JP2004183149A - 漂白パルプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】広葉樹材を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法において、該二酸化塩素漂白段の開始時に二酸化塩素の全量を一括添加し、80〜100℃の条件で1〜15分間滞留させた後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5とし、さらに、80〜100℃の条件で60〜240分間処理して二酸化塩素漂白段を行う。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、広葉樹を含むリグノセルロース物質の漂白パルプの製造方法に関する。更に詳しく述べれば、本発明は、広葉樹を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
広葉樹を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプを漂白する手順としては、まず、アルカリ酸素漂白し、その後、塩素で処理し、パルプ中に含有されるリグニンを塩素化し、リグニンに可溶性を付加した後、次いで、アルカリを用いて塩素化リグニンを溶解抽出して、パルプ中からリグニンを分離除去し、最後に、次亜塩素酸塩、二酸化塩素等を使用し、残留する少量のリグニンを分解除去する方法が従来から採られてきた。
【0003】
しかしながら、近年、パルプの塩素化段からの漂白排水に含まれる有機塩素化合物(以下、AOXと略す)の環境への影響が懸念され、パルプ漂白に塩素を用いない動きが高まってきている。また、次亜塩素酸塩を用いた場合も、パルプの漂白時にクロロホルムが生成し、環境に悪影響を及ぼす可能性があることから、次亜塩素酸塩をパルプ漂白に使用しない漂白シーケンスが求められてきている。
【0004】
現在、塩素や次亜塩素酸塩の代替として、オゾン、二酸化塩素、過酸化水素及び過酢酸、過硫酸等の過酸の使用が提案されている。しかしながら、実際には、漂白薬品としての実績があり、取り扱いが比較的容易な二酸化塩素及び過酸化水素が塩素と次亜塩素酸塩の代替として使用されるケースが多くなっている。特に、塩素の代替としては二酸化塩素を使用するケースが圧倒的に多くなっている。ところが、二酸化塩素は塩素に比べて薬品単価が高く、経済的に不利であることから、できるだけ少ない使用量で所望の白色度まで漂白したいという要望があった。
【0005】
初段の二酸化塩素漂白段において、硫酸でpHを3に調整した後、二酸化塩素を添加し、95℃で1.5〜3時間処理すれば、酸処理と二酸化塩素処理を同時に行うことができ、通常の条件で二酸化塩素漂白を行った場合と比べて二酸化塩素の使用量を削減できることが知られている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、pH3以下の条件で二酸化塩素漂白を行った場合には、一部の二酸化塩素は塩素酸に変換し、十分な漂白効果が得られないという問題があった。
【0006】
初段の二酸化塩素漂白段において、二酸化塩素漂白の添加を二回に分割し、最初の二酸化塩素添加後に、1分間をpH8.5〜10で行い、その後、酸を加えてpH2.5で3時間処理した後、再度二酸化塩素を添加し2分間処理し、所望の白色度まで漂白するのに必要な二酸化塩素の使用量を削減する方法が知られている(非特許文献2)。しかしながら、この方法を実施するには操作が煩雑である上に、二回目の二酸化塩素添加後、極短時間で二酸化塩素漂白段を終えてしまうため、添加した二酸化塩素を十分に活用できないという問題点もあった。
【0007】
後段の二酸化塩素漂白段において、二酸化塩素漂白の開始から5〜15分間をpH5〜10で行い、その後、pH1.7〜4.4で2.5時間、70℃で処理することにより、二酸化塩素の漂白効率を上げる方法も知られている(非特許文献3)。しかしながら、この方法は論文中にも記述されているように、カッパー価が10以上のパルプに対しては効果がなく、初段の二酸化塩素漂白段には適用できないと言う問題点があった。
【0008】
二酸化塩素漂白段にホルマリンなどの還元剤を直接添加し、二酸化塩素から副生する亜塩素酸塩を二酸化塩素に再生し、二酸化塩素の使用量を削減する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ホルマリンのような環境への影響を懸念される物質をパルプ漂白に添加することは、環境上好ましいとは言えない。
【0009】
二酸化塩素の使用量を削減するための間接的な方法としては、蒸解時においてできるだけ脱リグニンを進め、未晒パルプのカッパー価を減少させる方法や、アルカリ酸素漂白工程においてできるだけ脱リグニンを進め、多段漂白工程前のパルプのカッパー価を減少させる方法が多数提案されている。また、キシラナーゼ前処理を行う方法なども知られている(例えば、非特許文献4)。しかしながら、これらの方法を用いて二酸化塩素使用量を低減した場合、特に広葉樹を含むリグノセルロースを原料とした場合、ヘキセンウロン酸が多く残留し、漂白パルプのK価が高くなり、退色性が悪化するという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】
米国特許6235154号明細書(B1 クレーム1、対応日本特許特表2002−506935号公報 請求項1)
