描画装置の一実施形態における全体構成について説明するための説明図である。
【図4】図1に示す電子ビーム描画装置の測定装置における測定原理について説明するための説明図である。
【図5】同図(A)〜(C)は、基材の面高さを測定する手法について説明するための説明図である。
【図6】図1に示す電子ビーム描画装置の測定装置の投光及び受光の関係について説明するための説明図である。
【図7】測定装置の受光部からの信号出力と基材の高さとの関係を示す特性図である。
【図8】同図(A)(B)は、図1に示す電子ビーム描画装置にて描画される基材を示す説明図であり、同図(C)は、その描画原理を説明するための説明図である。
【図9】電子ビームのビームウエストについて説明するための説明図である。
【図10】図1に示す電子ビーム描画装置の制御系の詳細を表す機能ブロック図である。
【図11】図1に示す電子ビーム描画装置の副偏向部を含む周辺部の構成について説明するための説明図である。
【図12】電子ビームをフィールド内における基材の各描画位置に照射する場合に、電子ビームの収差によって、電子ビームの径にバラツキが生じること説明するための説明図である。
【図13】図1に示す電子ビーム描画装置において行われる電子ビームの描画方法の一例について説明するための説明図である。
【図14】図1に示す電子ビーム描画装置の副偏向部において、周波数重畳回路によって偏向信号に対して周波数信号が重畳される過程について説明するための説明図である。
【図15】同図(A)は、従来の電子ビームの走査における描画範囲について説明するための説明図であり、同図(B)は、図1に示す電子ビーム描画装置において行われる電子ビームの走査における描画範囲について説明するための説明図である。
【図16】図1に示す電子ビーム描画装置によって描画が行われる際の制御部における描画処理の流れについて説明するフローチャートである。
【図17】図1に示す電子ビーム描画装置によって描画が行われる際の制御部における描画処理の流れについて説明するフローチャートである。
【図18】同図(A)〜(F)は、基材を用いて成形用の金型を形成する場合の全体の処理手順を説明するための説明図である。
【図19】同図(A)〜(B)は、金型を用いて光学素子を成形する場合の全体の処理手順を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 電子ビーム描画装置
2 基材
2a 曲面
3 ブレーズ
3a 側壁部
3b 傾斜部
3c 溝部
12 電子銃
16 電子レンズ
18 アパーチャー
20 偏向器
21a〜21d 偏向板
30 XYZステージ
50 ステージ駆動手段
100 制御回路
112b 副偏向部
113a〜113d 入出力回路
115 周波数重畳回路
116 位置誤差補正回路
117a、117b 可変ゲイン回路
118 電界制御回路
119 可変周波数回路
120 パターン発生回路
150 ステージ制御回路
154 機構制御回路
160 メモリ
161 形状記憶テーブル
161a ドーズ分布情報
161b ビーム径情報
161c フィールド区分情報
161d その他の情報
162 プログラムメモリ
163a 処理プログラム
163c その他の処理プログラム
164 重畳量補正テーブル
170 制御部
181 設定手段
182 表示手段
B 電子ビーム
BW ビームウエスト
L レジスト層

Claims (17)

  1. 被描画対象である基材に対して、所定の描画領域毎に電子ビームを照射し、主走査方向に走査すると共に、前記主走査方向の走査を副走査方向に繰り返すことによって、所定のパターンを描画する電子ビーム描画方法であって、
    前記基材の形状データ及び前記所定のパターンの形状データを取得する取得ステップと、
    前記基材の被描画面を複数の描画領域に区分する区分ステップと、
    前記区分された複数の描画領域の内、所定の描画領域毎に、前記基材の形状データ及び前記所定のパターンの形状データに基づいて、出射される電子ビームを、主走査方向に偏向させるための第1の入力信号と、副走査方向に偏向させるための第2の入力信号を生成する信号生成ステップと、
    前記所定の描画領域における前記基材の形状データに応じた特定の周波数を有する周波数信号を調整する周波数調整ステップと、
    前記第2の入力信号に対して、前記周波数信号を重畳する重畳ステップと、
    前記出射される電子ビームを、前記第1の入力信号に従って偏向させることで主走査方向に走査すると共に、前記周波数信号が重畳された前記第2の入力信号に従って偏向させることで副走査方向に走査する走査ステップと、を含むことを特徴とする電子ビーム描画方法。
  2. 前記周波数信号は、前記所定の描画領域における前記基材の形状に応じて、振幅が調整されることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画方法。
  3. 前記振幅は、前記基材の形状データに基づき、前記電子ビームの出射位置から前記所定の描画領域における前記基材の被描画面までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整されることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム描画方法。
  4. 前記振幅は、前記基材の形状データに基づき、前記所定の描画領域内で、前記電子ビームの走査位置における前記基材の高さに応じて調整されることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム描画方法。
  5. 前記周波数信号の振幅に応じて、前記電子ビームの副走査方向に関する走査ピッチを調整する走査ピッチ調整ステップを、さらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電子ビーム描画方法。
  6. 前記所定のパターンはブレーズ形状を有する回折構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の電子ビーム描画方法。
  7. 前記基材の被描画面は、曲面形状を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の電子ビーム描画方法。
  8. 請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の電子ビーム描画方法によって描画された基材を用いて、光学素子を成形するための金型の母型を製造する母型の製造方法であって、
    前記基材を描画する前に、前記基材上にレジスト膜を形成する形成ステップと、
    前記描画された基材上のレジスト膜を現像し、所定の構造を有する母型を得る現像ステップを含むことを特徴とする母型の製造方法。
  9. 前記現像ステップにおいて現像された基材をエッチング処理するエッチングステップを、さらに含むことを特徴とする請求項8記載の母型の製造方法。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の母型の製造方法によって製造されたことを特徴とする母型。
  11. 請求項10記載の母型を用いて電鋳処理を行い、前記母型上の前記所定の構造が転写された金型を得る電鋳ステップを含むことを特徴とする金型の製造方法。
  12. 請求項11記載の金型の製造方法によって製造されたことを特徴とする金型。
  13. 請求項12記載の金型によって成形されたことを特徴とする光学素子。
  14. 被描画対象である基材に対して、所定のパターンを描画するべく、
    前記基材に対して、所定の描画領域毎に電子ビームを照射するための電子ビーム照射手段と、
    前記電子ビーム照射手段から照射される電子ビームを、第1の入力信号に従って偏向させることで主走査方向に走査すると共に、第2の入力信号に従って偏向させることで前記主走査方向の走査を副走査方向に繰り返す電子ビーム走査手段と、
    前記電子ビーム走査手段に入力される前記第2の入力信号に対して、前記所定の描画領域における前記基材の形状に対応して調整される特定の周波数を有する周波数信号を重畳する周波数重畳手段と、を備えたことを特徴とする電子ビーム描画装置。
  15. 前記周波数重畳手段は、前記所定の描画領域における前記基材の形状に対応して、前記周波数信号の振幅を調整する振幅調整手段を有することを特徴とする請求項14記載の電子ビーム描画装置。
  16. 前記振幅調整手段は、前記周波数信号の振幅を、前記電子ビーム照射手段における前記電子ビームの出射位置から前記所定の描画領域における前記基材の被描画面までの距離が大きくなるにつれ、小さくなるように調整することを特徴とする請求項15記載の電子ビーム描画装置。
  17. 前記周波数信号の振幅に応じて、前記電子ビーム走査手段を制御することで、前記電子ビームの副走査方向に関する走査ピッチを調整する走査ピッチ制御手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項14乃至請求項16の何れか一項に記載の電子ビーム描画装置。
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