JP2004182764A - インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法 - Google Patents

インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】記録体としてセラミックス、ガラス、陶磁器及び金属など非紙系記録体への記録をおこなうための、吐出安定性、定着性及び発色性に優れたこインクジェット用記録液及びそれを用いた画像記録方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも非水系溶剤中に、樹脂酸金属塩及び精油を含んでなることを特徴とするインクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用記録液及び画像記録方法に関し、きらに詳細には、特に、記録体(記録媒体)としてセラミックス、ガラス、陶磁器及び金属など非紙系記録体への画像記録を行なうことが可能なインクジェット用記録液、及びそれを使用した画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター等の情報機器の出力装置として、最近、高精細かつカラー化が容易な方式として、記録液の液滴をヘッドから吐出させて記録体上に記録を行う画像記録方法であるインクジェット方式が注目されている。また近年、記録体としてセラミックス、ガラス、陶磁器及び金属など非紙系記録体への記録をおこなうことが要望されていて、すでに次のようないくつかのの方法が提案されている。
【0003】
水又は油と、焼成すると発色し定着する性質の金属顔料と、この金属顔料の沈殿防止用分散剤の3要素を混合してなるIJプリンタ用インクが特開平8−127747公報に、炭化物、窒化物、硼化物、珪化物から選ばれるナノメーター級無機顔料含んだIJ印刷用インクが特開平11−228860公報に、水性液体中に、顔料を分散してなるIJ用インクにおいて金属酸化物微粒子前駆体あるいは金属酸化物微粒子を含むインクジェット用インクが特開2000−7965公報に、有機金属キレート化合物を8〜22wt.%含みインキジェット記録法で耐熱性材に印刷後、焼成し有機金属キレート化合物の色と異なる色とすることを特徴とする印刷インキが特許公法第2668879号に、及び溶剤に可溶な金属塩の溶液で構成されるジェット可能なインクにおいて、溶液が酸化又は昇温により金属塩の状態が変化する前に目視可能な色素をさらに含んでいるインクが特開平5−202326公報に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−127747公報
【特許文献2】
特開平11−228860公報
【特許文献3】
特開2000−7965公報
【特許文献4】
特許公法第2668879号
【特許文献5】
特開平5−202326公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の開示されている記録液では次のような問題があった。特開平8−127747公報、特開平11−228860公報及び特開2000−7965公報に開示されている記録液では、いずれも記録液中に金属顔料、無機顔料あるいは金属酸化物の微粒子が分散し、これらは記録液中に固体粒子として懸濁して存在しているため、記録液の噴射中にノズル目詰まりを生じやすい、あるいは記録液保管中や印字休止中に粒子が沈降、凝集し、画像濃度が低下するという欠点があった。次ぎに、特許公法第2668879号に開示されている記録液では、必要な画像濃度を得るための有機金属キレート化合物の含有濃度が8〜22wt.%と高く必要なため、溶解度限を越えやすく、溶剤からの当該化合物の析出とこれによるノズル目詰まりを生じやすい欠点があった。
【0006】
さらに、加熱焼成後に粉末化あるいは疎な膜になり易く、連続した均一な画像(膜)が得難く、このため鮮明さに欠ける低彩度な発色画像しか得られないという欠点があった。
【0007】
また、特開平5−202326公報に開示されている記録液では、無機金属塩使用の場合、加熱焼成後の膜(画像)の均一性、平滑性が得にくく、このため十分な定着性が得られず、また発色性も低いという欠点があった。また実施例には一切記載されていないが、無機金属塩の代わりに有機金属塩を使用した場合にも、無機金属塩と同様の欠点や高い粘度による吐出不良を生じ易い欠点があった。
【0008】
さらに、上記特開平11−228860公報と特開2000−7965公報の記録液の全部、及び特開平8−127747公報、特開平5−202326公報に及び特許公法第2668879号の記録液の一部は、主溶媒が水である水性記録液であり、水中浸漬の際画像が溶ける、あるいは滲むため、転写紙使用による画像記録(印字)ができないという欠点があった。
【0009】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、記録体としてセラミックス、ガラス、陶磁器及び金属など非紙系記録体への記録をおこなうための、吐出安定性、定着性及び発色性に優れたこインクジェット用記録液を提供することにある。さらに本発明の他の目的は、該記録液を用いた画像記録方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1) 少なくとも非水系溶剤中に、樹脂酸金属塩及び精油を含んでなることを特徴とするインクジェット用記録液。
(2) 前記樹脂酸金属塩が、卑金属樹脂酸塩から選択されることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット用記録液。
