JP2004183757A - 車両用自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】学習制御手段144によって、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速中において自動変速機14の入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)の落込み量NUSMAXが所定値(目標アンダーシュート量NUSU)を超えたことに基づいて、その入力軸回転速度NINの落込み量が少なくなるように、クラッチツウクラッチダウン変速のために作動させられる油圧式摩擦係合装置の係合圧が学習制御により補正されるので、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速時において、エンジン回転速度NEの落込みが自動的に抑制されて、その落込みに起因する変速ショックや変速時間の遅延が好適に解消される。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速走行中に実行されるクラッチツウクラッチダウン変速期間内に発生する入力軸回転速度の落込みを抑制することができる車両用自動変速機の変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クラッチツウクラッチダウン変速を実行するに際して、ダウン変速判断があった場合にそのダウン変速前にギヤ段を達成するために係合させられていた解放側油圧式摩擦係合装置の係合圧を低下させるとともに、変速後のギヤ段を達成させるための係合側油圧式摩擦係合装置の係合圧を上昇させる変速油圧制御を実行する車両用自動変速機の変速制御装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載された車両用自動変速機の変速制御装置がそれである。これによれば、上記クラッチツウクラッチダウン変速期間内において、係合側油圧式摩擦係合装置の伝達トルク容量が一定となるように、すなわち自動変速機の入力軸回転速度が一定の上昇率で上昇するように、その係合側油圧式摩擦係合装置の係合圧がフィードバック制御される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−287318号公報
【特許文献2】特開2002−01234号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような車両用自動変速機の変速制御装置において、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速期間内にエンジン回転速度が一旦落込むと、係合側油圧式摩擦係合装置の係合によってそのエンジン回転速度が引き上げられることにより、変速ショック或いは変速時間の遅延が発生するという問題があった。また、落込みによって不要にエンジンへの燃料供給が再開されて、燃費が悪化傾向となる場合があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速時において、エンジン回転速度の落込みが自動的に抑制されて、その落込みに起因する変速ショックや変速時間の遅延が好適に解消され、その落込みによってエンジンへの燃料供給が再開されて燃費が悪化傾向となることが好適に防止される車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) エンジン回転速度が所定値を超えた減速走行時にエンジンに供給される燃料を遮断するフューエルカット装置と、解放側油圧式摩擦係合装置の解放と係合側油圧式摩擦係合装置の係合とが実行されることにより変速が達成されるクラッチツウクラッチダウン変速が行われる自動変速機とを備えた車両用自動変速機の変速制御装置であって、(b) 前記クラッチツウクラッチダウン変速中において前記自動変速機の入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えたことに基づいて、その入力軸回転速度の落込み量が少なくなるように、前記クラッチツウクラッチダウン変速のために作動させられる油圧式摩擦係合装置の係合圧を学習制御により補正する学習制御手段を、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、学習制御手段によって、前記クラッチツウクラッチダウン変速中において前記自動変速機の入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えたことに基づいて、その入力軸回転速度の落込み量が少なくなるように、前記クラッチツウクラッチダウン変速のために作動させられる油圧式摩擦係合装置の係合圧が学習制御により補正されるので、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速時において、エンジン回転速度の落込みが自動的に抑制されて、その落込みに起因する変速ショックや変速時間の遅延が好適に解消される。また、その落込みがより大きくなることによってエンジンへの燃料供給が再開されて燃費が悪化傾向となることが好適に防止される。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記クラッチツウクラッチダウン変速指令が出されると、前記解放側摩擦係合装置の係合圧をその元圧よりも低く且つその解放側摩擦係合装置の解放開始圧よりも高く設定された所定の待機圧に所定時間保持した後、一定の変化率となるように連続的に減少させる一方で、入力軸回転速度が一定の上昇率で連続的に上昇するように前記係合側油圧式摩擦係合装置の係合圧を上昇させる変速油圧制御手段を、含むものである。このようにすれば、クラッチツウクラッチダウン変速指令が出されると、変速油圧制御手段により、前記解放側摩擦係合装置の係合圧をその元圧よりも低く且つその解放側摩擦係合装置の解放開始圧よりも高く設定された所定の待機圧にその解放側摩擦係合装置の係合圧が所定時間保持された後、一定の変化率となるように連続的に減少させられる一方で、入力軸回転速度が一定の上昇率で連続的に上昇するように係合側油圧式摩擦係合装置の係合圧を上昇させるので、クラッチツウクラッチダウン変速が好適に実行される。
【0009】
また、好適には、前記学習制御手段は、前記入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えた場合には、前記解放側摩擦係合装置の待機圧保持時間を長くするように学習補正するものである。このようにすれば、前記入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えた場合には、学習制御手段によって、解放側摩擦係合装置の待機圧保持時間が長くなるように学習補正されるので、入力軸回転速度の落込み量が小さくされる。
【0010】
また、好適には、前記学習制御手段は、前記自動変速機の入力軸回転速度の落込み量が前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動状態が解除されない大きさである場合には、その落込み量にゲインを乗算して学習補正値を算出し、それまでのクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置の保持圧からの減少開始時間にその学習補正値を加算することにより、次回のクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置の保持圧からの減少開始時間とするものである。このようにすれば、前記入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えた場合には、学習制御手段によって、解放側摩擦係合装置の待機圧保持時間が長くなるように学習補正されるので、入力軸回転速度の落込み量が小さくされる。
