JP2004184689A - 溶液製膜方法並びに偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フイルム表面に付着する異物を減少させる。
【解決手段】フイルム製膜ライン10を構成する流延剥取機30,除電搬送機40、乾燥機50、冷却機60、測定機65、巻取機70をクラス7以下の第1クリーンルーム20内に設置する。第1クリーンルーム20をクラス8以下の第2クリーンルーム22内に設置する。ドープ12を流延ダイ31から流延してゲル膜35を形成する。軟膜37を流延ベルト32上のゲル膜35を剥ぎ取って得る。軟膜37の表面電位を除電器41を用いて±5kV以内とする。乾燥機50,冷却機60によりフイルム55とする。クリーンルーム20内で製膜を行い、軟膜37の表面電位を下げるため、フイルム55中の異物を減少できる。フイルムは、異物が少ないため輝点欠陥を減少できて偏光板及び液晶表示装置に好ましく用いられる。
【選択図】 図1
【解決手段】フイルム製膜ライン10を構成する流延剥取機30,除電搬送機40、乾燥機50、冷却機60、測定機65、巻取機70をクラス7以下の第1クリーンルーム20内に設置する。第1クリーンルーム20をクラス8以下の第2クリーンルーム22内に設置する。ドープ12を流延ダイ31から流延してゲル膜35を形成する。軟膜37を流延ベルト32上のゲル膜35を剥ぎ取って得る。軟膜37の表面電位を除電器41を用いて±5kV以内とする。乾燥機50,冷却機60によりフイルム55とする。クリーンルーム20内で製膜を行い、軟膜37の表面電位を下げるため、フイルム55中の異物を減少できる。フイルムは、異物が少ないため輝点欠陥を減少できて偏光板及び液晶表示装置に好ましく用いられる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液製膜方法並びにその方法により製膜したフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶液製膜方法は、高分子材料(ポリマー)を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する)を、ダイより支持体上に流延し、乾燥、剥離して得られた軟膜(ウェブとも称する)からフイルムを製造する方法である。この方法で製造されるフイルムは、溶融押出法で得られるフイルムに比べ、光学等方性、厚み均一性に優れ、また、異物も少ないため、偏光膜保護フイルム、位相差フイルム、透明導電性フイルムなどのオプト・エレクトロニクス用途に利用されている。
【0003】
特に、ポリマーとしてセルロースエステルを用いた溶液製膜方法によるセルロースエステルフイルムの製造方法において、ウェブを支持体から剥離してから乾燥機で乾燥し終わるまでのあいだ、ウェブ表面の電位を−5kV〜+5kVとして製造することを特徴とするセルロースエステルフイルムの製造方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−129839号公報 (第5−6頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した方法は、皺状厚みムラに対して効果があるのみで、ウェブ表面に付着する異物を抑えることが出来ない。LCDが高精細になる今日、表面電位の除電のみではなく、異物付着の抑制を行わなくてはならなくなった。また、次工程の鹸化液等の液への汚染も起こす。高密度、高精細化がもとめられる今日のLCDにおいてはこの様な付着異物の軽減が求められている。
【0006】
本発明は、平滑性に優れて異物付着の少ないフイルムを製膜する溶液製膜方法並びにそのフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、表面電位の高いウェブが製膜設備(以下、フイルム製膜ラインと称する)を通過することにより、ウェブ表面に異物が付着することを見出した。その付着した異物が、製膜されたフイルムを用いて構成された液晶表示装置において輝点欠陥の原因となり、偏光板の品質を大きく落とすことも見出した。さらに、ウェブの表面に付着する異物はウェブの表面電位とウェブを作製する際の雰囲気に相関があることを見出し、それらを規定することにより上記課題を解決することができる。
【0008】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延支持体に流延する流延手段と、前記ドープから形成されたゲル膜を前記流延支持体から剥ぎ取る剥取手段と、前記ゲル膜を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されたゲル膜を乾燥する乾燥手段と、前記ゲル膜を乾燥して得られたフイルムを巻き取る巻取手段とを含む機器を用いてフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mのフイルムに付着している10μm以上の異物の個数が30個以下になる。以下、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mからなる面積を本発明では基準面積と称する。また、基準面積あたりの10μm以上の異物の個数は10個以下がより好ましく、最も好ましくは5個以下とする。
【0009】
前記巻き取る際のフイルムの表面電位を±5kV以内とし、かつ前記機器をJIS B9920に規定されるクラス7以下の第1クリーンルーム内に備えたものを用いることが好ましい。なお、前記フイルムの表面電位は、±2kV以内がより好ましく、最も好ましくは±1kVとすることである。また、前記第1クリーンルームをJIS B9920で規定されるクラス8以下の第2のクリーンルーム内に設けたものを用いることがより好ましい。さらに、前記第1クリーンルームの圧力であって、前記第2クリーンルームと通じる部分の圧力を、前記第2クリーンルームの圧力より高くすることが好ましい。さらには、前記部分に、前記巻取手段が設けられていることが好ましい。
【0010】
前記第1クリーンルーム内で用いられる部材が、無塵部材であることが好ましい。また、前記無塵部材には、タイベックス(商標),ポリプロピレン,ゴアテクッス(商標),ポリエステル,ナイロン不織布,ポリプロピレン不織布,ポリエステル不織布のうち少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0011】
