JP2004183123A - 炭素繊維シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】皺や起伏等の表面欠陥の発生を抑制できる炭素繊維シートの製造方法を提供する。
【解決手段】前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の織物、不織布、紙等のシートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維の織物、不織布、紙等のシートは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形や、コンクリート構造物の補修・補強や、電波吸収体、燃料電池の電極等、多種多用な用途に利用されている。
【0003】
ところで、炭素繊維は、よく知られているように、たとえばポリアクリロニトリル繊維等の原料繊維(プリカーサ)を200〜400℃程度の比較的低温の酸化性雰囲気中で焼成して耐炎化した後(耐炎化繊維とした後)、1,000℃以上の高温の不活性雰囲気中で焼成して炭化することによって作られている。炭素繊維シート、たとえば織物は、そのようにして作られた炭素繊維を織糸として製織すればよいのであるが、炭素繊維は脆く、また、毛羽立ちやすいので、製織操作はなかなか難しい。また、原料繊維や耐炎化繊維を1本1本焼成するのは非効率でもあるので、原料繊維や耐炎化繊維をあらかじめ織物としておき、それを焼成して炭素繊維織物とすることも行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかるに、原料繊維を糸条密度の高い織物の形態で耐炎化処理に供すると、耐炎化処理は発熱反応を伴う処理であることから織物に蓄熱が起こり、安定した温度制御が極めて難しくなって得られる炭素繊維織物に品質のむらが起きやすい。また、耐炎化織物を炭化処理する場合、耐炎化織物は一般に強度が低いことから、無緊張下で焼成するのが好ましいとされているが、無緊張下に保つ具体的な手段は提案されておらず、通常、耐炎化織物を炉内または炉外に設置した搬送ロールを用いて加熱炉内を搬送しながら焼成している。しかしながら、この方法は、搬送張力のばらつきに起因する皺や起伏等の表面欠陥を生じやすい。炭素繊維織物に皺や起伏等の表面欠陥があると、たとえばそれを固体高分子型燃料電池の電極として用いた場合、プロトン交換膜との密着不良が起こり、電池特性を大きく低下させてしまう。
【0005】
【特許文献1】
特公昭61−11323号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、皺や起伏等の表面欠陥の発生を抑制できる炭素繊維シートの製造方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いることを特徴とする炭素繊維シートの製造方法を提供する。厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いるのは、焼成時に発生する分解ガスが無端ベルトと前駆体繊維シートとの間に滞留し、前駆体繊維シート、ひいては炭素繊維シートの表面に皺や起伏等を発生させないようにするためである。また、分解ガスが多く発生し、炭化による収縮が進行する前炭化処理と、得られる炭素繊維シートの表面の皺、起伏等の表面品位への関与の度合いが大きい炭化処理とで熱処理条件の変更を容易にするために、加熱炉として前炭化処理用加熱炉と炭化処理用加熱炉とを用いるのも好ましく、その場合、少なくとも前炭化処理用加熱炉における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いる。
【0008】
コンベヤベルトは、当然のことながら、焼成時の温度に耐え得る材料、たとえば、ステンレス鋼等の金属や、セラミックや、炭素繊維織物等の布帛や、炭素繊維強化炭素等で構成する。
【0009】
また、コンベヤベルトは、ベルトのロール体からベルトを繰り出すとともに巻き取るようにしたものでもよいが、無端コンベヤベルトとして構成するのが便利である。
【0010】
このように加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送にコンベヤベルトを用いることで、いままで好ましいとされてきたが具体的な手段がなかった無緊張下における焼成を可能とする。
【0011】
前駆体繊維としては、ポリアクリロニトリル系繊維を耐炎化してなるポリアクリロニトリル系耐炎化繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、不融化ピッチ繊維等を用いることができるが、特に、強度や弾性率といった諸特性に優れた炭素繊維、ひいては炭素繊維シートが得られるポリアクリロニトリル系耐炎化繊維であるのが好ましい。
