JP2004180526A - 発酵乳の製造方法及び発酵乳原料の搬送装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】発酵前の発酵乳原料の温度変化を防止し、一定条件で発酵を行なうことを可能にし、最終製品の品質を安定化させることができる発酵乳の製造方法及び発酵乳原料の搬送装置を提供する。
【解決手段】発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする発酵乳の製造方法、及び、搬送手段、前記搬送手段を被覆して配置される被覆手段、温度保持手段、熱媒体供給手段と、を備えていることを特徴とする容器入りの発酵乳原料の搬送装置。
【選択図】 図2
【解決手段】発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする発酵乳の製造方法、及び、搬送手段、前記搬送手段を被覆して配置される被覆手段、温度保持手段、熱媒体供給手段と、を備えていることを特徴とする容器入りの発酵乳原料の搬送装置。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵乳の製造方法、及び容器入りの発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送する搬送装置、に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発酵乳の製造手順は、次のようなものである。すなわち、最初に、原料となる調乳液を調乳し、これを殺菌し、所定温度まで冷却し、スターターを添加混合する。なお、スターターを添加混合した状態のものを、本発明では「発酵乳原料」と記載するものとする。
【0003】
このように調製した発酵乳原料は、容器に充填し、充填した容器を発酵室まで搬送し、発酵室において所定の温度で発酵させるとう手順で発酵乳が製造されており、このような製造手順によって製造される発酵乳は、通常は、後発酵タイプの発酵乳と呼ばれている。
【0004】
このような製造手順としては、例えば、非特許文献1に記載のものを例示することができる。
【0005】
【非特許文献1】
山内邦男ら著、「ミルク総合事典」、朝倉書店、1998年5月1日
、p.236−248
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
後発酵タイプの発酵乳を製造する工程においては、容器に充填された発酵乳原料は、発酵室まで搬送されている間に、温度が低下してしまいやすいという問題があり、とくに、製造室内の温度が変動した場合や、搬送装置が一時的に停止した場合等では、発酵室に入る時点(入庫する時点)における発酵乳原料の温度が不安定となり、その後の発酵の工程が影響を受け、製造された発酵乳の酸度がばらつきやすい等の問題が生じることがあった。
【0007】
即ち、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填した後、充填後の発酵乳原料を発酵室に入れるまでの間に、発酵乳原料の温度が低下してしまうことが、製造上の大きな問題となっていたのである。
【0008】
発酵乳原料が発酵室に搬送される間に発酵乳原料の温度が低下すると、発酵室内での温度回復は困難であり、このような状態で発酵を開始すると、酸生成が不安定で発酵が遅延することがある。また、発酵時間が延びることによって、最終製品の組織や構造に欠陥をもたらす可能性も懸念される。
【0009】
本発明の発明者らは前記問題点を解決するために、充填機から発酵室までの間における発酵乳原料の搬送方法について鋭意開発研究を行なった結果、容器に充填した発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送するために用いられる搬送手段について工夫することにより、充填機から発酵室までの搬送の間に発酵乳原料の温度低下を抑止し、発酵後の最終製品の品質を安定化させる技術を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、発酵前の発酵乳原料の温度変化を防止し、一定条件で発酵を行なうことを可能にし、最終製品の品質を安定化させることができる発酵乳の製造方法を提供することである。
【0011】
また本発明の他の目的は、発酵前の発酵乳原料の温度変化を防止し、一定条件で発酵を行なうことを可能にし、最終製品の品質を安定化させることができる発酵乳原料の搬送装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする発酵乳の製造方法である。
【0013】
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、容器入りの発酵乳原料を搬送する搬送装置であって、容器入りの発酵乳原料を連続的に搬送する搬送手段と、前記搬送手段を被覆して配置され搬送中の容器入り発酵乳原料を外気より断熱する被覆手段と、前記被覆手段によって断熱された空間内に配置され内部を熱媒体が流通する温度保持手段と、前記温度保持手段に対して熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備えていることを特徴とする容器入りの発酵乳原料の搬送装置、である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0015】
まず、本発明の第一の発明を説明する。本発明の第一の発明は、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする。
【0016】
「発酵前の発酵乳原料を調製する」とは、発酵する直前までの各工程をすませることを意味し、具体的には、原料となる調乳液の調乳、殺菌、所定温度までの冷却、スターターの添加混合等の各工程を行うことである。このような工程は、従来公知の方法で行うことが可能であり、例えば、前記の非特許文献1に記載の発酵乳の製造工程を例示することができる。
【0017】