前記ポリマーがセルロースアシレートであることが好ましく、セルロースアセテートであることがより好ましく、最も好ましくはセルローストリアセテートである。また、本発明には前記溶液製膜方法で製膜されたフイルムを使用した偏光板、液晶表示装置も含まれる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[溶媒]
本発明の溶液製膜方法に用いられるドープを調製するための溶媒は、公知のいずれの溶媒をも用いることができる。特に、メチレンクロライド(ジクロロメタン)などのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチルなどのエステル類、エーテル類、アルコール類(例えば、メタノール,メタノール,n−ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)などが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒を複数混合させた溶媒からドープを調製し、そのドープからフイルムを製膜することもできる。
【0013】
[ポリマー]
本発明に用いられるポリマーは特に限定されるものではない。例えば、セルロースアシレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いることが好ましく、特に酢化度59.0%〜62.5%のセルローストリアセテート(TAC)を用いることが好ましい。また、TACを用いる場合には、その原料が綿花リンタのものと木材パルプのものがあり、それらを単独で用いたTACであっても良いし、それらを混合したTACを用いても良い。
【0014】
[添加剤]
ドープには、公知の添加剤のいずれをも添加させることが可能である。添加剤としては、可塑剤(トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する),ビフェニルジフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)など),紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物など),二酸化ケイ素などのマット剤,増粘剤,オイルゲル化剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの添加剤は、ドープを調製する際にポリマーと共に混合することも可能である。また、ドープを調製した後、移送する際に静止型混合器などを用いてインライン混合することも可能である。なお、本発明において前記ポリマーと添加剤とを併せて固形分と称する。
【0015】
[ドープの調製]
前述した固形分(ポリマー及び添加剤)を前述した溶媒(混合溶媒であっても良い)に仕込んだ後に、公知のいずれかの溶解方法により溶解させドープを調製する。このドープは濾過により異物を除去する事が一般的である。濾過には濾紙,濾布,不織布,金属メッシュ,焼結金属,多孔板などの公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、ドープ中の異物,未溶解物を除去することができ、製品フイルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
【0016】
また、一度調製したドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。加熱には静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いてドープを移送しながら加熱する方法などもある。また、加熱工程の後に冷却工程を実施することもできる。また、装置の内部を加圧することにより、ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの処理を行うことにより、微小の未溶解物を完全に溶解することができ、濾過の負荷軽減、フイルム中の異物の減少をはかることができる。
【0017】
本発明において、ドープの固形分の重量百分率(ドープ固形分濃度)は、12重量%〜25重量%が好ましく、より好ましくは18重量%〜20重量%である。12重量%未満であると、ドープの固形分濃度が低すぎるため、ドープから形成されるゲル膜が好ましいフイルム応力を有するまでに時間がかかる場合があり、コストの点から問題が生じる場合がある。また、固形分濃度が低すぎるとドープを流延した際に、ゲル膜が形成されない場合もある。また、25重量%を超えると、ドープの粘度が高くなりすぎてビードのレベリング効果(平滑化)が発現しにくくなり、均一なフイルムの形成が困難な場合もある。
【0018】
[溶液製膜方法]
図1は本発明に係る溶液製膜方法を実施するために用いられるフイルム製膜ライン10の概略図を示している。ミキシングタンク11内には、前述した方法で調製されたドープ12が仕込まれて、撹拌翼13で撹拌されて均一になっている。ドープ12は、ポンプ14により濾過装置15に送られて不純物が除去される。
【0019】
本発明に用いられるフイルム製膜ライン10には、流延剥取機30、除電搬送機40、乾燥機50、冷却機60、測定機65、巻取機70などが備えられている。それら各機器40,50,60,65,70は、第1クリーンルーム20内に設けられている。大気循環システム21により第1クリーンルーム20内は、JIS B9920で規定されるクラス7以下のクリーン度に保たれている。なお、Feb.Std.209Eでは、クラス10000として規定される。以下、JIS B9920で規定されるクリーン度を単にクラスと称し、Feb.Std.209Eで規定されるクリーン度をFSクラスと称する。本発明において第1クリーンルーム20内のクリーン度は、クラス6(FSクラス1000)以下とすることがより好ましく、最も好ましくは、クラス5(FSクラス100)以下に保つことである。
【0020】
また、第1クリーンルーム20の外には、その中に設置されている各機器30,40,50,60,65,70の点検、保守管理などを行うための部屋が設けられていることが好ましい。本発明においては、この部屋に大気循環システム23を取り付けてクリーンルーム(以下、第2クリーンルームと称する)22とし、第2クリーンルーム22が第1クリーンルーム20を覆った形態であることが最も好ましいが、それに限定されるものではない。なお、第2クリーンルーム22内のクリーン度は、クラス8(FSクラスでは100000)以下とすることが好ましい。
【0021】
