JP2004179339A - 露光方法及び装置、並びにデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの光路空間の少なくとも一部を露光ビームを透過する気体で実質的に置換すると共に、その露光ビームを透過する気体が外部に漏れ出すことによる悪影響を軽減する。
【解決手段】レチクルRのパターン像をウエハW上に投影する投影光学系PLの下部に、投影光学系PLからウエハWに向かう露光光路を含む空間を覆うように、かつウエハWに非接触に局所気密化部材37を設ける。局所気密化部材37の露光光を通過させる窓部に対向する位置にウエハW又はウエハステージ26が存在して、アライメントの一部及び露光が行われている期間に、局所気密化部材37内に露光光を透過する気体を供給し、その窓部に対向する位置にウエハW及びウエハステージ26が存在しない期間には、その気体の供給を停止する。
【選択図】 図2
【解決手段】レチクルRのパターン像をウエハW上に投影する投影光学系PLの下部に、投影光学系PLからウエハWに向かう露光光路を含む空間を覆うように、かつウエハWに非接触に局所気密化部材37を設ける。局所気密化部材37の露光光を通過させる窓部に対向する位置にウエハW又はウエハステージ26が存在して、アライメントの一部及び露光が行われている期間に、局所気密化部材37内に露光光を透過する気体を供給し、その窓部に対向する位置にウエハW及びウエハステージ26が存在しない期間には、その気体の供給を停止する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体集積回路、液晶ディスプレイ、又は薄膜磁気ヘッド等の各種デバイスを製造するためのリソグラフィ工程でマスクパターンを投影光学系を介して基板上に転写するために使用される露光方法及び装置、並びにその露光方法を用いるデバイス製造方法に関し、特に露光ビームとして波長200nm程度以下の紫外光を使用する場合に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路等を製造するためのリソグラフィ工程で、マスクとしてのレチクル(又はフォトマスク等)のパターンを、被露光基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上に縮小露光して転写する際に使用される一括露光型又は走査露光型の投影露光装置においては、半導体集積回路等の微細化に対応するために、その露光波長がより短波長側にシフトして来ている。現在、その露光波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長の実質的に真空紫外域のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、真空紫外域でも更に短波長の波長157nmのF2 レーザや、波長126nmのAr2 レーザ等の露光光源を使用する投影露光装置の開発も行なわれている。
【0003】
このような真空紫外域で更に波長が180nm程度以下の光は、大気中の酸素や水蒸気等によって激しい吸収を受けるため、そのような光を露光ビームとして使用する投影露光装置の光路空間は、窒素や希ガス等の露光ビームを透過する所定の気体(パージガス)で置換(ガス置換)する必要がある。例えば、F2 レーザを露光ビームとする投影露光装置では、露光光源からウエハに至るまでの光路の大部分で、残存酸素濃度を1ppm程度以下に抑える必要があると言われている。
【0004】
また、半導体集積回路等の集積度の向上や歩留りの向上には、解像度だけでなくパターン間の相互の位置合わせ精度も非常に重要である。半導体集積回路の場合には、ウエハ上に微細パターンを例えば30層以上形成する必要があり、これらの各層のパターンの間には、最小解像度の1/3以内程度の高い位置合わせ精度が要求される。層間の位置合わせは、アライメントセンサにより、それまでの工程でウエハ上に回路パターンと共に転写されたアライメントマーク(ウエハマーク)の位置を計測し、この計測情報から推定されるその回路パターンの位置に合致するように、新しい層の回路パターンを転写することにより行われる。
【0005】
アライメントセンサには、投影光学系の少なくとも一部を使用するTTR(Through The Reticle )方式やTTL(Through The Lens)方式もあるが、要求されるアライメント精度の高度化に伴ない、最近では投影光学系とは別に設けた専用のアライメントセンサ、即ちオフ・アクシス方式のアライメントセンサが主流となっている。
【0006】
このオフ・アクシス方式のアライメントセンサの検出基準位置と、投影光学系の露光視野の中心との間には、機械的な干渉を避けるための制約により10cm程度以上の間隔が生じる。そのため、ウエハマークの計測や露光動作に先だって、レチクル上のパターンの投影像とアライメントセンサとの位置関係(ベースライン量)を正確に計測しておき、ウエハマークの計測後に、その計測結果に対して、そのベースライン量を補正した位置にウエハを移動して露光を行うようにしている。これによって、以前の工程で形成された層上のパターンと、今回露光するパターンとの位置関係を正確に合わせることができる。なお、これらの位置計測や所定量の移動又は走査露光のために、ウエハを移動するウエハステージの位置は、レーザ干渉計により高精度に計測されている。
【0007】
上述の如く、真空紫外光、特に波長が180nm以下の光を露光ビームとする投影露光装置においては、露光ビームの光路空間をパージガスで置換する必要がある。この際に、投影光学系とウエハとの間の光路空間についても、残存する酸素濃度を1ppm程度以下に抑える必要がある。
これを実現する一つの方法として、ウエハを保持して可動のウエハステージ全体を大きな気密型の遮蔽容器で覆い、その内部全体(投影光学系からウエハまでの光路を含む)をガス置換する方法も考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−118783号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような遮蔽容器を採用すると、投影露光装置が大型化及び大重量化して、デバイス製造工場で広い設置面積(フットプリント)が必要となる。また、メンテナンス作業が煩雑で作業時間も増大するため、デバイスの生産性が低下してしまう。
【0010】
これに対して、ウエハステージ全体を覆うことなく、投影光学系とウエハとの間の光路空間を実質的にガス置換する方法として、投影光学系とウエハとの間に局所気密化機構を設け、その光路空間(以下、「局所空間」と言う。)だけをパージガスの送風により局所的にガス置換する方法が検討されている。この方法は、ウエハステージ全体を覆う隔壁は必要無いので、装置の小型化やメンテナンス性の向上が期待できる。但し、ウエハ交換時やオフ・アクシス方式のアライメントセンサによるウエハマークの計測時などの、その局所空間の端部の近傍にウエハ又はウエハステージが配置されなくなる期間に、気密性が破れて局所空間内に外気が混入し、また局所空間内の露光ビームを透過する気体が外部に漏れ出すことになる。
【0011】
また、局所空間内のパージガスが外部に漏れ出し、これが拡散等によりウエハステージの位置計測用のレーザ干渉計の光路に達すると、レーザ干渉計の光路の周囲の気体(通常は空気)とパージガスとの屈折率の違いにより、レーザ干渉計の計測値が変動し、その結果、アライメントセンサのベースライン量の計測結果及びウエハマークの位置計測結果も変動して位置合わせ精度が悪化すると共に、走査露光型の露光装置の場合には、同期精度が悪化することになる。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に置換できるメンテナンス性に優れた露光技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの光路の少なくとも一部を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に置換できると共に、その露光ビームを透過する気体が外部に漏れ出すことによるステージの位置計測精度又はアライメントセンサの計測精度の低下を抑制できる露光技術を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の露光方法は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光方法において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられた局所気密化部材(37)をその基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内(ステップ107,108,110,111)に、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給する第2工程(ステップ111)と、その第1期間と異なる第2期間(ステップ113,114,105)に、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整して、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置をその投影光学系を介することなく計測する第3工程(ステップ105)とを有するものである。
【0014】
斯かる本発明によれば、その第1期間内にはその投影光学系とその局所気密化部材とその基板又はその基板ステージとで囲まれた空間が実質的に気密化されている。この第1期間内にその局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給することによって、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に効率的に置換できる。更に、その第2期間に、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整することによって、例えばその第1気体が外部に漏れ出すことによる位置合わせ用マークの計測精度の低下を抑制できる。
【0015】
この場合、一例として、その基板ステージの位置は、その露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測されており、その第1期間内の所定の第3期間にその局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する第1気体を供給する動作と並行して、その局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体が吸引して排気される。
【0016】
これによって、基板ステージの位置計測精度の低下が抑制される。
また、別の例として、その第2工程は、その基板上の複数のその位置合わせ用マークの内でその第3工程で計測されたその所定のマークとは異なる他のマークの位置をその投影光学系を介することなく計測する工程(ステップ107)を更に有する。
【0017】
このように、その第2工程でその局所気密化部材内への第1気体の供給を開始した期間内に、一部の位置合わせ用マークの位置計測を行うことで、アライメント工程と基板を露光する工程との間の待ち時間(局所気密化部材内部が第1気体で完全に置換されるまでの待ち時間)を短縮でき、スループットが向上する。この場合、更に局所気密化部材内部の気体を排気することによって、その局所気密化部材の内部に供給された第1気体が、その基板ステージの位置を計測する光ビームの光路に漏れ込むことを防止でき、マーク計測精度は低下しない。
【0018】
また、その基板上のその複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序が、その第3工程(ステップ105)で計測されるその所定のマークが、上記の他のマーク(ステップ107)よりも先となるように最適化されていることが望ましい。これによって、アライメント工程から基板を露光する工程に殆ど待ち時間無しで移行することができる。
【0019】
また、その第2工程は、その基板の露光を行う工程(ステップ111)を含み、その第2工程のその露光を行う工程(ステップ111)と、その位置合わせ用マークの位置を計測する工程(ステップ107)との間に、そのマスクのパターンの像と、その基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく検出するマーク検出系(32)との位置関係(ベースライン量など)を計測する工程(ステップ109)を更に有することが望ましい。
【0020】
そのマスクのパターン像の位置は、その局所気密化部材内にその第1気体が供給されている状態で計測する必要があるが、本発明によれば、その位置関係の計測を殆ど待ち時間無しで実行できるため、スループットが向上する。
また、一例として、その第2期間は、その窓部(17a)に対向する位置にその基板及びその基板ステージのどちらも存在せず、かつその局所気密化部材(37)の内部へのその第1気体の供給を停止する期間であり、更に、その第2期間は、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を停止している間に、その基板ステージ上のその基板の交換を行う第4期間(ステップ114)を含むことが望ましい。これによって、その基板交換時にその第1気体の拡散が防止できる。
【0021】
また、その第1気体の供給の調整が、その第1気体の供給を停止することである場合に、その第3工程におけるその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給の停止(ステップ112)は、その第2期間よりも前に開始されることが望ましい。これによって、その第1気体の拡散が更に有効に防止できる。
また、その第3工程における、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給の停止とその第2期間との間に、その局所気密化部材の内部へその第1気体とは異なる気体(例えばその第2気体)を供給するようにしてもよい。これによって、その第1気体の拡散の影響が更に軽減される。
【0022】
次に、本発明による第2の露光方法は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光方法において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられた局所気密化部材(37)をその基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内に、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する気体を供給する第2工程(ステップ107〜111)とを有し、その第2工程は更に、その基板の露光を行う工程(ステップ111)と、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測する工程(ステップ107)と、そのマスクのパターンの像とその基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測するマーク検出系(32)との位置関係を計測する工程(ステップ109)とを有するものである。
【0023】
斯かる本発明によれば、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に効率的に置換できる。更に、そのマスクのパターン像の位置は、その局所気密化部材内にその気体が供給されている状態で計測する必要があるが、本発明によれば、その位置関係の計測を殆ど待ち時間無しで実行できるため、スループットが向上する。
【0024】
次に、本発明による露光装置は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光装置において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられて、その基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置される局所気密化部材(37)と、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給する気体供給機構(38,40〜42,43,49,53)と、その基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測するマーク検出系(32)と、その気体供給機構及びそのマーク検出系の動作を制御する制御系(33)とを有し、その制御系は、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内に、その気体供給機構を介してその局所気密化部材の内部にその第1気体を供給し、その第1期間と異なる第2期間に、その気体供給機構によるその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整して、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置をそのマーク検出系を介して計測するものである。
【0025】
本発明によって、本発明の露光方法を実施することができる。
この場合、一例として、その気体供給機構は、その第1期間内の所定の第3期間内に、その第1気体の供給と並行してその局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体を吸引して排気する排気機構(50〜52)を備え、本発明の露光装置は、その基板ステージの位置をその露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測する位置計測系(29X,29Y,30X,30Y)を更に有する。
【0026】
また、別の例として、その第2期間は、その窓部に対向する位置にその基板及びその基板ステージのどちらも存在せず、かつその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を停止する期間であり、更にその第2期間は、そのマーク検出系を介してその基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置を計測する第4期間を含むものである。
【0027】
また、その制御系は、その基板上の複数のその位置合わせ用マークの内でその第2期間内に計測されるその所定のマークとは異なる他のマークの位置をその第3期間内にそのマーク検出系を介して計測することが望ましい。
また、その基板ステージ上に設けられた基準マーク(FM1,FM2)を更に有し、その制御系は、その第3期間内にその基準マークを用いてその投影光学系によるそのマスクのパターンの像とそのマーク検出系との位置関係を計測することが望ましい。
【0028】
また、その気体供給機構は、その局所気密化部材の内部へその第1気体に切り換えてその第1気体とは異なるその第2気体を供給できるように構成(45〜48)されることが望ましい。
また、その制御部は、その基板上のその複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序を、その第2期間内に計測されるその所定のマークが、上記の他のマークよりも先となるように最適化する最適化制御部を備えることが望ましい。
【0029】
また、本発明によるデバイス製造方法は、本発明の露光方法又は露光装置を用いてデバイスのパターンを基板上に転写する工程を有するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。本例は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置で露光を行う場合に本発明を適用したものである。