一例を説明すれば、調乳時に使用する乳は、一般的な発酵乳の製造において通常用いられているものであればよく、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、羊乳などの生乳、脱脂乳、脱脂粉乳や全脂粉乳を溶解した還元乳、乳蛋白質、乳清蛋白質等が挙げられる。また、必要に応じてバターやクリーム等の脂肪分を含有する原料を用いることもできる。さらに、前記乳原料にその他の食品素材、すなわち、各種糖質や乳化剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等、香料等を配合してもよい。具体的には、ショ糖、果糖、ブドウ糖、デキストリン、還元麦芽糖等の糖類;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール;オレンジ果汁、レモン果汁、リンゴ果汁、ストロベリー果汁、ブルーベリー果汁等の果汁類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤等が挙げられる。
【0018】
調乳後、発酵乳原料は一般的な殺菌条件である85〜95℃で5〜15分殺菌し、その後、通常どおり、発酵乳原料を37〜43℃程度に冷却し、乳酸菌スターターを添加混合して、発酵前の発酵乳原料を調製する。
【0019】
次いで、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送する。
【0020】
本発明においては、この搬送の際に、容器入りの発酵乳原料の温度が所定の温度を保持できるようにしながら搬送する。この時、保持される発酵乳原料の温度は、具体的には37〜43℃の範囲で保持することが好ましい。 その後は、搬送された容器入りの発酵乳原料は、常法どおり、所定の温度で所定時間発酵し、発酵乳を製造する。
【0021】
このように、発酵乳原料を発酵室に搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持することにより、搬送中に発酵乳原料の温度が低下することがなく、後記試験例に詳記するように、発酵後の発酵乳の酸度が所望の適正値に入るようにコントロールすることができ、工程の適正な管理ができる。
【0022】
本発明の発酵乳の製造方法は、プレーンヨーグルトやハードヨーグルトのような後発酵タイプの発酵乳に好適に適用することが可能である。
【0023】
次に本発明の第二の発明について説明する。第二の発明は容器入りの発酵乳原料を搬送する搬送装置であって、発酵前の発酵乳原料を容器に充填した後、容器入りの発酵乳原料を発酵室まで搬送するために使用される搬送装置である。
【0024】
一般に、容器入りの発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送する手段としては、コンベア等の搬送手段が利用されるが、本発明においても、容器入りの発酵乳原料を連続的に搬送する搬送手段であればいかなる搬送手段を利用することも可能である。
【0025】
また、被覆手段としては、搬送手段を覆うカバー等、外気温を断熱することができるものが例示される。このような被覆手段は、搬送手段を被覆して配置され、搬送手段によって搬送されている容器入り発酵乳原料を外気より断熱する機能を有する。
【0026】
被覆手段の材質としては、外気温によって内部の保温効果が殆ど低下しない材質であればいかなるものでも可能であるが、加工性や被覆手段内部の視認性等を考慮して、アクリルやポリカーボネート等の合成樹脂を例示することができる。
【0027】
このような被覆手段が形成する空間の内部において、搬送している容器がつまった場合や転倒した場合等に対応するためには、被覆手段の上部を開閉式にし、容器の取り外しができるようにすることが好ましい。
【0028】
前記被覆手段により形成される空間は、外気より断熱されているが、このように断熱された空間内には、熱媒体を流通することができる温度保持手段を設置する。この温度保持手段は、発酵乳原料の温度を保持することを目的として、被覆手段により形成される空間の内部を加温する手段である。
【0029】
この温度保持手段の材質は放熱効率が高いものが好ましく、このような材質としては、ステンレス、セラミック、金、アルミニウム等が例示できるが、中でもステンレスが好ましい。温度保持手段の形状は熱媒体を供給することが可能なパイプ状が好ましい。パイプの太さは特に規定されないが、設置スペース、及び放熱による温度低下を考慮して、内径は10〜25mmが好ましい。また、放熱効率を高めるために温度保持手段に放熱板を取り付けることも可能である。
【0030】
温度保持手段の設置位置は、例えば、図1又は図2に示すように、搬送手段に近い位置が好ましく、搬送手段(例えばベルトコンベア等)の両側に平行してパイプ状の温度保持手段を1本ずつ設置する形態が推奨される。
【0031】
温度保持手段に供給される熱媒体としては、温水、油等が例示されるが、温水を利用することが好ましい。温度保持手段に供給される熱媒体の温度は、容器内の発酵乳原料の温度を保持し、後に続く発酵工程に影響を及ぼさない温度であれば特に限定されないが、一般的な発酵乳の発酵温度付近であればよく、具体的には37〜43℃の範囲が好ましい。
【0032】
温度保持手段への熱媒体を供給する熱媒体供給手段としては、例えば、温度保持手段に熱媒体として温水を供給する恒温水槽等が例示される。
【0033】
例えば、温度保持手段が、搬送手段の両側に平行して配置される2本の温水パイプである場合、温水(熱媒体)の供給経路は、2本のパイプに同時に同方向で供給する経路と、2本のパイプの片端を接続し、一方の片端をイン側、もう一方の片端をアウト側として一方向で循環させる経路、が例示されるが、恒温水槽の設置において温水の供給と回収を一箇所に集約することができる点で、後者を選択することが好ましい。このような態様であれば、搬送手段が長い場合は、熱媒体供給手段は複数設置することで保温温度を一定に保つことが可能である。
【0034】
以上のように、本発明の発酵乳原料の搬送装置は、発酵乳の製造における充填機と発酵室の間に設置されることが望ましく、本発明の搬送装置により、充填時の温度を保持しながら容器入り発酵乳を充填機から発酵室へ搬送することによって、移動の際の発酵乳原料の温度の低下を防止し、製造後の発酵乳の品質を一定に保つことが可能である。
