JP2004182831A - 接着性高分子組成物、シート及び複合体 - Google Patents
接着性高分子組成物、シート及び複合体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】シート化が可能で、電子線やγ線を照射せずとも金属への良好な接着性を示す接着性高分子組成物、該接着性組成物からなるシート及び該シートを金属に接着した複合体を提供する。
【解決手段】少なくとも10〜90体積%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と0.1〜75体積%のフィブリル化された繊維とを含むことを特徴とする接着性高分子組成物、前記接着性高分子組成物からなるシート、前記接着性高分子組成物のJIS K6760に定めるビカット軟化点以上の温度に調節された少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すシート化方法、及び、前記シートを仮止めし、該シートのビカット軟化点以上に加熱して得られる複合体。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも10〜90体積%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と0.1〜75体積%のフィブリル化された繊維とを含むことを特徴とする接着性高分子組成物、前記接着性高分子組成物からなるシート、前記接着性高分子組成物のJIS K6760に定めるビカット軟化点以上の温度に調節された少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すシート化方法、及び、前記シートを仮止めし、該シートのビカット軟化点以上に加熱して得られる複合体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性高分子組成物、該接着性高分子組成物を用いてなるシート、シート化方法及び該シートを金属に接着した構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック系PTC素子(正特性サーミスター)など、金属部品同士を特定の性能を有する高分子組成物からなる部品を介して接着する、あるいは金属部品と特定の性能を有する高分子組成物からなる部品を接着することが行われている。
金属部品と、高分子組成物からなる部品を接着させる方法には、粘着成分を用いて接合する方法と、化学的に接着性を呈する化合物によって接着する方法とがあるが、粘着成分による接着よりも化学的に接着する方がより強固に接着できるので好ましい。特に、化学的に接着性を呈する化合物として、分子中に極性基を有するものを用いると、金属との接着が良好となる。また、接着性は剥離試験などによって、接着の程度を知ることができるが、剥離における応力緩和を考慮すると、エラストマーなど弾性的性質を有する接着剤のほうが良好である。
【0003】
本出願人は、先に、オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物に、エチレン−プロピレン系共重合体やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン酸変性物などの接着性官能基を持ったエラストマーを接着成分として配合した組成物からなるシート状体の両面に金属箔を貼り付けた過電流防止素子を発明した(例えば、特許文献1参照。)。
一般に、機能性高分子組成物のシート化はカレンダーなど圧延ロールを用いた成型装置によりシート化するが、金属に対し接着性を示す高分子は金属性のロールと接着してしまってシート化が困難である。しかし、上記発明では、接着成分が、主とするオレフィン系高分子組成物によって希釈されて、接着力が低下するので、カレンダー装置等によってシート化が可能であった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−158101号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物に、エチレン−プロピレン系共重合体やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン酸変性物などの接着性官能基を持ったエラストマーを接着成分として配合した組成物はシートに成形することが可能であるが、接着成分が、主とするオレフィン系高分子組成物によって希釈されているので接着力が低下しており、シートに金属箔を重ねて加熱圧着しただけでは金属箔が仮止めされる程度であり、電子線やγ線などを照射して低下した分の接着力を回復させている。金属箔などの場合は電子線やγ線が透過するので接着力の回復が可能となるが、金属が厚い場合は電子線やγ線が金属を透過せず、接着力の回復が困難となる問題がある。
【0006】
接着性官能基を持ったエラストマーとしては、上記マレイン酸変性物の他に、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(以下、EMAという。)もあり、EMAは、エチレン−プロピレン系共重合体のマレイン変性物やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン変性物と比較すると、格段の接着力を有する。
EMAを接着成分として使用した場合には、EMAが格段の接着力を有するため、オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物にこの接着成分を混合した組成物であっても、カレンダー装置の金属ロールと付着してしまってシート化ができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、EMAを用いて、シート化が可能で、電子線やγ線を照射せずとも金属への良好な接着性を示す接着性高分子組成物、該接着性組成物からなるシート、シート化方法及び該シートを金属に接着した複合体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、金属からなるロールから成型物を剥離させるには、これらの金属との粘着力よりもシートの破断強度の方が勝っていることが必要であるとの観点から検討を進めた。つまり、シートの破断強度が粘着力に勝っていれば、剥離の際に加えられる引張り応力に追従して、剥離が可能になるはずであるとの考え方に基づく。そして、発明者らは、繊維質の成分を配合することにより組成物の物性を向上させることに注目し、種々検討した。
しかし、一般に用いられるカーボン繊維やガラス繊維などを配合すると、向上は認められるが、繊維が太いので、流動性が低下して成形が困難になったり、表面の平滑性が損なわれるなどの悪影響があった。そこで、さらに検討を重ねた結果、一般の繊維より微細な、フィブリル化された繊維を配合すると、上記不具合に影響されることなく圧延ロールへの付着を防止できることを見出し、圧延ロールによるシート加工を可能とする配合を確立するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも10〜90体積%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と0.1〜75体積%のフィブリル化された繊維とを含むことを特徴とする接着性高分子組成物にあり、さらに、前記接着性高分子組成物からなるシートにある。
また、本発明の要旨は、さらに、接着性高分子組成物のビカット軟化温度以上の温度に調節された少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すことにより、該接着性高分子化合物をシート化することを特徴とするシート化方法にあり、金属部品に、請求項4記載のシートを仮止めし、該シートのビカット軟化温度以上に加熱して得られる複合体にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるEMAは、エチレンと、アクリル酸及び/またはメタアクリル酸の共重合体であり、EMA中の(メタ)アクリル酸が0.5〜50質量%であることが好ましく、接着性と加工性のバランスから、3〜15質量%がより好ましい。
