JP2004182849A - スチレン系樹脂フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スチレン系樹脂からなる二軸延伸フィルムにおいて、スチレン系再生樹脂を40〜98wt%含有した該フィルムのメルトインデックス(MI)が2.50〜5.50(g/10分)であって、衝撃トータルエネルギーが14.0×10−2(J)〜80.0×10−2(J)である。
【選択図】 選択図なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、メタクリル酸等との共重合体等のスチレン系樹脂製の二軸延伸フィルムに関する。さらに、詳細には、封筒窓用のスチレン系樹脂製の二軸延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂からなる二軸延伸フィルムは、透明性、剛性、気体透過性等に優れることから、食品包装用フィルムや封筒窓張り用フィルムとして多用されている。
特に、スチレン系樹脂フィルムの中で、剛性が高く、透明性に優れるフィルムは、封筒窓加工及び封入・封緘適性に優れることから好まれて使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂は脆く、延伸操作や耐衝撃性樹脂の混合により耐衝撃性を向上し、食品包装用フィルムや封筒窓用フィルムに適するように加工されるのが一般的である。
耐衝撃性の向上技術として、例えば、特開昭57−195139号公報には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体を高分子量ポリスチレン(分子量30万以上)に10〜90重量部混合する樹脂組成物が開示されている。好ましい範囲として、還元粘度が1.2〜1.5(分子量35万〜45万)の高分子量ポリスチレンが示されており、衝撃強度が著しく向上している。
【0004】
特開昭58−129038号公報には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体に、さらに耐衝撃性ポリスチレンをポリスチレンと混合するフィルムが開示されている。
これは、インフレーション法での製膜安定性の向上及び耐衝撃性向上効果があるとしている。そして、ポリスチレンの分子量は、成形できる10万以上であれば良く、インフレーション時のダイス温度は180℃、縦11倍、横3.0倍の延伸条件が記載されている。
【0005】
特開平1−104642号公報には、水素化ブロック共重合体(ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体)とスチレン系樹脂の混合樹脂からなるシートあるいは、フィルムが開示されている。
これは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の混合量が15wt%以下では、耐衝撃性が充分でないこと、該混合量よりスチレン−ブタジエンブロック共重合体を増加すると、透明性の悪化、ゲル状物の発生の問題解決に対し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を水素添加して得られる水素化ブロック共重合体の混合が提案されている。
【0006】
封筒窓用のフィルムとしては、特開平2−72050号公報及び特開平2−72051号公報にワックス質アンチブロッキング剤、粒状アンチブロッキング剤を含有したフィルムが提案され、押出し成形ダイの作業温度は、149℃〜232℃との記載がある。
同様に、封筒窓用フィルムとして、WO 01/40360 A1号公報には、テンター法を用いてフィルム化する場合は、延伸温度は、スチレン系樹脂のビカット軟化点+20℃〜ビカット軟化点+40℃の範囲で、2〜17倍に延伸、インフレーション法においては、延伸開始点の温度が、スチレン系樹脂のビカット軟化点+30℃〜ビカット軟化点+90℃の範囲で、2〜17倍に延伸することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭57−195139号公報
【特許文献2】
特開昭58−129038号公報
【特許文献3】
特開平1−104642号公報
【特許文献4】
特開平2−72050号公報
【特許文献5】