【非特許文献1】
Dominque Lachenalら、1997年ISWPC予稿集、p95−98
【非特許文献2】
S.Juutilainenら、1999 Tappi Pulping Conference 予稿集p645−651
【非特許文献3】
G.E.Segerら、Tappi Journal、75(7)p174−180、1992年
【非特許文献4】
Viikari,Lら、Biotechnology in the Pulp & Paper Industry 第三 回国際会議予稿集 p67−69 (1986)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広葉樹を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法において、二酸化塩素使用量を低減し、かつ退色性が改善される漂白パルプの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、広葉樹を含むリグノセルロース物質を原料とし、多段漂白工程の初段で二酸化塩素漂白を行い、かつ漂白パルプの退色性を悪化させないで、二酸化塩素の使用量を低減する方法を見出す方法について鋭意研究した結果、初段二酸化塩素段を二段階に分けて設計することが有効であることを見出した。
【0013】
つまり、初段二酸化塩素段の前半部を“漂白パート”、後半部を“ヘキセンウロン酸分解パート”として考え、以下のような条件に設定することにより実現できることを見出した。まず、初段二酸化塩素漂白段に添加する二酸化塩素の全量を開始時に一括添加し、1〜15分間反応させ、二酸化塩素による漂白作用を最大限に引き出す。その後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5にすることにより、反応初期で生成したクロライトを活性化させてヘキセンウロン酸を分解させる。さらに高温にし、ヘキセンウロン酸の酸加水分解も同時に行う。このように、初段二酸化塩素漂白段を設計することにより、初段二酸化塩素漂白段において、十分な漂白作用とヘキセンウロン酸の分解の両立が可能となり、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)広葉樹材を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法において、該二酸化塩素漂白段の開始時に二酸化塩素の全量を一括添加し、80〜100℃の条件で1〜15分間滞留させた後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5とし、さらに、80〜100℃の条件で60〜240分間処理して二酸化塩素漂白段を行うことを特徴とする漂白パルプの製造方法。
【0015】
(2)前記二酸化塩素漂白段において、酸を添加する直前の反応pHが4.0〜6.5、好ましくはpH4.5〜5.5になるように、二酸化塩素漂白段の開始時に酸又はアルカリを添加することを特徴とする前記(1)項記載の漂白パルプの製造方法。
【0016】
(3)前記多段漂白工程の最終段に二酸化塩素漂白段を有し、かつ該最終段二酸化塩素漂白段の終了時のpHが4.5〜6.5の範囲で行われることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の漂白パルプの製造方法。
【0017】
(4)前記最終段二酸化塩素漂白段後の洗浄排水を、初段二酸化塩素漂白段の開始時の希釈水として使用することを特徴とする前記(3)項記載の漂白パルプの製造方法。
【0018】
(5)前記多段漂白工程において、初段の二酸化塩素漂白段に続いて、酸素及び過酸化水素を添加したアルカリ抽出段が行われることを特徴とする前記(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の漂白パルプの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるリグノセルロース物質は、好適には広葉樹材100%のものであるが、広葉樹材が含まれれば、針葉樹材を含んでいても良く、非木材と呼ばれるものを含んでいても良く、広葉樹材を含むこと以外は特に限定するものではない。本発明に使用されるパルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解又はポリサルファイド蒸解が好適に用いられる。
【0020】
例えば、広葉樹材100%のリグノセルロースをクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は130〜170℃で、蒸解方式は、連続蒸解法或いはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解液を多点で添加する修正蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
【0021】