EMA中に含まれる(メタ)アクリル酸の比率を上記下限以上にすることにより、本発明の接着性高分子組成物の接着力を良好なものとすることができ、上記上限以下にすることにより、圧延ロールによるシート化時にロールに付着することを防止できる。
エチレン系高分子は耐衝撃性向上の目的で30%を上限とする量のプロピレンやオクテンなどのアルケンを含有する場合があり、本発明で用いるEMAにおいても、エチレンの30%以下がこのようなアルケンで置換されたものであってもよい。
メルトフローレイトは分子量を知るバロメーターとして用いられているが、メルトフローレイトが10cc/10minを超えると本発明の処方をもってしてもシート化が困難になり、0.001cc/10min未満では硬くなりすぎてロール圧延が困難になるので、0.001〜10cc/10minが好ましく、0.1〜5.0cc/10minがより好ましい。
【0011】
本発明においては、接着性高分子組成物はフィブリル化された繊維を含む。
フィブリルとは、繊維を構成している断面径が数nm〜数百nmの微細繊維を意味し、繊維のフィブリルを配列あるいは分散させることをフィブリル化という。なお、ミクロフィブリルとはフィブリルを構成する微細繊維であり電子顕微鏡で観察できるレベルの大きさのものである。フィブリルは、少量の添加で、高分子組成物の機械的物性を向上させることができる。
【0012】
フィブリル化は、▲1▼繊維に圧力、張力、剪断力等の力学的ストレスを与えて分離させる方法、▲2▼繊維を構成する高分子に対して著しく非相溶な化合物を配合して得る方法、▲3▼繊維を構成する高分子を変性させて行う方法等がある。
上記▲1▼の方法によるフィブリル化された繊維は、ナイロン、ポリエステル、木綿などの繊維に、しごきを施すなどして得ることができる。
上記▲2▼の方法は、液晶ポリマーをアロイ化して押出機でストランドにしてから冷却した後にほぐしたり、熱可塑性高分子にシリコーンオイルなどのオリゴマーを混合してから押出機でストランドにしてから冷却した後に上記オリゴマーを洗い流すなどの方法がある。
上記▲3▼の方法は、たとえば、フッ素樹脂などをアクリル変性することによってフィブリルに分離し易くするなどの方法である。そして、本発明におけるフィブリル化された繊維は、上記のいずれであってもよい。
【0013】
フィブリルの太さは、特に限定されるものではないが、500nm以下であることが望ましく、下限としては、例えば、1〜50nmのミクロフィブリルの次元にまで分離されていてもよい。フィブリルの長さは、0.01〜500μm程度である。また、フィブリルの材質についても、特に限定はないが、本発明では、接着の際には150℃以上の温度に加熱することもあるので、溶融温度が150℃以上である高分子が好ましく、このような高分子の例として、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)のアクリル変性物、ナイロンなどを例示でき、PTFEのアクリル変性物からなるフィブリルが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の接着性高分子組成物は、少なくとも10〜90体積%、好ましくは、30〜60質量%のEMAと0.1〜75体積%、好ましくは5〜10体積%のフィブリル化された繊維とを含む。
EMAの含有量を10体積%以上とすることで良好な接着性を発現させることができ、90体積%以下とすることでロール付着がなく、容易にシート化ができる。
前述のとおり、フィブリル化された繊維は、少量の添加で溶融物性を向上させる効果があり、0.1体積%以上添加することで改質効果が得られる。0.1体積%未満では上記改質効果が発揮されず、75体積%を超えると、組成物が硬くなりすぎて、圧延ロールの間隙に入らなくなってしまい、均一なシートを得ることが困難となる。これに対してフィブリル化された繊維を75体積%以下とすることでEMAとの混練を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の接着性高分子組成物は、さらに、質量平均粒径500μm以下の粉末もしくはEMA以外の高分子のいずれか、あるいは双方を含んでいてもよい。
該粉末の質量平均粒径は、これらのフィラーと接着性高分子組成物との混合性やフィラーを配合した接着性高分子組成物の成形性の点から、500μm以下とされる。
EMA以外の高分子としては、EMAの分解温度は300℃以下であるので、300℃以下で溶融する熱可塑性高分子あるいはゴムを挙げることができ、この範囲内であれば、高分子の種類について特に限定はなく、任意に選択することができる。また、単一の高分子である必要がなく、何種類かの高分子からなる混合物であったり、高分子と可塑剤や安定剤などの添加剤との混合物であってもよい。
【0016】
平均粒径500μm以下の粉末としては、下記から選択されるフィラーを用いることができる。
炭酸カルシウム、酸化珪素化合物、粘土鉱物、針状結晶粉末、炭素系微粉末、金属微粒子、酸化物もしくは金属原子によってドープされた金属酸化物の微粒子、導電性ポリマー、金属水酸化物、アンチモン系化合物、亜鉛系化合物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、正燐酸エステル、メラミン誘導体、イソシアヌル酸誘導体、窒化アルミニウム、窒化ホウ素。
【0017】
フィラーとして、炭酸カルシウム;シリカなどの酸化ケイ素化合物;タルク、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、やウォルストナイトなどの針状結晶;を用いると、接着性高分子組成物の強度を向上させる補強効果がある。
これらの補強性フィラーは、剛性を有する無機物の微粒子や繊維状物である。微粒子の平均粒径は100μm以下であることが好ましく、10μmいかがより好ましく、1.0μmいかがさらに好ましい。その下限は特に限定されるものではないが、0.001μm以上が好ましい。
該粉末を構成する粒子の形状についても、任意に選択することができるが、アスペクト比( 長軸径/短軸径 )が2以上であるような、針状あるいは扁平状であることが好ましい。また、補強性フィラーが上記から選ばれる複数種の微粒子からなるのもでもよい。また、本発明において、補強性フィラーの配合量は、特に限定されるものではないが、5〜75体積%範囲が好ましく、10〜50体積%がより好ましい。補強性フィラーを5体積%以上とすることで補強効果を発現でき、75体積%以下とすることで、接着性高分子組成物の接着性を損ねることがない。
【0018】
また、フィラーとして、黒鉛、グラファイト、膨張黒鉛などの炭素系微粉末;金や銀などの金属微粒子;酸化物もしくは金属原子によってドープされた酸化物の微粒子;ポリアニリンやポリアセチレンなどの導電性ポリマー;などの粉末を用いると、接着性高分子組成物に導電性を付与することができる。
これらの導電性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、104 〜10−2Ω・cm程度の導電性付与には0.01〜1μm程度の細かいフィラーが好ましく、1011〜106 Ω・cm程度の導電性付与の場合でコストを重視した場合には10〜100μm程度のものが用いられるので、0.1〜100μmが好ましい。また、導電性フィラーとして上記範囲から選ばれる複数種のフィラーの混合物でもよい。また、界面活性剤などを補助的に使用してもよい。本発明において、導電性フィラーの配合量は、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定されるものではなく任意であり、該粒子の添加量によって1011〜106 Ω・cm程度の帯電防止性能を呈するような配合組成(微粒子の固有抵抗値とその配合量を考慮した配合処方 )にしたり、104 〜10−2Ω・cm程度を呈する配合組成にして、電気回路、電磁波シールド、面状発熱体、PTC素子などの用途に適合する高分子組成物とすることもできる。
【0019】
また、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;三酸化二アンチモンなどのアンチモン系化合物;ZnSn(OH)6 、ZnBO3 などの亜鉛系化合物;赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、正燐酸エステル等の燐化合物;メラミン誘導体;イソシアヌル酸誘導体;等の粉末を用いると、接着性高分子組成物に難燃性を付与することができる。