特開平2−72051号公報
【特許文献6】
特開平10−119978号公報
【特許文献7】
特開2001−219939号公報
【特許文献8】
特開2001−240689号公報
【特許文献9】
WO 01/40360 A1号公報、
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、社会的要請から再生材料を40wt%以上使用したプラスチックフィルムの要望が強い。しかしながら、再生材料は、バージン材料とは異なり、種々の物性低下が予想され、特に、スチレン系樹脂からなる封筒窓用フィルムでの技術的完成は認められない。
本発明におけるスチレン系再生樹脂とは、バージン材料が少なくとも一回の熱履歴を受けて、フィルム・シート等に製品化され市場に供給された後、該フィルム・シート製品が2次加工(例えば、窓付き封筒、弁当用透明蓋)された時に発生するクズ等が分別・回収されて、少なくともさらに1回の熱履歴を経て、ペレット化されたスチレン系樹脂を言い、2次加工製品として使用済みのスチレン系樹脂は含まない。スチレン系再生樹脂は、少なくとも2回の熱履歴を受けることにより、分子量はバージン材料より必ず低くなっている(メルトインデックスは高くなっている)。
【0009】
特に、注目すべきことは、スチレン系樹脂は、熱履歴を受ける毎に、分子量の低下率が大きくなるだけでなく、低分子量成分(オリゴマー成分)も増加することである。
上記の熱履歴を受けることで、分子量低下に伴う強度(耐衝撃性)低下が起こることと、オリゴマー成分の増加によって、ダイス等にオリゴマーが付着し、付着物がフィルムに再付着して、フィルムを汚す問題があり、スチレン系再生樹脂のフィルムへの採用は、困難であった。
【0010】
また、年々封筒窓貼り加工が高速化するばかりでなく、未封緘の封筒内への書類の自動挿入・封緘加工も高速化していることである。つまり、市場からは、高速の封筒窓貼り加工及び書類の自動挿入・封緘加工に適した性能を有し、かつ再生材料を40wt%以上含有したスチレン系樹脂フィルムが求められているのが現状である。
そして、封筒窓用フィルムとして使用される場合には、高速化する封入・封緘・読み取り工程において、封筒が、ゴムロール間に挟まれて高速で移動する間に、擦れによるフィルムの白化や微小欠陥が発生する問題を有し、より高強度のフィルムが求められている。
【0011】
特開昭57−195139号公報に開示されているように、高分子量のポリスチレン樹脂を用いることも耐衝撃性向上になるが、スチレン系樹脂からなるフィルムやシートの多くは分子量が30万未満であり、市場から分別・回収されるスチレン系再生樹脂は、より低分子量のものが一般的で、分子量30万以上のスチレン系再生樹脂を入手することは困難である。
また、高分子量のポリスチレン樹脂にスチレン系再生樹脂を40wt%以上混合して使用することも考えられるが、フィルムに成形加工するには、高分子量ポリスチレン樹脂成分の流動性を上げるために、押出し機やダイスの温度をより高温にする必要がある。前述の如く、スチレン系再生樹脂は揮発成分の低分子量物を多く含有しており、高温押出しは、フィルムの汚れを招くばかりでなく、スチレン系再生樹脂の低分子量化を加速し、逆に強度低下を招く場合もある。
【0012】
耐衝撃性向上のみの目的から、該スチレン−ブタジエンブロック共重合体を多量に混合することも考えられる。特開昭58−129038号公報に開示されるように、ポリスチレン樹脂にスチレン−ブタジエンブロック共重合体を混合することは、耐衝撃性の向上になるが、10wt%以上のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の混合は、ゲル発生が著しく、昨今の製品安全に関する高度な要求に対応できない問題を有する。特に、封筒窓用フィルムにおける重要な品質として、ゲル・炭化物が挙げられる。これは、封入・封緘時に自動読み取り装置によるバーコード読み取り工程で、ゲルや炭化物があるとエラー発生に繋がる問題を有するからである。
【0013】
特開平1−104642号公報に開示される水素化ブロック共重合体の添加においてもゲル・炭化物の発生を充分に抑えることはできず、高速読み取りに対応できるレベルには至らない。
