JP2004186035A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池特性を向上させ、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制させる。
【解決手段】負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性が高められ、負極合剤層12に非水電解液8を適切に含浸させることにより、負極4のインピーダンスを小さくできることから、電池特性を向上させ、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制させる。
【選択図】 図1
【解決手段】負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性が高められ、負極合剤層12に非水電解液8を適切に含浸させることにより、負極4のインピーダンスを小さくできることから、電池特性を向上させ、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極、負極及び非水電解質を備え、負極が合金からなる負極活物質を有している非水電解質電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年においては、例えばノート型パーソナルコンピュータ、携帯型電話機、カメラ一体型VTR(video tape recorder)等の電子機器の電源として、軽量で高エネルギー密度な二次電池の開発が進められている。この高いエネルギー密度を有する二次電池としては、例えば鉛電池やニッケルカドミウム電池等よりも大きなエネルギー密度を有し、負極に炭素質材料等を用いたリチウムイオン二次電池がある。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、負極に用いる炭素質材料、具体的には例えば黒鉛等の黒鉛層間にリチウムイオンをインターカレーションさせる反応を電池反応に用いている。このため、リチウムイオン二次電池では、負極活物質にリチウムのドープ/脱ドープが可能な炭素質材料が用いられる。これにより、リチウムイオン二次電池では、充電時に負極にリチウムが析出することが抑制されて、優れた充放電サイクル特性が得られる。
【0004】
ところで、このリチウムイオン二次電池では、炭素質材料へのリチウムイオンのインターカレーションによる負極側の容量に限界があることから、更なる高容量化が困難となっている。この問題を解決することについては、例えば炭素質材料及びその製造方法を選択することで高容量化を図れる炭素質材料が提案されている(例えば、参考文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、このリチウムイオン二次電池では、以上のような炭素質材料を負極に用いた場合、リチウムに対する負極の放電電位が0.8V〜1.0V程度となり、放電電圧が低く、エネルギー密度を向上させることが困難となる。また、このリチウムイオン二次電池では、放電電位の曲線形状におけるヒステリシスが大きく、充放電を繰り返した際の各放電時のエネルギー効率が低くなってしまう。
【0006】
このような問題を解決するリチウム二次電池としては、負極活物質に炭素質材料ではなく例えばある種のリチウム合金を用い、このリチウム合金が電気化学的に可逆的に生成/分解する反応を応用させることで充放電を行う電池がある。
【0007】
この負極活物質にリチウム合金を用いることについては、例えばLi−Al合金やLi−Si合金等を負極活物質として用いることがすでに知られ、負極活物質としてSiを含有する合金が好適であることが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0008】
しかしながら、負極にリチウム合金を用いたリチウム二次電池では、充放電に伴うリチウム合金の膨張収縮が大きく、充放電の繰り返しによるリチウム合金の膨張収縮の繰り返しでリチウム合金が崩壊して電池特性が劣化することがある。
【0009】
具体的に、リチウム二次電池において、リチウム合金を用いた負極では、充放電に伴う膨張収縮により負極活物質の粒子に亀裂が生じ、この亀裂が充放電に伴う膨張収縮で開閉するが、亀裂の内部表面に例えば電解質等との反応によりリチウム酸化物等の副生成物が蓄積すると、充放電に伴う亀裂の開閉が困難になる。このため、このリチウム二次電池では、充放電に伴い負極活物質の粒子に更なる亀裂が生じ、この亀裂の内部表面にも副生成物が順次蓄積することから、充放電が繰り返されることで負極活物質の粒子に次々と亀裂が生じて負極活物質が微粉化し、充放電に関与しない不可逆な負極活物質が増える負極の劣化で電池特性が低下してしまう。
【0010】
また、このリチウム二次電池では、充放電によるリチウム合金の膨張収縮で負極に含浸された非水電解液が押し出され、充放電が繰り返されることで負極中の非水電解液が徐々に欠乏して電池容量が低下、すなわち充放電サイクル特性が劣化することがある。
【0011】
この充放電に伴う膨張収縮が抑制されたリチウム合金や化合物としては、例えばLixSiOy(x≧0、2>y>0)等を負極活物質として用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0012】
また、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えばLixSi1−yMyOz(x≧0、1>y>0、0<z<2)等を用いることも提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0013】
さらに、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えばLi−Ag−Te系合金を用いることも提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0014】
さらにまた、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えば炭素を除く4B族元素に非金属元素を含有させた化合物等も提案されている(例えば、特許文献6を参照。)。
【0015】
【特許文献1】
特開平8−315825号公報
【特許文献2】
米国特許第4650566号明細書
【特許文献3】
特開平6−325765号公報
【特許文献4】
特開平7−230800号公報
【特許文献5】
特開平7−288130号公報
【特許文献6】
特開平11−102705号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの提案でも、非水電解液を負極に適切に含浸させることは難しく、充放電の繰り返しに伴う電池容量の低下、すなわち充放電サイクル特性の劣化を大幅に改善させることは困難であり、高容量化が可能な負極活物質の特徴を生かし切れていないのが現状である。
【0017】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、充放電サイクル特性に優れた非水電解質電池を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る非水電解質電池は、リチウムの吸蔵/放出が可能な正極活物質を有する正極と、B,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Pb,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのうち何れか2種類以上の元素を含み、リチウムの吸蔵/放出が可能な合金からなる負極活物質を含有する負極合剤を有する負極と、電解質塩を有する非水電解質とを備え、負極における負極合剤全体に対して非イオン性界面活性剤を0.7重量%以下含有していることを特徴としている。
【0019】
この非水電解質電池では、負極における負極合剤に非イオン性界面活性剤を0.7重量%以下含有させることで、負極合剤に非水電解質の非水溶媒が適切に含浸されて負極合剤全体に非水電解質が行き渡るようになり、充放電が繰り返しで負極合剤中の非水電解質が欠乏してしまうことが抑制されることから電池特性を向上できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した非水電解質電池について図1に示すコイン型のリチウム二次電池(以下、電池と記す。)を参照にして説明する。この電池1は、円盤状の正極2と、この正極2を収容する正極缶3と、円盤状の負極4と、この負極4を収容する負極缶5と、正極2及び負極4の間に配されたセパレータ6と、正極缶3と負極缶5との間を絶縁する絶縁ガスケット7と、非水電解液8とを有している。
【0021】
正極2は、正極集電体9上に、正極活物質を含有する正極合剤層10が形成されている。この正極2には、正極活物質として例えば化学式LixMO2(xは0.5以上、1.1以下の範囲であり、Mは遷移金属のうちの何れか一種又は複数種の化合物である。)等の化学式で示されるリチウム複合酸化物、TiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを含有しない金属硫化物、金属酸化物、或いは特定のポリマー等を用いる。これらのうち、リチウム複合酸化物としては、例えばLiCoO2、LiNiO2、LixNiyCo1−yO2(x、yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x<1、0.7<y<1.02である。)等の化学式で示されるリチウム遷移金属複合酸化物や、LiMn2O4の化学式で示されるスピネル型リチウム・マンガン複合酸化物等が挙げられる。そして、正極2では、正極活物質として、上述した金属硫化物、金属酸化物、リチウム複合酸化物等のうちの何れか一種又は複数種を混合して用いることも可能である。
【0022】
また、正極2には、正極集電体9として例えば網状や箔状のアルミニウム等が用いられる。正極2においては、正極合剤層10に含有される結合剤として、この種の非水電解質電池に通常用いられている公知の樹脂材料を用いることができる。具体的には、結合剤として例えばポリフッ化ビニリデン等を用いる。また、正極2においては、正極合剤層10に含有される導電材として、この種の非水電解質電池に通常用いられている公知のものを用いることができる。具体的には、導電材として例えばカーボンブラック、グラファイト等を用いる。
【0023】
