JP2004182620A - ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】再生頻度が低い触媒を用いて、なおかつ、高い反応速度及び選択率でジヒドロキシベンゼン類から効率的にアルキルエーテルを製造する方法及びそれに用いる触媒を提供する。
【解決手段】ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程によりジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法であって、該反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程によりジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法であって、該反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法及びそれに用いる触媒に関する。より詳しくは、ジヒドロキシベンゼン類とエーテル化剤とを反応させることにより、各種の工業原料として有用であるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法及びそれに用いる触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類は、各種の工業原料として有用な化合物であり、例えば、重合禁止剤の他、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、去痰剤や香料等として用いられている。このようなジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法としては、ジヒドロキシベンゼン類を原料とし、アルコール類をエーテル化剤として用いて製造する方法が工業的に簡便で有用である。
なお、ジヒドロキシベンゼン類をエーテル化した化合物においては、2つのヒドロキシル基のうち1つをエーテル化したモノアルキルエーテルが特に有用であり、例えば、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)は重合禁止剤として有用であり、また、カテコールの2つのヒドロキシル基のうち1つをメチルエーテル化したカテコールモノメチルエーテル(グアイアコール)は、香料の原料として有用な化合物である。また、2つのヒドロキシル基の両方をエーテル化したジアルキルエーテルも有用であり、例えばベラトロール(1,2−ジメトキシベンゼン)は医薬、メッキ薬などの合成原料として有用な化合物である。
【0003】
従来のジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法においては、2価フェノールのモノアルキルエーテルの製造法に関し、2価フェノールを、触媒を用いて気相で低級アルコールによりエーテル化することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、4−メトキシフェノールの製造方法に関し、固体酸触媒層にヒドロキノンとメタノールを連続的に供給し、特定の反応条件で液相反応させることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、フェノール誘導体のO−アルキル化方法に関し、特定の構造を有するフェノール誘導体と、1価のアルコールとを、触媒の存在下、該アルコールが超臨界状態になる条件下で反応させることについて開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これらの製造方法においては、酸性の触媒を用いるためにアルコール自身がエーテル化反応や重合反応等を起こして望ましくない副生成物を生じたり、また、一部の副生成物が炭素分として触媒上に多量に蓄積することにより触媒性能が著しく劣化するなどの問題があった。
【0004】
ところで、フェノール類のアルキルエーテルの製造方法に関し、フェノール類とアルコール類とを特定の酸化物である触媒の存在下で反応させることが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、2価フェノールであるジヒドロキシベンセン類からアルキルエーテルを製造する際に、アルキルエーテル化の収率を向上することに関して触媒及び反応条件に改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭51−108026号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開平9−151151号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2002−30015号公報(第2頁)
【特許文献4】
特許第2865165号明細書(第1−2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、再生頻度が低い触媒を用いて、なおかつ、高い反応速度及び選択率でジヒドロキシベンゼン類から効率的にアルキルエーテルを製造する方法及びそれに用いる触媒を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法について種々検討した結果、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程により製造する方法が工業的に好適であることに着目し、酸塩基両機能性触媒の存在下において、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることで、気相反応に比べて著しく反応速度が向上し、なおかつ、高い選択率でアルキルエーテルが生成すること、また、触媒表面上への炭素分の蓄積が抑制されることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。通常では、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程において反応圧力を高めていくと、ジヒドロキシベンゼン類の転化率は向上する一方で、アルキルエーテル化の選択率は低下する傾向にあるが、酸塩基両機能性触媒の存在下においては特定の反応圧力を超えるとアルキルエーテル化選択率が向上し、結果としてアルキルエーテル化合物の収率が向上する。
また、通常では、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールを反応させる工程において、酸触媒の存在下では触媒表面への炭素分の蓄積が著しいために頻繁に触媒を再生する必要があるが、酸塩基両機能性触媒の存在下に1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下では、触媒表面への炭素分の蓄積が抑制されるために触媒の再生処理の頻度を劇的に低減させるこができ、場合によっては再生処理が不要になる。
【0008】
すなわち本発明は、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程によりジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法であって、上記反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法である。
本発明はまた、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを、該アルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法に用いる触媒であって、上記触媒が、酸塩基両機能性触媒であるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類製造用触媒でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明におけるジヒドロキシベンゼン類としては、ジヒドロキシベンゼンやその誘導体であればよく、例えば、下記一般式(1);