図1は、本例の投影露光装置の概略構成を示し、この図1において、露光光源として発振波長が真空紫外域の157nmのF2 レーザ光源5が使用されている。なお、露光光源としては、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、Kr2 レーザ(波長146nm)、又はAr2 レーザ(波長126nm)などのレーザ光源の他に、YAGレーザの高調波発生光源や半導体レーザの高調波発生装置なども使用することができる。
【0031】
本例の投影露光装置は、全体としてデバイス製造工場の床1上のクリーンルーム内に設置され、F2 レーザ光源5以外の部分は更にほぼ密閉された箱状容器であるチャンバ2内に収納されている。チャンバ2内には給気管3を介して、温度及び湿度が制御されると共に防塵フィルタ(HEPAフィルタ(high efficiency particulate air−filter)又はULPAフィルタ(ultra low penetration air−filter)等)及びケミカルフィルタを介して清浄化された空気が供給され、チャンバ2内を例えばダウンフロー方式で流れた空気は排気管4を介して例えば工場の排気ガス処理系(不図示)に供給されている。チャンバ2内に供給される空気は、一例として温度が22℃、湿度が40%に制御されている。
【0032】
F2 レーザ光源5で発生した露光ビームとしての波長157nmの紫外パルス光よりなる露光光ILは、チャンバ2内に入射した後、露光装置本体との間で光路をマッチングさせるためのビームマッチングユニット(BMU)6、可変減光器7、レンズ系8A,8Bよりなるビーム整形光学系、オプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ又はホモジナイザ)としてのフライアイレンズ9、可変開口絞り板10、ミラー11、コンデンサレンズ系12、レチクルブラインド機構13、結像用レンズ系15、ミラー16、及び主コンデンサレンズ系17よりなる照明光学系を介して、マスクとしてのレチクルRの回路パターン領域上のスリット状の照明領域を一様な強度分布で照射する。
【0033】
この構成において、可変開口絞り板10は、装置全体の動作を統轄制御する主制御系33からの指令に応じて、照明系の開口絞りを通常照明用の円形絞り、複数の偏心した小開口よりなる変形照明用の開口絞り、又は輪帯照明用の開口絞り等に切り換える。また、レチクルブラインド機構13は、レチクルR上の照明領域を規定するための非走査方向に細長い開口が形成された固定照明視野絞り(固定ブラインド)14Aと、レチクル上の照明領域の走査方向の幅を可変とするための可動ブラインド14Bとを備えている。
【0034】
本例では、照明光学系の内で、可変減光器7から主コンデンサレンズ系17までの部材は、気密室としてのサブチャンバ18内に収納されている。
露光光ILのもとで、レチクルRの照明領域内の回路パターンの像が投影光学系PLを介して所定の投影倍率β(βは例えば1/4,1/5等)で、投影光学系PLの結像面に配置された基板としてのウエハW上のレジスト層のスリット状の露光視野に転写される。なお、レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体とも見なすことができ、投影光学系PLは投影系とも見なすことができる。また、被露光基板としてのウエハWは、例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が200mm又は300mm等の円板状の基板である。本例の投影光学系PLとしては、例えば特開2000−47114号公報に開示されているように、互いに交差する光軸を持つ複数の光学系を持つ反射屈折投影光学系、例えば特願2000−59268号明細書に開示されているように、レチクルからウエハに向かう光軸を持つ光学系と、その光軸に対してほぼ直交する光軸を持つ反射屈折系とを有し、内部で中間像を2回形成する反射屈折投影光学系、又は例えば国際公開第 00/39623 号パンフレットに開示されているように、1本の光軸に沿って複数の屈折レンズと、それぞれ光軸の近傍に開口を有する2つの凹面鏡とを配置して構成される直筒型の反射屈折投影光学系などを使用することができる。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内でレチクルR及びウエハWの走査方向SDに直交する非走査方向(ここでは図1の紙面に垂直な方向)にX軸を取り、走査方向SD(ここでは図1の紙面に平行な方向)にY軸を取って説明する。
【0035】
先ずレチクルRは、レチクルステージ19上に吸着保持され、レチクルステージ19は、レチクルベース20上にY方向に等速移動できると共に、X方向、Y方向、及び回転方向に微動できるように載置されている。レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計22からの計測用レーザビームがレチクルステージ19上の移動鏡21に照射され、レチクル干渉計22は、例えば投影光学系PLの側面に固定された参照鏡(不図示)を基準としてレチクルステージ19(レチクルR)のX方向、Y方向の位置及び回転角を計測し、計測値をレチクルステージ駆動系24及び主制御系33に供給する。レチクルステージ駆動系24は、供給された計測値及び主制御系33からの制御情報に基づいて不図示のリニアモータ等の駆動装置を介して、レチクルステージ19の走査速度、X方向及びY方向の位置、並びに回転角の制御を行う。
【0036】
レチクルステージ19、その駆動装置、及びレチクルベース20よりレチクルステージ系が構成され、レチクルステージ系は気密室としてのレチクル室25内に収納されている。本例ではレチクル室25の側面にレチクル干渉計22が配置されているが、レチクル室25の側面にレーザビームを透過する窓部を設け、その窓の外側(レチクル室25の外部)にレチクル干渉計22を配置してもよい。また、本例のレチクルRのパターン面には、回路パターンをX方向(非走査方向)に挟むように1対又は複数対の図示省略したアライメントマーク(位置合わせ用マーク)としてのレチクルマークが形成されている。レチクルRの回路パターンとレチクルマークとの位置関係の情報は、主制御系33に記憶されている。そして、レチクル室25内のレチクルRの上方の光軸AXをX方向に挟む位置に、レチクルマークを露光光ILと同じ波長(露光波長)の照明光で照明するための1対のアライメント用の照明系23Aが設置されている。なお、図1では、手前側の照明系は図示省略されている。また、照明系23A等を省略して、露光光ILそのものでレチクルマークを照明してもよく、レチクルRの回路パターンの一部をレチクルマークとして用いてもよい。
【0037】
更に、本例の投影光学系PLの鏡筒も気密化されており、投影光学系PL内部の光学素子(レンズ及び反射鏡など)の間の光路空間は密閉されている。
なお、本例のレチクル室25は、照明光学系の大部分を収納するサブチャンバ18のレチクル側の先端部から投影光学系PLの上端部までを覆っているが、レチクル室25とサブチャンバ18との間、及びレチクル室25と投影光学系PLとの間に隙間を設け、これらの隙間を可撓性を有し、かつガスバリヤ性の良好なフィルム状のシール部材で密閉するようにしてもよい。この可撓性のある被覆部材としてのシール部材の使用によって、レチクルステージ19を駆動する際の振動が照明光学系及び投影光学系PLに伝わるのを防止することができる。
【0038】
一方、ウエハWは、不図示のウエハホルダを介してウエハステージ26上に吸着保持され、ウエハステージ26はウエハベース27上に投影光学系PLの像面と平行なXY平面に沿って移動自在に設置されている。ウエハステージ26は、不図示のリニアモータ等を含む駆動装置によってウエハベース27上をY方向に等速移動し、かつX方向及びY方向にステップ移動することができる。この際にウエハステージ26の位置を計測するために、ウエハステージ26の平面図である図5に示すように、ウエハステージ26上面の−X方向及び−Y方向の端部にそれぞれX軸及びY軸の移動鏡29X,29Yが設置され、移動鏡29X,29Yにそれぞれレーザ干渉計よりなるX軸及びY軸のウエハ干渉計30X,30Yから計測用レーザビームLX1,LY1が照射されている。
【0039】
ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームLX1,LY1の中心軸はそれぞれX軸及びY軸に平行に投影光学系PLの光軸AXを通るように設定され、ウエハ干渉計30X,30Yはそれぞれ投影光学系PLの側面の参照鏡(不図示)を基準として、ウエハステージ26のX方向及びY方向の位置を計測する。ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームLX1,LY1は、実際にはそれぞれY方向及びX方向に離れた2本のレーザビームと、Z方向に離れた2本のレーザビーム(図2参照)とを含んで構成され、ウエハ干渉計30X,30Yはウエハステージ26のZ軸の周りの回転角(ヨーイング量)、X軸の周りの回転角(ピッチング量)、及びY軸の周りの回転角(ローリング量)をも計測する。ウエハ干渉計30X,30Yからの計測値は、図1のウエハステージ駆動系31及び主制御系33に供給される。ウエハステージ駆動系31は、供給された計測値及び主制御系33からの制御情報に基づいて不図示の駆動装置の動作を制御することにより、ウエハステージ26の移動速度、並びにX方向及びY方向の位置の制御を行う。
【0040】
図1において、ウエハステージ26にはウエハWのフォーカス位置(Z方向の位置)及び傾斜角を制御するZチルト機構も組み込まれている。また、投影光学系PLの下部側面には、ウエハW表面の3箇所以上の複数の計測点に光軸AXに対して斜めにスリット像を投影する投射光学系と、それらの計測点からの反射光を受光して再結像されたスリット像を撮像する受光光学系とを備え、ウエハW表面のフォーカス位置、及びX軸、Y軸の周りの傾斜角を検出する斜入射光学方式のオートフォーカスセンサ(不図示)が配置されている。このオートフォーカスセンサからの計測情報に基づいて、ウエハステージ26内のZチルト機構がウエハWの表面をオートフォーカス方式及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込む。
【0041】
また、ウエハW上の各ショット領域にはそれまでの露光工程を含むパターン形成工程において、回路パターンと共にアライメントマーク(位置合わせ用マーク)としてのウエハマークが形成されている。例えば所定のウエハマークの位置を検出してウエハW上の各ショット領域のアライメントを行うために、投影光学系PLに関してY軸のウエハ干渉計30Yと反対側の+Y方向に、マーク検出系としてのオフ・アクシス方式のアライメントセンサ32が配置されている。本例のアライメントセンサ32はFIA(Field Image Alignment)方式等の撮像方式であるが、それ以外に回折格子状マークからの干渉光を検出する格子干渉方式、又はドットパターン状のマークと検出光とを相対移動させる所謂レーザ・ステップ・アライメント方式等も使用することができる。投影光学系PLの光軸AX(露光視野の中心)とアライメントセンサ32の光軸BX(検出基準)とを通るXY平面内の直線は、ほぼY軸(走査方向)に平行である。
【0042】
また、図5において、X軸の移動鏡29Xに対してX軸に平行にアライメントセンサ32の光軸BXを通るような計測用レーザビームを照射して、光軸BX(検出基準)でのウエハW又はウエハステージ26のX座標を計測するX軸のアライメント用ウエハ干渉計(不図示)も設置されている。この際に、Y軸のウエハ干渉計30Yからの計測用レーザビームLY1の中心軸はY軸に平行に光軸BXを通過しているため、ウエハ干渉計30YはY軸のアライメント用ウエハ干渉計としても兼用されている。
【0043】
図1に戻り、アライメントセンサ32は、光軸BXを基準としてウエハW上のウエハマーク又はウエハステージ26上の所定の基準マークの像を撮像し、撮像情報を主制御系33内のアライメント信号処理部に供給する。アライメント信号処理部は、その撮像情報を用いて例えば画像処理方式で、そのウエハマーク又はその基準マークの光軸BXに対するX方向、Y方向への位置ずれ量を検出する。この位置ずれ量とこの検出時のアライメント用ウエハ干渉計の計測値とから、そのウエハマーク又はその基準マークのX座標及びY座標が求められる。
【0044】
また、図5に示すように、ウエハステージ26上のウエハWの近くには基準マーク部材55が設置され、基準マーク部材55の表面はウエハWの表面と同じ高さに設定されている。そして、基準マーク部材55の表面には1対のレチクルマークに対応する第1の基準マークとしてのX方向に離れた1対のスリットマークFM1と、オフ・アクシス方式のアライメントセンサ32用の第2の基準マークとしての一つの反射マークFM2とが形成されている。
【0045】
なお、スリットマークFM1は、透過性の微小幅のX方向に長いスリット(又はスリット群でもよい、以下同様)及びY方向に長いスリットよりなり、基準マーク部材55内のスリットマークFM1の底面には、スリットマークFM1を下方に透過する光量を計測する光量センサが設置されている。その光量センサの検出信号は主制御系33内のアライメント信号処理部に供給されている。レチクルRのアライメント時には、照明系23A等でレチクルRに形成されたレチクルマークを照明し、ウエハステージ26をX方向、Y方向に駆動することによって、レチクルマークの投影光学系PLを介した像をスリットマークFM1で相対走査しつつ、上記の光量センサで透過光量を計測する。そして、そのアライメント信号処理部では、例えばその透過光量(検出信号)が最大又は最小になるときのウエハステージ26の座標を検出することによって、1対のレチクルマークの像の位置を求め、これらの位置からレチクルRのパターン像の中心(露光中心)の座標、及びレチクルRの回転角を求める。レチクルRの回転角は例えばレチクルステージ19を回転することによって補正される。
【0046】
スリットマークFM1(第1の基準マーク)の中心と反射マークFM2(第2の基準マーク)の中心とを通る直線は実質的にY軸(走査方向)に平行であり、かつスリットマークFM1の中心と反射マークFM2の中心とのY方向の間隔は、露光中心とアライメントセンサ32の検出基準との設計上の間隔(ベースライン量の設計値)BLに等しく設定されている。また、光軸AXと光軸BXとの間隔も間隔BLにほぼ等しく設定されており、間隔BLの値は図1の主制御系33の記憶部に記憶されている。
【0047】
なお、基準マーク部材55内部のスリットマークFM1の底面に、光量センサの代わりに露光波長の照明光でスリットマークFM1を投影光学系PL側に照明する照明系を設置してもよい。この構成では、レチクルR上部の照明系23A等の代わりに、アライメントセンサとしての1対のレチクルアライメント顕微鏡(以下、「RA顕微鏡」と言う。)が配置され、RA顕微鏡の撮像情報が主制御系33内のアライメント信号処理部に供給される。そして、スリットマークFM1の投影光学系PLを介した像とレチクルマークとをRA顕微鏡で撮像して、そのスリットマークFM1の像とレチクルマークとの位置ずれ量を求めることで、レチクルRのパターン像の中心(露光中心)を求めることができる。
【0048】
また、図5において、本例ではウエハWの表面(基準マーク部材55の表面)と移動鏡29X,29Yの上面とは同じ高さに設定されている。更に、ウエハステージ26の上面において、ウエハW、基準マーク部材55、及び移動鏡29X,29Yを除く部分に、高さをウエハWの表面と同じにするためのシート状の平坦化カバー28が設置されている。このように、ウエハステージ26上のウエハWの周囲の部分の高さをウエハW表面の高さに合わせることによって、後述のように投影光学系PLとウエハWとの間の露光光ILの光路を実質的に局所的に気密化する際の気密性を高めることができる。
【0049】
なお、平坦化カバー28とその内側のウエハWとの間には微小幅の隙間(例えば0.5mm程度)が設けてあり、ウエハWの大きさが基準値より多少大きくとも、又はウエハWをウエハステージ26上にロードする際に或る程度の位置決め誤差が生じても、ウエハWと平坦化カバー28とが接触しないように考慮されている。また、平坦化カバー28と移動鏡29X,29Yとの間、及び平坦化カバー28と基準マーク部材55との間にも、それぞれ僅かの隙間(例えば0.2mm程度)が設けてある。これによって、平坦化カバー28が移動鏡29X,29Y及び基準マーク部材55の位置を僅かでも変位させることが防止されている。
【0050】
なお、移動鏡29X,29Yの上面をウエハWの表面と同じ高さに設定することによって、ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームの高さをウエハWの表面に合わせることができないために、計測値にアッベ誤差が混入する恐れがある。そこで、本例では上記のように、ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームをZ方向に離れた2本のレーザビームを含むように構成して、ウエハステージ26のピッチング量及びローリング量を計測し、これらの計測値に基づいてX方向、Y方向の位置の計測値を補正している。
【0051】
図1に戻り、露光時には、主制御系33の制御のもとで、オフ・アクシス方式のアライメントセンサ32を用いて例えばEGA方式でウエハW上の全部のショット領域のアライメントが行われる。その後、ウエハステージ26をX方向、Y方向にステップ移動してウエハWの一つのショット領域を走査開始位置に移動する動作と、レチクルステージ19を介して露光光ILの照明領域に対してレチクルRを+Y方向(又は−Y方向)に速度Vrで走査するのに同期して、ウエハステージ26を介してウエハWを対応する方向、例えば−Y方向(又は+Y方向)に速度β・Vr(βはレチクルRからウエハWへの投影倍率)で走査露光する動作とを繰り返すことによって、ウエハW上の全部のショット領域がレチクルRのパターン像で露光される。
【0052】
さて、本例では露光ビームとして真空紫外域のF2 レーザ光(波長157nm)を用いているため、露光ビームの光路を含む空間(光路空間)から酸素、水蒸気などの真空紫外光に対して強い吸収性を有する気体を排気(ガスパージ)する必要がある。そのため、その光路空間内の気体を真空紫外光を透過する気体である窒素ガス又は希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)などでガス置換する。そのような透過性の気体の内で実際に露光ビームの光路空間を置換するために使用される気体、即ちパージガスとして、本例では酸素含有率及び水蒸気含有率を極めて低く抑えた窒素ガス(N2 )を使用する。本例のパージガス中の残存酸素濃度及び残存水蒸気濃度は共に1ppm以下に抑えてある。窒素ガスは安価で扱い易いという利点がある。
【0053】
なお、露光ビームの波長が150nm程度以下になると、窒素ガスでも透過率が低下するため、パージガスとしては希ガス、例えばヘリウム又はネオン等を使用することが望ましい。特にヘリウムは、熱伝導率が窒素ガスの6倍程度で、屈折率の気圧変化に対する変動率が窒素ガスの1/8倍程度であるため、結像特性が安定になる利点もある。また、波長が200〜150nm程度の場合であっても、結像特性の安定化を重視するような場合には、パージガスとしてヘリウムを使用してもよい。
【0054】
本例においては、F2 レーザ光源5からウエハWまでの露光光ILの光路空間の全部をパージガスで置換するために、不図示のパージガス供給装置から配管35A,35B,及び35Cを介してそれぞれ照明光学系のサブチャンバ18、レチクル室25、及び投影光学系PLの内部に温度制御されて、かつ防塵フィルタ及びケミカルフィルタを介して不純物が除去された高純度のパージガスが供給されている。本例のパージガス(第1気体)の温度は、チャンバ2内に供給される空気(第2気体)と同じ温度である22℃に制御されている。そして、サブチャンバ18、レチクル室25、及び投影光学系PLの内部の気体は、それぞれ配管36A,36B,及び36Cを介して不図示の工場の排気ガス処理系に排気されている。パージガスの利用効率を高めるために、その排気ガス処理系は、排気された気体から回収したパージガスをそのパージガス供給装置に戻すようにしてもよい。