【0035】
なお、前記被覆手段によって断熱された空間内においては、気温を測定する温度測定手段を備えていることが好ましく、かつ、温度測定手段からの入力線が結線されるとともに前記熱媒体供給手段への出力線が各々結線される自動制御手段を備えていることが望ましい。
【0036】
このような自動制御手段は、入力線を介して温度測定手段の測定値が入力され、前記の空間における気温が予め設定された所定の温度範囲に入るように熱媒体供給手段の運転を出力線を介して制御するものである。このような自動制御手段を備えれば、被覆手段によって形成される空間の内部を、好ましい温度に維持することができる。
【0037】
次に各種試験例を示して本発明を詳細に説明する。
[試験例1]
本試験は、製造室内の温度によって、容器充填後の発酵乳原料の温度がどのように影響をうけるか、を確認するために行なった。
【0038】
(1)試験方法
常法どおり調製した発酵乳原料500gを容器に充填し、発酵乳原料の内部温度が40℃になるように容器入り発酵乳を調製した。これを室温15℃、25℃、30℃、33℃の各条件下にそれぞれ放置し、経時的に各試料の内部温度を温度計で測定した。
【0039】
(2)試験結果
本試験の結果は図3に示すとおりである。図3は、当初40℃の発酵乳原料が、室温によってどのように影響されるかを示すグラフである。図3において、横軸は放置した時間(分)、縦軸は発酵乳原料の温度(℃)であり、図3中、●は室温が15℃である場合、■は室温が25℃である場合、▲は室温が30℃である場合、▼は室温が33℃である場合、である。
【0040】
一般に、容器に充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、発酵を開始するまでに要する時間は、製造装置の大きさにも依存するが、大規模工場では10分程度を要する場合がある。図3によれば、40℃の発酵乳原料を、室温15℃で放置した場合(図3中●)、10分後(放置時間)には温度が3℃低下(発酵乳原料温度:37℃)し、20分後では5℃も低下(発酵乳原料温度:35℃)することが明らかである。
【0041】
以上の結果から、容器入りの発酵乳原料は、製造室の温度が低いほど急激に温度が低下してしまうことが判明した。
【0042】
[試験例2]
本試験は、容器入り発酵乳が発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の温度(入庫温度)の高低によって、発酵中の酸度がどのように変化するかを確認するために行なった。
【0043】
(1)試験方法
容器に充填した発酵乳原料を、35℃、37℃、40℃の各温度になるようにそれぞれ調製した。各試料を、室温40℃の発酵室に入庫し、それぞれ発酵させ、経時的に発酵乳100g当たりの酸度(乳酸%:比色定量による乳酸表示法)を測定した。
【0044】
(2)試験結果
本試験の結果は図4に示すとおりである。図4は、発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の入庫温度と、発酵中の酸度の時間経過との関係を示すグラフである。図4において、横軸は発酵時間(時間)、縦軸は酸度(%)をあらわし、●は入庫温度が35℃である場合、■は入庫温度が37℃である場合、▲は入庫温度が40°である場合、である。
【0045】
一般的に発酵終了時の発酵乳の酸度は0.7〜0.9(%)程度が望ましいとされているが、図4によれば、入庫温度が37℃以上の場合であれば(図4中の■、▲)、4時間以上発酵を行なえば、発酵乳の酸度は0.7〜0.9(%)の望ましい範囲に達することが明らかであるが、入庫温度が35℃の場合は(図4中の●)、5時間発酵を行なっても発酵乳の酸度は前記の望ましい範囲(0.7〜0.9(%))には達しないことが明らかである。
【0046】
この試験の結果、容器入り発酵乳原料が発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の温度(入庫温度)によって、発酵中の酸度は大きく影響をうけ、特に35℃のように低い入庫温度は好ましくないことが判明した。
【0047】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
【実施例】
実施例1
本発明の装置の実施例について説明する。図1は、本発明の装置の一実施例を示す一部切欠斜視図である。図2は、図1におけるY−Y’線における一部断面図である。
【0049】
図1において、本発明の搬送装置1は、ベルトコンベアー10(搬送手段)、2本のパイプ20及び21(温度保持手段)、並びにカバー40及びカバー蓋41(被覆手段)を備えている。
【0050】
ベルトコンベアー10のベルト11の上には容器入り発酵乳C1〜C2が各々等間隔で載置されており、ベルトコンベアー10は、容器入り発酵乳C1〜C2を矢印Xの方向に連続的に搬送する。
【0051】
温度保持手段であるパイプ20及び21は、各々ステンレス製で内径20mmのパイプによって構成される。このパイプ20及び21は、ベルトコンベアー10を挟むように配置され、発酵乳原料の容器C1、C2から水平方向に3〜5cm離れて設置されており、パイプ20及び21の下端の高さは、容器C1、C2の底面の高さとほぼ同一の高さとなるように配置されている。
【0052】
パイプ20及び21は、各々の一端は互いに連結されており、他端は各々図示しない恒温水槽(熱媒体供給手段)の温水流入口及び温水流出口に連結されている。しかしながら、図1、図2においては、これらについては図示を省略している。
【0053】
恒温水槽からパイプ20及び21には温水(熱媒体)が供給されており、この温水の温度は37〜43℃程度であって、恒温水槽からパイプ20に流れ、次いでパイプ21を流れ、再度恒温水槽にもどる、というように循環している。
【0054】
尚、パイプ20及び21の外側には、カップガイド30及び31が平行して設置されているが、図1では図示を省略しており、図2に図示している。このカップガイド30及び31は、アクリル樹脂製であり、容器入り発酵乳C1、C2の転倒やベルト11からの脱落等を防止するために設けられており、また、パイプ20及び21が放熱する熱を効率よく容器C1、C2に移行させる機能も有する。
