JP2004182874A - 流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂に対し、透明性阻害や物性の低下が少なく、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂の成形加工において良好な流動性を示す樹脂組成物を提供する。
【解決手段】流動性向上剤として多価アルコール脂肪酸エステルを含有するスチレン系樹脂において、スチレン系樹脂が透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂であり、多価アルコール脂肪酸エステルがポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルであり、且つこのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを0.1〜3重量部含有することを特徴とする流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】流動性向上剤として多価アルコール脂肪酸エステルを含有するスチレン系樹脂において、スチレン系樹脂が透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂であり、多価アルコール脂肪酸エステルがポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルであり、且つこのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを0.1〜3重量部含有することを特徴とする流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明に優れるゴム強化スチレン系樹脂である透明アクリロニトリルブタジエンスチレン及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン用として好適な添加剤に関し、詳しくは、透明性や樹脂物性などの弊害がなく、且つ流動性を向上させた透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂は加工性の良さに加え、他樹脂とのポリマーアロイの開発で新規用途、競合その他樹脂の代替用途として採用されおり、ここ数年二桁成長を続けている。透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂の1998年の需要量は、約5万1,000トン/年と推定されており、今後も需要増加が期待されている。特徴として、流動性に優れる、熱安定性が良好、成形加工性が良い、光線透過率がポリカーボネートに近く高い透明性、二次加工性に優れる、光沢・着色性等の外観が良いことが挙げられる。用途的には、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂の用途分野は、複写機、プリンターなどのOA機器、電話機、FAXなどの通信機器、家電製品、雑貨などに使用されている。
【0003】
以上のように透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂については、ここ数年間で伸長してきた樹脂であり、成形加工方法としては主に射出成形機による成形方法が一般的であるが、成形時の生産性や美観の向上などで利用されている流動性向上剤の検討は行われていなかった。
【0004】
透明メチルメタクリレートブタジエンスチレンについてもここ数年間で伸びてきている樹脂であり、今後の需要増が同様に期待される。
【0005】
一般的なスチレン系樹脂の流動性向上剤としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒマシ硬化油、エチレンビスアマイド(EBS)などの添加剤が使用されている。そして、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂に流動性を付与する方法としては、アルキレンビスアマイドを配合する方法(例えば、特許文献1参照)、ポリカプロラクトンを配合させる方法(例えば、特許文献2参照)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を含有させる方法(例えば、特許文献3参照)が提示されている。
【0006】
しかし、これらの添加剤の使用は透明性を阻害する。透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂で透明性を保持して流動性を改善し十分な強度を保持する添加剤は未だ知られていない。スチレン系樹脂の流動性改善に特定の粒子径の疎水化合成二酸化珪素含有させる方法(例えば、特許文献4参照)が開示されているが、透明性、流動性、耐衝撃性で十分満足のいくものは得られていない。特に、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂(例えば、特許文献5及び6参照)での流動性向上剤は知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−57089
【特許文献2】特開平9−12838
【特許文献3】特開平11−228767
【特許文献4】特開平10−338781
【特許文献5】特開平10−36626
【特許文献6】特開平9−278977
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂に対し、透明性阻害や物性の低下が少なく、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂の成形加工において良好な流動性を示す樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するための鋭意検討を重ねた結果、特定の添加物が透明性の阻害や物性の低下が少なく、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂である透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂の成形加工において流動性に優れることを突き止め本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の上記課題は、下記構成によって解決される。