流延剥取機30に流延ダイ31が、流延ベルト32上に配置されている。前述したドープ12が一定の流量で流延ダイ31から流延ベルト32上に流延される。流延ベルト32は回転ローラ33,34が図示しない回転駆動装置により回転することに伴い無端走行する。ドープ12は、流延ベルト32上でゲル膜(流延膜と称されるものをも意味している)35となる。ゲル膜35が自己支持性を有するようになった後に、剥取ローラ36により支持されながらゲル膜35を剥ぎ取って軟膜37を得る。軟膜37は、除電搬送機40に送られる。なお、フイルム製膜ライン10では、流延支持体として流延ベルト32を図示したが、本発明に用いられる流延支持体としては、回転ドラム(流延ドラム)などを用いることもできる。
【0022】
除電搬送機40には、除電器41とローラ(渡りローラとも称する)42とが備えられている。除電器41には、空気を放電によりイオン化しそのイオンにより除電を行う電圧印加式除電器や自己放電式除電器などが用いられることが好ましいが、それらに限定されるものではない。また、渡りローラ42は、図1では、2本備えられているものを示したが、本発明において用いられる渡りローラの数、設置位置などは図示したものに限定されるものではない。後述するフイルムの巻取直前に行われる表面電位の測定結果に基づき、フイルム表面電位が±5kV以内となるように除電器41により軟膜37の表面電位を調整することが好ましい。より好ましくは、±2kV以内であり、最も好ましくは±1kV以内とすることである。その後に、軟膜37は乾燥機50に送られる。
【0023】
乾燥機50は、テンタ乾燥装置51と乾燥室52とからなるものを図示したが本発明の形態はそれに限定されるものではない。軟膜37は、テンタ乾燥装置51によりその縁がテンタクリップにより挟持され搬送されながら乾燥する。本発明においてテンタ乾燥装置51で80℃〜140℃の範囲で、0.3min〜1.5min乾燥させることが好ましいが、これら範囲に限定されるものではない。フイルム55は、テンタ乾燥装置51から送り出され、さらに乾燥室52に送られる。乾燥室52では、多数のローラ53に巻き掛かりながら搬送され乾燥される。以下、乾燥した軟膜37をフイルム55と称する。本発明においては、乾燥室52の温度を90℃〜140℃の範囲に調整し、5min〜120minの間乾燥させることが好ましいが、これら範囲に限定されるものではない。さらに、フイルム55を冷却機60に送り出し、冷却装置61を用いて室温程度まで冷却されるが、冷却温度はその温度に限定されるものではない。なお、本発明に用いられる冷却機60は、図示したものに限定されるものではない。
【0024】
その後にフイルム55を測定機65に送り表面電位計66によりフイルム55の表面電位を測定する。この測定された電位に従い、前述した除電器41により軟膜37の表面電位を調整する。表面電位測定直後に巻取機70の巻取機本体71によりフイルム55を巻き取る。
【0025】
巻取機70が設置されている第1クリーンルームは、作業室20aとして区画部材20bにより仕切られている。作業室20aには、巻取機本体71の巻き軸を交換するために作業者が出入可能なように出入口72が設けられ、さらに作業室20a内の大気をクリーンに保持するため、大気循環システム24が取り付けられている。なお、本発明において区画部材20bに開閉可能なものを用い、作業室20aで作業終了後に区画部材20bを開けることにより、大気循環システム21を用いて作業室20a内の雰囲気をクリーンなものとしても良い。または、2台の大気循環システム21,24を一体としたシステムを用いても良い。
【0026】
作業室20a内で作業するために、出入口72を開けた際、作業室20a内に第2クリーンルーム22内のゴミなどを吸引しないようにすることが好ましい。そのために、作業室20a内と第2クリーンルーム22内とのそれぞれに圧力計73,74を設置して、それら圧力計73,74で測定された値を制御部75へ送信して大気循環システム21,23,24の調整を行う。本発明において、作業室20a内の圧力P1と第2クリーンルーム22内の圧力P2との圧力差(P1−P2)は、プラスであることが好ましく、より好ましくは100Pa以内とし、最も好ましくは0.1Pa〜10Paの範囲にすることで、フイルム55へ影響を及ぼすことなく作業室20a内にゴミなどの吸引を防止できる。
【0027】
また、第1クリーンルーム(作業室20aも含む)20のクリーン度を良好なものに保つため、第1クリーンルーム20内に持ち込まれる保守管理用部品,作業者の作業着などの部材を無塵部材を用いることが好ましい。無塵部材には、タイベックス,ポリプロピレン,ゴアテックス,ポリエステル,ナイロン不織布などが挙げられるが、本発明に用いられる無塵部材は前述したものに限定されるものではない。
【0028】
前述したフイルム55は、製膜される際に通過する各機器30,40,50,60,65,70がクリーン度に優れた第1クリーンルーム内に設置され、さらに溶媒を多量に含んだ軟膜37の状態でその表面電位を調整するため、基準面積あたりで10μm以上の異物の数を30個以下とすることが可能となる。さらに、表面電位とクリーン度とをより調整することにより異物の数を基準面積あたり10個以下とすることが容易であり、最も調整することにより異物の数を基準面積あたり5個以下とすることができる。
【0029】
図1に示すフイルム製膜ライン10は、流延ダイ31を1台用いた流延方法であるが、本発明の溶液製膜方法はその流延方法に限定されるものではない。例えば、マルチマニホールド流延ダイを用いたり、流延ダイの上流側にフィードブロックを取り付けて共流延法による溶液製膜方法や、複数の流延ダイを流延支持体上に配置する逐次流延法や、共流延法と逐次流延法とを組み合わせて行う逐次共流延法などに適用できる。
【0030】
[偏光板及び液晶表示装置]
本発明の溶液製膜方法により製膜されたフイルム55は偏光板保護膜などの光学用フイルムとして用いることができる。この偏光板保護膜(偏光板保護フイルム)をポリビニルアルコールなどから形成された偏光膜の両面に貼付することで偏光板を作製できる。さらに、上記フイルムに光学補償シートを貼付した光学補償フイルム、防眩層をフイルム上に形成した反射防止膜などの光機能性膜として用いることもできる。これら偏光板などの製品から、液晶表示装置の一部である液晶表示板を構成することも可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例などを挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。始めに、各実験で共通する製膜条件について説明する。そして、実験1ないし実験5についてそれぞれ説明し、後に表1ないし表5として実験条件及び結果をまとめて示す。