(3) 前記樹脂酸金属塩が、卑金属樹脂酸塩及び貴金属樹脂酸塩から選択されることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット用記録液。
(4) 前記卑金属樹脂酸塩の構成金属が、ビスマス、ケイ素、ニッケル、チタン、バナジウム、銅及びアルミニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載のインクジェット用記録液。
(5) 前記貴金属樹脂酸塩の構成金属が、銀、白金、ルテニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記(3)に記載のインクジェット用記録液。
(6) 記録液中の前記樹脂酸金属塩の合計含有率が、0.5以上8重量%未満であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
(7) 前記精油が、テレピン油、パイン油、及びカンファーの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
(8) 前記精油が、天然樹脂を溶解したバルサムとして含むことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
(9) さらに、天然樹脂を含んでなることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
(10) 前記天然樹脂が、ロジン、ダマール及びマスチックの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記(9)に記載のインクジェット用記録液。
(11) 記録液中の前記天然樹脂の合計含有率が、0.5〜20重量%であることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載のインクジェット用記録液。
(12) さらに、貴金属バルサム系化合物を含むことを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
(13) 前記貴金属バルサム系化合物が、金バルサム、白金バルサム、パナジウムバルサム、ルテニウムバルサム及びロジウムバルサムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記(12)に記載のインクジェット用記録液。
(14) せん断粘度が10mPa・s以下であり、かつ降伏値が200mPa以下であることを特徴とする(1)〜(13)に記載のインクジェット用記録液。
(15) 記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて記録体上に記録を行う画像記録方法において、該記録液として、前記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の記録液を用いることを特徴とする画像記録方法。
(16) 前記記録体が、ガラス、陶磁器、セラミックス及び金属の少なくともいずれか1種であり、かつ上記記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、該記録体上に画像を記録した後、該記録体を400℃以上1000℃以下の温度で加熱処理することを特徴とする前記(15)に記載の画像記録方法。
(17) 前記記録体が、水溶性材料を表面に塗布した転写紙であることを特徴とする前記(15)に記載の画像記録方法。
(18) 前記記録体が、水溶性材料を表面に塗布した転写紙であり、前記記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、該転写紙上に画像を記録した後、前記転写紙全面をカバーコートし、次いで水中に浸漬させて前記転写紙上の画像を転写紙より分離し、ガラス、陶磁器、セラミックス及び金属の少なくともいずれか1種からなる記録体に画像を移動転写し、該記録体を400℃以上1000℃以下の温度で加熱処理することを特徴とする前記(15)に記載の画像記録方法。
(19) 加熱処理が、空気雰囲気中でなされ、かつ昇温速度が2〜20℃/分であることを特徴とする前記(16)及び(18)に記載の画像記録方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、その実施の形態によって詳細に説明する。
本発明のインクジェット用記録液は、少なくとも非水系溶剤中に、樹脂酸金属塩及び精油を含んでなる。また、本発明のインクジェット用記録液は、天然樹脂や、貴金属バルサム系化合物などの添加剤を含んでもよい。
【0012】
本発明のインクジェット用記録液は、その溶剤としての非水系溶剤に精油を含ませることで、良好な発色性を示す発色原因である材料として樹脂酸金属塩を均一溶解させると共に、液滴の安定飛翔可能な粘度に容易に調整し、吐出安定性、定着性及び発色性に優れた記録液となる。また、精油は、天然樹脂を含ませる場合、その溶剤として機能するため、天然樹脂を均一に溶解させる働きも担い、より好適に樹脂酸金属塩の均一溶解性や、記録体への飛翔液滴の定着性を向上させることが可能となる。
【0013】
樹脂酸金属塩は、天然樹脂中に遊離又はエステルとして存在する有機酸の金属塩であり、加熱により発色を得るための原因材料としての役割を担うものである。この樹脂酸金属塩を構成する樹脂酸(有機酸)としては、脂環族および芳香族の両者のものが挙げられる。より具体的には、脂環族として、ジテルペン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸、アガテンジカルボン酸、また芳香族として、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などがが挙げられ、これらの中でも、脂環族樹脂酸が、吐出性、発色性をより安定制御し易いため、好適に用いられる。