1.流動性向上剤として多価アルコール脂肪酸エステルを含有するスチレン系樹脂において、スチレン系樹脂が透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂であり、多価アルコール脂肪酸エステルがポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルであり、且つこのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを0.1〜3重量部含有することを特徴とする流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0011】
2.ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコール成分がグリセリンであり、ポリオキシエチレン付加モル数が5〜30モルであることを特徴とする前記1に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0012】
3.透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂が透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂である前記1又は2に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明における透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂とは、透明ABSと透明MBSのことであり、透明ABSについては、一般市場に出回っている透明ABSが該当し、例えば、特定の粒子径を有するゴム質重合体を含有するゴム強化スチレン系樹脂に特定の組成と分子量を有する2種類のメタクリル酸メチル系共重合体を特定割合で組合せることを特徴とするものとして知られている(前記特許文献5参照)。
【0014】
また透明ABSはABSとメタクリル樹脂とのブレンドがほとんどであり、ブレンドにより、外観性の向上、高剛性化、耐擦傷性に優れるものとなる。
ABSとメタクリル樹脂はもともと相溶性の良い組み合わせであるが、ABS中のアクリロニトリル量を調節することで更に相溶性が向上し、ゴム相とマトリックス相の屈折率が近づくため、可視光線の透過が良好となり、透明性が良好となる透明ABSとなる。
【0015】
一方、透明MBSについては、MBSが透明の良好な樹脂であり、主にPVCの強化剤としての利用が多い。
【0016】
透明MBSについては、例えば、特定のスチレン系単量体単位20〜70重量%及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜80重量%からなる共重合体(A)70〜96重量部と、ゴム状重合体4〜30重量部とから構成され、該ゴム状重合体が該共重合体(A)中に平均粒子径0.1〜2.0μmの粒子として分散しており、該ゴム状重合体のうち少なくとも70重量%が、スチレン単位5〜50重量%とブタジエン単位50〜95重量%の共重合体であって、25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が3〜60センチポイズの範囲内にあり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレンを基準に測定した)が1.0〜1.8の範囲内にあるポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体であり、該共重合体(A)と該ゴム状重合体の屈折率の差が0.01以内の屈折率を有する透明なゴム強化スチレン系樹脂であり、また、共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がメタクリル酸メチル70〜90重量%とアクリル酸エチル30〜10重量%から成るゴム強化スチレン系樹脂である(前記特許文献6参照)。
【0017】
本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに用いられる多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、糖アルコール等あるが、本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる脂肪酸は、炭素数12〜22の飽和及び不飽和脂肪酸から適宜選択される。
【0019】
本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応により得られるものであり、同反応品にエチレンオキサイドを付加反応させたものが本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルとなる。
ポリオキシエチレン付加モル数は5〜30モルであることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの含有量については、本発明の透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜3重量部であり、好ましくは0.4〜2.5重量部である。
【0021】
本発明の組成物には、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、無機充填剤、着色剤及び離型剤などの通常使用される添加剤を適宣含有することができる。
【0022】
本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの混合方法には特別な制限は無く、これらを均一に混合できる手段であればいずれの手段を用いてもよい。例えば、ヘンシェル型ミキサー、押出し機、バンバリーミキサー、ニ‐ダー、加熱ロール等の各種混合機械による混合、混練が適宜採用できる。また、本発明の透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂組成物は、射出成形、押出し成形、真空成形、ブロー成形等の成形方法により種々の成形品が得られる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。尚、「部」は特に断りのない限り「重量部」を表す。
【0024】
[実施例及び比較例試料の調整]
本発明において、流動性向上剤としてのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルについては、グリセリン脂肪酸エステルに一定の比率でエチレンオキサイドを付加反応し、付加モル数を5〜30となるように調整した。
その他比較用流動性向上剤剤については、市販品を使用した。具体的には以下の通りとなる。
【0025】