【0055】
ベルトコンベアー10、並びにパイプ20及び21は、カバー40及び開閉可能なカバー蓋41(被覆手段)で囲まれ、被覆されている。尚、図1においては、理解を容易にするために、カバー40及びカバー蓋41は、あえて中央部を切欠させた状態で図示している。
【0056】
カバー40及びカバー蓋41の材質は、ともに透明樹脂であり、容器C1、C2の搬送状況などを確認することが可能である。カバー蓋41は適宜取り外しが可能であり、容器C1、C2の転倒や、詰り、並びにパイプ20及び21のメンテナンスを行うことができる。
【0057】
尚、図示はしていないが、本発明の装置には、カバー40及びカバー蓋41によって断熱された空間Aの内部の気温を測定する温度センサーや、コントローラー等を備えてもよい。
【0058】
この場合、カバー40及びカバー蓋41によって断熱された空間Aの内部には、温度センサー(一般的な温度測定手段)を配置し、この温度センサーからの入力線をコントローラー(一般的な自動制御手段。図示せず。)に結線する。コントローラーの出力線は、前記の恒温水槽(熱媒体供給手段。図示せず。)の設定温度を入力する端子に結線する。
【0059】
温度センサーの測定値が、コントローラーに入力されると、コントローラーはこの測定値に基いて恒温水槽の最適な温度の設定値を算出し、設定値を、出力線を介して恒温水槽の設定温度入力端子に出力するのである。これによって、空間Aの内部は、所定の温度に自動制御することができる。
【0060】
実施例2
次に、方法の発明の実施例について説明する。
前記実施例1に記載したような、本発明の搬送装置(図1及び図2参照)の実験機を試作した。この搬送装置の実験機を、手動式の充填装置と、温蔵庫との間に設置することにより、工場の製造ラインを模式した試験装置を構築した。
【0061】
この試験装置を使用して、次の手順で本発明の方法を実施した。なお、温蔵庫の設定温度は40℃とした。
【0062】
常法に従って、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を手動式の充填装置によって容器に充填した。このときの温度は40℃であった。
【0063】
容器に充填した40℃の発酵乳原料は、前記した搬送装置の実験機を使用して温蔵庫まで搬送し、この温蔵庫にて40℃の発酵温度で4時間発酵させて発酵乳を製造した。
【0064】
製造した発酵乳の温度及び酸度を、前記した試験例1及び2と同様の方法で測定したところ、結果は表1に示すとおりであった。即ち、各発酵乳の温度は39℃付近であり、酸度は0.75%付近であって、いずれも安定した値を示し、温度の標準偏差は0.15、酸度の標準偏差は0.01であった。
【0065】
従って、本発明の方法によって製造すれば、充填時の温度を保持しながら容器入り発酵乳原料を充填機から発酵室へ搬送することことが可能となり、温度、酸度ともに品質の安定した発酵乳を製造できることが判明した。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例
前記実施例2と同一の条件で発酵乳を製造したが、容器入りの発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、単なるベルトコンベア10(図1、図2に示す実施例1の装置1において、被覆手段40及び41、並びに温度保持手段20及び21を取り外したもの。)の実験機を使用して、容器入りの発酵乳原料を搬送した。なお、室温は15℃であった。
【0068】
製造した発酵乳について、実施例2と同様に温度及び酸度を測定したところ、その結果は、表2に示すとおりであった。
【0069】
各発酵乳の温度は35℃から39℃付近にばらつき、標準偏差が1.38であった。また、酸度は、0.4%から0.76%とばらつき、標準偏差は0.11でった。即ち、単なるベルトコンベア10からなる実験機を使用した場合は、前記実施例2に比して、温度、酸度ともにバラツキが多い傾向にあった。
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の発酵乳の製造方法及び容器入りの発酵乳原料の搬送装置によれば、充填機から発酵室までの搬送に伴う容器入りの発酵乳原料の温度低下を防止することができるため、発酵時間を一定にでき、発酵後の最終製品の温度、酸度のばらつきを減少でき、品質の安定化が可能であり、工場における工程管理において好ましい改善をもたらせることができる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の装置の一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるY−Y’線における一部断面図である。
【図3】図3は、当初40℃の発酵乳原料が、室温によってどのように影響されるかを示すグラフである。
【図4】図4は、発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の入庫温度と、発酵中の酸度の時間経過との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 搬送装置
10 ベルトコンベアー(搬送手段)
11 ベルト
20 パイプ(温度保持手段)
21 パイプ(温度保持手段)
30 カップガイド
31 カップガイド
40 カバー(被覆手段)
41 カバー蓋(被覆手段)
C1、C2 容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵乳の製造方法、及び容器入りの発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送する搬送装置、に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発酵乳の製造手順は、次のようなものである。すなわち、最初に、原料となる調乳液を調乳し、これを殺菌し、所定温度まで冷却し、スターターを添加混合する。なお、スターターを添加混合した状態のものを、本発明では「発酵乳原料」と記載するものとする。