正極缶3は、正極2を収容する底の浅い皿状、いわゆるシャーレ状の導電性金属からなる容器であり、電池1の外部正極となる。具体的に、この正極缶3には、正極2が収納された際に、正極2側から例えばアルミニウム、ステンレス、ニッケルが厚み方向に順次積層された積層構造の金属容器等を用いる。
【0024】
負極4は、負極集電体11上に、負極活物質及び非イオン性界面活性剤を含有する負極合剤層12が形成されている。負極4に含有される負極活物質としては、電池容量を大きくさせることが可能であり、且つリチウムの吸蔵/放出が可能な合金等を用いる。具体的には、例えばB,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Pb,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn等のうち何れか2種類以上の元素を含む合金等が挙げられ、特にCo−Sn系合金、Fe−Sn系合金、Cu−Sn系合金、Fe−Sn−Ni系合金、Co−Sn−Ai系合金、Mg−Sn系合金、Mn−Sn系合金等、Snを含有する合金を用いることが好ましい。また、Snを含有する合金の他に、例えばCu−Si−In系合金、Mg−Si系合金、Ni−Si系合金、Ti−Si系合金、Cu−Si系合金、Fe−Si系合金、Mn−Si系合金、Zn−Si系合金等、Siを含有する合金等も好適である。
【0025】
負極活物質として用いる合金は、例えば合金の原料を不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で所定の温度で所定の時間、加熱処理する等して合成されるが、このような合成方法に限定されることなく、様々な手法で合成されても良い。具体的には、例えばメカニカルアロイニング法、メルトスピニング法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法等により合成される。そして、これらの方法で合成される化合物は、粉砕して粉末にしてもよいが、粉砕せずに固形物で用いることもできる。また、負極活物質として用いる化合物等にリチウムのドープを行う際は、例えば電池製造前或いは後に正極2或いは正極2以外のリチウム源からリチウムを供給して電気化学的にドープさせることや、負極活物質の合成時にリチウムを含有させること等で行われる。
【0026】
負極4において、負極合剤層12には、上述した合金等の他に、例えばリチウムイオンのドープ/脱ドープが可能な炭素質材料等を含有させることもできる。この炭素質材料としては、例えば人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛類、難黒鉛化性炭素、熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス類、ガラス状炭素繊維、フェノール樹脂やフラン樹脂等を適当な温度で焼成して炭素化させた有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。これらの炭素質材料は、負極合剤層12に含有された場合、負極活物質として機能する他に、負極合剤層12の導電性を向上させる導電材としても機能することになる。
【0027】
また、負極4において、負極合剤層12には、例えば非イオン性界面活性剤が含有されている。負極合剤層12に含有される非イオン性界面活性剤としては、例えば下記化1に示すポリオキシエチレンアルキルエーテル、下記化式2に示すポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、これらのうちの一種又は複数種を混合して用いる。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
この非イオン性界面活性剤は、負極合剤層12に含有されることで後述する非水電解液8が適切に負極合剤層12に含浸されるように、負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性を高めるように作用する。
【0031】
そして、この非イオン性界面活性剤は、負極合剤層12全体に対し、0.7重量%以下含有されるようにする。
【0032】
負極合剤層12に含有されていない場合、負極合剤層12に対して非水電解液8を適切に含浸させることが困難となり、負極4のインピーダンスが大きくなって電池特性を低下させてしまう。一方、負極合剤層12全体に対して0.7重量%よりも多く含有させた場合、負極合剤層12に対する非導電性の非イオン性界面活性剤の含有量が多すぎることから、負極合剤層12の導電性を低下させてしまい電池特性の低下が起こる。
【0033】
したがって、負極合剤層12においては、非イオン性界面活性剤を0.7重量%含有させることにより、導電性の低下を抑えつつ非水電解液8の浸透性が高められることから、電池特性を向上させることが可能となる。
【0034】
さらに、負極4において、負極合剤層12には、上述した負極活物質及び非イオン性界面活性剤の他に、例えばこの種の非水電解質電池に通常用いられている公知の樹脂材料からなる結合剤を含有させることで形成される。具体的に、結合剤としては、例えばポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0035】
負極缶5は、負極4を収容するシャーレ状の導電性金属からなる容器であり、電池1の外部負極となる。具体的に、この負極缶5には、例えばステンレスや、表面にニッケルめっきが施された鉄等からなる金属容器を用いる。
【0036】
セパレータ6は、正極2と負極4とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ非水電解液8中のリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ6は、微少な孔を多数有する微多孔性膜からなる。ここで、微多孔性膜とは、孔の平均孔径が5μm以下程度の微孔を多数有する樹脂膜のことである。また、セパレータ6としては、材料として従来の電池に使用されてきたものを利用することが可能である。そのなかでも、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能なポリプロピレン、ポリエチレンやポリオレフィン等からなる微多孔性フィルムを用いる。
【0037】
セパレータ6は、その厚みが5μm以上、50μm以下の範囲にされていると共に、その全体積中における空隙体積の比率を表す空孔率が20%以上、60%以下の範囲にされている。このような条件に合致するセパレータ6では、製造歩留まり、出力特性、サイクル特性、安全性に優れた電池1を得ることが可能となる。
【0038】
絶縁ガスケット7は、負極缶5に組み込まれ一体化された構成となっており、例えばポリプロピレン等の有機樹脂で形成されている。この絶縁ガスケット7は、外部正極となる正極缶3と外部負極となる負極缶5とを絶縁させていると共に、正極缶3及び負極缶5内に充填された非水電解液8の漏出を防止させるように機能することになる。
【0039】
非水電解液8は、例えば非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水溶液である。非水電解液8において、非水溶媒としては、例えば環状の炭酸エステル化合物、水素をハロゲン基やハロゲン化アクリル基で置換した環状炭酸エステル化合物や鎖状炭酸エステル化合物等を用いる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。特に、非水溶媒としては、電圧安定性の点からプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを使用することが好ましい。
【0040】
また、電解質塩としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiCl、LiBr等の化学式で示される塩が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を用いる。
【0041】
そして、このような構成の電池1は、次のようにして製造される。先ず、正極2を作製する。正極2を作製する際は、正極活物質と、導電材と、結合剤とを非水溶媒等に分散させた正極合剤塗液を、正極集電体9となる例えばアルミニウム箔等の金属箔上に均一に塗布、乾燥した後に、圧縮して正極合剤層10を形成する。そして、これら正極集電体9と正極合剤層10とを、例えば円盤状等、所定の形状に一括して切り抜くことにより正極2が作製される。
【0042】
次に、負極4を作製する。負極4を作製する際は、負極活物質と、非イオン性界面活性剤と、結合剤とを非水溶媒等に分散させた負極合剤塗液を、負極集電体11となる例えば銅箔等の金属箔上に均一に塗布、乾燥した後に、圧縮して負極合剤層12を形成する。そして、これら負極集電体11と負極合剤層12とを、例えば円盤状等、所定の形状に一括して切り抜くことにより負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有された負極4が作製される。
【0043】
次に、非水電解液8を調製させる。非水電解液8を調製する際は、例えばLiPF6やLiBF4等の電解質塩を、上述した非水溶媒に溶解させる。次に、正極2が収容され、非水電解液8が注液された正極缶3の開口部と、負極4が収容され、非水電解液8が注液された負極缶5の開口部とを、正極2と負極4との間に、セパレータ6を配置した状態で組み合わせる。
【0044】
このとき、正極缶3と負極缶5との間にできた隙間に絶縁ガスケット7を、正極缶3と負極缶5とが接触することがないように嵌め込む。これにより、電池1は、正極2、セパレータ6、負極4が順次積層された内部構造となる。
【0045】
次に、正極缶3の周縁部を、正極缶3の内径が縮径する方向に変形させて正極缶3の周縁部を絶縁ガスケット7に食い込ませるようにかしめることで、負極缶5を固定する。これにより、正極2、負極4、セパレータ6、非水電解液8が正極缶4及び負極缶5に収容された状態で密閉されることになる。このようにしてコイン型の電池1が製造される。
【0046】
以上のようにして製造される電池1では、負極4における負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤層12に非水電解液8が適切に含浸されて負極合剤層12全体に非水電解液8が行き渡るようになる。これにより、電池1では、負極合剤層12全体に非水電解液8が行き渡ることになり、負極合剤層12の導電性が高められることから、負極4のインピーダンスが小さくなって放電容量を大きくさせる等、電池特性を向上させることができる。
【0047】