【0014】
樹脂酸金属塩としては、卑金属樹脂酸塩、貴金属樹脂酸塩が挙げられ、卑金属樹脂酸塩単独あるいは複数の組み合わせ、又は卑金属樹脂酸塩と貴金属樹脂酸塩の組み合わせが好適に用いることができる。卑金属樹脂酸塩としては、ビスマス、ケイ素、ニッケル、チタン、バナジウム、銅及びアルミニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種が構成金属の樹脂酸塩を用いることができる。また、貴金属樹脂酸塩は、銀、白金、ルテニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種が構成金属の樹脂酸塩をを用いることができる。
【0015】
これら樹脂酸金属塩の具体化合物の例としては、樹脂酸ビスマス、樹脂酸アルミニウム、樹脂酸銀などであるが、樹脂酸ビスマスの使用は、従来の安全性に懸念がある樹脂酸鉛に代わる黄色(イエロー)用発色材料として好ましく、かつイエロー、シアン及びマゼンタのいわゆる減法混色における色の3原色と、その類似系統色である青色及び赤色のいずれの色へも発色寄与可能な点で、その使用は好ましい。また、樹脂酸銀の使用は、色の3原色の内のシアン及びマゼンタ、かつ類似系統色である青色及び赤色へ有効に発色寄与可能な点で好ましい。
【0016】
樹脂酸金属塩の記録液中の合計含有率は、0.5重量%以上8重量%未満であることが好ましい。0.5重量%未満になると発色濃度(光学濃度)が低下し、8重量%以上になると液滴の飛翔安定性が低下しやすくなる。また、より光学濃度上昇と飛翔安定性向上を得る点で、樹脂酸金属塩の記録液中の合計含有率は、1重量%以上6重量%以下であることがより好ましい。
【0017】
精油は、植物から採取される芳香性をもつ油で、記録液中の非水系溶剤の一部としても機能する。また、精油は、天然樹脂を添加する場合、その溶剤としても機能する。精油は、液状を呈すため記録液成分として使用が容易で、また水に不溶であるため、後述する水中浸漬過程を使う転写紙使用による画像記録(印字)に対し、画像を溶かすあるいは滲ます作用がなく有用である。
【0018】
精油の例としては、テレピン油、パイン油、カンファー、シトロネラ油、アニス油、オレンジ油、クローブ油、ゼラニウム油等公知のものを用いることができるが、特に、テレピン油、パイン油、カンファーの使用は、色の3原色に対応する複数の樹脂酸金属塩への汎用的な溶解性や天然樹脂の均一溶解性が優れる点で好ましい。
【0019】
精油は、天然樹脂を溶解したバルサムとして記録液中に含まれること、即ち天然樹脂を添加することが好適である。精油が天然樹脂樹を溶解したバルサムとして記録液中に存在することは、樹脂酸金属塩の均一溶解性と、それによる飛翔安定性向上の観点からより好ましい。
【0020】
精油の記録液中の合計含有率は、1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。1重量%未満になると記録液の粘度上昇による液滴の飛翔安定性低下を起こしやすく、20重量%を超えると発色濃度(光学濃度)が低下しやすくなる。また、より光学濃度上昇と飛翔安定性向上を得る点で、精油の記録液中の合計含有率は、1重量%以下6重量%以下であることがより好ましい。
【0021】
天然樹脂は、樹脂酸金属塩の均一溶解性や、記録体への飛翔液滴の定着性能向上を図る観点から、記録液中に含有することがよい。天然樹脂は、インクジェットにおける微少量(ピコリットルオーダー)の飛翔液滴において、後述する直接印字でのガラス、陶磁器、セラミックスなどへの定着、及び間接印字での転写紙への定着のいずれの場合に対しても定着性能向上の効果がある。また、天然樹脂を含むことで、画像の光沢性が増加する。
【0022】
天然樹脂としては、ロジン、ダマール、マスチック(乳香)、ヴェネツィアテレピン等が挙げられ、特に、ロジン、ダマール及びマスチックは、記録液中での均一溶解性がよいため、インクジェット用として好適である。
【0023】
天然樹脂の記録液中の合計含有率は、0.5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.5重量%未満であると画像の定着性、光沢性が低下しやすくなり、20重量%を超える粘度上昇から飛翔安定性が低下し易くなる。
【0024】
貴金属バルサム系化合物は、発色性向上及び色の三要素の一つである色相の調整能向上を図る観点から、記録液中に含有することがよい。貴金属バルサム系化合物として、金バルサム、白金バルサム、パナジウムバルサム、ルテニウムバルサム及びロジウムバルサムの中から選ばれる少なくともいずれか1種を用いることができる。
【0025】
貴金属バルサム系化合物の記録液中の合計含有率は、0.05重量%以上5重量%以下であることが好ましい。0.05重量%未満であると発色性への効果が低下し、5重量%を超えると色相の細かい制御が難しくなる。
【0026】
非水系溶剤としては、例えば炭素数1〜6のアルコール類、ケトン類、エステル類あるいはセロソルブ類等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコール類としては、メタノール、エタノール、iso−プロピルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、iso−アミルアルコール、sec−アミルアルコール又はtert−アミルアルコールなどのアルコール類が例示される。