【0032】
[フイルム製膜条件]
ドープは、ジクロロメタン(92重量部)、メタノール(8重量部)からなる混合溶媒を用いた。固形分として、ポリマーには、木材,綿を原料とした酢化度61%のセルロースアセテート(100重量部)を用い、添加剤として可塑剤であるTPP(7重量部)とBDP(5重量部)とを用いた。ドープ調製には、ジクロロメタンを主溶媒としたときの公知の方法により行い、固形分濃度を19.0重量%に調製した。このドープ12を静置脱泡した。
【0033】
図1に示したフイルム製膜ライン10を用いてフイルムの製膜を行った。前述したドープ12をポンプ14により濾過装置15に送液し、不純物を除去した。流延は、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように行った。ゲル膜35が自己支持性を有するようになった後に、剥取ローラ36に支持されながらゲル膜35を剥ぎ取り、軟膜37を得た。
【0034】
除電器(静電印加自己放電式除電器)41を用いて目的とする表面電位となるように軟膜37の表面電位を調整した。なお、各実験における表面電位は後に説明する。さらに、軟膜37をテンタ乾燥装置51により乾燥し、さらに乾燥室52で乾燥してフイルム55を得た。このフイルム55を冷却装置61で冷却した後に、表面電位計(シシド静電気株式会社製 STATIRON−DZ3)66によりフイルム表面の電位を測定し、フイルム表面の異物付着については、10μm以上の異物を検出できるレーザー透過式面検機76により巻取機本体71で巻き取る前で異物のカウントを行い、フイルム55を巻取機本体71により巻き取った。
【0035】
第1及び第2クリーンルーム20,22内のクリーン度は、近藤工業株式会社製 ハイアック/ロイコ 気体微粒子カウンターMODEL5300(図示しない)を用いてJIS B9920規格に換算した。評価は、前記基準面積中でカウントされた異物の数により、5個以下である極めて良好(◎)、6個〜10個である良好(○)、11個〜30個の範囲でありやや不良であるが製品の種類によっては使用可能である(△)、31個以上の異物がカウントされフイルムとして使用不可能(×)の4段階に評価した。
【0036】
<実験1>
実験1では、第1クリーンルーム20内のクリーン度を替えて実験を行った。クリーン度の変更は、大気循環システム21のフィルタ(図示しない)を替えることなどにより行った。下記の表1から第1クリーンルーム20のクリーン度をクラス7以下とすることが好ましいことが分かる。
【表1】
【0037】
<実験2>
実験2では、フイルム55の帯電量を替えた実験を行った。なお、帯電量は表面電位計66で測定された値に基づき、除電器41により除電量を調整することにより変化させた。表2より約−5kV以内であれば好ましいことが分かる。
【0038】
【表2】
【0039】
<実験3>
実験3では、第2クリーンルーム22のクリーン度を替えた実験を行った。なお、表3中の規格外とは、第2クリーンルーム22に取り付けられているドア22aを開放した状態を意味している。表3より本発明に用いられる各機器30,40,50,60,65,70が設置されている第1クリーンルーム20を第2クリーンルーム22内に設けることで、フイルム55中の異物個数を減少させることが分かる。
【0040】
【表3】
【0041】
<実験4>
実験4では、作業室内20a内の圧力P1と第2クリーンルーム22内の圧力P2との圧力差(P1−P2)を替えた実験を行った。なお、第1クリーンルーム内のクリーン度はクラス6とし、第2クリーンルーム22内のクリーン度はクラス7〜8の範囲になるように調整した。また、フイルム55の表面電位は−1kVとした。表4から圧力差(P1−P2)を好ましくは0Paより大きく50Pa以下の範囲とすると異物の付着を抑制できることが分かる。
【0042】
【表4】
【0043】
<実験5>
実験5では、フイルム製膜中の作業室内20aにポリエステル不織布の作業着をおき、1時間経過後のフイルム表面の異物をカウントした。なお、第1クリーンルーム内のクリーン度はクラス6とし、フイルム55の表面電位は−1kVとした。表5から無塵部材を用いることで、異物の付着を抑制できることが分かる。
【0044】
【表5】
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延支持体に流延する流延手段と、前記ドープから形成されたゲル膜を前記流延支持体から剥ぎ取る剥取手段と、前記ゲル膜を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されたゲル膜を乾燥する乾燥手段と、前記ゲル膜を乾燥して得られたフイルムを巻き取る巻取手段とを含む機器を用いてフイルムを製膜する溶液製膜方法において、
(1)前記巻き取る際のフイルムの表面電位を±5kV以内とし、かつ前記機器をJIS B9920に規定されるクラス7以下の第1クリーンルーム内に備える。
(2)前記第1クリーンルームをJIS B9920で規定されるクラス8以下の第2のクリーンルーム内に設ける。
(3)前記第1クリーンルームの圧力であって、前記第2クリーンルームと通じる部分の圧力を、前記第2クリーンルームの圧力より高くする。
前記(1)〜(3)を単独又は適宜組み合わせることにより、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mのフイルムに付着している10μm以上の異物の個数が30個以下とすることができる。また、そのフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置は、フイルムの輝点欠陥が減少しているため光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの概略図である。
【符号の説明】
10 フイルム製膜ライン
20 第1クリーンルーム
20a 作業室
22 第2クリーンルーム
30 流延剥取機
40 除電搬送機
50 乾燥機
55 フイルム
60 冷却機
65 測定機
70 巻取機
73,74 圧力計
P1 作業室内圧力
P2 第2クリーンルーム内圧力