【0012】
そのような前駆体繊維からなるシートとしては、織物、不織布、紙等の耐炎化繊維布帛を用いることができる。これらの耐炎化繊維布帛には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が含浸されていてもよい。その場合、樹脂は未硬化または未固化の状態であってもよいが、そのような樹脂は焼成時の炭化に伴って収縮し、得られる炭素繊維シートの表面が粗くなることがあるので、焼成に先立って硬化または固化させておくのが好ましい。また、これらの樹脂は、繊維状のものとして前駆体繊維シートに含まれていてもよい。さらに、前駆体繊維シートとしては、炭素繊維のチョップド糸(短繊維)等をフェノール樹脂、PVA樹脂等のバインダで結着してなる紙を用いることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の方法を実施している様子を示すもので、搬送ロール2によって運ばれてくる前駆体繊維シート1は、厚み方向に通気性を有する無端コンベヤベルト4によって加熱炉3内に導入される。加熱炉3内は、300〜1,200℃程度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、前駆体繊維シート1は、無端コンベヤベルト4によって無緊張下に搬送されている間に前炭化処理される。
【0014】
前炭化処理された前駆体繊維シート1は、次いで搬送ロール5、厚み方向に通気性を有する無端コンベヤベルト7によって次の加熱炉6内に導入される。加熱炉6も加熱炉3と同様に構成されているが、雰囲気は1,200〜3,000℃程度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、前炭化処理された前駆体繊維シート1は、無端コンベヤベルト7によって無緊張下に搬送されている間に炭化処理され、炭素繊維シート9となる。炭素繊維シート9は、搬送ロール8によって、次工程、たとえばロール状への巻取工程に搬送される。
【0015】
上記において、前炭化処理および炭化処理のための加熱炉内は、通常、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性雰囲気下に維持するが、絶対圧力で20Pa以下のような減圧雰囲気下に維持してもよい。
【0016】
また、上記においては、前炭化処理と炭化処理とを別々の加熱炉で行う、いわゆる2段階処理を行う場合について説明したが、ただ1個の加熱炉を用い、炉内温度を300〜3,000℃程度に維持して前炭化処理と炭化処理とを一気に行うこともできる。ただ、2段階焼成を行うと、分解ガスが多く発生し、炭化による収縮が進行する前炭化処理と、得られる炭素繊維シートの表面の皺、起伏等の表面品位への関与の度合いの大きい炭化処理とで熱処理条件の変更が容易になる。また、加熱炉の設計が容易になるという利点もある。なお、分解ガスによる炉体の減耗、損傷や雰囲気温度を考慮すると、前炭化処理には金属系材料を炉材とし、炭化処理には黒鉛系材料やセラミックス系材料を炉材とする加熱炉が好ましい。
【0017】
本発明は、皺や起伏等の表面欠陥を生じやすい、たとえば、厚みが0.05〜2mm程度、目付が30〜300g/m2程度の比較的薄い炭素繊維シートを得る場合に特に好適である。また、本発明により得られる炭素繊維シートは、上述したようないろいろな用途に用いることができるが、皺や起伏等の表面欠陥が電池特性に大きな影響を与える固体高分子型燃料電池の電極材料として特に好適である。
【0018】
【実施例および比較例】
(実施例)
前駆体繊維シートとして、幅500mm、厚み0.285mm、目付140g/m2のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維織物を用いた。
【0019】
上記織物に、図1に示すように加熱炉3と加熱炉6とを直列に配置し、窒素ガス雰囲気中にて最高温度が650℃の前炭化処理と最高温度が1,950℃の炭化処理とを施し(2段階焼成)、炭素繊維シートたる炭素繊維織物を得た。加熱炉3と加熱炉6の有効炉長はいずれも3mで、加熱炉3での前炭化処理における前駆体繊維シートの搬送のための無端コンベヤベルト4には、SUS310S製の通気性を有するコンパウンドバランスドベルトを用い、加熱炉6での炭化処理における耐炎化繊維織物の搬送のための無端コンベヤベルト7には、厚み方向に通気性を有する炭素繊維織物ベルトを用いた。また、搬送速度は0.2m/分とし、搬送ロール2、搬送ロール5、搬送ロール8を制御して、無端コンベヤベルト4、7上に耐炎化繊維織物を載せる際に耐炎化繊維織物と無端コンベヤベルトとの間で滑りを生じないようにした。
【0020】
得られた炭素繊維織物について、表面の皺や起伏の有無を目視により観察したところ、皺や起伏等の表面欠陥は認められなかった。
【0021】