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェニル基、ニトロ基又はベンジル基を表す。)で表される化合物が好適である。これらの中でも、ジヒドロキシベンゼンモノアルキルエーテル類が工業的に有用な化合物となることから、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
本発明における1価のアルコールとしては、水酸基を1個有するものであればよく、例えば、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価の脂肪族アルコールであることが好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2,2−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、1−へキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール等が好適である。これらの中でも、メタノール又はエタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このようなアルコールは、反応媒体かつエーテル化剤として用いられることとなる。
【0013】
本発明の製造方法によって得られるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類としては、上述したような原料であるジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの1つがエーテル化された化合物であるモノアルキルエーテル、及び、ジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの2つがエーテル化された化合物であるジアルキルエーテルが挙げられる。モノアルキルエーテルとしてはグアイアコール、レゾルシノールモノメチルエーテル、メトキノン等が好ましい化合物であり、ジアルキルエーテルとしては1,2−ジメトシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等が好ましい化合物である。中でも、モノアルキルエーテルであるグアイアコール、レゾルシノールモノメチルエーテル、メトキノンが有用で好ましい化合物である。
【0014】
本発明の製造方法において、上記反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなる。
本発明における1価のアルコールの超臨界状態となる条件(以下、単に超臨界状態ともいう。)とは、このアルコールの臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)を超えた条件を意味し、亜臨界状態となる条件(以下、単に亜臨界状態ともいう。)とは、臨界点近傍の臨界温度及び/又は臨界圧力より低い条件領域であり、臨界点のケルビン温度の0.90倍以上の温度と臨界圧力の0.50倍以上の圧力を超えた条件を意味する。このような条件において、1価のアルコールは気体と液体の中間的な性質を示し、既存の溶媒には認められない様々な特徴を有する。例えば、メタノールの場合、超臨界条件は、メタノールの臨界温度である239℃と臨界圧力である8.1MPaを超えた条件であり、亜臨界条件は、温度203℃以上、4MPa以上でかつ超臨界条件を除いた条件である。
【0015】
上記反応工程において、反応温度及び反応圧力は、亜臨界又は超臨界条件の範囲であればよいが、反応温度においては、好ましくは、臨界点のケルビン温度の0.90倍以上であり、また、1.50倍以下である。より好ましくは、0.95倍以上であり、また、1.40倍以下である。更に好ましくは、1.00倍以上であり、また、1.30倍以下である。特に好ましくは、1.05倍以上であり、また、1.25倍以下である。反応温度が高すぎると、エーテル化以外の望ましくない副反応やアルコールの分解反応が進行するおそれがある。反応温度が低すぎると、反応速度が極端に低下して生産性が低下するおそれがある。反応圧力においては、好ましくは、0.50倍以上であり、また、4.50倍以下である。より好ましくは、0.90倍以上であり、また、3.70倍以下である。更に好ましくは、1.00倍以上であり、また、3.10倍以下である。特に好ましくは、1.10倍以上であり、また、2.50倍以下である。また、反応圧力が高すぎると、高圧設備が必要になるため設備コストが高くなる。反応圧力が低すぎると、反応速度が低下するうえにアルコールの分解や炭素分の蓄積による触媒劣化が顕著になる場合があり工業的に不利となるおそれがある。
本発明における反応条件の最も好ましい形態としては、反応温度が臨界温度の1.05〜1.25倍の温度であり、かつ、反応圧力が臨界圧力の0.50〜2.50倍の圧力である。
【0016】
本発明において1価のアルコールとしてメタノールを用いる場合には、反応温度としては、220℃以上であることが好ましく、また、500℃以下であることが好ましい。より好ましくは、230℃以上であり、また、450℃以下である。更に好ましくは、240℃以上であり、また、400℃以下である。特に好ましくは、250℃以上であり、また、350℃以下である。また、反応圧力としては、4MPa以上であることが好ましく、また、35MPa以下であることが好ましい。より好ましくは、7MPa以上であり、また、30MPa以下である。更に好ましくは、8MPa以上であり、また、25MPa以下である。特に好ましくは、9MPa以上であり、また、20MPa以下である。
【0017】
本発明における酸塩基両機能性触媒は、酸性触媒として作用する部分と塩基性触媒として作用する部分とを共に有することになるものであればよく、酸性化合物と塩基性化合物とによる活性成分を有するものであることが好ましい。このような触媒としては、(1)1つの化合物上に酸性触媒としての活性点と塩基性触媒としての活性点の両方を有している形態、(2)酸性触媒としての活性点を有する化合物と、塩基性触媒としての活性点を有する化合物とが別々に存在し、これらが反応系内に同時に存在する形態等が挙げられる。(1)の形態においては、酸性化合物と塩基性化合物とが一体となった複合化合物の形態が挙げられ、(2)の形態においては、酸性化合物と塩基性化合物とが反応系内に同時に存在する形態が挙げられる。本発明においては、酸性触媒としての作用と塩基性触媒としての作用とを同時にかつ充分に発揮させることにより、本発明の作用効果をより充分に発揮させる点から、(1)の形態の触媒を用いることが好ましい。
【0018】
上記酸塩基両機能性触媒は、酸性化合物と塩基性化合物とによる活性成分を有するものであり、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が1<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<13であることが好ましい。より好ましくは、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が3<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<11である。さらに好ましくは、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が5<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<10である。このような酸塩基両機能性触媒は、酸性化合物由来の酸性部位と、塩基性化合物由来の塩基性部位が基質に対して協奏的に作用し、アルキルエーテル化の選択率を高めることができる。上記酸度関数とは、ハメットの酸度関数であり、中性塩基(B)の特定の指示薬群を用いて、ある溶液がこれらの指示薬にプロトンを移動させる傾向を、その指示薬の変色の度合で定義したものである。指示薬の酸型BH+の解離定数をKBH+とすると、ハメットの酸度関数H0は、下記式で定義される。
h0=KBH+(CBH+/CB)
H0=−logh0
(式中、h0は、溶液の酸度であり、CBH+/CBは、指示薬の共役酸BH+とその共役塩基Bの濃度比である。)