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液製膜方法並びにその方法により製膜したフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶液製膜方法は、高分子材料(ポリマー)を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する)を、ダイより支持体上に流延し、乾燥、剥離して得られた軟膜(ウェブとも称する)からフイルムを製造する方法である。この方法で製造されるフイルムは、溶融押出法で得られるフイルムに比べ、光学等方性、厚み均一性に優れ、また、異物も少ないため、偏光膜保護フイルム、位相差フイルム、透明導電性フイルムなどのオプト・エレクトロニクス用途に利用されている。
【0003】
特に、ポリマーとしてセルロースエステルを用いた溶液製膜方法によるセルロースエステルフイルムの製造方法において、ウェブを支持体から剥離してから乾燥機で乾燥し終わるまでのあいだ、ウェブ表面の電位を−5kV〜+5kVとして製造することを特徴とするセルロースエステルフイルムの製造方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−129839号公報 (第5−6頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した方法は、皺状厚みムラに対して効果があるのみで、ウェブ表面に付着する異物を抑えることが出来ない。LCDが高精細になる今日、表面電位の除電のみではなく、異物付着の抑制を行わなくてはならなくなった。また、次工程の鹸化液等の液への汚染も起こす。高密度、高精細化がもとめられる今日のLCDにおいてはこの様な付着異物の軽減が求められている。
【0006】
本発明は、平滑性に優れて異物付着の少ないフイルムを製膜する溶液製膜方法並びにそのフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、表面電位の高いウェブが製膜設備(以下、フイルム製膜ラインと称する)を通過することにより、ウェブ表面に異物が付着することを見出した。その付着した異物が、製膜されたフイルムを用いて構成された液晶表示装置において輝点欠陥の原因となり、偏光板の品質を大きく落とすことも見出した。さらに、ウェブの表面に付着する異物はウェブの表面電位とウェブを作製する際の雰囲気に相関があることを見出し、それらを規定することにより上記課題を解決することができる。
【0008】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延支持体に流延する流延手段と、前記ドープから形成されたゲル膜を前記流延支持体から剥ぎ取る剥取手段と、前記ゲル膜を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されたゲル膜を乾燥する乾燥手段と、前記ゲル膜を乾燥して得られたフイルムを巻き取る巻取手段とを含む機器を用いてフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mのフイルムに付着している10μm以上の異物の個数が30個以下になる。以下、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mからなる面積を本発明では基準面積と称する。また、基準面積あたりの10μm以上の異物の個数は10個以下がより好ましく、最も好ましくは5個以下とする。
【0009】
前記巻き取る際のフイルムの表面電位を±5kV以内とし、かつ前記機器をJIS B9920に規定されるクラス7以下の第1クリーンルーム内に備えたものを用いることが好ましい。なお、前記フイルムの表面電位は、±2kV以内がより好ましく、最も好ましくは±1kVとすることである。また、前記第1クリーンルームをJIS B9920で規定されるクラス8以下の第2のクリーンルーム内に設けたものを用いることがより好ましい。さらに、前記第1クリーンルームの圧力であって、前記第2クリーンルームと通じる部分の圧力を、前記第2クリーンルームの圧力より高くすることが好ましい。さらには、前記部分に、前記巻取手段が設けられていることが好ましい。
【0010】
前記第1クリーンルーム内で用いられる部材が、無塵部材であることが好ましい。また、前記無塵部材には、タイベックス(商標),ポリプロピレン,ゴアテクッス(商標),ポリエステル,ナイロン不織布,ポリプロピレン不織布,ポリエステル不織布のうち少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0011】
前記ポリマーがセルロースアシレートであることが好ましく、セルロースアセテートであることがより好ましく、最も好ましくはセルローストリアセテートである。また、本発明には前記溶液製膜方法で製膜されたフイルムを使用した偏光板、液晶表示装置も含まれる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[溶媒]
本発明の溶液製膜方法に用いられるドープを調製するための溶媒は、公知のいずれの溶媒をも用いることができる。特に、メチレンクロライド(ジクロロメタン)などのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチルなどのエステル類、エーテル類、アルコール類(例えば、メタノール,メタノール,n−ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)などが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒を複数混合させた溶媒からドープを調製し、そのドープからフイルムを製膜することもできる。
【0013】
[ポリマー]
本発明に用いられるポリマーは特に限定されるものではない。例えば、セルロースアシレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いることが好ましく、特に酢化度59.0%〜62.5%のセルローストリアセテート(TAC)を用いることが好ましい。また、TACを用いる場合には、その原料が綿花リンタのものと木材パルプのものがあり、それらを単独で用いたTACであっても良いし、それらを混合したTACを用いても良い。
【0014】
[添加剤]