【0011】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型の車両用駆動装置の骨子図であり、ガソリンエンジン等の内燃機関によって構成されているエンジン10の出力は、トルクコンバータ12、自動変速機14、差動歯車装置16等の動力伝達装置を経て図示しない駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸18と連結されているポンプ翼車20と、自動変速機14の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ26を介して非回転部材であるハウジング28に固定されたステータ30と、図示しないダンパを介してクランク軸18を入力軸22に直結するロックアップクラッチ32とを備えている。ポンプ翼車20にはギヤポンプ等の機械式のオイルポンプ21が連結されており、エンジン10によりポンプ翼車20と共に回転駆動されて変速用や潤滑用などの油圧を発生するようになっている。上記エンジン10は車両走行用の駆動力源であり、トルクコンバータ12は流体継手である。
【0013】
自動変速機14は、入力軸22上に同軸に配設されるとともにキャリヤとリングギヤとがそれぞれ相互に連結されることにより所謂CR−CR結合の遊星歯車機構を構成するシングルピニオン型の一対の第1遊星歯車装置40および第2遊星歯車装置42と、前記入力軸22と平行なカウンタ軸44上に同軸に配置された1組の第3遊星歯車装置46と、そのカウンタ軸44の軸端に固定されて差動歯車装置16と噛み合う出力ギヤ48とを備えている。上記遊星歯車装置40,42,46の各構成要素すなわちサンギヤ、リングギヤ、それらに噛み合う遊星ギヤを回転可能に支持するキャリヤは、4つのクラッチC0、C1、C2、C3によって互いに選択的に連結され、或いは3つのブレーキB1、B2、B3によって非回転部材であるハウジング28に選択的に連結されるようになっている。また、2つの一方向クラッチF1、F2によってその回転方向により相互に若しくはハウジング28と係合させられるようになっている。なお、差動歯車装置16は軸線(車軸)に対して対称的に構成されているため、下側を省略して示してある。
【0014】
上記入力軸22と同軸上に配置された一対の第1遊星歯車装置40,第2遊星歯車装置42、クラッチC0、C1、C2、ブレーキB1、B2、および一方向クラッチF1により前進4段、後進1段の主変速部MGが構成され、上記カウンタ軸44上に配置された1組の遊星歯車装置46、クラッチC3、ブレーキB3、一方向クラッチF2によって副変速部すなわちアンダードライブ部U/Dが構成されている。主変速部MGにおいては、入力軸22はクラッチC0、C1、C2を介して第2遊星歯車装置42のキャリヤK2、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1、第2遊星歯車装置42のサンギヤS2にそれぞれ連結されている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1と第2遊星歯車装置42のキャリヤK2との間、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と第1遊星歯車装置40のキャリヤK1との間はそれぞれ連結されており、第2遊星歯車装置42のサンギヤS2はブレーキB1を介して非回転部材であるハウジング28に連結され、第1遊星歯車装置40のリングギヤR1はブレーキB2を介して非回転部材であるハウジング28に連結されている。また、第2遊星歯車装置42のキャリヤK2と非回転部材であるハウジング28との間には、一方向クラッチF1が設けられている。そして、第1遊星歯車装置40のキャリヤK1に固定された第1カウンタギヤG1と第3遊星歯車装置46のリングギヤR3に固定された第2カウンタギヤG2とは相互に噛み合わされている。アンダードライブ部U/Dにおいては、第3遊星歯車装置46のキャリヤK3とサンギヤS3とがクラッチC3を介して相互に連結され、そのサンギヤS3と非回転部材であるハウジング28との間には、ブレーキB3と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。
【0015】
上記クラッチC0、C1、C2、C3およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイドS1〜S5、およびリニアソレノイドSL1、SL2、SLUの励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図3参照)の操作位置(ポジション)に応じて前進5段、後進1段、ニュートラルギヤ段の各ギヤ段が成立させられる。図2の「1st」〜「5th」は前進の第1速ギヤ段〜第5速ギヤ段を意味しており、「○」は係合、「×」は解放、「△」は駆動時のみ係合を意味している。シフトレバー72は、例えば図4に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、「4」、「3」、「2」、「L」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは動力伝達を遮断する非駆動ギヤ段としてニュートラルギヤ段が成立させられるが、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。また、「D」等の前進走行ポジションまたは「R」ポジションで成立させられる前進5段、後進1段の各ギヤ段は駆動ギヤ段に相当する。また、図2に示すように、第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間の変速は、クラッチC0の係合または解放とブレーキB1の解放または係合とが同時に実行されることにより達成されるクラッチツウクラッチ変速である。同様に、第3速ギヤ段と第4速ギヤ段との間の変速は、クラッチC1の係合または解放とブレーキB1の解放または係合とが略同時期に実行されることにより達成されるクラッチツウクラッチ変速である。上記油圧式摩擦係合装置には、タービントルクTTすなわち自動変速機14の入力トルクTIN或いはその代用値であるスロットル開度θTHに応じて調圧されるライン圧がその元圧として用いられる。
【0016】
図3は、図1のエンジン10や自動変速機14などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量(アクセル開度)Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセルペダル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン10の吸気配管には、図5に示す予め記憶(設定)された関係からアクセルペダル操作量Accに基づいて決定された開き角(開度)θTH(%)とされるようにスロットルアクチュエータ54によって開度が変化させられる電子スロットル弁56が設けられている。上記関係は、アクセルペダル操作量Accが多くなるほどスロットル開度θTHが大きくなるように設定されている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン10のアイドル回転速度NEIDLを制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン10の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速Vに対応するカウンタ軸44の回転速度NOUTを検出するための車速センサ66、エンジン10の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、フットブレーキ操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、第1カウンタギヤG1の回転速度NCを検出するためのカウンタ回転速度センサ80、イグニッションスイッチ82、ノックセンサ84などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL、カウンタ回転速度NC、イグニッションスイッチ82の操作位置、エンジン10のノッキングなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。ブレーキスイッチ70は、常用ブレーキを操作するブレーキペダルの踏込み状態でON、OFFが切り換わるON−OFFスイッチである。