上記難燃性フィラーのうち、金属水酸化物は脱水性により難燃性を呈する。アンチモン系化合物や亜鉛系化合物、燐化合物、メラミン誘導体やイソシアヌル酸誘導体は分解して窒息性ガスを生じることで難燃性を呈する。難燃性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、フィラーを粉砕法で得ることが多く、細かくなると高コストになるので、0.1〜100μmが望ましい。また、上記難燃性フィラーの範囲内であれば、複数種のフィラーを併用してもよい。また、黒鉛やバーミュキュライトなど燃焼時にチャーの生成を促進させる化合物との併用もでき、たとえば膨張性黒鉛と燐系化合物とを複合して使用することもできるし、あらかじめこれらを配合してある市販品を用いてもよい。そして、本発明において、この難燃性フィラーの配合量については、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定されるものではなく、難燃処方によって任意に選択することができる。
【0020】
また、フィラーとして、アルミナ、シリカ、窒化アルミ、窒化ホウ素を用いると、接着性高分子組成物に熱伝導性を付与することができる。
熱伝導性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、0.1〜100μmが望ましい。そして、本発明において、この熱伝導性フィラーの配合量については、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定はなく任意に選択することができるが、この機能を呈するにはより高充填することが望まれるので、50〜75体積%配合するのが好ましい。
【0021】
本発明の接着性高分子組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、フェノール系、チオエーテル系、フォスファイト系等の酸化防止剤;アンモニウム系、アミン系等の重金属不活性化剤を例示できる。これらの配合量は接着性高分子組成物全体に対して0〜0.3質量%であることが好ましい。
【0022】
そして、本発明の接着性高分子組成物は、加圧ニーダーやバンバリーおよび二本ロールもしくは押出機などの混練装置によって混合がなされる。上記の組成物は、ペレット、粉末など中間資材としての形態に整えられる。そして、本発明の接着剤は、フィラーの添加によって、様々な機能を付加することができるが、特に導電性や熱放散性などの特性を機能させるには、シート状の形態をしているのが望ましい。従って、この場合は、少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すことにより、該接着性高分子化合物をシート化することができる。このような一対以上の圧延ロールを有する装置としては例えば、カレンダー装置を例示でき、製品の安定性や合理性を考慮すると、カレンダー装置によるシート化が望ましい。
【0023】
カレンダー装置は、少なくとも二箇所以上のニップを有する。このニップは、高分子系組成物をシート状に成型するためのニップ、及び、上記シート状の組成物を目的の厚さにするための最終ニップを少なくとも含む。第一のニップから最終ニップまでには、ニップを構成するロールに支持された状態で供給される構造になっている。一般に使用されているのは、三つのニップを有するカレンダーであって、あらかじめ、EMAの軟化以上に加熱した混練物を第一のニッブを構成する一組のロールに投下し、投下された混練物は該ニッブによってシート化され、シート化された混練物は第一のニッブを構成するロ―ルに支持されながら第二のニップに供給されてさらに薄く圧延され、第二のニップを構成するロ―ルに支持されながら第三のニップ( 最終のニップ )に供給されて目的とする厚さのシートに成形される。このカレンダー装置は、4本のロールから構成され、これらのロールは、上記組成物が塑性変形する以上の温度、すなわち、混練物を構成する高分子うち、最も高い軟化点である高分子の軟化点以上の温度に調節されて運転がなされる。なお、本発明においては、ニップの数やニップの配置、および温度やロール回転数なとの条件設定に関しては特に限定はなく、任意である。また、シートの厚さにも限定はなく、用途に合わせて任意の厚さに成型することができる。
【0024】
なお、本発明の接着剤は、上記に述べたようなシート状形態に限定されるものではなく、従来の接着剤と同様に、ペレット、ベール状、ストランド状、シート状といった様々な形態にすることができる。また、押出成形、射出成形、回転成形、プレス成形、ブロー成形など、加熱による塑性変形を利用した成形方法によって成形されて、直接、電子部品、自動車部品、航空機部品、家電部品、医療部品、包装材、玩具、雑貨などの部品および製品として成型することもできる。その際、本発明による接着剤は、溶融物性が向上されているので、押出成形における加工性にすぐれ、成型寸法が安定したり、製品表面が平滑になるなど好適な結果が得られる。また、上記の成型の際に、被着体としての金属部品を供給して、直接接着させることもできる。
【0025】
また、本発明の接着剤をシート状物の中間資材としての形態にした場合、このシート状物を任意の寸法に調整してから、被着体としての金属部品に密着させることで仮止めしてから、少なくとも上記組成物が塑性変形する以上の温度に加熱し、密着ができたら冷却することによって、接着されてなる構造物を得ることができる。なお、加熱から冷却が完了するまでの間は、仮止め時の密着の状態を保持するか、仮止めの後に加圧し、この加圧状態を冷却が完了するまで維持して行うのが望ましい。こうして、本発明の接着剤は被着体である金属部品を接着させることができ、接着力としても不足はない。しかし、この接着剤に耐熱性を付与するために、放射線や電子線が照射により架橋を施すこともできる。なお、この照射によって、金属との接着強度が150〜300 % 程度にまで向上する場合がある。
【0026】
本発明における被着体である金属部品の材質については、金属である限りは特に限定はなく、金、銀、チタン、パラジウム、ニッケルなど高価な金属であったり、鉛、亜鉛、アルミニウム、ステンレスなど鉄系合金、ジュラルミンなどアルミ系合金など安価な金属を選択してもかまわない。鉄や鉄系合金などの酸化しやすい金属には、金、パラジウム、亜鉛、 錫、ニッケルから選択される金属によってメッキ処理して表面保護層を設けることが好ましい。さらに、金属部品を、ソーダ塩類、燐酸塩類、アンモニア塩類、から選択される化合物の水溶液、無機酸、有機酸から選択される化合物またはこれら化合物の水溶液に浸漬して、酸化物と金属の一部を溶解させるなどにより洗浄することもできる。
本発明における被着体である金属部品の形状としては、金属シート、金属箔、三次元加工された金属製品等が挙げられ、金属シートと接着性高分子組成物シートとの複合体は建材などの用途に用いられる。また、金属箔との複合体はPTC素子、食品包装等に用いることができる。また、家電や自動車部品などの用途において、金属部品や金属製品を被着体としたものはその金属部品、金属製品の固定、組み合わせに用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5)
表1に示す1−1〜1−5の5種類の配合物を、160℃に温度調節した加圧式ニーダーにそれぞれ投入し15分混練した。
15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、5種類の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを100×10mmの大きさにカットして、5種類のカットシートを得た。5種類のシートのうち、1−1と1−4の配合の組成物は、ロール剥離が若干し難く、やや引っ張られるような状態で巻き取られたが、シート化は可能であった。他の1−2、1−3、1−5は、簡単に剥離してシート化し易かった。
【0028】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として、上記で得られた5種類のカットシートをそれぞれ挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出した。
【0029】