本発明者等が解決しようとする課題は、再生によって低分子量化したスチレン系再生樹脂を使用しても、食品包装用や封筒窓用フィルムとして好適に使用できる二軸延伸フィルムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、今まで困難とされていた再生プロセスによって低分子量化したスチレン系樹脂を用い、かつスチレン−ブタジエンブロック共重合体を10wt%未満、該水素化ブロック共重合体にあっては、3wt%未満の混合においても、より低温で押出し、ダイス温度を低くして、低温で高倍率延伸することにより、予想されなかった耐衝撃性の維持、及びオリゴマー成分のフィルムへの再付着がなく、フィルム化できることを見出し、かつ高速での封筒窓加工が可能であり、ゲル・炭化物の発生がないため、問題なく高速で封入・封緘できることも見出し、この知見により本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、スチレン系樹脂からなる二軸延伸フィルムにおいて、スチレン系再生樹脂を40〜98wt%含有した該フィルムのメルトインデックス(MI)が2.50〜8.50(g/10分)であって、衝撃トータルエネルギーが14.0×10−2(J)〜80.0×10−2(J)であることを特徴とするスチレン系樹脂フィルムであり、好適な用途は、封筒窓用のスチレン系樹脂フィルムである。
本発明の第一は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体や該水素化ブロック共重合体を混合しなくとも、混合したとしても上記のような極少量の混合において、押出し温度をより低温化し、分子量の低下を防止すると共に、ゲル・炭化物の発生を抑制するために、スチレン系樹脂とスチレン系再生樹脂の混合物を、特定のMI(メルトインデックス)に設定することである。
第二に、耐衝撃性を維持するために、特定のMIの樹脂を特定の押出条件で押出した後、特定の条件で二軸延伸操作を実施することである。
【0016】
以下、本発明のスチレン系樹脂フィルムについて詳細に説明する。
本発明におけるスチレン系樹脂とは、スチレン及び、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン等の核置換スチレンよりなるホモポリマー、及びこれらを50重量%以上含有するコポリマーの透明な重合体であって、スチレンホモポリマーである汎用ポリスチレン(GPPS)、スチレンと不飽和カルボン酸(メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸)との共重合体、スチレン、α−メチルスチレンと不飽和カルボン酸との3成分以上からなる共重合体等の単独または混合物であり、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体等の公知の重合体樹脂が挙げられ、剛性・透明性の観点から汎用ポリスチレン樹脂が望ましい。
【0017】
フィルムやシートに好適に使用されている汎用ポリスチレン樹脂のMIは、2.5(g/10分)未満であり、本発明におけるスチレン系樹脂のMIは、1.0〜10.0(g/10分)、好ましくは1.5〜8.0(g/10分)である。MIが1.0(g/10分)未満では、スチレン系再生樹脂との混練性が悪く、高温で押出す必要があり、スチレン系再生樹脂の分子量低下が著しいばかりでなく、オリゴマー成分の発生量も多くなり、好ましくない。MIが10.0(g/10分)を超えると、耐衝撃性が不十分になる。
【0018】
また、スチレン系再生樹脂は、汎用ポリスチレン樹脂の再生樹脂であることが望ましい。これは、封筒窓用フィルム等には、透明性が要求されることから、同材質の樹脂が好ましい。スチレン系再生樹脂のMIは、2.0〜10.0(g/10分)が好ましく、2.0〜6.0(g/10分)がより好ましい。
スチレン系再生樹脂は、少なくとも2回の熱履歴を受けることから、2.0(g/10分)未満の再生樹脂は安定的に生産されておらず、工業生産上、入手が困難である。
【0019】
10.0(g/10分)以上のスチレン系再生樹脂では、本発明で開示する手段によっても、充分な耐衝撃性を有するフィルムは得られない。
本発明の第一のMIの設定は、スチレン系樹脂とスチレン系再生樹脂とを混合し、所定方法のメルトインデクサーでMIを測定し、混合物のMIが2.0〜8.0(g/10分)の範囲に入るように混合割合を決定する。