また、この電池1では、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有されることで負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性が高められたことにより、例えば充放電により起こる負極活物質の膨張収縮で非水電解液負8が負極合剤層12より押し出されることを抑えることができる。これにより、電池1では、例えば充放電が繰り返された場合でも従来のような負極合剤中の非水電解液が欠乏してしまうことが抑えられ、充放電の繰り返しによる電池容量の低下、いわゆる充放電サイクル特性の劣化を抑制できる。
【0048】
このように、電池1では、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることにより、最も効果的に電池特性を向上でき、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制できる。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、非水電解液8を用いた電池1について説明しているが、このことに限定されることはなく、非水電解液8の代わりに例えばゲル状電解質や高分子固体電解質等を用いた場合も適用可能である。
【0050】
ゲル状電解質は、上述した非水電解液8と、この非水電解液8を吸収してゲル化するマトリックス高分子とからなる。ゲル状電解質に用いるマトリックス高分子としては、例えばポリ(ビニリデンフルオロライド)やポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)等のフッ素系高分子、ポリ(エチレンオキサイド)やこれの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(アクリロニトリル)等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。特に、マトリックス高分子には、酸化還元安定性が良好なフッ素系高分子を用いることが好ましい。
【0051】
具体的に、高分子固体電解質は、例えば上述した電解質塩と、電解質塩を含有することでイオン導電性が付与される高分子化合物とからなる。高分子固体電解質に用いる高分子化合物としては、例えばポリ(エチレンオキサイド)やこの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)等のエステル系高分子、アクリレート系高分子等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。
【0052】
これらのゲル状電解質や高分子固体電解質は、これらを構成する材料を非水溶媒等に分散させて電解質塗液を調製した後に、上述した正極2や負極4の表面に塗布し、非水溶媒を乾燥させることで正極2や負極4の表面に成膜される。そして、負極4においては、その表面にゲル状電解質又は高分子固体電解質を成膜させた場合、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有されていることから、負極合剤層12に電解質塗液が適切に含浸されて負極合剤層12全体にゲル状電解質又は高分子固体電解質が行き渡ることになる。したがって、電池1においては、非水電解液8の代わりに例えばゲル状電解質や高分子固体電解質等を用いた場合も、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させたことによる作用効果を得ることができる。
【0053】
なお、以上の例では、コイン型電池を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば円筒形電池、角型電池、ボタン型電池等といった外装材に金属製容器等を用いた電池、薄型電池といった外装材にラミネートフィルム等を用いた電池等、種々の形状や大きさにすることも可能である。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を適用した非水電解質電池としてコイン型のリチウム二次電池を実際に作製したサンプルについて説明する。
【0055】
〈サンプル1〉
サンプル1では、先ず、負極活物質となる合金として30wt%Co−70wt%Snを合成した。この30wt%Co−70wt%Snを合成する際は、Coと30重量部と、Snを70重量部とを均質になるように混合した混合物を、石英ボートに入れてアルゴン雰囲気中、高周波溶融炉を用いて1050℃に加熱して混合物を溶解した。次に、溶解した混合物を、室温まで冷却することで30wt%Co−70wt%Snを合成した。次に、得られた30wt%Co−70wt%Snをアルゴン雰囲気中ボールミルで粉砕し、分級することで平均粒径が10μmの粉末状の30wt%Co−70wt%Snを作製した。
【0056】
次に、負極を作製した。この負極を作製する際は、以上のようにして得られた30wt%Co−70wt%Snを69.6重量部と、人造黒鉛を20重量部と、カーボンブラックを2重量部と、結合剤として粒径1μm、融点170℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を6重量部と、増粘剤としカルボキシメチルセルロースを2重量部と、非イオン性界面活性剤として和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.4重量部とを純水に均質に分散させて負極合剤塗液を調製し、この負極合剤塗液、厚み10μmの銅箔からなる負極集電体上に均一に塗布、乾燥した後に、ロールプレス機で圧縮して負極合剤層を形成した。そして、負極集電体上に形成された負極合剤層を、負極集電体ごと真空雰囲気中200℃で2時間加熱処理して後に、負極集電体ごと一括して打ち抜いた。このようにして、直径15.5mmの円盤状の負極合剤層に非イオン性界面活性剤が0.4重量%含有された負極を作製した。
【0057】
そして、以上のようにして作製した負極について酸素濃度を測定した。負極の酸素濃度を測定する際は、株式会社堀場製作所製の窒素分析装置EMGA−650を用いた。この装置は、内部の黒鉛ルツボ中で試料を高温に加熱することで試料より発生する一酸化炭素を酸素成分とし、その一酸化炭素を非分散赤外線検出手段で定量することで資料の酸素濃度を測定させるものである。具体的には、秤量した負極を重さが0.3gのNiからなるカプセルに封入した後に、空焚きして表面に付着して不純物となるガス成分を除去した黒鉛ルツボに、分解促進剤となる0.5gのSnペレットと一緒に高温に加熱することで負極の酸素濃度を測定した。
【0058】
次に、正極活物質となるリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を合成した。このLiCoO2を合成する際は、炭酸リチウムと炭酸コバルトとを0.5モル対1モルの比率となるように混合し、空気雰囲気中900℃で5時間焼成した。このようにしてLiCoO2を合成した。次に、得られたLiCoO2を粉砕し、分級することでLiCoO2を粉末状にした。
【0059】
次に、正極を作製した。この正極を作製する際は、以上のようにして得られたLiCoO2を91重量部と、導電材としてグラファイトを6重量部と、結合剤としてPVdFを3重量部とをN−メチル−2−ピロリドンに均質に分散させて正極合剤塗液を調製し、この正極合剤塗液、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体上に均一に塗布、乾燥した後に、ロールプレス機で圧縮して正極合剤層を形成した。そして、正極集電体上に形成された正極合剤層を、正極集電体ごと一括して打ち抜いた。以上のようにして、直径15.5mmの円盤状の正極を作製した。
【0060】
次に、非水電解液を調製した。非水電解液を調製する際は、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを等容量で混合した非水溶媒に、電解質塩としてLiPF6を濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた非水電解液を調製した。
【0061】
次に、円盤状の負極をステンレスからなる負極缶に収容し、円盤状の正極を内側からアルミニウム、ステンレス、ニッケルの順番で積層されてなる正極缶に収容し、負極と正極との間に厚み25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータを積層配置した。
【0062】
次に、負極缶及び正極缶内に非水電解液を注入し、正極缶と負極缶との間にポリプロピレンからなる絶縁ガスケットを介し、正極缶の外周端縁が縮径されるようにかしめることで負極缶を固定した。このようにして、直径20mm、厚み2.5mmのコイン型のリチウム二次電池を作製した。なお、以下の説明では、便宜上、リチウム二次電池のことを単に電池と記す。
【0063】
〈サンプル2〉
サンプル2では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.9重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.1重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.1重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0064】
〈サンプル3〉
サンプル3では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.3重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.7重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.7重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0065】
〈サンプル4〉
サンプル4では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりに和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテルを用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0066】
〈サンプル5〉