こうして得られた5種類のサンプルを、25℃温度調節された部屋にて一昼夜保管した後に、下記に述べる接着性の評価試験にて接着の強度(剥離強度)を評価した。評価の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明による実施例1〜5で得られたカットシートは全て金属板との接着を呈する接着剤であることが確認できた。
【0030】
接着性評価( 90°剥離試験 )
金属箔もしくは金属板と導電性組成物を一体化した後に、10×100 mmのサイズで裁断し、箔を30mm剥離してから引張り試験機(東洋精機社製 テンシロン)で剥離に要した応力を測定した。テンシロンには、上から垂直方向にぶら下げられたチャックを装着させ、これで引っ張ることでかかった応力を測定した。
なお、測定の方法は、試験片に両面テープを貼り、50×200mmの金属板にしっかりと水平に固定し、剥がされた箔もしくは板の端部をチャックに挟み、50mm/minの速度で引き上げることで剥離をしていった。剥離の進行にともなって、剥がされてゆく箔もしくは板と水平面の角度が90°になるように手でずらした。
【0031】
【表1】
【0032】
表1中の材料は、下記のとおりである。
・エチレン−メタクリル酸共重合体:三井デュポンポリケミカル社製、ニュクレルNO908C
・高密度ポリエチレン :三井化学社製、ハイゼックス5000
・アクリル変性PTFEフィブリル:三菱レイヨン社製、メタブレンA−3000(太さ100〜300nmのフィブリルからなっていることが電子顕微鏡写真から観察された)
【0033】
(比較例1〜4)
表2に示す4種類の配合物をそれぞれ、160℃に温度調節した加圧式ニーダーに投入し15分混練した。15分後には、混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、4×4×3mmである4種類の組成物のペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)に投入して、40rpmの回転数で運転し、約185℃の無定形の溶融した接着性高分子組成物を押出した。この溶融した該組成物を、カレンダー装置でのシート化を試みた。4種類のうち2−2および2−3は、ロールからの剥離ができなくて、シート化を断念した。また、2−4は配合が硬くなりすぎて、第一のニップに入り込んでゆかず、これについてもシート化を断念した。残りの2−1は、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mで長尺シートを得ることができた。そして、これらを100×10mmの大きさにカットして、カットシートに調整した。
【0034】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として上記配合2−1のカットシートを挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤にて10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出したが、取り出す際の衝撃により半分程度の接着面が剥がれてしまった。
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例6〜8)
表3に示す3−1〜3−3の3種類の配合物をそれぞれ、160℃に温度調節した加圧式ニーダーにそれぞれ投入し15分混練した。15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、3種類の導電性の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した導電性の接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを100×10mmの大きさにカットして、3種類のカットシートを得た。3種類のシートはいずれも簡単に剥離してシート化し易かった。
【0037】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として、上記で得られた3種類のカットシートをそれぞれ挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出した。
【0038】
こうして得られた3種類のサンプルを、25℃温度調節された部屋にて一昼夜保管した後に、下記に述べる接着性の評価試験にて接着の強度(剥離強度)を評価した。評価の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明による実施例6〜8で得られたカットシートは全て金属箔との接着を呈する接着剤であることが確認できた。実施例6で得られたカットシートは耐燃性試験で、自己消火性を示すものであった。実施例7で得られたカットシートは2.7×10−2Ω/cmと、導電性を示すものであった。実施例8で得られたカットシートは、窒化ボロンが60体積%配合されており、熱放散性を有する。よって、本発明の処方に従って、難燃性、導電性、熱放散性を有する金属用の接着剤が得られることがわかった。
【0039】
【表3】
【0040】
表3において、記号は下記のとおりである。
・PP : 出光石油化学社製 750HP
・ポリ燐酸アンモニウム : チッソ社製 テラージュ
・カーボン : コロンビャン・カーボン社製 ラーベン420
・窒化ボロン : 電気化学工業社製 デンカボロンナイトライド
・抗酸化剤 : 旭電化工業社製 AO−60
【0041】
(実施例9)
表4に示す配合物を、160℃に温度調節した加圧式ニーダーに投入し15分混練した。15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、導電性の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。このペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した導電性の接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを5×12mmの大きさにカットして、カットシートを得た。
【0042】
一方、厚さ125μmの圧延して得たニッケル板を、ワイヤカットによって5×25mmの金属部品にカットした。そして、カットシートの表裏に金属部品を重ねるようにして、固定用冶具に100セット分固定して、そのまま、180℃に温度調節したプレス装置に挿入して、9.8MPaに加圧し、5分後に加圧したままプレス装置に冷却水を循環すると、10分後には、50℃になり、これを取り出したところ、PTC素子を得た。そして、PTC素子について、20℃における抵抗値を測定したところ18.1mΩであった。そして、電流発生装置に接続して、10Aの電流を流したところ、瞬時にして絶縁し、PTC特性が確認できた。また、絶縁を呈した素子を観察したところ、金属部品と接着剤が剥離した様子はなかった。よって、本発明の処方に従って、PTC特性を有する金属用の接着剤が得られることがわかった。
【0043】
【表4】
【0044】
接着性高分子組成物中のフィブリル化された繊維が下限未満の比較例2、EMA含有量が上限を超える比較例3はロールに付着してシート化ができず、フィブリル化された繊維が上限を超える比較例4はニップ間に食い込まないためシート化ができず、EMA含有量が下限未満の比較例1はシート化はできたが接着性が不充分であったのに対し、各実施例の接着性高分子組成物はいずれもシート化が可能で、かつ、金属に対する優れた接着性を示すことがわかる。
また、難燃性、導電性あるいは熱放散性の粉末を配合したシートは、金属への接着性を損なうことなく難燃性、導電性あるいは熱放散性を有していることがわかる。
【0045】
【発明の効果】
本発明のこう分子組成物は、従来、その高い接着性のためロール圧延等ではシート化ができなかったエチレン−アクリル酸共重合体を改用いながら、カレンダー装置などロール圧延によるシート化が可能となり、金属との接着性に富んだシート状の接着剤を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性高分子組成物、該接着性高分子組成物を用いてなるシート、シート化方法及び該シートを金属に接着した構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック系PTC素子(正特性サーミスター)など、金属部品同士を特定の性能を有する高分子組成物からなる部品を介して接着する、あるいは金属部品と特定の性能を有する高分子組成物からなる部品を接着することが行われている。