【0017】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン10の出力制御や自動変速機14の変速制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。エンジン10の出力制御については、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図5に示す関係から実際のアクセルペダル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセルペダル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン10の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってクランク軸18をクランキングする。また、自動変速機14の変速制御については、例えば図6に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定しすなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行するとともに、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、油圧制御回路98のソレノイドS4、SRのON(励磁)、OFF(非励磁)を切り換えたり、リニアソレノイドSL1、SL2、SL3などの励磁状態をデューティ制御などで連続的に変化させたりする。図6の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って、変速比(=入力回転速度NIN/出力回転速度NOUT )が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「5」は第1速ギヤ段「1st」〜第5速ギヤ段「5th」を意味している。
【0018】
図7は、油圧制御回路98の要部であって3→2ダウン変速に関連する部分を示している。油圧ポンプ88から圧送された作動油は、リリーフ型の第1調圧弁100によって調圧されることによって第1ライン圧PL1とされ、その第1調圧弁100から流出させられた作動油はリリーフ型の第2調圧弁102によって調圧されることにより第2ライン油圧PL2とされるようになっている。上記第1ライン油圧PL1は、ライン油路L1を経て、シフトレバー72に連動させられるマニアル弁104に供給されている。シフトレバー72がDポジション(レンジ)或いはSポジション(レンジ)へ操作されているときには、このマニアル弁104からは第1ライン圧PL1と同じ大きさの前進ポジション圧PD がソレノイド弁SL1、SL2、SL3などの各ソレノイド弁や図示しないシフト弁へ供給される。図7では、3→2ダウン変速を達成するための解放されるクラッチC0および係合されるブレーキB1と、そのブレーキB1の係合圧PB1を直接制御するためのリニヤソレノイド弁SL3と、そのクラッチC0の係合圧PC0を直接制御するためのリニヤソレノイド弁SL2と、係合圧PB1を検出するためにブレーキB1に接続された油圧センサ106と、係合圧PC0を検出するためにクラッチC0に接続された油圧センサ108と、作動油供給時の係合圧PB1を調圧するためのB1クラッチコントロール弁110と、作動油供給時の係合圧PC0を調圧するためのC0クラッチコントロール弁112と、ブレーキB1の係合圧PB1の圧力上昇を緩和するためのB1アキュムレータ(蓄圧器)114と、クラッチC0の係合圧PC0の上昇を緩和するためのC0アキュムレータ(蓄圧器)116とが示されている。
【0019】
図8は、上記電子制御装置90の制御機能の要部すなわち自動変速機14の変速制御作動を説明する機能ブロック線図であり、図9は、自動変速機14のクラッチツウクラッチダウン変速の基本制御作動を示すタイムチャートである。図9に示す基本制御作動時の車両状態は、アクセルペダルが非操作の減速走行中でエンジン回転速度NEが予め設定されたフューエルカット下限回転速度(フューエルカット解除値CF)よりも高いときに実行されるフューエルカット装置118のフューエルカット(エンジン10への燃料遮断)作動が継続されている状態でたとえば3→2ダウン変速のようなクラッチツウクラッチダウン変速制御作動が実行される場合である。図8において、回転速度検出手段120はたとえばタービン回転速度センサ76からの信号によって前記タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出し、またたとえばエンジン回転速度センサ58からの信号によってエンジン10の回転速度NEを検出する。イナーシャ開始判定手段130は、減速走行中のダウン変速制御作動中に低速ギヤ段(第2速ギヤ段)への変速に伴って上記タービン回転速度NTが上昇を開始したかを判定する(t1時点)。
【0020】
変速状態判定手段122は、後述する変速油圧制御手段124の出力信号に基づいてそれによる前記自動変速機14の変速(油圧制御)が開始されたか否かを判定し(t0時点)、前記タービン回転速度NTが前記車速センサ66によって検出されたカウンタ軸44の回転速度NOUTと変速完了後のギヤ段(第2速ギヤ段)の変速比γ2から算出される回転速度γ2×NOUTに略一致したかに基づいて変速終了を判定し(t2時点)、ブレーキB1に接続された油圧センサ106によって検出された係合圧PB1が最大値に到達してブレーキB1が完全に係合されたことに基づいて変速油圧制御手段124による変速油圧制御が終了したかを判定する(t3時点)。また、フューエルカット制御手段126は、エンジン回転速度NEやアクセルペダル操作量Accなどに基づいて燃料供給の必要がないか否かを判断して、エンジン10への燃料供給を遮断する指令を前記フューエルカット装置118に出力する。たとえば、アクセルペダル操作量Accが零である減速走行時であり且つエンジン10の回転速度NEが予め決められた所定値(フューエルカット解除値CF)を下回らない場合にはフューエルカットが作動されるように遮断指令が出力されるが、その所定値までエンジン10の回転速度NEが低下させられると、フューエルカットが作動されないように遮断指令の出力が停止される。すなわちフューエルカット状態が解除させられる。フューエルカット状態判定手段128は、上記フューエルカット制御手段126の出力信号に基づいてそれによるフューエルカット状態が解除させられたか否かを判定する。
【0021】
変速油圧制御手段124は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段が決定されると、現在のギヤ段からその変速すべきギヤ段への切換が実行されるように油圧式摩擦係合装置の係合圧を変更するように前記油圧制御回路98に信号が出力される。たとえば図9に示す3→2クラッチツウクラッチダウン変速の場合は、係合側油圧式摩擦係合装置であるブレーキB1の係合圧PB1を直接制御するリニヤソレノイド弁SL3に係合側駆動信号SPB1と、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0を直接制御するリニヤソレノイド弁SL2に解放側駆動信号SPC0とが出力される。その係合側駆動信号SPB1は、変速開始点t0からtB1W時間の間において係合圧PB1をブレーキB1の係合開始圧よりも低く設定された所定の係合圧PB1Wに定圧待機させるための信号SPB1Wと、定圧待機後前記イナーシャ開始判定手段130によってイナーシャ開始が判定される時間(t1時点)までの間において予め設定された一定の変化率となるように係合圧PB1を連続的に上昇させる信号と、t1時点から変速状態判定手段122によって変速終了が判定される時間(t2時点)までの間において入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が予め設定された一定の上昇率で連続的に上昇させるようにフィードバック制御するための係合圧PB1を連続的に変化させる信号と、t2時点から係合圧PB1を急速に上昇させブレーキB1を完全係合(t3時点)する信号とを順次出力する。上記変速開始からtB1W時間において、速やかに所定の係合圧PB1Wに上昇させるために変速開始からtB1A時間の間は上記信号SPB1Wより大きな信号を出力する。また、上記解放側駆動信号SPC0は、変速開始からtC0W時間の間において係合圧PC0を変速開始前の元圧すなわち油圧供給元であるライン圧PL1であって最大係合圧となる圧よりも低く且つクラッチC0の解放開始圧よりも僅かに高く設定された所定の係合圧(待機圧)PC0Wに定圧待機させるための信号SPC0Wと、定圧待機後一定の変化率となるように係合圧PC0を連続的に減少(スイープ)させクラッチC0を完全解放する信号とを順次出力する。上記変速開始からtC0W時間において、速やかに所定の係合圧PC0Wに減少させるために変速開始からtC0A時間の間はクラッチC0を完全解放する信号を出力する。上記tC0W時間は、所定の係合圧PC0Wに定圧待機させる待機圧保持時間であるとともに、変速開始から係合圧PC0が連続的に変化(減少)させられるまでの時間すなわち変速開始から係合圧PC0がスイープ開始されるまでの時間であるのでスイープ制御開始時間(減少開始時間)でもある。