【0019】
上記酸塩基両機能性触媒としては、塩基性化合物としてアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を有し、かつ、酸性化合物としてN、P、S、B、V、Fe、Nb、Ta、Mo及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を有し、なおかつ、Si、Al、Ti、Zrからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は塩基性活性点と酸性活性点の両方を有する触媒となり、亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることと相まって、モノアルキルエーテル化選択率を充分に向上させることが可能になる。塩基性化合物又は酸性化合物の一方のみを含有する触媒の場合は、気相条件では高選択率を示す触媒であっても、亜臨界又は超臨界条件ではエーテル化選択率が低下することがある。
【0020】
上記酸塩基両機能性触媒に含まれる酸性化合物の量は、上記酸塩基両機能性触媒に含まれる塩基性化合物の量に対してモル比で0.0001〜500が好ましく、より好ましくは0.01〜100であり、さらに好ましくは0.1〜50である。
【0021】
上記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を有する塩基性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属やランタノイド系金属;これらの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物;硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の塩類等が好適である。
上記N、P、S、B、V、Fe、Nb、Ta、Mo及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する酸性化合物としては、これらの元素を含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩、ポリ酸、ポリ酸塩等が好適である。
上記Si、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する化合物としては、これらの元素を含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物等が好適である。
【0022】
上記酸塩基両機能性触媒は、上述の塩基性化合物及び酸性化合物を酸化物に含有させてなる複合酸化物の形態が好ましい。このような酸化物としてはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0023】
上記酸塩基両機能性触媒の調製方法としては、酸化物触媒の調製に用いられる方法として従来公知とされている方法を採用することができる。例えば、ケイ素酸化物を含有する場合、(1)酸性化合物と塩基性化合物とケイ素含有化合物とを水中に溶解又は懸濁させ、撹拌下で加熱濃縮し、乾燥後に成型し、焼成することで調製する方法、(2)酸性化合物及び塩基性化合物の水溶液中にケイ素含有化合物である酸化ケイ素成型体を浸した後、加熱乾固し、乾燥及び焼成することで調製する方法、(3)ケイ素含有化合物である各種ケイ酸塩又はケイ素含有酸化物に、アルカリ金属元素等を含む化合物の水溶液を加え混合した後、乾燥、成型及び焼成することで調製する方法等が好適である。
上記焼成における温度は、原料の種類等によって適宜設定すればよいが、好ましくは、300〜1000℃であり、より好ましくは、400〜800℃である。
【0024】
上記酸塩基両機能性触媒においては、1種以上の他の成分を含有していてもよく、このような他の成分を添加することによって、触媒の成形性や熱的な安定性を制御することができる。添加できる他の成分としては、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、貴金属、カルコゲン元素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、砒素、アンチモン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム等の各元素又はその化合物等が好適である。このような他の成分を触媒に含有させる方法としては、他の成分を含んだアルカリ金属元素等を含む化合物及び/又はケイ素元素含有化合物を用いる方法、触媒の調製途中で他の成分を含有する化合物を加える方法等が好適である。
また本発明においては、酸塩基両機能性触媒としてアルミナ、シリコンカーバイド等の担体に担持又は混合したものを用いてもよい。
【0025】
上記酸塩基両機能性触媒の好ましい形態としては、BET比表面積が0.2〜100m2/gであるものが挙げられる。BET比表面積が100m2/gを超えると、触媒の性能面で活性及び選択性の低下が大きくなるおそれがある。一方、0.2m2/g未満の低い表面積の触媒では、活性が低く収率を充分には向上させることができないおそれがある。より好ましくは1.0〜50m2/gである。
【0026】
本発明における反応工程においては、1価のアルコールを亜臨界又は超臨界条件下で反応を行うため、反応系内に存在する触媒以外の反応原料や生成物等の各成分の全量又は一部が亜臨界又は超臨界アルコールに溶解していることが好ましい。従って、反応に用いるジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとの比率としては、ジヒドロキシベンゼン類とアルコールとのモル比(ジヒドロキシベンゼン類:1価のアルコール)を1:2以上、すなわちジヒドロキシベンゼン類に対するアルコールのモル比を2以上とすることが好ましく、また、1:100以下、すなわちジヒドロキシベンゼン類に対するアルコールのモル比を100以下とすることが好ましい。より好ましくは、1:3以上であり、また、1:70以下であり、更に好ましくは、1:5以上であり、また、1:40以下である。アルコールのモル分率が高いほどアルキルエーテル化収率が向上するが、未反応のアルコールの回収コストが大きくなる。一方、アルコールのモル分率が低いと、アルキルエーテル化収率が低下するうえ、触媒寿命が短くなる場合がある。亜臨界又は超臨界条件下ではアルコールの分解がほとんど起こらないため、気相法に比べて、高いモル分率のアルコールを使用することができる。
【0027】
上記反応工程の反応形式としては、流通式によることが好ましいが特に限定されるものではない。また、触媒の形状としては特に限定されるものではなく、粉末を使用することもできるし、必要に応じてペレット、ビーズ、リング、タブレットや破砕型等の形状に圧縮成型したもの、又は、アルミナゾル、シリカゾル等の無機及び/若しくは有機バインダーにより成型したものを用いることもできる。流通式で行う場合には、固定床式、流動床式のいずれの方式でも用いることができるが、固定床式反応装置が簡便なため好ましい。この際、所望の転化レベルを達成するために必要な実際の接触時間は、容器の大きさ、又は、反応温度及び反応圧力等の要因に依存して広い範囲内で適宜選択することができる。
【0028】
上記反応工程を流通式により行う場合、反応器出口から留出するガスは、アルコールの臨界温度以下まで冷却して凝縮させた後、適当な圧力又は常圧まで減圧後、アルコール溶液(凝縮液)として回収される。凝縮液中には、溶媒であるアルコールの他に生成したジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類と水、場合によっては未反応原料のジヒドロキシベンゼン類又はその他の数種類の副生成物が含まれており、蒸留等の一般的な分離精製方法によってこれらを分離し、目的とする生成物を得ることができる。生成物の溶解度が低い場合には凝縮液は二相に分離するが、このような場合でも通常の液−液分離や蒸留操作等によって容易に分離精製することができる。
【0029】