この時、スチレン系再生樹脂は、40wt%〜98wt%含有し、バージン材料との合計が最大で100wt%になるよう混合比率を設定する。バージン材料としては、スチレン系樹脂、さらに、公知の添加剤として、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、無機微粒子、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が使用され、混合物として100wt%とした上で、MIを測定する。
【0020】
ここで、HIPSあるいは、無機微粒子を含有することで、フィルム表面に凹凸が形成され、フィルム同士のブロッキング防止の効果がある反面、多量に含有する場合には、透明性の悪化を招き好ましくない。特に、封筒窓用フィルムに使用する場合には、読み取り工程で、読み取りエラーが生じないようHaze値が30%を超えないように混合割合を設定する。フィルム同士のブロッキング防止の観点から、例えば、HIPSの含有量は、1.5wt%以上、好ましくは2.0wt%以上である。
【0021】
混合物のMIが、2.0(g/10分)未満では、上記のように高温下での押出し製膜となる為、スチレン系再生樹脂のオリゴマー発生量が多くなり、フィルムを汚す問題を生ずる。
混合物のMIが8.0(g/10分)を超えると、後述の低温延伸においても、充分な延伸配向が得られず、実用的な耐衝撃性が得られない。
さらに、衝撃トータルエネルギーが14.0×10−2(J)〜80.0×10−2(J)となるように、延伸温度、延伸倍率を適宜選定する。延伸倍率が4倍未満では、延伸配向が充分でなく、実用的な衝撃強度が得られない。また、本発明者等による各種の実験から、15倍以上での安定的な延伸(フィルムの破断、バブルの破裂、厚みの不均一性が生じない)は困難であった。延伸温度は上記の範囲で選定するが、延伸倍率が4〜10倍の範囲ではビカット軟化点+10℃〜ビカット軟化点+40℃、10倍を超えて15倍までの範囲ではビカット軟化点+20℃〜ビカット軟化点+50℃が好ましい。
【0022】
延伸して得られたフィルムの厚みは、用途に応じて適宜決定できる。食品用の包装材料としては、10〜300μmが好ましく、封筒窓用フィルムとしては、10〜60μm、より好ましくは15〜50μmである。
衝撃トータルエネルギーは、下記理由から、衝撃トータルエネルギーが、14.0×10−2(J)〜80.0×10−2(J)である。より好ましくは、18.0×10−2(J)〜60.0×10−2(J)である。
【0023】
衝撃トータルエネルギーが、14.0×10−2(J)未満では、封筒窓用フィルムとして、高速封入・封緘時のロールとの擦れにより、フィルムが白化、あるいは微小欠陥が発生する。特に昨今、ダイレクトメールが増加し、封入される書類の厚みが増加傾向にある。書類厚みが1mmを超える場合もあり、書類厚みが増加すると封筒移送時に該フィルムがゴムロール間で挟まれ、擦られる衝撃的力が大きくなるため、フィルムの耐衝撃性が求められているもので、本発明で開示するフィルムであれば、高速処理(6000枚/時以上)で書類厚みが3mmでも、フィルムの白化、あるいは微小欠陥の発生は認められない。
【0024】
衝撃トータルエネルギーが、80.0×10−2(J)を超えると下記問題が発生する。
封筒窓貼り加工は、封筒用紙の窓枠に接着剤を貼着し、窓枠より2mm程度大きなサイズに裁断された窓用フィルムを接着した後、接着剤を乾燥する工程からなるのが一般的である。この窓用フィルムの裁断は、衝撃的な力を該フィルムの厚み方向に加えることで達成される。この時に、該フィルムの衝撃トータルエネルギーが、80.0×10−2(J)を超えると、裁断に時間を要し、窓枠とフィルムの位置ズレが発生する。窓貼り加工速度も昨今、高速化されており、400枚/分の加工速度以上になると、上記の位置ズレが顕著になる。さらに、600枚/分より高速になると、フィルムが部分的に裁断できない問題も生ずる。本発明の第二点目の特定の押出し・延伸条件について以下、詳細に述べる。
【0025】
本発明のスチレン系樹脂のフィルム化は、溶融・混練しT−ダイからシート状に押出した後、同時二軸延伸、あるいは逐次二軸延伸するか、溶融・混練し円筒状ダイから筒状に押出した後、バブル延伸(インフレーション法)する等の公知の方法が採用できる。