サンプル5では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりに和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルを用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0067】
〈サンプル6〉
サンプル6では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりにICN Phamaceuticals,Inc.製のドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0068】
〈サンプル7〉
サンプル7では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0069】
〈サンプル8〉
サンプル8では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.2重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.8重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.8重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0070】
次に、以上のように作製したサンプル1〜サンプル8の電池に対して充放電を以下のようにして行った。各サンプルに対して電流1mA、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を20℃雰囲気中で行った後に、1mAの電流値で2.5Vまでの定電流放電を行った。そして、このような充放電条件で充放電を100回繰り返した。
【0071】
そして、各サンプルついて、100サイクル目の放電容量維持率を測定した。
【0072】
以下、各サンプルにおける、100サイクル目の放電容量維持率の評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、表1において、100サイクル目の放電容量維持率は、初回放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率である。
【0075】
表1に示す評価結果から、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.1重量%以上、0.7重量%以下の範囲で含有させたサンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を含有させなかったサンプル7に比べて100サイクル目の放電容量が大きくなっていることがわかる。また、サンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.8重量%含有させたサンプル8に比べても100サイクル目の放電容量が大きくなっていることがわかる。
【0076】
サンプル7では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤が含有されていないことから、負極合剤層に非水電解液を適切に含浸させることが困難となり、負極のインピーダンスが大きくなって電池特性を低下させてしまう。サンプル8では、負極合剤層に0.8重量%含有させており、負極合剤層に対する非イオン性界面活性剤の含有量が多すぎることから、負極合剤層に対して非導電性の非イオン性界面活性剤が過剰となって負極合剤層の導電性を低下させてしまい電池特性の低下が起きてしまう。
【0077】
これらのサンプル7及びサンプル8に対し、サンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に対する非イオン性界面活性剤の含有量が適切なことから、非イオン性界面活性剤により負極合剤層の非水電解液に対する浸透性が高められ、例えば充放電により起こる負極活物質の膨張収縮で非水電解液負が負極合剤層より押し出されてしまうことが抑制される。これにより、サンプル1〜サンプル6では、充放電が100回繰り返された場合でも負極合剤層中の非水電解液が欠乏することがなく、充放電の繰り返しによる電池容量の低下、いわゆる充放電サイクル特性の劣化が抑制される。
【0078】
また、サンプル4〜サンプル6では、サンプル1〜サンプル3の非イオン性界面活性剤として用いたポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)をそれぞれ用いている。
【0079】
そして、表1の評価結果から、サンプル4〜サンプル6では、以上のような様々な種類の非イオン性界面活性剤を用いても、優れた充放電サイクル特性が得られることがわかる。
【0080】
以上のことから、電池を作製する際に、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を0.1重量%以上、0.7重量%以下の範囲で含有させることは、充放電サイクル特性が優れた電池を製造する上で大変有効であることがわかる。
【0081】
次に、本発明を適用した非水電解質電池として、サンプル1〜サンプル8とは負極合剤層に含有される負極活物質となる合金を代えて製造したサンプル9〜サンプル15の電池について説明する。
【0082】
〈サンプル9〉
サンプル9では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に23wt%Fe−77wt%Snを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0083】
〈サンプル10〉
サンプル10では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に55wt%Cu−45wt%Snを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0084】
〈サンプル11〉
サンプル11では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に60wt%Cu−20wt%Si−20wt%Inを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0085】
〈サンプル12〉
サンプル12では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に16wt%Fe−77wt%Sn−7wt%Niを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0086】
〈サンプル13〉
サンプル13では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に25wt%Co−67wt%Sn−8wt%Alを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0087】
〈サンプル14〉
サンプル14では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル9と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル9と同様にして電池を作製した。
【0088】
〈サンプル15〉
サンプル15では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル10と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル10と同様にして電池を作製した。
【0089】
次に、以上のように作製したサンプル9〜サンプル15の電池に対し、上述したサンプル1〜サンプル8と同様の条件で充放電を行った。そして、サンプル9〜サンプル15ついて、100サイクル目の放電容量維持率を測定した。
【0090】
以下、各サンプルにおける、100サイクル目の放電容量維持率の評価結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示す結果から、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させたサンプル9〜サンプル13では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を含有させなかったサンプル14及びサンプル15に比べて100サイクル目の放電容量が大幅に大きくなっていることがわかる。
【0093】
このことから、サンプル9〜サンプル13では、負極合剤層に含有される負極活物質となる合金を30wt%Co−70wt%Snから23wt%Fe−77wt%Sn、55wt%Cu−45wt%Sn、60wt%Cu−20wt%Si−20wt%In、16wt%Fe−77wt%Sn−7wt%Ni、25wt%Co−67wt%Sn−8wt%Alに代えても、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させることで優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
【0094】
以上のことから、負極活物質として様々な合金を用いた電池を作製する際に、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を適切な量含有させることは、充放電サイクル特性が優れた電池を製造する上で大変有効であることがわかる。
【0095】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る非水電解質電池では、負極活物質となる合金を含有する負極合剤に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤の非水電解質における非水溶媒に対する浸透性が高められることから、負極合剤全体に非水電解質を行き渡らせることが可能となる。
【0096】
これにより、この非水電解質電池では、負極合剤の導電性が高められて負極のインピーダンスを小さくできることから、放電容量を大きくさせる等、電池特性を向上させ、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したコイン型のリチウム二次電池の内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 リチウム二次電池、2 正極、3 正極缶、4 負極、5 負極缶、6 セパレータ、7 絶縁ガスケット、8 非水電解液、9 正極集電体、10 正極合剤層、11 負極集電体、12 負極合剤層