【0055】
更に、投影光学系PLとウエハWとの間の空間は露光光路であるため、その空間もパージガスで置換する必要がある。そこで、本例では投影光学系PLの下部に、露光時に投影光学系PLとウエハWとの間を実質的に気密化する局所気密化部材37を設けている。また、この局所気密化部材37の内部及び近傍の気体を排気すると共に、局所気密化部材37の内部にパージガスを供給する機構も設けられている。局所気密化部材37及びパージガスの給排気機構(本発明の気体供給機構)から局所気密化機構が構成されている。
【0056】
図2は、図1の投影露光装置の局所気密化機構を示し、図3(A)は、図2中の局所気密化部材37の底面図を示し、図2において、局所気密化部材37は投影光学系PLの下端とウエハWとの間の露光光路の周囲を、光路自体を遮蔽することなく、かつウエハW及びウエハステージ26に接触することなく取り囲んでいる。即ち、局所気密化部材37の光軸AXを中心とした領域には、露光光ILを通過させるための開口部37aが形成されている。また、局所気密化部材37の内部に開口部37aをウエハWの走査方向SD(Y方向)に挟むように、パージガスを供給するための給気孔37b及びその内部の気体を排気するための排気孔37cが設けられている。更に、局所気密化部材37の底面は、ほぼウエハWの表面に平行であると共に、ウエハWの面積と同程度の面積でウエハWの走査方向SD(Y方向)を短辺方向とする長方形の平面に加工されている。
【0057】
図3(A)に示すように、局所気密化部材37の開口部37aの端面は、露光光によってウエハW上に投影されるX方向に細長いスリット状の露光視野34を余裕をもって囲むようにX方向に細長い長方形とされている。また、給気孔37b及び排気孔37cはそれぞれ先端部の幅が広くなるように形成され、これによって局所気密化部材37の内部にパージガスを走査方向に一様な分布で送風できるように構成されている。また、局所気密化部材37の底面には、開口部37aの端面を囲むように気体吸引用の閉じた吸引溝37dが形成され、この吸引溝37dは排気孔37cに連通している。
【0058】
なお、局所気密化部材としては、図3(B)に示すように、底面の外形がほぼ円形又は非走査方向(X方向)に細長い楕円形の部材54を用いてもよい。この部材54においても、露光視野34を囲むように端面が楕円形の開口部54aが形成され、それを囲むように例えば円形又は楕円形の閉じたループ状の吸引溝54dが形成されている。
【0059】
図2に戻り、局所気密化部材37の底面とウエハWの表面との間隔は、ウエハWの走査時及びステップ移動時に局所気密化部材37がウエハWに接触しない範囲で、即ちウエハWの走査露光時の操作性が低下しない範囲で、できるだけ狭い間隔、一例として3mm程度に設定されている。上述のように、本例ではウエハW、移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55(図5参照)、及び平坦化カバー28の上面は互いに同じ高さ(同一平面上)に設定されている。そのため、局所気密化部材37の底面は移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、平坦化カバー28及びウエハステージ26自体にも接触することがない。
【0060】
なお、不図示であるが、本例の局所気密化部材37には、上述の斜入射光学方式のオートフォーカスセンサからウエハWに照射される検出光、及びウエハWから反射される検出光を通過させるための透過部分が形成されている。この透過部分のうち、局所気密化部材37の側面に設ける透過部には、気密性を保ったまま上記オートフォーカス用光束を透過するガラス窓等の透過部材が設置される。また、その透過部分のうち、ウエハWに対向する面には、例えば上記と同様なガラス窓か、上記の露光光透過用開口部37aと同様な開口部を設置する。また、その開口部は、上記の露光光透過用開口部37aと連続した開口部とすることもできる。
【0061】
本例の局所気密化機構において、パージガスとしての高純度の窒素ガスはガスボンベ38内に蓄積されている。なお、ガスボンベ38の代わりに、工場の配管施設から直接パージガスを取り入れてもよく、又は窒素ガスを液化して貯蔵する貯蔵設備を用いて、使用時に気化するようにしてもよい。ガスボンベ38から供給される気体は、電磁式開閉バルブ付きの配管39A、送風ファン40、温度制御装置41、フィルタ部42、及び配管39Bを介して高純度で温度制御されたパージガスとして気体切り換え部43の第1給気部に供給される。また、例えば図1のチャンバ2内に給気管3を介して供給される空気の一部が、電磁式開閉バルブ付きの配管44A、送風ファン45、湿度制御装置46、温度制御装置47、フィルタ部48、及び配管44Bを介して、湿度(水蒸気濃度)及び温度が制御された極めて清浄な空気として気体切り換え部43の第2給気部に供給される。気体切り換え部43に供給されるパージガス(第1気体)及び空気(第2気体)の温度も、それぞれチャンバ2内に供給される空気(第2気体)と同じ温度(本例では22℃)に制御されている。更に、気体切り換え部43に供給される空気の湿度はチャンバ2内に供給される空気と同じ湿度に制御されている。また、フィルタ部42及び48は、それぞれHEPAフィルタ等の防塵フィルタとケミカルフィルタとを備えている。配管39A,44Aの電磁式開閉バルブ、送風ファン40,45、湿度制御装置46、温度制御装置41,47、及び気体切り換え部43の動作は空調制御系53によって制御され、空調制御系53の動作は主制御系33によって制御されている。
【0062】
気体切り換え部43は、パージガス若しくは空気の何れかを局所気密化部材37内部へ送風する送風モードか、又は局所気密化部材37内部への気体の送風を停止する送風停止モードに設定することができる。送風停止モード時には、配管39A,44Aの開閉バルブは閉じられる。送風モード時に気体切り換え部43で選択された気体が、排気部から配管49及び局所気密化部材37の給気孔37bを介して局所気密化部材37内部に送風(供給)される。また、局所気密化部材37内部の気体、及び局所気密化部材37の底面の吸引溝37dから吸引された気体が、排気孔37c、配管50、吸引用のファン51、及び配管52を介して不図示の工場の排気ガス処理系に排気されている。吸引用のファン51の動作も空調制御系53によって制御されている。なお、パージガスの利用効率を高めるために、ガスボンベ38と送風ファン40との間に回収したパージガスを純化してガスボンベ38からの気体と混合する気体混合部を設け、その排気ガス処理系は、排気された気体から回収したパージガスをその気体混合部に戻すようにしてもよい。
【0063】
ところで、局所気密化部材37と投影光学系PLとの間は、必ずしも接触して気密化させる必要は無く、フィルム状のシール部材を介して気密化したり、非接触の差動排気系を設けて実質的に気密化する方法を採用しても良い。また、局所気密化部材37と投影光学系PLとを直接気密化するのではなく、両者と気密を保った他の構造部材を介して気密化を達成しても良い。
【0064】
本例の図2に示す局所気密化機構では、基本的な動作として、吸引用のファン51は常時作動しており、局所気密化部材37の内部、開口部37aの近傍の空間、及び吸引溝37dの近傍の空間の気体(パージガス、空気、又はこれらの混合気体)は常時配管50を介して排気されている。なお、吸引用のファン51による気体の吸引動作を、局所気密化部材37の内部へパージガスを供給する期間(又はこの期間を含む所定期間)のみとすることも可能である。また、開口部37aの端部(窓部)に対向する位置にウエハW又はウエハステージ26(本例では実質的に移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、及び平坦化カバー28の上面)が位置している期間(第1期間)には、投影光学系PLと、局所気密化部材37と、ウエハW又はウエハステージ26とで囲まれて露光光が通過する空間(以下、「局所気密化空間」と呼ぶ。)は実質的に気密化されている。また、その第1期間内にウエハWに対する露光が行われる。そこで、その第1期間又はその第1期間内の所定期間(第3期間で、少なくともウエハWに対する走査露光が行われる期間)には、気体切り換え部43を配管39B側に切り換えて、配管49から局所気密化部材37内部の局所気密化空間にパージガスを供給する。この際に、配管50からの排気量と配管49からの給気量とはほぼ同程度か、又は給気量が或る程度多くなるように設定されている。これによって、F2 レーザ光源5からウエハWまでの全部の光路空間がパージガスによって置換されて、高い照明効率が得られるため、高いスループットが得られる。
【0065】
また、そのように局所気密化空間にパージガスを供給すると、局所気密化部材37とウエハWとの間の非接触の隙間からそのパージガスが次第に漏れ出す恐れがある。しかしながら、本例では、そのように漏れ出すパージガスは、局所気密化部材37の底面の吸引溝37dから配管50側に吸引されているため、パージガスがウエハステージ26の周囲に漏れ出して、ウエハ干渉計30X,30Yの計測値に変動を与える等の悪影響は生じない。
【0066】
一方、局所気密化部材37の開口部37aの端部に対向する位置にウエハW及びウエハステージ26(本例では実質的に移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、及び平坦化カバー28の上面)が何れも存在しない期間(第2期間で、開口部37aの端部の一部に対向する位置にウエハステージ26が存在する期間を含む)には、パージガスが開口部37aの端部から外部に流出する恐れがある。この場合、空気及びパージガスとしての窒素の屈折率(0℃、1気圧換算)は以下の通り異なっている。
【0067】
空気の屈折率:1.000292
窒素の屈折率:1.000297
なお、パージガスとして例えばヘリウムを使用する場合のヘリウムの屈折率は、以下のように窒素と比べて更に大きく空気の屈折率と異なっている。
ヘリウムの屈折率:1.000035
このように流出したパージガスは、空気とは屈折率が異なるため、これがウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームの光路に至ると、ウエハ干渉計30X,30Yの計測値が変動し、位置合わせ精度や同期精度が悪化してしまう。但し、その局所気密化部材37の内部空間の気密性がなくなる第2期間内にはウエハWの露光も行われない。そこで、本例の基本的な動作として、その第2期間には、パージガスが局所気密化部材37の周囲に漏れ出すのを防止するために、第1の方法として局所気密化部材37内へのパージガス及び空気の供給を停止(調整の一例)する。また、第2の方法として、その第2期間又はその第2期間内の所定期間には、気体切り換え部43を配管44B側に切り換えて、配管49から局所気密化部材37の内部に空気を供給する。なお、例えば上記の第1期間内にウエハWの露光が終わったような場合には、その第1期間内でも局所気密化部材37内へのパージガス及び空気の供給を停止するか、又は局所気密化部材37の内部に空気を供給するようにしてもよい。
【0068】
続いて、本例の投影露光装置におけるウエハマークの計測動作と局所気密化部材37内部へのパージガスの送風動作との具体的な関係の一例につき、図4を参照して説明する。
図4(A),(B)は、図1中のウエハWの載置されたウエハステージ26を示す平面図であり、この図4(A),(B)において、ウエハW上の各ショット領域にはそれぞれウエハマークが付設されている。その内でウエハ中心を中心とした円周をほぼ等角度間隔で8分割した位置の近傍に配列された8個のウエハマークM1〜M8が、例えばEGA方式でアライメントを行うための計測対象マークとして選択されている。そして、図4(A)は、その内の最も+Y方向に位置する(露光時に最もアライメントセンサ32に近い)ウエハマークM5がオフ・アクシス方式のアライメントセンサ32の直下(検出領域)に移動して、位置計測動作中の状態を表わしている。このように、ウエハステージ26の移動により、ウエハマークM5をアライメントセンサ32の直下に配置した状態では、投影光学系PLの光軸AX(露光視野の中心)を囲むように配置される局所気密化部材37の露光光透過用の開口部37aに対向する位置(開口部37aの直下領域で、以下、「対向部」とも呼ぶ。)にはウエハWが存在して、上記の第1期間内であるため、局所気密化部材37内のパージガスが外部に漏れ出すことは実質的にない。
【0069】
一方、図4(B)は、その内の最も−Y方向に位置する(露光時に最もアライメントセンサ32から離れた)ウエハマークM1の位置計測を行うために、ウエハマークM1をアライメントセンサ30の直下に移動した状態を示している。この図4(B)の状態は、開口部37aの対向部にはウエハWも移動鏡29X,29Yを含むウエハステージ26も存在しない、上記の第2期間内であるため、図2の局所気密化部材37内にパージガスを送風した場合、パージガスが外部に漏れ出してしまう。そして、パージガスと空気との屈折率差が計測用レーザビームLY1の光路長を変動させ、図5のウエハ干渉計30YによるウエハマークM1のY方向の位置計測精度が悪化する恐れがある。なお、図4(A),(B)では、アライメントセンサ32の光軸BXを基準とするウエハステージ26のX座標は、光軸BXをX方向に通過する計測用レーザビームを用いるX軸のアライメント用ウエハ干渉計(不図示)によって高精度に計測されている。
【0070】
本例では、このように局所気密化部材37の開口部37aの対向部にウエハWもウエハステージ26も存在しない状態となった場合には、図2の空調制御系53が図2中の気体切り換え部43を送風停止モードに設定して、局所気密化部材37内部へのパージガスの供給を停止する。これにより、上記のようにパージガスが計測用レーザビームLY1の光路に漏れ出して位置計測精度を悪化させる恐れを低減することができる。
【0071】
なお、図2の主制御系33は、ウエハ干渉計30Yの計測値や、予め入力されたウエハステージ系の構造データ等から、ウエハステージ26がどの位置に移動すると開口部37aからのパージガス漏れが発生するかを判別することができる。主制御系33は、パージガス漏れの発生が予想される位置(領域)へのウエハステージ26の移動に先立って、空調制御系53を介してパージガスの供給を停止することが望ましい。
【0072】
上記の実施の形態では、局所気密化部材37内部に残存していたパージガスが、拡散により計測用レーザビームLY1の光路に漏れ出す可能性はある。しかしながら、局所気密化部材37の内部容積を微小量とする設計を採用すれば、残存気体量を僅かにできるため、ウエハ干渉計30Yの計測精度の悪化を極めて僅かに抑えることができる。但し、僅かの精度悪化も問題になる場合には、パージガス漏れの発生が予想される位置へのウエハステージ26の移動に先立つ上記パージガスの供給停止の後に、気体切り換え部43を作動させて、局所気密化部材37の内部に配管44Bから供給される空気を送風して、開口部37aの対向部からウエハW及びウエハステージ26の何れもが存在しなくなる前に、局所気密化部材37内部の気体を空気に置換しておくことが、更に望ましい。なお、この空気は、例えば22℃の一定温度に温度制御されたものであり、また一定湿度に制御され、塵埃や有機物の含有量が所定濃度以下になるように制御された空気である。
【0073】
なお、上述の局所気密化部材37内部へのパージガスの供給停止や空気送風への切り換えは、上記のウエハW上のウエハマークM1〜M8の計測動作時に限ったことではなく、ウエハWへの露光動作中やウエハWの交換動作時についても同様に適用可能である。但し、露光動作時及び露光動作からウエハWの交換動作に移る際(ウエハWの露光終了時)には、上記パージガスの供給停止や空気の送風への切り換えは、ウエハWへの露光が完了してから行うべきであることは言うまでもない。
【0074】
ところで、積極的な送風によっても或いは拡散によってでも、一度上記局所気密化部材37の内部に空気が入ると、その状態からその空気中の酸素、水蒸気を再度パージする(ガス置換する)には、或る程度の時間は必要になる。そのガス置換に必要な時間は、局所気密化部材37の内部容積や送風するパージガスの流量にも依るが、実用的には4sec から8sec 程度である。ウエハマークの位置計測順序に依っては、最後に計測するマークが、図4(B)のウエハマークM1のようにこれをアライメントセンサ32の計測位置に移動すると、投影光学系PLの光軸AX(露光中心)を囲むように位置する局所気密化部材37の開口部37aの対向部に、ウエハWもウエハステージ26も存在しなくなる位置にあるマークの場合には、そのマークの位置計測後、4sec から8sec は、露光動作に入れない場合も出てくる。そして、この時間は単なる待ち時間となって、露光装置の処理能力(スループット)を低下させてしまう。
【0075】
一方、最近の投影露光装置では、1枚のウエハ上の8個程度のウエハマークの位置を計測するのに要する時間も4sec から8sec 程度である。そこで、主制御系33が備える最適化制御部で、ウエハW上の1群のウエハマークM1〜M8の計測順を最適化することで、上記空気や水蒸気のガス置換とウエハマークの位置計測とを或る程度並列処理することが可能となり、上記待ち時間を実質的に削減し、スループットの低下を防止することが可能となる。
【0076】
以下、ガス置換のための待ち時間を短縮する位置計測シーケンスの一例につき、図6のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ウエハW上のウエハマークM1〜M8の位置計測は、ウエハローダ系(不図示)によるウエハWの交換の後、露光動作の開始前に行なう。ウエハ交換時のウエハステージ26の位置は、交換するウエハと投影光学系PLとの機械的な干渉を避けるために、ウエハWが投影光学系PLの中心から外れる方向に移動する。従って、ウエハ交換時のウエハステージ26の位置は、例えば図4(B)に示した如き位置であり、投影光学系PLの下部に設けられた局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハWもウエハステージ26もなく、局所気密化部材37内部は、拡散により空気が混入しているか、又は積極的に空気が送風された状態となっている。
【0077】
実際に例えば1ロットのウエハに露光を行う際には、露光開始前にウエハマークの計測順序を求めておく必要がある。そのため、図6のステップ101において、図2の主制御系33は、オペレータが入力した各ウエハマークM1〜M8の座標値、予め入力されている露光装置固有のウエハステージ26の大きさの情報、及びアライメントセンサ32の検出基準(光軸BX)と投影光学系PLの露光視野との位置関係等の露光データから、アライメントセンサ32による各ウエハマークM1〜M8の計測に際して、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にウエハW又はウエハステージ26が存在するか否かを判定する。
【0078】
そして、主制御系33は、計測対象のウエハマークM1〜M8中から、計測時に開口部37aの対向部にウエハW及びウエハステージ26のどちらもが存在しなくなるマーク群(以下、「前半マーク群」と呼ぶ。)を選び、これらのマーク群を計測順序の前半に配列する。そして、それ以外のマーク群(以下、「後半マーク群」と呼ぶ。)を計測順序の後半に配列する。
【0079】