金属部品と、高分子組成物からなる部品を接着させる方法には、粘着成分を用いて接合する方法と、化学的に接着性を呈する化合物によって接着する方法とがあるが、粘着成分による接着よりも化学的に接着する方がより強固に接着できるので好ましい。特に、化学的に接着性を呈する化合物として、分子中に極性基を有するものを用いると、金属との接着が良好となる。また、接着性は剥離試験などによって、接着の程度を知ることができるが、剥離における応力緩和を考慮すると、エラストマーなど弾性的性質を有する接着剤のほうが良好である。
【0003】
本出願人は、先に、オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物に、エチレン−プロピレン系共重合体やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン酸変性物などの接着性官能基を持ったエラストマーを接着成分として配合した組成物からなるシート状体の両面に金属箔を貼り付けた過電流防止素子を発明した(例えば、特許文献1参照。)。
一般に、機能性高分子組成物のシート化はカレンダーなど圧延ロールを用いた成型装置によりシート化するが、金属に対し接着性を示す高分子は金属性のロールと接着してしまってシート化が困難である。しかし、上記発明では、接着成分が、主とするオレフィン系高分子組成物によって希釈されて、接着力が低下するので、カレンダー装置等によってシート化が可能であった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−158101号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物に、エチレン−プロピレン系共重合体やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン酸変性物などの接着性官能基を持ったエラストマーを接着成分として配合した組成物はシートに成形することが可能であるが、接着成分が、主とするオレフィン系高分子組成物によって希釈されているので接着力が低下しており、シートに金属箔を重ねて加熱圧着しただけでは金属箔が仮止めされる程度であり、電子線やγ線などを照射して低下した分の接着力を回復させている。金属箔などの場合は電子線やγ線が透過するので接着力の回復が可能となるが、金属が厚い場合は電子線やγ線が金属を透過せず、接着力の回復が困難となる問題がある。
【0006】
接着性官能基を持ったエラストマーとしては、上記マレイン酸変性物の他に、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(以下、EMAという。)もあり、EMAは、エチレン−プロピレン系共重合体のマレイン変性物やエチレン−スチレン系共重合体のマレイン変性物と比較すると、格段の接着力を有する。
EMAを接着成分として使用した場合には、EMAが格段の接着力を有するため、オレフィン系結晶性重合体と導電性粒子からなる混合物にこの接着成分を混合した組成物であっても、カレンダー装置の金属ロールと付着してしまってシート化ができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、EMAを用いて、シート化が可能で、電子線やγ線を照射せずとも金属への良好な接着性を示す接着性高分子組成物、該接着性組成物からなるシート、シート化方法及び該シートを金属に接着した複合体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、金属からなるロールから成型物を剥離させるには、これらの金属との粘着力よりもシートの破断強度の方が勝っていることが必要であるとの観点から検討を進めた。つまり、シートの破断強度が粘着力に勝っていれば、剥離の際に加えられる引張り応力に追従して、剥離が可能になるはずであるとの考え方に基づく。そして、発明者らは、繊維質の成分を配合することにより組成物の物性を向上させることに注目し、種々検討した。
しかし、一般に用いられるカーボン繊維やガラス繊維などを配合すると、向上は認められるが、繊維が太いので、流動性が低下して成形が困難になったり、表面の平滑性が損なわれるなどの悪影響があった。そこで、さらに検討を重ねた結果、一般の繊維より微細な、フィブリル化された繊維を配合すると、上記不具合に影響されることなく圧延ロールへの付着を防止できることを見出し、圧延ロールによるシート加工を可能とする配合を確立するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも10〜90体積%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と0.1〜75体積%のフィブリル化された繊維とを含むことを特徴とする接着性高分子組成物にあり、さらに、前記接着性高分子組成物からなるシートにある。
また、本発明の要旨は、さらに、接着性高分子組成物のビカット軟化温度以上の温度に調節された少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すことにより、該接着性高分子化合物をシート化することを特徴とするシート化方法にあり、金属部品に、請求項4記載のシートを仮止めし、該シートのビカット軟化温度以上に加熱して得られる複合体にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるEMAは、エチレンと、アクリル酸及び/またはメタアクリル酸の共重合体であり、EMA中の(メタ)アクリル酸が0.5〜50質量%であることが好ましく、接着性と加工性のバランスから、3〜15質量%がより好ましい。
EMA中に含まれる(メタ)アクリル酸の比率を上記下限以上にすることにより、本発明の接着性高分子組成物の接着力を良好なものとすることができ、上記上限以下にすることにより、圧延ロールによるシート化時にロールに付着することを防止できる。
エチレン系高分子は耐衝撃性向上の目的で30%を上限とする量のプロピレンやオクテンなどのアルケンを含有する場合があり、本発明で用いるEMAにおいても、エチレンの30%以下がこのようなアルケンで置換されたものであってもよい。
メルトフローレイトは分子量を知るバロメーターとして用いられているが、メルトフローレイトが10cc/10minを超えると本発明の処方をもってしてもシート化が困難になり、0.001cc/10min未満では硬くなりすぎてロール圧延が困難になるので、0.001〜10cc/10minが好ましく、0.1〜5.0cc/10minがより好ましい。
【0011】
本発明においては、接着性高分子組成物はフィブリル化された繊維を含む。
フィブリルとは、繊維を構成している断面径が数nm〜数百nmの微細繊維を意味し、繊維のフィブリルを配列あるいは分散させることをフィブリル化という。なお、ミクロフィブリルとはフィブリルを構成する微細繊維であり電子顕微鏡で観察できるレベルの大きさのものである。フィブリルは、少量の添加で、高分子組成物の機械的物性を向上させることができる。
【0012】
フィブリル化は、▲1▼繊維に圧力、張力、剪断力等の力学的ストレスを与えて分離させる方法、▲2▼繊維を構成する高分子に対して著しく非相溶な化合物を配合して得る方法、▲3▼繊維を構成する高分子を変性させて行う方法等がある。
上記▲1▼の方法によるフィブリル化された繊維は、ナイロン、ポリエステル、木綿などの繊維に、しごきを施すなどして得ることができる。
上記▲2▼の方法は、液晶ポリマーをアロイ化して押出機でストランドにしてから冷却した後にほぐしたり、熱可塑性高分子にシリコーンオイルなどのオリゴマーを混合してから押出機でストランドにしてから冷却した後に上記オリゴマーを洗い流すなどの方法がある。
上記▲3▼の方法は、たとえば、フッ素樹脂などをアクリル変性することによってフィブリルに分離し易くするなどの方法である。そして、本発明におけるフィブリル化された繊維は、上記のいずれであってもよい。
【0013】