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極、負極及び非水電解質を備え、負極が合金からなる負極活物質を有している非水電解質電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年においては、例えばノート型パーソナルコンピュータ、携帯型電話機、カメラ一体型VTR(video tape recorder)等の電子機器の電源として、軽量で高エネルギー密度な二次電池の開発が進められている。この高いエネルギー密度を有する二次電池としては、例えば鉛電池やニッケルカドミウム電池等よりも大きなエネルギー密度を有し、負極に炭素質材料等を用いたリチウムイオン二次電池がある。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、負極に用いる炭素質材料、具体的には例えば黒鉛等の黒鉛層間にリチウムイオンをインターカレーションさせる反応を電池反応に用いている。このため、リチウムイオン二次電池では、負極活物質にリチウムのドープ/脱ドープが可能な炭素質材料が用いられる。これにより、リチウムイオン二次電池では、充電時に負極にリチウムが析出することが抑制されて、優れた充放電サイクル特性が得られる。
【0004】
ところで、このリチウムイオン二次電池では、炭素質材料へのリチウムイオンのインターカレーションによる負極側の容量に限界があることから、更なる高容量化が困難となっている。この問題を解決することについては、例えば炭素質材料及びその製造方法を選択することで高容量化を図れる炭素質材料が提案されている(例えば、参考文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、このリチウムイオン二次電池では、以上のような炭素質材料を負極に用いた場合、リチウムに対する負極の放電電位が0.8V〜1.0V程度となり、放電電圧が低く、エネルギー密度を向上させることが困難となる。また、このリチウムイオン二次電池では、放電電位の曲線形状におけるヒステリシスが大きく、充放電を繰り返した際の各放電時のエネルギー効率が低くなってしまう。
【0006】
このような問題を解決するリチウム二次電池としては、負極活物質に炭素質材料ではなく例えばある種のリチウム合金を用い、このリチウム合金が電気化学的に可逆的に生成/分解する反応を応用させることで充放電を行う電池がある。
【0007】
この負極活物質にリチウム合金を用いることについては、例えばLi−Al合金やLi−Si合金等を負極活物質として用いることがすでに知られ、負極活物質としてSiを含有する合金が好適であることが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0008】
しかしながら、負極にリチウム合金を用いたリチウム二次電池では、充放電に伴うリチウム合金の膨張収縮が大きく、充放電の繰り返しによるリチウム合金の膨張収縮の繰り返しでリチウム合金が崩壊して電池特性が劣化することがある。
【0009】
具体的に、リチウム二次電池において、リチウム合金を用いた負極では、充放電に伴う膨張収縮により負極活物質の粒子に亀裂が生じ、この亀裂が充放電に伴う膨張収縮で開閉するが、亀裂の内部表面に例えば電解質等との反応によりリチウム酸化物等の副生成物が蓄積すると、充放電に伴う亀裂の開閉が困難になる。このため、このリチウム二次電池では、充放電に伴い負極活物質の粒子に更なる亀裂が生じ、この亀裂の内部表面にも副生成物が順次蓄積することから、充放電が繰り返されることで負極活物質の粒子に次々と亀裂が生じて負極活物質が微粉化し、充放電に関与しない不可逆な負極活物質が増える負極の劣化で電池特性が低下してしまう。
【0010】
また、このリチウム二次電池では、充放電によるリチウム合金の膨張収縮で負極に含浸された非水電解液が押し出され、充放電が繰り返されることで負極中の非水電解液が徐々に欠乏して電池容量が低下、すなわち充放電サイクル特性が劣化することがある。
【0011】
この充放電に伴う膨張収縮が抑制されたリチウム合金や化合物としては、例えばLixSiOy(x≧0、2>y>0)等を負極活物質として用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0012】
また、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えばLixSi1−yMyOz(x≧0、1>y>0、0<z<2)等を用いることも提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0013】
さらに、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えばLi−Ag−Te系合金を用いることも提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0014】
さらにまた、充放電に伴う膨張収縮が抑制された負極活物質として、例えば炭素を除く4B族元素に非金属元素を含有させた化合物等も提案されている(例えば、特許文献6を参照。)。
【0015】
【特許文献1】
特開平8−315825号公報
【特許文献2】
米国特許第4650566号明細書
【特許文献3】
特開平6−325765号公報
【特許文献4】
特開平7−230800号公報
【特許文献5】
特開平7−288130号公報
【特許文献6】
特開平11−102705号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの提案でも、非水電解液を負極に適切に含浸させることは難しく、充放電の繰り返しに伴う電池容量の低下、すなわち充放電サイクル特性の劣化を大幅に改善させることは困難であり、高容量化が可能な負極活物質の特徴を生かし切れていないのが現状である。
【0017】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、充放電サイクル特性に優れた非水電解質電池を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る非水電解質電池は、リチウムの吸蔵/放出が可能な正極活物質を有する正極と、B,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Pb,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのうち何れか2種類以上の元素を含み、リチウムの吸蔵/放出が可能な合金からなる負極活物質を含有する負極合剤を有する負極と、電解質塩を有する非水電解質とを備え、負極における負極合剤全体に対して非イオン性界面活性剤を0.7重量%以下含有していることを特徴としている。
【0019】
この非水電解質電池では、負極における負極合剤に非イオン性界面活性剤を0.7重量%以下含有させることで、負極合剤に非水電解質の非水溶媒が適切に含浸されて負極合剤全体に非水電解質が行き渡るようになり、充放電が繰り返しで負極合剤中の非水電解質が欠乏してしまうことが抑制されることから電池特性を向上できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した非水電解質電池について図1に示すコイン型のリチウム二次電池(以下、電池と記す。)を参照にして説明する。この電池1は、円盤状の正極2と、この正極2を収容する正極缶3と、円盤状の負極4と、この負極4を収容する負極缶5と、正極2及び負極4の間に配されたセパレータ6と、正極缶3と負極缶5との間を絶縁する絶縁ガスケット7と、非水電解液8とを有している。
【0021】
正極2は、正極集電体9上に、正極活物質を含有する正極合剤層10が形成されている。この正極2には、正極活物質として例えば化学式LixMO2(xは0.5以上、1.1以下の範囲であり、Mは遷移金属のうちの何れか一種又は複数種の化合物である。)等の化学式で示されるリチウム複合酸化物、TiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを含有しない金属硫化物、金属酸化物、或いは特定のポリマー等を用いる。これらのうち、リチウム複合酸化物としては、例えばLiCoO2、LiNiO2、LixNiyCo1−yO2(x、yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x<1、0.7<y<1.02である。)等の化学式で示されるリチウム遷移金属複合酸化物や、LiMn2O4の化学式で示されるスピネル型リチウム・マンガン複合酸化物等が挙げられる。そして、正極2では、正極活物質として、上述した金属硫化物、金属酸化物、リチウム複合酸化物等のうちの何れか一種又は複数種を混合して用いることも可能である。
【0022】
また、正極2には、正極集電体9として例えば網状や箔状のアルミニウム等が用いられる。正極2においては、正極合剤層10に含有される結合剤として、この種の非水電解質電池に通常用いられている公知の樹脂材料を用いることができる。具体的には、結合剤として例えばポリフッ化ビニリデン等を用いる。また、正極2においては、正極合剤層10に含有される導電材として、この種の非水電解質電池に通常用いられている公知のものを用いることができる。具体的には、導電材として例えばカーボンブラック、グラファイト等を用いる。
【0023】
正極缶3は、正極2を収容する底の浅い皿状、いわゆるシャーレ状の導電性金属からなる容器であり、電池1の外部正極となる。具体的に、この正極缶3には、正極2が収納された際に、正極2側から例えばアルミニウム、ステンレス、ニッケルが厚み方向に順次積層された積層構造の金属容器等を用いる。
【0024】
負極4は、負極集電体11上に、負極活物質及び非イオン性界面活性剤を含有する負極合剤層12が形成されている。負極4に含有される負極活物質としては、電池容量を大きくさせることが可能であり、且つリチウムの吸蔵/放出が可能な合金等を用いる。具体的には、例えばB,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Pb,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn等のうち何れか2種類以上の元素を含む合金等が挙げられ、特にCo−Sn系合金、Fe−Sn系合金、Cu−Sn系合金、Fe−Sn−Ni系合金、Co−Sn−Ai系合金、Mg−Sn系合金、Mn−Sn系合金等、Snを含有する合金を用いることが好ましい。また、Snを含有する合金の他に、例えばCu−Si−In系合金、Mg−Si系合金、Ni−Si系合金、Ti−Si系合金、Cu−Si系合金、Fe−Si系合金、Mn−Si系合金、Zn−Si系合金等、Siを含有する合金等も好適である。