その後のステップ102において、主制御系33は、その前半マーク群と後半マーク群との間では、その計測順序を入れ替えることなく、合計の位置計測時間が最短になるように、ウエハマークの計測順序を最適化する。なお、この最適化に際しては、全てのウエハマークの計測後に、ウエハW上のどの位置にあるショットを最初に露光するかの情報も加味して行うことが望ましい。
【0080】
例えば、図4(A),(B)に示したウエハWでは、上記判定過程において、ウエハマークM1,M2,M8は、アライメントセンサ32でこれを計測する際に開口部37aの対向部にウエハW及びウエハステージ26がどちらも存在しなくなる前半マーク群であり、それ以外のウエハマークM3〜M7は、上記計測時にも局所気密化部材37内部の気密性が実質的に保たれる後半マーク群であることが判明する。
【0081】
そこで、主制御系33は、3個のウエハマークM1,M2,M8(前半マーク群)をマーク計測順の前半に、5個のウエハマークM3〜M7(後半マーク群)をそのマーク計測順の後半に設定し、前半マーク群と後半マーク群との間ではマーク計測順を入れ替えることなく、全マークの計測時間が最小になるように各マークの計測順を最適化する。この場合、計測順(順列)の総数Sは、次のように前半マーク群の計測順(順列)の総数である6(= 3P3 )通りと、後半マーク群の計測順(順列)の総数である120(= 5P5 )通りとの積である720通りとなる。
【0082】
S= 3P3 × 5P5 =6×120=720 …(1)
主制御系33は、そのS通り(ここでは720通り)の計測順の全てについてそれぞれマーク計測時間(ウエハステージ26の移動時間と実際にアライメントセンサ32でマークを計測する時間との総和)を計算し、そのマーク計測時間が最短になる計測順を採用すれば良い。
【0083】
また、ウエハW上の最初に露光するショット領域の露光位置も加味して最適化する場合には、上記720通りの計測順でのマーク計測時間に、最終計測マークから最初に露光するショット領域ヘの移動時間も加えた処理時間が最短になる計測順を選べば良い。図4(A),(B)に示したウエハWでは、ウエハW上で左上のショット領域SAが最初の露光ショットである場合、ウエハマークM1〜M8の計測順を、M2→M1→M8→M7→M6→M5→M4→M3の順とするのが最適である。この例では、最後に計測するウエハマークM3は、このウエハマークM3がアライメントセンサ32の計測位置に在るときに、ウエハW上で最初に露光するショット領域SAが露光視野中心(投影光学系PLの光軸AX)に最も近くなるように選択されている。
【0084】
上記の如く計測順を決定した後、ステップ103で局所気密化部材37内部へのパージガスの送風を停止して(空気を送風してもよい)、ステップ104で1ロットの先頭のウエハWがウエハステージ26上にロードされる。次のステップ105において、主制御系33は、ウエハステージ26を駆動して、上記のように決定された最初のウエハマークM2をアライメントセンサ32の計測位置(光軸BXの近傍)に移動して、そのウエハマークM2の位置を計測する。続いて、ウエハマークM1,M8を順次アライメントセンサ32の計測位置に移動し、これらのウエハマークの位置計測を行なう。
【0085】
前述のように、この状態では、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハWもウエハステージ26も無いため、局所気密化部材37内部へのパージガスの送風は、気体切り換え部43の操作により遮断されている。
次に、ステップ106において、主制御系33はウエハステージ26を駆動して、ウエハマークM7をアライメントセンサ32の計測位置に移動し、このウエハマークM7の位置を計測する。この状態では、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハステージ26(移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、平坦化カバー28を含む)が存在しており、局所気密化部材37内部の局所気密化空間(投影光学系PLとウエハWとの間の露光光の光路空間)は実質的に気密化(外部との間で気体の流通が殆ど無い状態化)されている。また、前述のマーク計測順の最適化の結果、これ以降ウエハWへの露光が終了するまでの動作の間、開口部37aの対向部からウエハW又はウエハステージ26が存在しなくなることはない。
【0086】
そこで主制御系33は、空調制御系53を介して気体切り換え部43を駆動して、局所気密化空間へのパージガスの送風を開始する。次のステップ107において、その送風による局所気密化空間のガス置換と並行して、残るウエハマークM6,M5,M4,M3の計測と、ウエハマークM1〜M8の位置計測結果に基づくウエハW上の全部のショット領域の配列座標の算出(ウエハアライメント)とを行う。次のステップ108において、ベースライン計測を行うかどうかを判定する。先頭のウエハWの場合、又は所定枚数のウエハの露光が終わっている場合には、ステップ109に移行してベースライン計測を行った後(詳細後述)、動作はステップ110に移行する。一方、それ以外のウエハの場合には、動作はステップ108から直接ステップ110に移行して、ベースライン量としてはそれまでに計測された最新の計測値が使用される。
【0087】
そして、ステップ110において、主制御系33はウエハ上の全部のショット領域の配列座標をベースライン量(最新の計測値)で補正する。次のステップ111において、補正された配列座標を用いてウエハステージ26を移動することによって、ウエハW上で最初に露光するショット領域SAが投影光学系PLによる露光視野の手前の走査開始位置に設定される。この際に本例では、ステップ106から局所気密化部材37内部の局所気密化空間へのパージガスの送風が開始されているため、ステップ111の開始前に局所気密化空間はパージガスで完全に置換されている。その結果、局所気密化空間をパージガスでほぼ完全に置換するのに要する時間の大部分(或いは全て)を、投影露光装置が単に待機している待ち時間から除外することが可能となり、投影露光装置の処理能力の低下が、大幅に或いは完全に防止できる。
【0088】
また、その後で行われるショット領域の走査露光に際しては、投影光学系PLの下部の局所気密化空間は高純度のパージガスで満たされているため、高い照明効率で露光を行うことができる。以上の工程に続いて、ウエハW上の残りのショット領域ヘの露光が行われる。その後、ステップ112において、主制御系33は空調制御系53を介して気体切り換え部43を駆動して局所気密化部材37内部へのパージガスの送風を停止する。なお、そのようにパージガスの送風を停止する代わりに、気体切り換え部43を駆動して局所気密化部材37内部へ空気の送風を開始してもよい。
【0089】
次のステップ113において、未露光のウエハがあるかどうかが判定され、未露光のウエハがある場合には、ステップ114においてウエハ交換が行われる。即ち、ウエハステージ26は、前述のウエハ交換位置に移動して、不図示のウエハローダ系により、露光済みのウエハWが次のウエハに交換される。その後、動作はステップ105に戻り、次のウエハに対しても、上記と同様のシーケンスによりウエハマークの位置計測と露光を行なう。なお、複数のウエハマークの計測順の最適条件は、同様のマーク配列を有するウエハに対しては同様の結果となるので、上記の計測順の最適化は、同種のウエハの処理(即ち、1ロットのウエハの処理)に対しては、その最初の1枚目のウエハの処理時にのみ行なえば良い。そして、ステップ113において、未露光のウエハが無くなった時点で露光工程が終了する。
【0090】
上述のように本例によれば、ウエハ交換に伴なって局所気密化部材37の内部空間へ空気(酸素、水蒸気を含む)が混入した後、その内部空間内をパージガスで再度置換する動作を、ウエハ上のウエハマーク群の内の半分程度のマークの位置計測動作と並行して行なうことができるため、そのパージガスで置換するのに要する時間による投影露光装置の処理能力の低下を最低限に抑えることが可能になる。
【0091】
なお、上記の1ロットの先頭のウエハの露光前や、ロット内で所定枚数のウエハに露光する毎に、上記のステップ109において、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影像の中心(露光中心)と、アライメントセンサ32の検出基準との間隔(ベースライン量)を正確に計測する必要がある。ベースライン計測時には、図5に示すように、ウエハステージ26を移動して、基準マーク部材55上のスリットマークFM1の中心及び反射マークFM2の中心をそれぞれ投影光学系PLの光軸AX及びアライメントセンサ32の光軸BXにほぼ一致させる。そして、上述のようにアライメントセンサ32を用いて静止状態で、検出基準からの反射マークFM2のX方向、Y方向への位置ずれ量を計測する。次に、図1の照明系23A等でレチクルRのレチクルマークを照明した状態で、ウエハステージ26をX方向、Y方向に僅かに移動しながら、スリットマークFM1及びこの下の光量センサを用いて、その静止状態でのスリットマークFM1の位置に対するレチクルRの露光中心のX方向、Y方向への位置ずれ量を計測する。これらの計測値及び予め入力されているマークFM1,FM2の間隔BLより、主制御系33はベースライン量を算出することができる。
【0092】
従来の露光装置では、1ロットの先頭のウエハにおいて、ウエハ装填(ローディング)の前か、ウエハ装填後のウエハマークの位置計測の前に、上記ベースライン計測を行なうのが一般的であった。
しかし、上記ベースライン計測において、レチクルR上のパターンの投影像とスリットマークFM1との位置関係を計測する際には、スリットマークFM1が露光波長の真空紫外光で照明されるため、投影光学系PLとスリットマークFM1との間の光路空間、即ち局所気密化部材37の内部空間(局所気密化空間)が、パージガスによって置換されている必要がある。
【0093】
図5に示した通り、ベースライン計測を行なう状態では、投影光学系PLの下部に配置される局所気密化部材37の開口部37aの対向部には、スリットマークFM1や移動鏡29Xを含むウエハステージ26が配置されるので、局所気密化部材37内部を実質的に気密化することは可能である。但し、ウエハ装填(又は交換)の直後にベースライン計測を行なうものとすると、図5のベースライン計測位置へのウエハステージ26の移動後、局所気密化部材37内部のガス置換が完了するまで、露光波長の照明光を用いた計測は待たなければならない。これによっても露光装置の処理能力が低下してしまう。特に所定枚数のウエハ処理毎にベースライン計測を行なう場合(インターバル・ベースライン計測)には、その処理能力への影響は非常に大きくなる。
【0094】
そこで、本例では、上述のウエハW上のウエハマークの位置計測の後に、ベースライン計測を行なうものとする。即ち、上述のシーケンスによってウエハマークの位置計測中に局所気密化部材37内部のパージガスによる置換を完了させ、ガス置換が完了した状態で、ウエハステージ26を移動して、投影光学系PLの光軸AXをほぼスリットマークFM1と一致させ、アライメントセンサ32の検出基準をほぼ反射マークFM2と一致させて、ベースライン計測を行なう。
【0095】
これによりベースライン計測のために必要なガス置換時間を省略でき、処理能力の低下なくベースライン計測及びインターバル・ベースライン計測を行うことが可能になる。
なお、上記の実施の形態では、上記の第1期間と異なる第2期間、例えば局所気密化部材37の開口部37a(窓部)の対向部からウエハW及びウエハステージ26がいずれも存在しなくなる期間には、局所気密化部材37の内部へのパージガス(第1気体)の供給を停止している。しかしながら、その際にそのパージガスの供給を完全に停止するのではなく、ウエハステージ26の位置計測精度を悪化させない程度に、そのパージガスの流量を抑制するような構成を採用してもよい。
【0096】
なお、上記の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する場合、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施の形態の投影露光装置によりレチクルのパターンをウエハに露光するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0097】
また、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をすると共に、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより本実施の形態の投影露光装置を製造することができる。なお、投影露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0098】
また、上記の実施の形態において、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでもいい。更に、本発明は、走査露光型の投影露光装置で露光を行う場合のみならず、ステッパー等の一括露光型の投影露光装置で露光を行う場合にも同様に適用できることは言うまでもない。
なお、上記の実施の形態の投影露光装置の用途としては、半導体素子製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド、又はDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのレチクルパターンが形成されたレチクル(フォトマスク等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0099】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、投影光学系から基板までの露光ビームの光路を含む空間を、基板及び基板ステージに非接触の部材で覆うようにしている。従って、例えば真空紫外域の露光ビームで露光を行う場合に、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく必要な期間に、その光路を含む空間を局所的に露光ビームを透過する第1気体で実質的に置換することができ、基板上での露光ビームの照度が低下しない。
【0101】
また、本発明を露光装置に適用した場合には、メンテナンス性に優れた小型で軽量な露光装置を実現できる。
また、局所気密化部材の窓部に対向する位置に基板及び基板ステージが存在しない期間内に第1気体の供給を停止して、所定の位置合わせ用マークの位置をオフ・アクシス方式で計測することによって、基板ステージの位置計測用の干渉計の光路への第1気体の混入を防止できるため、マーク位置の計測精度ひいては位置合わせ精度、及び同期精度の悪化を防止することができる。
【0102】
また、局所気密化部材の窓部に対向する位置に基板又は基板ステージが存在する期間内で第1気体を供給している期間内に、一部の位置合わせ用マークの位置をオフ・アクシス方式で計測するか、又はマーク検出系の位置関係(ベースライン量など)の計測を行うことによって、マーク位置の計測精度の低下を抑制した状態で、アライメント工程から基板を露光する工程に移行までの待ち時間を短縮して、露光工程のスループットを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の投影露光装置を示す一部を切り欠いた概略構成図である。
【図2】図1の投影露光装置の局所気密化機構を示す一部を切り欠いた図である。
【図3】(A)は図2中の局所気密化部材37を示す底面図、(B)は局所気密化部材の別の例を示す底面図である。
【図4】(A)は図1のウエハステージ26を示す平面図、(B)は図4(A)の状態からウエハステージ26が移動した状態を示す平面図である。
【図5】ベースライン計測時の図1のウエハステージ26を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるアライメント及び露光シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…チャンバ、18…サブチャンバ、19…レチクルステージ、25…レチクル室、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、26…ウエハステージ、30X,30Y…ウエハ干渉計、32…アライメントセンサ、37…局所気密化部材、43…気体切り換え部、55…基準マーク部材、M1〜M8…ウエハマーク
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体集積回路、液晶ディスプレイ、又は薄膜磁気ヘッド等の各種デバイスを製造するためのリソグラフィ工程でマスクパターンを投影光学系を介して基板上に転写するために使用される露光方法及び装置、並びにその露光方法を用いるデバイス製造方法に関し、特に露光ビームとして波長200nm程度以下の紫外光を使用する場合に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路等を製造するためのリソグラフィ工程で、マスクとしてのレチクル(又はフォトマスク等)のパターンを、被露光基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上に縮小露光して転写する際に使用される一括露光型又は走査露光型の投影露光装置においては、半導体集積回路等の微細化に対応するために、その露光波長がより短波長側にシフトして来ている。現在、その露光波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長の実質的に真空紫外域のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、真空紫外域でも更に短波長の波長157nmのF2 レーザや、波長126nmのAr2 レーザ等の露光光源を使用する投影露光装置の開発も行なわれている。
【0003】
このような真空紫外域で更に波長が180nm程度以下の光は、大気中の酸素や水蒸気等によって激しい吸収を受けるため、そのような光を露光ビームとして使用する投影露光装置の光路空間は、窒素や希ガス等の露光ビームを透過する所定の気体(パージガス)で置換(ガス置換)する必要がある。例えば、F2 レーザを露光ビームとする投影露光装置では、露光光源からウエハに至るまでの光路の大部分で、残存酸素濃度を1ppm程度以下に抑える必要があると言われている。
【0004】
また、半導体集積回路等の集積度の向上や歩留りの向上には、解像度だけでなくパターン間の相互の位置合わせ精度も非常に重要である。半導体集積回路の場合には、ウエハ上に微細パターンを例えば30層以上形成する必要があり、これらの各層のパターンの間には、最小解像度の1/3以内程度の高い位置合わせ精度が要求される。層間の位置合わせは、アライメントセンサにより、それまでの工程でウエハ上に回路パターンと共に転写されたアライメントマーク(ウエハマーク)の位置を計測し、この計測情報から推定されるその回路パターンの位置に合致するように、新しい層の回路パターンを転写することにより行われる。
【0005】
アライメントセンサには、投影光学系の少なくとも一部を使用するTTR(Through The Reticle )方式やTTL(Through The Lens)方式もあるが、要求されるアライメント精度の高度化に伴ない、最近では投影光学系とは別に設けた専用のアライメントセンサ、即ちオフ・アクシス方式のアライメントセンサが主流となっている。
【0006】
このオフ・アクシス方式のアライメントセンサの検出基準位置と、投影光学系の露光視野の中心との間には、機械的な干渉を避けるための制約により10cm程度以上の間隔が生じる。そのため、ウエハマークの計測や露光動作に先だって、レチクル上のパターンの投影像とアライメントセンサとの位置関係(ベースライン量)を正確に計測しておき、ウエハマークの計測後に、その計測結果に対して、そのベースライン量を補正した位置にウエハを移動して露光を行うようにしている。これによって、以前の工程で形成された層上のパターンと、今回露光するパターンとの位置関係を正確に合わせることができる。なお、これらの位置計測や所定量の移動又は走査露光のために、ウエハを移動するウエハステージの位置は、レーザ干渉計により高精度に計測されている。