次に、得られた炭素繊維織物の表面に、カーボンブラック粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末との混合物(カーボンブラック粉末の含有量:80重量%)を目付が2mg/cm2になるように塗布し、大気中にて380℃で熱処理してカーボン層付炭素繊維織物を得た。一方、米国デュポン社製プロトン交換膜“Nafion”112の両面に、触媒たる白金を担持したカーボン粉末と“Nafion”粉末との混合物を、白金の目付が0.5mg/m2になるように塗布して膜−触媒シートを得た。
【0022】
次に、上記膜−触媒シートを、2枚の上記カーボン層付炭素繊維織物でカーボン層が膜−触媒シート側になるように挟み、3MPaの圧力下に130℃で加圧、加熱して一体化し、固体高分子型燃料電池の膜−電極接合体を得た。
【0023】
次に、上記膜−電極接合体を溝付セパレータで挟み、米国スクリブナ社製燃料電池計測ユニット890−500Wを用いて燃料電池として運転を行い(発電を行い)、運転前後におけるプロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との密着性を目視により観察した。評価時の運転条件は、電池温度70℃、水素ガス加湿温度80℃、空気加湿温度60℃とし、ガス圧力は大気圧とした。なお、電流密度0.7A/cm2時における水素利用率は70%、空気利用率は40%であった。
【0024】
評価の結果、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との密着性は良好で、剥離は認められなかった。
【0025】
以上の結果は、本発明によれば、固体高分子型燃料電池の電池特性の低下を招くような、皺や起伏等の表面欠陥のない炭素繊維シートを得ることができることを示している。
(比較例1)
実施例1において、加熱炉3での前炭化処理における耐炎化繊維織物の搬送のための無端コンベヤベルト4を、厚み方向の通気性を有しない、厚さ3mmのSUS310S製の無端ステンレスシートベルトに変えた。
【0026】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
(比較例2)
実施例1において、加熱炉3から無端コンベヤベルト4を除去した。無端コンベヤベルト4を除去したため、耐炎化繊維織物は加熱炉3中を自重による撓みと張力による懸垂曲線を描きながら搬送された。
【0027】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
(比較例3)
実施例1において、加熱炉6から無端コンベヤベルト7を除去した。無端コンベヤベルト7を除去したため、前炭化処理された耐炎化繊維織物は加熱炉6中を自重による撓みと張力による懸垂曲線を描きながら搬送された。
【0028】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いるので、実施例と比較例との対比からも明らかなように、皺や起伏等の表面欠陥のない炭素繊維シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いる加熱炉の一形態を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1:前駆体繊維シート
2:搬送ロール
3:前炭化処理用加熱炉
4:無端コンベヤベルト
5:搬送ロール
6:炭化処理用加熱炉
7:無端コンベヤベルト
8:搬送ロール
9:炭素繊維シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の織物、不織布、紙等のシートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維の織物、不織布、紙等のシートは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形や、コンクリート構造物の補修・補強や、電波吸収体、燃料電池の電極等、多種多用な用途に利用されている。
【0003】
ところで、炭素繊維は、よく知られているように、たとえばポリアクリロニトリル繊維等の原料繊維(プリカーサ)を200〜400℃程度の比較的低温の酸化性雰囲気中で焼成して耐炎化した後(耐炎化繊維とした後)、1,000℃以上の高温の不活性雰囲気中で焼成して炭化することによって作られている。炭素繊維シート、たとえば織物は、そのようにして作られた炭素繊維を織糸として製織すればよいのであるが、炭素繊維は脆く、また、毛羽立ちやすいので、製織操作はなかなか難しい。