ドープには、公知の添加剤のいずれをも添加させることが可能である。添加剤としては、可塑剤(トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する),ビフェニルジフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)など),紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物など),二酸化ケイ素などのマット剤,増粘剤,オイルゲル化剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの添加剤は、ドープを調製する際にポリマーと共に混合することも可能である。また、ドープを調製した後、移送する際に静止型混合器などを用いてインライン混合することも可能である。なお、本発明において前記ポリマーと添加剤とを併せて固形分と称する。
【0015】
[ドープの調製]
前述した固形分(ポリマー及び添加剤)を前述した溶媒(混合溶媒であっても良い)に仕込んだ後に、公知のいずれかの溶解方法により溶解させドープを調製する。このドープは濾過により異物を除去する事が一般的である。濾過には濾紙,濾布,不織布,金属メッシュ,焼結金属,多孔板などの公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、ドープ中の異物,未溶解物を除去することができ、製品フイルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
【0016】
また、一度調製したドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。加熱には静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いてドープを移送しながら加熱する方法などもある。また、加熱工程の後に冷却工程を実施することもできる。また、装置の内部を加圧することにより、ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの処理を行うことにより、微小の未溶解物を完全に溶解することができ、濾過の負荷軽減、フイルム中の異物の減少をはかることができる。
【0017】
本発明において、ドープの固形分の重量百分率(ドープ固形分濃度)は、12重量%〜25重量%が好ましく、より好ましくは18重量%〜20重量%である。12重量%未満であると、ドープの固形分濃度が低すぎるため、ドープから形成されるゲル膜が好ましいフイルム応力を有するまでに時間がかかる場合があり、コストの点から問題が生じる場合がある。また、固形分濃度が低すぎるとドープを流延した際に、ゲル膜が形成されない場合もある。また、25重量%を超えると、ドープの粘度が高くなりすぎてビードのレベリング効果(平滑化)が発現しにくくなり、均一なフイルムの形成が困難な場合もある。
【0018】
[溶液製膜方法]
図1は本発明に係る溶液製膜方法を実施するために用いられるフイルム製膜ライン10の概略図を示している。ミキシングタンク11内には、前述した方法で調製されたドープ12が仕込まれて、撹拌翼13で撹拌されて均一になっている。ドープ12は、ポンプ14により濾過装置15に送られて不純物が除去される。
【0019】
本発明に用いられるフイルム製膜ライン10には、流延剥取機30、除電搬送機40、乾燥機50、冷却機60、測定機65、巻取機70などが備えられている。それら各機器40,50,60,65,70は、第1クリーンルーム20内に設けられている。大気循環システム21により第1クリーンルーム20内は、JIS B9920で規定されるクラス7以下のクリーン度に保たれている。なお、Feb.Std.209Eでは、クラス10000として規定される。以下、JIS B9920で規定されるクリーン度を単にクラスと称し、Feb.Std.209Eで規定されるクリーン度をFSクラスと称する。本発明において第1クリーンルーム20内のクリーン度は、クラス6(FSクラス1000)以下とすることがより好ましく、最も好ましくは、クラス5(FSクラス100)以下に保つことである。
【0020】
また、第1クリーンルーム20の外には、その中に設置されている各機器30,40,50,60,65,70の点検、保守管理などを行うための部屋が設けられていることが好ましい。本発明においては、この部屋に大気循環システム23を取り付けてクリーンルーム(以下、第2クリーンルームと称する)22とし、第2クリーンルーム22が第1クリーンルーム20を覆った形態であることが最も好ましいが、それに限定されるものではない。なお、第2クリーンルーム22内のクリーン度は、クラス8(FSクラスでは100000)以下とすることが好ましい。
【0021】
流延剥取機30に流延ダイ31が、流延ベルト32上に配置されている。前述したドープ12が一定の流量で流延ダイ31から流延ベルト32上に流延される。流延ベルト32は回転ローラ33,34が図示しない回転駆動装置により回転することに伴い無端走行する。ドープ12は、流延ベルト32上でゲル膜(流延膜と称されるものをも意味している)35となる。ゲル膜35が自己支持性を有するようになった後に、剥取ローラ36により支持されながらゲル膜35を剥ぎ取って軟膜37を得る。軟膜37は、除電搬送機40に送られる。なお、フイルム製膜ライン10では、流延支持体として流延ベルト32を図示したが、本発明に用いられる流延支持体としては、回転ドラム(流延ドラム)などを用いることもできる。
【0022】
除電搬送機40には、除電器41とローラ(渡りローラとも称する)42とが備えられている。除電器41には、空気を放電によりイオン化しそのイオンにより除電を行う電圧印加式除電器や自己放電式除電器などが用いられることが好ましいが、それらに限定されるものではない。また、渡りローラ42は、図1では、2本備えられているものを示したが、本発明において用いられる渡りローラの数、設置位置などは図示したものに限定されるものではない。後述するフイルムの巻取直前に行われる表面電位の測定結果に基づき、フイルム表面電位が±5kV以内となるように除電器41により軟膜37の表面電位を調整することが好ましい。より好ましくは、±2kV以内であり、最も好ましくは±1kV以内とすることである。その後に、軟膜37は乾燥機50に送られる。
【0023】
乾燥機50は、テンタ乾燥装置51と乾燥室52とからなるものを図示したが本発明の形態はそれに限定されるものではない。軟膜37は、テンタ乾燥装置51によりその縁がテンタクリップにより挟持され搬送されながら乾燥する。本発明においてテンタ乾燥装置51で80℃〜140℃の範囲で、0.3min〜1.5min乾燥させることが好ましいが、これら範囲に限定されるものではない。フイルム55は、テンタ乾燥装置51から送り出され、さらに乾燥室52に送られる。乾燥室52では、多数のローラ53に巻き掛かりながら搬送され乾燥される。以下、乾燥した軟膜37をフイルム55と称する。本発明においては、乾燥室52の温度を90℃〜140℃の範囲に調整し、5min〜120minの間乾燥させることが好ましいが、これら範囲に限定されるものではない。さらに、フイルム55を冷却機60に送り出し、冷却装置61を用いて室温程度まで冷却されるが、冷却温度はその温度に限定されるものではない。なお、本発明に用いられる冷却機60は、図示したものに限定されるものではない。