本発明における反応工程においては、主生成物としてジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの1個の水酸基がアルキルエーテル化したモノアルキルエーテル化合物が得られるが、それ以外にも2個の水酸基が両方ともアルキルエーテル化したジアルキルエーテル化合物が得られる場合がある。これは、主生成物のモノアルキルエーテル化合物がさらに1価アルコールと反応して逐次的にジアルキルエーテル化合物が生成するためである。この一連の反応は全て平衡反応であるため、反応条件を適宜調節することにより、主生成物であるモノアルキルエーテル化合物の他にジアルキルエーテル化合物を併産することも可能である。また、生成したジアルキルエーテル化合物は平衡を利用してモノアルキルエーテル化合物に戻すことができるので、反応工程で生成したジアルキルエーテル化合物は分離して、モノアルキルエーテル化反応原料としてリサイクル使用することができる。なお、ジアルキルエーテル化合物は蒸留等の分離操作により容易に反応生成物から分離できる。
【0030】
本発明の製造方法により得られるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類、特にモノアルキルエーテルは、各種の工業原料として、例えば、重合禁止剤の他、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、去痰剤や香料等として好適に用いることができるものである。
上述した本発明のジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法に用いてなる触媒、すなわち、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを、上記アルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法に用いる酸塩基両機能性触媒は、本発明の製造方法により上記各種の工業原料を得るために有用な触媒であり、このような触媒も本発明の一つである。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0032】
なお、表1〜3に記載した「モノ体」及び「ジ体」とは、原料であるジヒドロキシベンゼン類のフェノール性水酸基部位とアルコールとが反応することにより得られたエーテル化生成物であり、「モノ体」は、原料のジヒドロキシベンゼン類が有する2個のフェノール性水酸基の内、1個だけがエーテル化した生成物であり、「ジ体」は、原料のジヒドロキシベンゼン類が有する2個のフェノール性水酸基の全てがエーテル化した生成物である。表中の%は、モル%を意味する。
【0033】
また、原料転化率及び生成物選択率は下記の式で求めたものである。
原料転化率=(1−(反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数/供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
モノ体選択率=(生成したモノ体のモル数/(供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数−反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
ジ体選択率=(生成したジ体のモル数/(供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数−反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
エーテル化選択率=モノ体選択率+ジ体選択率
モノ体収率=原料転化率×モノ体選択率
【0034】
実施例1〜3及び比較例1〜2
(触媒調製)
炭酸セシウム8.68g、リン酸二水素アンモニウム5.64gを水45gに完全に溶解させてから、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:CARIACTQ−30、粒径0.85〜1.7mm)16.00gを加えてシリカが完全に透明になるまで放置し、その後、湯浴上で蒸発乾固させた。次に、そのシリカを120℃で24時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成して粒状触媒を得た。酸素を除く構成原子比はCs/P/Si=1/0.8/5である。
【0035】
(反応)
SUS316製の直管型反応管(内径10mm、長さ145mm)内に上記の触媒を7.5ml(4.85g)充填し、触媒層の上下に隙間が無くなるようにSUS316製のデミスタを詰めた。反応管入口には精密高圧ポンプを接続して原料のヒドロキノンをメタノールに溶解させた状態で反応管下部から上部へ向けて連続的に流通させ、反応管出口には空冷式冷却管に続いて背圧制御弁を接続して圧力制御が出来るようにした。また、反応管部分はサンドバスにより外部から加熱した。原料のヒドロキノンに対するメタノールのモル比は30とし、反応温度は300℃、原料供袷速度は0.6ml/min(LHSV=4.8hr−1)の条件で、背圧制御弁を調整して表1に示す各圧力にて反応を行った。反応開始後1時間で反応生成物を採取し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析した。また、反応後は反応管から触媒を抜き出し、元素分析により触媒上への炭素分の蓄積を調べた。結果は表1に示す。なお、触媒は各圧力での実験ごとに毎回新しいものを充填して実験を行った。
【0036】
結果から明らかなように、反応圧力が0MPaの場合(=気相反応)と比較して反応圧力がメタノールの臨界圧力以上の領域では、原料転化率及びエーテル化選択率の両方が向上しており、モノ体の収率も向上している。
また、反応圧力がメタノールの臨界圧力よりも低い領域では、反応圧力の上昇に沿って触媒上に多量の炭素分が蓄積する傾向が見られるが、臨界圧力近傍から臨界圧以上の領域では炭素分の蓄積はほとんどない。
【0037】
実施例4〜6
原料にカテコール(実施例4)、レゾルシノール(実施例5)、ヒドロキノン(実施例6)を用いて、反応圧力を8.2MPa、原料供給速度を1ml/min(LHSV=8hr−1)とした以外は、実施例1と同じ触媒及び条件で反応を行った。結果は表2に示す。結果から、ジヒドロキシベンゼン類の中でも1,2−ジヒドロキシベンゼン類であるカテコールのモノアルキルエーテル化選択率が高いことがわかる。
【0038】
比較例3
(触媒調製)
炭酸セシウム8.68gのみを水30gに完全に溶解させてから、実施例1と同様の方法で触媒を調製した。得られた触媒の酸素を除く構成原子比はCs/Si=1/5である。
(反応)
上記触媒を用いた以外は実施例2と同じ方法及び条件で反応を行った。結果は表3に示す。結果から明らかなように、塩基性機能のみを有する触媒ではエーテル化選択率が非常に低い。
【0039】
比較例4
(触媒調製)
85%リン酸4.32gを水50gに加えてよく混合した後、実施例1と同様の方法で触媒を調整した。得られた触媒の酸素を除く構成原子比はP/Si=0.7/5である。
(反応)
上記触媒を用いた以外は実施例2と同じ方法及び条件で反応を行った。結果は表3に示す。
結果から明らかなように、酸性機能のみを有する触媒ではエーテル化選択率が低い。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、上述のような構成からなり、これにより、ジヒドロキシベンゼン類からアルキルエーテルを製造するに際し、高い反応速度及び選択率で製造することが可能となり、また、触媒の再生頻度を低減させることができることから、効率的にジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法及びそれに用いる触媒に関する。より詳しくは、ジヒドロキシベンゼン類とエーテル化剤とを反応させることにより、各種の工業原料として有用であるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法及びそれに用いる触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類は、各種の工業原料として有用な化合物であり、例えば、重合禁止剤の他、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、去痰剤や香料等として用いられている。このようなジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法としては、ジヒドロキシベンゼン類を原料とし、アルコール類をエーテル化剤として用いて製造する方法が工業的に簡便で有用である。