また、原料繊維や耐炎化繊維を1本1本焼成するのは非効率でもあるので、原料繊維や耐炎化繊維をあらかじめ織物としておき、それを焼成して炭素繊維織物とすることも行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかるに、原料繊維を糸条密度の高い織物の形態で耐炎化処理に供すると、耐炎化処理は発熱反応を伴う処理であることから織物に蓄熱が起こり、安定した温度制御が極めて難しくなって得られる炭素繊維織物に品質のむらが起きやすい。また、耐炎化織物を炭化処理する場合、耐炎化織物は一般に強度が低いことから、無緊張下で焼成するのが好ましいとされているが、無緊張下に保つ具体的な手段は提案されておらず、通常、耐炎化織物を炉内または炉外に設置した搬送ロールを用いて加熱炉内を搬送しながら焼成している。しかしながら、この方法は、搬送張力のばらつきに起因する皺や起伏等の表面欠陥を生じやすい。炭素繊維織物に皺や起伏等の表面欠陥があると、たとえばそれを固体高分子型燃料電池の電極として用いた場合、プロトン交換膜との密着不良が起こり、電池特性を大きく低下させてしまう。
【0005】
【特許文献1】
特公昭61−11323号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、皺や起伏等の表面欠陥の発生を抑制できる炭素繊維シートの製造方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いることを特徴とする炭素繊維シートの製造方法を提供する。厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いるのは、焼成時に発生する分解ガスが無端ベルトと前駆体繊維シートとの間に滞留し、前駆体繊維シート、ひいては炭素繊維シートの表面に皺や起伏等を発生させないようにするためである。また、分解ガスが多く発生し、炭化による収縮が進行する前炭化処理と、得られる炭素繊維シートの表面の皺、起伏等の表面品位への関与の度合いが大きい炭化処理とで熱処理条件の変更を容易にするために、加熱炉として前炭化処理用加熱炉と炭化処理用加熱炉とを用いるのも好ましく、その場合、少なくとも前炭化処理用加熱炉における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いる。
【0008】
コンベヤベルトは、当然のことながら、焼成時の温度に耐え得る材料、たとえば、ステンレス鋼等の金属や、セラミックや、炭素繊維織物等の布帛や、炭素繊維強化炭素等で構成する。
【0009】
また、コンベヤベルトは、ベルトのロール体からベルトを繰り出すとともに巻き取るようにしたものでもよいが、無端コンベヤベルトとして構成するのが便利である。
【0010】
このように加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送にコンベヤベルトを用いることで、いままで好ましいとされてきたが具体的な手段がなかった無緊張下における焼成を可能とする。
【0011】
前駆体繊維としては、ポリアクリロニトリル系繊維を耐炎化してなるポリアクリロニトリル系耐炎化繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、不融化ピッチ繊維等を用いることができるが、特に、強度や弾性率といった諸特性に優れた炭素繊維、ひいては炭素繊維シートが得られるポリアクリロニトリル系耐炎化繊維であるのが好ましい。
【0012】
そのような前駆体繊維からなるシートとしては、織物、不織布、紙等の耐炎化繊維布帛を用いることができる。これらの耐炎化繊維布帛には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が含浸されていてもよい。その場合、樹脂は未硬化または未固化の状態であってもよいが、そのような樹脂は焼成時の炭化に伴って収縮し、得られる炭素繊維シートの表面が粗くなることがあるので、焼成に先立って硬化または固化させておくのが好ましい。また、これらの樹脂は、繊維状のものとして前駆体繊維シートに含まれていてもよい。さらに、前駆体繊維シートとしては、炭素繊維のチョップド糸(短繊維)等をフェノール樹脂、PVA樹脂等のバインダで結着してなる紙を用いることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の方法を実施している様子を示すもので、搬送ロール2によって運ばれてくる前駆体繊維シート1は、厚み方向に通気性を有する無端コンベヤベルト4によって加熱炉3内に導入される。加熱炉3内は、300〜1,200℃程度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、前駆体繊維シート1は、無端コンベヤベルト4によって無緊張下に搬送されている間に前炭化処理される。
【0014】