【0007】
上述の如く、真空紫外光、特に波長が180nm以下の光を露光ビームとする投影露光装置においては、露光ビームの光路空間をパージガスで置換する必要がある。この際に、投影光学系とウエハとの間の光路空間についても、残存する酸素濃度を1ppm程度以下に抑える必要がある。
これを実現する一つの方法として、ウエハを保持して可動のウエハステージ全体を大きな気密型の遮蔽容器で覆い、その内部全体(投影光学系からウエハまでの光路を含む)をガス置換する方法も考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−118783号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような遮蔽容器を採用すると、投影露光装置が大型化及び大重量化して、デバイス製造工場で広い設置面積(フットプリント)が必要となる。また、メンテナンス作業が煩雑で作業時間も増大するため、デバイスの生産性が低下してしまう。
【0010】
これに対して、ウエハステージ全体を覆うことなく、投影光学系とウエハとの間の光路空間を実質的にガス置換する方法として、投影光学系とウエハとの間に局所気密化機構を設け、その光路空間(以下、「局所空間」と言う。)だけをパージガスの送風により局所的にガス置換する方法が検討されている。この方法は、ウエハステージ全体を覆う隔壁は必要無いので、装置の小型化やメンテナンス性の向上が期待できる。但し、ウエハ交換時やオフ・アクシス方式のアライメントセンサによるウエハマークの計測時などの、その局所空間の端部の近傍にウエハ又はウエハステージが配置されなくなる期間に、気密性が破れて局所空間内に外気が混入し、また局所空間内の露光ビームを透過する気体が外部に漏れ出すことになる。
【0011】
また、局所空間内のパージガスが外部に漏れ出し、これが拡散等によりウエハステージの位置計測用のレーザ干渉計の光路に達すると、レーザ干渉計の光路の周囲の気体(通常は空気)とパージガスとの屈折率の違いにより、レーザ干渉計の計測値が変動し、その結果、アライメントセンサのベースライン量の計測結果及びウエハマークの位置計測結果も変動して位置合わせ精度が悪化すると共に、走査露光型の露光装置の場合には、同期精度が悪化することになる。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に置換できるメンテナンス性に優れた露光技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの光路の少なくとも一部を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に置換できると共に、その露光ビームを透過する気体が外部に漏れ出すことによるステージの位置計測精度又はアライメントセンサの計測精度の低下を抑制できる露光技術を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の露光方法は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光方法において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられた局所気密化部材(37)をその基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内(ステップ107,108,110,111)に、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給する第2工程(ステップ111)と、その第1期間と異なる第2期間(ステップ113,114,105)に、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整して、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置をその投影光学系を介することなく計測する第3工程(ステップ105)とを有するものである。
【0014】
斯かる本発明によれば、その第1期間内にはその投影光学系とその局所気密化部材とその基板又はその基板ステージとで囲まれた空間が実質的に気密化されている。この第1期間内にその局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給することによって、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に効率的に置換できる。更に、その第2期間に、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整することによって、例えばその第1気体が外部に漏れ出すことによる位置合わせ用マークの計測精度の低下を抑制できる。
【0015】
この場合、一例として、その基板ステージの位置は、その露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測されており、その第1期間内の所定の第3期間にその局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する第1気体を供給する動作と並行して、その局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体が吸引して排気される。
【0016】
これによって、基板ステージの位置計測精度の低下が抑制される。
また、別の例として、その第2工程は、その基板上の複数のその位置合わせ用マークの内でその第3工程で計測されたその所定のマークとは異なる他のマークの位置をその投影光学系を介することなく計測する工程(ステップ107)を更に有する。
【0017】
このように、その第2工程でその局所気密化部材内への第1気体の供給を開始した期間内に、一部の位置合わせ用マークの位置計測を行うことで、アライメント工程と基板を露光する工程との間の待ち時間(局所気密化部材内部が第1気体で完全に置換されるまでの待ち時間)を短縮でき、スループットが向上する。この場合、更に局所気密化部材内部の気体を排気することによって、その局所気密化部材の内部に供給された第1気体が、その基板ステージの位置を計測する光ビームの光路に漏れ込むことを防止でき、マーク計測精度は低下しない。
【0018】
また、その基板上のその複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序が、その第3工程(ステップ105)で計測されるその所定のマークが、上記の他のマーク(ステップ107)よりも先となるように最適化されていることが望ましい。これによって、アライメント工程から基板を露光する工程に殆ど待ち時間無しで移行することができる。
【0019】
また、その第2工程は、その基板の露光を行う工程(ステップ111)を含み、その第2工程のその露光を行う工程(ステップ111)と、その位置合わせ用マークの位置を計測する工程(ステップ107)との間に、そのマスクのパターンの像と、その基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく検出するマーク検出系(32)との位置関係(ベースライン量など)を計測する工程(ステップ109)を更に有することが望ましい。
【0020】
そのマスクのパターン像の位置は、その局所気密化部材内にその第1気体が供給されている状態で計測する必要があるが、本発明によれば、その位置関係の計測を殆ど待ち時間無しで実行できるため、スループットが向上する。
また、一例として、その第2期間は、その窓部(17a)に対向する位置にその基板及びその基板ステージのどちらも存在せず、かつその局所気密化部材(37)の内部へのその第1気体の供給を停止する期間であり、更に、その第2期間は、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を停止している間に、その基板ステージ上のその基板の交換を行う第4期間(ステップ114)を含むことが望ましい。これによって、その基板交換時にその第1気体の拡散が防止できる。
【0021】
また、その第1気体の供給の調整が、その第1気体の供給を停止することである場合に、その第3工程におけるその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給の停止(ステップ112)は、その第2期間よりも前に開始されることが望ましい。これによって、その第1気体の拡散が更に有効に防止できる。
また、その第3工程における、その局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給の停止とその第2期間との間に、その局所気密化部材の内部へその第1気体とは異なる気体(例えばその第2気体)を供給するようにしてもよい。これによって、その第1気体の拡散の影響が更に軽減される。
【0022】
次に、本発明による第2の露光方法は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光方法において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられた局所気密化部材(37)をその基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内に、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する気体を供給する第2工程(ステップ107〜111)とを有し、その第2工程は更に、その基板の露光を行う工程(ステップ111)と、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測する工程(ステップ107)と、そのマスクのパターンの像とその基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測するマーク検出系(32)との位置関係を計測する工程(ステップ109)とを有するものである。
【0023】
斯かる本発明によれば、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく、露光ビームの少なくとも一部の光路を含む空間を露光ビームを透過する気体で実質的に効率的に置換できる。更に、そのマスクのパターン像の位置は、その局所気密化部材内にその気体が供給されている状態で計測する必要があるが、本発明によれば、その位置関係の計測を殆ど待ち時間無しで実行できるため、スループットが向上する。
【0024】
次に、本発明による露光装置は、露光ビームでマスク(R)を照明し、その露光ビームでそのマスク及び投影光学系(PL)を介して基板ステージ(26)上に保持された基板(W)を露光する露光装置において、その投影光学系からその基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、その露光ビームをその基板側に通過させる窓部(37a)が設けられて、その基板及びその基板ステージに非接触の状態で配置される局所気密化部材(37)と、その局所気密化部材の内部にその露光ビームを透過する第1気体を供給する気体供給機構(38,40〜42,43,49,53)と、その基板上の位置合わせ用マークの位置をその投影光学系を介することなく計測するマーク検出系(32)と、その気体供給機構及びそのマーク検出系の動作を制御する制御系(33)とを有し、その制御系は、その窓部と対向する位置にその基板又はその基板ステージが存在する第1期間内に、その気体供給機構を介してその局所気密化部材の内部にその第1気体を供給し、その第1期間と異なる第2期間に、その気体供給機構によるその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を調整して、その基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置をそのマーク検出系を介して計測するものである。
【0025】
本発明によって、本発明の露光方法を実施することができる。
この場合、一例として、その気体供給機構は、その第1期間内の所定の第3期間内に、その第1気体の供給と並行してその局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体を吸引して排気する排気機構(50〜52)を備え、本発明の露光装置は、その基板ステージの位置をその露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測する位置計測系(29X,29Y,30X,30Y)を更に有する。
【0026】
また、別の例として、その第2期間は、その窓部に対向する位置にその基板及びその基板ステージのどちらも存在せず、かつその局所気密化部材の内部へのその第1気体の供給を停止する期間であり、更にその第2期間は、そのマーク検出系を介してその基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置を計測する第4期間を含むものである。
【0027】
また、その制御系は、その基板上の複数のその位置合わせ用マークの内でその第2期間内に計測されるその所定のマークとは異なる他のマークの位置をその第3期間内にそのマーク検出系を介して計測することが望ましい。
また、その基板ステージ上に設けられた基準マーク(FM1,FM2)を更に有し、その制御系は、その第3期間内にその基準マークを用いてその投影光学系によるそのマスクのパターンの像とそのマーク検出系との位置関係を計測することが望ましい。
【0028】
また、その気体供給機構は、その局所気密化部材の内部へその第1気体に切り換えてその第1気体とは異なるその第2気体を供給できるように構成(45〜48)されることが望ましい。
また、その制御部は、その基板上のその複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序を、その第2期間内に計測されるその所定のマークが、上記の他のマークよりも先となるように最適化する最適化制御部を備えることが望ましい。
【0029】
また、本発明によるデバイス製造方法は、本発明の露光方法又は露光装置を用いてデバイスのパターンを基板上に転写する工程を有するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。本例は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置で露光を行う場合に本発明を適用したものである。
図1は、本例の投影露光装置の概略構成を示し、この図1において、露光光源として発振波長が真空紫外域の157nmのF2 レーザ光源5が使用されている。なお、露光光源としては、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、Kr2 レーザ(波長146nm)、又はAr2 レーザ(波長126nm)などのレーザ光源の他に、YAGレーザの高調波発生光源や半導体レーザの高調波発生装置なども使用することができる。
【0031】
本例の投影露光装置は、全体としてデバイス製造工場の床1上のクリーンルーム内に設置され、F2 レーザ光源5以外の部分は更にほぼ密閉された箱状容器であるチャンバ2内に収納されている。チャンバ2内には給気管3を介して、温度及び湿度が制御されると共に防塵フィルタ(HEPAフィルタ(high efficiency particulate air−filter)又はULPAフィルタ(ultra low penetration air−filter)等)及びケミカルフィルタを介して清浄化された空気が供給され、チャンバ2内を例えばダウンフロー方式で流れた空気は排気管4を介して例えば工場の排気ガス処理系(不図示)に供給されている。チャンバ2内に供給される空気は、一例として温度が22℃、湿度が40%に制御されている。
【0032】
F2 レーザ光源5で発生した露光ビームとしての波長157nmの紫外パルス光よりなる露光光ILは、チャンバ2内に入射した後、露光装置本体との間で光路をマッチングさせるためのビームマッチングユニット(BMU)6、可変減光器7、レンズ系8A,8Bよりなるビーム整形光学系、オプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ又はホモジナイザ)としてのフライアイレンズ9、可変開口絞り板10、ミラー11、コンデンサレンズ系12、レチクルブラインド機構13、結像用レンズ系15、ミラー16、及び主コンデンサレンズ系17よりなる照明光学系を介して、マスクとしてのレチクルRの回路パターン領域上のスリット状の照明領域を一様な強度分布で照射する。
【0033】
この構成において、可変開口絞り板10は、装置全体の動作を統轄制御する主制御系33からの指令に応じて、照明系の開口絞りを通常照明用の円形絞り、複数の偏心した小開口よりなる変形照明用の開口絞り、又は輪帯照明用の開口絞り等に切り換える。また、レチクルブラインド機構13は、レチクルR上の照明領域を規定するための非走査方向に細長い開口が形成された固定照明視野絞り(固定ブラインド)14Aと、レチクル上の照明領域の走査方向の幅を可変とするための可動ブラインド14Bとを備えている。
【0034】
本例では、照明光学系の内で、可変減光器7から主コンデンサレンズ系17までの部材は、気密室としてのサブチャンバ18内に収納されている。
露光光ILのもとで、レチクルRの照明領域内の回路パターンの像が投影光学系PLを介して所定の投影倍率β(βは例えば1/4,1/5等)で、投影光学系PLの結像面に配置された基板としてのウエハW上のレジスト層のスリット状の露光視野に転写される。なお、レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体とも見なすことができ、投影光学系PLは投影系とも見なすことができる。また、被露光基板としてのウエハWは、例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が200mm又は300mm等の円板状の基板である。本例の投影光学系PLとしては、例えば特開2000−47114号公報に開示されているように、互いに交差する光軸を持つ複数の光学系を持つ反射屈折投影光学系、例えば特願2000−59268号明細書に開示されているように、レチクルからウエハに向かう光軸を持つ光学系と、その光軸に対してほぼ直交する光軸を持つ反射屈折系とを有し、内部で中間像を2回形成する反射屈折投影光学系、又は例えば国際公開第 00/39623 号パンフレットに開示されているように、1本の光軸に沿って複数の屈折レンズと、それぞれ光軸の近傍に開口を有する2つの凹面鏡とを配置して構成される直筒型の反射屈折投影光学系などを使用することができる。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内でレチクルR及びウエハWの走査方向SDに直交する非走査方向(ここでは図1の紙面に垂直な方向)にX軸を取り、走査方向SD(ここでは図1の紙面に平行な方向)にY軸を取って説明する。
【0035】
先ずレチクルRは、レチクルステージ19上に吸着保持され、レチクルステージ19は、レチクルベース20上にY方向に等速移動できると共に、X方向、Y方向、及び回転方向に微動できるように載置されている。レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計22からの計測用レーザビームがレチクルステージ19上の移動鏡21に照射され、レチクル干渉計22は、例えば投影光学系PLの側面に固定された参照鏡(不図示)を基準としてレチクルステージ19(レチクルR)のX方向、Y方向の位置及び回転角を計測し、計測値をレチクルステージ駆動系24及び主制御系33に供給する。レチクルステージ駆動系24は、供給された計測値及び主制御系33からの制御情報に基づいて不図示のリニアモータ等の駆動装置を介して、レチクルステージ19の走査速度、X方向及びY方向の位置、並びに回転角の制御を行う。