【0024】
その後にフイルム55を測定機65に送り表面電位計66によりフイルム55の表面電位を測定する。この測定された電位に従い、前述した除電器41により軟膜37の表面電位を調整する。表面電位測定直後に巻取機70の巻取機本体71によりフイルム55を巻き取る。
【0025】
巻取機70が設置されている第1クリーンルームは、作業室20aとして区画部材20bにより仕切られている。作業室20aには、巻取機本体71の巻き軸を交換するために作業者が出入可能なように出入口72が設けられ、さらに作業室20a内の大気をクリーンに保持するため、大気循環システム24が取り付けられている。なお、本発明において区画部材20bに開閉可能なものを用い、作業室20aで作業終了後に区画部材20bを開けることにより、大気循環システム21を用いて作業室20a内の雰囲気をクリーンなものとしても良い。または、2台の大気循環システム21,24を一体としたシステムを用いても良い。
【0026】
作業室20a内で作業するために、出入口72を開けた際、作業室20a内に第2クリーンルーム22内のゴミなどを吸引しないようにすることが好ましい。そのために、作業室20a内と第2クリーンルーム22内とのそれぞれに圧力計73,74を設置して、それら圧力計73,74で測定された値を制御部75へ送信して大気循環システム21,23,24の調整を行う。本発明において、作業室20a内の圧力P1と第2クリーンルーム22内の圧力P2との圧力差(P1−P2)は、プラスであることが好ましく、より好ましくは100Pa以内とし、最も好ましくは0.1Pa〜10Paの範囲にすることで、フイルム55へ影響を及ぼすことなく作業室20a内にゴミなどの吸引を防止できる。
【0027】
また、第1クリーンルーム(作業室20aも含む)20のクリーン度を良好なものに保つため、第1クリーンルーム20内に持ち込まれる保守管理用部品,作業者の作業着などの部材を無塵部材を用いることが好ましい。無塵部材には、タイベックス,ポリプロピレン,ゴアテックス,ポリエステル,ナイロン不織布などが挙げられるが、本発明に用いられる無塵部材は前述したものに限定されるものではない。
【0028】
前述したフイルム55は、製膜される際に通過する各機器30,40,50,60,65,70がクリーン度に優れた第1クリーンルーム内に設置され、さらに溶媒を多量に含んだ軟膜37の状態でその表面電位を調整するため、基準面積あたりで10μm以上の異物の数を30個以下とすることが可能となる。さらに、表面電位とクリーン度とをより調整することにより異物の数を基準面積あたり10個以下とすることが容易であり、最も調整することにより異物の数を基準面積あたり5個以下とすることができる。
【0029】
図1に示すフイルム製膜ライン10は、流延ダイ31を1台用いた流延方法であるが、本発明の溶液製膜方法はその流延方法に限定されるものではない。例えば、マルチマニホールド流延ダイを用いたり、流延ダイの上流側にフィードブロックを取り付けて共流延法による溶液製膜方法や、複数の流延ダイを流延支持体上に配置する逐次流延法や、共流延法と逐次流延法とを組み合わせて行う逐次共流延法などに適用できる。
【0030】
[偏光板及び液晶表示装置]
本発明の溶液製膜方法により製膜されたフイルム55は偏光板保護膜などの光学用フイルムとして用いることができる。この偏光板保護膜(偏光板保護フイルム)をポリビニルアルコールなどから形成された偏光膜の両面に貼付することで偏光板を作製できる。さらに、上記フイルムに光学補償シートを貼付した光学補償フイルム、防眩層をフイルム上に形成した反射防止膜などの光機能性膜として用いることもできる。これら偏光板などの製品から、液晶表示装置の一部である液晶表示板を構成することも可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例などを挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。始めに、各実験で共通する製膜条件について説明する。そして、実験1ないし実験5についてそれぞれ説明し、後に表1ないし表5として実験条件及び結果をまとめて示す。
【0032】
[フイルム製膜条件]
ドープは、ジクロロメタン(92重量部)、メタノール(8重量部)からなる混合溶媒を用いた。固形分として、ポリマーには、木材,綿を原料とした酢化度61%のセルロースアセテート(100重量部)を用い、添加剤として可塑剤であるTPP(7重量部)とBDP(5重量部)とを用いた。ドープ調製には、ジクロロメタンを主溶媒としたときの公知の方法により行い、固形分濃度を19.0重量%に調製した。このドープ12を静置脱泡した。
【0033】
図1に示したフイルム製膜ライン10を用いてフイルムの製膜を行った。前述したドープ12をポンプ14により濾過装置15に送液し、不純物を除去した。流延は、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように行った。ゲル膜35が自己支持性を有するようになった後に、剥取ローラ36に支持されながらゲル膜35を剥ぎ取り、軟膜37を得た。
【0034】
除電器(静電印加自己放電式除電器)41を用いて目的とする表面電位となるように軟膜37の表面電位を調整した。なお、各実験における表面電位は後に説明する。さらに、軟膜37をテンタ乾燥装置51により乾燥し、さらに乾燥室52で乾燥してフイルム55を得た。このフイルム55を冷却装置61で冷却した後に、表面電位計(シシド静電気株式会社製 STATIRON−DZ3)66によりフイルム表面の電位を測定し、フイルム表面の異物付着については、10μm以上の異物を検出できるレーザー透過式面検機76により巻取機本体71で巻き取る前で異物のカウントを行い、フイルム55を巻取機本体71により巻き取った。
【0035】