なお、ジヒドロキシベンゼン類をエーテル化した化合物においては、2つのヒドロキシル基のうち1つをエーテル化したモノアルキルエーテルが特に有用であり、例えば、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)は重合禁止剤として有用であり、また、カテコールの2つのヒドロキシル基のうち1つをメチルエーテル化したカテコールモノメチルエーテル(グアイアコール)は、香料の原料として有用な化合物である。また、2つのヒドロキシル基の両方をエーテル化したジアルキルエーテルも有用であり、例えばベラトロール(1,2−ジメトキシベンゼン)は医薬、メッキ薬などの合成原料として有用な化合物である。
【0003】
従来のジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法においては、2価フェノールのモノアルキルエーテルの製造法に関し、2価フェノールを、触媒を用いて気相で低級アルコールによりエーテル化することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、4−メトキシフェノールの製造方法に関し、固体酸触媒層にヒドロキノンとメタノールを連続的に供給し、特定の反応条件で液相反応させることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、フェノール誘導体のO−アルキル化方法に関し、特定の構造を有するフェノール誘導体と、1価のアルコールとを、触媒の存在下、該アルコールが超臨界状態になる条件下で反応させることについて開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これらの製造方法においては、酸性の触媒を用いるためにアルコール自身がエーテル化反応や重合反応等を起こして望ましくない副生成物を生じたり、また、一部の副生成物が炭素分として触媒上に多量に蓄積することにより触媒性能が著しく劣化するなどの問題があった。
【0004】
ところで、フェノール類のアルキルエーテルの製造方法に関し、フェノール類とアルコール類とを特定の酸化物である触媒の存在下で反応させることが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、2価フェノールであるジヒドロキシベンセン類からアルキルエーテルを製造する際に、アルキルエーテル化の収率を向上することに関して触媒及び反応条件に改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭51−108026号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開平9−151151号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2002−30015号公報(第2頁)
【特許文献4】
特許第2865165号明細書(第1−2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、再生頻度が低い触媒を用いて、なおかつ、高い反応速度及び選択率でジヒドロキシベンゼン類から効率的にアルキルエーテルを製造する方法及びそれに用いる触媒を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法について種々検討した結果、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程により製造する方法が工業的に好適であることに着目し、酸塩基両機能性触媒の存在下において、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることで、気相反応に比べて著しく反応速度が向上し、なおかつ、高い選択率でアルキルエーテルが生成すること、また、触媒表面上への炭素分の蓄積が抑制されることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。通常では、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程において反応圧力を高めていくと、ジヒドロキシベンゼン類の転化率は向上する一方で、アルキルエーテル化の選択率は低下する傾向にあるが、酸塩基両機能性触媒の存在下においては特定の反応圧力を超えるとアルキルエーテル化選択率が向上し、結果としてアルキルエーテル化合物の収率が向上する。
また、通常では、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールを反応させる工程において、酸触媒の存在下では触媒表面への炭素分の蓄積が著しいために頻繁に触媒を再生する必要があるが、酸塩基両機能性触媒の存在下に1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下では、触媒表面への炭素分の蓄積が抑制されるために触媒の再生処理の頻度を劇的に低減させるこができ、場合によっては再生処理が不要になる。
【0008】
すなわち本発明は、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程によりジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法であって、上記反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法である。
本発明はまた、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを、該アルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法に用いる触媒であって、上記触媒が、酸塩基両機能性触媒であるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類製造用触媒でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明におけるジヒドロキシベンゼン類としては、ジヒドロキシベンゼンやその誘導体であればよく、例えば、下記一般式(1);
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェニル基、ニトロ基又はベンジル基を表す。)で表される化合物が好適である。これらの中でも、ジヒドロキシベンゼンモノアルキルエーテル類が工業的に有用な化合物となることから、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
本発明における1価のアルコールとしては、水酸基を1個有するものであればよく、例えば、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価の脂肪族アルコールであることが好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2,2−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、1−へキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール等が好適である。これらの中でも、メタノール又はエタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このようなアルコールは、反応媒体かつエーテル化剤として用いられることとなる。
【0013】