ひまし硬化油(リケマールTG−12;理研ビタミン社製)、ペンタエリスリトールモノ、ジステアレート(リケマールHT−10;理研ビタミン社製)、グリセリンコハクステアリン酸エステル(ポエムB−10;理研ビタミン社製)、グリセリンモノステアレート(リケマールS−100A;理研ビタミン社製)、グリセリンモノ、ジステアレート(リケマールS−200;理研ビタミン社製)、グリセリンジアセトモノラウレート(リケマールPL−012;理研ビタミン社製)
【0026】
[実施例1〜4及び比較例1〜10]
・流動性評価
透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(MI=2.3;200℃で5Kg)100重量部に表1に示した流動性向上剤組成物を0.4部から3部配合し、高速ヘンシェルミキサーで3分間混合し評価用コンパウンドを得た。同コンパウンドを用いて射出成形(射出温度230℃,冷却金型50℃)を行い、流動性評価用金型にて、成型品のフロー長さの測定を行った。またその流動性評価結果を表2に示した。
【0027】
流動性評価金型については、幅4mmで高さ3mmの渦巻状物を成形することができ、その成型品の長さで流動性が評価できる。
【0028】
・透明性評価、物性評価(アイゾット衝撃値とビカット軟化点測定)
上記配合にて物性テスト用試験片を成形し、その試験片にて透明性評価を、物性評価としてアイゾット衝撃値とビカット軟化点測定を行った。またそれら評価結果を表3に示した。
【0029】
透明性については、エチレングリコールに2mmシートを2枚重ねて浸け、その時の透明性を濁度計にて評価した。
【0030】
アイゾット衝撃値については、JIS K7110に準じた。
ビカット軟化点については、JIS K7260に準じた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
[実施例5〜8及び比較例11〜15]
・流動性評価
透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂(MI=3.0;200℃で5Kg)100重量部に表4に示した流動性向上剤組成物0.4部から3部配合し、高速ヘンシェルミキサーで3分間混合し評価用コンパウンドを得た。同コンパウンドを用いて射出成形(射出温度230℃,冷却金型50℃)を行い、流動性評価用金型にて、成型品のフロー長さの測定を行った。またその流動性評価結果を表5に示した。
【0035】
流動性評価金型については、幅4mmで高さ3mmの渦巻状物を成形することができ、その成型品の長さで流動性が評価できる。
【0036】
・透明性評価、物性評価(アイゾット衝撃値とビカット軟化点測定)
上記配合にて物性テスト用試験片を成形し、その試験片にて透明性評価を、物性評価としてアイゾット衝撃値とビカット軟化点測定を行った。またそれら評価結果を表6に示した。
【0037】
透明性については、エチレングリコールに2mmシートを2枚重ねて浸け、その時の透明性を濁度計にて評価した。
【0038】
アイゾット衝撃値については、JIS K7110に準じた。
ビカット軟化点については、JIS K7260に準じた。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【発明の効果】
本発明により、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂において、流動性に優れ、且つ透明性、物性に優れる樹脂が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明に優れるゴム強化スチレン系樹脂である透明アクリロニトリルブタジエンスチレン及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン用として好適な添加剤に関し、詳しくは、透明性や樹脂物性などの弊害がなく、且つ流動性を向上させた透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂は加工性の良さに加え、他樹脂とのポリマーアロイの開発で新規用途、競合その他樹脂の代替用途として採用されおり、ここ数年二桁成長を続けている。透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂の1998年の需要量は、約5万1,000トン/年と推定されており、今後も需要増加が期待されている。特徴として、流動性に優れる、熱安定性が良好、成形加工性が良い、光線透過率がポリカーボネートに近く高い透明性、二次加工性に優れる、光沢・着色性等の外観が良いことが挙げられる。用途的には、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂の用途分野は、複写機、プリンターなどのOA機器、電話機、FAXなどの通信機器、家電製品、雑貨などに使用されている。
【0003】
以上のように透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂については、ここ数年間で伸長してきた樹脂であり、成形加工方法としては主に射出成形機による成形方法が一般的であるが、成形時の生産性や美観の向上などで利用されている流動性向上剤の検討は行われていなかった。
【0004】
透明メチルメタクリレートブタジエンスチレンについてもここ数年間で伸びてきている樹脂であり、今後の需要増が同様に期待される。
【0005】
一般的なスチレン系樹脂の流動性向上剤としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒマシ硬化油、エチレンビスアマイド(EBS)などの添加剤が使用されている。そして、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂に流動性を付与する方法としては、アルキレンビスアマイドを配合する方法(例えば、特許文献1参照)、ポリカプロラクトンを配合させる方法(例えば、特許文献2参照)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を含有させる方法(例えば、特許文献3参照)が提示されている。
【0006】
しかし、これらの添加剤の使用は透明性を阻害する。透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂で透明性を保持して流動性を改善し十分な強度を保持する添加剤は未だ知られていない。スチレン系樹脂の流動性改善に特定の粒子径の疎水化合成二酸化珪素含有させる方法(例えば、特許文献4参照)が開示されているが、透明性、流動性、耐衝撃性で十分満足のいくものは得られていない。特に、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂(例えば、特許文献5及び6参照)での流動性向上剤は知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−57089