【0022】
このように、減速走行時において、前記変速油圧制御手段124が3→2クラッチツウクラッチダウン変速に際して、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0を低下させると同時に係合側油圧式摩擦係合装置であるブレーキB1の係合圧PB1を上昇させるとき、クラッチC0の係合とブレーキB1の係合との重なり具合が小さい、たとえば上記スイープ制御開始時間tC0Wが短いと、図示しない駆動輪と入力軸22が切り離された状態すなわちニュートラル傾向となり、タービン回転速度NTとともにエンジン回転速度NEが一時的に低下させられる落ち込み(以下アンダーシュートという、図14参照)が生じるので、ブレーキB1の係合によってエンジン回転速度NEが上昇させられるときに変速ショック(瞬間的なエンジンブレーキのような現象)が発生し、変速時間が長くなってしまう場合がある。また、上記ニュートラル傾向がさらに長くなるとエンジン回転速度NEのアンダーシュート量が大きくなり、フューエルカット制御手段126による作動が解除されてしまうので、フューエルカットによる燃費向上の効果が減少される場合がある。反対に、クラッチC0の係合とブレーキB1の係合との重なり具合が大きい場合、たとえば上記スイープ制御開始時間tC0Wが長いと、前記自動変速機14が一時的にロックされてしまい自動変速機14の出力軸トルクが一時的に急低下するタイアップ状態となり変速ショックが発生し、また自動変速機14の油圧式摩擦係合装置の劣化につながる場合がある。本実施例では、上記スイープ制御開始時間tC0Wは、ニュートラル傾向およびタイアップ状態が発生しない最適な値になるように繰り返し学習補正処理されることによって順次変更させられる。
【0023】
本実施例では、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの回転速度差NSLP(=NE−NT)を目標回転速度差NSLP *に制御するためにロックアップクラッチ32の係合圧PLUを制御するソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを出力する図示しないロックアップクラッチスリップ制御手段が備えられている。t0乃至t1においてタービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEは、ソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUによって回転速度差NSLPが目標回転速度差NSLP *たとえば−50rpmに略一致された状態で車両の減速にしたがって緩やかに減少させられ、t1乃至t2においてタービン回転速度NTは、ブレーキB1の係合に伴って上昇を開始するがその上昇はブレーキB1の係合圧PB1によりフィードバック制御されることで略一定の上昇率とされ、このときソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUは一定とされるので、エンジン回転速度NEはタービン回転速度NTにしたがって少し遅延させられながら上昇する。さらにt2乃至t3において変速終了に伴いタービン回転速度NTが車速に応じた速度とされ、再びソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを用いたフィードバック制御により回転速度差NSLPが目標回転速度差NSLP *たとえば−50rpmに略一致させられる。
【0024】
アンダーシュート量決定手段132は、ダウン変速制御作動(図14参照)においてクラッチC0の係合とブレーキB1の係合との重なり具合が小さい状態すなわちニュートラル傾向となったときに発生するタービン回転速度NTのアンダーシュート量NUSを、前記カウンタ軸44の回転速度NOUTと変速前のギヤ段(第3速ギヤ段)の変速比γ3から算出される推定タービン回転速度NTP(=γ3×NOUT)と実際のタービン回転速度NTとの差(NUS=NTP−NT)によって算出する。次いで、このアンダーシュート量NUSの大きさを逐次比較することによって最大アンダーシュート量NUSMAXを求める。具体的には、最大アンダーシュート量NUSMAXの値を零に初期化(リセット)した後、最大アンダーシュート量NUSMAXと上記アンダーシュート量NUSの大きさとを比較してアンダーシュート量NUSが大きな値であればその値を最大アンダーシュート量NUSMAXと置き換え、順次最大アンダーシュート量NUSMAXとアンダーシュート量NUSとを比較して大きな値を最大アンダーシュート量NUSMAXとして置き換えることで最大アンダーシュート量NUSMAXを算出する。そして、アンダーシュート量判定手段134は、上記実際の最大アンダーシュート量NUSMAXが変速ショックや変速時間等に基づいて予め設定された第1所定値である目標アンダーシュート量NUSU以上であるか否か、或いは変速ショックや変速時間等に基づいて第1所定値よりも低い値に予め設定された第2所定値である許容アンダーシュート量NUSD以下であるか否かを判定する。上記目標アンダーシュート量NUSUはいわゆる目標とすべき最大アンダーシュート量NUSMAXの領域の上限の値であり、この値を越えると前記ニュートラル傾向が大きくなる。また許容アンダーシュート量NUSDはいわゆる目標とすべき最大アンダーシュート量NUSMAXの領域の下限の値であり、この値を下回るとタイアップ傾向となる。
【0025】
学習許可判定手段136は、前記スイープ制御開始時間tC0Wの学習補正処理において、学習補正処理の開始条件が成立しているか否かを判定する。たとえば、AT油温TOILやエンジン10の冷却水温TW等が安定している状態か否か、前記AT油温センサ78や前記冷却水温センサ68或いは前記タービン回転速度センサ76等の各種センサが正常に動作しているか否か、また3→2ダウン変速等の単一変速であるか否かを判定する。メモリ状態判定手段138は、前記スイープ制御開始時間tC0Wの学習補正値L等の記憶が格納されているEPROMたとえばインスピアEPROM(EEPROM)の初期状態或いは、記憶が初期化(クリア)された後に学習補正処理が行われたか否かを判定する。上記EEPROMの初期状態とは、そのEEPROMが車両に搭載され学習補正処理の未実施の状態でありEEPROMの交換時もこの状態に含まれる。
【0026】
学習回数更新手段140は、たとえば前記スイープ制御開始時間tC0Wの学習補正処理が実行されるとEEPROMに記憶されている前回の学習回数nに1を加算することで学習回数nを更新して記憶する。また、上記EEPROMの初期状態或いは、記憶が初期化(クリア)された後の最初の学習補正処理である場合はn=0とするように学習回数nを更新して記憶する。学習回数判定手段142は、通常の学習処理を実行してもよいか否かをたとえば前記スイープ制御開始時間tC0Wの学習補正処理の学習回数nが予め設定された所定回数nCを越えているか否かにより判定する。これは、上記スイープ制御開始時間tC0Wは繰り返し学習補正処理されることによって最適な値に順次変更させられるが、学習回数nが少ない場合には、車両のばらつきによる前記最大アンダーシュート量NUSMAXのばらつきが不可避であるので学習補正値Lを速やかに次回の変速制御作動に反映させるように学習回数nが多い場合の通常の学習補正処理と違った学習補正処理たとえば最大アンダーシュート量NUSMAXに乗算する係数を変更する必要があるためであり、上記所定回数nCはたとえば2乃至5に設定されている。
【0027】