【0003】
このように調製した発酵乳原料は、容器に充填し、充填した容器を発酵室まで搬送し、発酵室において所定の温度で発酵させるとう手順で発酵乳が製造されており、このような製造手順によって製造される発酵乳は、通常は、後発酵タイプの発酵乳と呼ばれている。
【0004】
このような製造手順としては、例えば、非特許文献1に記載のものを例示することができる。
【0005】
【非特許文献1】
山内邦男ら著、「ミルク総合事典」、朝倉書店、1998年5月1日
、p.236−248
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
後発酵タイプの発酵乳を製造する工程においては、容器に充填された発酵乳原料は、発酵室まで搬送されている間に、温度が低下してしまいやすいという問題があり、とくに、製造室内の温度が変動した場合や、搬送装置が一時的に停止した場合等では、発酵室に入る時点(入庫する時点)における発酵乳原料の温度が不安定となり、その後の発酵の工程が影響を受け、製造された発酵乳の酸度がばらつきやすい等の問題が生じることがあった。
【0007】
即ち、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填した後、充填後の発酵乳原料を発酵室に入れるまでの間に、発酵乳原料の温度が低下してしまうことが、製造上の大きな問題となっていたのである。
【0008】
発酵乳原料が発酵室に搬送される間に発酵乳原料の温度が低下すると、発酵室内での温度回復は困難であり、このような状態で発酵を開始すると、酸生成が不安定で発酵が遅延することがある。また、発酵時間が延びることによって、最終製品の組織や構造に欠陥をもたらす可能性も懸念される。
【0009】
本発明の発明者らは前記問題点を解決するために、充填機から発酵室までの間における発酵乳原料の搬送方法について鋭意開発研究を行なった結果、容器に充填した発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送するために用いられる搬送手段について工夫することにより、充填機から発酵室までの搬送の間に発酵乳原料の温度低下を抑止し、発酵後の最終製品の品質を安定化させる技術を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、発酵前の発酵乳原料の温度変化を防止し、一定条件で発酵を行なうことを可能にし、最終製品の品質を安定化させることができる発酵乳の製造方法を提供することである。
【0011】
また本発明の他の目的は、発酵前の発酵乳原料の温度変化を防止し、一定条件で発酵を行なうことを可能にし、最終製品の品質を安定化させることができる発酵乳原料の搬送装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする発酵乳の製造方法である。
【0013】
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、容器入りの発酵乳原料を搬送する搬送装置であって、容器入りの発酵乳原料を連続的に搬送する搬送手段と、前記搬送手段を被覆して配置され搬送中の容器入り発酵乳原料を外気より断熱する被覆手段と、前記被覆手段によって断熱された空間内に配置され内部を熱媒体が流通する温度保持手段と、前記温度保持手段に対して熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備えていることを特徴とする容器入りの発酵乳原料の搬送装置、である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0015】
まず、本発明の第一の発明を説明する。本発明の第一の発明は、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする。
【0016】
「発酵前の発酵乳原料を調製する」とは、発酵する直前までの各工程をすませることを意味し、具体的には、原料となる調乳液の調乳、殺菌、所定温度までの冷却、スターターの添加混合等の各工程を行うことである。このような工程は、従来公知の方法で行うことが可能であり、例えば、前記の非特許文献1に記載の発酵乳の製造工程を例示することができる。
【0017】
一例を説明すれば、調乳時に使用する乳は、一般的な発酵乳の製造において通常用いられているものであればよく、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、羊乳などの生乳、脱脂乳、脱脂粉乳や全脂粉乳を溶解した還元乳、乳蛋白質、乳清蛋白質等が挙げられる。また、必要に応じてバターやクリーム等の脂肪分を含有する原料を用いることもできる。さらに、前記乳原料にその他の食品素材、すなわち、各種糖質や乳化剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等、香料等を配合してもよい。具体的には、ショ糖、果糖、ブドウ糖、デキストリン、還元麦芽糖等の糖類;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール;オレンジ果汁、レモン果汁、リンゴ果汁、ストロベリー果汁、ブルーベリー果汁等の果汁類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤等が挙げられる。
【0018】
調乳後、発酵乳原料は一般的な殺菌条件である85〜95℃で5〜15分殺菌し、その後、通常どおり、発酵乳原料を37〜43℃程度に冷却し、乳酸菌スターターを添加混合して、発酵前の発酵乳原料を調製する。
【0019】
次いで、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送する。
【0020】
本発明においては、この搬送の際に、容器入りの発酵乳原料の温度が所定の温度を保持できるようにしながら搬送する。この時、保持される発酵乳原料の温度は、具体的には37〜43℃の範囲で保持することが好ましい。 その後は、搬送された容器入りの発酵乳原料は、常法どおり、所定の温度で所定時間発酵し、発酵乳を製造する。