【0036】
レチクルステージ19、その駆動装置、及びレチクルベース20よりレチクルステージ系が構成され、レチクルステージ系は気密室としてのレチクル室25内に収納されている。本例ではレチクル室25の側面にレチクル干渉計22が配置されているが、レチクル室25の側面にレーザビームを透過する窓部を設け、その窓の外側(レチクル室25の外部)にレチクル干渉計22を配置してもよい。また、本例のレチクルRのパターン面には、回路パターンをX方向(非走査方向)に挟むように1対又は複数対の図示省略したアライメントマーク(位置合わせ用マーク)としてのレチクルマークが形成されている。レチクルRの回路パターンとレチクルマークとの位置関係の情報は、主制御系33に記憶されている。そして、レチクル室25内のレチクルRの上方の光軸AXをX方向に挟む位置に、レチクルマークを露光光ILと同じ波長(露光波長)の照明光で照明するための1対のアライメント用の照明系23Aが設置されている。なお、図1では、手前側の照明系は図示省略されている。また、照明系23A等を省略して、露光光ILそのものでレチクルマークを照明してもよく、レチクルRの回路パターンの一部をレチクルマークとして用いてもよい。
【0037】
更に、本例の投影光学系PLの鏡筒も気密化されており、投影光学系PL内部の光学素子(レンズ及び反射鏡など)の間の光路空間は密閉されている。
なお、本例のレチクル室25は、照明光学系の大部分を収納するサブチャンバ18のレチクル側の先端部から投影光学系PLの上端部までを覆っているが、レチクル室25とサブチャンバ18との間、及びレチクル室25と投影光学系PLとの間に隙間を設け、これらの隙間を可撓性を有し、かつガスバリヤ性の良好なフィルム状のシール部材で密閉するようにしてもよい。この可撓性のある被覆部材としてのシール部材の使用によって、レチクルステージ19を駆動する際の振動が照明光学系及び投影光学系PLに伝わるのを防止することができる。
【0038】
一方、ウエハWは、不図示のウエハホルダを介してウエハステージ26上に吸着保持され、ウエハステージ26はウエハベース27上に投影光学系PLの像面と平行なXY平面に沿って移動自在に設置されている。ウエハステージ26は、不図示のリニアモータ等を含む駆動装置によってウエハベース27上をY方向に等速移動し、かつX方向及びY方向にステップ移動することができる。この際にウエハステージ26の位置を計測するために、ウエハステージ26の平面図である図5に示すように、ウエハステージ26上面の−X方向及び−Y方向の端部にそれぞれX軸及びY軸の移動鏡29X,29Yが設置され、移動鏡29X,29Yにそれぞれレーザ干渉計よりなるX軸及びY軸のウエハ干渉計30X,30Yから計測用レーザビームLX1,LY1が照射されている。
【0039】
ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームLX1,LY1の中心軸はそれぞれX軸及びY軸に平行に投影光学系PLの光軸AXを通るように設定され、ウエハ干渉計30X,30Yはそれぞれ投影光学系PLの側面の参照鏡(不図示)を基準として、ウエハステージ26のX方向及びY方向の位置を計測する。ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームLX1,LY1は、実際にはそれぞれY方向及びX方向に離れた2本のレーザビームと、Z方向に離れた2本のレーザビーム(図2参照)とを含んで構成され、ウエハ干渉計30X,30Yはウエハステージ26のZ軸の周りの回転角(ヨーイング量)、X軸の周りの回転角(ピッチング量)、及びY軸の周りの回転角(ローリング量)をも計測する。ウエハ干渉計30X,30Yからの計測値は、図1のウエハステージ駆動系31及び主制御系33に供給される。ウエハステージ駆動系31は、供給された計測値及び主制御系33からの制御情報に基づいて不図示の駆動装置の動作を制御することにより、ウエハステージ26の移動速度、並びにX方向及びY方向の位置の制御を行う。
【0040】
図1において、ウエハステージ26にはウエハWのフォーカス位置(Z方向の位置)及び傾斜角を制御するZチルト機構も組み込まれている。また、投影光学系PLの下部側面には、ウエハW表面の3箇所以上の複数の計測点に光軸AXに対して斜めにスリット像を投影する投射光学系と、それらの計測点からの反射光を受光して再結像されたスリット像を撮像する受光光学系とを備え、ウエハW表面のフォーカス位置、及びX軸、Y軸の周りの傾斜角を検出する斜入射光学方式のオートフォーカスセンサ(不図示)が配置されている。このオートフォーカスセンサからの計測情報に基づいて、ウエハステージ26内のZチルト機構がウエハWの表面をオートフォーカス方式及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込む。
【0041】
また、ウエハW上の各ショット領域にはそれまでの露光工程を含むパターン形成工程において、回路パターンと共にアライメントマーク(位置合わせ用マーク)としてのウエハマークが形成されている。例えば所定のウエハマークの位置を検出してウエハW上の各ショット領域のアライメントを行うために、投影光学系PLに関してY軸のウエハ干渉計30Yと反対側の+Y方向に、マーク検出系としてのオフ・アクシス方式のアライメントセンサ32が配置されている。本例のアライメントセンサ32はFIA(Field Image Alignment)方式等の撮像方式であるが、それ以外に回折格子状マークからの干渉光を検出する格子干渉方式、又はドットパターン状のマークと検出光とを相対移動させる所謂レーザ・ステップ・アライメント方式等も使用することができる。投影光学系PLの光軸AX(露光視野の中心)とアライメントセンサ32の光軸BX(検出基準)とを通るXY平面内の直線は、ほぼY軸(走査方向)に平行である。
【0042】
また、図5において、X軸の移動鏡29Xに対してX軸に平行にアライメントセンサ32の光軸BXを通るような計測用レーザビームを照射して、光軸BX(検出基準)でのウエハW又はウエハステージ26のX座標を計測するX軸のアライメント用ウエハ干渉計(不図示)も設置されている。この際に、Y軸のウエハ干渉計30Yからの計測用レーザビームLY1の中心軸はY軸に平行に光軸BXを通過しているため、ウエハ干渉計30YはY軸のアライメント用ウエハ干渉計としても兼用されている。
【0043】
図1に戻り、アライメントセンサ32は、光軸BXを基準としてウエハW上のウエハマーク又はウエハステージ26上の所定の基準マークの像を撮像し、撮像情報を主制御系33内のアライメント信号処理部に供給する。アライメント信号処理部は、その撮像情報を用いて例えば画像処理方式で、そのウエハマーク又はその基準マークの光軸BXに対するX方向、Y方向への位置ずれ量を検出する。この位置ずれ量とこの検出時のアライメント用ウエハ干渉計の計測値とから、そのウエハマーク又はその基準マークのX座標及びY座標が求められる。
【0044】
また、図5に示すように、ウエハステージ26上のウエハWの近くには基準マーク部材55が設置され、基準マーク部材55の表面はウエハWの表面と同じ高さに設定されている。そして、基準マーク部材55の表面には1対のレチクルマークに対応する第1の基準マークとしてのX方向に離れた1対のスリットマークFM1と、オフ・アクシス方式のアライメントセンサ32用の第2の基準マークとしての一つの反射マークFM2とが形成されている。
【0045】
なお、スリットマークFM1は、透過性の微小幅のX方向に長いスリット(又はスリット群でもよい、以下同様)及びY方向に長いスリットよりなり、基準マーク部材55内のスリットマークFM1の底面には、スリットマークFM1を下方に透過する光量を計測する光量センサが設置されている。その光量センサの検出信号は主制御系33内のアライメント信号処理部に供給されている。レチクルRのアライメント時には、照明系23A等でレチクルRに形成されたレチクルマークを照明し、ウエハステージ26をX方向、Y方向に駆動することによって、レチクルマークの投影光学系PLを介した像をスリットマークFM1で相対走査しつつ、上記の光量センサで透過光量を計測する。そして、そのアライメント信号処理部では、例えばその透過光量(検出信号)が最大又は最小になるときのウエハステージ26の座標を検出することによって、1対のレチクルマークの像の位置を求め、これらの位置からレチクルRのパターン像の中心(露光中心)の座標、及びレチクルRの回転角を求める。レチクルRの回転角は例えばレチクルステージ19を回転することによって補正される。
【0046】
スリットマークFM1(第1の基準マーク)の中心と反射マークFM2(第2の基準マーク)の中心とを通る直線は実質的にY軸(走査方向)に平行であり、かつスリットマークFM1の中心と反射マークFM2の中心とのY方向の間隔は、露光中心とアライメントセンサ32の検出基準との設計上の間隔(ベースライン量の設計値)BLに等しく設定されている。また、光軸AXと光軸BXとの間隔も間隔BLにほぼ等しく設定されており、間隔BLの値は図1の主制御系33の記憶部に記憶されている。
【0047】
なお、基準マーク部材55内部のスリットマークFM1の底面に、光量センサの代わりに露光波長の照明光でスリットマークFM1を投影光学系PL側に照明する照明系を設置してもよい。この構成では、レチクルR上部の照明系23A等の代わりに、アライメントセンサとしての1対のレチクルアライメント顕微鏡(以下、「RA顕微鏡」と言う。)が配置され、RA顕微鏡の撮像情報が主制御系33内のアライメント信号処理部に供給される。そして、スリットマークFM1の投影光学系PLを介した像とレチクルマークとをRA顕微鏡で撮像して、そのスリットマークFM1の像とレチクルマークとの位置ずれ量を求めることで、レチクルRのパターン像の中心(露光中心)を求めることができる。
【0048】
また、図5において、本例ではウエハWの表面(基準マーク部材55の表面)と移動鏡29X,29Yの上面とは同じ高さに設定されている。更に、ウエハステージ26の上面において、ウエハW、基準マーク部材55、及び移動鏡29X,29Yを除く部分に、高さをウエハWの表面と同じにするためのシート状の平坦化カバー28が設置されている。このように、ウエハステージ26上のウエハWの周囲の部分の高さをウエハW表面の高さに合わせることによって、後述のように投影光学系PLとウエハWとの間の露光光ILの光路を実質的に局所的に気密化する際の気密性を高めることができる。
【0049】
なお、平坦化カバー28とその内側のウエハWとの間には微小幅の隙間(例えば0.5mm程度)が設けてあり、ウエハWの大きさが基準値より多少大きくとも、又はウエハWをウエハステージ26上にロードする際に或る程度の位置決め誤差が生じても、ウエハWと平坦化カバー28とが接触しないように考慮されている。また、平坦化カバー28と移動鏡29X,29Yとの間、及び平坦化カバー28と基準マーク部材55との間にも、それぞれ僅かの隙間(例えば0.2mm程度)が設けてある。これによって、平坦化カバー28が移動鏡29X,29Y及び基準マーク部材55の位置を僅かでも変位させることが防止されている。
【0050】
なお、移動鏡29X,29Yの上面をウエハWの表面と同じ高さに設定することによって、ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームの高さをウエハWの表面に合わせることができないために、計測値にアッベ誤差が混入する恐れがある。そこで、本例では上記のように、ウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームをZ方向に離れた2本のレーザビームを含むように構成して、ウエハステージ26のピッチング量及びローリング量を計測し、これらの計測値に基づいてX方向、Y方向の位置の計測値を補正している。
【0051】
図1に戻り、露光時には、主制御系33の制御のもとで、オフ・アクシス方式のアライメントセンサ32を用いて例えばEGA方式でウエハW上の全部のショット領域のアライメントが行われる。その後、ウエハステージ26をX方向、Y方向にステップ移動してウエハWの一つのショット領域を走査開始位置に移動する動作と、レチクルステージ19を介して露光光ILの照明領域に対してレチクルRを+Y方向(又は−Y方向)に速度Vrで走査するのに同期して、ウエハステージ26を介してウエハWを対応する方向、例えば−Y方向(又は+Y方向)に速度β・Vr(βはレチクルRからウエハWへの投影倍率)で走査露光する動作とを繰り返すことによって、ウエハW上の全部のショット領域がレチクルRのパターン像で露光される。
【0052】
さて、本例では露光ビームとして真空紫外域のF2 レーザ光(波長157nm)を用いているため、露光ビームの光路を含む空間(光路空間)から酸素、水蒸気などの真空紫外光に対して強い吸収性を有する気体を排気(ガスパージ)する必要がある。そのため、その光路空間内の気体を真空紫外光を透過する気体である窒素ガス又は希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)などでガス置換する。そのような透過性の気体の内で実際に露光ビームの光路空間を置換するために使用される気体、即ちパージガスとして、本例では酸素含有率及び水蒸気含有率を極めて低く抑えた窒素ガス(N2 )を使用する。本例のパージガス中の残存酸素濃度及び残存水蒸気濃度は共に1ppm以下に抑えてある。窒素ガスは安価で扱い易いという利点がある。
【0053】
なお、露光ビームの波長が150nm程度以下になると、窒素ガスでも透過率が低下するため、パージガスとしては希ガス、例えばヘリウム又はネオン等を使用することが望ましい。特にヘリウムは、熱伝導率が窒素ガスの6倍程度で、屈折率の気圧変化に対する変動率が窒素ガスの1/8倍程度であるため、結像特性が安定になる利点もある。また、波長が200〜150nm程度の場合であっても、結像特性の安定化を重視するような場合には、パージガスとしてヘリウムを使用してもよい。
【0054】
本例においては、F2 レーザ光源5からウエハWまでの露光光ILの光路空間の全部をパージガスで置換するために、不図示のパージガス供給装置から配管35A,35B,及び35Cを介してそれぞれ照明光学系のサブチャンバ18、レチクル室25、及び投影光学系PLの内部に温度制御されて、かつ防塵フィルタ及びケミカルフィルタを介して不純物が除去された高純度のパージガスが供給されている。本例のパージガス(第1気体)の温度は、チャンバ2内に供給される空気(第2気体)と同じ温度である22℃に制御されている。そして、サブチャンバ18、レチクル室25、及び投影光学系PLの内部の気体は、それぞれ配管36A,36B,及び36Cを介して不図示の工場の排気ガス処理系に排気されている。パージガスの利用効率を高めるために、その排気ガス処理系は、排気された気体から回収したパージガスをそのパージガス供給装置に戻すようにしてもよい。
【0055】
更に、投影光学系PLとウエハWとの間の空間は露光光路であるため、その空間もパージガスで置換する必要がある。そこで、本例では投影光学系PLの下部に、露光時に投影光学系PLとウエハWとの間を実質的に気密化する局所気密化部材37を設けている。また、この局所気密化部材37の内部及び近傍の気体を排気すると共に、局所気密化部材37の内部にパージガスを供給する機構も設けられている。局所気密化部材37及びパージガスの給排気機構(本発明の気体供給機構)から局所気密化機構が構成されている。
【0056】
図2は、図1の投影露光装置の局所気密化機構を示し、図3(A)は、図2中の局所気密化部材37の底面図を示し、図2において、局所気密化部材37は投影光学系PLの下端とウエハWとの間の露光光路の周囲を、光路自体を遮蔽することなく、かつウエハW及びウエハステージ26に接触することなく取り囲んでいる。即ち、局所気密化部材37の光軸AXを中心とした領域には、露光光ILを通過させるための開口部37aが形成されている。また、局所気密化部材37の内部に開口部37aをウエハWの走査方向SD(Y方向)に挟むように、パージガスを供給するための給気孔37b及びその内部の気体を排気するための排気孔37cが設けられている。更に、局所気密化部材37の底面は、ほぼウエハWの表面に平行であると共に、ウエハWの面積と同程度の面積でウエハWの走査方向SD(Y方向)を短辺方向とする長方形の平面に加工されている。
【0057】
図3(A)に示すように、局所気密化部材37の開口部37aの端面は、露光光によってウエハW上に投影されるX方向に細長いスリット状の露光視野34を余裕をもって囲むようにX方向に細長い長方形とされている。また、給気孔37b及び排気孔37cはそれぞれ先端部の幅が広くなるように形成され、これによって局所気密化部材37の内部にパージガスを走査方向に一様な分布で送風できるように構成されている。また、局所気密化部材37の底面には、開口部37aの端面を囲むように気体吸引用の閉じた吸引溝37dが形成され、この吸引溝37dは排気孔37cに連通している。
【0058】
なお、局所気密化部材としては、図3(B)に示すように、底面の外形がほぼ円形又は非走査方向(X方向)に細長い楕円形の部材54を用いてもよい。この部材54においても、露光視野34を囲むように端面が楕円形の開口部54aが形成され、それを囲むように例えば円形又は楕円形の閉じたループ状の吸引溝54dが形成されている。
【0059】
図2に戻り、局所気密化部材37の底面とウエハWの表面との間隔は、ウエハWの走査時及びステップ移動時に局所気密化部材37がウエハWに接触しない範囲で、即ちウエハWの走査露光時の操作性が低下しない範囲で、できるだけ狭い間隔、一例として3mm程度に設定されている。上述のように、本例ではウエハW、移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55(図5参照)、及び平坦化カバー28の上面は互いに同じ高さ(同一平面上)に設定されている。そのため、局所気密化部材37の底面は移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、平坦化カバー28及びウエハステージ26自体にも接触することがない。
【0060】
なお、不図示であるが、本例の局所気密化部材37には、上述の斜入射光学方式のオートフォーカスセンサからウエハWに照射される検出光、及びウエハWから反射される検出光を通過させるための透過部分が形成されている。この透過部分のうち、局所気密化部材37の側面に設ける透過部には、気密性を保ったまま上記オートフォーカス用光束を透過するガラス窓等の透過部材が設置される。また、その透過部分のうち、ウエハWに対向する面には、例えば上記と同様なガラス窓か、上記の露光光透過用開口部37aと同様な開口部を設置する。また、その開口部は、上記の露光光透過用開口部37aと連続した開口部とすることもできる。
【0061】
本例の局所気密化機構において、パージガスとしての高純度の窒素ガスはガスボンベ38内に蓄積されている。なお、ガスボンベ38の代わりに、工場の配管施設から直接パージガスを取り入れてもよく、又は窒素ガスを液化して貯蔵する貯蔵設備を用いて、使用時に気化するようにしてもよい。ガスボンベ38から供給される気体は、電磁式開閉バルブ付きの配管39A、送風ファン40、温度制御装置41、フィルタ部42、及び配管39Bを介して高純度で温度制御されたパージガスとして気体切り換え部43の第1給気部に供給される。また、例えば図1のチャンバ2内に給気管3を介して供給される空気の一部が、電磁式開閉バルブ付きの配管44A、送風ファン45、湿度制御装置46、温度制御装置47、フィルタ部48、及び配管44Bを介して、湿度(水蒸気濃度)及び温度が制御された極めて清浄な空気として気体切り換え部43の第2給気部に供給される。気体切り換え部43に供給されるパージガス(第1気体)及び空気(第2気体)の温度も、それぞれチャンバ2内に供給される空気(第2気体)と同じ温度(本例では22℃)に制御されている。更に、気体切り換え部43に供給される空気の湿度はチャンバ2内に供給される空気と同じ湿度に制御されている。また、フィルタ部42及び48は、それぞれHEPAフィルタ等の防塵フィルタとケミカルフィルタとを備えている。配管39A,44Aの電磁式開閉バルブ、送風ファン40,45、湿度制御装置46、温度制御装置41,47、及び気体切り換え部43の動作は空調制御系53によって制御され、空調制御系53の動作は主制御系33によって制御されている。