また、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン等が、エステル類としては酢酸エチル、酢酸ブチル等が例示される。さらに、セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ又はブチルセロソルブ等が挙げられる。
この中でも、好ましくはメタノール、エタノールが用いられ、特に好ましくはメタノールである。
これら非水系溶剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0027】
非水系溶剤の記録液中の合計含有率は、60重量%以上95重量%以下であることが好ましい。60重量%未満であると粘度が増加し、初期吐出不良が発性し易やすくなり、95重量%を超えると画像の発色濃度(光学濃度)が低下する。また、安定した飛翔性の継続維持と高画像発色濃度の一層の両立の観点から、非水系溶剤の記録液中の合計含有率は、70重量%以上90重量%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明のインクジェット用記録液には、その他必要に応じて、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどの保湿剤を含んでいてもよい。
【0029】
本発明のインクジェット用記録液の有する特性として、粘弾性特性におけるせん断粘度が10mPa・s以下であり、かつ降伏値が200mPa以下であることが望ましい。せん断粘度が、10mPa・sを超えると液滴の飛翔速度や吐出継続安定性といった飛翔性能が低下しやすくなる。また、合わせて、ずり速度(X軸)―ずり応力(Y軸)特性におけるY軸切片である降伏値が200mPaを超えると印字開始時の初期吐出が不安定になり易く、場合によっては初期から吐出困難になることがある。
【0030】
ここで、せん断粘度および降伏値は、円錐コーンを回転測定子とするB型粘度形により、ずり速度(X軸)―ずり応力(Y軸)特性を求めることにより測定することができる。すなわちずり速度(X軸)―ずり応力(Y軸)特性(直線)における傾きがせん断粘度であり、また、Y軸切片が降伏値である。
【0031】
本発明のインクジェット用記録液は、記録ヘッドから記録液を吐出させ記録体上に記録する画像記録方法に好適に適用させることができる。この本発明の画像記録方法(インクジェット記録方法)に、適用させる記録体として、ガラス、陶磁器、セラミック、及び金属などの非紙系(すなわち非浸透)系材料を用いる直接記録方法にも適用させることができるし、適用させる記録体として、水性材料を表面に塗布した転写紙を用いる間接記録方法にも適用させることができる。
【0032】
この直接記録方法では、ガラス、陶磁器、セラミックス及び金属などの非紙系(すなわち非浸透)系材料を記録体(印字媒体)として用い、記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、上記非紙系(すなわち非浸透)系材料上に直接画像を形成(記録)した後、記録体を電気炉、マッフル炉等の加熱炉中にセットし、400℃以上1000℃以下の温度で加熱、焼成処理することにより、樹脂酸金属塩や、貴金属バルサム系化合物中の有機金属化合物が熱分解し、最終分解生成物としての金属酸化物が生じ、記録された画像が定着し色を呈する。これら生成した金属酸化物は、金属あるいはその組み合わせにより独自の呈色性(発色性)を示し、画像発色の原因となり、また、加熱、焼成後の最終分解生成物の膜厚が、自然光(白色光)の分光波長(約300nm〜800nm)と同程度に、薄い場合には、光の干渉による発色が画像発色の原因に加わり、様々な発色画像が形成される。
【0033】
一方、間接記録方法では、まず、水溶性材料を表面に塗布した転写紙を記録体(印字媒体)として用い、記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、上記転写紙上(水溶性材料塗布面上)に画像を形成(記録)した後、この転写紙を水中に浸漬させる。水溶性材料塗布面に画像が形成された転写紙を水中に浸漬させると、水溶性材料が水に溶解し、画像と転写紙(基材)とが分離し、この分離した画像を上記非紙系(すなわち非浸透)系材料に転写し(具体的には、水に浮かぶ分離画像を掬い上げるようにして転写する)し、上記直接記録方法と同様に、加熱処理を施し、画像が定着し色を呈する。
ここで、転写紙は、陶磁器絵付け用の転写紙等公知のものを用いることが出来る他、デキストリン、デンプンあるいはポリビニルアルコール等の水溶性材料を紙(好適には厚紙が望ましい)に塗布、乾燥し自前で作製してもよい。
【0034】
また、間接記録方法では、転写紙から画像を分離する際、複数の画像が独立して記録されているとばらばらになってしまったり、上記非紙系(すなわち非浸透)系材料の所望の位置に転写できなくなることから、転写紙を画像を記録した後、記録面に非水溶性のカバーコート剤を被覆することが好適に行なわれる。このカバーコート剤を転写紙の記録面に被覆した後、水中に浸漬させると、被覆されたシート状のカバーシート剤に画像が貼りついたまま転写紙と分離され、独立して形成された複数の画像がばらばらになることが無くなり、また、この被覆されたシート状のカバーコート剤の端部を取っ手部として利用することで、上記非紙系(すなわち非浸透)系材料における所望の位置に画像を転写することが可能となる。
ここで、カバーコート剤としては、アクリル系樹脂カバーコート剤(例、ノリタケ社製、商品名:DT NCコート CT−10)などを用いることができ、具体的には、陶磁器絵付け用の公知のものが入手可能である。