【特許文献2】特開平9−12838
【特許文献3】特開平11−228767
【特許文献4】特開平10−338781
【特許文献5】特開平10−36626
【特許文献6】特開平9−278977
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂に対し、透明性阻害や物性の低下が少なく、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂の成形加工において良好な流動性を示す樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するための鋭意検討を重ねた結果、特定の添加物が透明性の阻害や物性の低下が少なく、透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂である透明アクリロニトリルブタジエンスチレン、透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂の成形加工において流動性に優れることを突き止め本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の上記課題は、下記構成によって解決される。
1.流動性向上剤として多価アルコール脂肪酸エステルを含有するスチレン系樹脂において、スチレン系樹脂が透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂であり、多価アルコール脂肪酸エステルがポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルであり、且つこのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを0.1〜3重量部含有することを特徴とする流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0011】
2.ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコール成分がグリセリンであり、ポリオキシエチレン付加モル数が5〜30モルであることを特徴とする前記1に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0012】
3.透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂が透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂である前記1又は2に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明における透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂とは、透明ABSと透明MBSのことであり、透明ABSについては、一般市場に出回っている透明ABSが該当し、例えば、特定の粒子径を有するゴム質重合体を含有するゴム強化スチレン系樹脂に特定の組成と分子量を有する2種類のメタクリル酸メチル系共重合体を特定割合で組合せることを特徴とするものとして知られている(前記特許文献5参照)。
【0014】
また透明ABSはABSとメタクリル樹脂とのブレンドがほとんどであり、ブレンドにより、外観性の向上、高剛性化、耐擦傷性に優れるものとなる。
ABSとメタクリル樹脂はもともと相溶性の良い組み合わせであるが、ABS中のアクリロニトリル量を調節することで更に相溶性が向上し、ゴム相とマトリックス相の屈折率が近づくため、可視光線の透過が良好となり、透明性が良好となる透明ABSとなる。
【0015】
一方、透明MBSについては、MBSが透明の良好な樹脂であり、主にPVCの強化剤としての利用が多い。
【0016】
透明MBSについては、例えば、特定のスチレン系単量体単位20〜70重量%及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜80重量%からなる共重合体(A)70〜96重量部と、ゴム状重合体4〜30重量部とから構成され、該ゴム状重合体が該共重合体(A)中に平均粒子径0.1〜2.0μmの粒子として分散しており、該ゴム状重合体のうち少なくとも70重量%が、スチレン単位5〜50重量%とブタジエン単位50〜95重量%の共重合体であって、25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が3〜60センチポイズの範囲内にあり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレンを基準に測定した)が1.0〜1.8の範囲内にあるポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体であり、該共重合体(A)と該ゴム状重合体の屈折率の差が0.01以内の屈折率を有する透明なゴム強化スチレン系樹脂であり、また、共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がメタクリル酸メチル70〜90重量%とアクリル酸エチル30〜10重量%から成るゴム強化スチレン系樹脂である(前記特許文献6参照)。
【0017】
本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに用いられる多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、糖アルコール等あるが、本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる脂肪酸は、炭素数12〜22の飽和及び不飽和脂肪酸から適宜選択される。
【0019】
本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応により得られるものであり、同反応品にエチレンオキサイドを付加反応させたものが本発明のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルとなる。
ポリオキシエチレン付加モル数は5〜30モルであることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの含有量については、本発明の透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜3重量部であり、好ましくは0.4〜2.5重量部である。
【0021】