【0021】
このように、発酵乳原料を発酵室に搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持することにより、搬送中に発酵乳原料の温度が低下することがなく、後記試験例に詳記するように、発酵後の発酵乳の酸度が所望の適正値に入るようにコントロールすることができ、工程の適正な管理ができる。
【0022】
本発明の発酵乳の製造方法は、プレーンヨーグルトやハードヨーグルトのような後発酵タイプの発酵乳に好適に適用することが可能である。
【0023】
次に本発明の第二の発明について説明する。第二の発明は容器入りの発酵乳原料を搬送する搬送装置であって、発酵前の発酵乳原料を容器に充填した後、容器入りの発酵乳原料を発酵室まで搬送するために使用される搬送装置である。
【0024】
一般に、容器入りの発酵乳原料を充填機から発酵室まで搬送する手段としては、コンベア等の搬送手段が利用されるが、本発明においても、容器入りの発酵乳原料を連続的に搬送する搬送手段であればいかなる搬送手段を利用することも可能である。
【0025】
また、被覆手段としては、搬送手段を覆うカバー等、外気温を断熱することができるものが例示される。このような被覆手段は、搬送手段を被覆して配置され、搬送手段によって搬送されている容器入り発酵乳原料を外気より断熱する機能を有する。
【0026】
被覆手段の材質としては、外気温によって内部の保温効果が殆ど低下しない材質であればいかなるものでも可能であるが、加工性や被覆手段内部の視認性等を考慮して、アクリルやポリカーボネート等の合成樹脂を例示することができる。
【0027】
このような被覆手段が形成する空間の内部において、搬送している容器がつまった場合や転倒した場合等に対応するためには、被覆手段の上部を開閉式にし、容器の取り外しができるようにすることが好ましい。
【0028】
前記被覆手段により形成される空間は、外気より断熱されているが、このように断熱された空間内には、熱媒体を流通することができる温度保持手段を設置する。この温度保持手段は、発酵乳原料の温度を保持することを目的として、被覆手段により形成される空間の内部を加温する手段である。
【0029】
この温度保持手段の材質は放熱効率が高いものが好ましく、このような材質としては、ステンレス、セラミック、金、アルミニウム等が例示できるが、中でもステンレスが好ましい。温度保持手段の形状は熱媒体を供給することが可能なパイプ状が好ましい。パイプの太さは特に規定されないが、設置スペース、及び放熱による温度低下を考慮して、内径は10〜25mmが好ましい。また、放熱効率を高めるために温度保持手段に放熱板を取り付けることも可能である。
【0030】
温度保持手段の設置位置は、例えば、図1又は図2に示すように、搬送手段に近い位置が好ましく、搬送手段(例えばベルトコンベア等)の両側に平行してパイプ状の温度保持手段を1本ずつ設置する形態が推奨される。
【0031】
温度保持手段に供給される熱媒体としては、温水、油等が例示されるが、温水を利用することが好ましい。温度保持手段に供給される熱媒体の温度は、容器内の発酵乳原料の温度を保持し、後に続く発酵工程に影響を及ぼさない温度であれば特に限定されないが、一般的な発酵乳の発酵温度付近であればよく、具体的には37〜43℃の範囲が好ましい。
【0032】
温度保持手段への熱媒体を供給する熱媒体供給手段としては、例えば、温度保持手段に熱媒体として温水を供給する恒温水槽等が例示される。
【0033】
例えば、温度保持手段が、搬送手段の両側に平行して配置される2本の温水パイプである場合、温水(熱媒体)の供給経路は、2本のパイプに同時に同方向で供給する経路と、2本のパイプの片端を接続し、一方の片端をイン側、もう一方の片端をアウト側として一方向で循環させる経路、が例示されるが、恒温水槽の設置において温水の供給と回収を一箇所に集約することができる点で、後者を選択することが好ましい。このような態様であれば、搬送手段が長い場合は、熱媒体供給手段は複数設置することで保温温度を一定に保つことが可能である。
【0034】
以上のように、本発明の発酵乳原料の搬送装置は、発酵乳の製造における充填機と発酵室の間に設置されることが望ましく、本発明の搬送装置により、充填時の温度を保持しながら容器入り発酵乳を充填機から発酵室へ搬送することによって、移動の際の発酵乳原料の温度の低下を防止し、製造後の発酵乳の品質を一定に保つことが可能である。
【0035】
なお、前記被覆手段によって断熱された空間内においては、気温を測定する温度測定手段を備えていることが好ましく、かつ、温度測定手段からの入力線が結線されるとともに前記熱媒体供給手段への出力線が各々結線される自動制御手段を備えていることが望ましい。
【0036】
このような自動制御手段は、入力線を介して温度測定手段の測定値が入力され、前記の空間における気温が予め設定された所定の温度範囲に入るように熱媒体供給手段の運転を出力線を介して制御するものである。このような自動制御手段を備えれば、被覆手段によって形成される空間の内部を、好ましい温度に維持することができる。
【0037】
次に各種試験例を示して本発明を詳細に説明する。
[試験例1]
本試験は、製造室内の温度によって、容器充填後の発酵乳原料の温度がどのように影響をうけるか、を確認するために行なった。
【0038】
(1)試験方法
常法どおり調製した発酵乳原料500gを容器に充填し、発酵乳原料の内部温度が40℃になるように容器入り発酵乳を調製した。これを室温15℃、25℃、30℃、33℃の各条件下にそれぞれ放置し、経時的に各試料の内部温度を温度計で測定した。
【0039】
(2)試験結果
本試験の結果は図3に示すとおりである。図3は、当初40℃の発酵乳原料が、室温によってどのように影響されるかを示すグラフである。図3において、横軸は放置した時間(分)、縦軸は発酵乳原料の温度(℃)であり、図3中、●は室温が15℃である場合、■は室温が25℃である場合、▲は室温が30℃である場合、▼は室温が33℃である場合、である。