【0025】
負極活物質として用いる合金は、例えば合金の原料を不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で所定の温度で所定の時間、加熱処理する等して合成されるが、このような合成方法に限定されることなく、様々な手法で合成されても良い。具体的には、例えばメカニカルアロイニング法、メルトスピニング法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法等により合成される。そして、これらの方法で合成される化合物は、粉砕して粉末にしてもよいが、粉砕せずに固形物で用いることもできる。また、負極活物質として用いる化合物等にリチウムのドープを行う際は、例えば電池製造前或いは後に正極2或いは正極2以外のリチウム源からリチウムを供給して電気化学的にドープさせることや、負極活物質の合成時にリチウムを含有させること等で行われる。
【0026】
負極4において、負極合剤層12には、上述した合金等の他に、例えばリチウムイオンのドープ/脱ドープが可能な炭素質材料等を含有させることもできる。この炭素質材料としては、例えば人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛類、難黒鉛化性炭素、熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス類、ガラス状炭素繊維、フェノール樹脂やフラン樹脂等を適当な温度で焼成して炭素化させた有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。これらの炭素質材料は、負極合剤層12に含有された場合、負極活物質として機能する他に、負極合剤層12の導電性を向上させる導電材としても機能することになる。
【0027】
また、負極4において、負極合剤層12には、例えば非イオン性界面活性剤が含有されている。負極合剤層12に含有される非イオン性界面活性剤としては、例えば下記化1に示すポリオキシエチレンアルキルエーテル、下記化式2に示すポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、これらのうちの一種又は複数種を混合して用いる。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
この非イオン性界面活性剤は、負極合剤層12に含有されることで後述する非水電解液8が適切に負極合剤層12に含浸されるように、負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性を高めるように作用する。
【0031】
そして、この非イオン性界面活性剤は、負極合剤層12全体に対し、0.7重量%以下含有されるようにする。
【0032】
負極合剤層12に含有されていない場合、負極合剤層12に対して非水電解液8を適切に含浸させることが困難となり、負極4のインピーダンスが大きくなって電池特性を低下させてしまう。一方、負極合剤層12全体に対して0.7重量%よりも多く含有させた場合、負極合剤層12に対する非導電性の非イオン性界面活性剤の含有量が多すぎることから、負極合剤層12の導電性を低下させてしまい電池特性の低下が起こる。
【0033】
したがって、負極合剤層12においては、非イオン性界面活性剤を0.7重量%含有させることにより、導電性の低下を抑えつつ非水電解液8の浸透性が高められることから、電池特性を向上させることが可能となる。
【0034】
さらに、負極4において、負極合剤層12には、上述した負極活物質及び非イオン性界面活性剤の他に、例えばこの種の非水電解質電池に通常用いられている公知の樹脂材料からなる結合剤を含有させることで形成される。具体的に、結合剤としては、例えばポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0035】
負極缶5は、負極4を収容するシャーレ状の導電性金属からなる容器であり、電池1の外部負極となる。具体的に、この負極缶5には、例えばステンレスや、表面にニッケルめっきが施された鉄等からなる金属容器を用いる。
【0036】
セパレータ6は、正極2と負極4とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ非水電解液8中のリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ6は、微少な孔を多数有する微多孔性膜からなる。ここで、微多孔性膜とは、孔の平均孔径が5μm以下程度の微孔を多数有する樹脂膜のことである。また、セパレータ6としては、材料として従来の電池に使用されてきたものを利用することが可能である。そのなかでも、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能なポリプロピレン、ポリエチレンやポリオレフィン等からなる微多孔性フィルムを用いる。
【0037】
セパレータ6は、その厚みが5μm以上、50μm以下の範囲にされていると共に、その全体積中における空隙体積の比率を表す空孔率が20%以上、60%以下の範囲にされている。このような条件に合致するセパレータ6では、製造歩留まり、出力特性、サイクル特性、安全性に優れた電池1を得ることが可能となる。
【0038】
絶縁ガスケット7は、負極缶5に組み込まれ一体化された構成となっており、例えばポリプロピレン等の有機樹脂で形成されている。この絶縁ガスケット7は、外部正極となる正極缶3と外部負極となる負極缶5とを絶縁させていると共に、正極缶3及び負極缶5内に充填された非水電解液8の漏出を防止させるように機能することになる。
【0039】
非水電解液8は、例えば非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水溶液である。非水電解液8において、非水溶媒としては、例えば環状の炭酸エステル化合物、水素をハロゲン基やハロゲン化アクリル基で置換した環状炭酸エステル化合物や鎖状炭酸エステル化合物等を用いる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。特に、非水溶媒としては、電圧安定性の点からプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを使用することが好ましい。
【0040】
また、電解質塩としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiCl、LiBr等の化学式で示される塩が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を用いる。
【0041】
そして、このような構成の電池1は、次のようにして製造される。先ず、正極2を作製する。正極2を作製する際は、正極活物質と、導電材と、結合剤とを非水溶媒等に分散させた正極合剤塗液を、正極集電体9となる例えばアルミニウム箔等の金属箔上に均一に塗布、乾燥した後に、圧縮して正極合剤層10を形成する。そして、これら正極集電体9と正極合剤層10とを、例えば円盤状等、所定の形状に一括して切り抜くことにより正極2が作製される。
【0042】
次に、負極4を作製する。負極4を作製する際は、負極活物質と、非イオン性界面活性剤と、結合剤とを非水溶媒等に分散させた負極合剤塗液を、負極集電体11となる例えば銅箔等の金属箔上に均一に塗布、乾燥した後に、圧縮して負極合剤層12を形成する。そして、これら負極集電体11と負極合剤層12とを、例えば円盤状等、所定の形状に一括して切り抜くことにより負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有された負極4が作製される。
【0043】
次に、非水電解液8を調製させる。非水電解液8を調製する際は、例えばLiPF6やLiBF4等の電解質塩を、上述した非水溶媒に溶解させる。次に、正極2が収容され、非水電解液8が注液された正極缶3の開口部と、負極4が収容され、非水電解液8が注液された負極缶5の開口部とを、正極2と負極4との間に、セパレータ6を配置した状態で組み合わせる。
【0044】
このとき、正極缶3と負極缶5との間にできた隙間に絶縁ガスケット7を、正極缶3と負極缶5とが接触することがないように嵌め込む。これにより、電池1は、正極2、セパレータ6、負極4が順次積層された内部構造となる。
【0045】
次に、正極缶3の周縁部を、正極缶3の内径が縮径する方向に変形させて正極缶3の周縁部を絶縁ガスケット7に食い込ませるようにかしめることで、負極缶5を固定する。これにより、正極2、負極4、セパレータ6、非水電解液8が正極缶4及び負極缶5に収容された状態で密閉されることになる。このようにしてコイン型の電池1が製造される。
【0046】
以上のようにして製造される電池1では、負極4における負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤層12に非水電解液8が適切に含浸されて負極合剤層12全体に非水電解液8が行き渡るようになる。これにより、電池1では、負極合剤層12全体に非水電解液8が行き渡ることになり、負極合剤層12の導電性が高められることから、負極4のインピーダンスが小さくなって放電容量を大きくさせる等、電池特性を向上させることができる。
【0047】
また、この電池1では、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有されることで負極合剤層12の非水電解液8に対する浸透性が高められたことにより、例えば充放電により起こる負極活物質の膨張収縮で非水電解液負8が負極合剤層12より押し出されることを抑えることができる。これにより、電池1では、例えば充放電が繰り返された場合でも従来のような負極合剤中の非水電解液が欠乏してしまうことが抑えられ、充放電の繰り返しによる電池容量の低下、いわゆる充放電サイクル特性の劣化を抑制できる。
【0048】
このように、電池1では、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させることにより、最も効果的に電池特性を向上でき、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制できる。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、非水電解液8を用いた電池1について説明しているが、このことに限定されることはなく、非水電解液8の代わりに例えばゲル状電解質や高分子固体電解質等を用いた場合も適用可能である。