学習制御手段144は、学習補正値演算手段146とスイープ開始時間算出手段148とを備えており、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0を直接制御するリニヤソレノイド弁SL2に出力される解放側駆動信号SPC0の前記スイープ制御開始時間tC0Wを繰り返し学習補正処理することによってタービン回転速度NTの落ち込みやタイアップが発生しない最適な値に順次変更する。この学習制御手段144は係合側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1の係合圧PB1を直接制御するリニヤソレノイド弁SL3に出力される係合側駆動信号SPB1は毎回一定とされ、上記解放側駆動信号SPC0のスイープ制御開始時間tC0Wのみを学習制御処理することでタービン回転速度NTの落ち込みやタイアップの発生を防止する。
【0028】
上記学習補正値演算手段146は、前記アンダーシュート量判定手段134によってタービン回転速度NTの落ち込みが大きいと判定されると、ニュートラル傾向の回避のために学習補正値Lをフューエルカット状態判定手段128によって判定されるフューエルカット状態に応じて演算する。そのフューエルカット状態が継続中であれば現在の学習補正値LCに最大アンダーシュート量NUSMAXに係数G(ゲイン)を乗算した値を加えることで新しい学習補正値LNCUT(=LC+G×NUSMAX)を演算により求める。このゲインGは、最大アンダーシュート量NUSMAXを新しい学習補正値LNCUTに反映させるために予め決定された値であり、前記学習回数nが予め設定された所定回数nCを越えていれば通常学習用ゲインGFとなり所定回数nCを越えてなければ高速学習用ゲインGKとなる。この高速学習用ゲインGKは、速やかに学習補正値Lを次回の変速制御作動に反映させるように通常学習用ゲインGFより大きい値とされる。また、上記フューエルカット状態が解除される場合は、前記スイープ制御開始時間tC0Wが通常学習時に比較してより短いために解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0がより速く低下させられニュートラル傾向がより長くなりエンジン回転速度NEのアンダーシュート量NEUSが大きくなるためであるので、燃費向上等のためにもできるだけ少ない回数でフューエルカット状態が解除されないアンダーシュート量NEUSにする必要がある。このために通常学習に用いられる演算に替えて現在の学習補正値LCに緊急ニュートラル回避学習用学習補正値LNEを加えることで新しい学習補正値LNCAN(=LC+LNE)を求める。この緊急ニュートラル回避学習用学習補正値LNEは、フューエルカット状態が解除されエンジン回転速度NEが上昇するために、アンダーシュート量NUSから算出された最大アンダーシュート量NUSMAXの値が正確な最大値とならないので通常学習時等のようにゲインGに最大アンダーシュート量NUSMAXを乗算した値ではなく予め決定された所定値を用いる。
【0029】
前記学習補正値演算手段146は、前記アンダーシュート量判定手段134によってタイアップ傾向であると判定され、さらに最大アンダーシュート量NUSMAXが装置のノイズや精度等が適宜加味された予め設定された零判定値以下であるか否か、すなわち略零のような小さい値であるか否かが判定されると、タイアップ回避のために学習補正値Lを演算する。最大アンダーシュート量NUSMAXが前記零判定値以下でない場合はタービン回転速度NT或いはエンジン回転速度NEのアンダーシュート量NUS或いはNEUSがある程度生じてはいるがタイアップに近い状態であるので、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0を速く低下させるために前記スイープ制御開始時間tC0Wが短くなるように現在の学習補正値LCから通常学習用学習補正値LTFを差し引くことで新しい学習補正値LTU(=LC−LTF)を演算により求め、最大アンダーシュート量NUSMAXが前記零判定値以下である場合はタイアップ状態であるので、変速ショックを早急に回避するために1回の学習補正処理で通常学習に比較して前記スイープ制御開始時間tC0Wがより短くなるように現在の学習補正値LCから緊急タイアップ回避学習用学習補正値LTEを差し引くことで新しい学習補正値LTT(=LC−LTE)を演算により求める。その通常学習用学習補正値LTF或いは緊急タイアップ回避学習用学習補正値LTEは、予め決定された所定値を用いる。
【0030】
前記スイープ開始時間算出手段148は、現在のスイープ制御開始時間tC0Cに前記学習補正値演算手段146によって求められた新しい学習補正値LNEW(LNCUT、LNCAN、LTU或いはLTT)を加えることによって次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT(=tC0C+LNEW)を算出する。その新しい学習補正値LNEWはニュートラル傾向の場合は現在のスイープ制御開始時間tC0Cが長くなるためにLNCAN>LNCUT>0とされるように、またタイアップ傾向の場合は現在のスイープ制御開始時間tC0Cが短くなるためにLTT<LTU<0とされるように前記学習補正値演算手段146により求められている。
【0031】
図10は上記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち減速走行中のクラッチツウクラッチダウンシフト時における自動変速機16の変速制御作動において、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の係合圧PC0を直接制御するリニヤソレノイド弁SL2に出力される解放側駆動信号SPC0の前記スイープ制御開始時間tC0Wの学習補正処理を説明するメインルーチンのフローチャートであり、図11は上記図10の学習補正値演算処理部分のサブルーチンであり、図12は上記図11のニュートラル回避学習処理部分のサブルーチンであり、図13は上記図11のタイアップ回避学習処理部分のサブルーチンである。
【0032】
図10において、前記メモリ状態判定手段138に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1およびS2では、S1において学習補正値L等の記憶が格納されているEPROMたとえばインスピアEPROM(EEPROM)が車両に搭載されて学習補正処理が未実施の状態であるか或いはEEPROMの交換が行われた後に学習補正処理が未実施の状態であるか否かが判定され、S2においてEEPROMの記憶が初期化(クリア)された後に学習補正処理が未実施の状態であるか否かが判定される。このS1とS2の判断が肯定されると前記学習回数更新手段140に対応するS3において、学習回数nがn=0とされるように更新されて上記EEPROMに記憶される。上記S1およびS2の判断が否定される場合は、S3が実行されずEEPROMに記憶されている学習回数nの値が保持される。
【0033】
次いで前記変速状態判定手段122に対応するS4において、前記自動変速機14の変速(油圧制御)が開始されたかが判定される。このS4の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記アンダーシュート量決定手段132に対応するS5において、最大アンダーシュート量NUSMAXの値がNUSMAX=0にリセットされる。次いで前記アンダーシュート量決定手段132に対応するS6およびS7では、S6において前記カウンタ軸44の回転速度NOUTと変速前のギヤ段(第3速ギヤ段)の変速比γ3から算出される回転速度γ3×NOUT(推定タービン回転速度NTP)と実際のタービン回転速度NTとの差(NUS=NTP−NT)によって現在のアンダーシュート量NUSCが算出され、現在のアンダーシュート量NUSCが最大アンダーシュート量NUSMAXより大きいかが判断される。このS6が肯定されると次のS7において、現在のアンダーシュート量NUSCが最大アンダーシュート量NUSMAXに置き換えられて最大アンダーシュート量NUSMAXの記憶が更新される。
【0034】
次いで前記イナーシャ開始判定手段130に対応するS8において、前記タービン回転速度NTが上昇を開始したかが判定される。このS8の判断が肯定されるまで上記S6が再び実行され、S6が肯定される限りS7において現在のアンダーシュート量NUSCが最大アンダーシュート量NUSMAXに置き換えられて最大アンダーシュート量NUSMAXの記憶が逐次更新される。すなわちこのS5乃至S8において、最大アンダーシュート量NUSMAXの値が決定されることになり、アンダーシュートが発生しないタイアップ状態となる場合においても最大アンダーシュート量NUSMAX=0となるように決定される。上記S8の判断が肯定されると前記変速状態判定手段122に対応するS9において、係合側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1に接続された前記油圧センサ106によって検出された係合圧PB1が最大値に到達して上記ブレーキB1が完全に係合され変速油圧制御が終了したかが判定される。このS9は肯定されるまですなわち、変速油圧制御が終了するまで繰り返し実行される。