【0040】
一般に、容器に充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、発酵を開始するまでに要する時間は、製造装置の大きさにも依存するが、大規模工場では10分程度を要する場合がある。図3によれば、40℃の発酵乳原料を、室温15℃で放置した場合(図3中●)、10分後(放置時間)には温度が3℃低下(発酵乳原料温度:37℃)し、20分後では5℃も低下(発酵乳原料温度:35℃)することが明らかである。
【0041】
以上の結果から、容器入りの発酵乳原料は、製造室の温度が低いほど急激に温度が低下してしまうことが判明した。
【0042】
[試験例2]
本試験は、容器入り発酵乳が発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の温度(入庫温度)の高低によって、発酵中の酸度がどのように変化するかを確認するために行なった。
【0043】
(1)試験方法
容器に充填した発酵乳原料を、35℃、37℃、40℃の各温度になるようにそれぞれ調製した。各試料を、室温40℃の発酵室に入庫し、それぞれ発酵させ、経時的に発酵乳100g当たりの酸度(乳酸%:比色定量による乳酸表示法)を測定した。
【0044】
(2)試験結果
本試験の結果は図4に示すとおりである。図4は、発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の入庫温度と、発酵中の酸度の時間経過との関係を示すグラフである。図4において、横軸は発酵時間(時間)、縦軸は酸度(%)をあらわし、●は入庫温度が35℃である場合、■は入庫温度が37℃である場合、▲は入庫温度が40°である場合、である。
【0045】
一般的に発酵終了時の発酵乳の酸度は0.7〜0.9(%)程度が望ましいとされているが、図4によれば、入庫温度が37℃以上の場合であれば(図4中の■、▲)、4時間以上発酵を行なえば、発酵乳の酸度は0.7〜0.9(%)の望ましい範囲に達することが明らかであるが、入庫温度が35℃の場合は(図4中の●)、5時間発酵を行なっても発酵乳の酸度は前記の望ましい範囲(0.7〜0.9(%))には達しないことが明らかである。
【0046】
この試験の結果、容器入り発酵乳原料が発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の温度(入庫温度)によって、発酵中の酸度は大きく影響をうけ、特に35℃のように低い入庫温度は好ましくないことが判明した。
【0047】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
【実施例】
実施例1
本発明の装置の実施例について説明する。図1は、本発明の装置の一実施例を示す一部切欠斜視図である。図2は、図1におけるY−Y’線における一部断面図である。
【0049】
図1において、本発明の搬送装置1は、ベルトコンベアー10(搬送手段)、2本のパイプ20及び21(温度保持手段)、並びにカバー40及びカバー蓋41(被覆手段)を備えている。
【0050】
ベルトコンベアー10のベルト11の上には容器入り発酵乳C1〜C2が各々等間隔で載置されており、ベルトコンベアー10は、容器入り発酵乳C1〜C2を矢印Xの方向に連続的に搬送する。
【0051】
温度保持手段であるパイプ20及び21は、各々ステンレス製で内径20mmのパイプによって構成される。このパイプ20及び21は、ベルトコンベアー10を挟むように配置され、発酵乳原料の容器C1、C2から水平方向に3〜5cm離れて設置されており、パイプ20及び21の下端の高さは、容器C1、C2の底面の高さとほぼ同一の高さとなるように配置されている。
【0052】
パイプ20及び21は、各々の一端は互いに連結されており、他端は各々図示しない恒温水槽(熱媒体供給手段)の温水流入口及び温水流出口に連結されている。しかしながら、図1、図2においては、これらについては図示を省略している。
【0053】
恒温水槽からパイプ20及び21には温水(熱媒体)が供給されており、この温水の温度は37〜43℃程度であって、恒温水槽からパイプ20に流れ、次いでパイプ21を流れ、再度恒温水槽にもどる、というように循環している。
【0054】
尚、パイプ20及び21の外側には、カップガイド30及び31が平行して設置されているが、図1では図示を省略しており、図2に図示している。このカップガイド30及び31は、アクリル樹脂製であり、容器入り発酵乳C1、C2の転倒やベルト11からの脱落等を防止するために設けられており、また、パイプ20及び21が放熱する熱を効率よく容器C1、C2に移行させる機能も有する。
【0055】
ベルトコンベアー10、並びにパイプ20及び21は、カバー40及び開閉可能なカバー蓋41(被覆手段)で囲まれ、被覆されている。尚、図1においては、理解を容易にするために、カバー40及びカバー蓋41は、あえて中央部を切欠させた状態で図示している。
【0056】
カバー40及びカバー蓋41の材質は、ともに透明樹脂であり、容器C1、C2の搬送状況などを確認することが可能である。カバー蓋41は適宜取り外しが可能であり、容器C1、C2の転倒や、詰り、並びにパイプ20及び21のメンテナンスを行うことができる。
【0057】
尚、図示はしていないが、本発明の装置には、カバー40及びカバー蓋41によって断熱された空間Aの内部の気温を測定する温度センサーや、コントローラー等を備えてもよい。
【0058】
この場合、カバー40及びカバー蓋41によって断熱された空間Aの内部には、温度センサー(一般的な温度測定手段)を配置し、この温度センサーからの入力線をコントローラー(一般的な自動制御手段。図示せず。)に結線する。コントローラーの出力線は、前記の恒温水槽(熱媒体供給手段。図示せず。)の設定温度を入力する端子に結線する。
【0059】
温度センサーの測定値が、コントローラーに入力されると、コントローラーはこの測定値に基いて恒温水槽の最適な温度の設定値を算出し、設定値を、出力線を介して恒温水槽の設定温度入力端子に出力するのである。これによって、空間Aの内部は、所定の温度に自動制御することができる。
【0060】