【0035】
また、上記非紙系(すなわち非浸透)系材料へ転写した画像への加熱処理(加熱、焼成処理)の条件は、空気雰囲気中でなされ、かつ昇温速度が2〜20℃/分であることが発色性、定着性に優れた画像を得る上で好ましい。空気雰囲気は、加熱最終生成物としての金属酸化物を効率よく、かつ膜質良く生成するために不可欠である。また、昇温速度が2℃/分未満であると、単位時間あたりの金属酸化物生成ためのの熱的エネルギー供給が不足し、結果しとて、彩度や光学濃度の高い画像が得られにくくなる。また中昇温速度が20℃/分を超えると、画像にクラック(亀裂、ひび割れ)が入り易くなり、また画像の記録体との定着性が不十分なものとなることがある。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0037】
(実施例1)
樹脂酸金属塩として、樹脂酸(アビエチン酸)銀1重量%、樹脂酸金1重量%、樹脂酸ビスマス1重量%、精油として、パイン油4重量%及びテレピン油0.5重量%、天然樹脂として、ロジン(松ヤニ)6重量%、非水系溶剤として、ジクロロメタン4重量%、さらにソルベントナフサ0.5重量%、イソプロピルアルコール82重量%を含んで成る記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度3.7mPa・s、及び降伏値が130mPaであった。
【0038】
このようにして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉(電気炉)中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、セラミックス板上に安定定着した青色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0039】
(実施例2)
樹脂酸金属塩として、樹脂酸(アビエチン酸)銀1.5重量%、樹脂酸金1重量%、樹脂酸ビスマス1.5重量%、貴金属バルサム系化合物として、金バルサム1重量%、精油として、パイン油4重量%、カンファー(クスノキの精油)0.5重量%、天然樹脂として、ロジン(松ヤニ)2重量%、非水系溶剤として、ジクロロメタン2重量%、さらにソルベントナフサ2重量%、メシチレン0.5重量%、イソプロピルアルコール84重量%を含んで成る記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度3.6mPa・s、及び降伏値が130mPaであった。
【0040】
このようにして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉中に、印字されたガラス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からガラス板をとりだしたところ、ガラス板上に安定定着した赤色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0041】
(実施例3)
樹脂酸金属塩として、樹脂酸ビスマス1.0重量%、樹脂酸鉄0.5重量%、樹脂酸コバルト0.5重量%、樹脂酸クロム0.5重量%、精油として、パイン油1重量%、天然樹脂として、ロジン(松ヤニ)1重量%、ダマール1重量%、非水系溶剤として、ジクロロメタン2.5重量%、デカリン2重量%、さらにソルベントナフサ2重量%、メシチレン1重量%、イソプロピルアルコール87重量%を含んで成る記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度3.6mPa・s、及び降伏値が130mPaであった。
【0042】
このようにして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、セラミックス板上に安定定着した黄色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0043】
(実施例4)
実施例1と同様にして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)として水溶性材料(デキストリン)を表面に塗布した転写紙(伊勢久社製転写紙)上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。次いで印字面側の転写紙表面全面をカバーコート剤(ノリタケ社製、商品名DT NCコート CT−10)によりカバーコート(表面被覆)し、45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した。続いて、室温において、蒸留水を満たした容器の中に画像が形成されかつカバーコートされた転写紙を15分間浸漬し、転写紙上のカバーコートされた画像部分を転写紙より分離させた。
【0044】
次いでこの画像部分をアルミナ製セラミックス板上にすくい上げた。続いて45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した後、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉(電気炉)中に、該セラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、セラミックス板上に安定定着した青色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0045】
(実施例5)