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として、公知の環状ケト化合物、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、或いは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらには、ディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種或いは2種以上が添加されてもよく、その添加率は通常の添加率であり、例えば、木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
【0022】
本発明では、公知の蒸解法により得られた未漂白化学パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15質量%で行われる中濃度法が好ましい。
【0023】
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダ或いは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
【0024】
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分間、パルプ濃度は8〜15質量%であり、この他の条件は、公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、多段漂白工程へ送られる。
【0025】
本発明の多段漂白処理工程では、必ず初段は二酸化塩素漂白が行われる。本発明の初段二酸化塩素漂白段では、初段二酸化塩素漂白段に添加される二酸化塩素は必ず開始時に全量が一括添加され、処理温度は80〜100℃、好ましくは85〜95℃であり、1〜15分間、好ましくは5〜10分間滞留処理される。その後、洗浄することなく、pH調整用の酸が添加され、pH2.0〜3.5、好ましくはpH2.5〜3.0、80〜100℃、好ましくは85〜95℃の条件で60〜240分間、好ましくは90〜180分間処理して初段二酸化塩素漂白段が行われる。
【0026】
前記pH調整用の酸が添加される前のpHは4.0〜6.5、好ましくはpH4.5〜6.5、さらに好ましくはpH5.0〜6.0であり、必要に応じて、二酸化塩素漂白段開始時にpH調整用のアルカリ、或いは酸が添加される。二酸化塩素の添加率は、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素として0.2〜2.0質量%であり、酸素漂白後パルプの性状や漂白パルプの目標白色度によって決められる。pH調整用のアルカリ及び酸は特に限定されるのもではないが、取り扱いのし易さや経済的な面から、苛性ソーダ及び硫酸、塩酸或いは硝酸が好適に使用される。パルプ濃度に関しては特に限定されるものではないが、操作性の点から好適には8〜15質量%で行われる。
【0027】
本発明では、初段二酸化塩素段の次段以降の漂白段に関しては特に限定されるものではないが、次段はアルカリ抽出段、最終段は二酸化塩素漂白段とするのが好ましい実施形態である。次段をアルカリ抽出段とする場合する場合の条件としては、アルカリ添加率は絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、反応温度は60〜120℃、反応時間は15〜120分間、パルプ濃度は8〜15質量%である。好適には、アルカリ抽出段に酸素ガスが添加される。酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.1〜3質量%である。さらに好適には、過酸化水素も添加される。過酸化水素の添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.05〜2質量%である。
【0028】
本発明では、初段二酸化塩素漂白段の終了時のpHが3.5以下であるため、初段二酸化塩素漂白段後のパルプ中の重金属含有量が著しく少なくなり、重金属によって誘発される過酸化水素、酸素、オゾンのような酸素系薬品の分解率が低くなるので、より効果的に酸素系薬品を反応させることができるという特徴がある。
【0029】
本発明の多段漂白工程では、最終段は二酸化塩素漂白段とするのが好ましい実施形態である。最終段の二酸化塩素漂白段の条件は、好ましくはpHは4.5〜6.5、さらに好ましくはpH5.0〜6.0であり、反応温度50〜90℃、反応時間30〜240分間、パルプ濃度は8〜15%であり、pHを調整するために、必要に応じて、酸、アルカリが添加される。pH調整用のアルカリ及び酸は特に限定されるのもではないが、取り扱いのし易さや経済的な面から、苛性ソーダ及び硫酸、塩酸或いは硝酸が好適に使用される。二酸化塩素の添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.05〜1質量%であり、分割添加することも可能である。
【0030】
本発明においては、最終段を二酸化塩素漂白段とした場合、最終段二酸化塩素漂白段後の洗浄排水を、初段二酸化塩素漂白段の開始時の希釈水として使用することも可能である。前記最終段二酸化塩素漂白段後の洗浄排水を、初段二酸化塩素漂白段の開始時の希釈水として使用するメリットとしては、最終段二酸化塩素段の洗浄排水に含まれるクロライトを有効利用できる点が挙げられる。本発明では、好ましくは、最終二酸化塩素漂白はpH4.5〜6.5の範囲で行われるため、ほとんどの廃二酸化塩素はクロライトの形態で残留している。クロライトは、pH4.5〜6.5の範囲では反応性が乏しいが、pHが低くなるとリグニンやヘキセンウロン酸との反応性が高まるため、初段二酸化塩素段の希釈水としてパルプに添加された洗浄排水中のクロライトは、硫酸添加後、リグニンやヘキセンウロン酸と反応し、有効利用されることになる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に示す実施例1〜3と比較例1〜3は、工場製酸素漂白後広葉樹クラフトパルプをD1−E/O−D2シーケンスで漂白したものであり、実施例4と比較例4は、D1−E/OP−D2シーケンスで漂白したものでる。