本発明で開示する押出し・延伸条件でフィルム化することにより、MIの増加(押出し機への投入前のスチレン系樹脂とスチレン系再生樹脂等の混合物のMI−フィルムのMI)は、約0.5(g/10分)以下で抑えられるため、実用的な耐衝撃性のあるフィルムが得られ、フィルムとしてのMIは、2.5〜8.5(g/10分)の範囲となる。
【0026】
まず、押出し条件については、押出し機内の樹脂温度は、180℃〜230℃の範囲に設定する。180℃未満では、樹脂圧が高く、溶融押出しが困難であり、230℃を超えると、スチレン系再生樹脂の分子量低下が著しく、オリゴマー発生量が多くなる。特に、オリゴマー成分の発生により、フィルムを汚す問題が顕著になる。
次に、ダイスの温度は120℃〜145℃で、120℃未満では、ダイス内を樹脂が均一流動せずに、厚みの均一性が得られない。145℃を超えると、低温延伸が達成できずに充分な衝撃強度が得られない。さらに、樹脂温度が高い状態で、空気中に放出されるため、オリゴマー成分がダイス周辺にも付着し、フィルムの汚れを助長する。
【0027】
従来技術の範疇においては、ダイス温度を押出し機内の樹脂温度より高く設定し、製膜性を向上させる。これは、ダイス内の滞留時間は、押出し機内の滞留時間よりかなり短く、スチレン系樹脂の熱的劣化に影響を及ぼさないと考えられているからである。しかしながら、本発明者等が検討した結果、ダイス温度の設定は、非常に重要な構成であり、スチレン系再生樹脂を用いた場合には、本発明で開示するダイス温度以上に設定すると、安定した製膜、即ち厚みの均一性が得られず、かつオリゴマー成分の発生量が増加することを見出したのである。
【0028】
つまり、バージンのスチレン系樹脂だけを用いて溶融・混練・押出し・延伸するフィルム化条件でスチレン系再生樹脂をフィルム化すると、ダイスへのオリゴマー成分の付着量が多く発生し、再付着によるフィルム汚れを招くのである。
そして、延伸温度(インフレーション法の場合は、延伸開始温度)が、(ビカット軟化点+10℃)〜(ビカット軟化点+50℃)(延伸開始温度の場合はビカット軟化点+40℃)の範囲で、延伸することが重要である。延伸温度が、(ビカット軟化点+10℃)未満では、安定的に製膜できず、フィルムが破断したり、バブルが破裂したりする。
(ビカット軟化点+50℃)(延伸開始温度の場合はビカット軟化点+40℃)を超えると、充分な延伸配向が得られず、実用的な衝撃強度が得られない。
【0029】
また、充分な延伸配向を得るために、延伸倍率は、縦・横方向とも4倍〜15倍であることが必須である。
本発明で開示するスチレン系樹脂とスチレン系再生樹脂等の混合物のMIにおいて、上記構成で溶融・混練・押出し・延伸することで、透明性、耐衝撃性等に優れたフィルムが得られる。
【0030】
【発明の実施形態】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。評価方法は以下の通りである。
(1)MI(メルトインデックス):ASTM D−1238に準拠して測定した。
(2)衝撃トータルエネルギー:Reometric社製RDT−5000型の落錘衝撃試験機を用いて、ダート重量=3.75kg、ダート衝撃速度=2.0m/sec、ダート先端直径=1.57cm(5/8インチ)、試料受台直径=5.08cm(2インチ)の条件下、フィルム破断に要するトータルエネルギーを測定した。
(3)透明性(Haze値):厚さ25μmのフィルムを用いて、ASTM D−1003に準じて測定した。
【0031】
(4)高速封筒窓貼り加工適性
ウインクラー社製627型の封筒窓貼り機に210mm幅×2500m長の連続フィルムをセットし、80mm×50mmと95mm×50mmの2つの窓枠を持つ、240mm×120mmの紙製洋型封筒の窓枠の内側に、210mm×52mm(自動的に52mmに裁断される)のフィルムを接着剤で接着した。窓貼り加工速度を変えながら封筒窓枠と該フィルムの位置ズレを目視観察し、実用に供することのできる窓貼り加工速度を決定した。
◎:700枚/分を超えて窓貼り加工できる
○:600枚/分まで窓貼り加工できる
△:400枚/分まで窓貼り加工できる
×:300枚/分未満までしか窓貼り加工できない
【0032】
(5)高速書類自動封入・封緘・読み取り適性