フィブリルの太さは、特に限定されるものではないが、500nm以下であることが望ましく、下限としては、例えば、1〜50nmのミクロフィブリルの次元にまで分離されていてもよい。フィブリルの長さは、0.01〜500μm程度である。また、フィブリルの材質についても、特に限定はないが、本発明では、接着の際には150℃以上の温度に加熱することもあるので、溶融温度が150℃以上である高分子が好ましく、このような高分子の例として、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)のアクリル変性物、ナイロンなどを例示でき、PTFEのアクリル変性物からなるフィブリルが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の接着性高分子組成物は、少なくとも10〜90体積%、好ましくは、30〜60質量%のEMAと0.1〜75体積%、好ましくは5〜10体積%のフィブリル化された繊維とを含む。
EMAの含有量を10体積%以上とすることで良好な接着性を発現させることができ、90体積%以下とすることでロール付着がなく、容易にシート化ができる。
前述のとおり、フィブリル化された繊維は、少量の添加で溶融物性を向上させる効果があり、0.1体積%以上添加することで改質効果が得られる。0.1体積%未満では上記改質効果が発揮されず、75体積%を超えると、組成物が硬くなりすぎて、圧延ロールの間隙に入らなくなってしまい、均一なシートを得ることが困難となる。これに対してフィブリル化された繊維を75体積%以下とすることでEMAとの混練を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の接着性高分子組成物は、さらに、質量平均粒径500μm以下の粉末もしくはEMA以外の高分子のいずれか、あるいは双方を含んでいてもよい。
該粉末の質量平均粒径は、これらのフィラーと接着性高分子組成物との混合性やフィラーを配合した接着性高分子組成物の成形性の点から、500μm以下とされる。
EMA以外の高分子としては、EMAの分解温度は300℃以下であるので、300℃以下で溶融する熱可塑性高分子あるいはゴムを挙げることができ、この範囲内であれば、高分子の種類について特に限定はなく、任意に選択することができる。また、単一の高分子である必要がなく、何種類かの高分子からなる混合物であったり、高分子と可塑剤や安定剤などの添加剤との混合物であってもよい。
【0016】
平均粒径500μm以下の粉末としては、下記から選択されるフィラーを用いることができる。
炭酸カルシウム、酸化珪素化合物、粘土鉱物、針状結晶粉末、炭素系微粉末、金属微粒子、酸化物もしくは金属原子によってドープされた金属酸化物の微粒子、導電性ポリマー、金属水酸化物、アンチモン系化合物、亜鉛系化合物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、正燐酸エステル、メラミン誘導体、イソシアヌル酸誘導体、窒化アルミニウム、窒化ホウ素。
【0017】
フィラーとして、炭酸カルシウム;シリカなどの酸化ケイ素化合物;タルク、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、やウォルストナイトなどの針状結晶;を用いると、接着性高分子組成物の強度を向上させる補強効果がある。
これらの補強性フィラーは、剛性を有する無機物の微粒子や繊維状物である。微粒子の平均粒径は100μm以下であることが好ましく、10μmいかがより好ましく、1.0μmいかがさらに好ましい。その下限は特に限定されるものではないが、0.001μm以上が好ましい。
該粉末を構成する粒子の形状についても、任意に選択することができるが、アスペクト比( 長軸径/短軸径 )が2以上であるような、針状あるいは扁平状であることが好ましい。また、補強性フィラーが上記から選ばれる複数種の微粒子からなるのもでもよい。また、本発明において、補強性フィラーの配合量は、特に限定されるものではないが、5〜75体積%範囲が好ましく、10〜50体積%がより好ましい。補強性フィラーを5体積%以上とすることで補強効果を発現でき、75体積%以下とすることで、接着性高分子組成物の接着性を損ねることがない。
【0018】
また、フィラーとして、黒鉛、グラファイト、膨張黒鉛などの炭素系微粉末;金や銀などの金属微粒子;酸化物もしくは金属原子によってドープされた酸化物の微粒子;ポリアニリンやポリアセチレンなどの導電性ポリマー;などの粉末を用いると、接着性高分子組成物に導電性を付与することができる。
これらの導電性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、104 〜10−2Ω・cm程度の導電性付与には0.01〜1μm程度の細かいフィラーが好ましく、1011〜106 Ω・cm程度の導電性付与の場合でコストを重視した場合には10〜100μm程度のものが用いられるので、0.1〜100μmが好ましい。また、導電性フィラーとして上記範囲から選ばれる複数種のフィラーの混合物でもよい。また、界面活性剤などを補助的に使用してもよい。本発明において、導電性フィラーの配合量は、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定されるものではなく任意であり、該粒子の添加量によって1011〜106 Ω・cm程度の帯電防止性能を呈するような配合組成(微粒子の固有抵抗値とその配合量を考慮した配合処方 )にしたり、104 〜10−2Ω・cm程度を呈する配合組成にして、電気回路、電磁波シールド、面状発熱体、PTC素子などの用途に適合する高分子組成物とすることもできる。
【0019】
また、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;三酸化二アンチモンなどのアンチモン系化合物;ZnSn(OH)6 、ZnBO3 などの亜鉛系化合物;赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、正燐酸エステル等の燐化合物;メラミン誘導体;イソシアヌル酸誘導体;等の粉末を用いると、接着性高分子組成物に難燃性を付与することができる。
上記難燃性フィラーのうち、金属水酸化物は脱水性により難燃性を呈する。アンチモン系化合物や亜鉛系化合物、燐化合物、メラミン誘導体やイソシアヌル酸誘導体は分解して窒息性ガスを生じることで難燃性を呈する。難燃性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、フィラーを粉砕法で得ることが多く、細かくなると高コストになるので、0.1〜100μmが望ましい。また、上記難燃性フィラーの範囲内であれば、複数種のフィラーを併用してもよい。また、黒鉛やバーミュキュライトなど燃焼時にチャーの生成を促進させる化合物との併用もでき、たとえば膨張性黒鉛と燐系化合物とを複合して使用することもできるし、あらかじめこれらを配合してある市販品を用いてもよい。そして、本発明において、この難燃性フィラーの配合量については、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定されるものではなく、難燃処方によって任意に選択することができる。
【0020】
また、フィラーとして、アルミナ、シリカ、窒化アルミ、窒化ホウ素を用いると、接着性高分子組成物に熱伝導性を付与することができる。
熱伝導性フィラーの平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、0.1〜100μmが望ましい。そして、本発明において、この熱伝導性フィラーの配合量については、EMAとフィブリル化された繊維の配合量が先に述べた範囲内にある限り、限定はなく任意に選択することができるが、この機能を呈するにはより高充填することが望まれるので、50〜75体積%配合するのが好ましい。
【0021】
本発明の接着性高分子組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、フェノール系、チオエーテル系、フォスファイト系等の酸化防止剤;アンモニウム系、アミン系等の重金属不活性化剤を例示できる。これらの配合量は接着性高分子組成物全体に対して0〜0.3質量%であることが好ましい。
【0022】