また、特に示さない限り、カッパー価の測定、過マンガン酸カリウム価(K価)の測定、パルプ白色度の測定、パルプの退色性の評価は、それぞれ以下の方法で行った。なお、実施例及び比較例における薬品の添加率は絶乾パルプ質量当たりの質量%示す。
【0032】
1.パルプのカッパー価の測定
カッパー価の測定は、JIS P 8211に準じて行った。
【0033】
2.パルプの過マンガン酸カリウム価(K価)の測定
過マンガン酸カリウム価の測定は、JIS P 8206に準じて行った。
【0034】
3.パルプ白色度の測定
漂白パルプを離解後、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m2のシートを作製し、JIS P 8123に従ってパルプの白色度を測定した。
【0035】
4.パルプの退色性評価
漂白パルプを離解後、硫酸アルミニウムを加え、pH4.5に調整した後、坪量60g/m2のシートを作製し、送風乾燥機にて乾燥させた。このシートを80℃、相対湿度65%の条件下で、24時間退色させ、退色前後の白色度から下式に従いPC価を算出し、評価した。
【0036】
実施例1
工場製酸素漂白後広葉樹クラフトパルプ(材配合;ユーカリ材80%、アカシア材20%配合、白色度;49.5%、カッパー価;12.0)を絶乾質量で70g採取し、プラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.7%を添加し、温度が90℃の恒温水槽に10分間浸漬した。この時のパルプスラリーのpHは4.0であった。その後、洗浄することなく、即座に硫酸を絶乾パルプ質量当たり0.6%添加し、再度、温度が90℃の恒温水槽に180分間浸漬し、D1段の漂白を行った。D1段終了時のパルプスラリーのpHは3.0であった。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。D1段後パルプのK価は、2.5であった。
【0037】
D1段後のパルプにイオン交換水を加えて、パルプ濃度を10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを1.0%添加し、ステンレス製2リットル容の間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧力が0.15MPaとなるように純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、70℃で20分間反応させた。その後、パルプスラリーをオートクレーブから取り出し、プラスチック袋に移した後、温度が70℃の恒温水槽に70分間浸漬し、E/O段の抽出を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。
【0038】
続いて、E/O段後のパルプを絶乾質量で60.0g、プラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.2%と苛性ソーダを0.05%添加し、温度が70℃の恒温水槽に180分間浸漬し、D2段の漂白を行った。D2段終了時のパルプスラリーのpHは5.5であった。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。得られた漂白パルプの白色度は85.0%、K価は1.0、PC価は1.5であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0039】
実施例2
実施例1のD1段において、二酸化塩素添加時に同時に苛性ソーダを絶乾パルプ質量当たり0.1%添加し、硫酸の添加率を絶乾パルプ質量当たり0.7%に替えた以外は実施例1と同様の操作を行った。D1段における硫酸添加直前のpHは5.0であり、D1段終了時のpHは3.0であり、D1段後のK価は2.4、漂白パルプの白色度は86.0%、K価は0.9、PC価は1.4であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0040】
実施例3
実施例2のD1段における希釈水を実施例1で採取したD2段洗浄濾液に替え、苛性ソーダの添加率を絶乾パルプ質量当たり0.15%に替えた以外は実施例2と同様の操作を行った。D1段における硫酸添加直前のpHは5.2であり、D1段終了時のpHは3.0であり、D1段後パルプのK価は2.3、漂白パルプの白色度は86.8%、K価は0.8、PC価は1.3であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0041】
実施例4
実施例2のE/O段において、過酸化水素を絶乾パルプ質量当たり0.2%添加したこと以外は実施例2と同様の操作を行った。漂白パルプの白色度は88.0%、K価は0.8、PC価は1.2であった。D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0042】