【0050】
ゲル状電解質は、上述した非水電解液8と、この非水電解液8を吸収してゲル化するマトリックス高分子とからなる。ゲル状電解質に用いるマトリックス高分子としては、例えばポリ(ビニリデンフルオロライド)やポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)等のフッ素系高分子、ポリ(エチレンオキサイド)やこれの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(アクリロニトリル)等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。特に、マトリックス高分子には、酸化還元安定性が良好なフッ素系高分子を用いることが好ましい。
【0051】
具体的に、高分子固体電解質は、例えば上述した電解質塩と、電解質塩を含有することでイオン導電性が付与される高分子化合物とからなる。高分子固体電解質に用いる高分子化合物としては、例えばポリ(エチレンオキサイド)やこの架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)等のエステル系高分子、アクリレート系高分子等が挙げられ、これらのうちの何れか一種又は複数種を混合して用いる。
【0052】
これらのゲル状電解質や高分子固体電解質は、これらを構成する材料を非水溶媒等に分散させて電解質塗液を調製した後に、上述した正極2や負極4の表面に塗布し、非水溶媒を乾燥させることで正極2や負極4の表面に成膜される。そして、負極4においては、その表面にゲル状電解質又は高分子固体電解質を成膜させた場合、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤が含有されていることから、負極合剤層12に電解質塗液が適切に含浸されて負極合剤層12全体にゲル状電解質又は高分子固体電解質が行き渡ることになる。したがって、電池1においては、非水電解液8の代わりに例えばゲル状電解質や高分子固体電解質等を用いた場合も、負極合剤層12に非イオン性界面活性剤を含有させたことによる作用効果を得ることができる。
【0053】
なお、以上の例では、コイン型電池を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば円筒形電池、角型電池、ボタン型電池等といった外装材に金属製容器等を用いた電池、薄型電池といった外装材にラミネートフィルム等を用いた電池等、種々の形状や大きさにすることも可能である。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を適用した非水電解質電池としてコイン型のリチウム二次電池を実際に作製したサンプルについて説明する。
【0055】
〈サンプル1〉
サンプル1では、先ず、負極活物質となる合金として30wt%Co−70wt%Snを合成した。この30wt%Co−70wt%Snを合成する際は、Coと30重量部と、Snを70重量部とを均質になるように混合した混合物を、石英ボートに入れてアルゴン雰囲気中、高周波溶融炉を用いて1050℃に加熱して混合物を溶解した。次に、溶解した混合物を、室温まで冷却することで30wt%Co−70wt%Snを合成した。次に、得られた30wt%Co−70wt%Snをアルゴン雰囲気中ボールミルで粉砕し、分級することで平均粒径が10μmの粉末状の30wt%Co−70wt%Snを作製した。
【0056】
次に、負極を作製した。この負極を作製する際は、以上のようにして得られた30wt%Co−70wt%Snを69.6重量部と、人造黒鉛を20重量部と、カーボンブラックを2重量部と、結合剤として粒径1μm、融点170℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を6重量部と、増粘剤としカルボキシメチルセルロースを2重量部と、非イオン性界面活性剤として和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.4重量部とを純水に均質に分散させて負極合剤塗液を調製し、この負極合剤塗液、厚み10μmの銅箔からなる負極集電体上に均一に塗布、乾燥した後に、ロールプレス機で圧縮して負極合剤層を形成した。そして、負極集電体上に形成された負極合剤層を、負極集電体ごと真空雰囲気中200℃で2時間加熱処理して後に、負極集電体ごと一括して打ち抜いた。このようにして、直径15.5mmの円盤状の負極合剤層に非イオン性界面活性剤が0.4重量%含有された負極を作製した。
【0057】
そして、以上のようにして作製した負極について酸素濃度を測定した。負極の酸素濃度を測定する際は、株式会社堀場製作所製の窒素分析装置EMGA−650を用いた。この装置は、内部の黒鉛ルツボ中で試料を高温に加熱することで試料より発生する一酸化炭素を酸素成分とし、その一酸化炭素を非分散赤外線検出手段で定量することで資料の酸素濃度を測定させるものである。具体的には、秤量した負極を重さが0.3gのNiからなるカプセルに封入した後に、空焚きして表面に付着して不純物となるガス成分を除去した黒鉛ルツボに、分解促進剤となる0.5gのSnペレットと一緒に高温に加熱することで負極の酸素濃度を測定した。
【0058】
次に、正極活物質となるリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を合成した。このLiCoO2を合成する際は、炭酸リチウムと炭酸コバルトとを0.5モル対1モルの比率となるように混合し、空気雰囲気中900℃で5時間焼成した。このようにしてLiCoO2を合成した。次に、得られたLiCoO2を粉砕し、分級することでLiCoO2を粉末状にした。
【0059】
次に、正極を作製した。この正極を作製する際は、以上のようにして得られたLiCoO2を91重量部と、導電材としてグラファイトを6重量部と、結合剤としてPVdFを3重量部とをN−メチル−2−ピロリドンに均質に分散させて正極合剤塗液を調製し、この正極合剤塗液、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体上に均一に塗布、乾燥した後に、ロールプレス機で圧縮して正極合剤層を形成した。そして、正極集電体上に形成された正極合剤層を、正極集電体ごと一括して打ち抜いた。以上のようにして、直径15.5mmの円盤状の正極を作製した。
【0060】
次に、非水電解液を調製した。非水電解液を調製する際は、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを等容量で混合した非水溶媒に、電解質塩としてLiPF6を濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた非水電解液を調製した。
【0061】
次に、円盤状の負極をステンレスからなる負極缶に収容し、円盤状の正極を内側からアルミニウム、ステンレス、ニッケルの順番で積層されてなる正極缶に収容し、負極と正極との間に厚み25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータを積層配置した。
【0062】
次に、負極缶及び正極缶内に非水電解液を注入し、正極缶と負極缶との間にポリプロピレンからなる絶縁ガスケットを介し、正極缶の外周端縁が縮径されるようにかしめることで負極缶を固定した。このようにして、直径20mm、厚み2.5mmのコイン型のリチウム二次電池を作製した。なお、以下の説明では、便宜上、リチウム二次電池のことを単に電池と記す。
【0063】
〈サンプル2〉
サンプル2では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.9重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.1重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.1重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0064】
〈サンプル3〉
サンプル3では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.3重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.7重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.7重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0065】
〈サンプル4〉
サンプル4では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりに和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテルを用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0066】
〈サンプル5〉
サンプル5では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりに和光純薬工業株式会社製のポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルを用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0067】
〈サンプル6〉
サンプル6では、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりにICN Phamaceuticals,Inc.製のドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0068】
〈サンプル7〉
サンプル7では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0069】
〈サンプル8〉
サンプル8では、負極を作製する際に、30wt%Co−70wt%Snを69.2重量部と、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを0.8重量部とを負極合剤層の含有させたこと以外は、サンプル1と同様にして負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.8重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0070】