前炭化処理された前駆体繊維シート1は、次いで搬送ロール5、厚み方向に通気性を有する無端コンベヤベルト7によって次の加熱炉6内に導入される。加熱炉6も加熱炉3と同様に構成されているが、雰囲気は1,200〜3,000℃程度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、前炭化処理された前駆体繊維シート1は、無端コンベヤベルト7によって無緊張下に搬送されている間に炭化処理され、炭素繊維シート9となる。炭素繊維シート9は、搬送ロール8によって、次工程、たとえばロール状への巻取工程に搬送される。
【0015】
上記において、前炭化処理および炭化処理のための加熱炉内は、通常、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性雰囲気下に維持するが、絶対圧力で20Pa以下のような減圧雰囲気下に維持してもよい。
【0016】
また、上記においては、前炭化処理と炭化処理とを別々の加熱炉で行う、いわゆる2段階処理を行う場合について説明したが、ただ1個の加熱炉を用い、炉内温度を300〜3,000℃程度に維持して前炭化処理と炭化処理とを一気に行うこともできる。ただ、2段階焼成を行うと、分解ガスが多く発生し、炭化による収縮が進行する前炭化処理と、得られる炭素繊維シートの表面の皺、起伏等の表面品位への関与の度合いの大きい炭化処理とで熱処理条件の変更が容易になる。また、加熱炉の設計が容易になるという利点もある。なお、分解ガスによる炉体の減耗、損傷や雰囲気温度を考慮すると、前炭化処理には金属系材料を炉材とし、炭化処理には黒鉛系材料やセラミックス系材料を炉材とする加熱炉が好ましい。
【0017】
本発明は、皺や起伏等の表面欠陥を生じやすい、たとえば、厚みが0.05〜2mm程度、目付が30〜300g/m2程度の比較的薄い炭素繊維シートを得る場合に特に好適である。また、本発明により得られる炭素繊維シートは、上述したようないろいろな用途に用いることができるが、皺や起伏等の表面欠陥が電池特性に大きな影響を与える固体高分子型燃料電池の電極材料として特に好適である。
【0018】
【実施例および比較例】
(実施例)
前駆体繊維シートとして、幅500mm、厚み0.285mm、目付140g/m2のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維織物を用いた。
【0019】
上記織物に、図1に示すように加熱炉3と加熱炉6とを直列に配置し、窒素ガス雰囲気中にて最高温度が650℃の前炭化処理と最高温度が1,950℃の炭化処理とを施し(2段階焼成)、炭素繊維シートたる炭素繊維織物を得た。加熱炉3と加熱炉6の有効炉長はいずれも3mで、加熱炉3での前炭化処理における前駆体繊維シートの搬送のための無端コンベヤベルト4には、SUS310S製の通気性を有するコンパウンドバランスドベルトを用い、加熱炉6での炭化処理における耐炎化繊維織物の搬送のための無端コンベヤベルト7には、厚み方向に通気性を有する炭素繊維織物ベルトを用いた。また、搬送速度は0.2m/分とし、搬送ロール2、搬送ロール5、搬送ロール8を制御して、無端コンベヤベルト4、7上に耐炎化繊維織物を載せる際に耐炎化繊維織物と無端コンベヤベルトとの間で滑りを生じないようにした。
【0020】
得られた炭素繊維織物について、表面の皺や起伏の有無を目視により観察したところ、皺や起伏等の表面欠陥は認められなかった。
【0021】
次に、得られた炭素繊維織物の表面に、カーボンブラック粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末との混合物(カーボンブラック粉末の含有量:80重量%)を目付が2mg/cm2になるように塗布し、大気中にて380℃で熱処理してカーボン層付炭素繊維織物を得た。一方、米国デュポン社製プロトン交換膜“Nafion”112の両面に、触媒たる白金を担持したカーボン粉末と“Nafion”粉末との混合物を、白金の目付が0.5mg/m2になるように塗布して膜−触媒シートを得た。
【0022】
次に、上記膜−触媒シートを、2枚の上記カーボン層付炭素繊維織物でカーボン層が膜−触媒シート側になるように挟み、3MPaの圧力下に130℃で加圧、加熱して一体化し、固体高分子型燃料電池の膜−電極接合体を得た。
【0023】
次に、上記膜−電極接合体を溝付セパレータで挟み、米国スクリブナ社製燃料電池計測ユニット890−500Wを用いて燃料電池として運転を行い(発電を行い)、運転前後におけるプロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との密着性を目視により観察した。評価時の運転条件は、電池温度70℃、水素ガス加湿温度80℃、空気加湿温度60℃とし、ガス圧力は大気圧とした。なお、電流密度0.7A/cm2時における水素利用率は70%、空気利用率は40%であった。
【0024】
評価の結果、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との密着性は良好で、剥離は認められなかった。