上記(4)で得られたフィルムと封筒窓枠に位置ズレのない封筒をBOWE社製Type5550型(ドイツ製)の自動封入・封緘・読み取り機を用いて、書類厚みが約2mmの書類を処理速度を7000枚/時として、目視観察により、封筒窓に白化や微小欠陥が認められず、かつ該封筒の45000枚処理において、読み取りエラーがゼロであった場合を◎、白化や読み取りエラーのあった場合を×とした。
【0033】
(6)フィルム汚れ
押出し製膜を開始してから、10時間後から11時間後までに得られたフィルムを目視で観察し、オリゴマーの再付着による白化部位の有無を調査した。
白化部位が観察されなかったフィルムのみ◎とし、1箇所でも白化が観察された場合は×とした。
(7)スチレン系再生樹脂
二軸延伸ポリスチレンシート(旭化成株式会社製のグレード名:#7700)を弁当用蓋に熱板成形(熱板成形機は、関西自動機社製のPV600型を用いた)した。成形後の該蓋の抜きクズを分別・回収して粉砕した後、ペレタイザーによりリペレット化した。リペレット時の押出し温度を変更して、異なるMIのペレットを得、スチレン系再生樹脂とした。
【0034】
【実施例1】
MIが2.4(g/10分)の汎用ポリスチレン樹脂57wt%とMI4.6(g/10分)のスチレン系再生樹脂40wt%と平均ゴム粒子径0.8μm、グラフトゴム成分16.4%のHIPS3wt%をドライブレンドして混合物を得た。この混合物のMIを測定した後、65φmm径のスクリューを有する押出し機に供給、溶融・混練し、円筒ダイより押出し、バブル延伸して25μmのフィルムを得、ロール状に巻き取った。混合物のMI、製造条件及び特性を表1に示した。
【0035】
【実施例2】
汎用ポリスチレン樹脂が20wt%、スチレン系再生樹脂が77wt%とした以外は、実施例1同様に実施し、混合物のMI、製造条件及び特性を表1に示した。
【0036】
【実施例3〜5】
表1に示す混合物のMIとした以外は、実施例1と同様に実施し、製造条件及び特性を表1に示した。
【0037】
【実施例6〜7】
実施例1と同じ混合物において、表1示すダイス温度、延伸温度、延伸倍率を変えて製造し、特性を表1に示した。
【0038】
【比較例1及び2】
表1に示す混合物のMIを変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
比較例1では、MIの低い混合物を用いると、フィルム汚れが発生した。比較例2では、MIの高い混合物を用いると、衝撃トータルエネルギーが充分でなく、封入・封緘処理でフィルムに微小欠陥が認められた。
【0039】
【比較例3〜5】
表1に示すダイス温度、延伸温度、延伸倍率で製造した以外は、実施例1と同様に実施した。
比較例3では、延伸温度が高い場合には、衝撃トータルエネルギーが低く、封入・封緘処理でフィルムにキズが認められた。比較例4では、延伸温度が低い場合には、衝撃トータルエネルギーが高くなりすぎ、封筒窓加工時に、窓枠とフィルムの位置ズレが発生し、高速での窓貼り加工ができなかった。比較例5では、延伸倍率が低い場合には、衝撃トータルエネルギーが低く、封入・封緘処理でフィルムにキズが認められた。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂フィルムは、スチレン系樹脂フィルムの特長である透明性、剛性を保ちながら、スチレン系再生樹脂を40wt%〜98wt%含有した二軸延伸フィルムであり、市場要求である環境により優しいフィルムである。
透明性、剛性に優れることから封筒窓用フィルムとして、好適に使用できる。
Claims (3)
- スチレン系樹脂からなる二軸延伸フィルムにおいて、スチレン系再生樹脂を40〜98wt%含有した該フィルムのメルトインデックス(MI)が2.50〜8.50(g/10分)であって、衝撃トータルエネルギーが14.0×10−2(J)〜80.0×10−2(J)であることを特徴とするスチレン系樹脂フィルム。
- 封筒窓用の請求項1のスチレン系樹脂フィルム。
- 押出し機内の樹脂温度が180℃〜230℃であり、ダイス温度がビカット軟化点+10℃〜ビカット軟化点+50℃(延伸開始温度の場合は+40℃)であって、延伸倍率が縦・横方向とも4〜15倍であるスチレン系樹脂フィルムの製造方法。
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