実施例2と同様にして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)として水溶性材料(デキストリン)を表面に塗布した転写紙(伊勢久社製転写紙)上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。次いで印字面側の転写紙表面全面をカバーコート剤(ノリタケ社製、商品名DT NCコート CT−10)によりカバーコート(表面被覆)し、45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した。続いて、室温において、蒸留水を満たした容器の中に画像が形成されかつカバーコートされた転写紙を15分間浸漬し、転写紙上のカバーコートされた画像部分を転写紙より分離させた。
【0046】
次いでこの画像部分をガラス基板上にすくい上げた。続いて、45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した後、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉(電気炉)中に、該セラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からガラス板をとりだしたところ、ガラス板上に安定定着した赤色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0047】
(実施例6)
実施例3と同様にして作製した記録液を、市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)として水溶性材料を表面に塗布した転写紙上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。次いで印字面側の転写紙表面全面をカバーコート剤によりカバーコート(表面被覆)し、45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した。続いて、室温において、蒸留水を満たした容器の中に画像が形成されかつカバーコートされた転写紙を15分間浸漬し、転写紙上のカバーコートされた画像部分を転写紙より分離させた。
【0048】
次いでこの画像部分をセラミックス板基板上にすくい上げた。続いて、45℃の空気雰囲気中で1時間加熱乾燥した後、加熱ならびに冷却過程のプログラムによる自動制御可能なマッフル炉(電気炉)中に、該セラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からガラス板をとりだしたところ、セラミック板上に安定定着した黄色に発色した文字及び写真画像を得た。
【0049】
(実施例7)
記録液中イソプロピルアルコールの含有率を41重量%とした以外は、他の成分の含有割合(成分比)は実施例1同様にした記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度12.0mPa・s、及び降伏値が160mPaであった。
【0050】
このようにして作製した記録液を、実施例1と同じ市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字しょうとしたところ、吐出が若干安定せず、極一部では有るが印字ドット抜けがみられる印字サンプルを得た。続いて実施例1と同様にして、マッフル炉中で焼成を実施した。得られたサンプルは、上記焼成前印字状態に対応した一部に印字ドット抜けのみられる青色画像であったが、十分に安定定着した青色を呈した文字及び写真画像であった。
【0051】
(実施例8)
記録液中イソプロピルアルコールの含有率を28重量%とした以外は、他の成分の含有割合(成分比)は実施例2と同様にした記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度17.0mPa・s、及び降伏値が165mPaであった。
【0052】
このようにして作製した記録液を、実施例2と同じ市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字しょうとしたところ、吐出が若干安定せず、極一部では有るが印字ドット抜けのみられる印字ドット抜けがみられる印字サンプルを得た。続いて、実施例2と同様にして、マッフル炉中で焼成を実施した。得られたサンプルは、上記焼成前印字状態に対応した一部に印字ドット抜けのみられる赤色画像であったが、十分に安定定着した赤色を呈した文字及び写真画像であった。
【0053】
(比較例9)
天然樹脂として、ロジン(松ヤニ)及びダマールを添加しない以外は、実施例3と同じ成分割合(成分比)にして記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度3.3mPa・s、及び降伏値が130mPaであった。
【0054】
このようにして作製した記録液を、実施例3と同様に市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字した。その結果、安定した吐出で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、続いて実施例3と同様にして、マッフル炉中で焼成を実施した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、安定定着した黄色を呈した文字及び写真画像が得られたが、セラミックス板上での画像の定着性が若干不十分で、極一部にクラック(ヒビ割れ)が入り、部分的に剥離した画像であった。
【0055】
(実施例10)