【0025】
以上の結果は、本発明によれば、固体高分子型燃料電池の電池特性の低下を招くような、皺や起伏等の表面欠陥のない炭素繊維シートを得ることができることを示している。
(比較例1)
実施例1において、加熱炉3での前炭化処理における耐炎化繊維織物の搬送のための無端コンベヤベルト4を、厚み方向の通気性を有しない、厚さ3mmのSUS310S製の無端ステンレスシートベルトに変えた。
【0026】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
(比較例2)
実施例1において、加熱炉3から無端コンベヤベルト4を除去した。無端コンベヤベルト4を除去したため、耐炎化繊維織物は加熱炉3中を自重による撓みと張力による懸垂曲線を描きながら搬送された。
【0027】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
(比較例3)
実施例1において、加熱炉6から無端コンベヤベルト7を除去した。無端コンベヤベルト7を除去したため、前炭化処理された耐炎化繊維織物は加熱炉6中を自重による撓みと張力による懸垂曲線を描きながら搬送された。
【0028】
得られた炭素繊維織物の表面を目視により観察したところ、皺や起伏が認められた。また、実施例1と同様に膜−電極接合体を作り、電池特性を評価したところ、プロトン交換膜とカーボン層付炭素繊維織物との間に剥離が認められた。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いるので、実施例と比較例との対比からも明らかなように、皺や起伏等の表面欠陥のない炭素繊維シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いる加熱炉の一形態を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1:前駆体繊維シート
2:搬送ロール
3:前炭化処理用加熱炉
4:無端コンベヤベルト
5:搬送ロール
6:炭化処理用加熱炉
7:無端コンベヤベルト
8:搬送ロール
9:炭素繊維シート
Claims (9)
- 前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維シートを製造する際に、加熱炉中における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いることを特徴とする炭素繊維シートの製造方法。
- 加熱炉として前炭化処理用加熱炉と炭化処理用加熱炉とを用い、かつ、少なくとも前炭化処理用加熱炉における前駆体繊維シートの搬送に厚み方向に通気性を有するコンベヤベルトを用いる、請求項1に記載の炭素繊維シートの製造方法。
- 前駆体繊維シートとして耐炎化繊維布帛を用いる、請求項1または2に記載の炭素繊維シートの製造方法。
- 耐炎化繊維布帛として織物、不織布または紙を用いる、請求項3に記載の炭素繊維シートの製造方法。
- 樹脂を含浸し、硬化または固化させた耐炎化繊維布帛を用いる、請求項3または4に記載の炭素繊維シートの製造方法。
- 前駆体繊維シートとして、炭素繊維をバインダで結着してなる紙を用いる、請求項1または2に記載の炭素繊維シートの製造方法。
- コンベヤベルトとして無端コンベヤベルトを用いる、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維シートの製造方法。
- コンベヤベルトとして炭素繊維布帛を用いる、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維シートの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって製造された炭素繊維シート。
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JP2013145640A (ja) * | 2012-01-13 | 2013-07-25 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用拡散層の製造方法および燃料電池用拡散層 |
CN105568430A (zh) * | 2014-10-14 | 2016-05-11 | 中国石油化工股份有限公司 | 高致密性聚丙烯腈基碳纤维的预碳化装置和制备方法 |
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2002
- 2002-12-02 JP JP2002349517A patent/JP2004183123A/ja active Pending
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