【0035】
次いでS10に対応する図11のSG1乃至SG7において、解放側油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0の現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0CUT、tC0CAN或いはtC0T)に加えるための新しい学習補正値LNEW(LNCUT、LNCAN、LTU或いはLTT)が求められ、次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT(tC0NG、tC0NE或いはtC0NT、=tC0C+LNEW)が算出される。前記学習許可判定手段136に対応する上記SG1において、学習補正処理の開始条件が成立しているか否かが、たとえばAT油温TOILやエンジン10の冷却水温TW等が安定している状態か、前記AT油温センサ78や前記冷却水温センサ68或いは前記タービン回転速度センサ76等の各種センサが正常に動作しているか、また3→2ダウン変速等の単一変速であるか否かによって判定される。このSG1が否定されると本ルーチンが終了させられるが、肯定されるとアンダーシュート量判定手段134に対応するSG2およびSG3では、SG2において前記S5乃至S8で決定された最大アンダーシュート量NUSMAXが前記目標アンダーシュート量NUSU以上であるか否かが判定され、SG3において最大アンダーシュート量NUSMAXが前記許容アンダーシュート量NUSD以下であるか否かが判定される。このSG2とSG3の判断が否定されると本ルーチンが終了させられる。すなわち最大アンダーシュート量NUSMAXが最大アンダーシュート量NUSMAXの上限値である上記目標アンダーシュート量NUSUと最大アンダーシュート量NUSMAXの下限値である許容アンダーシュート量NUSDの間であれば学習補正処理を実施する必要がないので本ルーチンが終了させられる。上記SG2が肯定されるとSG4に対応する図12のSN1乃至SN6において、ニュートラル傾向を回避するためのクラッチC0の現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0CUT或いはtC0CAN)に加えるための新しい学習補正値LNEW(LNCUT或いはLNCAN)が求められ、上記SG3が肯定されるとSG5に対応する図13のST1乃至ST3において、タイアップ状態を回避するためのクラッチC0の現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0T)に加えるための上記新しい学習補正値LNEW(LTU或いはLTT)が求められる。
【0036】
前記フューエルカット状態判定手段128に対応するSN1において減速走行中のダウン変速制御作動中に前記フューエルカット制御手段126によって前記フューエルカット装置118に出力されるエンジン10への燃料供給を遮断する指令が解除されたか否かが判定され、学習回数判定手段142に対応するSN2において、前記EEPROMに記憶されているスイープ制御開始時間の学習補正処理の学習回数nが予め設定された所定回数nCたとえば2乃至5を越えているか否かが判定される。つづく学習補正値演算手段146に対応するSN3乃至SN6において、上記SN1およびSN2の結果に応じたニュートラル傾向の回避のための前記学習補正値が算出される。つまりSN1が否定されSN2が肯定されると通常の学習処理のためにSN3において通常学習用ゲインGFが与えられ、SN6において現在の学習補正値LCに最大アンダーシュート量NUSMAXに通常学習用ゲインGFが乗算された値が加えられ新しい学習補正値LNCUT(=LC+GF×NUSMAX)が算出される。また、SN1およびSN2が否定されると学習回数nが少ないことによる車両のばらつきによる前記最大アンダーシュート量NUSMAXのばらつきが不可避であるので学習補正値Lが速やかに次回の変速制御作動に反映されるように、SN4において通常学習用ゲインGFより大きい値とされる高速学習用ゲインGKが与えられ、SN6において現在の学習補正値LCに最大アンダーシュート量NUSMAXに高速学習用ゲインGKが乗算された値が加えられ新しい学習補正値LNCUT(=LC+GK×NUSMAX)が算出される。また、上記SN1が肯定されるとエンジン10のアンダーシュート量NEUSが大きいためにフューエルカットが解除された状態であるので燃費向上等のためにもできるだけ少ない回数でフューエルカットが解除されないアンダーシュート量NUS(NEUS)にする必要がある。このためにつづくSN5において、現在の学習補正値LCに緊急ニュートラル回避学習用学習補正値LNEが加えられることで新しい学習補正値LNCAN(LNCAN=LC+LNE)が算出される。この緊急ニュートラル回避学習用学習補正値LNEは、フューエルカット状態が解除されエンジン回転速度NEが上昇するために、アンダーシュート量NUSから算出された最大アンダーシュート量NUSMAXの値が正確な最大値とならないので通常学習等のようにゲインGに最大アンダーシュート量NUSMAXを乗算した値ではなく予め決定された所定値が用いられる。
【0037】
前記アンダーシュート量判定手段134に対応するST1において、前記最大アンダーシュート量NUSMAXが前記零判定値以下であるか否かが判定される。このST1が否定されるとアンダーシュート量NUS或いはNEUSがある程度生じてはいるがタイアップに近い状態であるので、クラッチC0の前記現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0T)が短くなるように現在の学習補正値LCから通常学習用学習補正値LTFが差し引かれ新しい学習補正値LTU(=LC−LTF)が算出される。上記ST1が肯定されるとタイアップ状態であるので、変速ショックを早急に回避するために1回の学習補正処理で通常学習に比較して前記現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0T)がより短くなるように現在の学習補正値LCから緊急タイアップ回避学習用学習補正値LTEが差し引かれ新しい学習補正値LTT(=LC−LTE)が算出される。その通常学習用学習補正値LTF或いは緊急タイアップ回避学習用学習補正値LTEは、予め決定された所定値が用いられる。
【0038】
前記SG4(SN1乃至SN6)或いはSG5(ST1乃至ST3)において前記新しい学習補正値LNEW(LNCUT、LNCAN、LTU或いはLTT)が求められると、つづく前記学習回数更新手段140に対応するSG6において、EEPROMに記憶されている前回の学習回数nに1が加算されて学習回数nが更新されて記憶される。
【0039】
つづく前記スイープ開始時間算出手段148に対応するSG7において、現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0CUT、tC0CAN或いはtC0T)に前記学習補正値演算手段146によって求められた新しい学習補正値LNEW(LNCUT、LNCAN、LTU或いはLTT)が加えられることによって次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT(tC0NG、tC0NE或いはtC0NT、=tC0C+LNEW)が算出される。その新しい学習補正値LNEWはニュートラル傾向の場合は現在のスイープ制御開始時間tC0Cが長くなるためにLNCAN>LNCUT>0とされるように、またタイアップ傾向の場合は現在のスイープ制御開始時間tC0Cが短くなるためにLTT<LTU<0とされるように前記SG4(SN1乃至SN6)或いはSG5(ST1乃至ST3)により求められている。
【0040】