【0062】
気体切り換え部43は、パージガス若しくは空気の何れかを局所気密化部材37内部へ送風する送風モードか、又は局所気密化部材37内部への気体の送風を停止する送風停止モードに設定することができる。送風停止モード時には、配管39A,44Aの開閉バルブは閉じられる。送風モード時に気体切り換え部43で選択された気体が、排気部から配管49及び局所気密化部材37の給気孔37bを介して局所気密化部材37内部に送風(供給)される。また、局所気密化部材37内部の気体、及び局所気密化部材37の底面の吸引溝37dから吸引された気体が、排気孔37c、配管50、吸引用のファン51、及び配管52を介して不図示の工場の排気ガス処理系に排気されている。吸引用のファン51の動作も空調制御系53によって制御されている。なお、パージガスの利用効率を高めるために、ガスボンベ38と送風ファン40との間に回収したパージガスを純化してガスボンベ38からの気体と混合する気体混合部を設け、その排気ガス処理系は、排気された気体から回収したパージガスをその気体混合部に戻すようにしてもよい。
【0063】
ところで、局所気密化部材37と投影光学系PLとの間は、必ずしも接触して気密化させる必要は無く、フィルム状のシール部材を介して気密化したり、非接触の差動排気系を設けて実質的に気密化する方法を採用しても良い。また、局所気密化部材37と投影光学系PLとを直接気密化するのではなく、両者と気密を保った他の構造部材を介して気密化を達成しても良い。
【0064】
本例の図2に示す局所気密化機構では、基本的な動作として、吸引用のファン51は常時作動しており、局所気密化部材37の内部、開口部37aの近傍の空間、及び吸引溝37dの近傍の空間の気体(パージガス、空気、又はこれらの混合気体)は常時配管50を介して排気されている。なお、吸引用のファン51による気体の吸引動作を、局所気密化部材37の内部へパージガスを供給する期間(又はこの期間を含む所定期間)のみとすることも可能である。また、開口部37aの端部(窓部)に対向する位置にウエハW又はウエハステージ26(本例では実質的に移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、及び平坦化カバー28の上面)が位置している期間(第1期間)には、投影光学系PLと、局所気密化部材37と、ウエハW又はウエハステージ26とで囲まれて露光光が通過する空間(以下、「局所気密化空間」と呼ぶ。)は実質的に気密化されている。また、その第1期間内にウエハWに対する露光が行われる。そこで、その第1期間又はその第1期間内の所定期間(第3期間で、少なくともウエハWに対する走査露光が行われる期間)には、気体切り換え部43を配管39B側に切り換えて、配管49から局所気密化部材37内部の局所気密化空間にパージガスを供給する。この際に、配管50からの排気量と配管49からの給気量とはほぼ同程度か、又は給気量が或る程度多くなるように設定されている。これによって、F2 レーザ光源5からウエハWまでの全部の光路空間がパージガスによって置換されて、高い照明効率が得られるため、高いスループットが得られる。
【0065】
また、そのように局所気密化空間にパージガスを供給すると、局所気密化部材37とウエハWとの間の非接触の隙間からそのパージガスが次第に漏れ出す恐れがある。しかしながら、本例では、そのように漏れ出すパージガスは、局所気密化部材37の底面の吸引溝37dから配管50側に吸引されているため、パージガスがウエハステージ26の周囲に漏れ出して、ウエハ干渉計30X,30Yの計測値に変動を与える等の悪影響は生じない。
【0066】
一方、局所気密化部材37の開口部37aの端部に対向する位置にウエハW及びウエハステージ26(本例では実質的に移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、及び平坦化カバー28の上面)が何れも存在しない期間(第2期間で、開口部37aの端部の一部に対向する位置にウエハステージ26が存在する期間を含む)には、パージガスが開口部37aの端部から外部に流出する恐れがある。この場合、空気及びパージガスとしての窒素の屈折率(0℃、1気圧換算)は以下の通り異なっている。
【0067】
空気の屈折率:1.000292
窒素の屈折率:1.000297
なお、パージガスとして例えばヘリウムを使用する場合のヘリウムの屈折率は、以下のように窒素と比べて更に大きく空気の屈折率と異なっている。
ヘリウムの屈折率:1.000035
このように流出したパージガスは、空気とは屈折率が異なるため、これがウエハ干渉計30X,30Yからの計測用レーザビームの光路に至ると、ウエハ干渉計30X,30Yの計測値が変動し、位置合わせ精度や同期精度が悪化してしまう。但し、その局所気密化部材37の内部空間の気密性がなくなる第2期間内にはウエハWの露光も行われない。そこで、本例の基本的な動作として、その第2期間には、パージガスが局所気密化部材37の周囲に漏れ出すのを防止するために、第1の方法として局所気密化部材37内へのパージガス及び空気の供給を停止(調整の一例)する。また、第2の方法として、その第2期間又はその第2期間内の所定期間には、気体切り換え部43を配管44B側に切り換えて、配管49から局所気密化部材37の内部に空気を供給する。なお、例えば上記の第1期間内にウエハWの露光が終わったような場合には、その第1期間内でも局所気密化部材37内へのパージガス及び空気の供給を停止するか、又は局所気密化部材37の内部に空気を供給するようにしてもよい。
【0068】
続いて、本例の投影露光装置におけるウエハマークの計測動作と局所気密化部材37内部へのパージガスの送風動作との具体的な関係の一例につき、図4を参照して説明する。
図4(A),(B)は、図1中のウエハWの載置されたウエハステージ26を示す平面図であり、この図4(A),(B)において、ウエハW上の各ショット領域にはそれぞれウエハマークが付設されている。その内でウエハ中心を中心とした円周をほぼ等角度間隔で8分割した位置の近傍に配列された8個のウエハマークM1〜M8が、例えばEGA方式でアライメントを行うための計測対象マークとして選択されている。そして、図4(A)は、その内の最も+Y方向に位置する(露光時に最もアライメントセンサ32に近い)ウエハマークM5がオフ・アクシス方式のアライメントセンサ32の直下(検出領域)に移動して、位置計測動作中の状態を表わしている。このように、ウエハステージ26の移動により、ウエハマークM5をアライメントセンサ32の直下に配置した状態では、投影光学系PLの光軸AX(露光視野の中心)を囲むように配置される局所気密化部材37の露光光透過用の開口部37aに対向する位置(開口部37aの直下領域で、以下、「対向部」とも呼ぶ。)にはウエハWが存在して、上記の第1期間内であるため、局所気密化部材37内のパージガスが外部に漏れ出すことは実質的にない。
【0069】
一方、図4(B)は、その内の最も−Y方向に位置する(露光時に最もアライメントセンサ32から離れた)ウエハマークM1の位置計測を行うために、ウエハマークM1をアライメントセンサ30の直下に移動した状態を示している。この図4(B)の状態は、開口部37aの対向部にはウエハWも移動鏡29X,29Yを含むウエハステージ26も存在しない、上記の第2期間内であるため、図2の局所気密化部材37内にパージガスを送風した場合、パージガスが外部に漏れ出してしまう。そして、パージガスと空気との屈折率差が計測用レーザビームLY1の光路長を変動させ、図5のウエハ干渉計30YによるウエハマークM1のY方向の位置計測精度が悪化する恐れがある。なお、図4(A),(B)では、アライメントセンサ32の光軸BXを基準とするウエハステージ26のX座標は、光軸BXをX方向に通過する計測用レーザビームを用いるX軸のアライメント用ウエハ干渉計(不図示)によって高精度に計測されている。
【0070】
本例では、このように局所気密化部材37の開口部37aの対向部にウエハWもウエハステージ26も存在しない状態となった場合には、図2の空調制御系53が図2中の気体切り換え部43を送風停止モードに設定して、局所気密化部材37内部へのパージガスの供給を停止する。これにより、上記のようにパージガスが計測用レーザビームLY1の光路に漏れ出して位置計測精度を悪化させる恐れを低減することができる。
【0071】
なお、図2の主制御系33は、ウエハ干渉計30Yの計測値や、予め入力されたウエハステージ系の構造データ等から、ウエハステージ26がどの位置に移動すると開口部37aからのパージガス漏れが発生するかを判別することができる。主制御系33は、パージガス漏れの発生が予想される位置(領域)へのウエハステージ26の移動に先立って、空調制御系53を介してパージガスの供給を停止することが望ましい。
【0072】
上記の実施の形態では、局所気密化部材37内部に残存していたパージガスが、拡散により計測用レーザビームLY1の光路に漏れ出す可能性はある。しかしながら、局所気密化部材37の内部容積を微小量とする設計を採用すれば、残存気体量を僅かにできるため、ウエハ干渉計30Yの計測精度の悪化を極めて僅かに抑えることができる。但し、僅かの精度悪化も問題になる場合には、パージガス漏れの発生が予想される位置へのウエハステージ26の移動に先立つ上記パージガスの供給停止の後に、気体切り換え部43を作動させて、局所気密化部材37の内部に配管44Bから供給される空気を送風して、開口部37aの対向部からウエハW及びウエハステージ26の何れもが存在しなくなる前に、局所気密化部材37内部の気体を空気に置換しておくことが、更に望ましい。なお、この空気は、例えば22℃の一定温度に温度制御されたものであり、また一定湿度に制御され、塵埃や有機物の含有量が所定濃度以下になるように制御された空気である。
【0073】
なお、上述の局所気密化部材37内部へのパージガスの供給停止や空気送風への切り換えは、上記のウエハW上のウエハマークM1〜M8の計測動作時に限ったことではなく、ウエハWへの露光動作中やウエハWの交換動作時についても同様に適用可能である。但し、露光動作時及び露光動作からウエハWの交換動作に移る際(ウエハWの露光終了時)には、上記パージガスの供給停止や空気の送風への切り換えは、ウエハWへの露光が完了してから行うべきであることは言うまでもない。
【0074】
ところで、積極的な送風によっても或いは拡散によってでも、一度上記局所気密化部材37の内部に空気が入ると、その状態からその空気中の酸素、水蒸気を再度パージする(ガス置換する)には、或る程度の時間は必要になる。そのガス置換に必要な時間は、局所気密化部材37の内部容積や送風するパージガスの流量にも依るが、実用的には4sec から8sec 程度である。ウエハマークの位置計測順序に依っては、最後に計測するマークが、図4(B)のウエハマークM1のようにこれをアライメントセンサ32の計測位置に移動すると、投影光学系PLの光軸AX(露光中心)を囲むように位置する局所気密化部材37の開口部37aの対向部に、ウエハWもウエハステージ26も存在しなくなる位置にあるマークの場合には、そのマークの位置計測後、4sec から8sec は、露光動作に入れない場合も出てくる。そして、この時間は単なる待ち時間となって、露光装置の処理能力(スループット)を低下させてしまう。
【0075】
一方、最近の投影露光装置では、1枚のウエハ上の8個程度のウエハマークの位置を計測するのに要する時間も4sec から8sec 程度である。そこで、主制御系33が備える最適化制御部で、ウエハW上の1群のウエハマークM1〜M8の計測順を最適化することで、上記空気や水蒸気のガス置換とウエハマークの位置計測とを或る程度並列処理することが可能となり、上記待ち時間を実質的に削減し、スループットの低下を防止することが可能となる。
【0076】
以下、ガス置換のための待ち時間を短縮する位置計測シーケンスの一例につき、図6のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ウエハW上のウエハマークM1〜M8の位置計測は、ウエハローダ系(不図示)によるウエハWの交換の後、露光動作の開始前に行なう。ウエハ交換時のウエハステージ26の位置は、交換するウエハと投影光学系PLとの機械的な干渉を避けるために、ウエハWが投影光学系PLの中心から外れる方向に移動する。従って、ウエハ交換時のウエハステージ26の位置は、例えば図4(B)に示した如き位置であり、投影光学系PLの下部に設けられた局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハWもウエハステージ26もなく、局所気密化部材37内部は、拡散により空気が混入しているか、又は積極的に空気が送風された状態となっている。
【0077】
実際に例えば1ロットのウエハに露光を行う際には、露光開始前にウエハマークの計測順序を求めておく必要がある。そのため、図6のステップ101において、図2の主制御系33は、オペレータが入力した各ウエハマークM1〜M8の座標値、予め入力されている露光装置固有のウエハステージ26の大きさの情報、及びアライメントセンサ32の検出基準(光軸BX)と投影光学系PLの露光視野との位置関係等の露光データから、アライメントセンサ32による各ウエハマークM1〜M8の計測に際して、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にウエハW又はウエハステージ26が存在するか否かを判定する。
【0078】
そして、主制御系33は、計測対象のウエハマークM1〜M8中から、計測時に開口部37aの対向部にウエハW及びウエハステージ26のどちらもが存在しなくなるマーク群(以下、「前半マーク群」と呼ぶ。)を選び、これらのマーク群を計測順序の前半に配列する。そして、それ以外のマーク群(以下、「後半マーク群」と呼ぶ。)を計測順序の後半に配列する。
【0079】
その後のステップ102において、主制御系33は、その前半マーク群と後半マーク群との間では、その計測順序を入れ替えることなく、合計の位置計測時間が最短になるように、ウエハマークの計測順序を最適化する。なお、この最適化に際しては、全てのウエハマークの計測後に、ウエハW上のどの位置にあるショットを最初に露光するかの情報も加味して行うことが望ましい。
【0080】
例えば、図4(A),(B)に示したウエハWでは、上記判定過程において、ウエハマークM1,M2,M8は、アライメントセンサ32でこれを計測する際に開口部37aの対向部にウエハW及びウエハステージ26がどちらも存在しなくなる前半マーク群であり、それ以外のウエハマークM3〜M7は、上記計測時にも局所気密化部材37内部の気密性が実質的に保たれる後半マーク群であることが判明する。
【0081】
そこで、主制御系33は、3個のウエハマークM1,M2,M8(前半マーク群)をマーク計測順の前半に、5個のウエハマークM3〜M7(後半マーク群)をそのマーク計測順の後半に設定し、前半マーク群と後半マーク群との間ではマーク計測順を入れ替えることなく、全マークの計測時間が最小になるように各マークの計測順を最適化する。この場合、計測順(順列)の総数Sは、次のように前半マーク群の計測順(順列)の総数である6(= 3P3 )通りと、後半マーク群の計測順(順列)の総数である120(= 5P5 )通りとの積である720通りとなる。
【0082】
S= 3P3 × 5P5 =6×120=720 …(1)
主制御系33は、そのS通り(ここでは720通り)の計測順の全てについてそれぞれマーク計測時間(ウエハステージ26の移動時間と実際にアライメントセンサ32でマークを計測する時間との総和)を計算し、そのマーク計測時間が最短になる計測順を採用すれば良い。
【0083】
また、ウエハW上の最初に露光するショット領域の露光位置も加味して最適化する場合には、上記720通りの計測順でのマーク計測時間に、最終計測マークから最初に露光するショット領域ヘの移動時間も加えた処理時間が最短になる計測順を選べば良い。図4(A),(B)に示したウエハWでは、ウエハW上で左上のショット領域SAが最初の露光ショットである場合、ウエハマークM1〜M8の計測順を、M2→M1→M8→M7→M6→M5→M4→M3の順とするのが最適である。この例では、最後に計測するウエハマークM3は、このウエハマークM3がアライメントセンサ32の計測位置に在るときに、ウエハW上で最初に露光するショット領域SAが露光視野中心(投影光学系PLの光軸AX)に最も近くなるように選択されている。
【0084】
上記の如く計測順を決定した後、ステップ103で局所気密化部材37内部へのパージガスの送風を停止して(空気を送風してもよい)、ステップ104で1ロットの先頭のウエハWがウエハステージ26上にロードされる。次のステップ105において、主制御系33は、ウエハステージ26を駆動して、上記のように決定された最初のウエハマークM2をアライメントセンサ32の計測位置(光軸BXの近傍)に移動して、そのウエハマークM2の位置を計測する。続いて、ウエハマークM1,M8を順次アライメントセンサ32の計測位置に移動し、これらのウエハマークの位置計測を行なう。
【0085】
前述のように、この状態では、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハWもウエハステージ26も無いため、局所気密化部材37内部へのパージガスの送風は、気体切り換え部43の操作により遮断されている。
次に、ステップ106において、主制御系33はウエハステージ26を駆動して、ウエハマークM7をアライメントセンサ32の計測位置に移動し、このウエハマークM7の位置を計測する。この状態では、局所気密化部材37の開口部37aの対向部にはウエハステージ26(移動鏡29X,29Y、基準マーク部材55、平坦化カバー28を含む)が存在しており、局所気密化部材37内部の局所気密化空間(投影光学系PLとウエハWとの間の露光光の光路空間)は実質的に気密化(外部との間で気体の流通が殆ど無い状態化)されている。また、前述のマーク計測順の最適化の結果、これ以降ウエハWへの露光が終了するまでの動作の間、開口部37aの対向部からウエハW又はウエハステージ26が存在しなくなることはない。
【0086】
そこで主制御系33は、空調制御系53を介して気体切り換え部43を駆動して、局所気密化空間へのパージガスの送風を開始する。次のステップ107において、その送風による局所気密化空間のガス置換と並行して、残るウエハマークM6,M5,M4,M3の計測と、ウエハマークM1〜M8の位置計測結果に基づくウエハW上の全部のショット領域の配列座標の算出(ウエハアライメント)とを行う。次のステップ108において、ベースライン計測を行うかどうかを判定する。先頭のウエハWの場合、又は所定枚数のウエハの露光が終わっている場合には、ステップ109に移行してベースライン計測を行った後(詳細後述)、動作はステップ110に移行する。一方、それ以外のウエハの場合には、動作はステップ108から直接ステップ110に移行して、ベースライン量としてはそれまでに計測された最新の計測値が使用される。
【0087】