次に、以上のように作製したサンプル1〜サンプル8の電池に対して充放電を以下のようにして行った。各サンプルに対して電流1mA、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を20℃雰囲気中で行った後に、1mAの電流値で2.5Vまでの定電流放電を行った。そして、このような充放電条件で充放電を100回繰り返した。
【0071】
そして、各サンプルついて、100サイクル目の放電容量維持率を測定した。
【0072】
以下、各サンプルにおける、100サイクル目の放電容量維持率の評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、表1において、100サイクル目の放電容量維持率は、初回放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率である。
【0075】
表1に示す評価結果から、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.1重量%以上、0.7重量%以下の範囲で含有させたサンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を含有させなかったサンプル7に比べて100サイクル目の放電容量が大きくなっていることがわかる。また、サンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.8重量%含有させたサンプル8に比べても100サイクル目の放電容量が大きくなっていることがわかる。
【0076】
サンプル7では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤が含有されていないことから、負極合剤層に非水電解液を適切に含浸させることが困難となり、負極のインピーダンスが大きくなって電池特性を低下させてしまう。サンプル8では、負極合剤層に0.8重量%含有させており、負極合剤層に対する非イオン性界面活性剤の含有量が多すぎることから、負極合剤層に対して非導電性の非イオン性界面活性剤が過剰となって負極合剤層の導電性を低下させてしまい電池特性の低下が起きてしまう。
【0077】
これらのサンプル7及びサンプル8に対し、サンプル1〜サンプル6では、負極合剤層に対する非イオン性界面活性剤の含有量が適切なことから、非イオン性界面活性剤により負極合剤層の非水電解液に対する浸透性が高められ、例えば充放電により起こる負極活物質の膨張収縮で非水電解液負が負極合剤層より押し出されてしまうことが抑制される。これにより、サンプル1〜サンプル6では、充放電が100回繰り返された場合でも負極合剤層中の非水電解液が欠乏することがなく、充放電の繰り返しによる電池容量の低下、いわゆる充放電サイクル特性の劣化が抑制される。
【0078】
また、サンプル4〜サンプル6では、サンプル1〜サンプル3の非イオン性界面活性剤として用いたポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)をそれぞれ用いている。
【0079】
そして、表1の評価結果から、サンプル4〜サンプル6では、以上のような様々な種類の非イオン性界面活性剤を用いても、優れた充放電サイクル特性が得られることがわかる。
【0080】
以上のことから、電池を作製する際に、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を0.1重量%以上、0.7重量%以下の範囲で含有させることは、充放電サイクル特性が優れた電池を製造する上で大変有効であることがわかる。
【0081】
次に、本発明を適用した非水電解質電池として、サンプル1〜サンプル8とは負極合剤層に含有される負極活物質となる合金を代えて製造したサンプル9〜サンプル15の電池について説明する。
【0082】
〈サンプル9〉
サンプル9では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に23wt%Fe−77wt%Snを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0083】
〈サンプル10〉
サンプル10では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に55wt%Cu−45wt%Snを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0084】
〈サンプル11〉
サンプル11では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に60wt%Cu−20wt%Si−20wt%Inを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0085】
〈サンプル12〉
サンプル12では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に16wt%Fe−77wt%Sn−7wt%Niを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0086】
〈サンプル13〉
サンプル13では、負極を作製する際に、負極合剤層に含有される合金に25wt%Co−67wt%Sn−8wt%Alを用いたこと以外は、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させた負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル1と同様にして電池を作製した。
【0087】
〈サンプル14〉
サンプル14では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル9と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル9と同様にして電池を作製した。
【0088】
〈サンプル15〉
サンプル15では、負極を作製する際に、非イオン性界面活性剤を含有させないこと以外は、サンプル10と同様にして負極合剤層にして負極を作製した。そして、この負極を用いたこと以外は、サンプル10と同様にして電池を作製した。
【0089】
次に、以上のように作製したサンプル9〜サンプル15の電池に対し、上述したサンプル1〜サンプル8と同様の条件で充放電を行った。そして、サンプル9〜サンプル15ついて、100サイクル目の放電容量維持率を測定した。
【0090】
以下、各サンプルにおける、100サイクル目の放電容量維持率の評価結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示す結果から、負極合剤層に対し、非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させたサンプル9〜サンプル13では、負極合剤層に非イオン性界面活性剤を含有させなかったサンプル14及びサンプル15に比べて100サイクル目の放電容量が大幅に大きくなっていることがわかる。
【0093】
このことから、サンプル9〜サンプル13では、負極合剤層に含有される負極活物質となる合金を30wt%Co−70wt%Snから23wt%Fe−77wt%Sn、55wt%Cu−45wt%Sn、60wt%Cu−20wt%Si−20wt%In、16wt%Fe−77wt%Sn−7wt%Ni、25wt%Co−67wt%Sn−8wt%Alに代えても、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を0.4重量%含有させることで優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
【0094】
以上のことから、負極活物質として様々な合金を用いた電池を作製する際に、負極合剤層に対して非イオン性界面活性剤を適切な量含有させることは、充放電サイクル特性が優れた電池を製造する上で大変有効であることがわかる。
【0095】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る非水電解質電池では、負極活物質となる合金を含有する負極合剤に非イオン性界面活性剤を含有させることで、負極合剤の非水電解質における非水溶媒に対する浸透性が高められることから、負極合剤全体に非水電解質を行き渡らせることが可能となる。
【0096】
これにより、この非水電解質電池では、負極合剤の導電性が高められて負極のインピーダンスを小さくできることから、放電容量を大きくさせる等、電池特性を向上させ、且つ充放電サイクル特性の劣化を抑制させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したコイン型のリチウム二次電池の内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 リチウム二次電池、2 正極、3 正極缶、4 負極、5 負極缶、6 セパレータ、7 絶縁ガスケット、8 非水電解液、9 正極集電体、10 正極合剤層、11 負極集電体、12 負極合剤層
Claims (4)
- リチウムの吸蔵/放出が可能な正極活物質を有する正極と、
B,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Pb,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znのうち何れか2種類以上の元素を含み、リチウムの吸蔵/放出が可能な合金からなる負極活物質を含有する負極合剤を有する負極と、
電解質塩と非水溶媒とを有する非水電解質とを備え、
上記負極は、上記負極合剤全体に対して非イオン性界面活性剤を0.7重量%以下含有していることを特徴とする非水電解質電池。 - 上記負極合剤は、少なくともSnを含有する合金からなる負極活物質を含有していることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
- 上記負極は、上記負極合剤全体に対し、上記非イオン性界面活性剤を0.1重量%以上、0.7重量%以下の範囲で含有していることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
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