そして、本発明の接着性高分子組成物は、加圧ニーダーやバンバリーおよび二本ロールもしくは押出機などの混練装置によって混合がなされる。上記の組成物は、ペレット、粉末など中間資材としての形態に整えられる。そして、本発明の接着剤は、フィラーの添加によって、様々な機能を付加することができるが、特に導電性や熱放散性などの特性を機能させるには、シート状の形態をしているのが望ましい。従って、この場合は、少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すことにより、該接着性高分子化合物をシート化することができる。このような一対以上の圧延ロールを有する装置としては例えば、カレンダー装置を例示でき、製品の安定性や合理性を考慮すると、カレンダー装置によるシート化が望ましい。
【0023】
カレンダー装置は、少なくとも二箇所以上のニップを有する。このニップは、高分子系組成物をシート状に成型するためのニップ、及び、上記シート状の組成物を目的の厚さにするための最終ニップを少なくとも含む。第一のニップから最終ニップまでには、ニップを構成するロールに支持された状態で供給される構造になっている。一般に使用されているのは、三つのニップを有するカレンダーであって、あらかじめ、EMAの軟化以上に加熱した混練物を第一のニッブを構成する一組のロールに投下し、投下された混練物は該ニッブによってシート化され、シート化された混練物は第一のニッブを構成するロ―ルに支持されながら第二のニップに供給されてさらに薄く圧延され、第二のニップを構成するロ―ルに支持されながら第三のニップ( 最終のニップ )に供給されて目的とする厚さのシートに成形される。このカレンダー装置は、4本のロールから構成され、これらのロールは、上記組成物が塑性変形する以上の温度、すなわち、混練物を構成する高分子うち、最も高い軟化点である高分子の軟化点以上の温度に調節されて運転がなされる。なお、本発明においては、ニップの数やニップの配置、および温度やロール回転数なとの条件設定に関しては特に限定はなく、任意である。また、シートの厚さにも限定はなく、用途に合わせて任意の厚さに成型することができる。
【0024】
なお、本発明の接着剤は、上記に述べたようなシート状形態に限定されるものではなく、従来の接着剤と同様に、ペレット、ベール状、ストランド状、シート状といった様々な形態にすることができる。また、押出成形、射出成形、回転成形、プレス成形、ブロー成形など、加熱による塑性変形を利用した成形方法によって成形されて、直接、電子部品、自動車部品、航空機部品、家電部品、医療部品、包装材、玩具、雑貨などの部品および製品として成型することもできる。その際、本発明による接着剤は、溶融物性が向上されているので、押出成形における加工性にすぐれ、成型寸法が安定したり、製品表面が平滑になるなど好適な結果が得られる。また、上記の成型の際に、被着体としての金属部品を供給して、直接接着させることもできる。
【0025】
また、本発明の接着剤をシート状物の中間資材としての形態にした場合、このシート状物を任意の寸法に調整してから、被着体としての金属部品に密着させることで仮止めしてから、少なくとも上記組成物が塑性変形する以上の温度に加熱し、密着ができたら冷却することによって、接着されてなる構造物を得ることができる。なお、加熱から冷却が完了するまでの間は、仮止め時の密着の状態を保持するか、仮止めの後に加圧し、この加圧状態を冷却が完了するまで維持して行うのが望ましい。こうして、本発明の接着剤は被着体である金属部品を接着させることができ、接着力としても不足はない。しかし、この接着剤に耐熱性を付与するために、放射線や電子線が照射により架橋を施すこともできる。なお、この照射によって、金属との接着強度が150〜300 % 程度にまで向上する場合がある。
【0026】
本発明における被着体である金属部品の材質については、金属である限りは特に限定はなく、金、銀、チタン、パラジウム、ニッケルなど高価な金属であったり、鉛、亜鉛、アルミニウム、ステンレスなど鉄系合金、ジュラルミンなどアルミ系合金など安価な金属を選択してもかまわない。鉄や鉄系合金などの酸化しやすい金属には、金、パラジウム、亜鉛、 錫、ニッケルから選択される金属によってメッキ処理して表面保護層を設けることが好ましい。さらに、金属部品を、ソーダ塩類、燐酸塩類、アンモニア塩類、から選択される化合物の水溶液、無機酸、有機酸から選択される化合物またはこれら化合物の水溶液に浸漬して、酸化物と金属の一部を溶解させるなどにより洗浄することもできる。
本発明における被着体である金属部品の形状としては、金属シート、金属箔、三次元加工された金属製品等が挙げられ、金属シートと接着性高分子組成物シートとの複合体は建材などの用途に用いられる。また、金属箔との複合体はPTC素子、食品包装等に用いることができる。また、家電や自動車部品などの用途において、金属部品や金属製品を被着体としたものはその金属部品、金属製品の固定、組み合わせに用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5)
表1に示す1−1〜1−5の5種類の配合物を、160℃に温度調節した加圧式ニーダーにそれぞれ投入し15分混練した。
15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、5種類の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを100×10mmの大きさにカットして、5種類のカットシートを得た。5種類のシートのうち、1−1と1−4の配合の組成物は、ロール剥離が若干し難く、やや引っ張られるような状態で巻き取られたが、シート化は可能であった。他の1−2、1−3、1−5は、簡単に剥離してシート化し易かった。
【0028】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として、上記で得られた5種類のカットシートをそれぞれ挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出した。
【0029】
こうして得られた5種類のサンプルを、25℃温度調節された部屋にて一昼夜保管した後に、下記に述べる接着性の評価試験にて接着の強度(剥離強度)を評価した。評価の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明による実施例1〜5で得られたカットシートは全て金属板との接着を呈する接着剤であることが確認できた。
【0030】
接着性評価( 90°剥離試験 )
金属箔もしくは金属板と導電性組成物を一体化した後に、10×100 mmのサイズで裁断し、箔を30mm剥離してから引張り試験機(東洋精機社製 テンシロン)で剥離に要した応力を測定した。テンシロンには、上から垂直方向にぶら下げられたチャックを装着させ、これで引っ張ることでかかった応力を測定した。
なお、測定の方法は、試験片に両面テープを貼り、50×200mmの金属板にしっかりと水平に固定し、剥がされた箔もしくは板の端部をチャックに挟み、50mm/minの速度で引き上げることで剥離をしていった。剥離の進行にともなって、剥がされてゆく箔もしくは板と水平面の角度が90°になるように手でずらした。
【0031】
【表1】
【0032】
表1中の材料は、下記のとおりである。
・エチレン−メタクリル酸共重合体:三井デュポンポリケミカル社製、ニュクレルNO908C
・高密度ポリエチレン :三井化学社製、ハイゼックス5000
・アクリル変性PTFEフィブリル:三菱レイヨン社製、メタブレンA−3000(太さ100〜300nmのフィブリルからなっていることが電子顕微鏡写真から観察された)
【0033】
(比較例1〜4)
表2に示す4種類の配合物をそれぞれ、160℃に温度調節した加圧式ニーダーに投入し15分混練した。15分後には、混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、4×4×3mmである4種類の組成物のペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)に投入して、40rpmの回転数で運転し、約185℃の無定形の溶融した接着性高分子組成物を押出した。この溶融した該組成物を、カレンダー装置でのシート化を試みた。4種類のうち2−2および2−3は、ロールからの剥離ができなくて、シート化を断念した。また、2−4は配合が硬くなりすぎて、第一のニップに入り込んでゆかず、これについてもシート化を断念した。残りの2−1は、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mで長尺シートを得ることができた。そして、これらを100×10mmの大きさにカットして、カットシートに調整した。