そして、ステップ110において、主制御系33はウエハ上の全部のショット領域の配列座標をベースライン量(最新の計測値)で補正する。次のステップ111において、補正された配列座標を用いてウエハステージ26を移動することによって、ウエハW上で最初に露光するショット領域SAが投影光学系PLによる露光視野の手前の走査開始位置に設定される。この際に本例では、ステップ106から局所気密化部材37内部の局所気密化空間へのパージガスの送風が開始されているため、ステップ111の開始前に局所気密化空間はパージガスで完全に置換されている。その結果、局所気密化空間をパージガスでほぼ完全に置換するのに要する時間の大部分(或いは全て)を、投影露光装置が単に待機している待ち時間から除外することが可能となり、投影露光装置の処理能力の低下が、大幅に或いは完全に防止できる。
【0088】
また、その後で行われるショット領域の走査露光に際しては、投影光学系PLの下部の局所気密化空間は高純度のパージガスで満たされているため、高い照明効率で露光を行うことができる。以上の工程に続いて、ウエハW上の残りのショット領域ヘの露光が行われる。その後、ステップ112において、主制御系33は空調制御系53を介して気体切り換え部43を駆動して局所気密化部材37内部へのパージガスの送風を停止する。なお、そのようにパージガスの送風を停止する代わりに、気体切り換え部43を駆動して局所気密化部材37内部へ空気の送風を開始してもよい。
【0089】
次のステップ113において、未露光のウエハがあるかどうかが判定され、未露光のウエハがある場合には、ステップ114においてウエハ交換が行われる。即ち、ウエハステージ26は、前述のウエハ交換位置に移動して、不図示のウエハローダ系により、露光済みのウエハWが次のウエハに交換される。その後、動作はステップ105に戻り、次のウエハに対しても、上記と同様のシーケンスによりウエハマークの位置計測と露光を行なう。なお、複数のウエハマークの計測順の最適条件は、同様のマーク配列を有するウエハに対しては同様の結果となるので、上記の計測順の最適化は、同種のウエハの処理(即ち、1ロットのウエハの処理)に対しては、その最初の1枚目のウエハの処理時にのみ行なえば良い。そして、ステップ113において、未露光のウエハが無くなった時点で露光工程が終了する。
【0090】
上述のように本例によれば、ウエハ交換に伴なって局所気密化部材37の内部空間へ空気(酸素、水蒸気を含む)が混入した後、その内部空間内をパージガスで再度置換する動作を、ウエハ上のウエハマーク群の内の半分程度のマークの位置計測動作と並行して行なうことができるため、そのパージガスで置換するのに要する時間による投影露光装置の処理能力の低下を最低限に抑えることが可能になる。
【0091】
なお、上記の1ロットの先頭のウエハの露光前や、ロット内で所定枚数のウエハに露光する毎に、上記のステップ109において、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影像の中心(露光中心)と、アライメントセンサ32の検出基準との間隔(ベースライン量)を正確に計測する必要がある。ベースライン計測時には、図5に示すように、ウエハステージ26を移動して、基準マーク部材55上のスリットマークFM1の中心及び反射マークFM2の中心をそれぞれ投影光学系PLの光軸AX及びアライメントセンサ32の光軸BXにほぼ一致させる。そして、上述のようにアライメントセンサ32を用いて静止状態で、検出基準からの反射マークFM2のX方向、Y方向への位置ずれ量を計測する。次に、図1の照明系23A等でレチクルRのレチクルマークを照明した状態で、ウエハステージ26をX方向、Y方向に僅かに移動しながら、スリットマークFM1及びこの下の光量センサを用いて、その静止状態でのスリットマークFM1の位置に対するレチクルRの露光中心のX方向、Y方向への位置ずれ量を計測する。これらの計測値及び予め入力されているマークFM1,FM2の間隔BLより、主制御系33はベースライン量を算出することができる。
【0092】
従来の露光装置では、1ロットの先頭のウエハにおいて、ウエハ装填(ローディング)の前か、ウエハ装填後のウエハマークの位置計測の前に、上記ベースライン計測を行なうのが一般的であった。
しかし、上記ベースライン計測において、レチクルR上のパターンの投影像とスリットマークFM1との位置関係を計測する際には、スリットマークFM1が露光波長の真空紫外光で照明されるため、投影光学系PLとスリットマークFM1との間の光路空間、即ち局所気密化部材37の内部空間(局所気密化空間)が、パージガスによって置換されている必要がある。
【0093】
図5に示した通り、ベースライン計測を行なう状態では、投影光学系PLの下部に配置される局所気密化部材37の開口部37aの対向部には、スリットマークFM1や移動鏡29Xを含むウエハステージ26が配置されるので、局所気密化部材37内部を実質的に気密化することは可能である。但し、ウエハ装填(又は交換)の直後にベースライン計測を行なうものとすると、図5のベースライン計測位置へのウエハステージ26の移動後、局所気密化部材37内部のガス置換が完了するまで、露光波長の照明光を用いた計測は待たなければならない。これによっても露光装置の処理能力が低下してしまう。特に所定枚数のウエハ処理毎にベースライン計測を行なう場合(インターバル・ベースライン計測)には、その処理能力への影響は非常に大きくなる。
【0094】
そこで、本例では、上述のウエハW上のウエハマークの位置計測の後に、ベースライン計測を行なうものとする。即ち、上述のシーケンスによってウエハマークの位置計測中に局所気密化部材37内部のパージガスによる置換を完了させ、ガス置換が完了した状態で、ウエハステージ26を移動して、投影光学系PLの光軸AXをほぼスリットマークFM1と一致させ、アライメントセンサ32の検出基準をほぼ反射マークFM2と一致させて、ベースライン計測を行なう。
【0095】
これによりベースライン計測のために必要なガス置換時間を省略でき、処理能力の低下なくベースライン計測及びインターバル・ベースライン計測を行うことが可能になる。
なお、上記の実施の形態では、上記の第1期間と異なる第2期間、例えば局所気密化部材37の開口部37a(窓部)の対向部からウエハW及びウエハステージ26がいずれも存在しなくなる期間には、局所気密化部材37の内部へのパージガス(第1気体)の供給を停止している。しかしながら、その際にそのパージガスの供給を完全に停止するのではなく、ウエハステージ26の位置計測精度を悪化させない程度に、そのパージガスの流量を抑制するような構成を採用してもよい。
【0096】
なお、上記の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する場合、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施の形態の投影露光装置によりレチクルのパターンをウエハに露光するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0097】
また、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をすると共に、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより本実施の形態の投影露光装置を製造することができる。なお、投影露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0098】
また、上記の実施の形態において、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでもいい。更に、本発明は、走査露光型の投影露光装置で露光を行う場合のみならず、ステッパー等の一括露光型の投影露光装置で露光を行う場合にも同様に適用できることは言うまでもない。
なお、上記の実施の形態の投影露光装置の用途としては、半導体素子製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド、又はDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのレチクルパターンが形成されたレチクル(フォトマスク等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0099】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、投影光学系から基板までの露光ビームの光路を含む空間を、基板及び基板ステージに非接触の部材で覆うようにしている。従って、例えば真空紫外域の露光ビームで露光を行う場合に、大型で気密の遮蔽容器を用いることなく必要な期間に、その光路を含む空間を局所的に露光ビームを透過する第1気体で実質的に置換することができ、基板上での露光ビームの照度が低下しない。
【0101】
また、本発明を露光装置に適用した場合には、メンテナンス性に優れた小型で軽量な露光装置を実現できる。
また、局所気密化部材の窓部に対向する位置に基板及び基板ステージが存在しない期間内に第1気体の供給を停止して、所定の位置合わせ用マークの位置をオフ・アクシス方式で計測することによって、基板ステージの位置計測用の干渉計の光路への第1気体の混入を防止できるため、マーク位置の計測精度ひいては位置合わせ精度、及び同期精度の悪化を防止することができる。
【0102】
また、局所気密化部材の窓部に対向する位置に基板又は基板ステージが存在する期間内で第1気体を供給している期間内に、一部の位置合わせ用マークの位置をオフ・アクシス方式で計測するか、又はマーク検出系の位置関係(ベースライン量など)の計測を行うことによって、マーク位置の計測精度の低下を抑制した状態で、アライメント工程から基板を露光する工程に移行までの待ち時間を短縮して、露光工程のスループットを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の投影露光装置を示す一部を切り欠いた概略構成図である。
【図2】図1の投影露光装置の局所気密化機構を示す一部を切り欠いた図である。
【図3】(A)は図2中の局所気密化部材37を示す底面図、(B)は局所気密化部材の別の例を示す底面図である。
【図4】(A)は図1のウエハステージ26を示す平面図、(B)は図4(A)の状態からウエハステージ26が移動した状態を示す平面図である。
【図5】ベースライン計測時の図1のウエハステージ26を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるアライメント及び露光シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…チャンバ、18…サブチャンバ、19…レチクルステージ、25…レチクル室、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、26…ウエハステージ、30X,30Y…ウエハ干渉計、32…アライメントセンサ、37…局所気密化部材、43…気体切り換え部、55…基準マーク部材、M1〜M8…ウエハマーク
Claims (18)
- 露光ビームでマスクを照明し、前記露光ビームで前記マスク及び投影光学系を介して基板ステージ上に保持された基板を露光する露光方法において、
前記投影光学系から前記基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、前記露光ビームを前記基板側に通過させる窓部が設けられた局所気密化部材を前記基板及び前記基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、
前記窓部と対向する位置に前記基板又は前記基板ステージが存在する第1期間内に、前記局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する第1気体を供給する第2工程と、
前記第1期間と異なる第2期間に、前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給を調整して、前記基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置を前記投影光学系を介することなく計測する第3工程とを有することを特徴とする露光方法。 - 前記基板ステージの位置は、前記露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測されており、
前記第1期間内の所定の第3期間に前記局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する第1気体を供給する動作と並行して、前記局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体を吸引して排気することを特徴とする請求項1に記載の露光方法。 - 前記第2工程は、前記基板上の複数の前記位置合わせ用マークの内で前記第3工程で計測された前記所定のマークとは異なる他のマークの位置を前記投影光学系を介することなく計測する工程を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光方法。
- 前記基板上の前記複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序が、
前記第3工程で計測される前記所定のマークが、前記他のマークよりも先となるように最適化されていることを特徴とする請求項3に記載の露光方法。 - 前記第2工程は、前記基板の露光を行う工程を含み、
前記第2工程の、前記露光を行う工程と、前記位置合わせ用マークの位置を計測する工程との間に、
前記マスクのパターンの像と、前記基板上の位置合わせ用マークの位置を前記投影光学系を介することなく検出するマーク検出系との位置関係を計測する工程を更に含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の露光方法。 - 前記第2期間は、前記窓部に対向する位置に前記基板及び前記基板ステージのどちらも存在せず、かつ前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給を停止する期間であり、
更に、前記第2期間は、前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給を停止している間に、前記基板ステージ上の前記基板の交換を行う第4期間を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の露光方法。 - 前記第1気体の供給の調整は、前記第1気体の供給を停止することであり、
前記第3工程における前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給の停止は、前記第2期間よりも前に開始されることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の露光方法。 - 前記第3工程における、前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給の停止と前記第2期間との間に、前記局所気密化部材の内部へ前記第1気体とは異なる気体を供給することを特徴とする請求項7に記載の露光方法。
- 露光ビームでマスクを照明し、前記露光ビームで前記マスク及び投影光学系を介して基板ステージ上に保持された基板を露光する露光方法において、
前記投影光学系から前記基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、前記露光ビームを前記基板側に通過させる窓部が設けられた局所気密化部材を前記基板及び前記基板ステージに非接触の状態で配置する第1工程と、
前記窓部と対向する位置に前記基板又は前記基板ステージが存在する第1期間内に、前記局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する気体を供給する第2工程と、を有し、
前記第2工程は更に、前記基板の露光を行う工程と、前記基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定の位置合わせ用マークの位置を前記投影光学系を介することなく計測する工程と、前記マスクのパターンの像と前記基板上の位置合わせ用マークの位置を前記投影光学系を介することなく計測するマーク検出系との位置関係を計測する工程とを有することを特徴とする露光方法。 - 請求項1〜9の何れか一項に記載の露光方法を用いてデバイスのパターンを基板上に転写する工程を有するデバイス製造方法。
- 露光ビームでマスクを照明し、前記露光ビームで前記マスク及び投影光学系を介して基板ステージ上に保持された基板を露光する露光装置において、
前記投影光学系から前記基板に照射される露光ビームの光路を含む空間を覆うとともに、前記露光ビームを前記基板側に通過させる窓部が設けられて、前記基板及び前記基板ステージに非接触の状態で配置される局所気密化部材と、
前記局所気密化部材の内部に前記露光ビームを透過する第1気体を供給する気体供給機構と、
前記基板上の位置合わせ用マークの位置を前記投影光学系を介することなく計測するマーク検出系と、
前記気体供給機構及び前記マーク検出系の動作を制御する制御系とを有し、
前記制御系は、前記窓部と対向する位置に前記基板又は前記基板ステージが存在する第1期間内に、前記気体供給機構を介して前記局所気密化部材の内部に前記第1気体を供給し、
前記第1期間と異なる第2期間に、前記気体供給機構による前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給を調整して、前記基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置を前記マーク検出系を介して計測することを特徴とする露光装置。 - 前記気体供給機構は、前記第1期間内の所定の第3期間内に、前記第1気体の供給と並行して前記局所気密化部材の内部及びこの近傍の気体を吸引して排気する排気機構を備え、
前記基板ステージの位置を前記露光ビームを透過する第1気体とは異なる第2気体の雰囲気中で光ビームを用いて計測する位置計測系を更に有することを特徴とする請求項11に記載の露光装置。 - 前記第2期間は、前記窓部に対向する位置に前記基板及び前記基板ステージのどちらも存在せず、かつ前記局所気密化部材の内部への前記第1気体の供給を停止する期間であり、
更に、前記第2期間は、前記マーク検出系を介して、前記基板上の複数の位置合わせ用マークの内の所定のマークの位置を計測する第4期間を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の露光装置。 - 前記制御系は、前記基板上の複数の前記位置合わせ用マークの内で前記第2期間内に計測される前記所定のマークとは異なる他のマークの位置を前記第3期間内に前記マーク検出系を介して計測することを特徴とする請求項12に記載の露光装置。
- 前記基板ステージ上に設けられた基準マークを更に有し、
前記制御系は、前記第3期間内に前記基準マークを用いて前記投影光学系による前記マスクのパターンの像と前記マーク検出系との位置関係を計測することを特徴とする請求項12又は14に記載の露光装置。 - 前記気体供給機構は、前記局所気密化部材の内部へ前記第1気体に切り換えて前記第1気体とは異なる前記第2気体を供給できるように構成されていることを特徴とする請求項12、14、又は15に記載の露光装置。
- 前記制御部は、
前記基板上の前記複数の位置合わせ用マークの位置をそれぞれ計測する際の順序を、前記第2期間内に計測される前記所定のマークが、前記他のマークよりも先となるように最適化する最適化制御部を備えることを特徴とする請求項14に記載の露光装置。 - 請求項11〜17の何れか一項に記載の露光装置を用いてデバイスのパターンを基板上に転写する工程を有するデバイス製造方法。
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