第1及び第2クリーンルーム20,22内のクリーン度は、近藤工業株式会社製 ハイアック/ロイコ 気体微粒子カウンターMODEL5300(図示しない)を用いてJIS B9920規格に換算した。評価は、前記基準面積中でカウントされた異物の数により、5個以下である極めて良好(◎)、6個〜10個である良好(○)、11個〜30個の範囲でありやや不良であるが製品の種類によっては使用可能である(△)、31個以上の異物がカウントされフイルムとして使用不可能(×)の4段階に評価した。
【0036】
<実験1>
実験1では、第1クリーンルーム20内のクリーン度を替えて実験を行った。クリーン度の変更は、大気循環システム21のフィルタ(図示しない)を替えることなどにより行った。下記の表1から第1クリーンルーム20のクリーン度をクラス7以下とすることが好ましいことが分かる。
【表1】
【0037】
<実験2>
実験2では、フイルム55の帯電量を替えた実験を行った。なお、帯電量は表面電位計66で測定された値に基づき、除電器41により除電量を調整することにより変化させた。表2より約−5kV以内であれば好ましいことが分かる。
【0038】
【表2】
【0039】
<実験3>
実験3では、第2クリーンルーム22のクリーン度を替えた実験を行った。なお、表3中の規格外とは、第2クリーンルーム22に取り付けられているドア22aを開放した状態を意味している。表3より本発明に用いられる各機器30,40,50,60,65,70が設置されている第1クリーンルーム20を第2クリーンルーム22内に設けることで、フイルム55中の異物個数を減少させることが分かる。
【0040】
【表3】
【0041】
<実験4>
実験4では、作業室内20a内の圧力P1と第2クリーンルーム22内の圧力P2との圧力差(P1−P2)を替えた実験を行った。なお、第1クリーンルーム内のクリーン度はクラス6とし、第2クリーンルーム22内のクリーン度はクラス7〜8の範囲になるように調整した。また、フイルム55の表面電位は−1kVとした。表4から圧力差(P1−P2)を好ましくは0Paより大きく50Pa以下の範囲とすると異物の付着を抑制できることが分かる。
【0042】
【表4】
【0043】
<実験5>
実験5では、フイルム製膜中の作業室内20aにポリエステル不織布の作業着をおき、1時間経過後のフイルム表面の異物をカウントした。なお、第1クリーンルーム内のクリーン度はクラス6とし、フイルム55の表面電位は−1kVとした。表5から無塵部材を用いることで、異物の付着を抑制できることが分かる。
【0044】
【表5】
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延支持体に流延する流延手段と、前記ドープから形成されたゲル膜を前記流延支持体から剥ぎ取る剥取手段と、前記ゲル膜を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されたゲル膜を乾燥する乾燥手段と、前記ゲル膜を乾燥して得られたフイルムを巻き取る巻取手段とを含む機器を用いてフイルムを製膜する溶液製膜方法において、
(1)前記巻き取る際のフイルムの表面電位を±5kV以内とし、かつ前記機器をJIS B9920に規定されるクラス7以下の第1クリーンルーム内に備える。
(2)前記第1クリーンルームをJIS B9920で規定されるクラス8以下の第2のクリーンルーム内に設ける。
(3)前記第1クリーンルームの圧力であって、前記第2クリーンルームと通じる部分の圧力を、前記第2クリーンルームの圧力より高くする。
前記(1)〜(3)を単独又は適宜組み合わせることにより、前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mのフイルムに付着している10μm以上の異物の個数が30個以下とすることができる。また、そのフイルムを用いて構成された偏光板及び液晶表示装置は、フイルムの輝点欠陥が減少しているため光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの概略図である。
【符号の説明】
10 フイルム製膜ライン
20 第1クリーンルーム
20a 作業室
22 第2クリーンルーム
30 流延剥取機
40 除電搬送機
50 乾燥機
55 フイルム
60 冷却機
65 測定機
70 巻取機
73,74 圧力計
P1 作業室内圧力
P2 第2クリーンルーム内圧力
Claims (9)
- ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延支持体に流延する流延手段と、
前記ドープから形成されたゲル膜を前記流延支持体から剥ぎ取る剥取手段と、
前記ゲル膜を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されたゲル膜を乾燥する乾燥手段と、
前記ゲル膜を乾燥して得られたフイルムを巻き取る巻取手段とを含む機器を用いてフイルムを製膜する溶液製膜方法において、
前記フイルムの製膜方向で100m、かつ前記フイルムの幅方向で1.4mのフイルムに付着している10μm以上の異物の個数が30個以下であることを特徴とする溶液製膜方法。 - 前記巻き取る際のフイルムの表面電位を±5kV以内とし、かつ前記機器をJIS B9920に規定されるクラス7以下の第1クリーンルーム内に備えたものを用いることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
- 前記第1クリーンルームを
JIS B9920で規定されるクラス8以下の第2のクリーンルーム内に設けたものを用いることを特徴とする請求項2記載の溶液製膜方法。 - 前記第1クリーンルームの圧力であって、
前記第2クリーンルームと通じる部分の圧力を、前記第2クリーンルームの圧力より高くすることを特徴とする請求項3記載の溶液製膜方法。 - 前記部分に、前記巻取手段が設けられていることを特徴とする請求項4記載の溶液製膜方法。
- 前記第1クリーンルーム内で用いられる部材が、
無塵部材であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の溶液製膜方法。 - 前記ポリマーがセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
- 請求項1ないし7いずれか1つ記載の溶液製膜方法で製膜されたフイルムを使用したことを特徴とする偏光板。
- 請求項1ないし7いずれか1つ記載の溶液製膜方法で製膜されたフイルムを使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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