実施例2
次に、方法の発明の実施例について説明する。
前記実施例1に記載したような、本発明の搬送装置(図1及び図2参照)の実験機を試作した。この搬送装置の実験機を、手動式の充填装置と、温蔵庫との間に設置することにより、工場の製造ラインを模式した試験装置を構築した。
【0061】
この試験装置を使用して、次の手順で本発明の方法を実施した。なお、温蔵庫の設定温度は40℃とした。
【0062】
常法に従って、発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を手動式の充填装置によって容器に充填した。このときの温度は40℃であった。
【0063】
容器に充填した40℃の発酵乳原料は、前記した搬送装置の実験機を使用して温蔵庫まで搬送し、この温蔵庫にて40℃の発酵温度で4時間発酵させて発酵乳を製造した。
【0064】
製造した発酵乳の温度及び酸度を、前記した試験例1及び2と同様の方法で測定したところ、結果は表1に示すとおりであった。即ち、各発酵乳の温度は39℃付近であり、酸度は0.75%付近であって、いずれも安定した値を示し、温度の標準偏差は0.15、酸度の標準偏差は0.01であった。
【0065】
従って、本発明の方法によって製造すれば、充填時の温度を保持しながら容器入り発酵乳原料を充填機から発酵室へ搬送することことが可能となり、温度、酸度ともに品質の安定した発酵乳を製造できることが判明した。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例
前記実施例2と同一の条件で発酵乳を製造したが、容器入りの発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、単なるベルトコンベア10(図1、図2に示す実施例1の装置1において、被覆手段40及び41、並びに温度保持手段20及び21を取り外したもの。)の実験機を使用して、容器入りの発酵乳原料を搬送した。なお、室温は15℃であった。
【0068】
製造した発酵乳について、実施例2と同様に温度及び酸度を測定したところ、その結果は、表2に示すとおりであった。
【0069】
各発酵乳の温度は35℃から39℃付近にばらつき、標準偏差が1.38であった。また、酸度は、0.4%から0.76%とばらつき、標準偏差は0.11でった。即ち、単なるベルトコンベア10からなる実験機を使用した場合は、前記実施例2に比して、温度、酸度ともにバラツキが多い傾向にあった。
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の発酵乳の製造方法及び容器入りの発酵乳原料の搬送装置によれば、充填機から発酵室までの搬送に伴う容器入りの発酵乳原料の温度低下を防止することができるため、発酵時間を一定にでき、発酵後の最終製品の温度、酸度のばらつきを減少でき、品質の安定化が可能であり、工場における工程管理において好ましい改善をもたらせることができる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の装置の一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるY−Y’線における一部断面図である。
【図3】図3は、当初40℃の発酵乳原料が、室温によってどのように影響されるかを示すグラフである。
【図4】図4は、発酵室に入庫した時点(発酵開始時)における発酵乳原料の入庫温度と、発酵中の酸度の時間経過との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 搬送装置
10 ベルトコンベアー(搬送手段)
11 ベルト
20 パイプ(温度保持手段)
21 パイプ(温度保持手段)
30 カップガイド
31 カップガイド
40 カバー(被覆手段)
41 カバー蓋(被覆手段)
C1、C2 容器
Claims (2)
- 発酵前の発酵乳原料を調製し、調製した発酵乳原料を容器に充填し、充填した発酵乳原料を発酵室に搬送し、搬送した発酵乳原料を発酵して発酵乳となす発酵乳の製造方法において、発酵乳原料を発酵室へ搬送する際に、発酵乳原料の温度を保持しながら搬送することを特徴とする発酵乳の製造方法。
- 容器入りの発酵乳原料を搬送する搬送装置であって、容器入りの発酵乳原料を連続的に搬送する搬送手段と、前記搬送手段を被覆して配置され搬送中の容器入り発酵乳原料を外気より断熱する被覆手段と、前記被覆手段によって断熱された空間内に配置され内部を熱媒体が流通する温度保持手段と、前記温度保持手段に対して熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備えていることを特徴とする容器入りの発酵乳原料の搬送装置。
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WO2008068893A1 (ja) | 2006-12-01 | 2008-06-12 | Meiji Dairies Corporation | 発酵乳の製造方法,及び発酵乳 |
WO2010001580A1 (ja) | 2008-06-30 | 2010-01-07 | 明治乳業株式会社 | 発酵乳の製造方法,及び発酵乳 |
WO2010098086A1 (ja) | 2009-02-25 | 2010-09-02 | 明治乳業株式会社 | 乳糖分の少ない発酵乳及びその製造方法 |
WO2012026384A1 (ja) | 2010-08-21 | 2012-03-01 | 株式会社 明治 | 乳糖分の少ない発酵乳及びその製造方法 |
WO2012121131A1 (ja) | 2011-03-04 | 2012-09-13 | 株式会社明治 | 風味が改善された発酵乳およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-11-29 JP JP2002348452A patent/JP2004180526A/ja active Pending
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