天然樹脂として、ロジン(松ヤニ)を添加しない以外は、実施例2と同じ成分割合(成分比)にして記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度3.4mPa・s、及び降伏値が130mPaであった。
【0056】
このようにして作製した記録液を、実施例2と同様に市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて実施例2と同様にして、マッフル炉中で焼成を実施した。冷却後、マッフル炉からガラス板をとりだしたところ、安定定着した赤色を呈した文字及び写真画像が得られたが、ガラス板上での画像の定着性が若干不十分で、極一部にクラック(ヒビ割れ)が入り、部分的に剥離した画像であった。
【0057】
(実施例11)
樹脂酸金属塩として、樹脂酸銀4重量%、樹脂酸金2重量%、樹脂酸ビスマス3重量%を含み樹脂酸金属塩の合計含有率を9重量%に増加した以外、その他の成分の含有割合(成分比)は実施例2同様にして記録液を作製した。この記録液の粘性特性をE型粘度計を用いて測定したところ、せん断粘度11.0mPa・s、及び降伏値が140mPaであった。
【0058】
このようにして作製した記録液を、実施例2と同じ市販のピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字しょうとしたところ、飛翔安定性が若干ではあるが低下し、飛翔方向並びドットサイズにムラ(乱れ)のある印字サンプルが得られた。続いて実施例2と同様にして、マッフル炉中で焼成を実施したところ、十分に安定定着した赤色を呈した文字及び写真画像が得られたが、上記焼成前印字状態に対応した印字ドット方向とドットサイズにムラ(乱れ)のある画像であった。

【0059】
(実施例12)
実施例1と同様にして作製した記録液を、実施例1と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、実施例1と同様のマッフル炉(電気炉)中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、25℃/分の速度を早めた昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、セラミックス板上に安定定着した青色を呈した文字及び写真画像が得られたが、極一部ではあるがクラックが生じていた。
【0060】
(実施例13)
実施例1と同様にして作製した記録液を、実施例1と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、実施例1と同様のマッフル炉(電気炉)中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、1.5℃/分の速度を遅めた昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、セラミックス板上に安定定着した青色を呈した文字及び写真画像が得られたが、若干ではあるが灰色味を帯びた彩度の低下した青色画像であった。
【0061】
(実施例14)
実施例2と同様にして作製した記録液を、実施例2と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、実施例2と同様のマッフル炉(電気炉)中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、25℃/分の速度を早めた昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からセラミックス板をとりだしたところ、ガラス板上に安定定着した赤色を呈した文字及び写真画像が得られたが、若干ではあるが部分的に画像にクラックが生じていた。
【0062】
(実施例15)
実施例2と同様にして作製した記録液を、実施例2と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのガラス板上に印字した。その結果、安定吐出可能で、文字及び写真画像を含む印字サンプルを得た。続いて、実施例1と同様のマッフル炉(電気炉)中に、印字されたセラミックス板を入れ、空気雰囲気中で、1.5℃/分の速度を遅めた昇温速度で600℃まで昇温し、さらに600℃で30分保持(アニーリング、焼鈍)した後、5℃/分の降温速度で室温まで炉中冷却した。冷却後、マッフル炉からガラス板をとりだしたところ、ガラス板上に安定定着した赤色を呈した文字及び写真画像が得られたが、若干ではあるが彩度の低下した白色味を帯びた赤色画像であった。
【0063】
(比較例1)
樹脂酸金属塩と精油の代わりに、発色原因材料として陶磁器用Co(コバルト)無機顔料微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した記録液を、実施例1と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に青色発色の印字を試みた。その結果、無機顔料微粒子のノズル吐出部での凝集目詰まりが発生し、初期から吐出困難で、印字までに至らないものであった。
【0064】
(比較例2)
樹脂酸金属塩と精油の代わりに、発色原因材料として油溶性金属キレート化合物としてアセチルアセトンCo(コバルト)塩を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した記録液を、実施例1と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に青色発色の印字を試みた。その結果、印字前の記録液保管中に、粒子の析出が一部観察された。また、初期から吐出性が低く、継続印字できないものであった。わずかに得られた画像を実施例1と同様にして加熱、焼成したところ、発色性の低いものであった。