図14は、本実施例の減速走行中のダウンシフト時における自動変速機14の変速制御作動において、ニュートラル傾向における通常学習処理或いは高速学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。図14において実線は学習処理前であり、破線は学習処理後を示している。図からも明らかなように学習処理後はスイープ制御開始時間がtC0CUT(現在のスイープ制御開始時間tC0C)からtC0NG(次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT)と長くなったことで解放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC0の係合圧PC0の不足によるアンダーシュートUの発生が減少させられるのでブレーキB1の係合によってエンジン回転速度NEが上昇させられるときの変速ショック(瞬間的なエンジンブレーキのような現象)が減少させられ、またタービン回転速度NTの上昇開始(イナーシャ開始、t1NG時点)が速められ結果として変速制御(油圧制御)の時間がt3N時点からt3NG時点へと短くさせられる。これはイナーシャ開始から油圧制御終了までの時間はほぼ同じであるためイナーシャ開始が早ければ油圧制御終了も早くなるということである。また通常学習処理と高速学習処理は新しい学習補正値LNCUT(=LC+G×NUSMAX)を求める式において、ゲインGを前記学習回数nによって通常学習用ゲインGFと高速学習用ゲインGKとに区別しているだけなので、学習後と学習前とのスイープ制御開始時間の差(tC0NG−tC0CUT)が高速学習処理の方が大きくなるだけであとは同様である。
【0041】
図15は、本実施例の減速走行中のダウンシフト時における自動変速機14の変速制御作動において、ニュートラル傾向における緊急学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。図15において実線は学習処理前であり、破線は学習処理後を示している。図より学習処理前においてアンダーシュートUKの発生が前記図14のアンダーシュートUよりも大きいためにエンジン回転速度NEがフューエルカット解除値CFまで低下してしまいフューエルカットが解除(tCF時点)されていることが図14の場合と違うだけであとはほぼ同様に、学習処理後はスイープ制御開始時間がtC0CAN(現在のスイープ制御開始時間tC0C)からtC0NE(次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT)と長くなったことで解放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC0の係合圧PC0の不足によるアンダーシュートUKの発生が減少させられ、またタービン回転速度NTの上昇開始(イナーシャ開始、t1NE時点)が速められ結果として変速制御(油圧制御)の時間がt3E時点からt3NE時点へと短くさせられる。またフューエルカットも継続させられるので、燃費向上に効果がある。
【0042】
図16は、本実施例の減速走行中のダウンシフト時における自動変速機14の変速制御作動において、タイアップ状態における緊急学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。図15において実線は学習処理前であり、破線は学習処理後を示している。図からも明らかなように学習処理後はスイープ制御開始時間がtC0T(現在のスイープ制御開始時間tC0C)からtC0NT(次回のクラッチC0の係合圧PC0のスイープ制御開始時間tC0NEXT)と短くなったことで解放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC0の係合圧PC0の低下が速められるのでクラッチC0の係合とブレーキB1の係合との重なり具合が小さくさせられ前記自動変速機14がロックされる状態すなわちタイアップ状態による変速ショックが減少させられ、またタービン回転速度NTの上昇開始(イナーシャ開始、t1NT時点)が速められ結果として変速制御(油圧制御)の時間がt3T時点からt3NT時点へと短くさせられる。また通常学習処理と緊急学習処理は新しい学習補正値LNEW(LTU、LTT)を求める式において、現在の学習補正値LCから通常学習用学習補正値LTFが差し引かれ新しい学習補正値LTU(=LC−LTF)が算出されるのか、現在の学習補正値LCから緊急タイアップ回避学習用学習補正値LTEが差し引かれ新しい学習補正値LTT(=LC−LTE)が算出されるのかの違いによる学習前と学習後とのスイープ制御開始時間の差(tC0T−tC0NT)が緊急学習処理の方が大きくなるということと、通常学習処理の場合はタイアップ状態に近い状態でありアンダーシュートが発生しているということが違うだけであとは同様である。
【0043】
上述のように、本実施例によれば、学習制御手段144(S10)によって、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速中において自動変速機14の入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)の落込み量(最大アンダーシュート量NUSMAX)が所定値(目標アンダーシュート量NUSU)を超えたことに基づいて、その入力軸回転速度NINの落込み量が少なくなるように、クラッチツウクラッチダウン変速のために作動させられる油圧式摩擦係合装置の係合圧が学習制御により補正されるので、減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速時において、エンジン回転速度NEの落込みが自動的に抑制されて、その落込みに起因する変速ショックや変速時間の遅延が好適に解消される。また、その落込みがより大きくなることによってエンジンへの燃料供給が再開され燃費が悪化傾向となることが好適に防止される。
【0044】
また、本実施例によれば、クラッチツウクラッチダウン変速指令が出されると、変速油圧制御手段124により、解放側摩擦係合装置(クラッチC0)の係合圧PC0をその元圧よりも低く且つその解放側摩擦係合装置の解放開始圧よりも高く設定された所定の待機圧PC0Wにその解放側摩擦係合装置の係合圧PC0が所定時間tC0W保持された後、一定の変化率となるように連続的に減少させられる一方で、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が一定の上昇率で連続的に上昇するように係合側油圧式摩擦係合装置(ブレーキB1)の係合圧PB1を上昇させるので、クラッチツウクラッチダウン変速が好適に実行される。
【0045】
また、本実施例によれば、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)の落込み量(最大アンダーシュート量NUSMAX)が所定値(目標アンダーシュート量NUSU)を超えた場合には、学習制御手段144(S10)によって、解放側摩擦係合装置(クラッチC0)の待機圧保持時間tC0W(現在のスイープ制御開始時間tC0C)が長くなるように学習補正されるので、入力軸回転速度NINの落込み量NUSが小さくされる。
【0046】
また、本実施例によれば、学習制御手段144(S10)は、自動変速機14の入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)の落込み量(最大アンダーシュート量NUSMAX)が所定値(目標アンダーシュート量NUSU)を超え且つフューエルカット状態が解除されない大きさである場合には、現在の学習補正値LCにその落込み量NUSMAXにゲイン(通常学習用ゲインGF)を乗算した値を加えて新しい学習補正値LNEW(LNCUT、=LC+GF×NUSMAX)を算出し、それまでのクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置(クラッチC0)の保持圧PC0Wからの減少開始時間(現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0CUT))にその学習補正値LNCUTを加算することにより、次回のクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置の保持圧PC0Wからの減少開始時間tC0NEXT(tC0NG、=tC0C+LNEW)が長くなるように学習補正されるので、入力軸回転速度NINの落込み量NUSがその落込み量NUSに応じて小さくされる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0048】