本発明の組成物には、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、無機充填剤、着色剤及び離型剤などの通常使用される添加剤を適宣含有することができる。
【0022】
本発明で用いられるポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの混合方法には特別な制限は無く、これらを均一に混合できる手段であればいずれの手段を用いてもよい。例えば、ヘンシェル型ミキサー、押出し機、バンバリーミキサー、ニ‐ダー、加熱ロール等の各種混合機械による混合、混練が適宜採用できる。また、本発明の透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂組成物は、射出成形、押出し成形、真空成形、ブロー成形等の成形方法により種々の成形品が得られる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。尚、「部」は特に断りのない限り「重量部」を表す。
【0024】
[実施例及び比較例試料の調整]
本発明において、流動性向上剤としてのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルについては、グリセリン脂肪酸エステルに一定の比率でエチレンオキサイドを付加反応し、付加モル数を5〜30となるように調整した。
その他比較用流動性向上剤剤については、市販品を使用した。具体的には以下の通りとなる。
【0025】
ひまし硬化油(リケマールTG−12;理研ビタミン社製)、ペンタエリスリトールモノ、ジステアレート(リケマールHT−10;理研ビタミン社製)、グリセリンコハクステアリン酸エステル(ポエムB−10;理研ビタミン社製)、グリセリンモノステアレート(リケマールS−100A;理研ビタミン社製)、グリセリンモノ、ジステアレート(リケマールS−200;理研ビタミン社製)、グリセリンジアセトモノラウレート(リケマールPL−012;理研ビタミン社製)
【0026】
[実施例1〜4及び比較例1〜10]
・流動性評価
透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(MI=2.3;200℃で5Kg)100重量部に表1に示した流動性向上剤組成物を0.4部から3部配合し、高速ヘンシェルミキサーで3分間混合し評価用コンパウンドを得た。同コンパウンドを用いて射出成形(射出温度230℃,冷却金型50℃)を行い、流動性評価用金型にて、成型品のフロー長さの測定を行った。またその流動性評価結果を表2に示した。
【0027】
流動性評価金型については、幅4mmで高さ3mmの渦巻状物を成形することができ、その成型品の長さで流動性が評価できる。
【0028】
・透明性評価、物性評価(アイゾット衝撃値とビカット軟化点測定)
上記配合にて物性テスト用試験片を成形し、その試験片にて透明性評価を、物性評価としてアイゾット衝撃値とビカット軟化点測定を行った。またそれら評価結果を表3に示した。
【0029】
透明性については、エチレングリコールに2mmシートを2枚重ねて浸け、その時の透明性を濁度計にて評価した。
【0030】
アイゾット衝撃値については、JIS K7110に準じた。
ビカット軟化点については、JIS K7260に準じた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
[実施例5〜8及び比較例11〜15]
・流動性評価
透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂(MI=3.0;200℃で5Kg)100重量部に表4に示した流動性向上剤組成物0.4部から3部配合し、高速ヘンシェルミキサーで3分間混合し評価用コンパウンドを得た。同コンパウンドを用いて射出成形(射出温度230℃,冷却金型50℃)を行い、流動性評価用金型にて、成型品のフロー長さの測定を行った。またその流動性評価結果を表5に示した。
【0035】
流動性評価金型については、幅4mmで高さ3mmの渦巻状物を成形することができ、その成型品の長さで流動性が評価できる。
【0036】
・透明性評価、物性評価(アイゾット衝撃値とビカット軟化点測定)
上記配合にて物性テスト用試験片を成形し、その試験片にて透明性評価を、物性評価としてアイゾット衝撃値とビカット軟化点測定を行った。またそれら評価結果を表6に示した。
【0037】
透明性については、エチレングリコールに2mmシートを2枚重ねて浸け、その時の透明性を濁度計にて評価した。
【0038】
アイゾット衝撃値については、JIS K7110に準じた。
ビカット軟化点については、JIS K7260に準じた。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【発明の効果】
本発明により、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂において、流動性に優れ、且つ透明性、物性に優れる樹脂が得られる。
Claims (3)
- 流動性向上剤として多価アルコール脂肪酸エステルを含有するスチレン系樹脂において、スチレン系樹脂が透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂であり、多価アルコール脂肪酸エステルがポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルであり、且つこのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを0.1〜3重量部含有することを特徴とする流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
- ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコール成分がグリセリンであり、ポリオキシエチレン付加モル数が5〜30モルであることを特徴とする請求項1に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
- 透明性良好なゴム強化スチレン系樹脂が透明アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂及び透明メチルメタクリレートブタジエンスチレン樹脂である請求項1又は請求項2に記載の流動性を向上させたゴム強化スチレン系樹脂組成物。
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- 2002-12-04 JP JP2002352073A patent/JP2004182874A/ja active Pending
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