【0065】
(比較例3)
樹脂酸金属塩と精油の代わりに、発色原因材料としてグリセロールと変性エタノールをベースとした有機塩化Mn(マンガン)塩を用いた以外は、実施例2と同様にして作製した記録液を、実施例1と同様の市販のピエゾ方式インクジェットプリンターを用いて、記録体(印字媒体)としてのアルミナ製セラミックス板上に褐色の発色印字を試みた。その結果、初期印字は可能であったが、吐出安定性が低く、安定して継続印字できないものであった。得られた画像を実施例2と同様にして加熱、焼成したところ、疎な膜で、発色性の低いものであった。
【0066】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、記録体としてセラミックス、ガラス、陶磁器及び金属など非紙系記録体への記録をおこなうための、吐出安定性、定着性及び発色性に優れたこインクジェット用記録液を提供することができ、さらに、該記録液を用いた画像記録方法を提供することができる。

Claims (19)

  1. 少なくとも非水系溶剤中に、樹脂酸金属塩及び精油を含んでなることを特徴とするインクジェット用記録液。
  2. 前記樹脂酸金属塩が、卑金属樹脂酸塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録液。
  3. 前記樹脂酸金属塩が、卑金属樹脂酸塩及び貴金属樹脂酸塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録液。
  4. 前記卑金属樹脂酸塩の構成金属が、ビスマス、ケイ素、ニッケル、チタン、バナジウム、銅及びアルミニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット用記録液。
  5. 前記貴金属樹脂酸塩の構成金属が、銀、白金、ルテニウムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用記録液。
  6. 記録液中の前記樹脂酸金属塩の合計含有率が、0.5以上8重量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
  7. 前記精油が、テレピン油、パイン油、及びカンファーの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
  8. 前記精油が、天然樹脂を溶解したバルサムとして含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
  9. さらに、天然樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
  10. 前記天然樹脂が、ロジン、ダマール及びマスチックの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット用記録液。
  11. 記録液中の前記天然樹脂の合計含有率が、0.5〜20重量%であることを特徴とする請求項9又は10に記載のインクジェット用記録液。
  12. さらに、貴金属バルサム系化合物を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用記録液。
  13. 前記貴金属バルサム系化合物が、金バルサム、白金バルサム、パナジウムバルサム、ルテニウムバルサム及びロジウムバルサムの中から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット用記録液。
  14. せん断粘度が10mPa・s以下であり、かつ降伏値が200mPa以下であることを特徴とする請求項1〜13に記載のインクジェット用記録液。
  15. 記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて記録体上に記録を行う画像記録方法において、該記録液として、請求項1〜14のいずれか1項に記載の記録液を用いることを特徴とする画像記録方法。
  16. 前記記録体が、ガラス、陶磁器、セラミックス及び金属の少なくともいずれか1種であり、かつ上記記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、該記録体上に画像を記録した後、該記録体を400℃以上1000℃以下の温度で加熱処理することを特徴とする請求項15に記載の画像記録方法。
  17. 前記記録体が、水溶性材料を表面に塗布した転写紙であることを特徴とする請求項15に記載の画像記録方法。
  18. 前記記録体が、水溶性材料を表面に塗布した転写紙であり、前記記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて、該転写紙上に画像を記録した後、前記転写紙全面をカバーコートし、次いで水中に浸漬させて前記転写紙上の画像を転写紙より分離し、ガラス、陶磁器、セラミックス及び金属の少なくともいずれか1種からなる記録体に画像を移動転写し、該記録体を400℃以上1000℃以下の温度で加熱処理することを特徴とする請求項15に記載の画像記録方法。
  19. 加熱処理が、空気雰囲気中でなされ、かつ昇温速度が2〜20℃/分であることを特徴とする請求項16及び18に記載の画像記録方法。
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