前述の実施例では、自動変速機14の減速走行中のクラッチツウクラッチダウン変速制御作動として3→2ダウン変速の場合を説明したが、5→4、4→3、或いは2→1等のダウン変速であってもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、自動変速機14は、3組の遊星歯車装置42、44、46の組み合わせから成る、FF横置き型の前進5速の変速機であったが、自動変速機14を構成する遊星歯車装置の組数は3組とは異なる数であってもよい。また、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両用の縦置き型であっても差し支えない。
【0050】
また、前述の実施例では、解放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC0の所定の係合圧PC0Wからの減少開始時間(現在のスイープ制御開始時間tC0C(tC0CUT))を学習制御手段144によって長くなるように学習補正してアンダーシュートUを減少させてニュートラル傾向を回避していたが、上記所定の係合圧PC0Wを大きくなるように学習補正することで、クラッチC0が解放される時間を遅らせるようにしてアンダーシュートUを減少させてニュートラル傾向を回避してもよい。また、係合側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1の係合圧PB1の係合開始圧よりも低く設定された所定の係合圧PB1Wからの増加開始時間(変速開始からtB1W時間)を学習制御手段144によって短くなるように学習補正したり、上記所定の係合圧PB1Wを大きくなるように学習補正することで、ブレーキB1が係合される時間を早めるようにしてアンダーシュートUを減少させてニュートラル傾向を回避してもよい。
【0051】
また、前述の実施例では、学習回数判定手段142(ステップSN2)で通常の学習処理を実行してもよいか否かを判定する際に用いられた予め設定された所定回数nCは2乃至5に設定されていたが、車両のばらつきによって好適に設定すればよい。たとえば車両のばらつきが大きければnCは10程度に設定されてもよい。
【0052】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の変速制御装置が適用されたFF車両の横置き型の車両用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の自動変速機の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合、解放状態を説明する図である。
【図3】図1の実施例の車両に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図4】図3のシフトレバーのシフトパターンの一例を示す図である。
【図5】図3の電子制御装置によって行われるスロットル制御で用いられるアクセルペダル操作量Accとスロットル弁開度θTHとの関係の一例を示す図である。
【図6】図3の電子制御装置によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(マップ)の一例を示す図である。
【図7】図3の油圧制御回路の要部の構成を説明する図である。
【図8】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち自動変速機の変速制御作動を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち自動変速機のクラッチツウクラッチダウン変速の基本制御作動を示すタイムチャートである。
【図10】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち自動変速機の減速走行中のダウンシフト変速時における自動変速機の変速制御作動において、解放側油圧式摩擦係合装置のスイープ制御開始時間の学習補正処理を説明するメインルーチンのフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの学習補正値演算処理部分のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図12】図11のフローチャートのニュートラル回避学習処理部分のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図13】図11のフローチャートのタイアップ回避学習処理部分のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図14】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち減速走行中のダウンシフト時における自動変速機の変速制御作動において、ニュートラル傾向における通常学習処理或いは高速学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。
【図15】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち減速走行中のダウンシフト時における自動変速機の変速制御作動において、ニュートラル傾向における緊急学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。
【図16】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち減速走行中のダウンシフト時における自動変速機の変速制御作動において、タイアップ状態における緊急学習処理を実行した場合を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
10:エンジン
14:自動変速機
118:フューエルカット装置
124:変速油圧制御手段
144:学習制御手段
Claims (4)
- エンジン回転速度が所定値を超えた減速走行時にエンジンに供給される燃料を遮断するフューエルカット装置と、解放側油圧式摩擦係合装置の解放と係合側油圧式摩擦係合装置の係合とが実行されることにより変速が達成されるクラッチツウクラッチダウン変速が行われる自動変速機とを備えた車両用自動変速機の変速制御装置であって、
前記クラッチツウクラッチダウン変速中において前記自動変速機の入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えたことに基づいて、該入力軸回転速度の落込み量が少なくなるように、前記クラッチツウクラッチダウン変速のために作動させられる油圧式摩擦係合装置の係合圧を学習制御により補正する学習制御手段を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記クラッチツウクラッチダウン変速指令が出されると、前記解放側摩擦係合装置の係合圧をその元圧よりも低く且つ該解放側摩擦係合装置の解放開始圧よりも高く設定された所定の待機圧に所定時間保持した後、一定の変化率となるように連続的に減少させる一方で、入力軸回転速度が一定の上昇率で連続的に上昇するように前記係合側油圧式摩擦係合装置の係合圧を上昇させる変速油圧制御手段を、含むものである請求項1の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記学習制御手段は、前記入力軸回転速度の落込み量が所定値を超えた場合には、前記解放側摩擦係合装置の待機圧保持時間を長くするように学習補正するものである請求項2の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記学習制御手段は、前記自動変速機の入力軸回転速度の落込み量が前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動状態が解除されない大きさである場合には、該落込み量にゲインを乗算して学習補正値を算出し、それまでのクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置の保持圧からの減少開始時間に該学習補正値を加算することにより、次回のクラッチツウクラッチダウン変速における解放側油圧式摩擦係合装置の保持圧からの減少開始時間とするものである請求項2または3の車両用自動変速機の変速制御装置。
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