本発明の製造方法によって得られるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類としては、上述したような原料であるジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの1つがエーテル化された化合物であるモノアルキルエーテル、及び、ジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの2つがエーテル化された化合物であるジアルキルエーテルが挙げられる。モノアルキルエーテルとしてはグアイアコール、レゾルシノールモノメチルエーテル、メトキノン等が好ましい化合物であり、ジアルキルエーテルとしては1,2−ジメトシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等が好ましい化合物である。中でも、モノアルキルエーテルであるグアイアコール、レゾルシノールモノメチルエーテル、メトキノンが有用で好ましい化合物である。
【0014】
本発明の製造方法において、上記反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなる。
本発明における1価のアルコールの超臨界状態となる条件(以下、単に超臨界状態ともいう。)とは、このアルコールの臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)を超えた条件を意味し、亜臨界状態となる条件(以下、単に亜臨界状態ともいう。)とは、臨界点近傍の臨界温度及び/又は臨界圧力より低い条件領域であり、臨界点のケルビン温度の0.90倍以上の温度と臨界圧力の0.50倍以上の圧力を超えた条件を意味する。このような条件において、1価のアルコールは気体と液体の中間的な性質を示し、既存の溶媒には認められない様々な特徴を有する。例えば、メタノールの場合、超臨界条件は、メタノールの臨界温度である239℃と臨界圧力である8.1MPaを超えた条件であり、亜臨界条件は、温度203℃以上、4MPa以上でかつ超臨界条件を除いた条件である。
【0015】
上記反応工程において、反応温度及び反応圧力は、亜臨界又は超臨界条件の範囲であればよいが、反応温度においては、好ましくは、臨界点のケルビン温度の0.90倍以上であり、また、1.50倍以下である。より好ましくは、0.95倍以上であり、また、1.40倍以下である。更に好ましくは、1.00倍以上であり、また、1.30倍以下である。特に好ましくは、1.05倍以上であり、また、1.25倍以下である。反応温度が高すぎると、エーテル化以外の望ましくない副反応やアルコールの分解反応が進行するおそれがある。反応温度が低すぎると、反応速度が極端に低下して生産性が低下するおそれがある。反応圧力においては、好ましくは、0.50倍以上であり、また、4.50倍以下である。より好ましくは、0.90倍以上であり、また、3.70倍以下である。更に好ましくは、1.00倍以上であり、また、3.10倍以下である。特に好ましくは、1.10倍以上であり、また、2.50倍以下である。また、反応圧力が高すぎると、高圧設備が必要になるため設備コストが高くなる。反応圧力が低すぎると、反応速度が低下するうえにアルコールの分解や炭素分の蓄積による触媒劣化が顕著になる場合があり工業的に不利となるおそれがある。
本発明における反応条件の最も好ましい形態としては、反応温度が臨界温度の1.05〜1.25倍の温度であり、かつ、反応圧力が臨界圧力の0.50〜2.50倍の圧力である。
【0016】
本発明において1価のアルコールとしてメタノールを用いる場合には、反応温度としては、220℃以上であることが好ましく、また、500℃以下であることが好ましい。より好ましくは、230℃以上であり、また、450℃以下である。更に好ましくは、240℃以上であり、また、400℃以下である。特に好ましくは、250℃以上であり、また、350℃以下である。また、反応圧力としては、4MPa以上であることが好ましく、また、35MPa以下であることが好ましい。より好ましくは、7MPa以上であり、また、30MPa以下である。更に好ましくは、8MPa以上であり、また、25MPa以下である。特に好ましくは、9MPa以上であり、また、20MPa以下である。
【0017】
本発明における酸塩基両機能性触媒は、酸性触媒として作用する部分と塩基性触媒として作用する部分とを共に有することになるものであればよく、酸性化合物と塩基性化合物とによる活性成分を有するものであることが好ましい。このような触媒としては、(1)1つの化合物上に酸性触媒としての活性点と塩基性触媒としての活性点の両方を有している形態、(2)酸性触媒としての活性点を有する化合物と、塩基性触媒としての活性点を有する化合物とが別々に存在し、これらが反応系内に同時に存在する形態等が挙げられる。(1)の形態においては、酸性化合物と塩基性化合物とが一体となった複合化合物の形態が挙げられ、(2)の形態においては、酸性化合物と塩基性化合物とが反応系内に同時に存在する形態が挙げられる。本発明においては、酸性触媒としての作用と塩基性触媒としての作用とを同時にかつ充分に発揮させることにより、本発明の作用効果をより充分に発揮させる点から、(1)の形態の触媒を用いることが好ましい。
【0018】
上記酸塩基両機能性触媒は、酸性化合物と塩基性化合物とによる活性成分を有するものであり、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が1<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<13であることが好ましい。より好ましくは、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が3<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<11である。さらに好ましくは、該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が5<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<10である。このような酸塩基両機能性触媒は、酸性化合物由来の酸性部位と、塩基性化合物由来の塩基性部位が基質に対して協奏的に作用し、アルキルエーテル化の選択率を高めることができる。上記酸度関数とは、ハメットの酸度関数であり、中性塩基(B)の特定の指示薬群を用いて、ある溶液がこれらの指示薬にプロトンを移動させる傾向を、その指示薬の変色の度合で定義したものである。指示薬の酸型BH+の解離定数をKBH+とすると、ハメットの酸度関数H0は、下記式で定義される。
h0=KBH+(CBH+/CB)
H0=−logh0
(式中、h0は、溶液の酸度であり、CBH+/CBは、指示薬の共役酸BH+とその共役塩基Bの濃度比である。)
【0019】
上記酸塩基両機能性触媒としては、塩基性化合物としてアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を有し、かつ、酸性化合物としてN、P、S、B、V、Fe、Nb、Ta、Mo及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を有し、なおかつ、Si、Al、Ti、Zrからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は塩基性活性点と酸性活性点の両方を有する触媒となり、亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることと相まって、モノアルキルエーテル化選択率を充分に向上させることが可能になる。塩基性化合物又は酸性化合物の一方のみを含有する触媒の場合は、気相条件では高選択率を示す触媒であっても、亜臨界又は超臨界条件ではエーテル化選択率が低下することがある。
【0020】
上記酸塩基両機能性触媒に含まれる酸性化合物の量は、上記酸塩基両機能性触媒に含まれる塩基性化合物の量に対してモル比で0.0001〜500が好ましく、より好ましくは0.01〜100であり、さらに好ましくは0.1〜50である。
【0021】