【0034】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として上記配合2−1のカットシートを挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤にて10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出したが、取り出す際の衝撃により半分程度の接着面が剥がれてしまった。
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例6〜8)
表3に示す3−1〜3−3の3種類の配合物をそれぞれ、160℃に温度調節した加圧式ニーダーにそれぞれ投入し15分混練した。15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、3種類の導電性の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。これらのペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した導電性の接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを100×10mmの大きさにカットして、3種類のカットシートを得た。3種類のシートはいずれも簡単に剥離してシート化し易かった。
【0037】
厚さが0.1mmで100×10mmのステンレス製金属板二枚の間に、接着剤として、上記で得られた3種類のカットシートをそれぞれ挟んで固定用冶具によって固定した。そして、180℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら3分間加熱した。加熱後、これを取り出し、直ちに、固定用冶具ごと25℃に温度調節されたプレス盤で、固定用冶具ごと10Paに加圧しながら冷却した。固定用冶具の表面が50℃以下に冷却されたことを確認してから、固定用治具をプレス盤から取り出し、固定用冶具から複合化されたサンプル(接着剤で接合された二枚の金属板)を取り出した。
【0038】
こうして得られた3種類のサンプルを、25℃温度調節された部屋にて一昼夜保管した後に、下記に述べる接着性の評価試験にて接着の強度(剥離強度)を評価した。評価の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明による実施例6〜8で得られたカットシートは全て金属箔との接着を呈する接着剤であることが確認できた。実施例6で得られたカットシートは耐燃性試験で、自己消火性を示すものであった。実施例7で得られたカットシートは2.7×10−2Ω/cmと、導電性を示すものであった。実施例8で得られたカットシートは、窒化ボロンが60体積%配合されており、熱放散性を有する。よって、本発明の処方に従って、難燃性、導電性、熱放散性を有する金属用の接着剤が得られることがわかった。
【0039】
【表3】
【0040】
表3において、記号は下記のとおりである。
・PP : 出光石油化学社製 750HP
・ポリ燐酸アンモニウム : チッソ社製 テラージュ
・カーボン : コロンビャン・カーボン社製 ラーベン420
・窒化ボロン : 電気化学工業社製 デンカボロンナイトライド
・抗酸化剤 : 旭電化工業社製 AO−60
【0041】
(実施例9)
表4に示す配合物を、160℃に温度調節した加圧式ニーダーに投入し15分混練した。15分後には混練物の温度が220℃になったので混練物を取り出した。そして、直ちに混練物を100℃に温度調節した二本ロール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした後、冷却してから、賽の目状にカットして、導電性の接着性高分子組成物の4×4×3mmのペレットを得た。このペレットを、180℃に温度調節した押出機(L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは40mm)にそれぞれ投入して、40rpmの回転数で運転して、約185℃の無定形の溶融した導電性の接着性高分子組成物を押出した。この押出機から押し出した溶融した組成物を、カレンダー装置に供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ150mの長尺シートを得た。次いで、これを5×12mmの大きさにカットして、カットシートを得た。
【0042】
一方、厚さ125μmの圧延して得たニッケル板を、ワイヤカットによって5×25mmの金属部品にカットした。そして、カットシートの表裏に金属部品を重ねるようにして、固定用冶具に100セット分固定して、そのまま、180℃に温度調節したプレス装置に挿入して、9.8MPaに加圧し、5分後に加圧したままプレス装置に冷却水を循環すると、10分後には、50℃になり、これを取り出したところ、PTC素子を得た。そして、PTC素子について、20℃における抵抗値を測定したところ18.1mΩであった。そして、電流発生装置に接続して、10Aの電流を流したところ、瞬時にして絶縁し、PTC特性が確認できた。また、絶縁を呈した素子を観察したところ、金属部品と接着剤が剥離した様子はなかった。よって、本発明の処方に従って、PTC特性を有する金属用の接着剤が得られることがわかった。
【0043】
【表4】
【0044】
接着性高分子組成物中のフィブリル化された繊維が下限未満の比較例2、EMA含有量が上限を超える比較例3はロールに付着してシート化ができず、フィブリル化された繊維が上限を超える比較例4はニップ間に食い込まないためシート化ができず、EMA含有量が下限未満の比較例1はシート化はできたが接着性が不充分であったのに対し、各実施例の接着性高分子組成物はいずれもシート化が可能で、かつ、金属に対する優れた接着性を示すことがわかる。
また、難燃性、導電性あるいは熱放散性の粉末を配合したシートは、金属への接着性を損なうことなく難燃性、導電性あるいは熱放散性を有していることがわかる。
【0045】
【発明の効果】
本発明のこう分子組成物は、従来、その高い接着性のためロール圧延等ではシート化ができなかったエチレン−アクリル酸共重合体を改用いながら、カレンダー装置などロール圧延によるシート化が可能となり、金属との接着性に富んだシート状の接着剤を提供することができる。
Claims (6)
- 少なくとも10〜90体積%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と0.1〜75体積%のフィブリル化された繊維とを含むことを特徴とする接着性高分子組成物。
- さらに、平均粒径500μm以下の粉末もしくはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体以外の高分子のいずれか、または双方を含むことを特徴とする接着性高分子組成物。
- 前記粉末が下記から選択されるフィラーであることを特徴とする請求項1記載の接着性高分子組成物。
炭酸カルシウム、酸化珪素化合物、粘土鉱物、針状結晶粉末、炭素系微粉末、金属微粒子、酸化物もしくは金属原子によってドープされた金属酸化物の微粒子、導電性ポリマー、金属水酸化物、アンチモン系化合物、亜鉛系化合物、燐化合物、メラミン誘導体、イソシアヌル酸誘導体、窒化アルミニウム、窒化ホウ素 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性高分子組成物からなるシート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性高分子組成物を、そのJIS K6760に定めるビカット軟化点以上の温度に調節された少なくとも一対以上の圧延ロールの間隙を通すことにより、該接着性高分子化合物をシート化することを特徴とするシート化方法。
- 金属部品に、請求項4記載のシートを仮止めし、該シートのJIS K6760に定めるビカット軟化点以上に加熱して得られる複合体。
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