比較例1
実施例1のD1段開始時に同時に硫酸を絶乾パルプ質量当たり0.6%添加し、途中で硫酸を添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。D1段開始10分後及びD1段終了時のpHは3.0、D1段後パルプのK価は2.6、漂白パルプの白色度は83.8%、K価は1.1、PC価は2.0であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0043】
比較例2
実施例1のD1段の途中で硫酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。D1段後パルプのK価は3.5、漂白パルプの白色度は84.1%、K価は2.0、PC価は4.4であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0044】
比較例3
実施例1のD1段における反応温度を70℃に替えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。D1段後パルプのK価は4.1、漂白パルプの白色度は82.8%、K価は2.6、PC価は6.0であった。
D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0045】
比較例4
比較例2のE/O段に絶乾パルプ質量当たり過酸化水素を0.2%を添加したこと以外は比較例2と同様の操作を行った。D1段後パルプのK価は3.5、漂白パルプの白色度は84.9%、K価は2.0、PC価は4.2であった。D1段における二酸化塩素添加率、D1段後パルプのK価、漂白パルプの白色度、K価及びPC価を表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の実施例1、2と比較例1〜3を比較することから明らかなように、広葉樹材を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する際に、初段二酸化塩素漂白段の開始時に二酸化塩素の全量を一括添加し、80〜100℃の条件で1〜15分間滞留させた後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5とし、さらに、80〜100℃の条件で60〜240分間処理して二酸化塩素漂白段を行えば、白色度が高く、K価が低く、退色性のよい漂白パルプが得られることが分る。さらに、初段の二酸化塩素漂白段において酸を添加する直前のpHを4.5〜6.0に調整すればさらに効果が高くなることが分る。
【0048】
また、表1の実施例2と3を比較することから明らかなように、最終二酸化塩素漂白段を終pHが4.5〜6.5になる条件で行い、この段の洗浄濾液を初段二酸化塩素漂白段の希釈水として使用すれば漂白効率が向上することが分る。
一方、実施例4と比較例4を比較することから明らかなように、前記条件で初段二酸化塩素漂白段を行った場合には、アルカリ抽出段に酸素及び過酸化水素を添加した際の漂白効率も高くなることもわかる。
【0049】
【発明の効果】
広葉樹材を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法において、該二酸化塩素漂白段の開始時に二酸化塩素の全量を一括添加し、80〜100℃の条件で1〜15分間滞留させた後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5とし、さらに、80〜100℃の条件で60〜240分間処理して二酸化塩素漂白段を行うことにより、効率良く漂白でき、かつ退色性の改善された漂白パルプを製造することが可能となった。
Claims (5)
- 広葉樹材を含むリグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、初段に二酸化塩素漂白段を有する多段漂白工程で処理して漂白パルプを製造する方法において、前記二酸化塩素漂白段の開始時に二酸化塩素の全量を一括添加し、80〜100℃の条件で1〜15分間滞留させた後、洗浄することなく酸を添加してpH2.0〜3.5とし、さらに、80〜100℃の条件で60〜240分間処理して二酸化塩素漂白を行うことを特徴とする漂白パルプの製造方法。
- 前記二酸化塩素漂白段において、酸を添加する直前の反応pHが4.0〜6.5になるように、二酸化塩素漂白段の開始時に酸又はアルカリを添加することを特徴とする請求項1記載の漂白パルプの製造方法。
- 前記多段漂白工程の最終段に二酸化塩素漂白段を有し、かつ該最終段二酸化塩素漂白段の終了時のpHが4.5〜6.5の範囲で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の漂白パルプの製造方法。
- 前記最終段二酸化塩素漂白段後の洗浄排水を、初段二酸化塩素漂白段の開始時の希釈水として使用することを特徴とする請求項3記載の漂白パルプの製造方法。
- 前記多段漂白工程において、初段の二酸化塩素漂白段に続いて、酸素及び過酸化水素を添加したアルカリ抽出段が行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の漂白パルプの製造方法。
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