上記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を有する塩基性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属やランタノイド系金属;これらの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物;硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の塩類等が好適である。
上記N、P、S、B、V、Fe、Nb、Ta、Mo及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する酸性化合物としては、これらの元素を含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩、ポリ酸、ポリ酸塩等が好適である。
上記Si、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する化合物としては、これらの元素を含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物等が好適である。
【0022】
上記酸塩基両機能性触媒は、上述の塩基性化合物及び酸性化合物を酸化物に含有させてなる複合酸化物の形態が好ましい。このような酸化物としてはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0023】
上記酸塩基両機能性触媒の調製方法としては、酸化物触媒の調製に用いられる方法として従来公知とされている方法を採用することができる。例えば、ケイ素酸化物を含有する場合、(1)酸性化合物と塩基性化合物とケイ素含有化合物とを水中に溶解又は懸濁させ、撹拌下で加熱濃縮し、乾燥後に成型し、焼成することで調製する方法、(2)酸性化合物及び塩基性化合物の水溶液中にケイ素含有化合物である酸化ケイ素成型体を浸した後、加熱乾固し、乾燥及び焼成することで調製する方法、(3)ケイ素含有化合物である各種ケイ酸塩又はケイ素含有酸化物に、アルカリ金属元素等を含む化合物の水溶液を加え混合した後、乾燥、成型及び焼成することで調製する方法等が好適である。
上記焼成における温度は、原料の種類等によって適宜設定すればよいが、好ましくは、300〜1000℃であり、より好ましくは、400〜800℃である。
【0024】
上記酸塩基両機能性触媒においては、1種以上の他の成分を含有していてもよく、このような他の成分を添加することによって、触媒の成形性や熱的な安定性を制御することができる。添加できる他の成分としては、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、貴金属、カルコゲン元素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、砒素、アンチモン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム等の各元素又はその化合物等が好適である。このような他の成分を触媒に含有させる方法としては、他の成分を含んだアルカリ金属元素等を含む化合物及び/又はケイ素元素含有化合物を用いる方法、触媒の調製途中で他の成分を含有する化合物を加える方法等が好適である。
また本発明においては、酸塩基両機能性触媒としてアルミナ、シリコンカーバイド等の担体に担持又は混合したものを用いてもよい。
【0025】
上記酸塩基両機能性触媒の好ましい形態としては、BET比表面積が0.2〜100m2/gであるものが挙げられる。BET比表面積が100m2/gを超えると、触媒の性能面で活性及び選択性の低下が大きくなるおそれがある。一方、0.2m2/g未満の低い表面積の触媒では、活性が低く収率を充分には向上させることができないおそれがある。より好ましくは1.0〜50m2/gである。
【0026】
本発明における反応工程においては、1価のアルコールを亜臨界又は超臨界条件下で反応を行うため、反応系内に存在する触媒以外の反応原料や生成物等の各成分の全量又は一部が亜臨界又は超臨界アルコールに溶解していることが好ましい。従って、反応に用いるジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとの比率としては、ジヒドロキシベンゼン類とアルコールとのモル比(ジヒドロキシベンゼン類:1価のアルコール)を1:2以上、すなわちジヒドロキシベンゼン類に対するアルコールのモル比を2以上とすることが好ましく、また、1:100以下、すなわちジヒドロキシベンゼン類に対するアルコールのモル比を100以下とすることが好ましい。より好ましくは、1:3以上であり、また、1:70以下であり、更に好ましくは、1:5以上であり、また、1:40以下である。アルコールのモル分率が高いほどアルキルエーテル化収率が向上するが、未反応のアルコールの回収コストが大きくなる。一方、アルコールのモル分率が低いと、アルキルエーテル化収率が低下するうえ、触媒寿命が短くなる場合がある。亜臨界又は超臨界条件下ではアルコールの分解がほとんど起こらないため、気相法に比べて、高いモル分率のアルコールを使用することができる。
【0027】
上記反応工程の反応形式としては、流通式によることが好ましいが特に限定されるものではない。また、触媒の形状としては特に限定されるものではなく、粉末を使用することもできるし、必要に応じてペレット、ビーズ、リング、タブレットや破砕型等の形状に圧縮成型したもの、又は、アルミナゾル、シリカゾル等の無機及び/若しくは有機バインダーにより成型したものを用いることもできる。流通式で行う場合には、固定床式、流動床式のいずれの方式でも用いることができるが、固定床式反応装置が簡便なため好ましい。この際、所望の転化レベルを達成するために必要な実際の接触時間は、容器の大きさ、又は、反応温度及び反応圧力等の要因に依存して広い範囲内で適宜選択することができる。
【0028】
上記反応工程を流通式により行う場合、反応器出口から留出するガスは、アルコールの臨界温度以下まで冷却して凝縮させた後、適当な圧力又は常圧まで減圧後、アルコール溶液(凝縮液)として回収される。凝縮液中には、溶媒であるアルコールの他に生成したジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類と水、場合によっては未反応原料のジヒドロキシベンゼン類又はその他の数種類の副生成物が含まれており、蒸留等の一般的な分離精製方法によってこれらを分離し、目的とする生成物を得ることができる。生成物の溶解度が低い場合には凝縮液は二相に分離するが、このような場合でも通常の液−液分離や蒸留操作等によって容易に分離精製することができる。
【0029】
本発明における反応工程においては、主生成物としてジヒドロキシベンゼン類が有する2個の水酸基のうちの1個の水酸基がアルキルエーテル化したモノアルキルエーテル化合物が得られるが、それ以外にも2個の水酸基が両方ともアルキルエーテル化したジアルキルエーテル化合物が得られる場合がある。これは、主生成物のモノアルキルエーテル化合物がさらに1価アルコールと反応して逐次的にジアルキルエーテル化合物が生成するためである。この一連の反応は全て平衡反応であるため、反応条件を適宜調節することにより、主生成物であるモノアルキルエーテル化合物の他にジアルキルエーテル化合物を併産することも可能である。また、生成したジアルキルエーテル化合物は平衡を利用してモノアルキルエーテル化合物に戻すことができるので、反応工程で生成したジアルキルエーテル化合物は分離して、モノアルキルエーテル化反応原料としてリサイクル使用することができる。なお、ジアルキルエーテル化合物は蒸留等の分離操作により容易に反応生成物から分離できる。
【0030】
本発明の製造方法により得られるジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類、特にモノアルキルエーテルは、各種の工業原料として、例えば、重合禁止剤の他、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、去痰剤や香料等として好適に用いることができるものである。
上述した本発明のジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法に用いてなる触媒、すなわち、ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを、上記アルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法に用いる酸塩基両機能性触媒は、本発明の製造方法により上記各種の工業原料を得るために有用な触媒であり、このような触媒も本発明の一つである。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0032】
なお、表1〜3に記載した「モノ体」及び「ジ体」とは、原料であるジヒドロキシベンゼン類のフェノール性水酸基部位とアルコールとが反応することにより得られたエーテル化生成物であり、「モノ体」は、原料のジヒドロキシベンゼン類が有する2個のフェノール性水酸基の内、1個だけがエーテル化した生成物であり、「ジ体」は、原料のジヒドロキシベンゼン類が有する2個のフェノール性水酸基の全てがエーテル化した生成物である。表中の%は、モル%を意味する。
【0033】
また、原料転化率及び生成物選択率は下記の式で求めたものである。
原料転化率=(1−(反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数/供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
モノ体選択率=(生成したモノ体のモル数/(供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数−反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
ジ体選択率=(生成したジ体のモル数/(供給原料中ジヒドロキシベンゼン類のモル数−反応器出口未反応ジヒドロキシベンゼン類のモル数))×100
エーテル化選択率=モノ体選択率+ジ体選択率
モノ体収率=原料転化率×モノ体選択率
【0034】
実施例1〜3及び比較例1〜2
(触媒調製)
炭酸セシウム8.68g、リン酸二水素アンモニウム5.64gを水45gに完全に溶解させてから、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:CARIACTQ−30、粒径0.85〜1.7mm)16.00gを加えてシリカが完全に透明になるまで放置し、その後、湯浴上で蒸発乾固させた。次に、そのシリカを120℃で24時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成して粒状触媒を得た。酸素を除く構成原子比はCs/P/Si=1/0.8/5である。
【0035】
(反応)
SUS316製の直管型反応管(内径10mm、長さ145mm)内に上記の触媒を7.5ml(4.85g)充填し、触媒層の上下に隙間が無くなるようにSUS316製のデミスタを詰めた。反応管入口には精密高圧ポンプを接続して原料のヒドロキノンをメタノールに溶解させた状態で反応管下部から上部へ向けて連続的に流通させ、反応管出口には空冷式冷却管に続いて背圧制御弁を接続して圧力制御が出来るようにした。また、反応管部分はサンドバスにより外部から加熱した。原料のヒドロキノンに対するメタノールのモル比は30とし、反応温度は300℃、原料供袷速度は0.6ml/min(LHSV=4.8hr−1)の条件で、背圧制御弁を調整して表1に示す各圧力にて反応を行った。反応開始後1時間で反応生成物を採取し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析した。また、反応後は反応管から触媒を抜き出し、元素分析により触媒上への炭素分の蓄積を調べた。結果は表1に示す。なお、触媒は各圧力での実験ごとに毎回新しいものを充填して実験を行った。
【0036】
結果から明らかなように、反応圧力が0MPaの場合(=気相反応)と比較して反応圧力がメタノールの臨界圧力以上の領域では、原料転化率及びエーテル化選択率の両方が向上しており、モノ体の収率も向上している。
また、反応圧力がメタノールの臨界圧力よりも低い領域では、反応圧力の上昇に沿って触媒上に多量の炭素分が蓄積する傾向が見られるが、臨界圧力近傍から臨界圧以上の領域では炭素分の蓄積はほとんどない。
【0037】
実施例4〜6
原料にカテコール(実施例4)、レゾルシノール(実施例5)、ヒドロキノン(実施例6)を用いて、反応圧力を8.2MPa、原料供給速度を1ml/min(LHSV=8hr−1)とした以外は、実施例1と同じ触媒及び条件で反応を行った。結果は表2に示す。結果から、ジヒドロキシベンゼン類の中でも1,2−ジヒドロキシベンゼン類であるカテコールのモノアルキルエーテル化選択率が高いことがわかる。
【0038】
比較例3
(触媒調製)
炭酸セシウム8.68gのみを水30gに完全に溶解させてから、実施例1と同様の方法で触媒を調製した。得られた触媒の酸素を除く構成原子比はCs/Si=1/5である。
(反応)
上記触媒を用いた以外は実施例2と同じ方法及び条件で反応を行った。結果は表3に示す。結果から明らかなように、塩基性機能のみを有する触媒ではエーテル化選択率が非常に低い。
【0039】
比較例4
(触媒調製)
85%リン酸4.32gを水50gに加えてよく混合した後、実施例1と同様の方法で触媒を調整した。得られた触媒の酸素を除く構成原子比はP/Si=0.7/5である。
(反応)
上記触媒を用いた以外は実施例2と同じ方法及び条件で反応を行った。結果は表3に示す。
結果から明らかなように、酸性機能のみを有する触媒ではエーテル化選択率が低い。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、上述のような構成からなり、これにより、ジヒドロキシベンゼン類からアルキルエーテルを製造するに際し、高い反応速度及び選択率で製造することが可能となり、また、触媒の再生頻度を低減させることができることから、効率的にジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造することが可能となる。
Claims (5)
- ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを反応させる工程によりジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法であって、
該反応工程は、1価のアルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で、酸塩基両機能性触媒の存在下に反応させてなる
ことを特徴とするジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類の製造方法。 - 前記酸塩基両機能性触媒は、酸性化合物と塩基性化合物とによる活性成分を有するものであり、
該酸性化合物による酸性部位の酸度関数値が1<H0<7であり、かつ、該塩基性化合物による塩基性部位の酸度関数値が7<H0<13である
ことを特徴とする請求項1記載の製造方法。 - 前記酸塩基両機能性触媒が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を含み、かつ、N、P、S、B、V、Fe、Nb、Ta、Mo及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を含み、なおかつ、Si、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。 - 前記反応工程の反応条件は、反応温度が前記1価のアルコールの臨界点のケルビン温度の1.05〜1.25倍であり、かつ、反応圧力が該アルコールの臨界圧力の0.50〜2.50倍である
請求項1、2又は3記載の製造方法。 - ジヒドロキシベンゼン類と1価のアルコールとを、該アルコールが亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類を製造する方法に用いる触媒であって、該触媒が、酸塩基両機能性触媒である
ことを特徴とするジヒドロキシベンゼンアルキルエーテル類製造用触媒。
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